説明

多液混合装置

【課題】混合性能に優れた多液混合装置を提供する。
【解決手段】駆動ギヤ30(駆動側回転部材)を回転駆動してロータ50(従動側回転部材)を回転させると、撹拌空間15内では、撹拌片61が回転して主剤(液体)と硬化剤(液体)を剪断するように撹拌し、この撹拌作用によって主剤と硬化剤が混合されて混合塗料となる。また、ロータ50に回転力を付与する手段として磁力を利用しているので、筒状部材10を貫通する形態の回転力伝達部材が不要であり、回転力伝達部材の貫通部分に浸入した混合塗料が高粘度化して固着することに起因してロータ50の回転に支障を来たすことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多液混合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主剤と硬化剤とを混合する装置として、例えば特許文献1に開示された技術がある。この特許文献1に開示された装置は、疎水性イソシアネートを硬化剤とする水性二液ウレタン混合装置であって、事前に定量調整した水性二液塗料を、0.2mm〜0.5mm程度の対向する孔から3MPa〜5MPa程度の高圧を付与して噴出衝突させ、その剪断力により難分散剤である疎水性イソシアネートを分散混合する装置である。
【特許文献1】特許第3602203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された混合装置では、十分な分散混合が可能であるが、0.2mm〜0.5mm程度の対向する孔から3MPa〜5MPa程度の高圧を付与して噴出衝突させて分散する方式であるため、塗料流量制御が難しく、また洗浄を行い難い構成であるため、実用性に乏しい。
本発明は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、簡便な構成で、混合性能に優れ、簡便に洗浄を行い得る多液混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の多液混合装置は、内部に複数種類の液体を一方向に流通させるための撹拌空間が設けられている筒状部材と、駆動側磁石を有し、前記撹拌空間内における前記液体の流通方向と略平行な軸を中心として前記筒状部材の外周に沿って回転駆動する駆動側回転部材と、従動側磁石と撹拌片とを有し、前記駆動側回転部材と略同軸に回転し得るように前記筒状部材内に設けられた従動側回転部材とを備え、前記駆動側磁石と前記従動側磁石との間の磁気吸引力により、前記従動側回転部材が前記駆動側回転部材と一体となって回転することで、前記撹拌片が前記撹拌空間内で前記液体の流通方向と交差する方向に回転するようになっていることを特徴とする。
【0005】
本発明の多液混合装置によると、駆動側回転部材を回転駆動して従動側回転部材を回転させると、撹拌空間内では、撹拌片が回転して液体を剪断するように撹拌し、この撹拌作用によって複数種類の液体が混合される。液体の流速が遅い場合でも、駆動側回転部材の回転速度、即ち撹拌片の回転速度を高めることにより、液体を十分に撹拌して混合させることができる。
また、筒状部材内に収容されている従動側回転部材に回転力を伝える手段として、従動側回転部材に一体回転するように設けた伝達部材を筒状部材の外部へ貫通させ、この伝達部材に回転力を付与する構造が考えられるが、このように回転する伝達部材が筒状部材を貫通する構造の場合、伝達部材の貫通部分の隙間に浸入した混合液体が、高粘度化して固着し、そのために従動側回転部材の回転に支障を来たすことが懸念される。これに対し本発明では、従動側回転部材に回転力を付与する手段として、磁力を利用しているので、上記のような混合液体の高粘度化に起因する従動側回転部材の回転不良を回避することができる。
【0006】
上記多液混合装置において、前記撹拌空間内における前記撹拌片よりも上流側近傍位置には、前記液体の流通を許容する流通孔と、前記液体の流通を遮断する遮断部とが周方向に隣り合うように設けられているものとすることができる。
このような構成によると、液体は、流通孔内を流れる間に概ね層流状となり、流通孔を通過した直後に、撹拌片によって流れをほぼ直角に横切るように剪断されつつ撹拌されるので、撹拌片による剪断効果が高く、液体を良好に混合させることができる。
【0007】
また、上記多液混合装置において、前記撹拌空間のうち前記撹拌片が移動する領域が、撹拌室として区画されているものとすることができる。
この場合、撹拌室においては、撹拌片からの撹拌力を受けた液体が外部に逃げ難いので、効率良く撹拌することができる。
【0008】
また、上記多液混合装置において、前記筒状部材の内側には、前記攪拌片の回転方向と交差する方向に起立するブレード(回転交差ブレード(第1ブレード))が形成されているものとすることができる。
このようなブレードを設けることにより、従動側回転部材の回転により発生した液流れは外側(外周側、つまり筒状部材の内面側)に向かい、その結果、最も回転速度の高い攪拌片の外周とブレードとの間で剪断が発生して、効果的に液剤の分散が行われるようになる。また、回転動作をする攪拌片によって遠心力を生じる結果、混合液は攪拌片外側と内側との間に対流を生じ、当該対流循環の結果、混合液はブレードと攪拌片との間に発生する剪断を繰り返し受けることとなる。したがって、攪拌片の根元部分において液剤が滞る不具合が生じ難く、十分な攪拌を施すことが可能となる。また、本発明のように攪拌片とブレードとによって混合を実現する場合、その構造が簡便なため、洗浄が容易で、非常に実用性に優れたものとなる。
【0009】
また、上記多液混合装置において、前記ブレードと前記攪拌片との隙間が0.1mm以上とされているものとすることができる。
このようにブレードと攪拌片との隙間を0.1mm以上とすることで、ブレードとの間で攪拌片を安全に回転させることができ、混合液の対流を生じさせることができるようになる。なお、当該隙間は更に好ましくは0.3mm以上とすることができ、この場合、連続した回転を一層安定して行うことができる。
【0010】
又、上記多液混合装置において、前記筒状部材の内側には、前記従動側回転部材の周方向に沿って配され、前記液体の流通方向と交差する方向に起立するブレード(流通交差ブレード(第2ブレード))が形成されているものとすることができる。
攪拌片と筒状部材の内側との間には隙間を形成する必要があるが、その隙間の壁(筒状部材の内壁)に沿って液体が流通すると、当該液体が攪拌片による攪拌を受けずにすり抜けて流通してしまう場合がある。この場合、液体が十分に攪拌されないため、その混合性が低下する。しかしながら、上記のように従動側回転部材の周方向に沿って配され、液体の流通方向と交差する方向に起立する流通交差ブレード(第2ブレード)を設けることにより、筒状部材内の攪拌空間を流通する液体は当該ブレードによって内側に向かうこととなり、攪拌片によって確実に攪拌されることとなる。
また、上述した回転交差ブレード(第1ブレード)を設ける場合には、筒状部材の内壁から当該回転交差ブレード(第1ブレード)が起立する構成であるため、ブレードの高さ分だけ、筒状部材の内壁と攪拌片の外周との間に隙間ができることとなる。つまり、攪拌片から外側に液体をはじき出すための隙間が形成されるのである。このような隙間ができる場合には、上記のように隙間の壁に沿って液体が攪拌を受けずに流通してしまう不具合が一層生じ易くなる。従って、回転交差ブレード(第1ブレード)を設けた多液混合装置に、上述した流通交差ブレード(第2ブレード)を設けることが更に好ましいものとなる。
【0011】
また、前記流通交差ブレード(第2ブレード)は、前記攪拌空間内において、前記液体の流通方向に離間して少なくとも2箇所以上に配設されているものとすることができる。
このように複数の流通交差ブレード(第2ブレード)を離間して2箇所以上に設けることで、流通する液体を一層確実に攪拌片側に流し込むことが可能となる。これにより、一層確実に攪拌片と回転交差ブレード(第1ブレード)との間において液体を剪断し、両者を混合することが可能となる。また、このように複数箇所に配設することで、攪拌空間を複数段にわたって連設する必要もなく、装置ないし制御も簡便なものとなり得る。
【0012】
なお、前記流通交差ブレードと前記攪拌片との隙間は0.1mm以上とすることができる。このように流通交差ブレードと攪拌片との隙間を0.1mm以上とすることで、流通交差ブレードとの間で攪拌片を安全に回転させることができ、混合液の対流を生じさせることができるようになる。なお、当該隙間は更に好ましくは0.3mm以上とすることができ、この場合、連続した回転を一層安定して行うことができる。また、前記流通交差ブレードは、前記回転交差ブレードの頂部と同一高さまで起立してなり、前記流通交差ブレード及び前記回転交差ブレードの頂部が、それぞれ連設してなるものとすることができる。このような構成により、流通交差ブレード及び前記回転交差ブレードの双方により、液体を一層効果的に攪拌し、混合することが可能となる。さらに、前記流通交差ブレード及び前記回転交差ブレードは、筒状部材の内壁部を起立させた構成とすることができ、各ブレードを同一の部材により構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
簡便な構成で、混合性能に優れ、簡便に洗浄を行い得る多液混合装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図5を参照して説明する。本実施形態の多液混合装置100は、例えば水性塗装剤の一つであるウレタン系塗装剤を主剤(本発明の構成要件である液体)とし、疎水性イソシアネートを硬化剤(本発明の構成要件である液体)として、それぞれを所定の割合で混合するための装置であって、この多液混合装置100には、主剤と硬化剤がそれぞれ所定の流量ずつ供給されるようになっている。また、混合された主剤と硬化剤は、二液混合塗料として図示しない塗装ガンへ供給されるようになっている。
【0015】
図1に示すように、多液混合装置100は、筒状部材10と駆動ギヤ30(本発明の構成要件である駆動側回転部材)とロータ50(本発明の構成要件である従動側回転部材)とを備えて構成されている。
筒状部材10は、非磁性材料からなる円筒状の筒体11と、筒状の上部支持体12と、筒状の下部支持体13とからなる。筒体11は軸線を上下方向に向けており、筒体11の上面の開口部に上部支持体12が同心状に嵌合され、筒体11の下面の開口部に下部支持体13が同心状に嵌合されている。かかる筒状部材10は、上部ベース板40と下部ベース板41との間で上下に挟まれた状態で固定して支持されている。この筒状部材10の内部空間のうち概ね上半分領域は磁石収容空間14となっており、概ね下半分領域は撹拌空間15となっている。
【0016】
撹拌空間15内には、混合塗料の回転を剪断するためのブレード(回転交差ブレード)16が、図3及び図5にも示すように筒体11の内周面から起立して形成され、本実施形態では筒内径方向に対向する位置に2つのブレード16が形成されている。具体的には、ブレード16は筒体11に対して例えば溶接により付設された構成をなし、筒体11の内周面に、混合塗料の攪拌方向と交差する方向に起立するように配設されている。
【0017】
さらに、筒体11の下端面と下部支持体13との間には、図1に示すように、筒体11の軸線と直角な平板状をなす軸受板22が挟まれている。軸受板22には、その中心から偏心した位置であって周方向に間隔を空けた複数の切欠孔23が上下に貫通して形成されており、軸受板22の中心には軸受部24が形成されている。
【0018】
一方、図1に示すように、下部支持体13には流入側継手25a,25bが固着され、上部支持体12には軸線を上下方向に向けた筒状の流出側継手26が固着されている。流入側継手25a,25bに形成された流入口250a,250bには図示しない主剤供給源と図示しない硬化剤供給源が接続され、流出側継手26に形成された流出口26aには図示しない塗装ガンが接続されている。流入口250a,250bは下部支持体13を介して撹拌空間15に連通し、流出口26aは上部支持体12を介して撹拌空間15に連通している。流入口250a,250bから筒状部材10内に供給された主剤と硬化剤は、筒状部材10内を上方へ(筒状部材10の軸線とほぼ平行に)流れ、流出口26aから筒状部材10外へ流出するようになっている。
【0019】
上部支持体12の外周には、筒状部材10と同心の円筒形をなす非磁性材料からなる駆動ギヤ30が、ベアリング31により、上下方向(駆動ギヤ30の軸線方向)への相対移動を規制され、且つ筒状部材10と同軸の回転を許容された状態で支持されている。駆動ギヤ30は、円筒形のギヤ本体32と、同じく円筒形の磁石保持体33とをボルト34により一体回転可能に組み付けたものであり、磁石保持体33には、偶数の駆動側磁石35が、周方向に間隔を空け、且つ磁石保持体33の内周面にN極とS極が交互に並ぶように取り付けられている。これらの駆動側磁石35は、筒状部材10の筒体11の外周面に対して接近して対向しており、駆動ギヤ30が回転するのに伴い、これら複数の駆動側磁石35が筒体11の外周面に沿って回転移動するようになっている。
【0020】
上部ベース板40には、モータ64が固定されている。モータ64は出力軸を有し、その出力軸には出力ギヤ(図示略)が一体回転するように固着され、この出力ギヤが駆動ギヤ30に噛み合わされている。モータ64が回転すると、そのモータ64の回転力が出力ギヤを介して駆動ギヤ30に伝達され、駆動ギヤ30が回転駆動するようになっている。
【0021】
筒状部材10の内部空間には、ロータ50が収容されている。ロータ50は非磁性材料からなり、図4に示すように、略上半分領域が円形の磁石保持部51となっており、略下半分領域が概ね円形をなす撹拌機能部59となっている。磁石保持部51の外径は筒体11の内径よりも僅かに小さい寸法とされ(図2参照)、磁石保持部51には、その外周を凹ませた形態の保持空間52が駆動側磁石35と同じ数だけ形成されている。この複数の保持空間52には、駆動側磁石35と対応する複数の従動側磁石53が、外周面側にN極とS極が交互に並ぶように収容されている。なお、従動側磁石53は、保持空間52の開口部に取り付けたカバー54により主剤及び硬化剤と接触しないように覆い隠されている。
【0022】
撹拌機能部59は、磁石保持部51と同心であって小径部56よりも外径の小さい円柱状の支持脚部60と、この支持脚部60の外周に形成した複数の撹拌片61とからなる。支持脚部60の上端が磁石保持部51の小径部56の下端面に連なることで、撹拌機能部59と磁石保持部51とが一体的に回転するようになっている。支持脚部60の下端には、図1に示すように、ボール62が設けられている。撹拌片61は、一平面内に4本配され、当該4本で一組のものが、ロータ50の軸線方向(上下方向)に間隔を空けた4箇所に分けて配されている(図5参照)。その結果、合計16片の攪拌片61が配置されており、各撹拌片61は板状をなし、その板面は、支持脚部60の外周上において螺旋状をなすように斜めを向いている。換言すると、撹拌片61の板面は、支持脚部60の軸線方向に対して僅かに斜めに傾いている。
【0023】
また、上述した通り、筒体11の内周面にはブレード16が形成されているが、本実施形態では、当該ブレード16と攪拌片61との間には、隙間63が形成されている。この隙間63は0.1mm以上(更に好ましくは0.3mm以上)とされ、攪拌片61の回転がブレード16と接触することなく、当該攪拌片61の回転を滞りなく行うことが可能な隙間63とされている。なお、ブレード16は、上述した通り攪拌空間15内において混合塗料の回転を剪断するものであって、攪拌片61の回転方向に対して立設され、つまり当該回転方向に対して直角に起立する起立面16aを具備した構成となっている。
【0024】
かかるロータ50は、図1に示すように、ボール62を軸受部24の上面に当接させることにより、筒体11(筒状部材10)内において筒状部材10及び駆動ギヤ30と略同心の姿勢を保ちつつ筒体11と同軸状に自由回転し得るように支持されている。かかるロータ50の磁石保持部51(小径部56を含む)は、筒体11内の磁石収容空間14内に収容され、N極を外周側に向けている従動側磁石53は、S極を内周側に向けている駆動側磁石35に対して同じ高さで対応し、S極を外周側に向けている従動側磁石53は、N極を内周側に向けている駆動側磁石35に対して同じ高さで対応して配置されている。そして、これらの対応する駆動側磁石35と従動側磁石53との間に生じる径方向の磁気吸引力により、ロータ50が駆動ギヤ30と一体となって回転するようになっている。また、この磁気吸引力は周方向において等角度間隔で作用するので、ロータ50は傾くことなく筒体11と同心の姿勢を保つものとなっている。
【0025】
次に、本実施形態の作用を説明する。
主剤と硬化剤を混合する際には、まず、モータ64により駆動ギヤ30を回転させ、筒状部材10内でロータ50を回転させておき、この状態で、流入口250a,250bから筒状部材10の攪拌空間15内に主剤と硬化剤を供給する。供給された主剤と硬化剤は、それぞれ直に筒状部材10の撹拌空間15内に導かれ、当該筒状部材10の手前で両者が混合することのない構成となっている。
【0026】
攪拌空間15内においては、主剤と硬化剤の混合液は、攪拌片61によって回転され、その回転により攪拌される。この回転により発生した混合液の流れは外方(遠心方向)へ向かうが、筒体11の内周面には径方向に起立するブレード16が配されているため、最も回転速度の高い攪拌片61の外周とブレード16との間で剪断が生じ、混合液に対して一層効果的に攪拌を行うことが可能となっている。また、回転する攪拌片61によって遠心力が生じる結果、攪拌片61の外周部と攪拌片61の内周部との間において、混合液が対流し、外周部に対して本来攪拌を行い難い内周部(攪拌片61の根元部分)においても、十分な攪拌を行うことが可能とされている。
【0027】
そして、このように攪拌空間15で十分に攪拌混合された混合液は、磁石保持部51と筒体11との間に形成された隙間を流通し、流出口26aから筒状部材10(撹拌空間15)の外部へ(塗装ガンに向けて)流出される。
【0028】
以上のような本実施形態の多液混合装置100によれば、主剤と硬化剤を十分に撹拌して混合させることができる。特に、本実施形態のような互いに相溶性の低い水性主剤と疎水性硬化剤とを混合する場合にも、攪拌片61の回転とブレード16による剪断の作用により、高効率に攪拌混合を実現することができる。また、筒状部材10内における主剤と硬化剤の流速が遅い場合(単位時間当たりの流量が少ない場合)でも、駆動ギヤ30の回転速度、即ち撹拌片61の回転速度を高めることによって、一層攪拌性能を高めることができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、筒状部材10内に収容されているロータ50に回転力を伝える手段として、ロータ50に一体回転するように設けた伝達部材を筒状部材10の外部へ貫通させ、この伝達部材に回転力を付与する構造が考えられる。しかしながら、このように回転する伝達部材が筒状部材10を貫通する構造では、伝達部材の貫通部分の隙間に浸入した混合塗料が、高粘度化して固着し、そのために伝達部材とロータ50の回転に支障を来たすことが懸念される。その点、本実施形態では、ロータ50に回転力を付与する手段として、磁力を利用しているので、上記のような混合塗料の高粘度化に起因する回転不良を回避することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、ブレード16として筒体11に突起片を溶接により設けるものとしたが、例えば図6に示すように筒体の加工により一体形成することもできる。つまり、図6に示した筒体110は、当該筒体110の加工時にブレード160を突出形成するものである。この場合、ブレード160が有する起立面160aは、攪拌片61の回転方向に対して交差するものの、若干傾斜をもった滑らかな傾斜面とされている。その結果、ブレード160の付け根部分において混合液が滞留する不具合が生じ難く、当該付け根部分においても混合液を十分に攪拌することが可能な構成となる。
【0031】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2について、図7乃至図13を参照して説明する。実施形態2の多液混合装置200は、実施形態1と同様、例えば水性塗装剤の一つであるウレタン系塗装剤を主剤とし、疎水性イソシアネートを硬化剤として、それぞれを所定の割合で混合するための装置である。当該多液混合装置200は、実施形態1の多液混合装置100とは異なる構成の筒状部材210及びロータ250を備えており、その他の構成は実施形態1の多液混合装置100と略同様の構成のため、当該同様の構成部材については図7乃至図13において実施形態1と同一符号を付して説明を省略するものとする。
【0032】
図7に示すように、多液混合装置200を構成する筒状部材210は、非磁性材料からなる円筒状の筒体211と、筒状の上部支持体12と、筒状の下部支持体13とからなる。筒体211は軸線を上下方向に向けており、筒体211の上面の開口部に上部支持体12が同心状に嵌合され、筒体211の下面の開口部に下部支持体13が同心状に嵌合されている。かかる筒状部材210は、上部ベース板40と下部ベース板41との間で上下に挟まれた状態で固定して支持されている。この筒状部材210の内部空間のうち概ね上半分領域は磁石収容空間214となっており、概ね下半分領域は撹拌空間215となっている。
【0033】
撹拌空間215内には、図8及び図9に示すように、3枚の区画板216と2つのスペーサ220が上下方向に交互に重ねられて設けられている。区画板216は、筒体211の軸線と直角な円板状をなし、筒体211の内周に径方向及び周方向のガタ付きなく嵌合されて固定されている。スペーサ220は、円筒状をなし、筒体211の内周に径方向のガタ付きなく嵌合されて固定されている。区画板216には、周方向に等角度間隔を空けた円形をなす4つの流通孔217と、区画板216と同心円形をなすとともに4つの流通孔217と連通する中心孔218とが上下に貫通して形成されている。また、区画板216のうち流通孔217及び中心孔218以外の4つの残留領域は、楔状(略三角形状)をなす遮断部219となっている。3つの区画板216はスペーサ220により上下に間隔を空けるように位置決めされている。また、3つの区画板216は、周方向において流通孔217同士が同じ位置となるように、換言すると流通孔217同士が上下に重なるように配置されている。流通孔217においては、筒体211内に流入した主剤と硬化剤が流通するようになっている。また、遮断部219においては、主剤及び硬化剤の流通が遮られるようになっている。そして撹拌空間215内には、この3つの区画板216により筒状部材210の回転軸方向に区画された2室の撹拌室221が、スペーサ220と同じ高さに設けられている。
【0034】
さらに、図7に示すように、筒体211の下端面と下部支持体13との間には、筒体211の軸線と直角な平板状をなす軸受板22が挟まれている。軸受板22には、その中心から偏心した位置であって周方向に間隔を空けた複数の切欠孔23が上下に貫通して形成されており、軸受板22の中心には軸受部24が形成されている。
【0035】
下部支持体13には、流入側継手25a,25bが固着され、上部支持体12には、軸線を上下方向に向けた筒状の流出側継手26が固着されている。流入側継手25a,25bに形成された流入口250a,250bには図示しない主剤供給源と図示しない硬化剤供給源が接続され、流出側継手26に形成された流出口26aには図示しない塗装ガンが接続されている。流入口250a,250bは下部支持体13を介して撹拌空間215に連通し、流出口26aは上部支持体12を介して撹拌空間215に連通している。流入口250a,250bから筒状部材210内に供給された主剤と硬化剤は、筒状部材210内を上方へ(筒状部材210の軸線とほぼ平行に)流れ、流出口26aから筒状部材210外へ流出するようになっている。
【0036】
筒状部材210の内部空間には、図10乃至図13に示すようなロータ250が収容されている。ロータ250は、非磁性材料からなり、図10及び図11に示すように略上半分領域が円形の磁石保持部251となっており、略下半分領域が概ね円形をなす撹拌機能部259となっている。磁石保持部251の外径は筒体211の内径よりも僅かに小さい寸法とされ、磁石保持部251には、その外周を凹ませた形態の保持空間252が駆動側磁石35と同じ数だけ形成されている。この複数の保持空間252には、駆動側磁石235と対応する複数の従動側磁石253が、外周面側にN極とS極が交互に並ぶように収容されている。なお、従動側磁石253は、保持空間252の開口部に取り付けたカバー254により主剤及び硬化剤と接触しないように覆い隠されている。
【0037】
磁石保持部251内には、図11に示すように、磁石保持部251と同心の円形であって磁石保持部251の上端面に開口する導入孔255が形成されている。磁石保持部251の下端部は、外径を同心状に小さくした小径部256となっている。この小径部256には、その外周面から中心に向かって径方向に穿孔した形態の4つの連通孔257が形成されており、各連通孔257は、小径部256の中心において導入孔255の下端と連通している。また、磁石保持部251の上端面には、導入孔255を包囲するように4枚の平板状をなす、羽根板258が上方へ突出するように形成されている。各羽根板258の板面は、概ね径方向に沿っているため、ロータ250が回転すると羽根板258がその板面と略直角に回転移動するようになっている。
【0038】
撹拌機能部259は、磁石保持部251と同心であって小径部256よりも外径の小さい円柱状の支持脚部260と、この支持脚部260の外周に形成した複数の撹拌片261とからなる。支持脚部260の上端が磁石保持部251の小径部256の下端面に連なることで、撹拌機能部259と磁石保持部251とが一体的に回転するようになっている。支持脚部260の下端には、ボール262が、その略上半分領域を埋設する形態で固着されている。撹拌片261は、ロータ250の軸線方向(上下方向)に間隔を空けた2箇所に分けて合計8片配置されており、上側の4片の撹拌片261は周方向に等角度間隔を空けて配置され、下側の4片の撹拌片261も周方向に等角度間隔を空けて配置されている。また、各撹拌片261は平板状をなしているが、その板面は、支持脚部260の外周上において螺旋状をなすように斜めを向いている。換言すると、撹拌片261の板面は、支持脚部260の軸線方向に対して僅かに斜めに傾いている。
【0039】
かかるロータ250は、図7に示すようにボール262を軸受部24の上面に当接させることにより、筒体211(筒状部材210)内において筒状部材210及び駆動ギヤ30と略同心の姿勢を保ちつつ筒体211と同軸状に自由回転し得るように支持されている。かかるロータ250の磁石保持部251(小径部256を含む)は、筒体211内の磁石収容空間14内に収容され、N極を外周側に向けている従動側磁石253は、S極を内周側に向けている駆動側磁石35に対して同じ高さで配置され、S極を外周側に向けている従動側磁石253は、N極を内周側に向けている駆動側磁石35に対して同じ高さで配置されている。そして、対となる駆動側磁石35と従動側磁石253との間に生じる径方向の磁気吸引力により、ロータ250が駆動ギヤ30と一体となって回転するようになっている。また、この磁気吸引力は周方向において等角度間隔で作用するので、ロータ250は傾くことなく筒体211と同心の姿勢を保つ。
【0040】
一方、撹拌機能部259は、撹拌空間215内に収容され、支持脚部260は、3つの中心孔218を貫くように位置している。上段側の撹拌片261は、上側のスペーサ220と対応する高さ(最も上の区画板216と中央高さの区画板216との間の高さ)の撹拌室221内に水平方向に回転し得るように収容され、下段側の撹拌片261は、下側のスペーサ220と対応する高さ(中央高さの区画板216と最も下の区画板216との間の高さ)の撹拌室221内に水平方向に回転し得るように収容されている。この状態では、撹拌片261よりも上側(主剤及び硬化剤の流れ方向における上流となる側)の近傍位置に、主剤及び硬化剤の流通を許容する流通孔217と、主剤及び硬化剤の流通を遮断する遮断部219とが周方向に隣り合うように位置していることになる。
【0041】
次に、実施形態2の作用を説明する。
主剤と硬化剤を混合する際には、まず、モータ64により駆動ギヤ30を回転させ、筒状部材210内でロータ250を回転させておき、この状態で、流入口250a,250bから筒状部材210の攪拌空間215内に主剤と硬化剤を供給する。供給された主剤と硬化剤は、それぞれ直に筒状部材210の攪拌空間215内に導かれ、当該筒状部材210の手前で両者が混合することのない構成となっている。
【0042】
主剤と硬化剤が撹拌室221を通過する間、主剤と硬化剤が流れる方向(筒状部材210の軸線と平行な方向)に対してほぼ直角な水平方向に回転移動している複数の撹拌片261が、主剤と硬化剤の流れをほぼ直角に横切る。これにより、主剤と硬化剤は、撹拌片261により剪断されるように撹拌され、所定の比率で混合されて混合塗料となる。
【0043】
また、撹拌空間215内には、主剤と硬化剤の流通を許容する流通孔217と、主剤と硬化剤の流通を遮断する遮断部219とが周方向に隣り合うように設けられている。これにより、主剤と硬化剤は、流通孔217内を流れる間に概ね層流状となり、流通孔217を通過した直後に、撹拌片261によって流れをほぼ直角に横切るように剪断されつつ撹拌されるので、撹拌片261による剪断効果が高く、主剤と硬化剤が良好に混合される。
【0044】
しかも、撹拌片261が回転移動する領域は、撹拌室221として外部から区画されているので、撹拌室221においては、撹拌片261からの撹拌力を受けた主剤と硬化剤が撹拌室221の外部に逃げ難くなっている。これにより、主剤と硬化剤を効率良く撹拌することができる。
そして、このように攪拌空間215で十分に攪拌混合された混合液は、磁石保持部251と筒体211との間に形成された隙間を流通し、流出口26aから筒状部材210(撹拌空間215)の外部へ(塗装ガンに向けて)流出される。
【0045】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3について、図14乃至図18を参照して説明する。実施形態3の多液混合装置300は、実施形態1と同様、例えば水性塗装剤の一つであるウレタン系塗装剤を主剤とし、疎水性イソシアネートを硬化剤として、それぞれを所定の割合で混合するための装置である。当該多液混合装置300は、実施形態1の多液混合装置100とは異なる構成の筒状部材310及びロータ350を備えており、その他の構成は実施形態1の多液混合装置100と略同様の構成のため、当該同様の構成部材については図14乃至図18において実施形態1と同一符号を付して、その構成の説明を省略するものとする。
【0046】
図14に示すように、多液混合装置300は、筒状部材310と駆動ギヤ30とロータ350とを備えて構成されている。筒状部材310は、非磁性材料からなる円筒状の筒体311と、筒状の上部支持体12と、筒状の下部支持体13とからなる。筒体311は軸線を上下方向に向けており、筒体311の上面の開口部に上部支持体12が同心状に嵌合され、筒体311の下面の開口部に下部支持体13が同心状に嵌合されている。かかる筒状部材310は、上部ベース板40と下部ベース板41との間で上下に挟まれた状態で固定して支持されている。この筒状部材310の内部空間のうち概ね上半分領域は磁石収容空間314となっており、概ね下半分領域は撹拌空間315となっている。
【0047】
撹拌空間315内には、混合塗料の回転を剪断するための第1ブレード(回転交差ブレード)316が、図15乃至図17にも示すように筒体311の内周面から起立して形成され、本実施形態では筒内径方向に対向する位置に2つの第1ブレード316,316が形成されている。具体的には、第1ブレード316は筒体311に対して例えば溶接等により付設され、或いは筒体311から起立する形で当該筒体311と同一成形により同一部材で形成された構成をなし、筒体311の内周面に、混合塗料の攪拌方向と交差する方向に起立する形で、且つ液体の流通方向(図示上下方向)に沿って延在する形で配設されている。
【0048】
また、攪拌空間315内には、筒状部材310における筒体311の内壁面に沿って流通する混合塗料を、筒体311の内壁面側から中心軸側(つまり攪拌片316側)に流れ込ませるための第2ブレード(流通交差ブレード)370が、ロータ350の周方向(回転方向)に沿って、ここでは周方向に連続して配設されている。具体的には、複数(ここでは2つ)の第2ブレード370a,370bが、混合塗料の流通方向(図示上下方向)に離間して形成され、それぞれ筒体311に対して例えば溶接等により付設され、或いは筒体311から起立する形で当該筒体311と同一成形により同一部材で形成された構成をなし、筒体311の内周面に混合塗料の流通方向(図示上下方向)と交差する方向に起立する形で配設されている。言い換えると、第2ブレード370(370a,370b)は、筒体311の内壁面の一部を縮径方向に絞り込んだ構成とされている。さらに、筒体311の下端面と下部支持体13との間には、図14に示すように、筒体311の軸線と直角な平板状をなす軸受板22が挟まれている。軸受板22には、その中心から偏心した位置であって周方向に間隔を空けた複数の切欠孔23が上下に貫通して形成されており、軸受板22の中心には軸受部24が形成されている。
【0049】
下部支持体13には流入側継手25a,25bが固着され、上部支持体12には、軸線を上下方向に向けた筒状の流出側継手26が固着されている。流入側継手25a,25bに形成された流入口250a,250bには図示しない主剤供給源と図示しない硬化剤供給源が接続され、流出側継手26に形成された流出口26aには図示しない塗装ガンが接続されている。流入口250a,250bは下部支持体13を介して撹拌空間315に連通し、流出口26aは上部支持体12を介して撹拌空間315に連通している。流入口250a,250bから筒状部材310内に供給された主剤と硬化剤は、筒状部材310内を上方へ(筒状部材310の軸線とほぼ平行に)流れ、流出口26aから筒状部材310外へ流出するようになっている。
【0050】
上部支持体12の外周には、筒状部材310と同心の円筒形をなす非磁性材料からなる駆動ギヤ30が、ベアリング31により、上下方向(駆動ギヤ30の軸線方向)への相対移動を規制され、且つ筒状部材310と同軸の回転を許容された状態で支持されている。駆動ギヤ30は、円筒形のギヤ本体32と、同じく円筒形の磁石保持体33とをボルト34により一体回転可能に組み付けたものであり、磁石保持体33には、偶数の駆動側磁石35が、周方向に間隔を空け、且つ磁石保持体33の内周面にN極とS極が交互に並ぶように取り付けられている。これらの駆動側磁石35は、筒状部材310の筒体311の外周面に対して接近して対向しており、駆動ギヤ30が回転するのに伴い、これら複数の駆動側磁石35が筒体311の外周面に沿って回転移動するようになっている。
【0051】
上部ベース板40には、モータ64が固定されている。モータ64は出力軸を有し、その出力軸には出力ギヤ(図示略)が一体回転するように固着され、この出力ギヤが駆動ギヤ30に噛み合わされている。モータ64が回転すると、そのモータ64の回転力が出力ギヤを介して駆動ギヤ30に伝達され、駆動ギヤ30が回転駆動するようになっている。
【0052】
筒状部材310の内部空間には、ロータ350が収容されている。ロータ350は非磁性材料からなり、図15にも示すように、略上半分領域が円形の磁石保持部351となっており、略下半分領域が概ね円形をなす撹拌機能部359となっている。磁石保持部351の外径は筒体311の内径よりも僅かに小さい寸法とされ、磁石保持部351には、その外周を凹ませた形態の保持空間352が駆動側磁石35と同じ数だけ形成されている。この複数の保持空間352には、駆動側磁石35と対応する複数の従動側磁石353が、外周面側にN極とS極が交互に並ぶように収容されている。なお、従動側磁石353は、保持空間352の開口部に取り付けたカバー354により主剤及び硬化剤と接触しないように覆い隠されている。
【0053】
撹拌機能部359は、磁石保持部351と同心の円柱状の支持脚部360と、この支持脚部360の外周に形成した複数の撹拌片361とからなる。支持脚部360の上端が磁石保持部351の下端面に連なることで、撹拌機能部359と磁石保持部351とが一体的に回転するようになっている。支持脚部360の下端には、図14に示すように、ボール362が設けられている。撹拌片361は、一平面内に4本配され、当該4本で一組のものが、ロータ350の軸線方向(上下方向)に間隔を空けた4箇所に分けて配されている。その結果、合計16片の攪拌片361が配置されており、各撹拌片361は板状をなし、その板面は、支持脚部360の外周上において螺旋状をなすように斜めを向いている。換言すると、撹拌片361の板面は、支持脚部360の軸線方向に対して僅かに斜めに傾いている。
【0054】
また、上述した通り、筒体311の内周面には第1ブレード316及び第2ブレード370が形成されているが、当該第1ブレード316及び第2ブレード370と攪拌片61との間には、図17及び図18に示すように隙間363,373が形成されている。この隙間363,373は0.1mm以上(更に好ましくは0.3mm以上)とされ、攪拌片361の回転が第1ブレード316及び第2ブレード370と接触することなく、当該攪拌片361の回転を滞りなく行うことが可能な大きさの隙間363,373とされている。なお、上述した通り、第1ブレード316は、攪拌空間315内において混合塗料の回転を剪断するものであって、攪拌片361の回転方向に対して立設され、つまり当該回転方向に対して起立する起立面316aを具備した構成となっている。また、第2ブレード370は、攪拌空間15内において混合塗料を攪拌片361側に流し込むものであって、混合塗料の流通方向に対して立設され、つまり当該流通方向に対して起立する起立面71(図15参照)を具備した構成となっている。なお、第2ブレード370の頂部(内周部)70は、第1ブレード316の頂部(内周部)316bと同一高さまで起立してなるものとされ、つまり第2ブレード370の頂部70と第1ブレード316の頂部316bとがそれぞれ面一となる内周面を有し、それぞれが連設した形で構成されている。また、第2ブレード370が有する起立面71は混合塗料の流通方向に対して交差するものの、若干傾斜をもった傾斜面とされている。その結果、第2ブレード370の付け根部分において混合塗料が滞留する不具合が生じ難く、当該付け根部分においても混合塗料を十分に攪拌することが可能な構成とされている。
【0055】
次に、本実施形態の作用を説明する。
主剤と硬化剤を混合する際には、まず、モータ64により駆動ギヤ30を回転させ、筒状部材310内でロータ350を回転させておき、この状態で、流入口250a,250bから筒状部材310の攪拌空間315に主剤と硬化剤を供給する。供給された主剤と硬化剤は、それぞれ直に筒状部材310の撹拌空間315内に導かれ、当該筒状部材310の手前で両者が混合することのない構成となっている。
【0056】
攪拌空間315内においては、主剤と硬化剤の混合液は、攪拌片361によって回転され、その回転により攪拌される。この回転により発生した混合液の流れは外方(遠心方向)へ向かうが、筒体311の内周面には径方向に起立する第1ブレード316が配されているため、最も回転速度の高い攪拌片361の外周と第1ブレード316との間で剪断が生じ、混合液に対して一層効果的に攪拌を行うことが可能となっている。また、回転する攪拌片361によって遠心力が生じる結果、攪拌片361の外周部と攪拌片361の内周部との間において、混合液が対流し、外周部に対して本来攪拌を行い難い内周部(攪拌片361の根元部分)においても、十分な攪拌を行うことが可能とされている。
【0057】
また、筒状部材310の内側には、筒体311の内周面に沿って、混合塗料の流通方向と交差する方向に起立する第2ブレード370が配されているため、筒状部材310内の攪拌空間315を流通する混合塗料は第2ブレード370によって内側に向かうこととなり、攪拌片361によって確実に攪拌されることとなる。攪拌片361と筒状部材310の内側との間には、攪拌片361を確実に回転させるために隙間を形成する必要があるが、その隙間の壁(筒状部材310の内壁)に沿って混合塗料が流通すると、当該混合塗料が攪拌片361による攪拌を受けずにすり抜けて流通してしまう場合がある。この場合、液体が十分に攪拌されないため、その混合性が低下する。しかしながら、本実施形態では第2ブレード370を形成することで、そのような筒体311の内壁に沿った混合塗料のすり抜けを防止でき、つまり混合塗料を筒体311の内壁から筒状部材310の中心軸側(つまり攪拌片361ないし支持脚部360側)に流し込むものとしており、それにより混合塗料が攪拌されずに攪拌空間315内を流通してしまう不具合発生を防止している。
【0058】
特に、本実施形態のように混合塗料の流通方向に沿って延在する第1ブレード316を設ける場合には、筒状部材310の筒体311の内壁から第1ブレード316が起立する構成であるため、当該第1ブレード316の高さ分だけ、筒体311の内壁(第1ブレード形成部分以外の箇所)と攪拌片316の外周との間に隙間(空間)ができることとなる。つまり、攪拌片316から外側に混合塗料をはじき出すための隙間(空間)が形成されるのである。このような隙間(空間)が形成される場合には、その隙間(空間)の壁(内壁)に沿って混合塗料が攪拌を受けずに流通してしまう不具合が一層生じ易くなる。従って、本実施形態のように第1ブレード316を設けた構成に、第2ブレード370を組み合わせて設けることが一層好ましいものとなる。
【0059】
このような第1ブレード316及び第2ブレード370を有した攪拌空間15で十分に攪拌混合された混合塗料は、流出口26aから筒状部材310(撹拌空間315)の外部へ(塗装ガンに向けて)流出される。
【0060】
以上のような本実施形態の多液混合装置300によれば、主剤と硬化剤を十分に撹拌して混合させることができる。特に、本実施形態のような互いに相溶性の低い水性主剤と疎水性硬化剤とを混合する場合にも、攪拌片361の回転とブレード316による剪断の作用により、高効率に攪拌混合を実現することができる。また、筒状部材310内における主剤と硬化剤の流速が遅い場合(単位時間当たりの流量が少ない場合)でも、駆動ギヤ30の回転速度、即ち撹拌片361の回転速度を高めることによって、一層攪拌性能を高めることができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、筒状部材310内に収容されているロータ350に回転力を伝える手段として、ロータ350に一体回転するように設けた伝達部材を筒状部材310の外部へ貫通させ、この伝達部材に回転力を付与する構造が考えられる。しかしながら、このように回転する伝達部材が筒状部材310を貫通する構造では、伝達部材の貫通部分の隙間に浸入した混合塗料が、高粘度化して固着し、そのために伝達部材とロータ350の回転に支障を来たすことが懸念される。その点、本実施形態では、ロータ350に回転力を付与する手段として、磁力を利用しているので、上記のような混合塗料の高粘度化に起因する回転不良を回避することができる。
【0062】
なお、第1ブレード316及び第2ブレード370の構成として、例えば図19及び図20に示すように筒体の加工により一体形成することもできる。つまり、図19及び図20に示した筒体411は、当該筒体411の加工時にブレード形成用の金型を利用して第1ブレード(回転交差ブレード)460及び第2ブレード(流通交差ブレード)470を突出形成するものである。なお、この場合、ブレード460が有する起立面460a及び第2ブレード470が有する起立面(図15及び図16参照)は、若干傾斜をもった滑らかな傾斜面とされている。その結果、第1ブレード460及び第2ブレード470の付け根部分において混合液が滞留する不具合が生じ難く、当該付け根部分においても混合液を十分に攪拌することが可能な構成となる。
【0063】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態1では、第1ブレードを筒体の内周面に2つ対角する形で設けたが、1つ若しくは3つ以上設けることもできるし、必ずしも対角位置に設けることに限られない。
【0064】
(2)上記実施形態2では、撹拌片よりも上流側近傍位置に、液体の流通を許容する流通孔と、液体の流通を遮断する遮断部とを周方向に隣り合うように設け、流通孔内を概ね層流状に流れた液体が流通孔を通過した直後に、撹拌片が概ね層流状の液体を横切るようにしたが、本発明によれば、このような流通孔と遮断部を設けない構成としてもよい。
(3)上記実施形態2では、撹拌片を液体の流通方向に間隔を空けて複数設けたが、本発明によれば、撹拌片は、液体の流通方向における1箇所のみに設けてもよい。
(4)上記実施形態2では、複数の撹拌片と複数の遮断部(流通孔)を液体の流通方向において交互に配置したが、本発明によれば、撹拌片と遮断部(流通孔)のうち少なくともいずれか一方は1つだけとしてもよい。
(5)上記実施形態2では、撹拌片を従動側回転部材の外周面に設けたが、本発明によれば、従動側回転部材を筒状にしてその内周に撹拌片を設けてもよい。
(6)上記実施形態2では、流通孔と遮断部の数を4つずつしたが、本発明によれば、これらの数は、3つ以下でもよく、5つ以上でもよい。
【0065】
(7)上記実施形態1、2、3では、2種類の液体を所定量ずつ流入させるようにしたが、本発明によれば、2種類の液体を所定の割合で混在させたものを流量させてもよい。
(8)上記実施形態1、2、3では、2種類の液体を混合する場合について説明したが、本発明によれば、混合する液体の種類は3種類以上であってもよい。
(9)上記実施形態1、2、3では、混合によって得られる混合液体が塗料である場合について説明したが、本発明は、塗料以外の混合液体にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態1の多液混合装置を示す縦断面図
【図2】筒状部材を構成する筒体とロータの縦断面図
【図3】筒体の縦断面図
【図4】ロータの全体構成を示す部分切欠断面図
【図5】筒体と攪拌片の関係を示す軸断面図
【図6】変形例の筒体と攪拌片の関係を示す断面図
【図7】実施形態2の多液混合装置を示す縦断面図
【図8】筒状部材を構成する筒体の縦断面図
【図9】筒体の平面図
【図10】ロータの正面図
【図11】ロータの縦断面図
【図12】ロータの平面図
【図13】ロータの底面図
【図14】実施形態3の多液混合装置を示す縦断面図
【図15】筒状部材を構成する筒体とロータの縦断面図
【図16】筒体の縦断面図
【図17】図15におけるA−A’断面図
【図18】図15におけるB−B’断面図
【図19】ブレードの一変形例を示す断面図
【図20】ブレードの一変形例を示す断面図
【符号の説明】
【0067】
100,200,300…多液混合装置、10,210,310…筒状部材、15,215,315…撹拌空間、16,316…ブレード(第1ブレード,回転交差ブレード)、30…駆動側回転部材(駆動ギヤ)、35…駆動側磁石、50,250,350…従動側回転部材(ロータ)、53,253,353…従動側磁石、61,261,361…撹拌片、217…流通孔、219…遮断部、221…撹拌室、370…ブレード(第2ブレード,流通交差ブレード)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数種類の液体を一方向に流通させるための撹拌空間が設けられている筒状部材と、
駆動側磁石を有し、前記撹拌空間内における前記液体の流通方向と略平行な軸を中心として前記筒状部材の外周に沿って回転駆動する駆動側回転部材と、
従動側磁石と撹拌片とを有し、前記駆動側回転部材と略同軸に回転し得るように前記筒状部材内に設けられた従動側回転部材とを備え、
前記駆動側磁石と前記従動側磁石との間の磁気吸引力により、前記従動側回転部材が前記駆動側回転部材と一体となって回転することで、前記撹拌片が前記撹拌空間内で前記液体の流通方向と交差する方向に回転するようになっていることを特徴とする多液混合装置。
【請求項2】
前記筒状部材の内側には、前記攪拌片の回転方向と交差する方向に起立する回転交差ブレードが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多液混合装置。
【請求項3】
前記回転交差ブレードと前記攪拌片との隙間が0.1mm以上とされていることを特徴とする請求項2に記載の多液混合装置。
【請求項4】
前記筒状部材の内側には、前記従動側回転部材の周方向に沿って配され、前記液体の流通方向と交差する方向に起立する流通交差ブレードが形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の多液混合装置。
【請求項5】
前記流通交差ブレードは、前記攪拌空間内において、前記液体の流通方向に離間して少なくとも2箇所以上に配設されていることを特徴とする請求項4に記載の多液混合装置。
【請求項6】
前記流通交差ブレードと前記攪拌片との隙間が0.1mm以上とされていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の多液混合装置。
【請求項7】
前記流通交差ブレードは、前記回転交差ブレードの頂部と同一高さまで起立してなり、
前記流通交差ブレード及び前記回転交差ブレードの頂部が、それぞれ連設してなることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の多液混合装置。
【請求項8】
前記撹拌空間内における前記撹拌片よりも上流側近傍位置には、前記液体の流通を許容する流通孔と、前記液体の流通を遮断する遮断部とが周方向に隣り合うように設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の多液混合装置。
【請求項9】
前記撹拌空間のうち前記撹拌片が移動する領域が、撹拌室として外部から区画されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の多液混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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