説明

多色刷りコード

本発明は、物品内もしくは物品上に情報を保存する方法であって、選択的に照射されて、少なくとも異なる3色を含む多色刷りコードを生成する発色剤を、当該物品が含む、方法に関する。さらに、本発明は、本発明の方法によって得られる、少なくとも異なる3色を含む多色刷りコードを含む物品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品上に多色刷りコードを形成するステップを含む情報を保存する方法、および、多色刷りコードを含む物品、に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコード、マトリックスコードおよび他の証印や記号などの機械読み取り式コードは、当技術分野で公知である。典型的には、これらのコードは、物品に適用される情報を表す白黒シンボルを含む。一連の物品上に特有の複合的証印を生成する方法は、特許文献1(米国特許第2003/0121984号)に開示されている。このシステムは、証印を形成するための回転式シリンダーを基礎とする印刷技術を使用する。しかし、証印を生成し、次いで別個のステップで物品に適用しなければならず、それは、その過程にやや時間がかかることを意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第2003/0121984号
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の観点は、物品内もしくは物品上に情報を保存する方法であって、選択的に照射されて、少なくとも異なる3色を含む多色刷りコードを生成する発色剤を、当該物品が含む、方法である。
【0005】
本発明の第2の観点は、本発明の第1の観点に係る方法によって得られる、少なくとも異なる3色を含む多色刷りコードを含む物品である。
【0006】
本発明が基づいている理解は、選択的照射、典型的には、物品に適用する前に、画像を予め決定し、特定の証印に関連づけることができるコンピューター制御レーザーマーキングシステムを使用することによって、従来技術に伴う短所が克服できるという理解である。物品に迅速に照射することができ、品質を損なうことなく、移動式製造ラインで物品にマークを付与することができる。特許文献1(米国特許第2003/0121984号)に開示されているものに勝るそうしたシステムの利点は、1回のステップで、物品上に証印を形成し、物品に関連付けることができ、それによって工程が著しく促進されるということである。
【0007】
白黒ではなく多色で、記号および機械読み取り式コードを印刷できる能力により、より多くの情報をコード中に保存できる。現在まで、インクジェットプリンターを使用する方法など、従来の印刷方法では、十分な品質で十分迅速に多色刷りコードが印刷できるようになっていない。本発明は、これらの問題を克服するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】公知の線形(1次元)バーコードを示す図である。
【図2】データマトリックス(2次元)バーコードを示す図である。
【図3】大容量カラーバーコードを示す図である。
【図4】大容量カラーバーコードを示す図である。
【図5】カラーウルトラコードを示す図である。
【図6】Microsoftカスタムタグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、多色刷りの証印、記号、機械読み取り式コードなどは、光活性化型色変化システムを使用して、基材上に形成できるという知見に基づく。「多色刷り」は、異なる少なくとも3色を指し、この3色には背景色(例えば白色)が含まれうる。「色」という用語には、色の明暗が含まれる。証印、記号および多色テキストと同様に、「コード」という用語には、伝統的意味のコードが含まれるものとする。
【0010】
各証印は、線、点、円、楕円、多角形などの2次元形状、またはそれらの組合せにより構成しうる。それらの形状は、幾何的または非幾何的であってよい。それらの形状は、単色、多色または両者の組合せであってよい。証印は、当業者には公知の任意の証印でであってよい。例には、シンボル、バーコードおよびマトリックスコードなど、人または機械読み取り式コードが含まれる。本発明を使用し生成できる証印の別の例は、特許文献1(米国特許第2003/0121984号)に開示されている。
【0011】
本発明は、バーコードなどの機械読み取り式コードの生成に特に適している。これにより、物品を自動的に同定し、個々のレベルに至るまでそのライフサイクル全体にわたって追跡が可能になるからである。これにより、物品用の「追跡追尾」システムの基礎が提供される。
【0012】
本発明を使用して生成することが可能な多色刷りコードには、図1に例示されるような、統一商品コード(UPC)によって表されるバーコードまたは欧州物品番号(EAN)コードなど、線形(1次元)バーコードが含まれる。
【0013】
図2に示すバーコードなどのデータマトリックス(2次元)バーコードも生成しうる。
【0014】
好ましいコードは、欧州特許第1612724号に教示されるものなど、大容量カラーバーコードである(図3参照)。これらのバーコードは、カラースペース中に幾何的シンボルセットを含む。特に好ましいものは、三角形シンボルセットを含む大容量カラーバーコードである。同様に好ましいものは、白色スペース分離帯が幾何的シンボル間に置かれた大容量カラーバーコードである。同様に好ましいものは、グレースケール値セットおよび色値セットの少なくとも1セットを含むカラースペースを含む大容量カラーバーコードである。同様に好ましいものは、5×10グリッドに4色を含む大容量着色バーコード「タグ」である。他のコードには、ウルトラコード(図5)、データグリフ、スーパーコード、スノーフレークコード、スマートコード、ミニコード、INTACTAコード、色相コード、ドットコードA、データストリップコード、CPコード、コード16K、コード1、Codablock、AZTECコード、アレイタグ、3−DI、コード49、QRコード、Micro PDF417コード、PDF417コードおよびマキシコードなどが含まれる。特に好ましいものは、図6に例示されるように、メッセージ自体の外観および形態中にコードが組み込まれているMicrosoftカスタムタグである。
【0015】
本発明を使用して生成され得る他のコードは、「The Bar Code Book:Fifth Edition − A Comprehensive Guide to reading,Printing,Specifying,Evaluating,and Using Bar Code and Other Machine−Readable Symbols」(Roger C. Palmer著,Trafford Publishing,Bloomington IN,2007)に教示されている。
【0016】
着色コードは、従来の白黒コードよりもはるかに多くの情報を保存することができるので、識別情報、取引情報および医療情報、例えば、顔画像およびバイオメトリック情報の少なくとも1個、のために使用することができる。特に好ましいバイオメトリック情報は、虹彩スキャン、拇印スキャン、指紋スキャンおよびDNA試料表示の少なくとも1個を含む。着色コード上に保存できる他の情報には、取引情報、医療情報および映画のクリップなどのマルチメディアデータなどが含まれる。
【0017】
本発明で利用される発色剤には、光に照射されたときに外観もしくは吸収プロファイルが変化するあらゆる物質、またはそのような物質の組合せが含まれる。光という用語は、電子ビームなどの照射性エネルギーの全ての形態を包含する。光エネルギーは、UV、可視、近赤外または中赤外であってよい。光は、単色または広帯域であってよい。光は、レーザー光または非干渉光であってよい。
【0018】
レーザーは、機械読み取り式コードに不可欠な高解像度画像が得られるので、特に好ましい。
【0019】
発色剤は、物品内に含められ(マスターバッチ法を使用して製造されたモールド成形プラスチック物品など)、または製造中に物品に加えられ(例えば、紙)、またはスプレーなどにより物品に直接塗布され、または印刷技術を使用するコーティング塗布の一部として物品に塗布されることができる。
【0020】
物品は、任意の基材、例えば、ガラス、フィルム、紙、プラスチック、木、食品、医薬でも、または発色剤を組み込むことができるいかなる物質であってよい。発色剤は、インク、塗料またはラッカー中に調合し、次いで任意の好適な技法を使用して基材に塗布することもできる。特に好ましい基材は、紙幣の製造に使用できる基材、医薬錠剤の外殻、印紙、パスポートおよび運転免許などのIDおよび高価値文書、および消費材包装である。
【0021】
レーザーマーキング可能組成物は、可視光は透さないが、NIR光は透す基材の下の構造に組み込むことができる。これにより、肉眼では視認できないがカメラなどのNIRスキャナを使用して検出することができるNIRレーザーを使用して、レーザーマーキング可能組成物で、本発明の着色証印を形成することが可能になる。
【0022】
特に好ましいものは、初めは無色または白色であるが、色変化反応を受けると視覚的に着色される発色剤である。
【0023】
発色剤の好ましい例は、国際公開公報第02/068205号、同第02/074548号、同第04/043704号、同第2005/012442号、同第2005/068207号、同第2006/018640号、同第2006/051309号、同第2006/129086号、同第2006/129078号、同第2007/045912号および同第2007/063339号に開示されているレーザーマーキング可能組成物であり、それぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。レーザーマーキング可能組成物の成分の特に好ましい例は、金属オキシアニオン、ロイコ染料、カルバゾール、ジアセチレン、およびヒドロキシル含有化合物を含む脱水剤である。近赤外レーザーを使用するときは、調合物に近赤外吸収性物質を組み込むのが望ましい。
【0024】
好ましい金属オキシアニオンには、モリブデン酸塩が含まれ、特に好ましいモリブデン酸塩には、モリブデン酸アミンが含まれる。さらに、八モリブデン酸アンモニウムが特に好ましい。同様に好ましいものは、メタホウ酸塩などのホウ酸塩であり、メタホウ酸ナトリウムが特に好ましい。
【0025】
本発明では、任意のジアセチレン、またはジアセチレンと、光に曝露すると色変化反応を起こすことが可能な他の物質との組合せが、使用されてもよい。
【0026】
ジアセチレン化合物は、少なくとも1個のジアセチレン基、すなわち−C≡C−C≡C−を含む物質である。特に好ましいものは、多色色変化反応を示すジアセチレン化合物である。これらの化合物は、初めは無色であるが、紫外光などの好適な光に曝露されると、色変化反応を経て青色を生成する。次いで、青形態のある種のジアセチレンは、近赤外光などの他の光に曝露されることができ、それによって青形態はマゼンタ、赤、黄、および緑形態に転換される。
【0027】
本発明で使用され得るジアセチレン化合物の具体例は、公開特許出願番号、国際公開公報第2006/018640号および同第2009/081385号に示されている。
【0028】
別の例には、以下の一般構造式によって表される化合物が含まれる。
【0029】
【化1】

または、
【0030】
【化2】

または、
【0031】
【化3】

または、
【0032】
【化4】

上記式中、
XおよびYは、二価の直鎖もしくは分枝鎖アルキレン型基(−CH−)(式中、n=0〜24)、または二価のフェニレン型基(−C−)(式中、n=0〜1)または両型の組合せであり、
QおよびVが存在する場合、QおよびVは、二価の架橋基、例えば、−S−、−O−、−NHR’−(式中、R’は、水素またはアルキルである)、アミド、エステルまたはチオエステル基、カルボニルまたはカルバメートであり、
R1およびR2は、Hまたはアルキルであり、
AおよびTは、XもしくはYなどのアルキレン型もしくはフェニレン型のいずれか一方でありうる二価の基、またはQもしくはVなどの架橋型、または両型の組合せ、Q基もしくはV基をさらに含むXもしくはYであり、
Zは、XもしくはQなどの二価の基、または両者の組合せ、Q基をさらに含むXであり、またはZは存在しなくてもよく、かつnは2〜20,000,000である。
【0033】
X基およびY基は、ジアセチレン基に関して、好ましくはα、βまたはγ位で任意に置換されている。例えば、下式に示すように、α−水酸基があってもよい。
【0034】
【化5】

ジアセチレンは、対称的であっても、または非対称的であってもよい。
【0035】
QおよびVは、アミン、アルコール、チオールまたはカルボン酸などの基によって任意に置換されている。QおよびVの両方が存在してもよいし、または代わりにQのみが存在してもよい。
【0036】
上記化合物のR1およびR2がアルキルである場合、それらは直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、有機化学で既知の他の官能基、例えば、アルコール、アミン、カルボン酸、芳香環系、および、アルケンおよびアルキンなどの不飽和基をさらに含んでよい。
【0037】
基R1、R2、Q、V、XおよびYはイオン基を含んでよく、そのイオン基はアニオン性であっても、またはカチオン性であってもよい。例には、硫酸基(−SO−)およびアンモニウム基が含まれる。イオン基には、任意の好適な対イオンが含まれうる。
【0038】
ジアセチレン化合物の他の例は、ジアセチレンカルボン酸およびその誘導体である。特に好ましいジアセチレンカルボン酸化合物は、10,12−ペンタコサジイン酸および10,12−ドコサジイン二酸およびそれらの誘導体である。別の例には、5,7−ドデカジイン二酸、4,6−ドデカジイン酸、5,7−エイコサジイン酸、6,8−ヘンエイコサジイン酸、8,10−ヘンエイコサジイン酸、10,12−ヘンエイコサジイン酸、10,12−ヘプタコサジイン酸、12,14−ヘプタコサジイン酸、2,4−ヘプタデカジイン酸、4,6−ヘプタデカジイン酸、5,7−ヘキサデカジイン酸、6,8−ノナデカジイン酸、5,7−オクタデカジイン酸、10,12−オクタデカジイン酸、12,14−ペンタコサジイン酸、2,4−ペンタデカジイン酸、5,7−テトラデカジイン酸、10,12−トリコサジイン酸、2,4−トリコサジイン酸、およびそれらの誘導体が含まれる。ジアセチレンアルコールおよびジオール化合物およびそれらの誘導体も好ましく、例には5,7−ドデカジイン−1,12−ジオール、5,7−エイコサジイン−1−オール、2,4−ヘプタデカジイン−1−オール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、3,5−オクタジイン−1,8−ジオール、4,6−デカジイン−1,10−ジオール、2,7−ジメチル−3,5−オクタジイン−2,7−ジオール、14−ヒドロキシ−10,12−テトラデカジイン酸が含まれる。他には、1,6−ジフェノキシ−2,4−ヘキサジイン、1,4−ジフェニルブタジイン、1,3−ヘプタジイン、1,3−ヘキサジインおよび2,4−ヘキサジインが含まれる。
【0039】
異なるジアセチレンの組合せを使用することもできる。特に好ましい組合せは、10,12−ペンタコサジイン酸もしくは10,12−ドコサジイン二酸およびその誘導体と、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールとの組合せである。10,12−ペンタコサジイン酸は、青、赤および黄を生成することができる。2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールは、シアン色を生成することができる。10,12−ペンタコサジイン酸を黄に、そして2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールをシアンに同時に活性化すると、緑が生じる。
【0040】
「活性化可能」なジアセチレン化合物、すなわち、光に対して比較的敏感でない第1の固体形態を有し、「活性化」すると光に対して比較的敏感な第2の形態に転換され、それによって可視画像を形成するための色変化反応を起こすことが可能なジアセチレン化合物は、本発明では特定の有用性を持つ。理論に制限されないとすると、その活性化とは、再結晶化、結晶形態の改変、共結晶組合せまたは溶融/再固化過程であり得る。
【0041】
刺激または刺激の除去に応答して不活性化形態と活性化形態との間を切り替えることができる、可逆的に活性化可能なジアセチレン類も本発明の一部をなす。
【0042】
特に好ましいジアセチレン類は、初期溶融および再固化活性化後は無色であるが、光、特にUV光に曝露すると青くなるジアセチレンである。最も好ましいジアセチレン化合物は、カルボン酸およびその誘導体であり、
R−C≡C−C≡C−R’
である。上記式中、Rおよび/またはR’はCOX基を含み、その際、Xは、−NHY、−OY、−SYであり、その場合、YはHか、または少なくとも1個の炭素原子を含む任意の基である。
【0043】
さらに特に好ましいものは、カルボン酸基がアミド、エステルまたはチオエステル中に機能付与されている誘導体である。これらは、ジアセチレンカルボン酸と、塩化オキサリルなどの塩素化剤とを反応させ、次いでジアセチレン酸塩化物と、アミン、アルコールまたはチオールなどの求核性化合物とを反応させることによって容易に製造することができる。特に好ましいジアセチレンカルボン酸化合物は、10,12−ドコサジイン二酸、およびアミド類、エステル類、チオエステル類などの誘導体である。とりわけ特に好ましい10,12−ドコサジイン二酸誘導体はアミドである。さらに特に好ましい10,12−ドコサジイン二酸アミド誘導体は、少なくとも1個の、好ましくは両方のカルボン酸基が、以下に示されるようなプロパルギルアミドに転換されているプロパルギルアミドである。
【0044】
【化6】

プロパルギルアミドは、カルボン酸とプロパルギルアミンとの反応によって製造される。好適なアミドの作製に使用できる他の好ましいアミンには、ジプロパルギルアミンおよび1,1−ジメチルプロパルギルアミンが含まれる。
【0045】
活性化可能なジアセチレンは、一般的にNIR光吸収剤と一緒に使用されるが、この吸収剤は、700〜2500nmの波長範囲の光を吸収する化合物である。
【0046】
NIRファイバーレーザーなどのNIR光源を使用して、画像が要求される領域にのみ、発色剤を含む物品を加熱する。次いで、殺菌灯などのUV光源を使用して、UV光を物品全体に照射する。しかし、ジアセチレン化合物のみが色変化反応を受けて、最初にNIR光を曝露した領域に画像が形成される。NIR光に曝露していない物品領域は、無視できる程度の色変化反応を受けて、本質的に無色のままであり、バックグラウンド照射に対して安定している。熱プリントヘッドは、熱をベースとする事前活性化ステップを開始するために使用してよい。
【0047】
NIR光吸収剤の具体例には次のものが含まれる。
i.有機NIR吸収剤
ii.NIR吸収性「導電」ポリマー
iii.無機NIR吸収剤
iv.非化学量論的無機吸収剤。
【0048】
特に好ましいNIR吸収剤は、スペクトルの可視領域(400〜700nm)において基本的に吸光度がゼロであり、従って視覚的に無色に見えるコーティングを生じさせる吸収剤である。
【0049】
有機NIR吸収剤は、NIR染料/色素として知られている。例としては、以下のものだけには限らないが、メタロ−ポルフィリン類、メタロ−チオレン類およびポリチオレン類のファミリー、メタロ−フタロシアニン類、これらのアザ変異体、これらの環付加(annellated)変異体、ピリリウム塩類、スクアリリウム類、クロコニウム類、アンミニウム類、ジイモニウム類、シアニン類およびインドレニンシアニン類が含まれる。
【0050】
本発明で使用できる有機化合物の例は、米国特許第6911262号に教示されており、「Developments in the Chemistry and Technology of Organic dyes」(J Griffiths(編),Oxford:Blackwell Scientific,1984)、および「Infrared Absorbing Dyes」(M Matsuoka(編),New York:Plenum Press,1990)に示されている。本発明のNIR染料またはNIR色素の別の例は、米国ニュージャージー州Newark在Epolin社製Epolight(商標)シリーズ、カナダ・ケベック州American Dye Source社製ADSシリーズ、米国フロリダ州Jupiter在HW Sands社製SDAおよびSDBシリーズ、ドイツBASF社製Lumogen(商標)シリーズ、特にLumogen(商標)IR765およびIR788、および英国マンチェスターBlackley在FujiFilm Imaging Colorants社製Pro−Jet(商標)染料シリーズ、特にPro−Jet(商標)830NP、900NP、825LDIおよび830LDIに見出すことができる。別の例は、国際公開公報第08/050153号に教示されている。
【0051】
NIR吸収性「導電」ポリマーの例には、HC Starck社製の製品Baytron(登録商標)PなどのPEDOTが含まれる。別の例は、国際公開公報第05/12442号に教示されている。
【0052】
無機NIR吸収剤の例には、銅(II)塩が含まれる。リン酸ヒドロキシ銅(II)(Copper (II) hydroxyl phosphate)(CHP)が特に好ましい。別の例は、国際公開公報第05/068207号に教示されている。
【0053】
非化学量論的無機吸収剤の例には、還元されたインジウムスズ酸化物、還元されたアンチモンスズ酸化物、還元された硝酸チタンおよび還元された酸化亜鉛が含まれる。別の例は、国際公開公報第05/095516号に教示されている。還元されたインジウムスズ酸化物は、1550nm〜2500nmのレーザーと組み合せることが特に好ましい。
【0054】
NIR吸収剤の吸収プロファイルが、使用するNIR光源の発光波長とほぼ適合する場合が特に好ましい。
【0055】
NIR吸収剤の代わりに使用できる他の光吸収剤には、UV(120〜400nm)、可視(400〜700nm)および中赤外(約10.6μm)光吸収剤が含まれる。例には、染料/色素、UV吸収体およびIriodin型剤が含まれる。
【0056】
本発明では、電荷移動剤は、ジアセチレンと一緒に使用しうる。これらは、初めは無色であるが、プロトン(H)と反応させると、着色形態を生成する物質である。本発明の一部をなす電荷移動剤には、カルバゾール類として知られる化合物が含まれ、好適な例は、国際公開公報第2006/051309号に記載されている。ロイコ染料など、当業者には公知の他の電荷移動剤も使用され得る。通常、電荷移動剤は、他の物質、例えば、波長に特異的でありうる光吸収剤、熱発生剤、酸発生剤などと組み合せて使用される。
【0057】
本発明での使用に特に好ましい組合せは、青および赤を生ずる10,12−ペンタコサイジイン酸もしくは10,12−ドコサジイン二酸(またはその誘導体)などのジアセチレンと、緑を発生させる電荷移動剤とである。
【0058】
ロイコ染料は、ある種の照射に曝露すると、色変化もしくは色形成を示す任意の数の着色剤でありうる。好適なロイコ染料の限定されない例には、フルオラン類、フタリド類、アミノ−トリアリールメタン類、アミノキサンテン類、アミノチオキサンテン類、アミノ−9,10−ジヒドロ−アクリジン類、アミノフェノキサジン類、アミノフェノチアジン類、アミノジヒドロ−フェナジン類、アミノジフェニルメタン類、アミノヒドロケイ皮酸類(シアノエタン類、ロイコメチン類)および対応するエステル類、2(p−ヒドロキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール類、インダノン類、ロイコインダミン類、ヒドラジン類、ロイコインジゴイド染料、アミノ−2,3−ジヒドロアントラキノン類、テトラハロ−p,p’−ビフェノール類、2(p−ヒドロキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール類、フェネチルアニリン類、フタロシアニン前駆体(インド、Sitaram Chemicals社から購入できるものなど)、およびそれらの混合物が含まれる。実験的試験により、フルオラン系染料が、望ましい特性を示すロイコ染料の1クラスであることが示されている。加えて、フタリド類およびアミノトリアリールメタン類も、ある適用では使用に望ましいであろう。さらに適切なロイコ染料は、ノースカロライナ州Greenboro在Ciba−Geigy社染料および化学薬品部門により、Coating Conference(1983,カリフォルニア州サンフランシスコ,pp 157−165)で提供された「Dyestuffs and Chemicals for Carbonless Copy Paper」に記載されている。ある種のロイコ染料は、ハロクロム性(halochromism)を示し、中性またはアルカリ性の媒体中では無色であるが、酸性のプロトン供与性または電子求引性物質と反応させると着色されることが分っている。好適な例には、トリフェニルメタンフタリド化合物、アザフタリド化合物、イソインドリドフタリド化合物、ビニルフタリド化合物、スピロピラン化合物、ローダミンラクタム化合物、ラクトンおよびジラクトン化合物、ベンゾイルロイコメチレンブルー(BLMB)、ビス−(p−ジ−アルキルアミノアリール)メタン誘導体、キサンテン類、インドリル類、オーラミン類、クロメノインドール化合物、ピロロ−ピロール化合物、フルオレン化合物、およびフルオランおよびビスフルオラン化合物などの化合物が含まれ、フルオラン化合物が好ましい。特に好ましい市販のロイコ染料製品には、スイスBasel在Ciba Speciality Chemicals社製Pergascriptシリーズ、日本・京都府・山田化学工業株式会社製の製品、日本曹達株式会社製の製品、およびオハイオ州Cincinnati在BF Goodrich社製の製品が含まれる。
【0059】
電荷移動剤は、中性のときは無色であるが、電荷を得ると着色する化合物である。例には、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール類が含まれる。別の例は、国際公開公報第2006/051309号に教示されている。
【0060】
レーザーマーキング可能組成物には、光酸発生剤、熱酸発生剤、光塩基発生剤もしくは熱塩基発生剤を含めてもよい。光酸発生剤は、光に曝露されると、通常はプロトンを遊離することによって酸性環境をもたらす物質である。熱酸発生剤は、熱に曝露されると、通常はプロトンを遊離することによって酸性環境をもたらす物質である。好ましい酸発生剤の例には、スルホニウム塩もしくはヨードニウム塩などの「オニウム」型化合物およびトリフラート類が含まれる。例には、Dow社製Cyracure製品が含まれる。ハロクロム性(halochromic)ロイコ染料または電荷移動剤を使用するときは、酸発生剤を含めるのが特に好ましい。
【0061】
これに反して、光塩基発生剤は、光に曝露されると、通常はプロトンを捕捉することによって塩基性環境をもたらす物質である。熱塩基発生剤は、熱に曝露されると、通常はプロトンを捕捉することによって塩基性環境をもたらす物質である。
【0062】
レーザーマーキング可能組成物には、光吸収剤を含めてよい。特に好ましいものは、色変化反応の活性化に使用される光の波長と類似する波長の光を吸収する光吸収剤である。これらは、UV吸収体、可視吸収体、近赤外吸収体または中赤外吸収体でありうる。近赤外吸収体の好適な例には、リン酸ヒドロキシル銅(II)、非化学量論的還元バージョンおよびその被膜雲母を含むインジウムスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物などの混合金属酸化物、導電性ポリマーおよび有機染料/色素型の近赤外吸収体、例えば、N,N,N’,N’−テトラキス(4−ジブチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノンビス(イミニウムヘキサフルオロアンチモン酸)が含まれる。
【0063】
レーザー光のプロファイルは、好適なビーム形成光学を使用して、任意の所定の形状、サイズまたはエネルギー分布に合わせて作成することができる。
【0064】
レーザーは、120nm〜20μm領域の発光波長を有しうる。好ましいレーザーは、二酸化炭素レーザー、NIRレーザー、可視帯域レーザーおよびUVレーザーである。特に好ましいレーザーは、DPSSレーザーなどのNIRレーザー、ファイバーレーザー、ダイオードレーザーおよびレーザーダイオードアレイである。使用するレーザーは、パルス波または連続波であってもよい。
【0065】
次に、本発明を以下の実施例により説明する。
【実施例1】
【0066】
以下のように、インク調合物を製造した。
【0067】
Pergascript Blue SRB−P(例えば、Ciba、1.7g)、Yamada Yellow Y−726(例えば、Yamada、2.8g)、Tinuvin 770DF(例えば、Ciba、0.6g)、Sericol Polyplast PY−383(例えば、Sericol、56g)、Sericol Thinner ZV−557(例えば、Sericol、35.5g)およびCyracure UVI Photoinitiator UVI−6992(例えば、Dow、3.4g)。
【0068】
30 micron K−bar and RK Prooferプリンターを使用して、このインク調合物を50μmの白色PETフィルム上に塗布した。
【0069】
10,12−ペンタコサジイン酸(1.25g)、Durotak 180−1197(19g)および酢酸エチル(4g)を一緒に混合して、インク溶液を作成した。
【0070】
30 micron K−bar and RK Prooferプリンターを使用して、透明な50μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に、そのインクをコーティングした。
【0071】
次いで、塗布した2枚を合わせてラミネート化した。
【0072】
次いで、UVレーザーを使用して以下のものを作製した。
【0073】
1.白色スペースによって分離された赤、青、マゼンタ、橙、シアン、緑、黄および黒のバーを含む線形(1次元)バーコード(図1参照)。
【0074】
2.赤、青、マゼンタ、橙、緑、シアン、黄、白および黒の正方形を含むデータマトリックス(2次元)コード(図2参照)。
【0075】
3.白色スペースによって分離された赤、青、マゼンタ、橙、シアン、緑、黄および黒の三角形シンボルを含む大容量カラーバーコード(図3参照)。
【0076】
4.4色の10×5タグ(図4参照)。
【0077】
5.着色ウルトラコード(図5参照)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品内もしくは物品上に情報を保存する方法であって、選択的に照射されて、少なくとも異なる3色を含む多色刷りコードを生成する発色剤を、前記物品が含む、方法。
【請求項2】
前記コードが、機械読み取り式である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1次元バーコード、2次元マトリックスコード、または大容量カラーバーコードが生成されるように、前記発色剤が照射される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記大容量カラーバーコードが、前記媒体中のカラースペースに2次元の幾何的シンボルセットを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記幾何的シンボルセットが、三角形シンボルセットを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記物品が、照射前は白色である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記多色刷りコードが、グレースケール値セットおよび色値セットの少なくとも一つのセットを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記発色剤が、光源、好ましくは120nm〜20μm領域の波長を有する光源で照射される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記発色剤が、金属オキシアニオン、ロイコ染料、ジアセチレン、電荷移動剤、またはそれらの任意の組合せである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記物品が、近赤外吸収剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記近赤外吸収剤が、リン酸水酸化銅(II)、還元金属または混合金属酸化物、導電性ポリマーまたは有機染料/色素である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記物品が、酸発生剤または塩基発生剤をさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記情報が、識別情報、取引情報、医療情報または映画クリップなどのマルチメディアデータの少なくとも1個を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記情報が、識別情報を含み、かつ、前記識別情報が、顔画像またはバイオメトリック情報の少なくとも1個を含み、好ましくは虹彩スキャン、拇印スキャン、指紋スキャンまたはDNA試料表示の少なくとも1個を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によって得られる、少なくとも異なる3色を含む多色刷りコードを含む物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−502383(P2012−502383A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526563(P2011−526563)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051069
【国際公開番号】WO2010/029332
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(507055925)データレース リミテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】DATALASE LTD.
【Fターム(参考)】