説明

多芯筆記具

【課題】指を操作部に当てて操作部を前方にスライド操作する際、安定したスライド操作が可能となり、しかも、操作体の外観のデザイン上の自由度が増加し、操作体のユニークな外観を得ることができる多芯筆記具を提供する。
【解決手段】操作体7の本体71の径方向外面に操作部72と装飾部73とを前後に分離して突設させるとともに操作部72の前方に装飾部73を位置させ、操作部72及び装飾部73を、窓孔41から径方向外方に突出させ、操作部72が窓孔41を通して軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さを、装飾部73が窓孔41を通して軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さより大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸筒内に、異なる筆記色を有する複数の芯軸を収容するとともに、各芯軸に設けた操作部を、軸筒から外部に露出させ、この操作部によって、いずれかの芯軸を選択して使用するようにした筆記具において、操作部に凸部または凹部を設け、各芯軸の操作部における前記凸部または凹部の形状を、互いに異なるものとし、各芯軸の操作部の感触を異なるものとした筆記具が記載されている。また、特許文献1には、操作部に、側面視が三角状の同形の突起を前後方向に2個、設けることが開示されている。
【0003】
前記特許文献1の多芯筆記具において、指を操作部に当てて操作部を前方にスライド操作する際、指が操作部から滑り、確実にペン先突出状態にすることができないおそれがある。また、前記特許文献1の多芯筆記具は、感触により識別する構成であるため、操作体の外観のデザイン上の自由度が減少し、操作体のユニークな外観を得ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−335093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、指を操作部に当てて操作部を前方にスライド操作する際、安定したスライド操作が可能となり、しかも、操作体の外観のデザイン上の自由度が増加し、操作体のユニークな外観を得ることができる多芯筆記具を提供しようとするものである。尚、本発明において、軸筒において、「前」とは前端孔側を指し、「後」とはその反対側を指し、筆記体において、「前」とはペン先側を指し、「後」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明は、軸筒2内に複数の筆記体6を前後方向に移動可能に収容し、前記各々の筆記体6の後端に操作体7を連結し、前記各々の筆記体6及び操作体7を弾発体8により後方に付勢し、前記軸筒2の側壁に前後方向に延びる複数の窓孔41を径方向に貫設し、前記各々の窓孔41から径方向外方に前記各々の操作体7の操作部72を突出させ、一つの操作体7を窓孔41に沿って前方にスライド操作することにより、その一つの操作体7を先にペン先突出状態にあった他の筆記体6の操作体7と当接させ、先にペン先突出状態にあった他の筆記体6の操作体7と軸筒2内壁との係止状態を解除し、先に突出状態にあった他の筆記体6のペン先61を軸筒2内に没入させ、前記前方にスライド操作した操作体7に連結された筆記体6のペン先61を軸筒2の前端孔31から突出させてなる多芯筆記具であって、前記操作体7の本体71の径方向外面に操作部72と装飾部73とを前後に分離して突設させるとともに前記操作部72の前方に前記装飾部73を位置させ、前記操作部72及び前記装飾部73を、前記窓孔41から径方向外方に突出させ、前記操作部72が窓孔41を通して軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さを、前記装飾部73が窓孔41を通して軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さより大きくしたことを要件とする。
【0007】
前記第1の発明の多芯筆記具1は、操作部72を窓孔41から径方向外方に大きく突出させることができ、操作部72を前方にスライド操作する際、指を確実に操作部72に当てて操作することができ、安定したスライド操作が可能となる。また、前記第1の発明の多芯筆記具1は、操作部72以外に、装飾部73を備えることにより、操作体7の外観のデザイン上の自由度が増加するとともに、操作体7のユニークな外観を得ることができる。また操作部72が装飾部73より外方に突出していることから、装飾部73が操作部72に保護されるので、装飾部73の外観形状に破損しやすいような細やかな細工を施すことが可能となる。
【0008】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の多芯筆記具1において、前記装飾部73と前記操作部72の外観形状が相似形状であることを要件とする。
【0009】
前記第2の発明の多芯筆記具1は、操作部72と装飾部73の統一されたモチーフにより、一層、ユニークな外観を得ることができる。
【0010】
本願の第3の発明は、前記第1または第2の発明の多芯筆記具1において、前記筆記体6及び前記操作体7を連結状態で軸筒2内から取り外し可能且つ軸筒2内に挿入可能に構成したことを要件とする。
【0011】
前記第3の発明の多芯筆記具1は、筆記体6及び操作体7を連結状態で軸筒2内から取り外し可能且つ軸筒2内に挿入可能に構成した場合、前記第1または第2の発明の構成によって、操作部72を指で摘みやすく、筆記体6及び操作体7の交換が容易となる。
【0012】
本願の第4の発明は、前記第1乃至第3のいずれかの発明の多芯筆記具1において、前記各々の操作体7の形状が同一であることを要件とする。
【0013】
前記第4の発明の多芯筆記具1は、各々の操作体7の形状が同一であることにより、各々の操作部72と指との接触が一定になると共に、軸筒2に設けた複数の窓孔41に対して、不特定に操作体7を配置した場合においても、多芯筆記具1の外観を一定にすることができ、いずれの操作部72をスライド操作しても安定したスライド操作を可能にすることができる。
【0014】
本願の第5の発明は、前記第1乃至第4のいずれかの発明の多芯筆記具1において、前記各々の操作体7の装飾部73を前記軸筒2の対称の位置に配した際、該軸筒2の対称の位置関係にある二つの装飾部73で一つの形態を構成する。
【0015】
前記第5の発明の多芯筆記具1は、ペン先61没入状態で、前記軸筒2の窓孔41から径方向に突出した対称の位置関係にある装飾部73が、軸筒2を挟んだ両位置で仮想的に一つの形態を構成することにより、装飾部73の単独としての装飾性のみならず、二つの装飾部73の組合せによる複合的な装飾性を得ることができる。
【0016】
本願の第6の発明は、前記第1乃至第5のいずれかの発明の多芯筆記具1において、前記操作体7の装飾部73を前記操作部72の前方に位置させ、且つ当該操作体7の本体の裏面に前側突出部74と該前側突出部74の後方の後側突出部75とを有し、前記装飾部73を前記前側突出部74と前記後側突出部75との隙間71aにおける径方向外面に突設してある。
【0017】
前記第6の発明の多芯筆記具1は、操作体7の本体71が、前側突出部74と後側突出部75との隙間71aとなる肉が薄くなる位置に装飾部73を突設することで、操作体7の強度が高まり、繰り返しの出没作動やレフィル交換時において破損等の虞がなく、材質等の選択の幅を拡げることができる。
【0018】
本願の第7の発明は、前記第1乃至第6のいずれかの発明の多芯筆記具1において、前記操作体7の装飾部73を前記操作部72の前方に位置させ、且つ当該装飾部73の外端部が、前記操作体7の操作部72の外端部と、前記窓孔41の前端41aとを結ぶ線Lよりも、前記軸筒2の外面側に位置する。
【0019】
前記第7の発明の多芯筆記具1は、操作部72が装飾部73より後方に位置していても、ペン先61が軸筒2内に没入したペン先61没入状態で、操作体7の装飾部73が、窓孔41の前端41aから操作部72の外端部を結ぶ線Lよりも、軸筒2外面側(即ち径方向内側)に位置する(図4参照)ことにより、筆記状態にある筆記体6のペン先61が突出し、軸筒2を指で把持している状態で、別の操作部72を前方にスライド操作する場合において、指が操作部72の後方に移動するのに最短距離を通過しても装飾部73に当接しないため、操作性を高める効果を奏することができる。尚、本発明で窓孔41の前端41aから操作部72の外端部を結ぶ線Lを特定したのは、操作部72をスライド操作する場合には、窓孔41の部分を把持してしまうと、操作部72を前方にスライド操作し難く操作性が低下するため、一般的に窓孔41の前端41aよりも前方を把持して操作体の操作が行われるためである。
【0020】
本願の第8の発明は、前記第1乃至第7のいずれかの発明の多芯筆記具1において、前記軸筒2の後端部にクリップ45を一体に形成または付設するとともに、前記操作部72が窓孔41を通して軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さA’が、前記クリップ45が軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さDの同等以上であることを要件とする。
【0021】
前記第8の発明の多芯筆記具1は、前記軸筒2の後端部にクリップ45を一体に形成または付設するとともに、前記操作部72が窓孔41を通して軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さA’(図4参照)が、前記クリップ45が軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さD(図5参照)の同等以上とすることで、操作部72を指で摘みやすくなるとともに、周方向の異なる位置にクリップ45と同等以上の転がり抑制機能を具備するため、より高い転がり抑制効果を奏することができる。
【0022】
本願の第9の発明は、前記第1乃至第8のいずれかの発明の多芯筆記具1において、前記軸筒2の後端部にクリップ45を一体に形成または付設するとともに、ペン先61が軸筒2内に没入したペン先61没入状態で、前記装飾部73が、前記クリップ45の基部の前側面45aよりも後方に位置し、前記ペン先61を軸筒2の前端孔31から突出させたペン先61突出状態で、前記ペン先61突出状態にある筆記体6に連結した操作体7における操作部72が、前記クリップ45の基部の前側面45aよりも前方に位置することを要件とする。
【0023】
前記第9の発明の多芯筆記具1は、前記軸筒2の後端部にクリップ45を一体に形成または付設するとともに、前記装飾部73が、前記クリップ45の基部の前側面45aよりも後方に位置し、前記ペン先61を軸筒2の前端孔31から突出させたペン先61突出状態で、前記ペン先31突出状態にある筆記体6に連結した操作体7における操作部72が、前記クリップ45の基部の前側面45aよりも前方に位置することで、ポケット(図示せず)に軸筒2を挿着してクリップ45により挟持した状態であっても、装飾部73が外部に露出することから装飾性が高く、且つペン先61を軸筒2の前端孔31から突出させた状態で挿着させてしまった時には、ポケットにより操作部72が見えなくなるという状態になることから気が付きやすく、ポケットの汚損を回避できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の多芯筆記具によれば、指を操作部に当てて操作部を前方にスライド操作する際、安定したスライド操作が可能となり、しかも、操作体の外観のデザイン上の自由度が増加し、操作体のユニークな外観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本実施の形態における多芯筆記具のペン先没入状態を示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1のペン先突出状態を示す縦断面図である。
【図3】図3は、本実施の形態における操作体及び筆記体の連結状態を示す正面図である。
【図4】図4は、本実施の形態における多芯筆記具の正面図である。
【図5】図5は、図4の側面図である。
【図6】図6は、図5の蓋部を開放した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜図6は本発明の実施の形態を示す図であり、具体的な実施例を図で説明する。
【0027】
本実施の形態の多芯筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に前後方向に移動可能に収容される複数本の筆記体6とからなる。前記各々の筆記体6の後端には、操作体7が固着される。前記各々の筆記体6及び操作体7は、弾発体8(具体的には圧縮コイルスプリング)により後方に付勢されている。尚、本発明において、前記軸筒2内に移動可能に収容する筆記体6の本数は、2本以上であればよく、2本以外にも、3本、4本、5本、6本等であってもよい。
【0028】
(軸筒)
前記軸筒2は、先細状の円筒体からなる前軸3と、該前軸3の後端部と螺合または圧入により取り付けられる円筒状の後軸4とからなる。前記前軸3の前端には、筆記体6のペン先61が突出可能な前端孔31が軸方向に貫設される。前記前軸3及び後軸4は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト等)の射出成形により得られる。
【0029】
前記後軸4の後部の側壁には、複数本(具体的には2本)の前後方向に延びる細長状の窓孔41が、径方向に貫設される。また、前記後軸4の後端部には、軸方向後方に貫通し且つ径方向外方に開口する開口部42が形成される。前記開口部42は、後軸4の後端(即ち軸筒2の後端)において窓孔41と連通され、それにより、窓孔41後端が後方に切り欠かれ後方に開口されている。一方、前記窓孔41の前端41aは常時閉鎖されている。
【0030】
また、前記後軸4の窓孔41の相互間の側壁内面には、前後方向に延びるリブよりなる係止壁部43が形成され、前記係止壁部43に、ペン先61が突出した際の筆記体6の操作体7の後端が係止される。後軸4の窓孔41の相互間の側壁外面の後端部には、クリップ45が一体に設けられる。
【0031】
前記軸筒2(前軸3または後軸4)の外面には、操作部72及び装飾部73の外観形状のモチーフ(例えば椰子の葉や実)による模様を施した図柄が設けられる。それにより、統一したモチーフにより、一層、筆記具全体のユニークな外観が得られる。前記図柄は、印刷、塗装、シール貼付等により設けられる。
【0032】
(蓋部)
前記後軸4の後端部には、前記開口部42を開閉自在にする蓋部5が回動可能に設けられる。前記蓋部5は、開口部42を塞ぐ蓋本体51と、該蓋本体51に連設される2本の脚片52とからなる。前記蓋部5の脚片52は、回動軸46により後軸4と接続され、略前後方向に回動可能となる。
【0033】
前記蓋部5(蓋本体51)の前面には、当接壁部53が形成される。前記当接壁部53に、ペン先没入状態の筆記体6の後端に連結された各々の操作体7の後端が衝止される。
【0034】
(係合部、被係合部)
前記蓋部5(蓋本体51)の前面には、係合部54が設けられる(具体的には係合孔部が形成される)。後軸4の後端には、前記係合部54と係合可能な被係合部44が設けられる(具体的には係合凸部が突設される)。前記係合部54の内面には、内向突起が形成され、一方、前記被係合部44の外面には、前記内向突起と乗り越え係止可能な外向突起が形成される。
【0035】
前記係合部54と前記被係合部44は、蓋部5が開口部42を閉鎖した際、互いに係合状態にあり(具体的には内向突起と外向突起が乗り越え係止状態にあり)、弾発体8の後方への付勢による操作体7と蓋部5前面の当接壁部53との当接では、その係合状態は解除されず、蓋部5が開くことはない。即ち、前記蓋部5による開口部42の閉鎖状態において、係合部54と被係合部44との係合により、蓋部5の後方移動が阻止される。
【0036】
(筆記体)
前記各々の筆記体6は、例えば、ボールペンレフィル、シャープペンシルレフィル、サインペンレフィル、マーキングペンレフィル等、入力ペンレフィル(スタイラスペンレフィル)等の公知のペン先61を備えたレフィルが挙げられる。
【0037】
本実施の形態では、ボールペンレフィルが採用される(図3参照)。前記ボールペンレフィルは、ボールペンチップ(ペン先61)と、該ボールペンチップを前端に備え且つ内部にインキが収容されたインキ収容管62と、該インキ収容管62の後端(即ちインキ収容管62の後端開口部)に連結された操作体7とからなる。
【0038】
(操作体)
図3に示すように、ボールペンレフィルの各々の操作体7は、本体71と、該本体71表面に形成され且つ軸筒2の窓孔41から軸筒2外部に突出する操作部72及び装飾部73と、該本体71の裏面に設けられる前側突出部74と、該本体71の裏面の該前側突出部74の後方に設けられる後側突出部75と、該本体71の前端部に形成され且つインキ収容管62の後端開口部に嵌入される嵌入部76と、該嵌入部76の後方に形成される鍔部77とを備える。
【0039】
前記操作部72は、操作体7の本体71の径方向外面に突設される。さらに、前記装飾部73は、前記操作体7の本体71の操作部72より前方位置の径方向外面に突設される。即ち、前記操作体7の本体71の径方向外面に操作部72と装飾部73とが前後に分離して突設される。ペン先没入状態において、前記操作部72及び前記装飾部73が、前記窓孔41から径方向外方に突出される。
【0040】
前記操作体7の本体71表面からの操作部72の径方向外方への突出長さAが、前記操作体7の本体71表面からの装飾部73の径方向外方への突出長さBより大きく設定される(図3参照)。それにより、筆記体6を軸筒2内に収容した状態において、前記操作部72が窓孔41を通して軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さが、前記装飾部73が窓孔41を通して軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さより大きく設定される。
【0041】
また、前記操作体7の本体71表面から操作部72の外端部までの径方向の最大長さAは、前記操作体7の本体71表面から操作体72の裏面に設けた後側突出部75までの径方向の最大長さCより大きく設定される(図3参照)。それにより、操作部72を窓孔41より径方向外方に確実に大きく突出させることができる。
【0042】
さらにまた、前記操作部72が窓孔41を通して軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さA’(図4参照)が、前記クリップ45が軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さD(図5参照)と同等以上に設定される。
【0043】
前記操作部72と前記装飾部73とは、外観形状が相似形状であり、同一のモチーフ(具体的には椰子の木形状)からなる外観を有する。前記モチーフは、椰子の木形状以外にも、例えば、花や動物や昆虫などの生物、あるいは自動車や船や飛行機などの乗り物などの既存物をデザイン化したものや、家紋やトレードマークあるいは架空キャラクターなどの模様的なものが挙げられる。前記操作部72及び装飾部73は操作体7の本体71に一体または別部材の取り付けにより設けられる。特に、図に示すように、装飾部73が、軸筒2を挟んだ両位置で仮想的に一つの形態を構成(装飾部73(椰子の木の葉形態)と軸筒2で椰子の木の形態を構成)することにより、装飾部73の単独としての装飾性のみならず、二つの装飾部73の組合せによる複合的な装飾性を得ることができ好ましい。
【0044】
前記操作部72の肉厚は、前記操作体7の本体71の肉厚と同一に設定され、前記装飾部73の肉厚は、前記操作部72の肉厚より小さく設定される(図5参照)。それにより、操作部72と装飾部73との立体的な相似関係が維持でき、より一層、操作部72及び装飾部73の外観性が向上する。
【0045】
また、前記操作体7は、前記装飾部73を前記前側突出部74と前記後側突出部75との隙間71aにおける径方向外面に突設(図3参照)して、前側突出部74と後側突出部75との隙間71aとなる肉が薄くなる位置の強度を高めてあり、これは軸筒2の後部に蓋部5を設けて、操作体7及び筆記体6を繰り返し交換する構造の多芯筆記具において好ましい形態である。
【0046】
図3に示すボールペンレフィルを軸筒2内に収容した多芯筆記具1において、筆記体6のペン先61が没入状態のとき、その筆記体6に取り付けられた操作体7の後端部は、蓋部5の前面に形成された当接壁部53に衝止される(図1参照)。一方、筆記体6のペン先61が突出状態のとき、その筆記体6に取り付けられた操作体7の後端部は、軸筒2の内壁に形成された係止壁部43に係止される(図2参照)。また、図3に示すボールペンレフィルを軸筒2内に収容した多芯筆記具1において、ペン先没入状態にある筆記体6の後端に連結された操作体7の前側突出部74は、その操作体7の操作部72を前方に移動させた際、先にペン先突出状態にある他の筆記体6の後端に連結された操作体7の後側突出部75と当接され、他の筆記体6の後端に連結された操作体7と後軸4に形成した係止壁部43との係止状態が解除され、他の筆記体6のペン先突出状態が解除される。
【0047】
(弾発体支持部)
軸筒2の内壁(具体的には後軸4の内壁)には、円筒状の弾発体支持部9が固着される。前記弾発体支持部9は、筆記体6が挿通される複数(具体的には2個)の内孔91が軸方向に貫設されている。前記弾発体支持部9の後面と、各々の操作体7の鍔部77の前面との間には、弾発体8が配置される。前記各々の弾発体8の内部に筆記体6が遊挿されるとともに、各々の弾発体8の前端は弾発体支持部9の後面により係止され、各々の弾発体8の後端は操作体7の鍔部77の前面に係止される。前記弾発体8により、筆記体6及び操作体7が後方に付勢される。
【0048】
(ペン先の出没)
本実施の形態におけるペン先61の出没作動について説明する。
一つの操作体7の操作部72を弾発体8の後方付勢に抗して窓孔41に沿って前方に移動させると、その前方に移動させた操作体7の前側突出部74が、先に突出状態にある他の筆記体6の操作体7の後側突出部75を径方向外方に持ち上げる。それにより、軸筒2の係止壁部43と操作体7との係止状態が解除され、他の筆記体6が弾発体8の後方付勢により後方に移動され、他の筆記体6のペン先61が軸筒2内に没入され、他の筆記体6の操作体7の後端が蓋部5の前面の当接壁部53に当接衝止される。前記他の筆記体6のペン先61の没入と同時に、前記前方に移動させた操作体7に連結された筆記体6のペン先61が、軸筒2の前端孔31より外部に突出されるとともに、前方に移動させた操作体7の後端が軸筒2内壁の係止壁部43に係止され、そのペン先突出状態が維持される。
【0049】
本実施の形態において、ペン先突出状態の筆記体6の後端の操作体7の操作部72は、窓孔41を通して軸筒2外面から径方向外方に突出され、且つ、ペン先没入状態の筆記体6の後端の操作体7の操作部72は、窓孔41を通して軸筒2外面から径方向外方に突出される。それにより、操作部72が十分に軸筒2外部に突出され、操作部72の後方に指を移動し、操作部72に指を当てて前方にスライド操作する際、スライド操作開始から終了まで指が操作部72から離れることなく、確実にペン先突出状態にすることができる。
【0050】
また、ペン先61が軸筒2内に没入したペン先61没入状態で、操作体7の装飾部72は、窓孔41の前端41aから操作部72の外端部を結ぶ線Lよりも、軸筒2外面側に位置する(図4参照)。
【0051】
また、ペン先61が軸筒2内に没入したペン先61没入状態で、装飾部73は、クリップ45の基部の前側面45aよりも後方に位置し、一つのペン先61を軸筒2の前端孔31から突出させたペン先61突出状態で、ペン先61突出状態にある筆記体6の後端の操作体7の操作部72及び装飾部73が、クリップ45の基部の前側面45aよりも前方に位置する。
【0052】
(筆記体及び操作体の交換)
本実施の形態における筆記体6及び操作体7の交換について説明する(図6参照)。
筆記体6を交換する際、蓋部5が軸筒2の後端の開口部42を閉鎖した状態から、蓋部5における回動軸46と反対側を後方に押圧し、係合部54と被係合部44との係合を解除し、蓋部5を後方に回動させ、軸筒2の後端の開口部42を開口する。前記開口部42を開口させると、前記開口部42から各々の操作体7が、弾発体8の付勢力により後方外部に突出される。前記軸筒2の後端の開口部42が開口した状態で、操作体7を取り出すことにより、その操作体7と互いに連結状態にある筆記体6を前記開口部42を介して軸筒2内から取り出し、その後、互いに連結状態にある新たな筆記体6と新たな操作体7とを前記開口部42を介して軸筒2内に挿入する。そして、蓋部5の当接壁部53に各々の操作体7を当接させ、各々の操作体7を前方に押圧しながら蓋部5を前方に回動させ、その後、係合部54と被係合部44とを係合させ、開口部42を閉鎖する。これにより、筆記体6及び操作体7の交換作業が終了する。尚、本実施の形態では、筆記体及び操作体7の交換は、開口部42を介して行われるが、これ以外にも、窓孔41を介して行われてもよい。
【0053】
(本実施の形態の作用)
本実施の形態の多芯筆記具1は、操作部72を窓孔41より径方向外方に大きく突出させることができ、操作部72を前方にスライド操作する際、指を確実に操作部72に当てて操作することができ、安定したスライド操作が可能となる。また、本実施の形態の多芯筆記具1は、操作部72以外に、装飾部73を備えることにより、操作体7の外観のデザイン上の自由度が増加するとともに、操作体7のユニークな外観を得ることができる。
【0054】
本実施の形態の多芯筆記具1は、操作部72と装飾部73の統一されたモチーフにより、一層、ユニークな外観を得ることができる。
【0055】
本実施の形態の多芯筆記具1は、筆記体6及び操作体7を連結状態で軸筒2内から取り外し可能且つ軸筒2内に挿入可能に構成した場合、操作部72を指で摘みやすく、筆記体6及び操作体7の交換が容易となる。
【0056】
本実施の形態の多芯筆記具1は、各々の操作体7の形状が同一(即ち各々の操作体7の操作部72及び装飾部73の形状が同一)であることにより、各々の操作部72と指との接触が一定になると共に、軸筒2に設けた複数の窓孔41に対して、不特定に操作体7を配置した場合においても、多芯筆記具1の外観を一定にすることができ、いずれの操作部72をスライド操作しても、安定したスライド操作が可能にすることができる。
【0057】
本実施の形態の多芯筆記具1は、ペン先61没入状態で、前記軸筒2の窓孔41から径方向に突出した対称の位置関係にある操作部72及び装飾部73が、軸筒2を挟んだ両位置で仮想的に一つの形態を構成することにより、装飾部73の単独としての装飾性のみならず、二つの装飾部73の組合せによる複合的な装飾性を得ることができる。
【0058】
本実施の形態の多芯筆記具1は、操作体7の本体71が、前側突出部74と後側突出部75との隙間71aとなる肉が薄くなる位置に装飾部73を突設することで、操作体7の強度が高まり、繰り返しの出没作動やレフィル交換時において破損等の虞がなく、材質等の選択の幅を拡げることができる。
【0059】
本実施の形態の多芯筆記具1は、操作体7の装飾部72が、窓孔41の前端41aから操作部72の外端部を結ぶ線Lよりも、軸筒2外面側に位置することで、他の筆記体6のペン先61を突出し、指で軸筒2を把持している状態から、一つの操作部72を前方にスライド操作する際、指を操作部72の外縁部または操作部72の後方に移動するのに最短距離を通過しても装飾部73に当接しないため、操作性を高める効果を奏することができる。
【0060】
本実施の形態の多芯筆記具1は、操作部72が窓孔41を通して軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さA’が、クリップ45が軸筒2外面より径方向外方に突出する径方向の長さDの同等以上とすることで、操作部72をより摘みやすくなるとともに、周方向の異なる位置にクリップ45と同等以上の転がり抑制機能を具備するため、より高い転がり抑制効果を奏することができる(図4及び図5参照)。
【0061】
本実施の形態の多芯筆記具1は、装飾部73が、クリップ45の基部の前側面45aよりも後方に位置し、ペン先61を軸筒2の前端孔31から突出させたペン先61突出状態で、ペン先61突出状態にある筆記体6の操作体7における操作部72が、クリップ45の基部の前側面45aよりも前方に位置することで、ポケット(図示せず)にクリップ45を挟持した時であっても、操作部72及び装飾部73が外部に露出するため、装飾性が高く、且つペン先61を軸筒2の前端孔31から突出させた状態では、ポケットにより操作部72及び装飾部73が見えなくなるため、ペン先61突出状態を容易に確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
指を操作部に当てて操作部を前方にスライド操作する際、安定したスライド操作が可能となり、しかも、操作体の外観のデザイン上の自由度が増加し、操作体のユニークな外観を得ることができる多芯筆記具に適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1…多芯筆記具、2…軸筒、3…前軸、31…前端孔、
4…後軸、41…窓孔、41a…前端、42…開口部、
43…係止壁部、44…被係合部、45…クリップ、
45a…前側面、46…回動軸、
5…蓋部、51…蓋本体、52…脚片、53…当接壁部、
54…係合部、
6…筆記体、61…ペン先、62…インキ収容管、
7…操作体、71…本体、71a…隙間、
72…操作部、73…装飾部、
74…前側突出部、75…後側突出部、76…嵌入部、
77…鍔部、
8…弾発体、
9…弾発体支持部、91…内孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に複数の筆記体を前後方向に移動可能に収容し、前記各々の筆記体の後端に操作体を連結し、前記各々の筆記体及び操作体を弾発体により後方に付勢し、前記軸筒の側壁に前後方向に延びる複数の窓孔を径方向に貫設し、前記各々の窓孔から径方向外方に前記各々の操作体の操作部を突出させ、一つの操作体を窓孔に沿って前方にスライド操作することにより、その一つの操作体を先にペン先突出状態にあった他の筆記体の操作体と当接させ、先にペン先突出状態にあった他の筆記体の操作体と軸筒内壁との係止状態を解除し、先に突出状態にあった他の筆記体のペン先を軸筒内に没入させ、前記前方にスライド操作した操作体に連結された筆記体のペン先を軸筒の前端孔から突出させてなる多芯筆記具であって、前記操作体の本体の径方向外面に操作部と装飾部とを前後に分離して突設させるとともに前記操作部の前方に前記装飾部を位置させ、前記操作部及び前記装飾部を、前記窓孔から径方向外方に突出させ、前記操作部が窓孔を通して軸筒外面より径方向外方に突出する径方向の長さを、前記装飾部が窓孔を通して軸筒外面より径方向外方に突出する径方向の長さより大きくしたことを特徴とする多芯筆記具。
【請求項2】
前記装飾部と前記操作部の外観形状が相似形状である請求項1記載の多芯筆記具。
【請求項3】
前記筆記体及び前記操作体を連結状態で前記軸筒内から取り外し可能且つ前記軸筒内に挿入可能に構成した請求項1または2記載の多芯筆記具。
【請求項4】
前記各々の操作体の形状が同一である請求項1乃至3のいずれかに記載の多芯筆記具。
【請求項5】
前記各々の操作体の装飾部を前記軸筒の対称の位置に配した際、該軸筒の対称の位置関係にある二つの装飾部で一つの形態を構成する請求項1乃至4のいずれかに記載の多芯筆記具。
【請求項6】
前記操作体の装飾部を前記操作部の前方に位置させ、且つ当該操作体の本体の裏面に前側突出部と該前側突出部の後方の後側突出部とを有し、前記装飾部を、前記前側突出部と前記後側突出部との隙間における径方向外面に突設してある請求項1乃至5のいずれかに記載の多芯筆記具。
【請求項7】
前記操作体の装飾部を前記操作部の前方に位置させ、且つ当該装飾部の外端部が、前記操作体の操作部の外端部と、前記窓孔の前端とを結ぶ線よりも、前記軸筒の外面側に位置する請求項1乃至6のいずれかに記載の多芯筆記具。
【請求項8】
前記軸筒の後端部にクリップを一体に形成又は付設するとともに、前記操作部が窓孔を通して軸筒外面より径方向外方に突出する径方向の長さが、前記クリップが軸筒外面より径方向外方に突出する径方向の長さの同等以上とする請求項1乃至7のいずれかに記載の多芯筆記具。
【請求項9】
前記軸筒の後端部にクリップを一体に形成又は付設するとともに、前記装飾部が、前記クリップの基部の前側面よりも後方に位置し、前記ペン先を軸筒の前端孔から突出させたペン先突出状態で、前記ペン先突出状態にある筆記体の操作体における操作部が、前記クリップの基部の前側面よりも前方に位置する請求項1乃至8のいずれかに記載の多芯筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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