説明

多段階変色温度インジケータ

【課題】所定の低温度を超える温度履歴と、所定の高温度を超える温度履歴とを、単一の感温層の変色部位での不可逆的な異なる色調の変化で、正確に表示できる簡易な構造で安価な多段階温度履歴インジケータを提供する。
【解決手段】白色顔料21を含有するコート層15が、光沢膜13上に付され、その上に、記録すべき加熱温度に相当する融点を持つ粒状または粉末状の熱溶融性物質22と、該加熱温度で熱溶融して透明化した該物質22への分散または溶解による拡散性がある粒状または粉末状の色素23と、インキビヒクルとを含む感温層16が、付されており、該加熱温度で熱溶融により、該光沢膜13の光沢と拡散した該色素23との混合色調が視認化され、該加熱温度を超えた過熱温度で該物質の状態が変化することにより、拡散した該色素23と該白色顔料21との混合色調が視認化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の比較的低温度を超える加熱温度履歴と、所定の比較的高温度を超える過熱温度履歴とを、不可逆的な異なる色調の変化で示して記録する多段階温度履歴インジケータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造過程や保管・流通過程や使用途中で高温に曝されると品質や性能が低下してしまう製品がある。そのような製品の高品質化、品質維持、性能保証、安全性確保などの観点から、複数の温度を管理しなければならなくなってきている。
【0003】
加工食品は、食事の直前に温めるだけで済むように予め加熱調理されたものであり、製造の際に所定の温度を超えて加熱しなければならないが、限界温度を超えて過熱されると、水分が蒸発し過ぎたり焦げたり旨み成分が劣化したりしてしまうため、加熱温度管理を厳重にしなければならない製品である。
【0004】
また、医薬品や生鮮食料品のように、流通や保管の際に冷凍乃至冷蔵下で比較的長期間、品質が低下することなく保存できるが、室温に戻しても比較的短期間で使い切れば品質が低下したり分解したり腐敗したりしないため、室温を超える高温に晒されていない限り使用に耐え得る製品もある。
【0005】
さらに、モータのように多少の比較的低温の加熱ならば定期点検で足りるが、故障や破損や火災の危険を生じる恐れがある比較的高温の過熱ならば使用を中止しなければならない電気設備や電気部品等の製品もある。
【0006】
このような複数の管理すべき温度の履歴を経たか否かの検知には、所定の温度で色調が変化する複数種の示温材が用いられていた。
【0007】
このような示温材として、特許文献1に、記録温度を融点とする熱溶融性物質を含有した隠蔽性インキ層が付され、溶融状態の該熱溶融性物質を不可逆的に吸収し得る紙製基材が、支持体シートに貼付された温度履歴インジケータが、開示されている。
【0008】
また、別な示温材として、特許文献2に、粒状又は粉末状の色素と、記録すべき温度に相当する融点を持つ粒状又は粉末状の熱溶融性物質とが混合されている不可逆性感温組成物が、開示されている。
【0009】
さらに別な示温材として、特許文献3に、発色剤、顕色剤及び減感剤を含有し特定の設定温度以上にて有色から無色透明に可逆的に変色する着色材料を備えた可逆的熱変色層上に、パール顔料を含有したインキ層を積層した感温変色積層体が、開示されている。
【0010】
何れの示温材も、一つの定温度を超える温度履歴しか検知できないので、複数の規定温度を超える温度履歴を検知するには、検温範囲の異なる複数種の示温材を用いなければならず、煩雑であったり構造が複雑であったりするため製造コストがかさむうえ、変色前後の色差が比較的小さく目認し難いという問題があった。
【0011】
一方、多段階の温度を択一的に視覚判別するために、特許文献4に、二種以上の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を配合した感温変色性温度識別性筆記具が開示されている。この筆記具も複数のマイクロカプセル顔料を調製しなければならず煩雑で製造コストがかさむなど、前記と同様な問題がある。
【0012】
【特許文献1】特開2003−172661号公報
【特許文献2】特開2001−303024号公報
【特許文献3】特開2002−301784号公報
【特許文献4】特開2005−89576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、所定の低温度を超える温度履歴と、所定の高温度を超える温度履歴とを、単一の感温層の変色部位での不可逆的な異なる色調の変化で、正確に表示でき、感温層の位置やデザインを任意に設定でき、さらに温度履歴の記録として残すために変化したままの色調で保存することができる簡易な構造で安価な多段階温度履歴インジケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の多段階温度履歴インジケータは、白色顔料を含有するコート層が、光沢膜上に付され、その上に、記録すべき加熱温度に相当する融点を持つ粒状または粉末状の熱溶融性物質と、該加熱温度で熱溶融して透明化した該物質への分散または溶解による拡散性がある粒状または粉末状の色素と、インキビヒクルとを含む感温層が、付されており、該加熱温度で熱溶融により、該光沢膜の光沢と拡散した該色素との混合色調が視認化され、該加熱温度を超えた過熱温度で該物質の状態が変化することにより、拡散した該色素と該白色顔料とによる混合色調が視認化されることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の多段階温度履歴インジケータは、請求項1に記載されたもので、前記光沢膜が、おもて面側に白色顔料含有コート層が付されている透明プラスチック基材のうら面側に付された金属蒸着膜、金属箔膜、金属板、若しくは金属粉含有インキ層;金属箔膜;又は金属板であることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の多段階温度履歴インジケータは、請求項1に記載されたもので、前記白色顔料が、珪酸、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミン酸塩、リトポン、サチンホワイト、合成ゼオライト、ホワイトカーボン、タルク、カオリナイト、カオリン、クレー、マイカ、雲母、ケイソウ土、及び/又は有機顔料であることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の多段階温度履歴インジケータは、請求項1に記載されたもので、前記感温層が、前記熱溶融性物質を10〜70重量%含んでいることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の多段階温度履歴インジケータは、請求項1に記載されたもので、前記熱溶融性物質は、脂肪酸誘導体、アルコール誘導体、エーテル誘導体、アルデヒド誘導体、ケトン誘導体、アミン誘導体、アミド誘導体、ニトリル誘導体、炭化水素誘導体、チオール誘導体、スルフィド誘導体から選ばれる少なくとも1種類であり、前記色素は、染料または顔料であり、前記インキビヒクルは、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ナイロン、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースのいずれかであることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の多段階温度履歴インジケータは、請求項1に記載されたもので、前記コート層が、ポリビニルアルコール樹脂をバインダー樹脂として含有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の多段階温度履歴インジケータは、所定の比較的低温度を超える加熱温度履歴と、所定の比較的高温度を超える過熱温度履歴とを、一つの変色部位での不可逆的な異なる明瞭な色調の変化で、正確に表示できる。
【0021】
しかも、白色顔料を含有するコート層を、光沢膜の全面に付した上に、感温層を任意の場所に任意のデザインで付すだけで済むので、その変色程度を目認し易いようにその周りの不変色部をわざわざ着色したり印刷したりする面倒な工程の必要がない。そのため、構造が簡易であるから、大量生産であっても少量生産であっても、簡便かつ安価に製造できる。
【0022】
多段階温度履歴インジケータは、熱溶融性物質の融点近傍で金属光沢性の着色によって所定の低温度であるその融点を超える加熱温度履歴を表示し、さらにそれを超える温度で金属光沢性が消失し色素と白色顔料との混合色調である白濁した色調のような着色によって所定の高温度を超える過熱温度履歴を表示することができる。
【0023】
熱溶融性物質への色素の拡散が不可逆的であるので、このインジケータは、色調変化した後に温度が低下し、熱溶融性物質が凝固しても色調変化前の色調に戻らない。そのため、多段階温度履歴インジケータは、多段階の温度履歴の記録として残すために変化したままの色調で保存することができる。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0024】
以下、本発明の実施の好ましい形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明の多段階温度履歴インジケータ1は、図1に示すように、うら面側にアルミニウムで蒸着した光沢膜13を有する透明プラスチック製基材14のおもて面側の全面に、白色顔料である炭酸カルシウム粉末21とバインダー樹脂とを含有するコート層15が形成されており、そのコート層15上の一部に、熱溶融性物質22と色素23とを含有する感温層16が、付されたものである。
【0026】
この多段階温度履歴インジケータ1は、以下のようにして製造される。先ず、透明プラスチック製基材14のうら面側に、アルミニウムを蒸着して、光沢膜であるアルミニウム蒸着膜13を形成する。白色顔料21とバインダー樹脂と必要に応じて媒体を含有するコート剤組成物を調製し、透明プラスチック基材14のおもて面側の全面に、塗布し、乾燥させてコート層15を形成する。記録すべき低温度に相当する融点を持ち所望の粒径に粉砕した粒状または粉末状の熱溶融性物質22と、その低温度で熱溶融して透明化した熱溶融性物質への分散または溶解による拡散性がある粒状または粉末状の色素23と、熱溶融した熱溶融性物質22の拡散性があるインキビヒクルと、必要に応じて溶剤とを、混練機で均一に混練することにより、感温インキを、調製する。この感温インキを、コート層15上の一部に印刷して乾燥すると、感温層16が付された多段階温度履歴インジケータ1が得られる。
【0027】
この多段階温度履歴インジケータ1は、図2を参照して説明すると、以下のようにして使用される。
【0028】
所定の低温度を超える温度履歴と、所定の高温度を超える温度履歴とを記録すべき、被検温物に、多段階温度履歴インジケータ1を貼付したり、その被検温物の傍に載置したりする。このとき室温で、同図(a)に示すように、色素23が熱溶融性物質22により隠蔽されているので、熱溶融性物質22の光散乱の所為で、感温層16は白色を呈している。また感温層16が付されていない外周部は白色顔料コート層15の所為で白色を呈している。同図(b)に示すように、多段階温度履歴インジケータ1ごと被検温物が熱溶融性物質22の融点近傍にまで加熱されると、感温層16中の熱溶融性物質22が熱溶融して透明化し、そこに色素23が分散または溶解して拡散しつつ、熱溶融性物質22と色素23とがインキビヒクルに拡散し、コート層15に不可逆的に吸収される結果、感温層16が着色しつつ透明化するためアルミニウム蒸着膜13が透けて視認できるようになり、白色からメタリック調の光沢性で着色した色調に変化する。また感温層16が付されていない外周部は白色顔料コート層15の所為で白色を呈しているままであるので、その色調の変化は、明瞭に認識できる。さらに温度を例えば20〜80℃程度上げると、同図(c)に示すように、透明化した熱溶融性物質22の一部乃至全部が、例えば揮発してその状態を変化させ、インキビヒクル中で色素と白色顔料とが視認されるようになるため、メタリック調の光沢性が失せて不視覚化されて、その白色顔料の色調と色素とによる着色とが混合したパステルカラーの着色白濁混合色調に感温層16が変化し、多段階温度履歴インジケータ1の色調の変化として表れる。また、同温域へ温度を上げたとき、透明化した熱溶融性物質22の一部乃至全部が、分解又は変質する場合であれば、その白色顔料の色調と色素とによる着色と、熱溶融性物質22の分解又は変質による着色とが、混合したパステルカラーの着色混合色調に、感温層16が変化し、多段階温度履歴インジケータ1の色調の変化として表れる。
【0029】
多段階温度履歴インジケータ1の一態様において、このように複数の温度域で、異なる色調を示す過程を、図3により説明する。
【0030】
多段階温度履歴インジケータ1の感温層16が、室温tで、白色色調(A)を示している。
【0031】
多段階温度履歴インジケータ1周囲の温度が上昇し、熱溶融性物質の融点を超えると、加熱による熱溶融開始温度tでその熱溶融性物質の熱溶融が始まり、感温層16が、熱溶融物質の熱溶融程度に応じ、完全に熱溶融し尽す熱溶融終了温度tまでの間、白色色調(A)から色素の着色光沢色調へ、階調的に又は斑状増加的に、幾分かの変色する。熱溶融性物質が完全に溶融する前に冷却されるとa→b→fの過程を経て不可逆的に幾分か着色光沢色調を示し、温度t又はそれを超え熱溶融性物質が完全に溶融してから冷却されるとa→b→c→fの過程を経て不可逆的に明瞭な着色光沢色調(B)を示す。
【0032】
さらに多段階温度履歴インジケータ1周囲の温度が上昇すると、熱溶融性物質の揮発が起こり始めそれに応じて、白濁開始温度tで熱溶融した熱溶融性物質の白濁が始まり、感温層16が、熱溶融物質の白濁程度に応じ、完全に白濁し尽す白濁終了温度tまでの間、明瞭な着色光沢色調(B)から着色白濁混合色調へ、階調的に又は斑状増加的に、幾分かの変色する。熱溶融性物質が完全に白濁する前に冷却されるとa→b→c→d→gの過程を経て不可逆的に幾分か着色白濁混合色調を示し、温度t又はそれを超え熱溶融性物質が完全に白濁してから冷却されるとa→b→c→d→e→gの過程を経て不可逆的にパステルカラーの着色白濁混合色調(C)を示す。
【0033】
このようにして、所定の低温度を超える温度履歴と、所定の高温度を超える温度履歴とを、不可逆的な異なる色調の変化として、記録することができる。
【0034】
なお、光沢膜は、透明プラスチック基材のうら面側にアルミニウムや銀のような金属が蒸着された蒸着膜であってもよく、透明プラスチック基材のうら面側に貼付された金属板であってもよい。光沢膜は、金属箔膜、又は金属板であり、そのおもて面側にコート層が直接付されていてもよい。また、光沢膜は、金属粉含有インキで塗布又は印刷された光沢性のインキ層であってもよい。透明プラスチック基材は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂の例示されるプラスチックで形成されたものが挙げられる。
【0035】
コート剤組成物に含有される白色顔料は、例えば、水和珪酸のような珪酸;珪酸カルシウム;珪酸アルミニウム;珪酸マグネシウム;炭酸カルシウム;炭酸亜鉛;二酸化チタンのような酸化チタン;酸化亜鉛;硫酸バリウム;ケイ酸アルミニウム;合成非晶質シリカ(より具体的にはアエロジル300:日本アエロジル(株)製)、コロイダルシリカのようなシリカ;水酸化アルミニウム・アルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等)・アルミナ(より具体的にはα型結晶のアルミナ、θ型結晶のアルミナ、γ型結晶のアルミナ等)、アルミン酸塩三水和物のようなアルミナや水酸化アルミニウムやアルミン酸塩;硫化バリウムと硫化亜鉛とを反応させ沈殿させたリトポン;酸化カルシウムに硫酸アルミニウムを反応させた硫酸カルシウムであるサチンホワイト;合成ゼオライトのようなゼオライト;ホワイトカーボン;タルク;カオリナイト、それを含んでいるカオリン;焼成クレー、カオリンクレー、チャイナクレーのようなクレー;マイカ;膨潤性雲母のような雲母;ケイソウ土;ベンゾグアナミン、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル粒子、プラスチックピグメント、尿素樹脂顔料のような有機顔料が、挙げられる。
【0036】
白色顔料は、粉末であることが好ましく、多孔性の微粉末であると一層好ましい。
【0037】
コート剤組成物に含有されるバインダー樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂が、挙げられる。
【0038】
コート剤組成物に含有される媒体は、水、有機溶剤が挙げられる。
【0039】
熱溶融性物質は、変色温度を決定する成分であって、常圧下で記録すべき温度の融点を有し、融点以上に加熱されると熱溶融されて、粒状または粉末状から液状に変化する物質である。熱溶融性物質は、脂肪酸誘導体、アルコール誘導体、エーテル誘導体、アルデヒド誘導体、ケトン誘導体、アミン誘導体、アミド誘導体、ニトリル誘導体、炭化水素誘導体、チオール誘導体、スルフィド誘導体から選ばれる少なくとも1種類が好適に用いられる。また、変色温度の調整のために、熱溶融性物質は、それらのうちの2種類以上を混合したものであってもよい。この熱溶融性物質は、0.01μm〜5mmの径を有していることが好ましい。
【0040】
熱溶融性物質は、具体的にはミリスチン酸、パルミチン酸、アジピン酸、オクタン酸、トリコサン酸、テトラトリアコンタン酸、2,3−ジメチルノナン酸、23−メチルテトラコサン酸、2−ヘキセン酸、ブラシン酸、2−メチル−2−ドデセン酸、β−エレオステアリン酸、ベヘノール酸、cis−9,10−メチレンオクタデカン酸、ショールムーグリン酸、3,3’−チオジプロピオン酸−n−ドデシル、トリラウリン、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、サリチル酸アニリド、N−アセチル−L−グルタミン酸、カプロン酸−β−ナフチルアミド、エナント酸フェニルヒドラジド、アラキン酸−p−クロルフェナシル、ギ酸コレステリル、1−アセト−2,3−ジステアリン、チオラウリン酸−n−ペンタデシル、ステアリン酸塩化物、無水パルミチン酸、ステアリン酸−酢酸無水物、コハク酸、セバシン酸ベンジルアンモニウム塩、2−ブロム吉草酸、α−スルホステアリン酸メチルナトリウム塩、2−フルオルアラキン酸が挙げられる脂肪酸誘導体;
オクタデシルアルコール、コレステリン、D−マンニット、ガラクチトール、ヘプタトリアコンタノール、ヘキサデカン−2−オール、1−trans−2−オクタデセノール、β−エレオステアリルアルコール、シクロエイコサノール、d(+)セロビオース、p,p’−ビフェノール、リボフラビン、4−クロロ−2−メチルフェノール、2−ブロモ−1−インダノールが挙げられるアルコール誘導体;
ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、シチジン、アデノシン、フェノキシ酢酸ナトリウム、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、アルミニウムトリエトキシドが挙げられるエーテル誘導体;
ステアリンアルデヒド、パララウリルアルデヒド、パラステアリンアルデヒド、ナフトアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、フタルアルデヒド、4−ニトロベンズアルデヒドが挙げられるアルデヒド誘導体;
ステアロン、ドコサン−2−オン、フェニルヘプタデシルケトン、シクロノナデカン、ビニルヘプタデシルケトン、4,4−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、ビス(2,4−ペンタンジオナイト)カルシウム、1−クロロアントラキノンが挙げられるケトン誘導体;
トリコシルアミン、ジオクタデシルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、ヘプタデカメチレンイミン、ナフチルアミン、p−アミノ安息香酸エチル、o−トリチオ尿素、スルファメタジン、硝酸グアニジン、p−クロロアニリン、プロピルアミン塩酸塩が挙げられるアミン誘導体;
ヘキシルアミド、オクタコシルアミド、N−メチルドデシルアミド、N−メチルヘプタコシルアミド、α−シアノアセトアミド、サリチルアミド、ジシアンジアミド、2−ニトロベンズアミド、N−ブロモアセトアミドが挙げられるアミド誘導体;
ペンタデカンニトリル、マルガロニトリル、2−ナフトニトリル、o−ニトロフェノキシ酢酸、3−ブロモベンゾニトリル、3−シアンピリジン、4−シアノフェノールが挙げられるニトリル誘導体;
ヘキサデカン、1−ノナトリアコンテン、trans−n−2−オクタデセン、ヘキサトリアコンチルベンゼン、2−メチルナフタレン、ビセン、塩化シアヌル、1−フルオロノナデカン、1−クロロエイコサン、1−ヨードペンタデカン、1−ブロモヘプタデカン、1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンが挙げられる炭化水素誘導体;
ペンタデカンチオール、エイコサンチオール、2−ナフタレンチオール、2−メルカプトエチルエーテル、2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリドが挙げられるチオール誘導体;
1,3−ジアチン、2,11−ジチア[3,3]パラシクロファン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、4,4−ジピリジルスルフィド、4−メチルメルカプトフェノールが挙げられるスルフィド誘導体のうちの少なくとも1種類が用いられる。
【0041】
色素は、感温インキ中に粒状または粉末状で含まれ、熱溶融した熱溶融性物質に分散または溶解することにより拡散するものである。また色素は、熱溶融したこの物質によって色素の粒表面や粉末表面が湿潤されるものであってもよい。色素として、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散性染料、反応性染料、油溶性染料、バット染料、媒染染料、アゾイック染料、硫化染料の例示される染料、有機顔料や無機顔料の例示される顔料、着色体が挙げられ、広範囲のものが使用できる。これらの色素は、2種以上混合して用いてもよい。この色素は、0.001μm〜5mmの径を有していることが好ましい。温度記録用不可逆性感温インキ中、熱溶融性物質の100重量部に対して、この色素は0.001〜100重量部の比で含まれていることが好ましい。
【0042】
色素は、具体的には、C.I.ディレクト・オレンジ39、C.I.ディレクト・ブラウン2、C.I.アシッド・イエロー73、C.I.アシッド・レッド52、C.I.アシッド・バイオレット49、C.I.ベイシック・イエロー11、C.I.ベイシック・レッド38、カチオン・レッドSGLH、カチオン・レッドGTLH、カチオン・レッド4GH、カチオン・レッド7BNH(保土谷化学工業(株)製)、C.I.モルダント・レッド7、C.I.モルダント・ブラック38、C.I.アゾイック・ブルー9、C.I.アゾイック・ジアゾ・コンポーネント11、C.I.サルファー・ブラック1、C.I.サルファー・レッド5、C.I.バット・グリーン9、C.I.バット・バイオレット2、C.I.ディスパース・ブルー3、ディスチャージ・レッドBB(三井東圧染料(株)製)、C.I.リアクティブ・ブルー19、C.I.リアクティブ・ブルー15、レマゾールBrブルーR−KN(三菱社製)、C.I.ソルベント・オレンジ2、C.I.ソルベント・ブルー25、C.I.アシッド・グリーン1、フラビアニック・アジド・ジソジウム・ソールト、プリムリンスルホン酸が挙げられる染料;
4,10−ジブロムアントアントロン、ジベンゾアントロン、コチニールレーキ、C.I.ピグメント・イエロー1、C.I.ピグメント・レッド38、C.I.ピグメント・ブルー15、C.I.ピグメント・レッド209、C.I.ピグメント・イエロー109、C.I.ピグメント・グリーン10、C.I.ベイシック・レッド1−レーキ、C.I.アシッド・レッド87-レーキ、C.I.ピグメント・ブルー6、C.I.ピグメント・レッド179、C.I.ピグメント・レッド88、アリザリンレーキ、C.I.ピグメント・バイオレット23、C.I.ピグメント・グリーン8、C.I.ピグメント・レッド53、C.I.ピグメント・イエロー23−レーキ、タンニン酸・没食子酸・鉄レーキ、C.I.ピグメント・イエロー34、C.I.ピグメントイエロー35が挙げられる有機顔料;
カオリン、紺青、硫酸ストロンチウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、カーボンブラックが挙げられる無機顔料が用いられる。なお、前記C.I.は、カラー・インデックスの略字である。
【0043】
インキビヒクルは、常温でこの熱溶融性物質とこの色素とを溶解せず拡散させないが、熱溶融して色素の分散または溶解した熱溶融性物質を、拡散することができるものである。インキビヒクルは、例えばアクリル樹脂、フェノール樹脂、ナイロン、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。市販のインキビヒクルである、PAS800メジウム(十条化工(株)製の商品名)、ハイセットマットメジウム((株)ミノグループ製の商品名)であってもよい。
【0044】
インキビヒクルとして、市販のビヒクル、例えば、ダイキュアAK(大日本インキ化学工業(株)製)、FDSニュー(東洋インキ製造(株)製)、レイキュアTU4400(十条ケミカル(株)製)、UVSPAクリヤー(帝国インキ製造(株)製)、UV8418((株)セイコーアドバンス製)を使用してもよい。
【0045】
感温インキ中に、この熱溶融性物質が10〜70重量%含まれていることが好ましい。10重量%未満であると色調変化が不明瞭であり、一方70重量%より多いと固着力が低下し基材への塗布や印刷ができない。
【0046】
感温インキには、熱溶融性物質と色素とを溶解しないがインキビヒクルを溶解する溶媒が含まれていてもよい。このような溶媒は、例えば水、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸イソアミル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、ジエチルベンゼン、トルエン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ミネラルスピリット、さらにUV硬化樹脂を用いた場合には、感光性樹脂のモノマーが挙げられる。
【0047】
さらに、感温インキには、色素を分散させて色調変化が明瞭となるように、タルク、炭酸マグネシウム、シリカの例示される分散剤が含まれていてもよい。感温インキには、色調変化を増幅させるため、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、反応性染料、油溶性染料、建築染料、媒染染料、アゾイック染料、硫化染料の例示される染料、有機顔料、無機顔料のいずれかであって、色素の色調と対照色を示す色の助色剤が含まれていてもよい。また、感温インキには、インキの流動性や乾燥性を調整するワックスや界面活性剤が含まれていてもよい。
【0048】
この多段階温度履歴インジケータは、カード状、シート状または棒状であってもよく、裏面に粘着剤層を有するラベルであってもよい。
【0049】
印刷は、例えばスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、刷毛塗りにより行われる。
【0050】
このインキを印刷して形成された感温層は、透明または半透明のラミネート材で覆われていてもよい。ラミネート材には、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂の例示されるプラスチック製のフィルム;アクリル樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリカの例示されるラミネート用印刷メジウムが挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を適用する多段階温度履歴インジケータを試作した例を実施例1に、本発明を適用外の温度履歴インジケータを試作した例を比較例1〜4に示す。
【0052】
(感温インキの調製)
ベヘニン酸(100重量部)、8%エチルセルロースのキシレン溶液(160重量部)、キシレン(重200量部)、カチオンレッドGTLH(1重量部)をボールミルで1日間、混練し、感温インキを調製した。
【0053】
(コート剤組成物の調製)
微粒子ケイ酸(100重量部)、10%ポリビニルアルコール水溶液(400重量部)を90℃で攪拌し、コート剤組成物を調製した。
【0054】
(実施例1:多段階温度履歴インジケータの作製(1))
厚さが50μmの透明のポリエステルフィルムを基材とし、そのうら面側に、アルミニウムが蒸着され、おもて面側に、前記のようにして調製したコート剤組成物を塗布して形成されたコート層で被覆された支持体を用いた。それのコート層上に、感温インキをスクリーン印刷にて3mmの丸形に印刷し、不可逆性の多段階温度履歴インジケータを得た。それを、80℃で1時間、その後、150℃で1時間、加熱した。
【0055】
(実施例2:多段階温度履歴インジケータの作製(2))
厚さが50μmの透明のポリエステルフィルムを基材とし、そのうら面側に、アルミニウムが蒸着され、おもて面側に、白色顔料とバインダー樹脂であるポリビニルアルコール樹脂とを含有する組成物からなるコート層で被覆された支持体(FN50GコートPAT1 8LK2;リンテック(株)製の商品名)を用いた。それのコート層上に、感温インキをスクリーン印刷にて3mmの丸形に印刷し、不可逆性の多段階温度履歴インジケータを得た。それを、80℃で1時間、その後、150℃で1時間、加熱した。
【0056】
(比較例1)
実施例1の支持体のコート層中のポリビニルアルコール樹脂に代えて、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂やアクリル樹脂を用いた支持体を用い、それを非アルミニウム蒸着面に印刷したこと以外は実施例1と同様にして、温度履歴インジケータを得た。それを、実施例1と同様に加熱した。
【0057】
(比較例2)
実施例1の支持体に代えて、アルミニウム蒸着膜を有しない白色のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、温度履歴インジケータを得た。それを、実施例1と同様に加熱した。
【0058】
(比較例3)
コート剤組成物で印刷しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、温度履歴インジケータを得た。それを、実施例1と同様に加熱した。
【0059】
(比較例4)
比較例3で作製した温度履歴インジケータの感温層以外のアルミニウム光沢可視部位を、白色顔料とバインダー樹脂であるポリエステル樹脂やアクリル樹脂とを含有するスクリーン印刷用白色インキで隠蔽するように印刷して温度履歴インジケータを得た。それを、実施例1と同様に加熱した。
【0060】
それらの結果を、表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1の多段階温度履歴インジケータは、80℃×1時間で白からメタリック調の赤に変色し、加熱前との色差が約60であり、150℃×1時間加熱時では赤色に変色し加熱前との色差が約50であり、いずれも視認性には問題がなかった。感温層が付されていない白色顔料含有コート層の部位は、加熱しても変色しないので、感温層の変色を、視認し易くする。
【0063】
実施例2の多段階温度履歴インジケータは、実施例1と同様に、80℃×1時間で白からメタリック調の赤に変色し、加熱前との色差が約60であり、150℃×1時間加熱時では赤色に変色し加熱前との色差が約50であり、いずれも視認性には問題がなかった。このように市販の基材を用いても、所期通りの多段階温度履歴インジケータを作製することができた。
【0064】
比較例1、2の温度履歴インジケータは、80℃×1時間、150℃×1時間のどちらでも、白から赤に変色し、色差は約50であった。比較例1のように白色インキ上に感温層を付した場合、加熱しても白インキが透けないのでメタリック調に変色しない。
【0065】
比較例3の温度履歴インジケータは、80℃×1時間で白からメタリック調の赤に変色し、150℃×1時間加熱時では赤色に変色した。しかしながら、感温部以外がメタリック調の色調であるため、加熱前と加熱後の色調が低下し、80℃×1時間では色差が約45、150℃×1時間加熱時では色差が約40であった。
【0066】
比較例4の温度履歴インジケータは、80℃×1時間で白からメタリック調の赤に変色し、加熱前との色差が約60であり、150℃×1時間加熱時では赤色に変色し加熱前との色差が約50であり、視認し易いものであったが、感温層以外の部位をマスク印刷しなければならず、構造が複雑で、印刷版作製やそれによる印刷等の複雑な工程を必要とすることから、製造コストが、マスク印刷の不要な実施例1のものに比べて、約2倍もかかり、製造が面倒であった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
加工食品の製造工程や、医薬品や生鮮食料品の流通・保管工程、使用工程や、電気設備や電気部品の使用途中で、2段階の温度を管理するのに、用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明を適用する多段階温度履歴インジケータの模式断面図である。
【図2】本発明を適用する多段階温度履歴インジケータの使用途中を示す平面図である。
【図3】本発明を適用する多段階温度履歴インジケータを使用したときの温度と色調の相関関係を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1は多段階温度履歴インジケータ、11は剥離紙、12は粘着剤層、13は光沢膜、14は透明プラスチック基材、15は白色顔料含有コート層、16は感温層、21は白色顔料、22は熱溶融性物質、23は色素である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料を含有するコート層が、光沢膜上に付され、その上に、記録すべき加熱温度に相当する融点を持つ粒状または粉末状の熱溶融性物質と、該加熱温度で熱溶融して透明化した該物質への分散または溶解による拡散性がある粒状または粉末状の色素と、インキビヒクルとを含む感温層が、付されており、該加熱温度で熱溶融により、該光沢膜の光沢と拡散した該色素との混合色調が視認化され、該加熱温度を超えた過熱温度で該物質の状態が変化することにより、拡散した該色素と該白色顔料とによる混合色調が視認化されることを特徴とする多段階温度履歴インジケータ。
【請求項2】
前記光沢膜が、おもて面側に白色顔料含有コート層が付されている透明プラスチック基材のうら面側に付された金属蒸着膜、金属箔膜、金属板、若しくは金属粉含有インキ層;金属箔膜;又は金属板であることを特徴とする請求項1に記載の多段階温度履歴インジケータ。
【請求項3】
前記白色顔料が、珪酸、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミン酸塩、リトポン、サチンホワイト、合成ゼオライト、ホワイトカーボン、タルク、カオリナイト、カオリン、クレー、マイカ、雲母、ケイソウ土、及び/又は有機顔料であることを特徴とする請求項1に記載の多段階温度履歴インジケータ。
【請求項4】
前記感温層が、前記熱溶融性物質を10〜70重量%含んでいることを特徴とする請求項1に記載の多段階温度履歴インジケータ。
【請求項5】
前記熱溶融性物質は、脂肪酸誘導体、アルコール誘導体、エーテル誘導体、アルデヒド誘導体、ケトン誘導体、アミン誘導体、アミド誘導体、ニトリル誘導体、炭化水素誘導体、チオール誘導体、スルフィド誘導体から選ばれる少なくとも1種類であり、前記色素は、染料または顔料であり、前記インキビヒクルは、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ナイロン、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の多段階温度履歴インジケータ。
【請求項6】
前記コート層が、ポリビニルアルコール樹脂をバインダー樹脂として含有していることを特徴とする請求項1に記載の多段階温度履歴インジケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−204573(P2009−204573A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49761(P2008−49761)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【Fターム(参考)】