説明

多色固形化粧料の製造方法

【課題】多色固形化粧料の表面をより有効に面一化する。
【解決手段】化粧皿内に充填された第1の化粧料の表面形状に対応した第1のプレス面と、化粧皿に充填された第2の化粧料の表面形状に対応し、かつ、第1のプレス面とは高さが異なる第2のプレス面とを有するプレスヘッドを用いて、第1の化粧料および第2の化粧料をプレスする。つぎに、プレスされた第1の化粧料および第2の化粧料の表面全体をカットする。そして、カットされた第1の化粧料および第2の化粧料を再度プレスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色固形化粧料の製造方法に係り、特に、プレスによる化粧料の再膨張対策に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった粉末固形化粧料は、その材料となる化粧料粉末体を金型内に充填し、充填された化粧料粉末体をプレスすることによって生成される。このプレス工程では、特許文献1にも指摘されているように、化粧料粉末体内に残存する空気溜まりの影響が懸念される。化粧料粉末体内に空気が溜まっていると、金型内に充填された化粧料粉末体の粒子密度が疎になる。このような状態で化粧料粉末体のプレスを行った場合、内部に残存する空気によって、プレス後に粉末固形化粧料が再膨張してしまう。特に、マット系およびパールリッチ系といったように、処方が異なる複数の化粧料を組み合わせた多色固形化粧料では、化粧料毎に異なる膨張量が表面の非連続な起伏となって露出するので、外観不良が大きな問題となる。
【0003】
このような再膨張は、例えば特許文献2に開示されているような、プレス面の高さの異なる段差付プレスヘッドを用いることによって、ある程度抑制することができる。例えば、マット系よりもパールリッチ系の方が膨張量が大きい場合、マット系よりもパールリッチ系の方のプレス面を低く設定する。これにより、一回のプレス工程で、パールリッチ系の方をより強くプレスでき、パールリッチ系の硬度をより高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−334699号公報
【特許文献2】実開平5−46919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した段差付プレスヘッドだけで、化粧料表面を完全に面一化することは容易ではない。なぜなら、再膨張による隆起は、周辺部分に対して中央部分が山状に隆起するといった複雑な表面形状になるので、平面状のプレス面によるコントロールだけでは限界があるからである。特に、実際の処方では、希望通りの硬度にするための調整が難しく、バルクによって隆起の状態にばらつきが生じるため、プレス面を曲面状にしたとしても、完全な面一化は困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、多色固形化粧料の表面をより有効に面一化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決すべく、本発明は、第1の化粧料と、これとは異なる処方によって生成された第2の化粧料とを化粧皿内に充填するステップと、化粧皿内に充填された第1の化粧料の表面形状に対応した第1のプレス面と、化粧皿に充填された第2の化粧料の表面形状に対応し、かつ、第1のプレス面とは高さが異なる第2のプレス面とを有するプレスヘッドを用いて、第1の化粧料および第2の化粧料をプレスするステップと、プレスされた第1の化粧料および第2の化粧料の表面全体をカットするステップと、カットされた第1の化粧料および第2の化粧料を再度プレスするステップとを有する多色固形化粧料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プレス面の高さが異なる段差付プレスヘッドを用いて、第1および第2の化粧料をプレスした後、これらの表面をカットする。第1および第2の化粧料の再膨張に起因した表面の隆起がどのように生じたとしても、表面全体をカットすることで、表面の隆起および段差が低減される。そして、その後に再度プレスすれば、表面をカットしない場合と比較して、多色固形化粧料の表面をより有効に面一化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】多色固形化粧料の外観斜視図
【図2】充填工程の説明図
【図3】予備打型工程の説明図
【図4】カット工程の説明図
【図5】本打型工程の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係る多色固形化粧料の外観斜視図である。この多色固形化粧料1は、例えば、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった粉末固形メイクアップ化粧料である。化粧皿4内に収容される固形化粧料2,3は、乾式化粧料および湿式化粧料のどちらであってもよい。乾式化粧料は、化粧料の粉体を打型して固化させものである。また、湿式化粧料は、スラリー(化粧料の流動体)中の揮発成分を吸収・乾燥させて固化したものである。スラリーとしては、化粧料基材と、エタノール、水、流動パラフィン、イソパラフィン、イソプロピルアルコール等の揮発性溶剤とを混合したものが用いられる。湿式化粧料は、乾式化粧料と比べて粒子密度が疎であることに起因して、しっとりサラサラにした使用感が得られるという特性がある。これらの固形化粧料2,3の色調は、色の組み合わせによる演出効果を与えるべく、互いに異なっている。本明細書では、「異なる色調」という用語を、両者の違いをユーザが視覚的に認識できれば足りる程度の意味合いで用いている。したがって、明度、彩度、色相の違いはもとより、同一色であっても、パール等を加えたものと、そうでないものといったように質感が異なるものも、ここでいう「異なる色調」の範疇に含まれる。なお、同図は、2色の直線状のストライプを例示しているが、より多くの色調の固形化粧料を用いて3色以上としてもよい。また、これらの固形化粧料2,3は、異なる処方によって生成されている。本実施形態では、一例として、一方をマット系化粧料2とし、他方をパールリッチ系化粧料3とする。一般に、マット系化粧料2よりもパールリッチ系化粧料3の方が、化粧料内部の空気溜まりに起因したプレス時の膨張量が大きいことが知られている。
【0011】
つぎに、図2から図5を参照しつつ、上述した構成を有する多色固形化粧料1の製造方法について説明する。まず、図2に示すように、金型5に設けられた収容スペース内に化粧皿4をセットした後、化粧皿4の内部空間を含む充填空間にマット系化粧料2およびパールリッチ系化粧料3を充填する。この充填は、化粧料2,3を区画するための仕切りを用いることなく、これらが直接接触する形で行われる。このような仕切りなし充填については様々な手法が従来から知られており、いずれの手法を用いてもよい。例えば、互いに異なる区画室に化粧料2,3を収容したホッパーを用いて行うことができる。化粧料2,3を充填する場合、ホッパーをスライドさせて、ホッパー内の化粧料2,3を自重によって充填空間内に落下させる。これにより、化粧料2,3がある程度分離された状態で、化粧皿4を含む充填空間内に収容される。そして、収容された化粧料2,3を金型5の上面で擦り切ることによって、所定量の化粧料2,3が一括で充填される。また、このような手法に代えて、化粧料2,3の充填は、それぞれの化粧料2,3をプレスして固めたものを化粧皿4内にセットすることによって行ってもよい。
【0012】
つぎに、図3に示すように、予備打型用プレスヘッド6を用いて、化粧皿4を含む充填空間内に充填されたマット系化粧料2およびパールリッチ系化粧料3を一括でプレスする。このプレスヘッド6は、化粧料2,3のそれぞれに対応した高さの異なる2つのプレス面6a,6bを有する。一方のプレス面6aは、充填空間より露出したマット系化粧料2の表面形状に対応した面形状を有しており、他方のプレス面6bは、充填空間より露出したパールリッチ系化粧料3の表面形状に対応した面形状を有している。また、これらのプレス面6a,6bは、互いの高さが異なっており、マット系化粧料2をプレスするプレス面6aよりもパールリッチ系化粧料3をプレスするプレス面6bの方が低く形成されている。プレス面6a,6bの高さを変える理由は、プレスによる再膨張を見越して、膨張量が大きなパールリッチ系化粧料3の方をより強固にプレスし、パールリッチ系化粧料3の硬度をより高めるためである。予備打型用プレスヘッド6は、単一の金属部材で形成してもよいが、板状の金属部材に金属製または弾性(ゴム、ラミネート等)の板状部材を貼り付けることによって形成してもよい。特に、薄い弾性シートを複数枚重ねてプレス面の高さを変えることにより、処方に合わせた微妙な調整が可能になる。
【0013】
つぎに、図4に示すように、カッター7を用いて、予備打型されたマット系化粧料2およびパールリッチ系化粧料3の表面全体を水平にカットする。先の予備打型によって、プレスされた化粧料表面には、予備打型用プレスヘッド6が有するプレス面6a,6bの境界に起因した段差Aが生じる。それとともに、マット系化粧料2およびパールリッチ系化粧料3のそれぞれの表面は、内部に溜まっていた空気がプレス後に再膨張した結果、周辺部分に対して中央部分が山状に隆起している。この隆起の程度は、処方によって異なる他、化粧料を所望の硬度にする調整にばらつきが生じるので、バルクによっても異なる。化粧料全体を所定の高さで水平にカットすれば、段差Aおよび隆起がどのように生じたとしても、これらを解消でき、化粧料表面を均一な高さに揃えることができる。なお、このカットは、化粧皿4の上縁相当の高さで行ってもよいし、上縁よりも若干突出するように行ってもよい。
【0014】
最後に、図5に示すように、平坦なプレス面を有する本打型用プレスヘッド8を用いて、カットされたマット系化粧料2およびパールリッチ系化粧料3を再度プレスする。これによって、化粧料表面の全体が化粧皿4の上縁よりも若干陥没した高さで面一化され、図1に示した多色固形化粧料5が完成する。
【0015】
このように、本実施形態によれば、プレス面6a、6bの高さが異なる予備打型用プレスヘッド6を用いて、マット系化粧料2およびパールリッチ系化粧料3が予備打型された後、これらの表面がカットされる。これらの化粧料2,3の再膨張に起因した隆起がどのように生じたとしても、表面全体をカットすることで、表面の隆起および段差が解消される。そして、その後に、平坦なプレス面の本打型用プレスヘッド8を用いて本打型すれば、表面をカットしない場合と比較して、多色固形化粧料1の表面をより有効に面一化できる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
以上のように、本発明に係る多色固形化粧料の製造方法は、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった様々な多色固形化粧料において、その表面の面一化を図る用途に広く適用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 多色固形化粧料
2 マット系化粧料
3 パールリッチ系化粧料
4 化粧皿
5 金型
6 予備打型用プレスヘッド
7 カッター
8 本打型用プレスヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多色固形化粧料の製造方法において、
第1の化粧料と、前記第1の化粧料とは異なる処方によって生成された第2の化粧料とを化粧皿内に充填するステップと、
前記化粧皿内に充填された前記第1の化粧料の表面形状に対応した第1のプレス面と、前記化粧皿に充填された第2の化粧料の表面形状に対応し、かつ、前記第1のプレス面とは高さが異なる前記第2のプレス面とを有するプレスヘッドを用いて、前記第1の化粧料および前記第2の化粧料をプレスするステップと、
前記プレスされた第1の化粧料および第2の化粧料の表面全体をカットするステップと、
前記カットされた第1の化粧料および第2の化粧料を再度プレスするステップと
を有することを特徴とする多色固形化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−240371(P2011−240371A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114647(P2010−114647)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)