多相交流発電装置
【課題】 簡単な回路構成によって多相交流発電機の電圧や周波数変動の応答性に優れ、リップルを低減することのできる多相交流発電装置を提供するものである。
【解決手段】 多相交流発電機と、電圧制御装置を備えてなる多相交流発電装置において、多相交流発電機は、多相を独立させた相ごとに交流電圧を出力する構成であり、電圧制御装置は、独立する相ごとに独立して接続され、各相に対応する2乗波形回路を備え、2乗波形回路は、単相ブリッジ整流回路と、降圧チョッパ回路と、デューティ制御発振回路を備え、デューティ制御発振回路は、降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティが入力瞬時電圧に比例するように制御する多相交流発電装置に関する。
【解決手段】 多相交流発電機と、電圧制御装置を備えてなる多相交流発電装置において、多相交流発電機は、多相を独立させた相ごとに交流電圧を出力する構成であり、電圧制御装置は、独立する相ごとに独立して接続され、各相に対応する2乗波形回路を備え、2乗波形回路は、単相ブリッジ整流回路と、降圧チョッパ回路と、デューティ制御発振回路を備え、デューティ制御発振回路は、降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティが入力瞬時電圧に比例するように制御する多相交流発電装置に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相交流発電装置に関し、詳しくは、多相交流発電機と電圧制御装置で構成され、低リップルの出力電圧を得ることのできる多相交流発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、三相交流発電機において、Δ結線やY結線された三相の出力は三相ブリッジ整流回路によって直流に変換される。この三相ブリッジ整流回路に負荷を接続すると、交流発電機の回転トルクが変動するため、交流発電機の振動や騒音の発生原因となる。
【0003】
詳細に説明すると、三相ブリッジ整流回路は、位相差(2π/3)のある三相交流電力(正弦波)が入力されると、瞬時電圧が最大の相だけをT/6(T:周期)ずつ切替えて出力する。このため、三相ブリッジ整流回路は、正弦波の山の部分のみを繰返し出力するので、出力電圧にリップル(変動成分)が発生する。このように出力電圧が変動すると、出力、入力(機械的パワー=回転速度×回転トルク)が変動するため、トルク変動によって機械的振動が発生する。
【0004】
リップルを低減する技術として、平滑回路(コンデンサ、コイル等)を用いる技術がある。この平滑回路では、出力電圧のリップルを低減できるものの、コンデンサにピーク電圧時のエネルギーを蓄えて低電圧時に放出するため、入力電流のリップルはかえって増加し、入力パワー(回転速度×回転トルク)の変動が大きくなる。すなわち、出力特性は良くなるが入力特性は悪くなり、トルク変動が大きくなるため交流発電機の振動や騒音が増加する。
【0005】
入力特性の改善は、従来から高効率コンバータ回路を用いて、各相の電源電流が力率1の正弦波(電圧に比例した電流波形)になるように制御する方法がある。この制御により、三相全体の入力パワー(機械的な入力に相当する回転速度×回転トルクの値)が一定になるようにする。この高効率コンバータ回路を用いることで、交流発電機の振動や騒音の発生を解決できる。
しかし、高効率コンバータ回路は、回路構成が複雑であり、交流発電機の電圧や周波数変動の応答性にも限度がある。
【0006】
簡単な回路構成によって、リップルの低減(振動、騒音防止)及び交流発電機の電圧や周波数変動の応答性の改善を図る技術の一例として、三相交流発電機の各相を6線で取出して簡単な制御回路によって、リップル低減や電圧や周波数変動の応答性を改善する技術が考えられる。
【0007】
これに関連する技術として、特許文献1に開示する技術は、三相交流発電機の各相(A相コイル、B相コイル及びC相コイル)を6線で独立に取り出し、各相を単相Hブリッジ整流回路(全波整流回路)に夫々接続した技術である。
【0008】
この特許文献1に開示する技術は、単相Hブリッジ整流回路(トランジスタ制御端子)に出力信号を供給する回生制御信号生成部を備えており、この回生制御信号生成部は、A〜C相センサ出力に基づいて、各整流回路(トランジスタ制御端子)に供給する出力信号を「Hレベル」又は「Lレベル」に調整している。
【0009】
しかし、特許文献1に開示する技術では、「Hレベル」区間をセンサ出力波形のピークを中心とする対称な区間に設定することで、A相〜B相コイルから電力を効率よく回収するもので、リップルを減少することを主目的とするものでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−92789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題に鑑み、簡単な回路構成によって多相交流発電機の電圧や周波数変動の応答性に優れ、リップルを低減することができ、各相の電源電流が力率1の正弦波になるように制御し、三相全体の入力パワーが一定になるようにすることで多相交流発電機の振動や騒音を低減できる、多相交流発電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、多相交流発電機と、前記多相交流発電機の交流電圧を直流電圧に変換して出力する電圧制御装置を備えてなる多相交流発電装置において、前記多相交流発電機は、多相を相ごとに独立させて、該独立させた相ごとに交流電圧を出力する構成であり、前記電圧制御装置は、独立する各相ごとに独立して接続され、各相に対応する2乗(電圧)波形回路を備え、前記2乗波形回路は、前記対応相に接続され、該相の交流電圧を整流する単相ブリッジ整流回路と、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、該単相ブリッジ整流回路から入力される入力電圧波形を変換して出力電圧波形を出力する降圧チョッパ回路と、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比を制御するデューティ制御発振回路を備え、前記デューティ制御発振回路は、前記単相ブリッジ整流回路から前記降圧チョッパ回路に入力される入力瞬時電圧を監視し、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比が前記入力瞬時電圧に比例するように制御するものであり、前記各相の2乗波形回路は、降圧チョッパ回路の出力側で直列接続されていることを特徴とする多相交流発電装置に関する。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記2乗波形回路は、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記デューティ制御発振回路及び前記降圧チョッパ回路に電源を供給する電源回路を有していることを特徴とする請求項1に記載の多相交流発電装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、多相交流発電機と、前記多相交流発電機の交流電圧を直流電圧に変換して出力する電圧制御装置を備えてなる多相交流発電装置において、前記多相交流発電機は、多相を相ごとに独立させて、該独立させた相ごとに交流電圧を出力する構成であり、前記電圧制御装置は、独立する各相ごとに独立して接続され、各相に対応する2乗波形回路を備え、前記2乗波形回路は、前記対応相に接続され、該相の交流電圧を整流する単相ブリッジ整流回路と、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、該単相ブリッジ整流回路から入力される入力電圧波形を変換して出力電圧波形を出力する降圧チョッパ回路と、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比を制御するデューティ制御発振回路を備え、前記デューティ制御発振回路は、前記単相ブリッジ整流回路から前記降圧チョッパ回路に入力される入力瞬時電圧を監視し、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比が前記入力瞬時電圧に比例するように制御するものであり、前記各相の2乗波形回路は、降圧チョッパ回路の出力側で直列接続されているので、各相の正弦波形を、単相ブリッジ整流回路で整流して『蒲鉾形の脈動波形:入力瞬時電圧』とし、この『蒲鉾形の脈動波形』をデューティ制御発振回路で監視して、この監視に基づいて降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比を制御する。
デューティ制御発振回路は、降圧チョッパ回路の半導体スッチに与えるデューティ比が入力瞬時電圧に比例するように制御することで、上記蒲鉾形の脈動波形を2乗正弦波形(又は2倍角の余弦波形)にする。
デューティ制御発振回路は分圧回路、可変利得増幅回路、ピーク電圧検出回路、および電圧−パルス幅変換発振回路から構成される。分圧回路は高電圧の入力信号を分圧することにより入力電圧に比例した小電圧の信号電圧を生成する。利得可変増幅回路は利得調整信号によって電圧利得(増幅率)を任意に設定して信号電圧を増幅する。ピーク電圧検出回路は『蒲鉾形の脈動波形』である信号電圧の極大値を監視して、極大値に比例した信号電圧を発生する。電圧−パルス幅変換発振回路は周波数が一定でパルス幅を信号電圧に比例させることにより、信号電圧に比例したデューティ比を持つ矩形波パルス信号を発生する。
ここでデューティ比は1(100%)を越えることがないため、パルス幅は発振の周期より長くすることはできない。そこでデューティ比が1となるために必要な入力信号電圧を信号電圧の最大値と定め、入力信号の極大値(ピーク電圧)が最大を越えないように可変利得増幅回路の利得を調整する。可変利得増幅回路の出力である信号電圧を監視しピーク電圧を検出して、検出したピーク電圧に基づいて可変利得増幅回路に利得調整信号電圧を供給するフィードバック制御を行う。
入力電圧の振幅(入力電圧波形の極大値)が小さい範囲では、可変利得増幅回路は最大の利得で動作して信号電圧を増幅し、制御電圧が定められた最大値より小さい場合にはそのまま電圧−パルス幅変換発振回路に供給する。このときデューティ比の最大値は入力電圧の振幅に比例して増加する。入力電圧が大きくなり、可変利得増幅回路が最大利得で動作した場合に信号電圧が定められた最大値を越えるようになると、ピーク電圧検出回路がピーク電圧を検出して、利得を低下するように動作する。この結果、信号電圧の最大値が常に定められた最大値となるような信号電圧波形を生成することができ、デューティ比の最大値は入力電圧の振幅に関わらず一定(ほぼ1)となる。
入力電圧の振幅が大きくデューティ比の最大値が1となるように制御される場合には、各相の交流瞬時電圧の波形は、最大値振幅Vmの1/2(Vm/2)を中心として0〜Vmの範囲で2倍の周波数で振動する余弦波形となる。そして、各相に対応する2乗波形回路の降圧チョッパ回路を直列接続すると、降圧チョッパ回路から出力される出力電圧は和となるので、三角関数の振幅成分は全て打ち消して、V0ut=(n/2)・Vm となり入力電圧の振幅に比例した直流電圧が出力される(n=交流発電機の相数)。入力電圧の振幅が小さくデューティ比の最大値が1より小さいとき、入力瞬時電圧に対するデューティ比の比例係数をkとするとV0ut=(n/2)・k・(Vm)2となりこの場合は入力電圧の2乗に比例する直流電圧が出力される。
これにより、第1に、三角関数の振幅成分を全て打ち消す直流電圧を得られるので、リップルの少ない直流電圧が得られ、入力パワー(回転速度×回転トルク)が常に一定となるので、発電機の振動・騒音が少なくなる。
第2に、三相ブリッジ整流回路と比較して高い電圧が得られる(三相ブリッジ整流回路では、最大でVmであり、本発明に係る多相交流発電を三相交流発電機に適用しデューティ比の最大値が1になるように制御すると、3/2倍の1.5Vmとなる)。
第3に、高効率コンバータ回路に比べて回路構成が単純で、発電機の電圧振幅や周波数変動に対して速い応答が可能になる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、前記2乗波形回路は、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記デューティ制御発振回路及び前記降圧チョッパ回路に電源を供給する電源回路を有しているので、電源回路は単相ブリッジ整流回路の出力側から電力を得て、デューティ制御発振回路、及び降圧チョッパ回路に駆動電源を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る多相交流発電装置の概略回路図である。
【図2】図1における2乗波形回路の構成を示す回路図である。
【図3】図1における三相交流発電機の1相から出力される交流瞬時電圧の正弦波形を示す図である。
【図4】図2における単相ブリッジ整流回路の出力波形(蒲鉾形の脈動波形)を示す図である。
【図5】図2におけるデューティ制御発振回路の監視する入力電圧波形(蒲鉾形の脈動波形)と降圧チョッパ回路の出力電圧波形(2倍角余弦波形)を示す図である。
【図6】図2の三相交流発電機、デューティ制御発振回路及び降圧チョッパ回路において、入出力電圧波形の関係を示す図である。
【図7】単相正弦波電圧の入力波形、整流波形、及び2乗出力波形において、電圧(V)−時間(t)の関係図である。
【図8】本発明に係る各相の2乗出力波形と三相の直流電圧波形において、電圧(V)−時間(t)の関係図である。
【図9】図5および図6におけるデューティ制御発振回路の構成を示す回路図である。
【図10】図9における利得可変増幅器の電圧利得(電圧増幅率)(Av)−入力電圧振幅(入力電圧波形の最大値)(Vm)の関係図である。
【図11】デューティ制御発振回路におけるデューティ比の最大値(αmax)−入力電圧振幅(入力電圧の最大値)(Vm)の関係図である。
【図12】本発明の実施例として三相交流発電装置の発電機の回転数(f)−直流出力電圧(Vout)の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る多相交流発電装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る多相交流発電装置の概略回路図である。図2は図1における2乗波形回路の構成を示す回路図である。図3は図1における三相交流発電機の1相から出力される交流電圧の正弦波形を示す図である。図4は図2における単相ブリッジ整流回路の出力波形(蒲鉾形の脈動波形)を示す図である。図5は図2におけるデューティ制御発振回路の監視する入力電圧波形(蒲鉾形の脈動波形)と降圧チョッパ回路の出力電圧波形(2倍角余弦波形)を示す図である。図6は図2の三相交流発電機、デューティ制御発振回路及び降圧チョッパ回路において、入出力波形の関係を示す図である。図7は単相正弦波電圧の入力波形、整流波形、及び2乗出力波形において、電圧(V)−時間(t)の関係図である。図8は本発明に係る各相の2乗出力波形と三相の直流電圧波形において、電圧(V)−時間(t)の関係図である。図9は図5および図6におけるデューティ制御発振回路の構成を示す回路図である。図10は図9における利得可変増幅器の電圧利得(電圧増幅率)(Av)−入力電圧振幅(入力電圧波形の最大値)(Vm)の関係図である。図11はデューティ制御発振回路におけるデューティ比の最大値(αmax)−入力電圧振幅(入力電圧の最大値)(Vm)の関係図である。図12は本発明の実施例として三相交流発電装置の発電機の回転数(f)−直流出力電圧(Vout)の関係図である。
【0018】
先ず、本発明に係る多相交流発電装置(1)の概略回路構成について、図1を参照して説明する。
【0019】
図1において、多相交流発電装置(1)は、多相交流発電機(2)と、電圧制御装置(3)で構成されている。
【0020】
多相交流発電機(2)は、図1に示すように、三相交流発電機である(以下、「三相交流発電機(2)」と称する)。また、三相交流発電機(2)は、図1に示すように、Δ型(デルタ型)に配置した三相電磁コイル(3)を有し、三相電磁コイル(3)は1相電磁コイル(5)、2相電磁コイル(6)及び3相電磁コイル(7)からなる。なお、以下、単に1相コイル(5)、2相コイル(6)及び3相コイル(7)と称する。
【0021】
1相コイル(5)は、図1に示すように、該コイル(5)の両端2線(a1)、(a2)を三相交流発電機(2)から取り出している。また、2相コイル(6)は、図1に示すように、該コイル(6)の両端2線(b1)、(b2)を三相交流発電機(2)から取り出している。3相コイル(7)も、図1に示すように、該コイル(7)の両端2線(c1)、(c2)を三相交流発電機(2)から取り出している。
これにより、三相交流発電機(2)は、図1に示すように、三相コイルを1相コイル(5)、2相コイル(6)及び3相コイル(7)ごとに独立させて、独立させた1相コイル〜3相コイル(5)、(6)、(7)ごとに交流電圧を出力する構成である。
【0022】
電圧制御装置(3)は、図1に示すように、三相を独立させた1相コイル(5)、2相コイル(6)及び3相コイル(7)ごとに接続され、1相コイル〜3相コイル(5)、(6)、(7)に対応する複数の2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)を備えている。
即ち、1相コイル(5)の2線(a1)、(a2)は、図1に示すように、1相2乗波形回路(A1)の入力側に接続されており、2相コイル(6)の2線(b1)、(b2)は、図1に示すように、2相2乗波形回路(B1)の入力側に接続されている。また、3相コイルの2線(c1)、(c2)も、図1に示すように、3相2乗波形回路(C1)の入力側に接続されている。
これにより、1相コイル(5)、2相コイル(6)及び3相コイル(7)は、図1に示すように、相互に独立して各相の2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)の入力側に接続されている。
【0023】
1相2乗波形回路(A1)は、図1に示すように、出力側の正極を負荷(10)に接続しており、出力側の負極を2相2乗波形回路(B1)の出力側の正極に接続している。2相2乗波形回路(B1)は、図1に示すように、出力側の負極を3相2乗波形回路(C1)の正極に接続している。また、3相2乗波形回路(C1)は、図1に示すように、出力側の負極を負荷(10)に接続している。
これにより、各相の2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)は、図1に示すように、1相2乗波形回路(A1)、2相2乗波形回路(B1)及び3相2乗波形回路(C1)の順に直列接続されている。
【0024】
次に、各相に対応する2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)の具体的回路構成を、図2を参照して説明する。なお、各相の2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)は、同一構成であるので、1相2乗波形回路(A1)について説明する。
【0025】
図2において、1相2乗波形回路(A1)は、単相ブリッジ整流回路(15)と、降圧チョッパ回路(16)と、デューティ制御発振回路(17)と、電源回路(18)を備えている。
【0026】
単相ブリッジ整流回路(15)は、図2に示すように、全波整流回路であって、三相交流発電機(2)の1相コイル(5)に接続されており、該1相コイルの交流電圧を整流して直流電圧を出力する。
【0027】
降圧チョッパ回路(16)は、図2に示すように、単相ブリッジ整流回路(15)の出力側に接続されており、該単相ブリッジ整流回路(15)から入力電圧として入力される。また、降圧チョッパ回路(16)は、トランジスタ等の半導体スイッチ(図示しない)を有している。
降圧チョッパ回路(16)は、半導体スイッチ(図示しない)に入力されるON/OFF制御パルス(デューティ比(α))に基づいて、該半導体スイッチをスイッチング(ON/OFF)することで、入力電圧(Vi)を所定の出力電圧に変換する。
【0028】
デューティ制御発振回路(17)は、図2に示すように、単相ブリッジ整流回路(15)の出力側及び降圧チョッパ回路(16)の入力側に夫々接続されており、降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチ(図示しない)に与えるデューティ比(α)を制御する。
このデューティ制御発振回路(17)は、図2に示すように、降圧チョッパ回路(16)に入力される入力瞬時電圧(Vi)を監視して、降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチに与えるデューティ比(α)が入力瞬時電圧(Vi)に比例するように制御する。
【0029】
電源回路(18)は、図2に示すように、単相ブリッジ整流回路(15)の出力側に接続され、該整流回路(15)から出力される電力をデューティ制御発振回路(17)及び降圧チョッパ回路(16)に供給する。これにより、デューティ制御発振回路(17)及び降圧チョッパ回路(16)は、図2に示すように、電源回路(18)からの電力供給によって駆動できる。
【0030】
1相コイル(5)、2相コイル(6)及び3相コイル(7)に対応する2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)の降圧チョッパ回路(16)は、直列接続されている。
具体的には、図1にも示すように、1相コイル(5)の対応する降圧チョッパ回路(16)は、出力側の正極(+)が負荷(10)に接続され、出力側の負極(−)が2相コイル(6)に対応する降圧チョッパ回路(16)の出力側の正極(+)に接続されている。2相コイル(6)に対応する降圧チョッパ回路(16)は、図2に示すように、出力側の負極(−)が3相コイル(7)に対応する降圧チョッパ回路(16)の出力側の正極(+)に接続されている。また、3相コイル(7)に対応する降圧チョッパ回路(16)は、図2に示すように、出力側の負極(−)が負荷(10)に接続されている。
【0031】
次に、多相交流発電装置(1)の動作について、図1〜図6を参照して説明する。
なお、三相交流発電機の1相コイル(5)、及び1相2乗波形回路(A1)の動作について説明する。2相コイル(6)、3相コイル(7)、及び2相2乗波形回路(B1)、3相2乗波形回路(C1)は、1相コイル(5)及び1相2乗波形回路(A1)と同一動作を有するので、その説明を省略する。
【0032】
本発明に係る多相交流発電装置(1)は、図2に示すように、三相交流発電機(2)の1相コイル(5)を、1相2乗波形回路(A1)の単相ブリッジ整流回路(15)に接続している。
これにより、1相コイル(5)の出力波形は、図3に示す正弦波形となり、これを単相ブリッジ整流回路(15)で整流すると、図4に示す『蒲鉾形の脈動波形:Vi=|Vmsin(ωt)|』となる。なお、Vi:降圧チョッパ回路(16)の入力電圧、Vm:最大電圧である。また、『蒲鉾形の脈動波形(図4参照)』とは、図3に示す正弦波形のマイナス側を折り返した波形をいう。
本発明に係る多相交流発電装置(1)は、単相ブリッジ整流回路(15)で得られる『蒲鉾形の脈動波形(図4参照)』を平滑回路で軽減することなく、図4に示す脈動波形を意図的にそのまま利用するものである。
【0033】
デューティ制御発振回路(17)は、図5に示すように、単相ブリッジ整流回路(15)から出力され、降圧チョッパ回路(16)に入力される入力瞬時電圧(Vi)を監視している。なお、入力瞬時電圧(Vi)は、図4に示す『蒲鉾形の脈動波形』である。
デューティ制御発振回路(17)は、図5に示すように、入力瞬時電圧(Vi)に比例したデューティ比α(=kVi)となるように、降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチ(図示しない)にON/OFF制御パルスを出力する。
即ち、デューティ制御発振回路(17)は、図5に示すように、入力瞬時電圧(Vi)の『蒲鉾形の脈動波形』を監視し、デューティ比がこの脈動波形の増減に比例するように、降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチに与えるON/OFF制御パルスを制御する。
【0034】
降圧チョッパ回路(16)は、図5に示すように、デューティ制御発振回路(17)からのON/OFF制御パルスに基づいて、半導体スイッチをON/OFFさせる。
これにより、降圧チョッパ回路(16)の出力瞬時電圧(VO1)は、図5に示すように、入力瞬時電圧(Vi)の2乗波形(VO=kVm2・sin2ωt)となり、正弦波形(2倍角余弦波形)電圧が得られることになる。
【0035】
即ち、デューティ比αとすると、降圧チョッパ回路(16)の入力瞬時電圧(Vi)と出力瞬時電圧(VO)の関係は、VO=Vi×αとなる。図5に示すデューティ制御発振回路(17)は、デューティ比αを入力瞬時電圧(Vi)に比例するように制御するので、デューティ比α=k×Viである。このデューティαを、VO=Vi×αに代入すると、降圧チョッパ回路(16)の出力瞬時電圧(VO)は、図5に示すように、電圧正側において、VO=k×Vi2=k×(Vm・sinωt)2=k×Vm2・sin2ωt=k×Vm2・(1+cos2ωt)/2となる。
これにより、降圧チョッパ回路(16)の出力瞬時電圧(VO)を2乗正弦波形(又は2倍角余弦波形)にすることができる。
【0036】
また、2相コイル(6)及び2相2乗波形回路(B1)、3相コイル(7)及び3相2乗波形回路(C1)も同様であって、降圧チョッパ回路(16)の出力瞬時電圧(VO2)、(VO3)も、入力瞬時電圧(Vi)の2乗波形となる。
そして、各相の2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)の降圧チョッパ回路(16)は、図2に示すように、直列接続されているので、各降圧チョッパ回路(16)の出力電圧の合成は、VO=VO1+VO2+VO3となる。
【0037】
以上の通り、本発明に係る多相交流発電装置では、図6に示すように、三相交流発電機の各相コイル(5)、(6)、(7)の『正弦波形』を、単相ブリッジ整流回路(15)によって『蒲鉾形の脈動波形』とし、この『蒲鉾形の脈動波形』をデューティ制御発振回路(17)及び降圧チョッパ回路(16)によって『2乗正弦波形』にするものである。
この2乗正弦波形を得るために、平滑回路を用いることなく意図的に『蒲鉾形の脈動波形:入力瞬時電圧(Vi)』を用いて、この入力瞬時電圧(Vi)に比例するデューティ比α(ON/OFF制御パルス)を降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチに与えたものである。
【0038】
本発明に係る多相交流発電装置(1)の動作理論(理論計算)を、図7及び図8に基づいて説明する。
【0039】
降圧チョッパ回路の入力瞬時電圧:Vi
降圧チョッパ回路の出力瞬時電圧:Vo
デューティ比:α
とすると、出力瞬時電圧(Vo)は、デューティ比(α)と入力瞬時電圧(Vi)に比例する。
Vo=α・Vi・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式1)
【0040】
図2に示すデューティ制御発振回路(17)によって、降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチに与えるデューティ比(α)が入力瞬時電圧(Vi)に比例するように制御するとき、
すなわち
α=k・Vi・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式2)
となるようにすると、降圧チョッパ回路(16)の出力瞬時電圧(Vo)は、(式1)及び(式2)より、
Vo=k・Vi2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式3)
となり、入力瞬時電圧Viの2乗の波形になる。
【0041】
ここで、降圧チョッパ回路(16)への入力電圧は、図7に示すように、点線で示す正弦波電圧であり、単相ブリッジ整流回路(15:全波整流回路)の出力は負電圧が正に折り返した形の、図7の破線のようになる。
これは、
Vi=|Vm・sinωt|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式4)
で表せる。
【0042】
このとき、2乗出力波形は、(式3)及び(式4)により、
Vo=k・|Vm・sinωt|2
=kVm2・sin2ωt
=(1/2)k・Vm2(1−cos2ωt)・・・・・・・・・・・(式5)
となる。
これは図7の実線で示されるような、Vm/2を中心として0〜Vmの範囲で2倍の周波数で振幅する余弦波形である。
【0043】
三相全てに同じ回路を接続する。三相交流の各相の電圧は1/3周期ずつずれているので、それぞれ、
V1=Vm・sinωt・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式6)
V2=Vm・sin[ωt+2π/3]・・・・・・・・・・・・・・・・(式7)
V3=Vm・sin[ωt+4π/3]・・・・・・・・・・・・・・・・(式8)
で表される。
【0044】
1相〜3相の夫々に接続した2乗波形回路の出力はそれぞれ
Vo1=(1/2)kVm2[1−cos2ωt]・・・・・・・・・・・・(式9)
Vo2=(1/2)kVm2[1−cos(2ωt+4π/3)]
=(1/2)kVm2[1−(cos2ωt・cos4π/3
−sin2ωt・sin4π/3)]
=(1/2)kVm2[1−{(−1/2)cos2ωt
+(√3/2)sin2ωt}]・・・・・・・・・・・・・・・(式10)
Vo3=(1/2)kVm2[1−cos(2ωt+8π/3)]
=(1/2)kVm2[1−(cos2ωt・cos2π/3
−sin2ωt・sin2π/3)]
=(1/2)kVm2[1−{(−1/2)cos2ωt
+(√3/2)sin2ωt}]・・・・・・・・・・・・・・・(式11)
となる。
【0045】
これらを図示すると図8の各点線波形になり、全てを直列に接続すると電圧は和となるので、三角関数の振幅成分は全て打ち消して、
Vout=Vo1+Vo2+Vo3
=(3/2)kVm2
となり、直流電圧が出力される。
【0046】
続いて、デューティ制御発振回路(17)の具体的な構成及び動作を、図9乃至図11を参照して説明する。
【0047】
デューティ制御発振回路(17)は、図9に示すように、分圧回路(51)、可変利得増幅回路(52)、ピーク電圧検出回路(53)、および電圧−パルス幅変換発振回路(54)から構成される。
【0048】
図9に示すデューティ制御発振回路(17)において、分圧回路(51)は入力電圧を分圧し入力電圧Viの1/d倍の電圧波形を生成し、また可変利得増幅回路(52)は入力電圧をAv倍(Avの値は利得調整信号電圧により調整される)して出力することにより、信号電圧としてVs=Av・Vi/dが得られる。電圧−パルス幅変換発振回路(54)は一定の周波数、すなわち一定の周期T毎に信号電圧Vsに比例した長さ(時間)のパルス電圧波形を発生する。
【0049】
図9において、デューティ制御発振回路(17)から発生するパルス電圧波形においてデューティ比(α)は1(100%)を越えることができないため、パルス幅は発振の発振周期Tより長くすることはできない。そこでデューティ比(α)が1となるために必要な入力信号電圧を信号電圧の最大値VTと定め、入力電圧が極大値Vmの時の信号電圧の極大値Vsmax=Av・Vm/dが最大値VTを越えないように可変利得増幅回路(52)の利得Avを調整する。可変利得増幅回路(52)の出力である信号電圧Vsを監視しピーク電圧Vsmaxを検出して、検出したピーク電圧に基づいて可変利得増幅回路(52)の利得を調整するための信号電圧を供給する。
【0050】
入力電圧Viの振幅Vm(入力電圧波形の極大値)が小さい場合、図10のように可変利得増幅回路(52)は一定の最大利得Avmaxで動作して信号電圧を増幅し、電圧−パルス幅変換発振回路(54)に供給する。このときデューティ比(α)は入力電圧Viに比例し、図11のようにデューティ比(α)の最大値αmaxは入力電圧振幅Vmに比例する。入力電圧に対するデューティ比の比例係数kは一定となる。出力電圧はVout=(3/2)kVm2でありkが一定であるから出力電圧は入力電圧振幅の2乗に比例して増加する。
【0051】
入力電圧振幅Vmが大きくなり、可変利得増幅回路(52)が最大利得Avmaxで動作した場合に信号電圧Vsが定められた最大値VTを越えようとすると、ピーク電圧検出回路(53)が信号電圧の最大値を検出し、図10のように入力電圧振幅Vmの増加に反比例して利得Avを低下するように動作する。この結果、信号電圧Vsの最大値が常に定められた最大値VTとなるような信号電圧波形を生成することができ、図11のようにデューティ比(α)の最大値αmaxが入力電圧振幅Vmの大きさに関わらず1となるように動作する。従ってαmax=k・Vm=1であるから出力電圧Vout=(3/2)kVm2=(3/2)Vmとなり、出力電圧は入力電圧振幅に比例する。
【0052】
次に、本発明に係る多相交流発電装置の実施例を説明する。
交流発電機の出力電圧振幅、すなわち回路への入力電圧振幅は発電機の回転数fに比例して増加する。図12の実施例では、回転数fが50r.p.m.で電源回路が動作を始めて出力電圧が発生し、回転数fが小さくVmの値が小さいとき出力電圧Voは回転数すなわち入力電圧振幅の2乗に比例して増加し、回転数fが一定の値(実施例では140r.p.m.)を越えると出力電圧Voは回転数fすなわち入力電圧振幅に正比例して増加することが確かめられる。
【0053】
本発明に係る多相交流発電装置では、降圧チョッパ回路(半導体スイッチ)に与えるデューティ比(α)が入力瞬時電圧(Vi)に比例するように制御すると、図8に示す入力瞬時電圧(Vi)の2乗に比例した瞬時電圧出力に変換できる。
これにより、リップルの少ない直流電圧を得ることができ、入力パワー(回転速度×回転トルク)が常に一定であり多相交流発電機の振動・騒音が少ない。
【0054】
また、三相ブリッジ整流回路と比較して高い電圧が得られる。即ち、三相ブリッジ整流回路では、図8に示すように、最大でVm、本発明に係る多相交流発電装置では、図4に示すように、3/2倍の1.5Vmである(但し、Vmは正弦波電圧振幅)。
【0055】
更に、本発明に係る多相交流発電装置では、従来の高効率コンバータに比べて回路構成が単純で、発電機の電圧や周波数変動に対して速い応答が可能である。
【0056】
なお、本発明に係る多相交流発電装置では、三相交流発電機について説明したが、これに限定されるものでなく、2相(1/4周期ずれた位相)および4相以上の多相の交流発電機に適用しても良い。この場合、各相ごとに独立して交流電圧を出力し、各相に対応する2乗波形回路を接続する。
【0057】
また、本発明に係る多相交流発電装置では、従来のブリッジ整流回路と同じように出力電圧が発電機の回転数の増加とともに高くなるようにデューティ制御発振回路の制御を行ったが、負荷の特性に一致させるために出力電圧Voが発電機の回転数fによらず一定になるようにデューティ制御を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、多相交流発電機の電圧制御に対して好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 多相交流発電装置
2 多相交流発電機
3 電圧制御装置
5 1相電磁コイル
6 2相電磁コイル
7 3相電磁コイル
15 単相ブリッジ整流回路
16 降圧チョッパ回路
17 デューティ制御発振回路
18 電源回路
A1 1相2乗波形回路
B1 2相2乗波形回路
C1 3相2乗波形回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相交流発電装置に関し、詳しくは、多相交流発電機と電圧制御装置で構成され、低リップルの出力電圧を得ることのできる多相交流発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、三相交流発電機において、Δ結線やY結線された三相の出力は三相ブリッジ整流回路によって直流に変換される。この三相ブリッジ整流回路に負荷を接続すると、交流発電機の回転トルクが変動するため、交流発電機の振動や騒音の発生原因となる。
【0003】
詳細に説明すると、三相ブリッジ整流回路は、位相差(2π/3)のある三相交流電力(正弦波)が入力されると、瞬時電圧が最大の相だけをT/6(T:周期)ずつ切替えて出力する。このため、三相ブリッジ整流回路は、正弦波の山の部分のみを繰返し出力するので、出力電圧にリップル(変動成分)が発生する。このように出力電圧が変動すると、出力、入力(機械的パワー=回転速度×回転トルク)が変動するため、トルク変動によって機械的振動が発生する。
【0004】
リップルを低減する技術として、平滑回路(コンデンサ、コイル等)を用いる技術がある。この平滑回路では、出力電圧のリップルを低減できるものの、コンデンサにピーク電圧時のエネルギーを蓄えて低電圧時に放出するため、入力電流のリップルはかえって増加し、入力パワー(回転速度×回転トルク)の変動が大きくなる。すなわち、出力特性は良くなるが入力特性は悪くなり、トルク変動が大きくなるため交流発電機の振動や騒音が増加する。
【0005】
入力特性の改善は、従来から高効率コンバータ回路を用いて、各相の電源電流が力率1の正弦波(電圧に比例した電流波形)になるように制御する方法がある。この制御により、三相全体の入力パワー(機械的な入力に相当する回転速度×回転トルクの値)が一定になるようにする。この高効率コンバータ回路を用いることで、交流発電機の振動や騒音の発生を解決できる。
しかし、高効率コンバータ回路は、回路構成が複雑であり、交流発電機の電圧や周波数変動の応答性にも限度がある。
【0006】
簡単な回路構成によって、リップルの低減(振動、騒音防止)及び交流発電機の電圧や周波数変動の応答性の改善を図る技術の一例として、三相交流発電機の各相を6線で取出して簡単な制御回路によって、リップル低減や電圧や周波数変動の応答性を改善する技術が考えられる。
【0007】
これに関連する技術として、特許文献1に開示する技術は、三相交流発電機の各相(A相コイル、B相コイル及びC相コイル)を6線で独立に取り出し、各相を単相Hブリッジ整流回路(全波整流回路)に夫々接続した技術である。
【0008】
この特許文献1に開示する技術は、単相Hブリッジ整流回路(トランジスタ制御端子)に出力信号を供給する回生制御信号生成部を備えており、この回生制御信号生成部は、A〜C相センサ出力に基づいて、各整流回路(トランジスタ制御端子)に供給する出力信号を「Hレベル」又は「Lレベル」に調整している。
【0009】
しかし、特許文献1に開示する技術では、「Hレベル」区間をセンサ出力波形のピークを中心とする対称な区間に設定することで、A相〜B相コイルから電力を効率よく回収するもので、リップルを減少することを主目的とするものでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−92789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題に鑑み、簡単な回路構成によって多相交流発電機の電圧や周波数変動の応答性に優れ、リップルを低減することができ、各相の電源電流が力率1の正弦波になるように制御し、三相全体の入力パワーが一定になるようにすることで多相交流発電機の振動や騒音を低減できる、多相交流発電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、多相交流発電機と、前記多相交流発電機の交流電圧を直流電圧に変換して出力する電圧制御装置を備えてなる多相交流発電装置において、前記多相交流発電機は、多相を相ごとに独立させて、該独立させた相ごとに交流電圧を出力する構成であり、前記電圧制御装置は、独立する各相ごとに独立して接続され、各相に対応する2乗(電圧)波形回路を備え、前記2乗波形回路は、前記対応相に接続され、該相の交流電圧を整流する単相ブリッジ整流回路と、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、該単相ブリッジ整流回路から入力される入力電圧波形を変換して出力電圧波形を出力する降圧チョッパ回路と、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比を制御するデューティ制御発振回路を備え、前記デューティ制御発振回路は、前記単相ブリッジ整流回路から前記降圧チョッパ回路に入力される入力瞬時電圧を監視し、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比が前記入力瞬時電圧に比例するように制御するものであり、前記各相の2乗波形回路は、降圧チョッパ回路の出力側で直列接続されていることを特徴とする多相交流発電装置に関する。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記2乗波形回路は、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記デューティ制御発振回路及び前記降圧チョッパ回路に電源を供給する電源回路を有していることを特徴とする請求項1に記載の多相交流発電装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、多相交流発電機と、前記多相交流発電機の交流電圧を直流電圧に変換して出力する電圧制御装置を備えてなる多相交流発電装置において、前記多相交流発電機は、多相を相ごとに独立させて、該独立させた相ごとに交流電圧を出力する構成であり、前記電圧制御装置は、独立する各相ごとに独立して接続され、各相に対応する2乗波形回路を備え、前記2乗波形回路は、前記対応相に接続され、該相の交流電圧を整流する単相ブリッジ整流回路と、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、該単相ブリッジ整流回路から入力される入力電圧波形を変換して出力電圧波形を出力する降圧チョッパ回路と、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比を制御するデューティ制御発振回路を備え、前記デューティ制御発振回路は、前記単相ブリッジ整流回路から前記降圧チョッパ回路に入力される入力瞬時電圧を監視し、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比が前記入力瞬時電圧に比例するように制御するものであり、前記各相の2乗波形回路は、降圧チョッパ回路の出力側で直列接続されているので、各相の正弦波形を、単相ブリッジ整流回路で整流して『蒲鉾形の脈動波形:入力瞬時電圧』とし、この『蒲鉾形の脈動波形』をデューティ制御発振回路で監視して、この監視に基づいて降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比を制御する。
デューティ制御発振回路は、降圧チョッパ回路の半導体スッチに与えるデューティ比が入力瞬時電圧に比例するように制御することで、上記蒲鉾形の脈動波形を2乗正弦波形(又は2倍角の余弦波形)にする。
デューティ制御発振回路は分圧回路、可変利得増幅回路、ピーク電圧検出回路、および電圧−パルス幅変換発振回路から構成される。分圧回路は高電圧の入力信号を分圧することにより入力電圧に比例した小電圧の信号電圧を生成する。利得可変増幅回路は利得調整信号によって電圧利得(増幅率)を任意に設定して信号電圧を増幅する。ピーク電圧検出回路は『蒲鉾形の脈動波形』である信号電圧の極大値を監視して、極大値に比例した信号電圧を発生する。電圧−パルス幅変換発振回路は周波数が一定でパルス幅を信号電圧に比例させることにより、信号電圧に比例したデューティ比を持つ矩形波パルス信号を発生する。
ここでデューティ比は1(100%)を越えることがないため、パルス幅は発振の周期より長くすることはできない。そこでデューティ比が1となるために必要な入力信号電圧を信号電圧の最大値と定め、入力信号の極大値(ピーク電圧)が最大を越えないように可変利得増幅回路の利得を調整する。可変利得増幅回路の出力である信号電圧を監視しピーク電圧を検出して、検出したピーク電圧に基づいて可変利得増幅回路に利得調整信号電圧を供給するフィードバック制御を行う。
入力電圧の振幅(入力電圧波形の極大値)が小さい範囲では、可変利得増幅回路は最大の利得で動作して信号電圧を増幅し、制御電圧が定められた最大値より小さい場合にはそのまま電圧−パルス幅変換発振回路に供給する。このときデューティ比の最大値は入力電圧の振幅に比例して増加する。入力電圧が大きくなり、可変利得増幅回路が最大利得で動作した場合に信号電圧が定められた最大値を越えるようになると、ピーク電圧検出回路がピーク電圧を検出して、利得を低下するように動作する。この結果、信号電圧の最大値が常に定められた最大値となるような信号電圧波形を生成することができ、デューティ比の最大値は入力電圧の振幅に関わらず一定(ほぼ1)となる。
入力電圧の振幅が大きくデューティ比の最大値が1となるように制御される場合には、各相の交流瞬時電圧の波形は、最大値振幅Vmの1/2(Vm/2)を中心として0〜Vmの範囲で2倍の周波数で振動する余弦波形となる。そして、各相に対応する2乗波形回路の降圧チョッパ回路を直列接続すると、降圧チョッパ回路から出力される出力電圧は和となるので、三角関数の振幅成分は全て打ち消して、V0ut=(n/2)・Vm となり入力電圧の振幅に比例した直流電圧が出力される(n=交流発電機の相数)。入力電圧の振幅が小さくデューティ比の最大値が1より小さいとき、入力瞬時電圧に対するデューティ比の比例係数をkとするとV0ut=(n/2)・k・(Vm)2となりこの場合は入力電圧の2乗に比例する直流電圧が出力される。
これにより、第1に、三角関数の振幅成分を全て打ち消す直流電圧を得られるので、リップルの少ない直流電圧が得られ、入力パワー(回転速度×回転トルク)が常に一定となるので、発電機の振動・騒音が少なくなる。
第2に、三相ブリッジ整流回路と比較して高い電圧が得られる(三相ブリッジ整流回路では、最大でVmであり、本発明に係る多相交流発電を三相交流発電機に適用しデューティ比の最大値が1になるように制御すると、3/2倍の1.5Vmとなる)。
第3に、高効率コンバータ回路に比べて回路構成が単純で、発電機の電圧振幅や周波数変動に対して速い応答が可能になる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、前記2乗波形回路は、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記デューティ制御発振回路及び前記降圧チョッパ回路に電源を供給する電源回路を有しているので、電源回路は単相ブリッジ整流回路の出力側から電力を得て、デューティ制御発振回路、及び降圧チョッパ回路に駆動電源を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る多相交流発電装置の概略回路図である。
【図2】図1における2乗波形回路の構成を示す回路図である。
【図3】図1における三相交流発電機の1相から出力される交流瞬時電圧の正弦波形を示す図である。
【図4】図2における単相ブリッジ整流回路の出力波形(蒲鉾形の脈動波形)を示す図である。
【図5】図2におけるデューティ制御発振回路の監視する入力電圧波形(蒲鉾形の脈動波形)と降圧チョッパ回路の出力電圧波形(2倍角余弦波形)を示す図である。
【図6】図2の三相交流発電機、デューティ制御発振回路及び降圧チョッパ回路において、入出力電圧波形の関係を示す図である。
【図7】単相正弦波電圧の入力波形、整流波形、及び2乗出力波形において、電圧(V)−時間(t)の関係図である。
【図8】本発明に係る各相の2乗出力波形と三相の直流電圧波形において、電圧(V)−時間(t)の関係図である。
【図9】図5および図6におけるデューティ制御発振回路の構成を示す回路図である。
【図10】図9における利得可変増幅器の電圧利得(電圧増幅率)(Av)−入力電圧振幅(入力電圧波形の最大値)(Vm)の関係図である。
【図11】デューティ制御発振回路におけるデューティ比の最大値(αmax)−入力電圧振幅(入力電圧の最大値)(Vm)の関係図である。
【図12】本発明の実施例として三相交流発電装置の発電機の回転数(f)−直流出力電圧(Vout)の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る多相交流発電装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る多相交流発電装置の概略回路図である。図2は図1における2乗波形回路の構成を示す回路図である。図3は図1における三相交流発電機の1相から出力される交流電圧の正弦波形を示す図である。図4は図2における単相ブリッジ整流回路の出力波形(蒲鉾形の脈動波形)を示す図である。図5は図2におけるデューティ制御発振回路の監視する入力電圧波形(蒲鉾形の脈動波形)と降圧チョッパ回路の出力電圧波形(2倍角余弦波形)を示す図である。図6は図2の三相交流発電機、デューティ制御発振回路及び降圧チョッパ回路において、入出力波形の関係を示す図である。図7は単相正弦波電圧の入力波形、整流波形、及び2乗出力波形において、電圧(V)−時間(t)の関係図である。図8は本発明に係る各相の2乗出力波形と三相の直流電圧波形において、電圧(V)−時間(t)の関係図である。図9は図5および図6におけるデューティ制御発振回路の構成を示す回路図である。図10は図9における利得可変増幅器の電圧利得(電圧増幅率)(Av)−入力電圧振幅(入力電圧波形の最大値)(Vm)の関係図である。図11はデューティ制御発振回路におけるデューティ比の最大値(αmax)−入力電圧振幅(入力電圧の最大値)(Vm)の関係図である。図12は本発明の実施例として三相交流発電装置の発電機の回転数(f)−直流出力電圧(Vout)の関係図である。
【0018】
先ず、本発明に係る多相交流発電装置(1)の概略回路構成について、図1を参照して説明する。
【0019】
図1において、多相交流発電装置(1)は、多相交流発電機(2)と、電圧制御装置(3)で構成されている。
【0020】
多相交流発電機(2)は、図1に示すように、三相交流発電機である(以下、「三相交流発電機(2)」と称する)。また、三相交流発電機(2)は、図1に示すように、Δ型(デルタ型)に配置した三相電磁コイル(3)を有し、三相電磁コイル(3)は1相電磁コイル(5)、2相電磁コイル(6)及び3相電磁コイル(7)からなる。なお、以下、単に1相コイル(5)、2相コイル(6)及び3相コイル(7)と称する。
【0021】
1相コイル(5)は、図1に示すように、該コイル(5)の両端2線(a1)、(a2)を三相交流発電機(2)から取り出している。また、2相コイル(6)は、図1に示すように、該コイル(6)の両端2線(b1)、(b2)を三相交流発電機(2)から取り出している。3相コイル(7)も、図1に示すように、該コイル(7)の両端2線(c1)、(c2)を三相交流発電機(2)から取り出している。
これにより、三相交流発電機(2)は、図1に示すように、三相コイルを1相コイル(5)、2相コイル(6)及び3相コイル(7)ごとに独立させて、独立させた1相コイル〜3相コイル(5)、(6)、(7)ごとに交流電圧を出力する構成である。
【0022】
電圧制御装置(3)は、図1に示すように、三相を独立させた1相コイル(5)、2相コイル(6)及び3相コイル(7)ごとに接続され、1相コイル〜3相コイル(5)、(6)、(7)に対応する複数の2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)を備えている。
即ち、1相コイル(5)の2線(a1)、(a2)は、図1に示すように、1相2乗波形回路(A1)の入力側に接続されており、2相コイル(6)の2線(b1)、(b2)は、図1に示すように、2相2乗波形回路(B1)の入力側に接続されている。また、3相コイルの2線(c1)、(c2)も、図1に示すように、3相2乗波形回路(C1)の入力側に接続されている。
これにより、1相コイル(5)、2相コイル(6)及び3相コイル(7)は、図1に示すように、相互に独立して各相の2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)の入力側に接続されている。
【0023】
1相2乗波形回路(A1)は、図1に示すように、出力側の正極を負荷(10)に接続しており、出力側の負極を2相2乗波形回路(B1)の出力側の正極に接続している。2相2乗波形回路(B1)は、図1に示すように、出力側の負極を3相2乗波形回路(C1)の正極に接続している。また、3相2乗波形回路(C1)は、図1に示すように、出力側の負極を負荷(10)に接続している。
これにより、各相の2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)は、図1に示すように、1相2乗波形回路(A1)、2相2乗波形回路(B1)及び3相2乗波形回路(C1)の順に直列接続されている。
【0024】
次に、各相に対応する2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)の具体的回路構成を、図2を参照して説明する。なお、各相の2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)は、同一構成であるので、1相2乗波形回路(A1)について説明する。
【0025】
図2において、1相2乗波形回路(A1)は、単相ブリッジ整流回路(15)と、降圧チョッパ回路(16)と、デューティ制御発振回路(17)と、電源回路(18)を備えている。
【0026】
単相ブリッジ整流回路(15)は、図2に示すように、全波整流回路であって、三相交流発電機(2)の1相コイル(5)に接続されており、該1相コイルの交流電圧を整流して直流電圧を出力する。
【0027】
降圧チョッパ回路(16)は、図2に示すように、単相ブリッジ整流回路(15)の出力側に接続されており、該単相ブリッジ整流回路(15)から入力電圧として入力される。また、降圧チョッパ回路(16)は、トランジスタ等の半導体スイッチ(図示しない)を有している。
降圧チョッパ回路(16)は、半導体スイッチ(図示しない)に入力されるON/OFF制御パルス(デューティ比(α))に基づいて、該半導体スイッチをスイッチング(ON/OFF)することで、入力電圧(Vi)を所定の出力電圧に変換する。
【0028】
デューティ制御発振回路(17)は、図2に示すように、単相ブリッジ整流回路(15)の出力側及び降圧チョッパ回路(16)の入力側に夫々接続されており、降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチ(図示しない)に与えるデューティ比(α)を制御する。
このデューティ制御発振回路(17)は、図2に示すように、降圧チョッパ回路(16)に入力される入力瞬時電圧(Vi)を監視して、降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチに与えるデューティ比(α)が入力瞬時電圧(Vi)に比例するように制御する。
【0029】
電源回路(18)は、図2に示すように、単相ブリッジ整流回路(15)の出力側に接続され、該整流回路(15)から出力される電力をデューティ制御発振回路(17)及び降圧チョッパ回路(16)に供給する。これにより、デューティ制御発振回路(17)及び降圧チョッパ回路(16)は、図2に示すように、電源回路(18)からの電力供給によって駆動できる。
【0030】
1相コイル(5)、2相コイル(6)及び3相コイル(7)に対応する2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)の降圧チョッパ回路(16)は、直列接続されている。
具体的には、図1にも示すように、1相コイル(5)の対応する降圧チョッパ回路(16)は、出力側の正極(+)が負荷(10)に接続され、出力側の負極(−)が2相コイル(6)に対応する降圧チョッパ回路(16)の出力側の正極(+)に接続されている。2相コイル(6)に対応する降圧チョッパ回路(16)は、図2に示すように、出力側の負極(−)が3相コイル(7)に対応する降圧チョッパ回路(16)の出力側の正極(+)に接続されている。また、3相コイル(7)に対応する降圧チョッパ回路(16)は、図2に示すように、出力側の負極(−)が負荷(10)に接続されている。
【0031】
次に、多相交流発電装置(1)の動作について、図1〜図6を参照して説明する。
なお、三相交流発電機の1相コイル(5)、及び1相2乗波形回路(A1)の動作について説明する。2相コイル(6)、3相コイル(7)、及び2相2乗波形回路(B1)、3相2乗波形回路(C1)は、1相コイル(5)及び1相2乗波形回路(A1)と同一動作を有するので、その説明を省略する。
【0032】
本発明に係る多相交流発電装置(1)は、図2に示すように、三相交流発電機(2)の1相コイル(5)を、1相2乗波形回路(A1)の単相ブリッジ整流回路(15)に接続している。
これにより、1相コイル(5)の出力波形は、図3に示す正弦波形となり、これを単相ブリッジ整流回路(15)で整流すると、図4に示す『蒲鉾形の脈動波形:Vi=|Vmsin(ωt)|』となる。なお、Vi:降圧チョッパ回路(16)の入力電圧、Vm:最大電圧である。また、『蒲鉾形の脈動波形(図4参照)』とは、図3に示す正弦波形のマイナス側を折り返した波形をいう。
本発明に係る多相交流発電装置(1)は、単相ブリッジ整流回路(15)で得られる『蒲鉾形の脈動波形(図4参照)』を平滑回路で軽減することなく、図4に示す脈動波形を意図的にそのまま利用するものである。
【0033】
デューティ制御発振回路(17)は、図5に示すように、単相ブリッジ整流回路(15)から出力され、降圧チョッパ回路(16)に入力される入力瞬時電圧(Vi)を監視している。なお、入力瞬時電圧(Vi)は、図4に示す『蒲鉾形の脈動波形』である。
デューティ制御発振回路(17)は、図5に示すように、入力瞬時電圧(Vi)に比例したデューティ比α(=kVi)となるように、降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチ(図示しない)にON/OFF制御パルスを出力する。
即ち、デューティ制御発振回路(17)は、図5に示すように、入力瞬時電圧(Vi)の『蒲鉾形の脈動波形』を監視し、デューティ比がこの脈動波形の増減に比例するように、降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチに与えるON/OFF制御パルスを制御する。
【0034】
降圧チョッパ回路(16)は、図5に示すように、デューティ制御発振回路(17)からのON/OFF制御パルスに基づいて、半導体スイッチをON/OFFさせる。
これにより、降圧チョッパ回路(16)の出力瞬時電圧(VO1)は、図5に示すように、入力瞬時電圧(Vi)の2乗波形(VO=kVm2・sin2ωt)となり、正弦波形(2倍角余弦波形)電圧が得られることになる。
【0035】
即ち、デューティ比αとすると、降圧チョッパ回路(16)の入力瞬時電圧(Vi)と出力瞬時電圧(VO)の関係は、VO=Vi×αとなる。図5に示すデューティ制御発振回路(17)は、デューティ比αを入力瞬時電圧(Vi)に比例するように制御するので、デューティ比α=k×Viである。このデューティαを、VO=Vi×αに代入すると、降圧チョッパ回路(16)の出力瞬時電圧(VO)は、図5に示すように、電圧正側において、VO=k×Vi2=k×(Vm・sinωt)2=k×Vm2・sin2ωt=k×Vm2・(1+cos2ωt)/2となる。
これにより、降圧チョッパ回路(16)の出力瞬時電圧(VO)を2乗正弦波形(又は2倍角余弦波形)にすることができる。
【0036】
また、2相コイル(6)及び2相2乗波形回路(B1)、3相コイル(7)及び3相2乗波形回路(C1)も同様であって、降圧チョッパ回路(16)の出力瞬時電圧(VO2)、(VO3)も、入力瞬時電圧(Vi)の2乗波形となる。
そして、各相の2乗波形回路(A1)、(B1)、(C1)の降圧チョッパ回路(16)は、図2に示すように、直列接続されているので、各降圧チョッパ回路(16)の出力電圧の合成は、VO=VO1+VO2+VO3となる。
【0037】
以上の通り、本発明に係る多相交流発電装置では、図6に示すように、三相交流発電機の各相コイル(5)、(6)、(7)の『正弦波形』を、単相ブリッジ整流回路(15)によって『蒲鉾形の脈動波形』とし、この『蒲鉾形の脈動波形』をデューティ制御発振回路(17)及び降圧チョッパ回路(16)によって『2乗正弦波形』にするものである。
この2乗正弦波形を得るために、平滑回路を用いることなく意図的に『蒲鉾形の脈動波形:入力瞬時電圧(Vi)』を用いて、この入力瞬時電圧(Vi)に比例するデューティ比α(ON/OFF制御パルス)を降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチに与えたものである。
【0038】
本発明に係る多相交流発電装置(1)の動作理論(理論計算)を、図7及び図8に基づいて説明する。
【0039】
降圧チョッパ回路の入力瞬時電圧:Vi
降圧チョッパ回路の出力瞬時電圧:Vo
デューティ比:α
とすると、出力瞬時電圧(Vo)は、デューティ比(α)と入力瞬時電圧(Vi)に比例する。
Vo=α・Vi・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式1)
【0040】
図2に示すデューティ制御発振回路(17)によって、降圧チョッパ回路(16)の半導体スイッチに与えるデューティ比(α)が入力瞬時電圧(Vi)に比例するように制御するとき、
すなわち
α=k・Vi・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式2)
となるようにすると、降圧チョッパ回路(16)の出力瞬時電圧(Vo)は、(式1)及び(式2)より、
Vo=k・Vi2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式3)
となり、入力瞬時電圧Viの2乗の波形になる。
【0041】
ここで、降圧チョッパ回路(16)への入力電圧は、図7に示すように、点線で示す正弦波電圧であり、単相ブリッジ整流回路(15:全波整流回路)の出力は負電圧が正に折り返した形の、図7の破線のようになる。
これは、
Vi=|Vm・sinωt|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式4)
で表せる。
【0042】
このとき、2乗出力波形は、(式3)及び(式4)により、
Vo=k・|Vm・sinωt|2
=kVm2・sin2ωt
=(1/2)k・Vm2(1−cos2ωt)・・・・・・・・・・・(式5)
となる。
これは図7の実線で示されるような、Vm/2を中心として0〜Vmの範囲で2倍の周波数で振幅する余弦波形である。
【0043】
三相全てに同じ回路を接続する。三相交流の各相の電圧は1/3周期ずつずれているので、それぞれ、
V1=Vm・sinωt・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式6)
V2=Vm・sin[ωt+2π/3]・・・・・・・・・・・・・・・・(式7)
V3=Vm・sin[ωt+4π/3]・・・・・・・・・・・・・・・・(式8)
で表される。
【0044】
1相〜3相の夫々に接続した2乗波形回路の出力はそれぞれ
Vo1=(1/2)kVm2[1−cos2ωt]・・・・・・・・・・・・(式9)
Vo2=(1/2)kVm2[1−cos(2ωt+4π/3)]
=(1/2)kVm2[1−(cos2ωt・cos4π/3
−sin2ωt・sin4π/3)]
=(1/2)kVm2[1−{(−1/2)cos2ωt
+(√3/2)sin2ωt}]・・・・・・・・・・・・・・・(式10)
Vo3=(1/2)kVm2[1−cos(2ωt+8π/3)]
=(1/2)kVm2[1−(cos2ωt・cos2π/3
−sin2ωt・sin2π/3)]
=(1/2)kVm2[1−{(−1/2)cos2ωt
+(√3/2)sin2ωt}]・・・・・・・・・・・・・・・(式11)
となる。
【0045】
これらを図示すると図8の各点線波形になり、全てを直列に接続すると電圧は和となるので、三角関数の振幅成分は全て打ち消して、
Vout=Vo1+Vo2+Vo3
=(3/2)kVm2
となり、直流電圧が出力される。
【0046】
続いて、デューティ制御発振回路(17)の具体的な構成及び動作を、図9乃至図11を参照して説明する。
【0047】
デューティ制御発振回路(17)は、図9に示すように、分圧回路(51)、可変利得増幅回路(52)、ピーク電圧検出回路(53)、および電圧−パルス幅変換発振回路(54)から構成される。
【0048】
図9に示すデューティ制御発振回路(17)において、分圧回路(51)は入力電圧を分圧し入力電圧Viの1/d倍の電圧波形を生成し、また可変利得増幅回路(52)は入力電圧をAv倍(Avの値は利得調整信号電圧により調整される)して出力することにより、信号電圧としてVs=Av・Vi/dが得られる。電圧−パルス幅変換発振回路(54)は一定の周波数、すなわち一定の周期T毎に信号電圧Vsに比例した長さ(時間)のパルス電圧波形を発生する。
【0049】
図9において、デューティ制御発振回路(17)から発生するパルス電圧波形においてデューティ比(α)は1(100%)を越えることができないため、パルス幅は発振の発振周期Tより長くすることはできない。そこでデューティ比(α)が1となるために必要な入力信号電圧を信号電圧の最大値VTと定め、入力電圧が極大値Vmの時の信号電圧の極大値Vsmax=Av・Vm/dが最大値VTを越えないように可変利得増幅回路(52)の利得Avを調整する。可変利得増幅回路(52)の出力である信号電圧Vsを監視しピーク電圧Vsmaxを検出して、検出したピーク電圧に基づいて可変利得増幅回路(52)の利得を調整するための信号電圧を供給する。
【0050】
入力電圧Viの振幅Vm(入力電圧波形の極大値)が小さい場合、図10のように可変利得増幅回路(52)は一定の最大利得Avmaxで動作して信号電圧を増幅し、電圧−パルス幅変換発振回路(54)に供給する。このときデューティ比(α)は入力電圧Viに比例し、図11のようにデューティ比(α)の最大値αmaxは入力電圧振幅Vmに比例する。入力電圧に対するデューティ比の比例係数kは一定となる。出力電圧はVout=(3/2)kVm2でありkが一定であるから出力電圧は入力電圧振幅の2乗に比例して増加する。
【0051】
入力電圧振幅Vmが大きくなり、可変利得増幅回路(52)が最大利得Avmaxで動作した場合に信号電圧Vsが定められた最大値VTを越えようとすると、ピーク電圧検出回路(53)が信号電圧の最大値を検出し、図10のように入力電圧振幅Vmの増加に反比例して利得Avを低下するように動作する。この結果、信号電圧Vsの最大値が常に定められた最大値VTとなるような信号電圧波形を生成することができ、図11のようにデューティ比(α)の最大値αmaxが入力電圧振幅Vmの大きさに関わらず1となるように動作する。従ってαmax=k・Vm=1であるから出力電圧Vout=(3/2)kVm2=(3/2)Vmとなり、出力電圧は入力電圧振幅に比例する。
【0052】
次に、本発明に係る多相交流発電装置の実施例を説明する。
交流発電機の出力電圧振幅、すなわち回路への入力電圧振幅は発電機の回転数fに比例して増加する。図12の実施例では、回転数fが50r.p.m.で電源回路が動作を始めて出力電圧が発生し、回転数fが小さくVmの値が小さいとき出力電圧Voは回転数すなわち入力電圧振幅の2乗に比例して増加し、回転数fが一定の値(実施例では140r.p.m.)を越えると出力電圧Voは回転数fすなわち入力電圧振幅に正比例して増加することが確かめられる。
【0053】
本発明に係る多相交流発電装置では、降圧チョッパ回路(半導体スイッチ)に与えるデューティ比(α)が入力瞬時電圧(Vi)に比例するように制御すると、図8に示す入力瞬時電圧(Vi)の2乗に比例した瞬時電圧出力に変換できる。
これにより、リップルの少ない直流電圧を得ることができ、入力パワー(回転速度×回転トルク)が常に一定であり多相交流発電機の振動・騒音が少ない。
【0054】
また、三相ブリッジ整流回路と比較して高い電圧が得られる。即ち、三相ブリッジ整流回路では、図8に示すように、最大でVm、本発明に係る多相交流発電装置では、図4に示すように、3/2倍の1.5Vmである(但し、Vmは正弦波電圧振幅)。
【0055】
更に、本発明に係る多相交流発電装置では、従来の高効率コンバータに比べて回路構成が単純で、発電機の電圧や周波数変動に対して速い応答が可能である。
【0056】
なお、本発明に係る多相交流発電装置では、三相交流発電機について説明したが、これに限定されるものでなく、2相(1/4周期ずれた位相)および4相以上の多相の交流発電機に適用しても良い。この場合、各相ごとに独立して交流電圧を出力し、各相に対応する2乗波形回路を接続する。
【0057】
また、本発明に係る多相交流発電装置では、従来のブリッジ整流回路と同じように出力電圧が発電機の回転数の増加とともに高くなるようにデューティ制御発振回路の制御を行ったが、負荷の特性に一致させるために出力電圧Voが発電機の回転数fによらず一定になるようにデューティ制御を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、多相交流発電機の電圧制御に対して好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 多相交流発電装置
2 多相交流発電機
3 電圧制御装置
5 1相電磁コイル
6 2相電磁コイル
7 3相電磁コイル
15 単相ブリッジ整流回路
16 降圧チョッパ回路
17 デューティ制御発振回路
18 電源回路
A1 1相2乗波形回路
B1 2相2乗波形回路
C1 3相2乗波形回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相交流発電機と、前記多相交流発電機の交流電圧を直流電圧に変換して出力する電圧制御装置を備えてなる多相交流発電装置において、
前記多相交流発電機は、
多相を相ごとに独立させて、該独立させた相ごとに交流電圧を出力する構成であり、
前記電圧制御装置は、
独立する各相ごとに独立して接続され、各相に対応する2乗波形回路を備え、
前記2乗波形回路は、
前記対応相に接続され、該相の交流電圧を整流する単相ブリッジ整流回路と、
前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、該単相ブリッジ整流回路から入力される入力電圧波形を変換して出力電圧波形を出力する降圧チョッパ回路と、
前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比を制御するデューティ制御発振回路を備え、
前記デューティ制御発振回路は、
前記単相ブリッジ整流回路から前記降圧チョッパ回路に入力される入力瞬時電圧を監視し、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比が前記入力瞬時電圧に比例するように制御するものであり、
前記各相の2乗波形回路は、降圧チョッパ回路の出力側で直列接続されていることを特徴とする多相交流発電装置。
【請求項2】
前記2乗波形回路は、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記デューティ制御発振回路及び前記降圧チョッパ回路に電源を供給する電源回路を有していることを特徴とする請求項1に記載の多相交流発電装置。
【請求項1】
多相交流発電機と、前記多相交流発電機の交流電圧を直流電圧に変換して出力する電圧制御装置を備えてなる多相交流発電装置において、
前記多相交流発電機は、
多相を相ごとに独立させて、該独立させた相ごとに交流電圧を出力する構成であり、
前記電圧制御装置は、
独立する各相ごとに独立して接続され、各相に対応する2乗波形回路を備え、
前記2乗波形回路は、
前記対応相に接続され、該相の交流電圧を整流する単相ブリッジ整流回路と、
前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、該単相ブリッジ整流回路から入力される入力電圧波形を変換して出力電圧波形を出力する降圧チョッパ回路と、
前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比を制御するデューティ制御発振回路を備え、
前記デューティ制御発振回路は、
前記単相ブリッジ整流回路から前記降圧チョッパ回路に入力される入力瞬時電圧を監視し、前記降圧チョッパ回路の半導体スイッチに与えるデューティ比が前記入力瞬時電圧に比例するように制御するものであり、
前記各相の2乗波形回路は、降圧チョッパ回路の出力側で直列接続されていることを特徴とする多相交流発電装置。
【請求項2】
前記2乗波形回路は、前記単相ブリッジ整流回路の出力側に接続され、前記デューティ制御発振回路及び前記降圧チョッパ回路に電源を供給する電源回路を有していることを特徴とする請求項1に記載の多相交流発電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−188594(P2011−188594A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49596(P2010−49596)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)
【出願人】(501158114)株式会社スカイ電子 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)
【出願人】(501158114)株式会社スカイ電子 (2)
【Fターム(参考)】
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