多糸条用ガイド
【課題】部品点数が少なく、組立てが容易であり、更に、折損し難い多糸条用ガイドを提供する。
【解決手段】ヤーンガイド9は、複数で列設されるガイドピース15を備える。隣り合う一対のガイドピース15によって、走行するフィラメント糸Yが収容される糸条収容空間Sが形成される。
【解決手段】ヤーンガイド9は、複数で列設されるガイドピース15を備える。隣り合う一対のガイドピース15によって、走行するフィラメント糸Yが収容される糸条収容空間Sが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糸条用ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として特許文献1(特開2005−179807号公報)は、走行糸条の経路を規制・保持するガイドを備えた交絡処理装置を開示する。即ち、特許文献1の図3に示されるように、糸条の交絡処理が行われる流体処理部の前後には、糸条の経路を規制する円柱形状の規制ガイドG1が複数並べて設けられ、更に、上記複数の規制ガイドG1に跨るように丸棒形状のバーガイドG2が設けられる。そして、隣り合う規制ガイドG1と、丸棒形状のバーガイドG2と、によって糸条の経路が形成される。
【0003】
また、特許文献2(特開2008−504462号公報)は、フィラメント糸を処理するためのノズルブロックの前後に配置されるヤーンガイドビームを開示する。このヤーンガイドビームは、特許文献2の図2に示されるように、一定数の糸の流れに対応して櫛形に構成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1の構成では、糸条の経路を実現するのに丸棒形状のバーガイドG2が必要であることから、部品点数が多く、組立てが容易ではない。また、上記特許文献2で採用される櫛形形状は一般に折損し易い傾向にある。
【0005】
本願発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、部品点数が少なく、組立てが容易であり、更に、折損し難い多糸条用ガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本願発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本願発明の観点によれば、以下のように構成される、多糸条用ガイドが提供される。即ち、前記多糸条用ガイドは、複数で列設される案内部材を備える。前記各案内部材には走行する糸条が収容される糸条収容空間が形成され、又は、隣り合う一対の前記案内部材によって上記糸条収容空間が形成される。以上の構成によれば、特許文献1の図3に開示される技術と比較して、丸棒形状のバーガイドG2を不要とできるので、その分、部品点数が少なく組立てが容易である。また、特許文献2の図2に開示される櫛形形状のヤーンガイドビームと比較して折損し難い。更には、上記の案内部材が損傷した場合は、損傷した案内部材のみを交換すればよいので、維持費を低減できる。
【0008】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記複数の案内部材の数を増減可能に構成した。以上の構成によれば、上記糸条収容空間の数を変更できる。
【0009】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記多糸条用ガイドは、長尺部材を備える。前記各案内部材は、上記長尺部材と係合することで、上記長尺部材によって支持される。以上の構成によれば、前記複数の案内部材の列設と、前記複数の案内部材の数の増減と、が簡素な構成で実現される。
【0010】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸条収容空間は、隣り合う一対の前記案内部材によって形成される。以上の構成によれば、前記各案内部材に上記糸条収容空間が形成される場合と比較して、前記案内部材の形状を簡素とすることができる。また、前記案内部材の形状が簡素となるので、上記糸条収容空間の狭ピッチ化に寄与し、もって、上記多糸条用ガイドを備えた設備のコンパクト化に貢献する。
【0011】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、隣り合う一対の前記案内部材の合わせ面の面方向は、前記糸条収容空間内に収容される上記糸条の走行方向に対して傾斜する。以上の構成によれば、上記糸条が、前記合わせ面の隙間に落ちることがないので、前記合わせ面の加工精度の観点から製造コストを低減できる。
【0012】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記各案内部材には、第一突部と、前記列設方向に対して垂直な方向における前記糸条の移動を規制する第二突部と、が形成される。前記の糸条収容空間は、隣り合う一対の上記第一突部によって形成されるスリットと、上記第二突部と、によって形成される。以上の構成によれば、前記糸条を三方向から支持する構成が簡素に実現される。
【0013】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記合わせ面の面方向と、上記糸条の走行方向と、の間の傾斜角は変更可能に構成される。以上の構成で、上記の傾斜角を変更すると、隣り合う一対の上記第一突部間の距離が増減する。従って、上記の構成によれば、前記スリットのスリット幅が変更可能になる。
【0014】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止する爪部が、隣り合う一対の前記案内部材のうち少なくとも何れか一方に形成される。以上の構成によれば、簡単な構成で、前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止できる。
【0015】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸条収容空間は、前記各案内部材に形成される。以上の構成によれば、上記糸条収容空間を、隣り合う一対の前記案内部材の合わせ面から離して形成する構成が実現される。
【0016】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記各案内部材には、前記糸条収容空間を外部と連通させるスリットと、前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止する爪部と、が形成される。以上の構成によれば、前記糸条収容空間へ上記糸条を挿入可能とする構成と、前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止する構成と、が簡素な構成で実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<第一実施形態>
以下、図1〜6を参照しつつ、本願発明に係る多糸条用ガイドを紡糸延伸装置に適用した第一実施形態を説明する。図1は、紡糸延伸装置(合成繊維糸の製造装置)の全体構成を示す模式図である。
【0018】
本図に示される紡糸延伸装置100では、口金1から吐出された溶融ポリマーの状態にある複数組のフィラメント糸Y(糸条)は、冷却装置2からの送風によって冷却固化され、オイリング装置3を経由して、糸条加熱装置4へ送られる。この糸条加熱装置4は、上下に配置される一対のローラ5・6を備え、このローラ5・6にフィラメント糸Yを巻き掛けつつ加熱するように構成される。
【0019】
糸条加熱装置4の下流側には引取ローラ7が設けられ、この引取ローラ7は、主ローラ7aと補助ローラ7bからなる。主ローラ7aは図略のモータで駆動される。そして、この引取ローラ7の主ローラ7aの周速度と上記の糸条加熱装置4のローラ5・6の周速度との間に所定の速度差が設定され、もって、糸条加熱装置4と引取ローラ7との間でフィラメント糸Yは延伸される。
【0020】
引取ローラ7の下流側には、複数組のフィラメント糸Yに対して同時に交絡を付与する交絡装置8が配設される。そして、この交絡装置8の上下には、複数組のフィラメント糸Yを案内するためのヤーンガイド9(多糸条用ガイド)が一対で設けられる。
【0021】
交絡装置8の更に下流側には、巻取装置11が配置される。この巻取装置11はスピンドル12を備え、このスピンドル12に、筒状に構成された糸巻取用の巻取ボビン13を複数本装着できるようになっており、同時に複数本の糸を巻き取れるようになっている。また、巻取装置11は接触ローラ10を備え、巻取ボビン13の外周面や、巻取ボビン13にフィラメント糸Yを巻き取って形成される糸層の外周面に、接触ローラ10を適宜の接圧で接触させながら巻取ボビン13にフィラメント糸Yを巻き取るように構成される。このときの巻取速度は、例えば6000m/分とされる。
【0022】
次に、上記のヤーンガイド9の構成を具体的に説明する。図2は、本願発明の第一実施形態に係るヤーンガイドの斜視図である。図3は、図2に類似する図であって、説明の都合上、ガイドレールの描画を省いた図である。図3(b)は、図3(a)のb矢視図である。
【0023】
図2に示されるように本実施形態に係るヤーンガイド9は、複数で列設されるガイドピース15(案内部材)と、このガイドピース15を支持するガイドレール16(長尺部材)と、を主たる構成として備える。
【0024】
上記のガイドレール16には断面C字状の蟻溝17が形成され、図3に示されるように、この蟻溝17に係合する係合突起18が各ガイドピース15に設けられる。この構成で、各ガイドピース15の係合突起18を上記のガイドレール16の蟻溝17と係合させることで、複数のガイドピース15がガイドレール16によって支持され、且つ、ガイドレール16の長手方向に沿って列設されるようになっている。また、図2に示されるように、この複数で列設されるガイドピース15を両端から挟むように、一対のストッパー19がガイドレール16に対して嵌合される。そして、この一対のストッパー19を、互いに近づく方向へ押圧した状態でガイドレール16に対して図略のネジ(固定手段)によって固定することで、ガイドレール16の長手方向に沿って列設される複数のガイドピース15が相互に密着するようになっている。なお、ガイドレール16上に列設されるガイドピース15の数は任意である。
【0025】
また、図2及び図3にはフィラメント糸Yが二点鎖線で示され、これらの図から判る通り、本実施形態に係るヤーンガイド9では、隣り合う一対のガイドピース15の間に、走行するフィラメント糸Yが収容される糸条収容空間Sが形成される。
【0026】
図4は、ガイドピースの拡大図である。即ち、図4(a)はガイドピース15の斜視図であり、図4(b)は図4(a)のb矢視図であり、図4(c)はガイドピース15の平面図である。
【0027】
図4(a)及び(b)に示されるようにガイドピース15は、上記のガイドレール16に対して係合する一対の係合突起18を含むベース部20と、このベース部20から突設され、糸条収容空間Sを形成するためのガイド部21と、から構成される。上記ベース部20は、本図(c)に示される平面視において平行四辺形とされ、隣り合う他のガイドピース15との合わせ面Fの面方向Fdと、フィラメント糸Yの走行方向Ydと、の間の傾斜角θは本実施形態において概ね25度とされる。
【0028】
さて、上記のガイド部21は、ベース部20上に垂直に突設される、第一突部22と第二突部23を主たる構成として有する。後者の第二突部23よりも背が高い第一突部22は、本図(c)の平面視でフィラメント糸Yの走行方向Ydと同じ方向に広がるように断面略正三角形状に形成され、フィラメント糸Yに対して水平方向(即ち、図2に示されるガイドレール16の長手方向、以下、同様。)において接触する。そして、フィラメント糸Yと接触する一対の隅部22aには十分な丸み付けと研磨が施される。また、本図(a)及び(b)に示されるように、第一突部22の上端には、後述するスリット24へのフィラメント糸Yの挿入を案内するガイド面22bが形成される。一方で、第二突部23は第一突部22よりもフィラメント糸Yの走行方向Ydの上流側に位置する。この第二突部23は、本図(c)の平面視におけるベース部20の走行方向Ydに対する傾斜に伴って、第一突部22に対して水平方向にズレて形成される。換言すれば、フィラメント糸Yの走行方向Ydの下流側からガイドピース15をみたとき、第二突部23は、第一突部22の裏に完全には隠れることなく、上記の隅部22aを跨ぐように映る位置関係にある。そして、この第二突部23は、フィラメント糸Yに対して垂直方向(即ち、第一突部22の突設方向、以下、同様。)において接触する。
【0029】
図5は、ヤーンガイドの平面図である。即ち、図5(a)はヤーンガイド9の平面図であり、図5(b)はヤーンガイド9の正面図である。図5(a)及び(b)に示されるように、上記のガイドピース15をガイドレール16上に敷き詰めると、隣り合う第一突部22の間にスリット幅wを有するスリット24が形成されると共に、このスリット24をフィラメント糸Yの走行方向Ydの下流側からみたとき、スリット24内に第二突部23が垣間見えるようになっている。
【0030】
以上の構成で、本実施形態に係るヤーンガイド9の糸条収容空間Sは、図2に示されるように、隣り合う一対のガイドピース15間に形成される。詳しくは、上記の糸条収容空間Sは、図5(b)に示されるように、隣り合う一対の第一突部22によって形成されるスリット24と、このスリット24内に垣間見える第二突部23と、によって形成される。そして、この糸条収容空間S内にフィラメント糸Yを挿入するには、本図(b)の符号Nで示される矢印の方向でフィラメント糸Yをスリット24内に挿入すればよい。この糸条収容空間S内で所望の張力を伴って走行するフィラメント糸Yのバタツキは、水平方向においては第一突部22によって規制され、垂直方向においては第二突部23によって規制される。
【0031】
図6は、ヤーンガイドの平面図である。本図に示されるように上記の傾斜角θは、上記合わせ面Fに対するストッパー19の合わせ面Gの面方向Gdと、フィラメント糸Yの走行方向Ydと、の間の傾斜によって決定され、スリット24のスリット幅wは上記の傾斜角θが支配的である。従って、本図(a)と(b)を比較して判る通り、合わせ面Gの面方向Gdが異なる複数のストッパー19を選択的に用いれば、上記のスリット幅wは自在に変更することができる。
【0032】
(まとめ)
以上説明したように上記第一実施形態においてヤーンガイド9は、以下のように構成される。即ち、ヤーンガイド9は、複数で列設されるガイドピース15を備える。隣り合う一対のガイドピース15によって、走行するフィラメント糸Yが収容される糸条収容空間Sが形成される。以上の構成によれば、特許文献1の図3に開示される技術と比較して、丸棒形状のバーガイドG2を不要とできるので、その分、部品点数が少なく組立てが容易である。また、特許文献2の図2に開示される櫛形形状のヤーンガイドビームと比較して折損し難い。更には、上記のガイドピース15が損傷した場合は、損傷したガイドピース15のみを交換すればよいので、維持費を低減できる。
【0033】
なお、上記の「列設」とは、図2に示されるような完全な列の態様で設けられる場合と、完全な列の態様ではなく、若干のズレを有する態様で設けられる場合と、を含む。
【0034】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、複数のガイドピース15の数を増減可能に構成した。以上の構成によれば、上記糸条収容空間Sの数を変更できる。なお、ガイドピース15の数を増減するには、一度、ストッパー19をガイドレール16から取り外せばよい。
【0035】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、ヤーンガイド9は、ガイドレール16を備える。各ガイドピース15は、上記ガイドレール16と係合することで、上記ガイドレール16によって支持される。以上の構成によれば、複数のガイドピース15の列設と、複数のガイドピース15の数の増減と、が簡素な構成で実現される。
【0036】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、糸条収容空間Sは、隣り合う一対のガイドピース15によって形成される。以上の構成によれば、各ガイドピース15に上記糸条収容空間Sが形成される場合と比較して、ガイドピース15の形状を簡素とすることができる。また、ガイドピース15の形状が簡素となるので、上記糸条収容空間Sの狭ピッチ化に寄与し、もって、上記ヤーンガイド9を備えた紡糸延伸装置100のコンパクト化に貢献する。
【0037】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、隣り合う一対のガイドピース15の合わせ面Fの面方向Fdは、糸条収容空間S内に収容される上記フィラメント糸Yの走行方向Ydに対して傾斜する。以上の構成によれば、上記フィラメント糸Yが、合わせ面Fの隙間に落ちることがないので、合わせ面Fの加工精度の観点から製造コストを低減できる。
【0038】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、各ガイドピース15には、第一突部22と、上記の列設方向に対して垂直な方向におけるフィラメント糸Yの移動を規制する第二突部23と、が形成される。上記の糸条収容空間Sは、隣り合う一対の上記第一突部22によって形成されるスリット24と、上記第二突部23と、によって形成される。以上の構成によれば、フィラメント糸Yを三方向から支持する構成が簡素に実現される。
【0039】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、合わせ面Fの面方向Fdと、上記フィラメント糸Yの走行方向Ydと、の間の傾斜角θは変更可能に構成される。以上の構成で、上記の傾斜角θを変更すると、隣り合う一対の上記第一突部22間の距離が増減する。従って、上記の構成によれば、スリット24のスリット幅wが変更可能になる。
【0040】
<第一実施形態の変形例>
次に、図7〜9を参照しつつ、上記第一実施形態の変形例を説明する。図7は、本願発明の第一実施形態の変形例に係るヤーンガイドの斜視図である。図8は、本変形例に係るガイドピースの拡大図である。即ち、図8(a)はガイドピース15の平面図であり、図8(b)はガイドピース15の正面図であり、図8(c)はガイドピース15の斜視図である。以下、本変形例が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜に割愛する。
【0041】
図4と図8を比較して判る通り、上記第一実施形態ではフィラメント糸Yの走行方向Ydに沿って第二突部23と第一突部22がこの順で形成される。これに対し、本変形例ではフィラメント糸Yの走行方向Ydに沿って第一突部22と第二突部23がこの順で形成される。
【0042】
上記第一実施形態においてベース部20は平面視で平行四辺形とした。これに対し、本変形例ではベース部20は平面視で長方形である。
【0043】
上記第一実施形態と異なり、本変形例では第一突部22はベース部20上から水平方向にはみ出るように形成される。
【0044】
図9は、本変形例に係るヤーンガイドの平面図である。図9(a)はヤーンガイド9の平面図であり、図9(b)はヤーンガイド9の正面図である。即ち、本変形例に係るガイドピース15は、図8(a)に示されるようにベース部20を平面視で平行四辺形に代えて長方形としながらも第一突部22をベース部20上から水平方向にはみ出るように形成したことで、上記第一実施形態と同様、図9(a)に示されるように、ヤーンガイド9をフィラメント糸Yの走行方向Ydの上流側からみたとき、スリット24内に第二突部23が垣間見えるようになっている。
【0045】
<第二実施形態>
次に、図10〜13を参照しつつ、本願発明の第二実施形態を説明する。図10は、図2に類似する図であって、本願発明の第二実施形態に係るヤーンガイドの斜視図である。即ち、図10(a)はヤーンガイド9の斜視図であって、図10(b)は図10(a)のb矢視図である。図11及び図12は、ガイドピースの拡大図である。即ち、図11(a)及び(b)はガイドピース15の斜視図であって、図11(b)は図11(a)のb矢視図である。また、図12(a)はガイドピース15の正面図、図12(b)はガイドピース15の左側面図、図12(c)はガイドピース15の右側面図、図12(d)はガイドピース15の平面図、図12(d’)は図12(d)のd’部の部分拡大図である。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜に割愛する。
【0046】
図10(a)及び(b)に示されるように本実施形態に係るヤーンガイド9は、上記第一実施形態に係るヤーンガイド9と同様、隣り合う一対のガイドピース15の間に、走行するフィラメント糸Yが収容される糸条収容空間Sが形成される。
【0047】
本実施形態に係るヤーンガイド9は、上記第一実施形態に係るヤーンガイド9と比べて、上記ガイドピース15の構成が異なる。以下、図11〜13に基づいて本実施形態に係るヤーンガイド9のガイドピース15の構成を説明する。
【0048】
図12(a)〜(c)に示される通り、上記のガイド部21は、ベース部20上に垂直に突設される第三突部30を主たる構成として有する。第三突部30は、本図(d)に示される通り、ベース部20と同様、平面視で平行四辺形状かつ点対称に形成される。そして、この平行四辺形の四つの隅部のうち鋭角となる一対の隅部には、本図(a)に示されるように、水平方向に開口する切欠き31が凹設される。本実施形態では、この切欠き31が前述の糸条収容空間Sを構成する主要な部分となる。また、上記第三突部30には、切欠き31を取り囲う円錐状のテーパ面32が凹設され、もって、切欠き31の内壁面とフィラメント糸Yとの接触距離の短縮が図られる。ベース部20と切欠き31を挟んで反対側には、上記切欠き31の形成に伴って爪部33が現出する。この爪部33は、切欠き31に対して、第三突部30の突設方向と反対の方向において覆い被さるように現出する。そして、この爪部33から第三突部30の上端に向かって滑らかに湾曲するガイド面30aが形成される。また、第三突部30には、合わせ面Fと平行であって、切欠き31に接続するスリット面fが形成される。このスリット面fは、巨視的に見れば合わせ面Fと同一面内であり、微視的に見れば図12(d’)に示されるように合わせ面Fと同一面内にはなく、ベース部20の平面視における輪郭よりも内側に位置する。
【0049】
図13は、ヤーンガイドの平面図である。即ち、図13(a)はヤーンガイド9の平面図であり、図13(b)はヤーンガイド9の正面図である。また、図13(c)は図13(b)のc部の部分拡大図であり、図13(d)は図13(a)のd部の部分拡大図である。図13(a)及び(b)に示されるように、上記のガイドピース15をガイドレール16上に敷き詰めると、隣り合う第三突部30の間にスリット24が形成される。詳しくは、図13(d)に示されるように、隣り合う第三突部30の合わせ面Fを挟む位置で対向する一対のスリット面fによってスリット24が形成される。
【0050】
本実施形態に係るヤーンガイド9の糸条収容空間Sは、隣り合う一対のガイドピース15間に形成される。詳しくは、上記の糸条収容空間Sは、本図(c)に示されるように、隣り合う一対の第三突部30の切欠き31によって形成される。前述の爪部33は、一対の切欠き31によって形成される糸条収容空間S内に収容されたフィラメント糸Yの、糸条収容空間Sからの抜け止めとしての機能を発揮する。そして、この糸条収容空間S内にフィラメント糸Yを挿入するには、本図(b)の符号Nで示される矢印の方向でフィラメント糸Yをスリット24内に挿入すればよい。なお、本図(a)に示されるように本実施形態においてスリット24はフィラメント糸Yの走行方向Ydに対して傾斜して形成されるので、上記の挿入の際、フィラメント糸Yは、糸条収容空間Sに至る前に一度、スリット24の傾斜に沿って屈曲されることとなる。さて、この糸条収容空間S内で所望の張力を伴って走行するフィラメント糸Yのバタツキは、切欠き31の内壁面によって規制される。特に、フィラメント糸Yの垂直方向におけるバタツキは、上記の爪部33によって効果的に規制されることとなる。
【0051】
(まとめ)
以上説明したように本実施形態においてヤーンガイド9は、以下のように構成される。即ち、糸条収容空間Sからの上記フィラメント糸Yの抜けを防止する爪部33が、隣り合う一対のガイドピース15の両方に形成される。以上の構成によれば、簡単な構成で、糸条収容空間Sからの上記フィラメント糸Yの抜けを防止できる。
【0052】
なお、上記実施形態では、図13(c)に示されるように、隣り合う一対のガイドピース15の両方に上記の爪部33を形成することとしたが、これに代えて、隣り合う一対のガイドピース15のうち何れか一方のみに爪部33を形成する構成も考えられる。この場合でも、上記の抜け止めとしての機能は発揮される。
【0053】
<第三実施形態>
次に、図14〜16を参照しつつ、本願発明の第三実施形態を説明する。図14は、図2に類似する図であって、本願発明の第三実施形態に係るヤーンガイドの斜視図である。図15は、ガイドピースの拡大図である。即ち、図15(a)はガイドピース15の斜視図であり、図15(b)はガイドピース15の平面図である。図16は、ガイドピースの正面図である。即ち、図16(a)はガイドピース15の正面図であり、図16(b)はガイドピース15の背面図である。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜に割愛する。
【0054】
図14に示されるように本実施形態に係るヤーンガイド9は、上記第一実施形態及び第二実施形態に係るヤーンガイド9と異なり、各ガイドピース15に、走行するフィラメント糸Yが収容される糸条収容空間Sが形成される。
【0055】
本実施形態に係るヤーンガイド9は、上記第一実施形態に係るヤーンガイド9と、上記ガイドピース15の構成が異なる。以下、図15〜16に基づいて本実施形態に係るヤーンガイド9のガイドピース15の構成を説明する。
【0056】
図16(a)及び(b)に示されるように、ベース部20上に垂直に突設されるガイド部21の正面視中央には、フィラメント糸Yの走行方向Ydに沿う貫通孔41が穿設され、図15(a)及び(b)に示されるように、ガイド部21の上端からベース部20へ向かって貫通孔41に至るまでスリット24が刻設される。このスリット24は、図15(b)の平面視においてフィラメント糸Yの走行方向Ydに対して概ね45度、傾斜して形成される。このスリット24の存在により、ガイド部21の主たる構成は、本図(b)の平面視において略台形状ないし略三角形状となる一対の第四突部40であると言える。各第四突部40には、図16(a)及び(b)に示されるように、貫通孔41を取り囲う円錐状のテーパ面42が凹設され、もって、貫通孔41の内壁面とフィラメント糸Yとの接触距離の短縮が図られる。ベース部20と貫通孔41を挟んで反対側には、上記貫通孔41とスリット24の形成に伴って、爪部43が現出する。この爪部43は、貫通孔41に対して、第四突部40の突設方向と反対の方向において覆い被さるように現出する。そして、爪部43から第四突部40の上端に向かって滑らかに湾曲するガイド面40aが形成される。図15(b)に示されるように、本実施形態に係るガイドピース15は、上記第二実施形態に係るガイドピース15と同様、平面視で点対称である。
【0057】
以上の構成で、本実施形態に係るヤーンガイド9の糸条収容空間Sは、図14に示されるように、各ガイドピース15に形成される。詳しくは、上記の糸条収容空間Sは、図16(a)及び(b)に示されるように、貫通孔41によって形成される。前述の爪部43は、貫通孔41によって形成される糸条収容空間S内に収容されたフィラメント糸Yの、糸条収容空間Sからの抜け止めとしての機能を発揮する。そして、この糸条収容空間S内にフィラメント糸Yを挿入するには、図15(a)の符号Nで示される矢印の方向でフィラメント糸Yをスリット24内に挿入すればよい。なお、上記第二実施形態と同様、図15(b)に示されるように本実施形態においてスリット24はフィラメント糸Yの走行方向Ydに対して傾斜して形成されるので、上記の挿入の際、フィラメント糸Yは、糸条収容空間Sに至る前に一度、スリット24の傾斜に沿って屈曲されることとなる。さて、この糸条収容空間S内で所望の張力を伴って走行するフィラメント糸Yのバタツキは、貫通孔41の内壁面によって規制される。特に、フィラメント糸Yの垂直方向におけるバタツキは、上記の爪部43によって効果的に規制されることとなる。
【0058】
(まとめ)
以上説明したように上記実施形態においてヤーンガイド9は、以下のように構成される。即ち、糸条収容空間Sは、各ガイドピース15に形成される。以上の構成によれば、上記糸条収容空間Sを、隣り合う一対のガイドピース15の合わせ面Fから離して形成する構成が実現される。
【0059】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、各ガイドピース15には、糸条収容空間Sを外部と連通させるスリット24と、糸条収容空間Sからの上記フィラメント糸Yの抜けを防止する爪部33と、が形成される。以上の構成によれば、糸条収容空間Sへ上記フィラメント糸Yを挿入可能とする構成と、糸条収容空間Sからの上記フィラメント糸Yの抜けを防止する構成と、が簡素な構成で実現される。
【0060】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0061】
即ち、以上の説明においては、ヤーンガイド9を紡糸延伸装置100に適用したケースを例示したが、ヤーンガイド9の用途は紡糸延伸装置100に限られず、多糸条を狭いスペースで取り扱う繊維機械にも適用できる。紡糸延伸装置100以外の繊維機械としては、例えば、整経機などが挙げられる。
【0062】
また、上記各実施形態では、糸条としてフィラメント糸Yを例示したが、ヤーンガイド9はフィラメント糸Y以外の糸条に対しても適用できる。フィラメント糸Y以外の糸条としては、綿糸や羊毛等のスパン糸(紡績糸)が該当する。
【0063】
また、上記各実施形態においてヤーンガイド9は、図1に示される通り、交絡装置8の近傍に設けられているが、これに限らず、交絡装置8から離れた位置に配置する構成が考えられる。
【0064】
最後に、例えば、図2においてフィラメント糸Yの本数がガイドピース15の配設数に比べて相当少なくなっているのは、単に、説明の便宜を図るためである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】紡糸延伸装置(合成繊維糸の製造装置)の全体構成を示す模式図
【図2】本願発明の第一実施形態に係るヤーンガイドの斜視図
【図3】図2に類似する図であって、説明の都合上、ガイドレールの描画を省いた図
【図4】ガイドピースの拡大図
【図5】ヤーンガイドの平面図
【図6】ヤーンガイドの平面図
【図7】本願発明の第一実施形態の変形例に係るヤーンガイドの斜視図
【図8】本変形例に係るガイドピースの拡大図
【図9】本変形例に係るヤーンガイドの平面図
【図10】図2に類似する図であって、本願発明の第二実施形態に係るヤーンガイドの斜視図
【図11】ガイドピースの拡大図
【図12】ガイドピースの拡大図
【図13】ヤーンガイドの平面図
【図14】図2に類似する図であって、本願発明の第三実施形態に係るヤーンガイドの斜視図
【図15】ガイドピースの拡大図
【図16】ガイドピースの正面図
【符号の説明】
【0066】
9 ヤーンガイド
15 ガイドピース
S 糸条収容空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糸条用ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として特許文献1(特開2005−179807号公報)は、走行糸条の経路を規制・保持するガイドを備えた交絡処理装置を開示する。即ち、特許文献1の図3に示されるように、糸条の交絡処理が行われる流体処理部の前後には、糸条の経路を規制する円柱形状の規制ガイドG1が複数並べて設けられ、更に、上記複数の規制ガイドG1に跨るように丸棒形状のバーガイドG2が設けられる。そして、隣り合う規制ガイドG1と、丸棒形状のバーガイドG2と、によって糸条の経路が形成される。
【0003】
また、特許文献2(特開2008−504462号公報)は、フィラメント糸を処理するためのノズルブロックの前後に配置されるヤーンガイドビームを開示する。このヤーンガイドビームは、特許文献2の図2に示されるように、一定数の糸の流れに対応して櫛形に構成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1の構成では、糸条の経路を実現するのに丸棒形状のバーガイドG2が必要であることから、部品点数が多く、組立てが容易ではない。また、上記特許文献2で採用される櫛形形状は一般に折損し易い傾向にある。
【0005】
本願発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、部品点数が少なく、組立てが容易であり、更に、折損し難い多糸条用ガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本願発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本願発明の観点によれば、以下のように構成される、多糸条用ガイドが提供される。即ち、前記多糸条用ガイドは、複数で列設される案内部材を備える。前記各案内部材には走行する糸条が収容される糸条収容空間が形成され、又は、隣り合う一対の前記案内部材によって上記糸条収容空間が形成される。以上の構成によれば、特許文献1の図3に開示される技術と比較して、丸棒形状のバーガイドG2を不要とできるので、その分、部品点数が少なく組立てが容易である。また、特許文献2の図2に開示される櫛形形状のヤーンガイドビームと比較して折損し難い。更には、上記の案内部材が損傷した場合は、損傷した案内部材のみを交換すればよいので、維持費を低減できる。
【0008】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記複数の案内部材の数を増減可能に構成した。以上の構成によれば、上記糸条収容空間の数を変更できる。
【0009】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記多糸条用ガイドは、長尺部材を備える。前記各案内部材は、上記長尺部材と係合することで、上記長尺部材によって支持される。以上の構成によれば、前記複数の案内部材の列設と、前記複数の案内部材の数の増減と、が簡素な構成で実現される。
【0010】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸条収容空間は、隣り合う一対の前記案内部材によって形成される。以上の構成によれば、前記各案内部材に上記糸条収容空間が形成される場合と比較して、前記案内部材の形状を簡素とすることができる。また、前記案内部材の形状が簡素となるので、上記糸条収容空間の狭ピッチ化に寄与し、もって、上記多糸条用ガイドを備えた設備のコンパクト化に貢献する。
【0011】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、隣り合う一対の前記案内部材の合わせ面の面方向は、前記糸条収容空間内に収容される上記糸条の走行方向に対して傾斜する。以上の構成によれば、上記糸条が、前記合わせ面の隙間に落ちることがないので、前記合わせ面の加工精度の観点から製造コストを低減できる。
【0012】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記各案内部材には、第一突部と、前記列設方向に対して垂直な方向における前記糸条の移動を規制する第二突部と、が形成される。前記の糸条収容空間は、隣り合う一対の上記第一突部によって形成されるスリットと、上記第二突部と、によって形成される。以上の構成によれば、前記糸条を三方向から支持する構成が簡素に実現される。
【0013】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記合わせ面の面方向と、上記糸条の走行方向と、の間の傾斜角は変更可能に構成される。以上の構成で、上記の傾斜角を変更すると、隣り合う一対の上記第一突部間の距離が増減する。従って、上記の構成によれば、前記スリットのスリット幅が変更可能になる。
【0014】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止する爪部が、隣り合う一対の前記案内部材のうち少なくとも何れか一方に形成される。以上の構成によれば、簡単な構成で、前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止できる。
【0015】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸条収容空間は、前記各案内部材に形成される。以上の構成によれば、上記糸条収容空間を、隣り合う一対の前記案内部材の合わせ面から離して形成する構成が実現される。
【0016】
上記の多糸条用ガイドは、更に、以下のように構成される。即ち、前記各案内部材には、前記糸条収容空間を外部と連通させるスリットと、前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止する爪部と、が形成される。以上の構成によれば、前記糸条収容空間へ上記糸条を挿入可能とする構成と、前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止する構成と、が簡素な構成で実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<第一実施形態>
以下、図1〜6を参照しつつ、本願発明に係る多糸条用ガイドを紡糸延伸装置に適用した第一実施形態を説明する。図1は、紡糸延伸装置(合成繊維糸の製造装置)の全体構成を示す模式図である。
【0018】
本図に示される紡糸延伸装置100では、口金1から吐出された溶融ポリマーの状態にある複数組のフィラメント糸Y(糸条)は、冷却装置2からの送風によって冷却固化され、オイリング装置3を経由して、糸条加熱装置4へ送られる。この糸条加熱装置4は、上下に配置される一対のローラ5・6を備え、このローラ5・6にフィラメント糸Yを巻き掛けつつ加熱するように構成される。
【0019】
糸条加熱装置4の下流側には引取ローラ7が設けられ、この引取ローラ7は、主ローラ7aと補助ローラ7bからなる。主ローラ7aは図略のモータで駆動される。そして、この引取ローラ7の主ローラ7aの周速度と上記の糸条加熱装置4のローラ5・6の周速度との間に所定の速度差が設定され、もって、糸条加熱装置4と引取ローラ7との間でフィラメント糸Yは延伸される。
【0020】
引取ローラ7の下流側には、複数組のフィラメント糸Yに対して同時に交絡を付与する交絡装置8が配設される。そして、この交絡装置8の上下には、複数組のフィラメント糸Yを案内するためのヤーンガイド9(多糸条用ガイド)が一対で設けられる。
【0021】
交絡装置8の更に下流側には、巻取装置11が配置される。この巻取装置11はスピンドル12を備え、このスピンドル12に、筒状に構成された糸巻取用の巻取ボビン13を複数本装着できるようになっており、同時に複数本の糸を巻き取れるようになっている。また、巻取装置11は接触ローラ10を備え、巻取ボビン13の外周面や、巻取ボビン13にフィラメント糸Yを巻き取って形成される糸層の外周面に、接触ローラ10を適宜の接圧で接触させながら巻取ボビン13にフィラメント糸Yを巻き取るように構成される。このときの巻取速度は、例えば6000m/分とされる。
【0022】
次に、上記のヤーンガイド9の構成を具体的に説明する。図2は、本願発明の第一実施形態に係るヤーンガイドの斜視図である。図3は、図2に類似する図であって、説明の都合上、ガイドレールの描画を省いた図である。図3(b)は、図3(a)のb矢視図である。
【0023】
図2に示されるように本実施形態に係るヤーンガイド9は、複数で列設されるガイドピース15(案内部材)と、このガイドピース15を支持するガイドレール16(長尺部材)と、を主たる構成として備える。
【0024】
上記のガイドレール16には断面C字状の蟻溝17が形成され、図3に示されるように、この蟻溝17に係合する係合突起18が各ガイドピース15に設けられる。この構成で、各ガイドピース15の係合突起18を上記のガイドレール16の蟻溝17と係合させることで、複数のガイドピース15がガイドレール16によって支持され、且つ、ガイドレール16の長手方向に沿って列設されるようになっている。また、図2に示されるように、この複数で列設されるガイドピース15を両端から挟むように、一対のストッパー19がガイドレール16に対して嵌合される。そして、この一対のストッパー19を、互いに近づく方向へ押圧した状態でガイドレール16に対して図略のネジ(固定手段)によって固定することで、ガイドレール16の長手方向に沿って列設される複数のガイドピース15が相互に密着するようになっている。なお、ガイドレール16上に列設されるガイドピース15の数は任意である。
【0025】
また、図2及び図3にはフィラメント糸Yが二点鎖線で示され、これらの図から判る通り、本実施形態に係るヤーンガイド9では、隣り合う一対のガイドピース15の間に、走行するフィラメント糸Yが収容される糸条収容空間Sが形成される。
【0026】
図4は、ガイドピースの拡大図である。即ち、図4(a)はガイドピース15の斜視図であり、図4(b)は図4(a)のb矢視図であり、図4(c)はガイドピース15の平面図である。
【0027】
図4(a)及び(b)に示されるようにガイドピース15は、上記のガイドレール16に対して係合する一対の係合突起18を含むベース部20と、このベース部20から突設され、糸条収容空間Sを形成するためのガイド部21と、から構成される。上記ベース部20は、本図(c)に示される平面視において平行四辺形とされ、隣り合う他のガイドピース15との合わせ面Fの面方向Fdと、フィラメント糸Yの走行方向Ydと、の間の傾斜角θは本実施形態において概ね25度とされる。
【0028】
さて、上記のガイド部21は、ベース部20上に垂直に突設される、第一突部22と第二突部23を主たる構成として有する。後者の第二突部23よりも背が高い第一突部22は、本図(c)の平面視でフィラメント糸Yの走行方向Ydと同じ方向に広がるように断面略正三角形状に形成され、フィラメント糸Yに対して水平方向(即ち、図2に示されるガイドレール16の長手方向、以下、同様。)において接触する。そして、フィラメント糸Yと接触する一対の隅部22aには十分な丸み付けと研磨が施される。また、本図(a)及び(b)に示されるように、第一突部22の上端には、後述するスリット24へのフィラメント糸Yの挿入を案内するガイド面22bが形成される。一方で、第二突部23は第一突部22よりもフィラメント糸Yの走行方向Ydの上流側に位置する。この第二突部23は、本図(c)の平面視におけるベース部20の走行方向Ydに対する傾斜に伴って、第一突部22に対して水平方向にズレて形成される。換言すれば、フィラメント糸Yの走行方向Ydの下流側からガイドピース15をみたとき、第二突部23は、第一突部22の裏に完全には隠れることなく、上記の隅部22aを跨ぐように映る位置関係にある。そして、この第二突部23は、フィラメント糸Yに対して垂直方向(即ち、第一突部22の突設方向、以下、同様。)において接触する。
【0029】
図5は、ヤーンガイドの平面図である。即ち、図5(a)はヤーンガイド9の平面図であり、図5(b)はヤーンガイド9の正面図である。図5(a)及び(b)に示されるように、上記のガイドピース15をガイドレール16上に敷き詰めると、隣り合う第一突部22の間にスリット幅wを有するスリット24が形成されると共に、このスリット24をフィラメント糸Yの走行方向Ydの下流側からみたとき、スリット24内に第二突部23が垣間見えるようになっている。
【0030】
以上の構成で、本実施形態に係るヤーンガイド9の糸条収容空間Sは、図2に示されるように、隣り合う一対のガイドピース15間に形成される。詳しくは、上記の糸条収容空間Sは、図5(b)に示されるように、隣り合う一対の第一突部22によって形成されるスリット24と、このスリット24内に垣間見える第二突部23と、によって形成される。そして、この糸条収容空間S内にフィラメント糸Yを挿入するには、本図(b)の符号Nで示される矢印の方向でフィラメント糸Yをスリット24内に挿入すればよい。この糸条収容空間S内で所望の張力を伴って走行するフィラメント糸Yのバタツキは、水平方向においては第一突部22によって規制され、垂直方向においては第二突部23によって規制される。
【0031】
図6は、ヤーンガイドの平面図である。本図に示されるように上記の傾斜角θは、上記合わせ面Fに対するストッパー19の合わせ面Gの面方向Gdと、フィラメント糸Yの走行方向Ydと、の間の傾斜によって決定され、スリット24のスリット幅wは上記の傾斜角θが支配的である。従って、本図(a)と(b)を比較して判る通り、合わせ面Gの面方向Gdが異なる複数のストッパー19を選択的に用いれば、上記のスリット幅wは自在に変更することができる。
【0032】
(まとめ)
以上説明したように上記第一実施形態においてヤーンガイド9は、以下のように構成される。即ち、ヤーンガイド9は、複数で列設されるガイドピース15を備える。隣り合う一対のガイドピース15によって、走行するフィラメント糸Yが収容される糸条収容空間Sが形成される。以上の構成によれば、特許文献1の図3に開示される技術と比較して、丸棒形状のバーガイドG2を不要とできるので、その分、部品点数が少なく組立てが容易である。また、特許文献2の図2に開示される櫛形形状のヤーンガイドビームと比較して折損し難い。更には、上記のガイドピース15が損傷した場合は、損傷したガイドピース15のみを交換すればよいので、維持費を低減できる。
【0033】
なお、上記の「列設」とは、図2に示されるような完全な列の態様で設けられる場合と、完全な列の態様ではなく、若干のズレを有する態様で設けられる場合と、を含む。
【0034】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、複数のガイドピース15の数を増減可能に構成した。以上の構成によれば、上記糸条収容空間Sの数を変更できる。なお、ガイドピース15の数を増減するには、一度、ストッパー19をガイドレール16から取り外せばよい。
【0035】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、ヤーンガイド9は、ガイドレール16を備える。各ガイドピース15は、上記ガイドレール16と係合することで、上記ガイドレール16によって支持される。以上の構成によれば、複数のガイドピース15の列設と、複数のガイドピース15の数の増減と、が簡素な構成で実現される。
【0036】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、糸条収容空間Sは、隣り合う一対のガイドピース15によって形成される。以上の構成によれば、各ガイドピース15に上記糸条収容空間Sが形成される場合と比較して、ガイドピース15の形状を簡素とすることができる。また、ガイドピース15の形状が簡素となるので、上記糸条収容空間Sの狭ピッチ化に寄与し、もって、上記ヤーンガイド9を備えた紡糸延伸装置100のコンパクト化に貢献する。
【0037】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、隣り合う一対のガイドピース15の合わせ面Fの面方向Fdは、糸条収容空間S内に収容される上記フィラメント糸Yの走行方向Ydに対して傾斜する。以上の構成によれば、上記フィラメント糸Yが、合わせ面Fの隙間に落ちることがないので、合わせ面Fの加工精度の観点から製造コストを低減できる。
【0038】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、各ガイドピース15には、第一突部22と、上記の列設方向に対して垂直な方向におけるフィラメント糸Yの移動を規制する第二突部23と、が形成される。上記の糸条収容空間Sは、隣り合う一対の上記第一突部22によって形成されるスリット24と、上記第二突部23と、によって形成される。以上の構成によれば、フィラメント糸Yを三方向から支持する構成が簡素に実現される。
【0039】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、合わせ面Fの面方向Fdと、上記フィラメント糸Yの走行方向Ydと、の間の傾斜角θは変更可能に構成される。以上の構成で、上記の傾斜角θを変更すると、隣り合う一対の上記第一突部22間の距離が増減する。従って、上記の構成によれば、スリット24のスリット幅wが変更可能になる。
【0040】
<第一実施形態の変形例>
次に、図7〜9を参照しつつ、上記第一実施形態の変形例を説明する。図7は、本願発明の第一実施形態の変形例に係るヤーンガイドの斜視図である。図8は、本変形例に係るガイドピースの拡大図である。即ち、図8(a)はガイドピース15の平面図であり、図8(b)はガイドピース15の正面図であり、図8(c)はガイドピース15の斜視図である。以下、本変形例が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜に割愛する。
【0041】
図4と図8を比較して判る通り、上記第一実施形態ではフィラメント糸Yの走行方向Ydに沿って第二突部23と第一突部22がこの順で形成される。これに対し、本変形例ではフィラメント糸Yの走行方向Ydに沿って第一突部22と第二突部23がこの順で形成される。
【0042】
上記第一実施形態においてベース部20は平面視で平行四辺形とした。これに対し、本変形例ではベース部20は平面視で長方形である。
【0043】
上記第一実施形態と異なり、本変形例では第一突部22はベース部20上から水平方向にはみ出るように形成される。
【0044】
図9は、本変形例に係るヤーンガイドの平面図である。図9(a)はヤーンガイド9の平面図であり、図9(b)はヤーンガイド9の正面図である。即ち、本変形例に係るガイドピース15は、図8(a)に示されるようにベース部20を平面視で平行四辺形に代えて長方形としながらも第一突部22をベース部20上から水平方向にはみ出るように形成したことで、上記第一実施形態と同様、図9(a)に示されるように、ヤーンガイド9をフィラメント糸Yの走行方向Ydの上流側からみたとき、スリット24内に第二突部23が垣間見えるようになっている。
【0045】
<第二実施形態>
次に、図10〜13を参照しつつ、本願発明の第二実施形態を説明する。図10は、図2に類似する図であって、本願発明の第二実施形態に係るヤーンガイドの斜視図である。即ち、図10(a)はヤーンガイド9の斜視図であって、図10(b)は図10(a)のb矢視図である。図11及び図12は、ガイドピースの拡大図である。即ち、図11(a)及び(b)はガイドピース15の斜視図であって、図11(b)は図11(a)のb矢視図である。また、図12(a)はガイドピース15の正面図、図12(b)はガイドピース15の左側面図、図12(c)はガイドピース15の右側面図、図12(d)はガイドピース15の平面図、図12(d’)は図12(d)のd’部の部分拡大図である。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜に割愛する。
【0046】
図10(a)及び(b)に示されるように本実施形態に係るヤーンガイド9は、上記第一実施形態に係るヤーンガイド9と同様、隣り合う一対のガイドピース15の間に、走行するフィラメント糸Yが収容される糸条収容空間Sが形成される。
【0047】
本実施形態に係るヤーンガイド9は、上記第一実施形態に係るヤーンガイド9と比べて、上記ガイドピース15の構成が異なる。以下、図11〜13に基づいて本実施形態に係るヤーンガイド9のガイドピース15の構成を説明する。
【0048】
図12(a)〜(c)に示される通り、上記のガイド部21は、ベース部20上に垂直に突設される第三突部30を主たる構成として有する。第三突部30は、本図(d)に示される通り、ベース部20と同様、平面視で平行四辺形状かつ点対称に形成される。そして、この平行四辺形の四つの隅部のうち鋭角となる一対の隅部には、本図(a)に示されるように、水平方向に開口する切欠き31が凹設される。本実施形態では、この切欠き31が前述の糸条収容空間Sを構成する主要な部分となる。また、上記第三突部30には、切欠き31を取り囲う円錐状のテーパ面32が凹設され、もって、切欠き31の内壁面とフィラメント糸Yとの接触距離の短縮が図られる。ベース部20と切欠き31を挟んで反対側には、上記切欠き31の形成に伴って爪部33が現出する。この爪部33は、切欠き31に対して、第三突部30の突設方向と反対の方向において覆い被さるように現出する。そして、この爪部33から第三突部30の上端に向かって滑らかに湾曲するガイド面30aが形成される。また、第三突部30には、合わせ面Fと平行であって、切欠き31に接続するスリット面fが形成される。このスリット面fは、巨視的に見れば合わせ面Fと同一面内であり、微視的に見れば図12(d’)に示されるように合わせ面Fと同一面内にはなく、ベース部20の平面視における輪郭よりも内側に位置する。
【0049】
図13は、ヤーンガイドの平面図である。即ち、図13(a)はヤーンガイド9の平面図であり、図13(b)はヤーンガイド9の正面図である。また、図13(c)は図13(b)のc部の部分拡大図であり、図13(d)は図13(a)のd部の部分拡大図である。図13(a)及び(b)に示されるように、上記のガイドピース15をガイドレール16上に敷き詰めると、隣り合う第三突部30の間にスリット24が形成される。詳しくは、図13(d)に示されるように、隣り合う第三突部30の合わせ面Fを挟む位置で対向する一対のスリット面fによってスリット24が形成される。
【0050】
本実施形態に係るヤーンガイド9の糸条収容空間Sは、隣り合う一対のガイドピース15間に形成される。詳しくは、上記の糸条収容空間Sは、本図(c)に示されるように、隣り合う一対の第三突部30の切欠き31によって形成される。前述の爪部33は、一対の切欠き31によって形成される糸条収容空間S内に収容されたフィラメント糸Yの、糸条収容空間Sからの抜け止めとしての機能を発揮する。そして、この糸条収容空間S内にフィラメント糸Yを挿入するには、本図(b)の符号Nで示される矢印の方向でフィラメント糸Yをスリット24内に挿入すればよい。なお、本図(a)に示されるように本実施形態においてスリット24はフィラメント糸Yの走行方向Ydに対して傾斜して形成されるので、上記の挿入の際、フィラメント糸Yは、糸条収容空間Sに至る前に一度、スリット24の傾斜に沿って屈曲されることとなる。さて、この糸条収容空間S内で所望の張力を伴って走行するフィラメント糸Yのバタツキは、切欠き31の内壁面によって規制される。特に、フィラメント糸Yの垂直方向におけるバタツキは、上記の爪部33によって効果的に規制されることとなる。
【0051】
(まとめ)
以上説明したように本実施形態においてヤーンガイド9は、以下のように構成される。即ち、糸条収容空間Sからの上記フィラメント糸Yの抜けを防止する爪部33が、隣り合う一対のガイドピース15の両方に形成される。以上の構成によれば、簡単な構成で、糸条収容空間Sからの上記フィラメント糸Yの抜けを防止できる。
【0052】
なお、上記実施形態では、図13(c)に示されるように、隣り合う一対のガイドピース15の両方に上記の爪部33を形成することとしたが、これに代えて、隣り合う一対のガイドピース15のうち何れか一方のみに爪部33を形成する構成も考えられる。この場合でも、上記の抜け止めとしての機能は発揮される。
【0053】
<第三実施形態>
次に、図14〜16を参照しつつ、本願発明の第三実施形態を説明する。図14は、図2に類似する図であって、本願発明の第三実施形態に係るヤーンガイドの斜視図である。図15は、ガイドピースの拡大図である。即ち、図15(a)はガイドピース15の斜視図であり、図15(b)はガイドピース15の平面図である。図16は、ガイドピースの正面図である。即ち、図16(a)はガイドピース15の正面図であり、図16(b)はガイドピース15の背面図である。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜に割愛する。
【0054】
図14に示されるように本実施形態に係るヤーンガイド9は、上記第一実施形態及び第二実施形態に係るヤーンガイド9と異なり、各ガイドピース15に、走行するフィラメント糸Yが収容される糸条収容空間Sが形成される。
【0055】
本実施形態に係るヤーンガイド9は、上記第一実施形態に係るヤーンガイド9と、上記ガイドピース15の構成が異なる。以下、図15〜16に基づいて本実施形態に係るヤーンガイド9のガイドピース15の構成を説明する。
【0056】
図16(a)及び(b)に示されるように、ベース部20上に垂直に突設されるガイド部21の正面視中央には、フィラメント糸Yの走行方向Ydに沿う貫通孔41が穿設され、図15(a)及び(b)に示されるように、ガイド部21の上端からベース部20へ向かって貫通孔41に至るまでスリット24が刻設される。このスリット24は、図15(b)の平面視においてフィラメント糸Yの走行方向Ydに対して概ね45度、傾斜して形成される。このスリット24の存在により、ガイド部21の主たる構成は、本図(b)の平面視において略台形状ないし略三角形状となる一対の第四突部40であると言える。各第四突部40には、図16(a)及び(b)に示されるように、貫通孔41を取り囲う円錐状のテーパ面42が凹設され、もって、貫通孔41の内壁面とフィラメント糸Yとの接触距離の短縮が図られる。ベース部20と貫通孔41を挟んで反対側には、上記貫通孔41とスリット24の形成に伴って、爪部43が現出する。この爪部43は、貫通孔41に対して、第四突部40の突設方向と反対の方向において覆い被さるように現出する。そして、爪部43から第四突部40の上端に向かって滑らかに湾曲するガイド面40aが形成される。図15(b)に示されるように、本実施形態に係るガイドピース15は、上記第二実施形態に係るガイドピース15と同様、平面視で点対称である。
【0057】
以上の構成で、本実施形態に係るヤーンガイド9の糸条収容空間Sは、図14に示されるように、各ガイドピース15に形成される。詳しくは、上記の糸条収容空間Sは、図16(a)及び(b)に示されるように、貫通孔41によって形成される。前述の爪部43は、貫通孔41によって形成される糸条収容空間S内に収容されたフィラメント糸Yの、糸条収容空間Sからの抜け止めとしての機能を発揮する。そして、この糸条収容空間S内にフィラメント糸Yを挿入するには、図15(a)の符号Nで示される矢印の方向でフィラメント糸Yをスリット24内に挿入すればよい。なお、上記第二実施形態と同様、図15(b)に示されるように本実施形態においてスリット24はフィラメント糸Yの走行方向Ydに対して傾斜して形成されるので、上記の挿入の際、フィラメント糸Yは、糸条収容空間Sに至る前に一度、スリット24の傾斜に沿って屈曲されることとなる。さて、この糸条収容空間S内で所望の張力を伴って走行するフィラメント糸Yのバタツキは、貫通孔41の内壁面によって規制される。特に、フィラメント糸Yの垂直方向におけるバタツキは、上記の爪部43によって効果的に規制されることとなる。
【0058】
(まとめ)
以上説明したように上記実施形態においてヤーンガイド9は、以下のように構成される。即ち、糸条収容空間Sは、各ガイドピース15に形成される。以上の構成によれば、上記糸条収容空間Sを、隣り合う一対のガイドピース15の合わせ面Fから離して形成する構成が実現される。
【0059】
上記のヤーンガイド9は、更に、以下のように構成される。即ち、各ガイドピース15には、糸条収容空間Sを外部と連通させるスリット24と、糸条収容空間Sからの上記フィラメント糸Yの抜けを防止する爪部33と、が形成される。以上の構成によれば、糸条収容空間Sへ上記フィラメント糸Yを挿入可能とする構成と、糸条収容空間Sからの上記フィラメント糸Yの抜けを防止する構成と、が簡素な構成で実現される。
【0060】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0061】
即ち、以上の説明においては、ヤーンガイド9を紡糸延伸装置100に適用したケースを例示したが、ヤーンガイド9の用途は紡糸延伸装置100に限られず、多糸条を狭いスペースで取り扱う繊維機械にも適用できる。紡糸延伸装置100以外の繊維機械としては、例えば、整経機などが挙げられる。
【0062】
また、上記各実施形態では、糸条としてフィラメント糸Yを例示したが、ヤーンガイド9はフィラメント糸Y以外の糸条に対しても適用できる。フィラメント糸Y以外の糸条としては、綿糸や羊毛等のスパン糸(紡績糸)が該当する。
【0063】
また、上記各実施形態においてヤーンガイド9は、図1に示される通り、交絡装置8の近傍に設けられているが、これに限らず、交絡装置8から離れた位置に配置する構成が考えられる。
【0064】
最後に、例えば、図2においてフィラメント糸Yの本数がガイドピース15の配設数に比べて相当少なくなっているのは、単に、説明の便宜を図るためである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】紡糸延伸装置(合成繊維糸の製造装置)の全体構成を示す模式図
【図2】本願発明の第一実施形態に係るヤーンガイドの斜視図
【図3】図2に類似する図であって、説明の都合上、ガイドレールの描画を省いた図
【図4】ガイドピースの拡大図
【図5】ヤーンガイドの平面図
【図6】ヤーンガイドの平面図
【図7】本願発明の第一実施形態の変形例に係るヤーンガイドの斜視図
【図8】本変形例に係るガイドピースの拡大図
【図9】本変形例に係るヤーンガイドの平面図
【図10】図2に類似する図であって、本願発明の第二実施形態に係るヤーンガイドの斜視図
【図11】ガイドピースの拡大図
【図12】ガイドピースの拡大図
【図13】ヤーンガイドの平面図
【図14】図2に類似する図であって、本願発明の第三実施形態に係るヤーンガイドの斜視図
【図15】ガイドピースの拡大図
【図16】ガイドピースの正面図
【符号の説明】
【0066】
9 ヤーンガイド
15 ガイドピース
S 糸条収容空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数で列設される案内部材を備え、
前記各案内部材には走行する糸条が収容される糸条収容空間が形成され、又は、隣り合う一対の前記案内部材によって上記糸条収容空間が形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項2】
請求項1に記載の多糸条用ガイドであって、
前記複数の案内部材の数を増減可能に構成した、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項3】
請求項2に記載の多糸条用ガイドであって、
長尺部材を備え、
前記各案内部材は、上記長尺部材と係合することで、上記長尺部材によって支持される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の多糸条用ガイドであって、
前記糸条収容空間は、隣り合う一対の前記案内部材によって形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項5】
請求項4に記載の多糸条用ガイドであって、
隣り合う一対の前記案内部材の合わせ面の面方向は、前記糸条収容空間内に収容される上記糸条の走行方向に対して傾斜する、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の多糸条用ガイドであって、
前記各案内部材には、第一突部と、前記列設方向に対して垂直な方向における前記糸条の移動を規制する第二突部と、が形成され、
前記の糸条収容空間は、隣り合う一対の上記第一突部によって形成されるスリットと、上記第二突部と、によって形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項7】
請求項6に記載の多糸条用ガイドであって、
前記合わせ面の面方向と、上記糸条の走行方向と、の間の傾斜角は変更可能に構成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の多糸条用ガイドであって、
前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止する爪部が、隣り合う一対の前記案内部材のうち少なくとも何れか一方に形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項9】
請求項1〜3の何れかに記載の多糸条用ガイドであって、
前記糸条収容空間は、前記各案内部材に形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項10】
請求項9に記載の多糸条用ガイドであって、
前記各案内部材には、前記糸条収容空間を外部と連通させるスリットと、前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止する爪部と、が形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項1】
複数で列設される案内部材を備え、
前記各案内部材には走行する糸条が収容される糸条収容空間が形成され、又は、隣り合う一対の前記案内部材によって上記糸条収容空間が形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項2】
請求項1に記載の多糸条用ガイドであって、
前記複数の案内部材の数を増減可能に構成した、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項3】
請求項2に記載の多糸条用ガイドであって、
長尺部材を備え、
前記各案内部材は、上記長尺部材と係合することで、上記長尺部材によって支持される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の多糸条用ガイドであって、
前記糸条収容空間は、隣り合う一対の前記案内部材によって形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項5】
請求項4に記載の多糸条用ガイドであって、
隣り合う一対の前記案内部材の合わせ面の面方向は、前記糸条収容空間内に収容される上記糸条の走行方向に対して傾斜する、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の多糸条用ガイドであって、
前記各案内部材には、第一突部と、前記列設方向に対して垂直な方向における前記糸条の移動を規制する第二突部と、が形成され、
前記の糸条収容空間は、隣り合う一対の上記第一突部によって形成されるスリットと、上記第二突部と、によって形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項7】
請求項6に記載の多糸条用ガイドであって、
前記合わせ面の面方向と、上記糸条の走行方向と、の間の傾斜角は変更可能に構成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の多糸条用ガイドであって、
前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止する爪部が、隣り合う一対の前記案内部材のうち少なくとも何れか一方に形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項9】
請求項1〜3の何れかに記載の多糸条用ガイドであって、
前記糸条収容空間は、前記各案内部材に形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【請求項10】
請求項9に記載の多糸条用ガイドであって、
前記各案内部材には、前記糸条収容空間を外部と連通させるスリットと、前記糸条収容空間からの上記糸条の抜けを防止する爪部と、が形成される、
ことを特徴とする、多糸条用ガイド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−37685(P2010−37685A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203106(P2008−203106)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
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