説明

多軸スクリュープレスの背圧板構造

【課題】1台のアクチュエータにより背圧板を駆動する多軸スクリュープレスの背圧板構造を提供する。
【解決手段】軸心を相互に平行にして配置する複数のスクリュー軸31、32と、各スクリュー軸31、32に形成するスクリュー羽根4と、スクリュー羽根4を囲んで内部にろ室を形成するスクリーン2と、スクリーン2の汚泥排出側の開口に対向し、各スクリュー軸31、32をガイドとしてスクリュー軸31、32の軸心方向に沿って移動自在に配置する背圧板5と、背圧板5をスクリーン2の汚泥排出側の開口に向けて押圧する1台の空気圧シリンダー装置6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多軸スクリュープレスの背圧板構造に関し、例えば下水汚泥や工業廃水汚泥等の有機性汚泥を脱水する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスクリュープレスには、例えば特許文献1に記載するものなどがあり、この種のスクリュープレスでは、図3に示すように、本体ケーシング101の外周部がスクリーン102をなし、本体ケーシング101を軸心方向に挿通してスクリュー軸103を配置し、スクリュー軸103にスクリュー羽根104を形成している。スクリュー羽根104は汚泥供給側から汚泥排出側へ行くほどにピッチが狭くなる形状をなし、あるいはスクリュー軸103の軸径が汚泥排出側ほど太くなる形状をなす。
【0003】
本体ケーシング101の汚泥排出側には開口に対向して背圧板105を配置しており、背圧板105はシリンダー装置106によって開口に向けて出退自在であり、開口に向けて作用させる圧力を調整することにより脱水力(圧搾力)を制御する。
【0004】
本体ケーシング101に投入した脱水対象汚泥は、スクリーン102でろ過されながらスクリュー軸103およびスクリュー羽根104の回転によって汚泥排出側へ搬送される。この際に、スクリュー羽根104のピッチが汚泥排出側ほど狭くなり、あるいはスクリュー軸103の軸径が汚泥排出側ほど太くなることで、本体ケーシング101におけるスクリュー羽根104の1ピッチ当たりのろ室容積が減少して行く。汚泥はろ室容積の減少による圧密力および背圧板105による背圧の作用により脱水されて、汚泥排出側の開口から本体ケーシング101の外部へ脱水汚泥(ケーキ)として排出される。
【0005】
スクリュー羽根を多条に設ける多軸スクリュープレスとしては、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、濃縮用ケーシングの内部に一対の多条螺旋翼を水平方向に所定間隔で平行に配列したもので、双方の多条螺旋翼は自身の螺旋翼が相手の螺旋翼間に入り込むように配置しており、双方の多条螺旋翼が相互に逆方向へ回転する。
【0006】
また、特許文献2に記載するものは、スクリーン篭の内部に一対のアルキメデス・スクリューを水平方向に所定間隔で平行に配列してあり、各アルキメデス・スクリューは主ネジ山の間に主ネジ山よりも高さの低い補助ネジ山を設けてある。一対のアルキメデス・スクリューは一方のアルキメデス・スクリューの補助ネジ山が他方のアルキメデス・スクリューの主ネジ山の近くに位置するように配置してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−33896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、スクリュー軸103が単軸である場合には、一対のシリンダー装置(空気圧)106がスクリュー軸103を介する背圧板105の両側位置のそれぞれを押出している。このような場合、双方のシリンダー装置106の動作速度が一致しない場合には、双方のシリンダー装置106により背圧板105に作用させる推力のバランスが崩れて背圧板105が傾き、背圧板105がスクリュー軸103に沿って円滑に移動しなくなる。
【0009】
また、スクリーン102の開口から背圧板105の周囲へ押出す汚泥が、スクリュー軸103の上方に位置するシリンダー装置106のロッド上に堆積し、シリンダー装置106の動作を阻害する要因となる。
【0010】
本発明は上記した課題を解決するものであり、アクチュエータによって本体ケーシングの内部の汚泥に対して均一に背圧を与える多軸スクリュープレスの背圧板構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の多軸スクリュープレスの背圧板構造は、軸心を相互に平行にして配置する複数のスクリュー軸と、各スクリュー軸に形成するスクリュー羽根と、スクリュー羽根を囲んで内部にろ室を形成するスクリーンと、スクリーンの汚泥排出側の開口に対向し、各スクリュー軸をガイドとしてスクリュー軸の軸心方向に沿って移動自在に配置する背圧板と、背圧板をスクリーンの汚泥排出側の開口に向けて押圧するアクチュエータとを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の多軸スクリュープレスの背圧板構造において、複数のスクリュー軸は一対のスクリュー軸からなり、1台のアクチュエータにより双方のスクリュー軸の軸心間の中間位置において背圧板を押圧することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の多軸スクリュープレスの背圧板構造において、複数のスクリュー軸は上下方向の位置が異なる複数のスクリュー軸からなり、アクチュエータは一つのスクリュー軸の直下において背圧板を押圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、背圧板が複数のスクリュー軸をガイドとして移動するので、背圧板はスクリュー軸の軸心方向に沿って、かつスクリーンの汚泥排出側の開口に向けてその姿勢を保った状態で円滑に移動する。
【0015】
このため、スクリーン内の汚泥に対して1台のアクチュエータによって押圧しても背圧板の全体で均一に背圧を与えることができ、脱水汚泥の性状の安定化に貢献できるとともに、コストの低減を図ることができる。
【0016】
背圧板は複数のスクリュー軸をガイドとしてその姿勢を保つので、アクチュエータが背圧板を押圧する位置は必ずしも限定的なものではないが、背圧板に作用する力のバランス等を考慮すると、1台のアクチュエータが一対のスクリュー軸の軸心間の中間位置において背圧板を押圧するのが好ましい。背圧板はスクリーンの汚泥排出側の開口から離間する場合にも複数のスクリュー軸をガイドとして円滑に移動する。
【0017】
また、アクチュエータが一つのスクリュー軸の直下において背圧板を押圧する構成をなし、スクリュー軸がガードの役目を果すことで、スクリーンの汚泥排出側の開口から開口縁と背圧板との間を通って排出される脱水汚泥がアクチュエータに付着して堆積するようなことはなく、アクチュエータの動作を阻害する要因を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における多軸スクリュープレスを示す一部破断正面図
【図2】同実施の形態における背圧板を示す正面図
【図3】従来のスクリュープレスを示す一部破断正面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および2において、本実施の形態に係る多軸スクリュープレスの基本的な構成は概略的に以下のものである。
図1において、汚泥脱水機としての多軸スクリュープレスは、本体1によりスクリーン2を支持しており、スクリーン2は軸心方向で複数に分割し、かつ上下に分割した複数のセグメントからなり、スクリーン2にはパンチングメタルやウェッジワイヤ等の種々の形態のろ材を適用可能である。
【0020】
スクリーン2は内部にろ室を形成しており、ろ室には軸心方向に挿通して多数のスクリュー軸3、およびスクリュー軸3の軸心廻りに形成した多条のスクリュー羽根4を挿通し、本体1の汚泥排出側にはスクリーン2の開口に対向して背圧板5を配置している。
【0021】
背圧板5はポリエチレン、ナイロン等の樹脂からなるが、スクリュー軸3との摩擦係数が低いものなら他の材質の材料も適用可能である。背圧板5とスクリュー軸3との間には僅かなクリアランスを設けている。背圧板5とスクリュー軸3との間には、例えばブッシュタイプのすべり軸受を介装することも可能である。
【0022】
本実施の形態では一対のスクリュー軸3のそれぞれに多条のスクリュー羽根4を設けているが、本発明においてスクリュー軸3の数およびスクリュー羽根4の条数は任意に設けることができる。
【0023】
一対のスクリュー軸3は軸心を相互に平行に、かつ上下方向の位置を異ならせて配置しており、本実施の形態ではスクリーン2のろ室上部に配置する上位のスクリュー軸31と、スクリーン2のろ室下部に配置する下位のスクリュー軸32からなる。上位のスクリュー軸31には上位のスクリュー羽根41を形成し、下位のスクリュー軸32には下位のスクリュー羽根42を形成している。
【0024】
上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42は、羽根ピッチが汚泥排出側ほど狭くなっており、羽根の1ピッチ当たりのろ室容積が減少して行く。あるいはスクリュー軸31、32の軸径を汚泥排出側ほど太くすることでスクリュー羽根の1ピッチ当たりのろ室容積を減少させることも可能である。
【0025】
背圧板5はスクリーン2の汚泥排出側の開口に対向しており、各スクリュー軸31、32をガイドとしてスクリュー軸31、32の軸心方向に沿って移動自在に設けている。アクチュエータをなす1台の空気圧シリンダー装置6は本体1に装着しており、ロッドが上位のスクリュー軸31の直下においてスクリュー軸31、32の軸心方向に出退する。空気圧シリンダー装置6はロッド61の先端側が双方のスクリュー軸31、32の軸心間の中間位置において背圧板5に連結してあり、この中間位置において背圧板5をスクリーン2の汚泥排出側の開口に向けて押圧する。アクチュエータとしては油圧シリンダー装置、電動シリンダー装置等を使用することも可能である。
【0026】
上記した構成により、運転時には、左右のスクリュー羽根4を回転させつつ、汚泥供給側からスクリーン2の内部に脱水対象汚泥を投入する。脱水対象汚泥はスクリーン2でろ過されながらスクリュー軸3およびスクリュー羽根4の回転によって汚泥排出側へ搬送される。この際に、スクリュー羽根4の各羽根のピッチが汚泥排出側ほど狭くなり、各羽根の1ピッチ当たりのろ室容積が減少して行くことで、汚泥はろ室容積の減少による圧密力および背圧板5による背圧の作用により脱水され、汚泥排出側の開口から開口縁と背圧板5との間を通ってスクリーン2の外部へ排出される。この際に空気圧シリンダー装置6により加える背圧を制御することで汚泥排出側の開口と背圧板5との間隙の大きさを調整して排出汚泥の含水率を調整する。
【0027】
本実施の形態では、背圧板5が複数のスクリュー軸31、32をガイドとして移動するので、1台の空気圧シリンダー装置6によって背圧板5を押圧しても背圧板5はスクリュー軸31、32の軸心方向に沿って、かつスクリーン2の汚泥排出側の開口に向けてその姿勢を保った状態で円滑に移動する。
【0028】
このため、スクリーン2の内部の汚泥に対して1台の空気圧シリンダー装置6によって背圧板5の全体で均一に背圧を与えることができ、脱水汚泥の性状の安定化に貢献できる。また、背圧板およびアクチュエータをシンプルな構造にできるので、コストの低減を図ることができる。
【0029】
背圧板は複数のスクリュー軸をガイドとしてその姿勢を保つので、空気圧シリンダー装置6が背圧板5を押圧する位置は、必ずしも限定的なものではないが、背圧板5に作用する力のバランス等を考慮すると、空気圧シリンダー装置6が一対のスクリュー軸31、32の軸心間の中間位置において背圧板5を押圧するのが好ましい。背圧板5はスクリーン2の汚泥排出側の開口から離間する場合にも複数のスクリュー軸31、32をガイドとして円滑に移動する。
【0030】
また、上述したように本実施の形態では、一対のスクリュー軸3は軸心を相互に平行に、かつ上下方向の位置を異ならせて配置し、空気圧シリンダー装置6が一つのスクリュー軸31の直下において背圧板5を押圧する構成であり、スクリュー軸31が空気圧シリンダー装置6のロッド61の上方位置でガードの役目を果すことで、スクリーン23の汚泥排出側の開口から開口縁と背圧板5との間を通って排出される脱水汚泥が空気圧シリンダー装置6のロッド61に付着して堆積するようなことはなく、空気圧シリンダー装置6の動作を阻害する要因を排除することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 本体
2 スクリーン
3 スクリュー軸
4 スクリュー羽根
5 背圧板
6 空気圧シリンダー装置
31 上位のスクリュー軸
32 下位のスクリュー軸
41 上位のスクリュー羽根
42 下位のスクリュー羽根
61 ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心を相互に平行にして配置する複数のスクリュー軸と、各スクリュー軸に形成するスクリュー羽根と、スクリュー羽根を囲んで内部にろ室を形成するスクリーンと、スクリーンの汚泥排出側の開口に対向し、各スクリュー軸をガイドとしてスクリュー軸の軸心方向に沿って移動自在に配置する背圧板と、背圧板をスクリーンの汚泥排出側の開口に向けて押圧するアクチュエータとを備えることを特徴とする多軸スクリュープレスの背圧板構造。
【請求項2】
複数のスクリュー軸は一対のスクリュー軸からなり、1台のアクチュエータにより双方のスクリュー軸の軸心間の中間位置において背圧板を押圧することを特徴とする請求項1に記載の多軸スクリュープレスの背圧板構造。
【請求項3】
複数のスクリュー軸は上下方向の位置が異なる複数のスクリュー軸からなり、アクチュエータは一つのスクリュー軸の直下において背圧板を押圧することを特徴とする請求項1または2に記載の多軸スクリュープレスの背圧板構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−284689(P2010−284689A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140632(P2009−140632)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】