説明

多軸型連続壁溝掘削機

【課題】掘削中の掘削機本体の姿勢や進行方向を精度良く制御することにより、掘削機本体の製造コストを引き下げると共に、高精度な壁溝を穿孔できるようにする。
【解決手段】多軸型連続壁溝掘削機に於いて、掘削機本体1を吊下げ支持点とする支持架台9と、複数の縦軸型掘削刃11a、11bと、油圧モータと、各縦軸型掘削刃を回転駆動させる伝動機構11a〜11cと、支持架台9の正面側と背面側に設けられて壁溝に摺接する固定用ガイド板16a〜17cと、支持架台9の正面側と背面側の何れか一方又は両方の左右の、その上方と下方の何れか一方又は両方に設けられた油圧ジャッキ23により押出し自在な調整用ガイド板18a〜22bと、支持架台9の上面に設けた傾斜角度計とから構成され、前記傾斜角度計からの傾斜角信号により所望の調整用ガイド板18a〜22bの油圧ジャッキ23を作動させ、掘削機本体1の地中への貫入方向及び貫入姿勢を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全油圧駆動方式の多軸型連続壁溝掘削機の改良に係り、一基の傾斜角度計を用いて掘削機本体の掘削姿勢や貫入方向を制御することにより、所定寸法の壁溝を高精度で、しかも能率よく穿孔できるようにした多軸型連続壁溝掘削機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中に基礎杭や連続壁を構築する際には、先ず掘削機を用いて地中に所定形状の杭孔や壁溝を穿つと共に、孔や溝を掘削しつつその内部へセメント材を攪拌、注入したり、或いは、孔や溝の掘削後にその内方へ支柱用鋼材及びセメントミルク等を注入することにより、所定寸法の杭体や壁体を形成していく。従って、設計通りの基礎杭や連続壁を構築する為には、必然的に高精度な形状寸法を有する掘削孔や掘削溝を穿孔することが必要となってくる。
【0003】
そのため、例えば、図7及び図8に示すようなケーシング30と掘削ロッド31を地中へ圧入して行く縦軸型掘削機(特開2010-77598号)に於いては、ケーシング30の下端部に傾斜計32を取付け、マスト33にガイドレール34を介して吊下げ支持したケーシング30と垂線との間の傾斜角を検出し、オペレータがその検出した傾斜角に応じて、ケーシング30と掘削ヘッド35の間に自在継手を介して配設した油圧シリンダ36を適宜に操作して、掘削ヘッド35の進行方向を調整するようにしている。尚、図7及び図8において、38はベースマシーン、39はトップ支持ブラケット、50はワイヤロープ、51は回転駆動装置、52はガイド板、53は切削刃、54は掘削孔である。
【0004】
同様に、図9、図10及び図11は、所謂水平多軸型の連続壁溝掘削機の一例を示すものであり、ベースマシーン40のブーム41にロープ42を介して掘削機本体43を吊下げ支持し、掘削機本体43の先端部に並列状に配設したカッタードラム45により溝孔46を掘削するものである。即ち、上記掘削機本体43は、四角柱状の支持架台44と、その下方に設けた2基のカッタードラム45と、支持架台44にカッタードラム45を油圧ジャッキ45a等を介して揺動自在に支持する連結機構等から形成されており、油圧モータ(図示省略)によりカッタードラム45を回転させることにより、溝孔46の掘削が行われる。
【0005】
また、前記カッタードラム45を支持する支持架台44の外周面には、図11に示すように、その四隅に、上下方向に所定の間隔を置いてアジャストフッラップ49と油圧ジャッキ(図示省略)を備えた合計8基の方向修正装置47が設けられており、支持架台46に取付けた傾斜角度計48により、ブ−ム42に吊下げ支持した支持架台46と垂直線との間の傾斜角を検出する。そして、オペレータが、前記検出した傾斜角に応じて方向修正装置47の油圧ジャッキを操作し、アジャストガイドフラップ49の突出量を調節すると共に、前記連結機構の油圧ジャッキ45aにより両カッタードラム45の上下方向位置を微調整することにより、支持架台46の下降方向を制御し、前記傾斜角が小さくなる方向に支持架台46の進行方向を修正する。
【0006】
上記従前の各掘削機は、傾斜角度計により計測した傾斜角に基づいて、掘削ヘッド35の進行方向や支持架台46の下降方向を修正するようにしている。そのため、予め設定した位置に所定の断面形状を有する真っ直ぐな溝孔を効率よく掘削することができ、優れた実用的効用を奏するものである。
しかし、使用している傾斜角度計が、X軸、Y軸又はZ軸の中の何れか1軸のみに対する傾斜角を計測する構成のものである為、より高精度な溝孔を穿孔するためには多数の傾斜角度計を設置しなければならないと云う問題がある。即ち、X軸方向とY軸方向の2軸に対する傾斜角を調整するには、少なくとも2基の傾斜角度計が必要となり、また、X,Y及びZ軸の3軸に対する傾斜角を調整するには、少なくとも3個の傾斜角度計が必要となる。
【0007】
また、傾斜角の測定精度を上げてより設計寸法に近い溝孔を正確に穿孔するためには、傾斜角度計をケーシング30や支持架台46に、上下方向に所定の間隔を置いて複数段設けるのが望ましい。例えば、支持架台46に10メートル間隔で1軸用の傾斜角度計を設け、支持架台の進行方向をX、Y、Zの各軸方向に付いて調整するとすると、高さ20メートルの支持架台44又はケーシング30の場合には、少なくとも2段×3基=6基(X,Yの2軸の方向のみの制御の場合には、2段×2基=4基)の傾斜角度計が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2110−77598号公報
【特許文献2】特開平8−27834号公報
【特許文献3】特開平8−270006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、従前のこの種連続壁溝掘削機に於ける上述の如き問題、即ち、地中へ貫入させる掘削用ケーシングや支持架台が長尺であり、且つ使用する傾斜角度計が1軸方向に対する傾斜角しか測定することが出来ないのものであるため、支持架台等の貫入方向を高精度で正確に制御するには、多数の傾斜角度計を支持架台等に取り付けしてX、Y、Zの各軸方向に対する傾斜角角を測定する必要があり、設備費や保守管理費の削減を図り難いと云う問題を解決せんとするものであり、必要とする傾斜角度計の総数を削減すると共にその設置場所をより条件の良い箇所とすることにより、傾斜角度計の設備費や故障頻度の大幅な減少を可能とした連続壁溝掘削機を提供することを発明の主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して、近年、1基の傾斜角度計でもってX及び又はY軸若しくはX、Y及びZ軸の傾斜角を夫々測定できるようにした所謂3軸型傾斜角度計が開発されている。
しかし、この種の傾斜角度計は何れも精密電子機器であるため、従前の掘削機に於ける傾斜角度計のように、ケーシング30の下端部近傍や支持架台44の下端部近傍のような過酷な作業条件位置に取付することはできない。その結果、地中連続壁用の壁溝掘削機の領域に於いては、この種のX、Y及びZ軸に対する傾斜角を夫々検出する形式の3軸型傾斜角度計の使用が、未だ全く図られていない。
【0011】
一方、地中連続壁用の壁溝掘削機の分野においては、近年ガード下や高架下等の狭隘な場所での掘削を高能率で行えるようにした所謂低空頭壁溝掘削機の開発が強く要望されている。具体的には、掘削機の全背丈が6m以下及び作業幅が5m以下であって、縦掘削のみならず斜掘削も出来、しかも厚さ300〜1000mm、長さ2000〜3000mm、深さ50〜80mぐらいの壁溝の掘削が可能なものが強く求められている。
【0012】
ところで、上述のような仕様の連続壁溝掘削機に於いては、四角状の支持架台と回転掘削刃とから成る掘削機本体の外形寸法は、必然的に3m×3m×1m位以下に押さえる必要があり、その結果、取付け可能な傾斜角度計の数も大幅に限定されることになる。
しかし、支持架台の背丈が短いため、傾斜角度計の取付け場所を支持架台の下端部近傍でなしにその上端部近傍にしても、両位置に於ける傾斜角測定値の間に大きな差異が生じないことになる。
即ち、支持架台の上端部の比較的作業環境条件の良い箇所に傾斜角度計を設置しても、比較的正確に支持架台の垂直線に対する傾斜角を測定することができる。そのため、X、Y及びZ軸に対する傾斜角を検出できる1基の傾斜角度計の設置でもって、X、Y及びZ軸のそれぞれの方向に対する支持架台の傾斜角度を高精度で検出することが出来ることを着想した。
【0013】
本願発明は、上述の如き着想に基づいて創作されたものであり、請求項1の発明は、
ベースマシーンに吊下げ支持した掘削機本体の掘削刃を回転させ、その自重により地中へ貫入させて壁溝を穿孔するようにした多軸型連続壁溝掘削機に於いて、前記掘削機本体を、上面中央を吊下げ支持点とする四角形の支持架台と、当該支持架台に間隔を置いて並列状に配置した複数の縦軸型掘削刃と、支持架台の両側部に夫々縦向き固定した油圧モータと、当該油圧モータの駆動力により両側部に位置する縦軸型掘削刃を夫々逆方向へ回転駆動させると共にその他の各縦軸型掘削刃を回転駆動させる伝動機構と、支持架台の正面側と背面側に設けられて掘削した壁溝に摺接する固定用ガイド板と、支持架台の正面側と背面側の何れか一方又は両方の左右の、その上方と下方の何れか一方又は両方に設けられた油圧ジャッキにより押出し自在な調整用ガイド板と、支持架台の上面に設けた格納箱と、当該納箱内に設置した傾斜角度計とから構成され、前記傾斜角度計からの傾斜角信号により所望の調整用ガイド板の油圧ジャッキを作動させ、掘削機本体の地中への貫入方向及び貫入姿勢を制御することを発明の基本構成とするものである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、5本の縦軸型掘削刃を並列に設けると共に、傾斜角度計をX軸とY軸とZ軸に対する傾斜角を検出する傾斜角度計とし、かつ、支持架台の両側面の上方と下方の何れか一方又は両方に、油圧ジャッキにより押出し自在に調整用ガイド板を配設するようにしたものである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、格納箱の内部に断面形状が半円形の環状の防振ゴムを介して、傾斜角度計を水平に配設固定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に於いては、一基の傾斜角度計でもって所望の各軸方向に対する傾斜角を計測する構成としている。そのため、従前のように多数の傾斜角度計を用いることなしに、一基の傾斜角度計で持って作動中の掘削機本体の進行方向や掘削姿勢を精度良く制御することが可能となり、傾斜角度計の設備費やその補修費等の削減が可能となる。
【0017】
また、掘削機本体を形成する支持架台の正面側と背面側と両側面側の夫々に調整用ガイド板を設けた場合には、一基の傾斜角度計でもってより高精度な壁溝を穿孔することが可能となる。故障等の発生も少なく、メンテナンスフリー化が可能となる。
【0018】
更に、支持架台の上面に傾斜角度計を格納した気密性格納箱を設置するようにしている為、掘削機本体1の作動中に傾斜角度計が損傷する可能性も比較的少なくなり、傾斜角度計に関するトラブルが大幅に減少する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る多軸型連続壁溝掘削機の正面概要図である。
【図2】掘削機本体1の正面概要図である。
【図3】図2の左側面概要図である。
【図4】図2の平面概要図である。
【図5】傾斜角度計取付部の平面図である。
【図6】図5のイ−イ視断面図である。
【図7】従前の溝孔掘削機の側面概要図である。
【図8】掘削中の掘削ロッド先端部の拡大断面図である。
【図9】従前の他の溝孔掘削機の側面概要図である。
【図10】支持架台の側面概要図である。
【図11】方向修正装置の概要を示す斜面図である。
【図12】本発明で使用する傾斜角度計の軸方向を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は本発明に係る多軸型連続壁溝掘削機Aの正面概要図であり、掘削機本体1をロープ7bにより最上位置まで吊り上げした状態をしめすものである。多軸型連続壁溝掘削機Aは、上記掘削機本体1と、ベースマシーン2と、これに搭載した油圧パワーユニット3、リールユニット4a及びウインチ4bと、ベースマシーン2に前後方向及び左右方向へ傾動自在に且つ水平方向に回転動自在に支持固定した伸縮自在なマスト5と、マスト5の上部に固定した伸縮自在なクレーンアーム6と、クレーンアーム6の先端に固定したシーブ7aを介してロープ7bにより吊り下げ支持した掘削機本体1等から構成されている。
【0021】
壁溝の掘削に際しては、ベースマシーン2の操作により掘削機本体1を所定の計画位置の上方に位置せしめ、掘削機本体1の各掘削刃11a,11b,12a,12b,12cを回転駆動させることにより、掘削機本体1の自重でもってこれを地中へ貫入させると共に、掘削により生じた掘削土や泥水は掘削機本体1に設けた吸泥ポンプ14により掘削溝内から外部へ排出する。また、掘削機本体1の土中への貫入方向は、掘削機本体1の支持架台9等に設けた掘削中の壁溝に摺接する調整用ガイド板の突出長さを油圧ジャッキ23により調節することにより、可能な限り所望の姿勢で真っ直ぐに地中へ貫入される。
尚、前記ベースマシーン2の構成やその作動及び掘削機本体1等を用いた壁溝の掘削方法は何れも周知の技術であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0022】
図2乃至図4は、本発明に係る掘削機本体1の正面概要図と左側面概要図と平面概要図を示すものであり、図2乃至図4に於いて、9は支持架台、9a・9bは支持ブラケット、10a・10bは油圧モータ、11a・11b、12a・12b、12cは掘削刃、13a・13b・13cは伝動機構、14は吸泥ポンプ、15は排泥管、15aは吸泥口、16a・16bは中央固定ガイド板、17a・17bは上部固定ガイド板、18a・18bは上部調整用ガイド板、19a・19bは下部調整用ガイド板、20a・20bは中間部調整用ガイド板、21a・21bは側面上部調整用ガイド板、22a・22bは側面下部調整用ガイド板である。
【0023】
即ち、支持架台9はフレーム材により略四角状に形成されており、その両側部には縦向きに配置された油圧モータ10a・10bが支持固定されている。また、各油圧モータ10a・10bの下方には、これと同軸心状に掘削刃12a・12bの駆動軸が配置され、油圧モータ10a・10bにより夫々矢印方向に回転駆動される。
また、前記両油圧モータ10a・10bの間には、3基の掘削刃11a・11b・12cの駆動軸が等間隔で縦向きに配置され、夫々回転自在に支持されている。当該各掘削刃11a・11b・12a・12b・12cの駆動軸は、ギアー構造の伝動機構13a・13b・13cを介して油圧モータ10a・10bに連結されており、各油圧モータ10a・10bの回転により夫々矢印方向へ回転駆動される。
【0024】
尚、上記各油圧モータ10a・10b及び各伝動機構13a・13b・13c等は、何れも鋼製ケース内に収納されており、泥水や掘削土の浸入から保護されている。また、支持架台9の中央上部には吸泥ポンプ14が掘削刃12cの駆動軸と同心状に配置されており、各油圧モータ10a・10bの駆動力によって当該吸泥ポンプ14が回転駆動されることにより、吸泥口15a等から吸入された泥水や掘削土等が排泥管15を通して掘削中の壁溝内から外部へ排出されて行く。
【0025】
前記支持架台9の上部及び下部には、その両側方向へ向けて支持ブラケット9a・9bが突設固定されており、この支持ブラケット9a・9bの正面側と背面側に、上部固定ガイド板16a・16bが、正面視に於いて夫々前記油圧モータ10a・10bの駆動軸と直線状となるようにして支持固定されている。当該上部固定ガイド板16a・16bは長方形の鋼板を所定の曲率でもって彎曲させたものであり、突出せしめた外表面が掘削機本体1の地中への貫入時に壁溝の内周面と摺接する。
【0026】
同様に、当該支持ブラケット9a・9bの下方の正面側と背面側には、前記上部固定ガイド板16a・16bと同形状の上部調整用ガイド板18a・18bが、正面視に於いて夫々前記油圧モータ10a・10bの駆動軸と直線状となるように配置され、油圧ジャッキ23を介して前後方向へ移動自在に支持固定されている。
【0027】
また、当該上部固定ガイド板16a・16bの下方には、これと一直線状に中間部調整用ガイド板20a・20bと下部調整用ガイド板19a・19bが配設されており、夫々油圧ジャッキを介して前後方向へ移動自在に支持固定されている。尚、上記各中間部調整用ガイド板20a・20b及び下部調整用ガイド板19a・19bは油圧モータ10a・10bのケーシング等を利用して支持固定されている。
更に、前記各伝動機構13c・13cのケーシングの正面側と背面側の外表面には、中央固定ガイド板16a・16bが正面視に於いて各伝動機構13c・13cの軸心と直線状となるように配設、固定されている。
【0028】
前記支持架台9の上方に取付した支持ブラケット9a・9bの側面には側面上部調整用ガイド板21a・21bが、油圧ジャッキ23を介して移動自在に支持固定されており、また、両掘削刃12a・12bの駆動軸ケーシングの側面には側面下部調整用ガイド板22a・22bが、油圧ジャッキ23を介して移動自在に支持固定されている。尚、当該側面上部調整用ガイド板21a・21b及び側面下部調整用ガイド板22a・22bは、掘削機本体1の地中への貫入に際して壁溝の側壁に摺接する。
【0029】
図2乃至図4に示した実施形態では、掘削機本体1の正面側と背面側に中間部調整用ガイド板20a・20b、上部固定ガイド板17a・17b及び中央固定ガイド板16a・16bを夫々設けるようにしているが、これ等の設置を省略して上部調整用ガイド板18a・18bのみ、或いは、及び下部調整用ガイド板19a・19bのみを設けるようにしてもよい。
【0030】
更に、上部調整用ガイド板18a・18b及び下部調整用ガイド板19a・19bのみを設けるようにしたり、或いは、その何れか一方を調整用ガイド板にして他方を固定式のガイド板にしてもよい。
【0031】
同様に、掘削機本体1の両側面に側面上部調整用ガイド板21a・21b及び側面下部調整用ガイド板22a・22bを設けるようにしているが、何れか一方を固定式のガイド板にしてもよく、或いは、側面部のガイド板の設置を省略することも可能である。
【0032】
上記各固定用ガイド板及び調整用ガイド板は、掘削機本体1の地中への貫入中は掘削中の壁溝の内壁面に摺接し、調節用ガイド板の油圧ジャッキ23の操作により掘削機本体1の進行方向やその進行姿勢を制御する。
【0033】
尚、これらの制御は、支持架台の上壁面に取付した後述する傾斜角度計の角度検出信号を用いて、各調整用ガイド板の油圧ジャッキの作動を調整することにより自動若しくは手動により行われ、壁溝を穿孔する箇所の地盤やその他の作業条件に応じて、高精度な穿孔を必要とする場合にはX、Y、Z軸方向の角度制御が、また、通常の穿孔精度で良い場合にはX及びY軸方向、若しくはY軸方向のみ又はX軸方向のみの角度制御が行われる。
【0034】
本願発明に於いては、前記傾斜角度計の取付け部Bが支持架台9の上壁面に設けられており、図5及び図6に示すように気密に形成した鋼製格納箱4の内部に、傾斜角度計24が防振ゴム25を介して水平状に支持固定されている。尚、図5及び図6に於いて、26は支持板、24aは上蓋、24bはケーブル引出口であり、防振ゴム25はゴム製パイプのリング体を水平面で半割にした形態に形成されている。
【0035】
前記傾斜角度計24は、所謂3軸の角速度と加速度を検出し、この3軸の角速度と加速度度の検出値(X軸出力値、Y軸出力値及び Z軸出力値)に基づいてX軸方向の傾斜角Φx(ロール角)、Y軸方向の傾斜角Φy(ピッチ角)及びZ軸方向の傾斜角Φz(ヨー角)をプロセッサーにより演算して、ディジタル及び又はアナログ信号として出力する構造の電子式傾斜角度計であり、本実施形態ではAMU-Lite型傾斜角度計(住友精密工業株式会社製)を使用している。
【0036】
また、当該傾斜角度計27は横幅53mm、縦幅32mm、高さ29mmの外形寸法を有する函型に形成されており、前記格納箱24内に収納されている。
【0037】
本発明に係る多軸型連続壁溝掘削機を用いて地中連続壁等を構築する場合には、図1の如く、支持架台9の上面中央を支持点として吊下げした掘削機本体1を所定の穿孔箇所へ垂直姿勢で位置せしめ、油圧モータ10a・10bの駆動によって各掘削は図1の矢印方向に回転させ、掘削機本体1の自重によって地中へこれを貫入させる。尚、掘削土や泥水の排出、掘削箇所の地盤の安定化、壁溝内での壁体の形成等の各工法は公知であるため、ここではその説明を省略する。
【0038】
地中へ貫入した掘削機本体1は、各固定ガイド板及び各調整用ガイド板が掘削した壁溝の内壁面に接触しながら摺動することにより、垂直姿勢で地中へ進行していく。また、傾斜角度計27は、進行する掘削機本体1の姿勢をX軸方向の傾斜角Φx(ロール角)、Y軸方向の傾斜角Φy(ピッチ角)及びZ軸方向の傾斜角Φz(ヨー角)でもって計測し、これを連続又は一定時間間隔ごとに制御装置側へ出力する。
【0039】
掘削機本体1の進行方向や進行時の姿勢は各掘削刃の掘削状況や地盤の状態によって変化する。この掘削機本体1の進行方向や進行時の姿勢は、傾斜角の変化として認識され、傾斜角度計27からの傾斜角信号が予め設定した設定値を超えると、複数の調整用ガイド板中の適宜の油圧ジャッキ23が作動され、変化した掘削機本体1の傾斜角が設定角度に戻される。
【0040】
例えば、今、傾斜角度計7の軸方向を図12のように定めた場合には、掘削機本体1のY軸方向の傾斜角Φy及び又はZ軸方向の傾斜角Φzが設定値を超えて変化すると、支持架台9の正面側と裏面側の上部調整用ガイド板18a・18b及び下部調整用ガイド板19a・19bの伸縮量を調整し、これ等を設定角度以下に引き戻す。また、X軸方向の傾斜角Φzが設定角度を超えると、支持架台9の両側面に設けた側面上部調整用ガイド板21a・21b又は側面下部調整用ガイド板22a・22bの伸縮量を調整し、これ等を設定角度以下に引き戻す。
【0041】
上述のように、傾斜角度計27からの角度検出信号により、適宜箇所の調整用ガイド板を作動させて支持架台9の各部に加わる押圧力(壁溝内壁面からの反力)を調整することにより、支持架台9を真っ直ぐに垂直方向に、或いは、予め設定した傾斜方向に進行させることが出来る。また、指示架台9を予め設定した曲率の彎曲線に沿って進行させることも可能となる。
【0042】
また、傾斜角度計27の取付部Bを指示架台9の上壁面に設けているため、指示架台9の下方部に設ける場合に比較して環境条件が良好となり、傾斜角度計の損傷等が少なくなると共に、支持架台9の背丈が比較的短いために、取付部Bの背丈方向の取付け位置による傾斜角度計27の測定誤差や測定感度の差異は殆ど生じない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、連続地中壁用の壁溝の掘削のみならず、あらゆる用途の地中壁溝の穿孔に適用可能なものである。
【符号の説明】
【0044】
A 多軸型連続壁溝掘削機
B 傾斜角度計取付部
Φ 傾斜角
1 掘削機本体
2 ベースマシーン
3 油圧パワーユニット
4a リールユニット
4b ウインチ
5 マスト
6 クレーンアーム
7a シーブ
7b ロープ
8 シーブ
9 支持架台
9a〜9b 支持ブラケット
10a〜10b 油圧モータ
11a〜11b 掘削刃
12a〜12c 掘削刃
13a〜13c 伝動機構
14 吸泥ポンプ
15 排泥管
15a 吸水口
16a〜16b 中央固定ガイド板
17a〜17b ジ中央固定ガイド板
18a〜18b 上部調整用ガイド板
19a〜19b 下部調整用ガイド板
20a〜20b 中間部調整用ガイド板
21a〜21b 側面上部調整用ガイド板
22a〜22b 側面下部調整用ガイド板
23 油圧ジャッキ
24 格納箱
24a 上蓋
24b ケーブル引出口
25 防振ゴム
26 支持板
27 傾斜角度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシーンに吊下げ支持した掘削機本体の掘削刃を回転させ、その自重により地中へ貫入させて壁溝を穿孔するようにした多軸型連続壁溝掘削機に於いて、前記掘削機本体を、上面中央を吊下げ支持点とする四角形の支持架台と、当該支持架台に間隔を置いて並列状に配置した複数の縦軸型掘削刃と、支持架台の両側部に夫々縦向き固定した油圧モータと、当該油圧モータの駆動力により両側部に位置する縦軸型掘削刃を夫々逆方向へ回転駆動させると共にその他の各縦軸型掘削刃を回転駆動させる伝動機構と、支持架台の正面側と背面側に設けられて掘削した壁溝に摺接する固定用ガイド板と、支持架台の正面側と背面側の何れか一方又は両方の左右の、その上方と下方の何れか一方又は両方に設けられた油圧ジャッキにより押出し自在な調整用ガイド板と、支持架台の上面に設けた格納箱と、当該納箱内に設置した傾斜角度計とから構成され、前記傾斜角度計からの傾斜角信号により所望の調整用ガイド板の油圧ジャッキを作動させ、掘削機本体の地中への貫入方向及び貫入姿勢を制御することを特徴とする多軸型連続壁溝掘削機。
【請求項2】
5本の縦軸型掘削刃を並列に設けると共に、傾斜角度計をX軸とY軸とZ軸に対する傾斜角を検出する傾斜角度計とし、かつ、支持架台の両側面の上方と下方の何れか一方又は両方に、油圧ジャッキにより押出し自在に調整用ガイド板を配設するようにした請求項1に記載の多軸型連続壁溝掘削機。
【請求項3】
格納箱の内部に、断面形状が半円形の環状の防振ゴムを介して傾斜角度計を水平には配設固定するようにした請求項1に記載の多軸型連続壁溝掘削機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−177274(P2012−177274A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41448(P2011−41448)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(595018916)株式会社シロタ (5)