説明

多色柄迷彩布帛および多色柄迷彩衣服

【課題】難燃性、偽装性および着用快適性が優れた多色柄迷彩布帛および多色柄迷彩衣服を提供する。
【解決手段】アラミド繊維と再生繊維とが全体の70%以上を占める布帛であって、アラミド繊維/再生繊維の割合が重量比で20/80〜60/40であり、多色柄に染色されていることを特徴とする多色柄迷彩布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽装性能(カムフラージュ性能)を必要とする迷彩衣服、個人装備品、テント、車両用ホロ、ヘリコプターカバー、戦車カバー等に使用する多色柄迷彩布帛および多色柄迷彩衣服に関するものである。さらに詳しくは、難燃性、偽装性および着用快適性が優れた多色柄迷彩布帛および多色柄迷彩衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野戦用装備として森林や草原等の自然環境に対応した可視光線および赤外線に対する偽装材が種々提案されている。すなわち、野戦用装備と自然環境のコントラストを最小限に押さえる方法、800〜1300nmの赤外線を使用して探知する赤外線写真法、赤外線夜間監視法などに対応する方法などである。
【0003】
より具体的には、ビニロン系織物に建染染料を添加して、3段階の赤外線反射率を有する迷彩プリントを施す方法(例えば、特許文献1参照)、色別に染料着色域と水不溶性顔料着色域を有しかつ防水透湿性能を付与した迷彩加工布帛(例えば、特許文献2参照)、酸性染料を用いて多段階の赤外線反射率を有する迷彩模様を施した迷彩加工ナイロン布帛(例えば、特許文献3参照)、ポリアミド繊維から成る基布に防炎性固着剤を介して顔料を被覆した布帛(例えば、特許文献4参照)、赤外波長域において赤外線反射能の大きい色材と赤外線反射能の小さい色材とから成る芳香族ポリアミドを用いたカムフラージュ布帛(例えば、特許文献5参照)、遠赤外線に対する優れた偽装効果の目的で吸水性物質を3重量%以上含有した偽装材用布帛(例えば、特許文献6参照)などが提案されている。さらに、特許文献7には迷彩目的ではないが、難燃性を目的にした布帛として芳香族ポリアミド繊維と各種素材を組み合わせた布帛(例えば、特許文献7参照)が提案されている。
【0004】
現在、陸上自衛隊の迷彩戦闘服は難燃ビニロン70/綿30使いであり、溶融型の難燃性であるが、風合いが硬く、ゴワゴワした感じがして必ずしも着用快適性が良いものではなかった。
【0005】
一方、米国やヨーロッパ諸国の軍隊ではナイロン/綿使いが主体であり、これは吸湿性を有するものの、難燃性のないものであった。
【0006】
したがって、炭化型の難燃性を有すると共に偽装性があり、吸湿性が良く風合いが柔らかく着用快適性の優れた迷彩衣服の実現がしきりに求められていた。
【特許文献1】特許第2847290号公報
【特許文献2】特許第2671935号公報
【特許文献3】特許第3094130号公報
【特許文献4】特開昭58−13791号公報
【特許文献5】特開昭63−66385号公報
【特許文献6】特開2004−225956号公報
【特許文献7】特許第2703390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、難燃性、偽装性および着用快適性が優れた多色柄迷彩布帛および多色柄迷彩衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明によれば、アラミド繊維と再生繊維とが全体の70%以上を占める布帛であって、アラミド繊維/再生繊維の割合が重量比で20/80〜60/40であり、多色柄に染色されていることを特徴とする多色柄迷彩布帛が提供される。
【0010】
なお、本発明の多色柄迷彩布帛においては、
前記アラミド繊維と再生繊維が紡績糸からなること、
前記アラミド繊維がメタ系アラミド繊維であること、
前記再生繊維が難燃性再生繊維であること、
難燃性能の限界酸素指数が26以上であること、
吸放湿性能のΔMRが2.5%以上であること、
前記アラミド繊維と再生繊維のほかにポリフェニレンサルファイド繊維を20%以下含有する紡績糸からなる布帛であること、および
前記多色柄が4色柄からなる迷彩であり、1000〜1200nmの赤外線波長領域における反射率が、ライトグリーンで54〜66%、ダークグリーンで39〜51%、ブラウンで24〜36%、ブラックで20%以下であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0011】
また、本発明の多色柄迷彩衣服は、上記の多色柄迷彩布帛を素材に用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下に説明するとおり、難燃性を有すると共に偽装性が優れ、吸湿性が良く風合いが柔らかく着用快適性の優れた多色柄迷彩布帛および多色柄迷彩衣服を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の多色柄迷彩布帛は、アラミド繊維と再生繊維とが全体の70%以上を占める布帛であって、アラミド繊維/再生繊維の割合が重量比で20/80〜60/40であり、多色柄に染色されていることを特徴とするものである。
【0015】
各繊維の繊維長は特に限定しないが、製造のしやすさから紡績糸を用いる方がより好ましい。
【0016】
アラミド繊維/再生繊維の割合は、重量比で20/80〜60/40、好ましくは30/70〜50/50の範囲にすることが必要である。アラミド繊維/再生繊維の重量比が20/80以上と、再生繊維を多くした場合(逆にアラミド繊維が少なくなる)は、布帛の風合いが柔らかくなりすぎて迷彩外衣として適さなくなるばかりか、物性的に弱くなり外衣としての強度が不足するため好ましくない。さらには、衣服にした場合に、再生繊維の洗濯収縮率が高いので洗濯後の収縮率が大きくなり、着用におけるサイズ違いとなる問題が発生しやすい。一方、アラミド繊維と再生繊維の重量比が60/40以上と、アラミド繊維が多くなった場合(逆に再生繊維が少なくなる)は、アラミド繊維は染色性が劣るので目標とする色彩が得られにくいばかりか、物性的にアラミド繊維はモジュラスが高いので布帛の風合いが硬いものとなり、衣服にした場合にゴワゴワした感じで着用性が良くないため好ましくない。
【0017】
また、アラミド繊維と再生繊維とが布帛全体の70%以上を占めることが必要な理由は、本発明の多色柄迷彩布帛が主に迷彩衣服として活用するための風合い、物性を具備するに適しているためである。
【0018】
さらに、アラミド繊維が難燃性であり、再生繊維が難燃再生繊維であれば、布帛の難燃性能を望ましく維持することもできる。例えば、布帛に30%未満の非難燃繊維が含まれた場合でもある程度の難燃性能が維持できるからである。アラミド繊維と再生繊維と共にポリエステル繊維を混合すれば、ポリエステルの形態保持性が生かされ、縫製した場合にプリーツ性が向上し仕立て映えがする。この時に難燃ポリエステルを用いれば難燃性を阻害することがないのでより好ましい。
【0019】
本発明でいう多色柄とは、数種の色彩が異なる柄の組み合わせであって、布帛全面に柄があるものが好ましいが、柄のない無地部分に柄が分散していても良い。多色柄にする目的は周囲の環境や物体との見分けがつきにくいための偽装目的である。
【0020】
本発明の布帛を構成する一方の素材としてアラミド繊維を用いる理由は、このアラミド繊維が難燃性能、耐熱性、耐薬品性、風合い等に優れているからである。アラミド繊維にはメタ系アラミド繊維(ノーメックス(登録商標)、コーネックス(登録商標))とパラ系アラミド繊維(ケブラー(登録商標)、テクノーラ(登録商標)、トワロン(登録商標))とがある。メタ系アラミド繊維とは、主骨格を構成する芳香環がアミド結合によりメタ型に結合されてなるものであり、ポリマーの全繰り返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるものを対象とし、特にポリメタフェニレンイソフタルアミドホモポリマーが好ましい。全繰り返し単位の15%モル%以下、好ましくは5モル%以下で共重合し得る第3成分としては、ジアミン成分として例えば、パラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニールエーテル、4,4’−ジアミノジフェニールエーテル、パラキシリレンジアミン、ビフェニレンジアミン等の芳香族ジアミンが、また酸成分として、例えばテレフタル酸、ナフタレン−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、これらの芳香族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸は、その芳香族環の水素原子の一部がハロゲン原子やメチル基によって置換されていても良い。メタ系芳香族アラミド繊維のカチオン染料での染色性向上させるには、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩などを含有させることが好ましい。ただし、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を入れると難燃性や耐光性が劣る傾向があるので、難燃剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。パラ系アラミド繊維とは、テレフタル酸とパラフェニレンジアミンを重縮合して得られる重合体であるが、少量のジカルボン酸およびジアミンを共重合したものも使用できる。例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレン−3,4、オキシジフェニレンイソフタルアミドが挙げられ、重合体または共重合体の分子量は通常20,000〜25,000が好ましい。パラ系アラミド繊維の高強力繊維は、耐切傷性、耐熱性に優れているが結晶性が高く、分子間結合力が強固で緻密な分子構造を有しているため染色性が悪く、染色するのが困難でほとんど染色する技術が確立されていないのが現状である。また、難燃性能のひとつとして限界酸素指数(LOI値)があるが、メタ系アラミドが30、パラ系アラミドが28であり、メタ系アラミドが難燃性で優れている。以上のことから本発明のアラミド繊維としては、メタ系アラミド繊維を用いることが好ましい。ただし、パラ系アラミド繊維を少量混合することにより、燃焼時の穴あき状態が改善できるのでパラ系アラミド繊維を少量混合しても良い。
【0021】
本発明の布帛を構成する他方の素材である再生繊維とは、木材またはリンターの繊維素を固めて作ったパルプを原料とする繊維であり、パルプをいったん何らかの方法で溶かして、細い孔から押し出し、引き伸ばして糸の形で再生した繊維を言う。再生繊維を作るにはおよそ3つの方法があり、ビスコース法によるレーヨン、ポリノジック、銅アンモニア法によるキュプラ、直接溶解法によるテンセル(登録商標)がある。本発明で他方の素材として再生繊維を用いる理由は、吸湿性や風合い等に優れ、また燃焼にて溶融することがないので、溶融したものが皮膚に落下または接触により火傷が発生しない点などが挙げられる。難燃性再生繊維は再生繊維を難燃化したものであり、市場に出回っているのは難燃ポリノジック繊維である東洋紡社製タフバン(登録商標)、大和紡績社製DFGなどのステープルがある。この難燃性再生繊維は、原糸段階で難燃化する方法で得られたもので、例えばポリホスフォネート、ポリホスフォニトリレート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェート等のリン化合物、または臭素含有ポリアクリレートとリン化合物とを紡糸原液に添加した後、常法によって紡糸する方法で得られた繊維である。
【0022】
本発明の多色柄迷彩布帛は、アラミド繊維と再生繊維のほかにポリフェニレンサルファイド繊維を全体の30%以下含有することができる。
【0023】
本発明でいうポリフェニレンサルファイド(以下PPSと略記する)とは、フェニレンサルファイドからなる基本繰り返し構造単位を有するものをいうが、ほかの共重合構造単位を含有していても良い。共重合構造単位としては、ビフェニレンサルファイド、ビフェニレンエーテルサルファイド、ナフタレンサルファイド、及びそれらのアルキル置換体、ハロゲン置換体が挙げられる。ただし、繊維の物理的物性および耐熱性の観点からは構造単位の95モル%以上がフェニレンサルファイドであることが好ましい。勿論、実質的にフェニレンサルファイド単位のみからなるものであっても良い。PPSの製造方法としては一般に知られている任意の方法を適用すればよい。例えば、特開平10−60734号公報には溶融紡糸における製糸性の向上方法、特開2001−81665号公報には高品質で良好な紡績性を有する短繊維について開示されている。PPS繊維は耐熱性、耐薬品性、難燃性に優れるとともに低熱伝導性があるので、これを含有することにより、接触保温および保温効果が期待できる。
【0024】
一般に、物質の難燃性を示す尺度の一つとしては、限界酸素指数(LOI値)が取り上げられている。この限界酸素指数(LOI値)はJIS K 7201 B−1法で規定されている。つまり、LOI値は、試料が炎を出して燃焼し続けるのに必要な雰囲気の酸素容量%である。したがって、この値が大きな試料ほど燃えにくいといえる。
【0025】
従来知られている繊維のLOI値としては、可燃性繊維では、綿:17〜19、アクリル:20、ナイロン、ポリエステル:20〜22、羊毛:24〜26、難燃性繊維では、モダクリル(カネカロン(登録商標)):27〜29、難燃ポリエステル(ハイム(登録商標)):28〜32、難燃ポリノジック:30〜32、ポリ塩化ビニル:35〜37、ポリ塩化ビニリデン:45〜48、耐熱繊維では、アラミド繊維:28〜30、PPS:34、炭化繊維(パイロメックス(登録商標)):55〜60、ピッチ系炭素繊維:60以上、フッ素繊維(テフロン(登録商標)):95、等を挙げることができる。
【0026】
本発明の難燃性に優れた多色柄迷彩布帛は、自衛隊等で用いている迷彩衣服、個人装備品、テント等に用いるのが好適である。本発明の多色柄迷彩布帛が優れた難燃性を発現するには、布帛の限界酸素指数(LOI値)が26以上であることが好ましい、26以上であれば通常の大気では自己燃焼は起こりにくいので人的被害が極力抑えることができる。さらに好ましくは限界酸素指数(LOI値)が28以上であれば良い。
【0027】
布帛へ難燃性を付与する方法としては、上記した難燃繊維を用い布帛化する方法以外にも、布帛とした後、難燃剤を染色と同時に浴中で付与(含浸)させる方法や、染色後パッド法で付与する後加工法がある。本発明では後加工法で難燃剤を付与させる方法を採用することもできる。
【0028】
衣服としての着用快適性は、布帛の吸湿性に依存することが多大であり、吸放湿性能の△MRで表すことが適している。△MRは30℃×湿度90%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率と20℃×湿度65%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率(%)との差である。20℃×湿度65%RH雰囲気とは、例えば衣服であれば、洋服ダンスの中に入っている状態、すなわち着用前の環境に相当する。30℃×湿度90%RH雰囲気とは、運動状態における衣服内の環境にほぼ相当する。よって、衣服を着用してから運動したときに衣服内のムレをどれだけ吸収するかに相当する。△MR値が高いほど快適と言える。一般にポリエステルの△MRは0%、ナイロンで2%、木綿で4%、ウールで6%程度である。本発明の多色柄迷彩布帛は、△MR2.5%以上が好ましく、より好ましいのは2.8%以上である。
【0029】
遠赤外線探査装置によれば、各種物体の表面温度に合わせて白黒濃淡差を有するコントラスト画像が形成され、この画像によって探査物体が何であるかを認識する。したがって、かかる画像認識に対して偽装するには、対象物体の表面温度を背景景色の表面温度に近似した温度に制御するのが好ましい。そのために、吸水性の高い布帛を用い水の蒸発潜熱により布帛表面温度を低温化されればよく、その点からも△MR値(吸湿値)が高いほど遠赤外線偽装効果が得られる。
【0030】
本発明の多色柄迷彩布帛の製造方法としては、アラミド繊維と再生繊維、その他の繊維を混綿して紡績糸にするかまたはフィラメント糸に紡績糸をカバーリングしてカバーリング糸とするか、または各繊維の糸を作成した後に、織りまたは編みの段階で各糸を配分する方法などを適宜選べばよい。フィラメント繊維としては仮撚加工糸、インターレース加工糸、タスラン加工糸などの任意の加工糸や通常糸などを用いればよい。織または編み上がり反を通常の精練工程を経て染色工程を施せば良い。
【0031】
本発明は特定の遠赤外線放射率を有する多色柄迷彩布帛であるので、多色柄にするには全色捺染にて着色する方法を用いれば良いが、捺染に先立ち、構成布帛の少なくとも片面を顔料でコーティングする方法、浸染にて染色する方法を採用し、その後他色の捺染をする方法も採用することができる。染料としては、その構成素材によって分散染料、酸性染料、カチオン染料、硫化染料、直接染料、反応染料、バット染料、ナフトール染料などを適宜使用できる、この時に赤外線反射率の調整のため顔料を添加しても良い。本発明で用いるアラミド繊維、好ましくはメタ系アラミド繊維には、バット染料、カチオン染料の使用が好ましい。再生繊維には、反応染料、バット染料、直接染料等の使用が好ましい。PPS繊維には分散染料の使用が好ましい。
【0032】
捺染方法としては、フラットスクリーンまたはロータリースクリーンを用いて通常の方法で加工すればよい。
【0033】
赤外線を用いた偵察方法に対抗するために、周囲の環境や物体と同じ赤外線反射率、すなわち、特定の赤外線波長域において特定の赤外線反射率を有する布帛が必要となる。本発明の4色柄からなる多色柄迷彩布帛では、少なくとも布帛の片面が1000〜1200nmの赤外線波長領域における反射率が、ライトグリーンで54〜66%、ダークグリーンで39〜51%、ブラウンで24〜36%、ブラックで20%以下であることが好ましい。この範囲は日本の各種の植物や砂、岩石、土などの自然物の反射率とほぼ同じ範囲であるので、偽装性に優れたものとなる。
【0034】
赤外線反射率を合わせるには、例えばライトグリーン、ダークグリーンにはバット染料として、Vat Yellow 2、Vat Yellow 48、Vat Orange 2、Vat Orange 9、Vat Blue 14、Vat Blue 25、Vat Green 1、Vat Green 13、Vat Brown 1などが使用できる。ブラウンにはバット染料としてVat Green 1、Vat Green 13、Vat Red 15、Vat Blue 14、Vat Blue 20、Vat Blue 66、Vat Brown 1、Vat Black 8、Vat Black 25などが使用出来る。ブラックには硫化染料として、Sulpher Black 6、Sulpher Black 11、バット染料として、Vat Black 6、Vat Black 19、Vat Green 1、Vat Green 9、Vat Blue 14、Vat Blue 20などが使用できる。これらの染料に水不溶性の顔料を組み合わせることもできる。
【0035】
なお、布帛として親水加工、撥水加工、防汚加工、抗菌加工など任意の加工を施してもよい。この場合、捺染加工前か後ですればよい。ただし、難燃性能を考慮して最適条件を選択する必要がある。
【0036】
かくして構成される本発明の多色柄迷彩布帛は、迷彩衣服、個人装備品、テント、車両用ホロ、ヘリコプターカバー、戦車カバー等の素材に使用することができるが、なかでも多色柄迷彩衣服、特に戦闘服は、偽装性および着用快適性が優れているため従来にない効果を発現することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中の評価・測定は次の方法で行ったものである。
【0038】
<限界酸素指数(LOI値)>
JIS K 7201 B−1法にて測定した。測定サンプル数は各1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
【0039】
<燃焼試験>
JIS L 1091 A−1法(ミクロバーナー法)にて1分加熱で測定した。測定サンプル数はタテ方向、ヨコ方向共に1試料3点(n数=3)とし、表側からの接炎でテストを行った。その時の炭化面積、残炎、残じん時間を評価し、その結果の最悪値を代表値とする。
【0040】
<吸湿性の測定:△MR>
吸湿性は次式で得られる△MRで表す。
△MR=MR2−MR1
MR1:105℃の乾熱乾燥機内に2時間放置し絶乾状態とした後、20℃×湿度65%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率(%)である。測定サンプル数は1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
MR2:前述の絶乾状態から、30℃×湿度90%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率である。測定サンプル数は1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
【0041】
<赤外線反射率>
日立(株)製分光光度計U−3400(サンプルホルダーの押さえ板は黒色を維持しているもの)を用い、1000〜1200nmの領域を測定した。測定サンプル数は1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
【0042】
[実施例1]
メタ系アラミド繊維1.7dtex×51mm 捲縮数9山/2.54cmを35%(重量比)と、難燃ポリノジック繊維1.7dtex×40mm 捲縮数9山/2.54cmを65%(重量比)用いて、30番双糸(30/2S)の紡績糸を作成した。この時のメタ系アラミド繊維の吸湿性能である△MRは1.6%、難燃ポリノジック繊維は4.8%のものであった。この紡績糸をタテ糸、ヨコ糸ともに用い、タテ87本/2.54cm、ヨコ78本/2.54cmの2/1の綾組織で織り上げた。この生地を用い通常の精練、乾燥工程を経て染色前の基布を得た。
【0043】
次に、一番薄い色のライトグリーンを地染するため、連続染色機を用いて、分散染料とバット染料からなる染液に浸漬/絞液し、スチーマ処理、還元処理、酸化処理、ソーピング、湯洗い、乾燥を行った。染め上がり反の色味は不十分でメタ系アラミド繊維が染色不足であり、目標とする近赤外線反射率は基準より外れていた。次に、液流染色機を用いて、均染型分散染料と均染剤を用い140℃×30分で染色を行った。これにより目標とする色相と近赤外線反射率が得られた。次に、このライトグリーン色にあがった生地に85メッシュのロータリースクリーンを用いて捺染を行った。捺染はブラック、ブラウン、ダークグリーンの順で行い、ブラックはバット染料と硫化染料を用い、ブラウンはバット染料と顔料を用い、ダークグリーンはバット染料を用いた。その他の条件は通常の捺染と同じ条件とした。その後通常の仕上げ加工を行った。
【0044】
できあがった4色柄迷彩布帛の難燃性能である限界酸素指数(LOI値)は31.1とかなり高い数値で、またミクロバーナー法による燃焼試験では、炭化面積23cm、残炎時間0秒、残じん時間0秒であり難燃性能があることが判った。燃焼部分は炭化され、溶融状態ではなかった。
【0045】
吸湿性能である△MRは3.3%と高い数値を示し着用快適性があることが判った。
【0046】
各波長毎の赤外線反射率(%)は表1に示した値であった。
【0047】
この迷彩生地を用いて自衛隊向け戦闘服を作成したところ、難燃ビニロン70/綿30使いの戦闘服に比較して、風合いが柔らかく着心地の良いものであった。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例2]
メタ系アラミド繊維1.7dtx×51mm 捲縮数9山/2.54cmを40%(重量比)と、難燃ポリノジック繊維1.7dtx×40mm 捲縮数9山/2.54cmを50%(重量比)と、PPS繊維2.2dtx×38mm 捲縮数9山/2.54cmを10%(重量比)とを用いて、30番双糸(30/2S)の紡績糸を作成した。この時のメタ系アラミド繊維の吸湿性能である△MRは1.6%、難燃ポリノジック繊維は4.8%、PPS繊維は0.3%のものであった。この紡績糸をタテ糸、ヨコ糸ともに用い、タテ87本/2.54cm、ヨコ78本/2.54cmの2/1の綾組織で織り上げた。この生地を用い通常の精練、乾燥工程を経て染色前の基布を得た。
【0050】
次に、一番薄い色のライトグリーンを地染するため、連続染色機を用いて、分散染料とバット染料からなる染液に浸漬/絞液し、スチーマ処理、還元処理、酸化処理、ソーピング、湯洗い、乾燥を行った。染め上がり反の色味は不十分でメタ系アラミド繊維とPPS繊維が染色不足であり、目標とする近赤外線反射率は基準より外れていた。次に、液流染色機を用いて、均染型分散染料と均染剤を用い140℃×30分で染色を行った。これにより目標とする色相と近赤外線反射率が得られた。次に、このライトグリーン色にあがった生地に85メッシュのロータリースクリーンを用いて捺染を行った。捺染はブラック、ブラウン、ダークグリーンの順で行い、ブラックはバット染料と硫化染料を用い、ブラウンはバット染料と顔料を用い、ダークグリーンはバット染料を用いた。その他の条件は通常の捺染と同じ条件とした。その後通常の仕上げ加工を行った。
【0051】
できあがった4色柄迷彩布帛の難燃性能である限界酸素指数(LOI値)は31.7とかなり高い数値で、またミクロバーナー法による燃焼試験では、炭化面積19cm、残炎時間0秒、残じん時間0秒であり難燃性能があることが判った。燃焼部分は炭化され、溶融状態ではなかった。吸湿性能である△MRは3.1%と高い数値を示し着用快適性があることが判った。
【0052】
各波長毎の赤外線反射率(%)は表2に示した値であった。
【0053】
この迷彩生地を用いて自衛隊向け戦闘服を作成したところ、難燃ビニロン70/綿30使いの戦闘服に比較して風合いが柔らかく着心地の良いものであった。
【0054】
【表2】

【0055】
[比較例1]
メタ系アラミド繊維1.7dtx×51mm 捲縮数9山/2.54cmを10%(重量比)と、難燃ポリノジック繊維1.7dtx×40mm 捲縮数9山/2.54cmを90%(重量比)用いて、30番双糸(30/2S)の紡績糸を作成した。この時のメタ系アラミド繊維の吸湿性能である△MRは1.6%、難燃ポリノジック繊維は4.8%のものであった。この紡績糸をタテ糸、ヨコ糸ともに用い、タテ87本/2.54cm、ヨコ78本/2.54cmの2/1の綾組織で織り上げた。この生地を用い通常の精練、乾燥工程を経て染色前の基布を得た。
【0056】
次に、一番薄い色のライトグリーンを地染するため、連続染色機を用いて、分散染料とバット染料からなる染液に浸漬/絞液し、スチーマ処理、還元処理、酸化処理、ソーピング、湯洗い、乾燥を行った。染め上がり反の色味は十分であったがメタ系アラミド繊維が染色不足であり、目標とする近赤外線反射率は基準より外れていた。次に、液流染色機を用いて、均染型分散染料と均染剤を用い140℃×30分で染色を行った。これにより目標とする色相と近赤外線反射率が得られた。次に、このライトグリーン色にあがった生地に85メッシュのロータリースクリーンを用いて捺染を行った。捺染はブラック、ブラウン、ダークグリーンの順で行い、ブラックはバット染料と硫化染料を用い、ブラウンはバット染料と顔料を用い、ダークグリーンはバット染料を用いた。その他の条件は通常の捺染と同じ条件とした。その後通常の仕上げ加工を行った。
【0057】
できあがった4色柄迷彩布帛の難燃性能である限界酸素指数(LOI値)は32.0とかなり高い数値で、またミクロバーナー法による燃焼試験では、炭化面積18cm、残炎時間0秒、残じん時間0秒であり難燃性能があることが判った。燃焼部分は炭化され、溶融状態ではなかった。
【0058】
吸湿性能である△MRは3.9%と高い数値を示し吸湿性における着用快適性があることが判った。ただし、風合いが柔らすぎて外衣としては向かず、また、強度的に300N/5cmと弱く、また洗濯収縮率が4.7%と大きく、外衣としてはスペックアウトであった。
【0059】
[比較例2]
メタ系アラミド繊維1.7dtx×51mm 捲縮数9山/2.54cmを65%(重量比)と、難燃ポリノジック繊維1.7dtx×40mm 捲縮数9山/2.54cmを35%(重量比)用いて、30番双糸(30/2S)の紡績糸を作成した。この時のメタ系アラミド繊維の吸湿性能である△MRは1.6%、難燃ポリノジック繊維は4.8%のものであった。この紡績糸をタテ糸、ヨコ糸ともに用い、タテ87本/2.54cm、ヨコ78本/2.54cmの2/1の綾組織で織り上げた。この生地を用い通常の精練、乾燥工程を経て染色前の基布を得た。
【0060】
次に、一番薄い色のライトグリーンを地染するため、連続染色機を用いて、分散染料とバット染料からなる染液に浸漬/絞液し、スチーマ処理、還元処理、酸化処理、ソーピング、湯洗い、乾燥を行った。メタ系アラミド繊維が染色不足であり、染め上がり反の色味は不十分で目標とする近赤外線反射率は基準より外れていた。次に、液流染色機を用いて、均染型分散染料と均染剤を用い140℃×30分で染色を行った。これにより目標とする色相と近赤外線反射率が得られた。次に、このライトグリーン色にあがった生地に85メッシュのロータリースクリーンを用いて捺染を行った。捺染はブラック、ブラウン、ダークグリーンの順で行い、ブラックはバット染料と硫化染料を用い、ブラウンはバット染料と顔料を用い、ダークグリーンはバット染料を用いた。その他の条件は通常の捺染と同じ条件とした。その後通常の仕上げ加工を行った。
【0061】
できあがった4色柄迷彩布帛の難燃性能である限界酸素指数(LOI値)は30.7とかなり高い数値で、またミクロバーナー法による燃焼試験では、炭化面積32cm、残炎時間3秒、残じん時間3秒であり難燃性能があることが判った。燃焼部分は炭化され、溶融状態ではなかった。
【0062】
吸湿性能である△MRは2.4%を示し着用快適性があるとは言えない数値であった。また、風合いが硬すぎてゴワゴワした感じで外衣としては向かず、本発明の目的である着用快適性の物が得られなかった。
【0063】
[比較例3]
メタ系アラミド繊維1.7dtx×51mm 捲縮数9山/2.54cmを39%(重量比)と、難燃ポリノジック繊維1.7dtx×40mm 捲縮数9山/2.54cmを26%(重量比)用いて、PPS繊維2.2dtx×38mm 捲縮数9山/2.54cmを35%(重量比)とを用いて30番双糸(30/2S)の紡績糸を作成した。この時のメタ系アラミド繊維の吸湿性能である△MRは1.6%、難燃ポリノジック繊維は4.8%、PPS繊維は0.3%のものであった。この紡績糸をタテ糸、ヨコ糸ともに用い、タテ87本/2.54cm、ヨコ78本/2.54cmの2/1の綾組織で織り上げた。この生地を用い通常の精練、乾燥工程を経て染色前の基布を得た。
【0064】
次に、一番薄い色のライトグリーンを地染するため、連続染色機を用いて、分散染料とバット染料からなる染液に浸漬/絞液し、スチーマ処理、還元処理、酸化処理、ソーピング、湯洗い、乾燥を行った。メタ系アラミド繊維とPPS繊維が染色不足であり、染め上がり反の色味は不十分で目標とする近赤外線反射率は基準より外れていた。次に、液流染色機を用いて、均染型分散染料と均染剤を用い140℃×30分で染色を行った。これにより目標とする色相と近赤外線反射率が得られた。次に、このライトグリーン色にあがった生地に85メッシュのロータリースクリーンを用いて捺染を行った。捺染はブラック、ブラウン、ダークグリーンの順で行い、ブラックはバット染料と硫化染料を用い、ブラウンはバット染料と顔料を用い、ダークグリーンはバット染料を用いた。その他の条件は通常の捺染と同じ条件とした。その後通常の仕上げ加工を行った。
【0065】
できあがった4色柄迷彩布帛の難燃性能である限界酸素指数(LOI値)は32.1とかなり高い数値で、またミクロバーナー法による燃焼試験では、炭化面積17cm、残炎時間0秒、残じん時間0秒であり難燃性能があることが判った。燃焼部分は炭化され、溶融状態ではなかった。
【0066】
吸湿性能である△MRは1.8%を示し着用快適性があるとは言えない数値であった。また、風合いが硬すぎてゴワゴワした感じと、耐光堅牢度が3級と悪く、外衣としては向かず、本発明の目的である着用快適性の物が得られなかった。
【0067】
実施例1、2比較例1〜3の△MR、限界酸素指数(LOI値)、風合いを表3にまとめた。
【0068】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、難燃性を有すると共に偽装性が優れ、吸湿性が良く風合いが柔らかく着用快適性の優れた多色柄迷彩布帛を得ることができ、この多色柄迷彩布帛は、多色柄迷彩衣服、個人装備品、テント、車両用ホロ、ヘリコプターカバー、戦車カバー等の素材に使用することができるが、なかでも多色柄迷彩衣服、特に戦闘服とした場合に従来にない効果を発現する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維と再生繊維とが全体の70%以上を占める布帛であって、アラミド繊維/再生繊維の割合が重量比で20/80〜60/40であり、多色柄に染色されていることを特徴とする多色柄迷彩布帛。
【請求項2】
前記アラミド繊維と再生繊維が紡績糸からなることを特徴とする請求項1に記載の多色柄迷彩布帛。
【請求項3】
前記アラミド繊維がメタ系アラミド繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の多色柄迷彩布帛。
【請求項4】
前記再生繊維が難燃性再生繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多色柄迷彩布帛。
【請求項5】
難燃性能の限界酸素指数が26以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多色柄迷彩布帛。
【請求項6】
吸放湿性能のΔMRが2.5%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多色柄迷彩布帛。
【請求項7】
前記アラミド繊維と再生繊維のほかにポリフェニレンサルファイド繊維を20%以下含有する紡績糸からなる布帛であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の多色柄迷彩布帛。
【請求項8】
前記多色柄が4色柄からなる迷彩であり、1000〜1200nmの赤外線波長領域における反射率が、ライトグリーンで54〜66%、ダークグリーンで39〜51%、ブラウンで24〜36%、ブラックで20%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多色柄迷彩布帛。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の多色柄迷彩布帛を素材に用いたことを特徴とする多色柄迷彩衣服。

【公開番号】特開2007−298199(P2007−298199A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124897(P2006−124897)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】