説明

多角竿

【課題】本発明は、断面T字型をなす長手T字型部材を複数個用いて内側に中空部を有する多角形とし、竿の曲り後の反発力を十分に有することを目的とする。
【解決手段】本発明による多角竿は、全体形状が長手棒状をなし、その外周形状が断面多角形で形成された多角竿において、断面T字型をなす長手T字型部材(10)を少なくとも複数有して中空状をなす構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多角竿に関し、特に、断面T字型をなす長手T字型部材を少なくとも3個用いて内側に中空部を少なくとも3個有する多角形とし、いずれの方向に竿を曲げても曲り後の反発力を十分に有する構成とするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の多角竿としては、製作のみで、特許出願等は行われていないため、特許文献等は特に開示していないが、実際に、市販されている多角竿の構成を図8、図9及び図10として挙げることができる。
すなわち、図8は中空六角竿1であり、この中空六角竿1は、長手状の平板部材で形成された6個の長手平板部材2で構成され、前記各長手平板部材2の両側に形成されたテーパ状の各外壁用側面3が互いに接着剤等で当接後に接続されている。
【0003】
前記各長手平板部材2の内側には長手状の六角形をなす中空部4が形成され、前記中空六角竿1は、長手状に形成されていると共に、手前の竿元から竿先にかけて先細り状に形成されている。
【0004】
また、図9は、従来の中実六角竿1Aを示しており、この中実六角竿1Aは、断面形状が三角形をなす6個の長手三角部材5よりなり、各長手三角部材5の各長手側面5aが互いに当接し、接着剤等で接続することにより、外周面が断面で六角形をなすように中実状の六角柱状に形成される。
また、図10の他の従来構成は、後述の非特許文献1に示されているように、断面T字型をなす長手T字型部材10を2個と長手状の長手平板部材2を4個組み合わせ、その外周形状が横長の六角形をなし、前記各長手T字型部材10は互いに対向して配設された扁平中空六角竿である。
また、前記各長手T字型部材10に一体延設された各突条12の内端13が互いに当接して接着剤等で接続されることにより、一対の中空部4が形成されている。
【0005】
【非特許文献1】「バンブーロッドのいま」渡渉舎、2007年6月11日発行、213頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の多角竿は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図8で示される従来構成においては、六角竿自体が単純に筒状で形成されていたため、竿が曲がった時に、断面の中空部分が横につぶれて反発力が弱くなることがあり、永く使用することが困難であった。
また、図9で示される中実状の六角竿においては、内部に中空部分が存在しないため、竿自体の重量が重く、軽量化が困難であると共に、十分なしなりを得ることが困難であった。
また、前述の図10で示される横長六角形の外周形状を持つ竿においては、2個のみの長手T字型部材を用いているため、各突条が一方向のみに直線配置となり、その弾性が曲がる方向によって変化するため、竿を好適に使用できる向きが一方向に限定されると云う欠点を有する上に、長手T字型部材の内側に突出する突条の内端同志を正確に当接させるために各部材を加工するための工程が長くなり、生産性が極めて低いと云う課題も存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による多角竿は、全体形状が長手棒状をなし、その外周形状が断面多角形で形成された多角竿において、断面T字型をなす長手T字型部材を少なくとも3個有して少なくとも3個の中空部をなす構成であり、前記長手T字型部材は3個よりなり、各長手T字型部材間には長手平板部材が介装され、前記各長手T字型部材の各外壁用平板状壁部の両側の各外壁用側面は前記長手平板部材の両側の平板用側面に当接し、前記各長手T字型部材の中央に設けられ内方へ向けて突出する各突条の内端は互いに当接している構成であり、また、前記長手T字型部材は4個よりなり、前記各長手T字型部材の各外壁用平板状壁部の両側の各外壁用側面は互いに当接し、前記各長手T字型部材の中央に設けられ内方へ向けて突出する各突条の内端は互いに当接している構成であり、また、前記各外壁用側面は、テーパ面からなる構成であり、また、前記各外壁用側面及び平板用側面は、テーパ面からなる構成であり、また、前記各長手T字型部材の各内端は、山形突出部よりなる構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による多角竿は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、全体形状が長手棒状をなし、その外周形状が断面多角形で形成された多角竿において、断面T字型をなす長手T字型部材を少なくとも3個有して少なくとも3個の中空部をなすことにより、中空状であるにも拘わらず、少なくとも3本の突条で支持されているため、いずれの方向へ曲げた場合でも高い弾性を維持し、しなり後の変形もなく、耐久性の高い竿を得ることができる。
また、前記長手T字型部材は3個よりなり、前記各長手T字型部材間には長手平板部材が介装され、前記各長手T字型部材の各外壁用平板状壁部の両側の各外壁用側面は前記長手平板部材の両側の平板用側面に当接し、前記各長手T字型部材の中央に設けられ内方へ向けて突出する各突条の内端は互いに当接していることにより、断面正六角形の中空状の竿を得ることができる。また、前記長手T字型部材は4個よりなり、前記各長手T字型部材の各外壁用平板状壁部の両側の各外壁用側面は互いに当接し、前記各長手T字型部材の中央に設けられ内方へ向けて突出する各突条の内端は互いに当接していることにより、断面四角形の中空状の竿を得ることができる。
また、前記各外壁用側面は、テーパ面からなることにより、各長手T字型部材の接続が容易となる。また、前記各外壁用側面及び平板用側面は、テーパ面からなることにより、各長手T字型部材と長手平板部材の接続が容易となる。また、前記各長手T字型部材の各内端は、山形突出部よりなることにより、各長手T字型部材の各突条の内端の接続が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、断面T型をなす長手T字型部材を少なくとも3個用いて内側に少なくとも3個の中空部を有する正多角形とし、いずれの方向へ曲げた場合でも竿の曲り後の反発力を十分に有する多角竿を提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明による多角竿の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を用いて説明する。
図1において符号1で示されるものは中空正六角竿からなる多角竿であり、この多角竿1は、断面T字型をなす長手形状の少なくとも3個の長手T字型部材10と、この長手T字型部材10の両側に接続され長手平板状をなす長手平板部材2と、から構成されている。
【0011】
前記各長手T字型部材10は、平板状に形成された外壁用平板状壁部11と、この外壁用平板状壁部11の中央に設けられ内方へ向けて突出する突条12と、から構成されている。
【0012】
前記各長手T字型部材10の外壁用平板状壁部11の両側には、テーパ面12aからなる外壁用側面3が形成され、前記突条12の内端13は山形突出部14bで構成されている。
【0013】
前記長手平板部材2の両側には、テーパ面14aからなる平板用側面14が形成されており、前記各長手平板部材2の両側の各平板用側面14は、前記各外壁用平板状壁部11の両側の各外壁用側面3に接着剤等で接続されることにより、中空正六角竿からなる多角竿1が形成されている。
前記各山形突出部14bは、互いに接着剤等によって接続され、前記各長手T字型部材10及び長手平板部材2の内側に3個の中空部4が形成されている。従って、前記各突条12は、前記中空部4に対する支柱としての作用を有している。
【0014】
図2は本発明による他の実施の形態を示す端面図であり、中空正四角竿からなる多角竿1が示されている。
図2においては、四個の長手T字型部材10が、前記各外壁用側面3同志を互いに接着剤等を用いて接続させることによって断面正四角形をなす中空正四角竿からなる多角竿1が構成されている。
前記各長手T字型部材10の各突条12の内端13の山形突出部14bは互いに接着剤等で接続されていることにより、各長手T字型部材10の内側には、四個の中空部4が形成されている。
【0015】
次に、前述の多角竿1を構成する前記長手T字型部材10及び長手平板部材2を製作する場合について説明する。
材料としては竹材を用い、図3で示されるように、まず、長手形状の竹材50を、60度の周知の2枚のアンギュラーカッター51を用いたアンギュラーカッター装置60で60度の角度を有する大まかな三角柱に切り出す。この竹材50を、一対の周知のサイドカッター52、53をスペーサー54で挟み込んでなるサイドカッター装置55で削ることにより、全体形状が三角柱をなす竹材50が断面T型をなすT型柱56に形成される。
【0016】
次に、図5で示されるように、60度の前記アンギュラーカッター51の肩の部分を120度に切り欠いたもの、ないし、120度のアンギュラーカッター2枚を用いてなるアンギュラーカッター装置60により、前記T型柱56のテーパ面12a及び内端13を、60度から120度に削る(図15のドット部分60aを削る)ことにより、前述の長手T字型部材10が形成される。
すなわち、120度の切り欠きを有する一対の60度アンギュラーカッター51を用いることにより、長手T字型部材10の突条12と外壁用平板状壁部11を同時に仕上げ加工することができる。
尚、本発明による多角竿においては、少なくとも3個の長手T字型部材10を用いて構成することができるが、この場合には、長手T字型部材10の外壁用平板状壁部11の片側又は両側を延設することによって独立した長手平板部材2を用いなくても図1の中空六角竿を形成することができる。また前記長手T字型部材10の外壁用平板状壁部11の中央に設けられ内方へ向けて突出する突条12は通常壁状の構造物となるが、図6及び図7のように、この部分に適宜横穴12Dや切り欠き12Bを設けることにより、本発明の効果を損なわずにさらに軽量化を図ることも可能である。また、前述の図1及び図2の構成においては、各突条12を組立てた形状が、三つ又状(スター型)及び十字型で形成されているため、竿がいずれの方向へ曲折した場合でも、竿の曲がり後の反発力を十分に得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による多角竿を示す断面を示す斜視図である。
【図2】図1の他の形態を示す断面を示す断面図である。
【図3】図1の多角竿の部品を加工する状態を示す工程図である。
【図4】図3で加工した竹材50をT型柱に加工する状態を示す工程図である。
【図5】図4のT型柱をアンギュラー装置で加工し、長手T字型部材10を得る状態を示す工程図である。
【図6】本発明による多角竿の突条の他の形態を示す斜視図である。
【図7】本発明による多角竿の突条の他の形態を示す斜視図である。
【図8】従来の中空六角竿の一部を示す斜視図である。
【図9】従来の中実六角竿の一部を示す斜視図である。
【図10】従来の扁平中空六角竿の一部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 多角竿
2 長手平板部材
3 外壁用側面
4 中空部
10 長手T字型部材
11 外壁用平板状壁部
12 突条
12a テーパ面
12B 切り欠き
12D 横穴
13 内端
14b 山形突出部
14a テーパ面
50 竹材
51 アンギュラーカッター
52、53 サイドカッター
54 スペーサー
55 サイドカッター装置
56 T型柱
60 アンギュラーカッター装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体形状が長手棒状をなし、その外周形状が断面多角形で形成された多角竿において、断面T字型をなす長手T字型部材(10)を少なくとも3個有して少なくとも3個の中空部(4)をなすことを特徴とする多角竿。
【請求項2】
前記各長手T字型部材(10)間には長手平板部材(2)が介装され、前記各長手T字型部材(10)の各外壁用平板状壁部(11)の両側の各外壁用側面(3)は前記長手平板部材(2)の両側の平板用側面(14)に当接し、前記各長手T字型部材(10)の中央に設けられ内方へ向けて突出する各突条(12)の内端(13)は互いに当接していることを特徴とする請求項1記載の多角竿。
【請求項3】
前記長手T字型部材(10)は4個よりなり、前記各長手T字型部材(10)の各外壁用平板状壁部(11)の両側の各外壁用側面(3)は互いに当接し、前記各長手T字型部材(10)の中央に設けられ内方へ向けて突出する各突条(12)の内端(13)は互いに当接していることを特徴とする請求項1記載の多角竿。
【請求項4】
前記各外壁用側面(3)は、テーパ面(12a)からなることを特徴とする請求項2又は3記載の多角竿。
【請求項5】
前記各外壁用側面(3)及び平板用側面(14)は、テーパ面(12a,14a)からなることを特徴とする請求項2記載の多角竿。
【請求項6】
前記各長手T字型部材(10)の各内端(13)は、山形突出部(14b)よりなることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の多角竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−124709(P2010−124709A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299827(P2008−299827)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(508321856)
【Fターム(参考)】