説明

多重トーン信号の同期化

【課題】無線通信システムにおいて使用できるリモートタイミング同期化技術の装置、システム、及び方法を提供する。
【解決手段】無線通信システムのタイミング取得工程において使用される動作周波数範囲内のトーン周波数のセットを生成する方法は、システム周波数分解能を選択し、無線通信システムの周波数分解能に対しての、及び動作周波数範囲内の互いに素となる整数である周波音のセットを生成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願 なし
【0002】
本明細書に記載される主題は電子通信に関し、さらに具体的には無線通信システムにおいて使用できるリモートタイミング同期化技術に関するものである。
【背景技術】
【0003】
タイミングの取得及び同期化は、デジタル通信システム、レーダーシステム、及びデジタル信号処理システム等のモデム電子システムの重要な要素である。受信機の同期化のテーマは多数のデジタル通信の本(例えば、Sklar,B氏著、デジタル通信、第2版、10章、Prentice Hall、Upper Saddle River、N.J.、2001参照)に記載されており、本全体がデジタル通信システム内での受信機の同期化の主題について書かれている(Mengali、U氏著、デジタル受信機の同期化技術、Spinger、New York、N.Y.、1997;Meyr、H.氏等著、デジタル通信における同期化、John Wiley & Sons、Hoboken、N.J.、1990)。多くの応用形態、例えば携帯電話システムの非常に高密度の信号環境、深宇宙探査の低信号対ノイズ比通信チャネル、又はほとんどのパソコンのデジタルモデムによって利用される超狭帯域システムにおいては、効率的な信号同期化技術が望まれている。受信機内部の同期化作用には基本的に、受信機内部の伝達信号に含まれるタイミング情報を複製することが含まれ、これにより伝達信号内で変調された又は符号化されたデータ情報を抽出することができる。最初に同期化を行わない限り、データ情報を伝達信号から抽出することができず、通信リンクが機能しない。したがって、タイミングの取得は受信機と送信機の間の通信リンクが確立された時に行われる最初の処理のうちの一つである。
【発明の概要】
【0004】
上述したシステムにおいて用いられる一つの技術では、タイミングの取得及び同期化にPNシーケンスを使用する。加えて、改善されたクロック及びGPSの偏在により、受信機においてタイミングの取得に使用するための正確な時間基準が利用可能である。これにより、GPS及び/又は改善されたクロックにもアクセス可能な多数の異なる応用形態において、タイミングの取得のためにPNシーケンスを送る時に、これらのシステムのタイミングの不確実性が低減されている。
【0005】
ある既存のタイミング及び同期化の解決策では、特定の周波数帯域内の符号分割多重アクセス(CDMA)方式の信号をタイミング信号として使用する。受信機は、このCDMA信号のテンプレートに対する相関技術を使用してこの信号に同期する。この構造は、タイミング信号が隣接する周波数帯域を占有するのを制限し、最大相関がどこかを判断するのに大型で速い相関ユニットを必要とし、周波数に依存する伝播の効果及び干渉に対して弱く、信号のマルチパス干渉によって乱れる可能性がある。
【0006】
したがって、無線通信システムで使用できるリモートタイミングの同期化技術が有用であり得る。
【0007】
添付の図面を参照しながら詳細説明を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は実施形態による、位相測定値のモジュロ平均及び分散を判断するためのアルゴリズムのフロー図である。
【図2】図2は実施形態による、モジュロ平均位相推定手法及び標準平均位相推定の間の性能の変動を示すグラフである。
【図3】図3は実施形態による、多重トーン送信機及び受信機を含む通信システムの機能構成部品の概要図である。
【図4】図4は実施形態による、4つの異なる帯域幅内でのトーン周波数の多数の選択範囲を示すグラフである。
【図5】図5は実施形態による、適応ベースの周波数フレーム変更アルゴリズムを実行する通信システムの機能構成部品の概要図である。
【図6】図6は実施形態による、適応ベースの周波数フレーム変更アルゴリズムを実行する通信システムの機能構成部品の概要図である。
【図7】図7は実施形態による、適応ベースの周波数フレーム変更アルゴリズムを実行する通信システムの機能構成部品の概要図である。
【図8】図8は実施形態による、RF通信機能の構成部品の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載されるのは、無線通信システムにおいて使用できるリモートタイミング同期化技術の装置、システム、及び方法である。一以上の実施形態において、無線通信システムのタイミング取得工程で使用される動作周波数範囲内でトーン周波数のセットを生成する方法は、周波数分解能に対し、及び無線通信システムの動作周波数範囲内で互いに素となる整数である周波音のセットを生成するシステム周波数分解能を選択することを含む。
【0010】
一又は複数の実施形態では、無線通信システムのタイミング取得工程で使用される動作周波数範囲内のトーン周波数のセットを生成する装置は、プロセッサと、該プロセッサがシステム周波数分解能を選択し、又、周波数分解能に関して互いに素となる整数であり、かつ無線通信システムの動作周波数の範囲内にある周波音のセットを発生させる論理命令を備えるメモリモジュールとを含む。
【0011】
一又は複数の実施形態では、無線通信システムは周波音の第1サブセットを生成して送信する送信ノードと、周波音の第1サブセットを含む少なくとも2つの信号を受信し、2つの信号間の位相差を計算し、位相差を利用して送信機と受信機を同期化する受信ノードを含む。
【0012】
下記の説明において、様々な実施形態を良く理解することができるように多数の詳細情報を明記する。しかしながら当業者には当然なことであるように、様々な実施形態は詳細情報なしで実行することが可能である。その他の場合には、既知の方法、手順、構成部品、及び要素は、特定の実施形態を分かりにくくすることがないように詳細に図示又は説明していない。
【0013】
本出願は、無線通信ネットワークにおいてタイミングを取得するための技術を説明し主張する。本明細書で説明するタイミングの同期化技術を使用して、ネットワークの送信機及び受信機を同期化することができる。概して、本明細書に記載されるタイミングの取得工程の幾つかの実施形態には、送信所の所定の特徴を有する周波音の一又は複数のセットを生成することが含まれる。少なくとも一つの周波音のサブセットが送信所から送られる。マルチパス環境においては、マルチプルインスタンスのトーンが受信所において受信される。受信所の論理は、受信所で受信した対応する一連のトーン間の位相差を利用して、タイミング遅延を判断することができ、このタイミング遅延を利用して送信機及び受信機を同期化することができる。
【0014】
通常ノイズ・フロアより小さい振幅を有する多重トーンを使用することによって、本明細書に記載される技術は、タイミング信号が他の信号と干渉せずに占有信号帯域に属することができる点で、CDMAと同様の特性を有する。しかしながら、本明細書に記載されるシステムは多様な隣接していない周波数範囲を使用することができ、単純なデシメーションフィルタを計算要素として使用して実行することができ、多重トーンのマルチパスを検出することができるためにマルチパス干渉に強く、非線形伝播効果を補正することができる。
【0015】
背景として、以下の一セットのi=1、2、...、wの伝達音{s}の複合信号モデルを考えてみよう。
【0016】
【数1】

【0017】
上記式において、aは未知の振幅、fは周波数(Hz)、そしてθ、0.5<θ<0.5は位相である。Dが全ての音が伝播される未知の時間遅延である場合、受信されたトーン{s}は下記のようになる。
【0018】
【数2】


又は
【0019】
【数3】

【0020】
上記式において、θ’=θ−fDが成り立つ。これであれば、|D|<1/(2f)の明確な同期化(又は時間遅延の測定値)には、各トーンの周波数の知識とともに、2つの信号(すなわち、遅延あり対遅延なし)の位相差の測定値のみが必要である。同様に、通常伝播によって発生する時間遅延には周波数依存の特徴があり、このため、各トーンはgDで示される既知の可逆非線形工程とは異なる数値で遅延し、θ’=θ−f(D)が成り立つため、位相差を計算した後で下記式を介してDを計算することができる。
又は
【0021】
【数4】

【0022】
しかしながら、|D|<1/(2f)の範囲条件によりこの方法の有用性が制限される。この制限を補正する一つのやり方は、各トーンの位相を測定し、中国の剰余定理(CRT)を利用して実際の信号遅延を再現することである。CRTにより、位相を(位相の不明確さを除去する)非常に低い周波数信号で計算するように計算することができるが、高い周波数信号で位相を計算することで正確さを有するアルゴリズムが提供される。数学的に、分解能係数fは、どれほど正確に位相を測定することができるかに基づいて選択することができる。これは例えばc(光速)等の伝播速度係数であってもよく、そうすると時間差の測定値は距離の測定値となり、この結果下記式が成り立つ。
【0023】
【数5】

【0024】
又は、最も近い整数に近似すると、下記式が成り立つ。
【0025】
【数6】

【0026】
上記式において、fはfの約数である。セット{f/f}の整数の値が互いに素となる整数である(自明でない共通の整数の因数がないことを意味する)限りにおいて、CRTにより整数{<(θ−θ’)f/f>}を使ってDmodΠ(f/f)を計算することができる。したがって、Dの範囲は単一の周波数の単一の周期から多数の周波数の積となる周期まで広げることができる、すなわち|D|<0.5Π(f/f)の範囲の全てのDの不明確さなしに遅延を測定することができる。
【0027】
完全性を期すために、中国の剰余定理(CRT)を簡単に説明する。CRTは、正数モジュロの環M、Z/MZと、それぞれ係数mを有する環の直積ΠZ/mZとの間の同型(すなわちマッピング)であり、ここでΠm=Mであり、Mは計算のダイナミック・レンジ要件を満たすのに十分大きい。ある実施形態では、マッピングは下記のようになる。


を定義し、下記を確定する。
【0028】
【数7】


次に下記式を計算する。
【0029】
【数8】


ここで


であり、


はxモジュロyを示す。
【0030】
実際には、測定集合値


の各値を見つけるのに関わる位相測定値は受信ノイズからの誤差を有する可能性があり(ここで、


は、測定ノイズを含む遅延信号の位相の測定値を示す)、このため、最も近い整数に近似する時に、正確な結果が1又はそれ以上ずれている確率がゼロではない。位相の推定及びこの推定値の精度の測定の両方を行うために、標準平均及び分散を計算する代わりに、モジュロ平均及びモジュロ分散を計算することができる。
【0031】
図1は実施形態による、位相測定値のモジュロ平均及び分散を判断するためのアルゴリズムのフロー図である。図1を参照すると、ローパス・デシメーションフィルタ110は、複素位相pが−0.5〜0.5の範囲である複素サンプルの出力112を生成する。次にこの複素位相pは各サンプルについて3つの平行経路を使用する。行われる各経路の計算はわずかに異なり、最後に「最も良い」結果が選択される。
【0032】
操作116において、位相pがゼロよりも小さい場合、操作120において次に位相pに1が加えられる。操作118において、位相pがゼロよりも大きい場合、操作122において次に位相から1が差し引かれる。中間経路において、平均及び分散を計算する前にpの値は変更されない。
【0033】
操作130、132及び134において、それぞれの位相は変更された位相それぞれの二乗と合計され、操作140、142、及び144においてそれぞれの平均及び分散が計算される。操作150において、最小分散を有する平均及び分散の対が選択され報告される。
【0034】
図2は実施形態による、モジュロ平均位相推定手法及び標準平均位相推定の間の性能の変動を示すグラフである。さらに具体的には、図2は多様なランダム(SNR)ノイズに渡り、そして位相がモジュロ境界に近いデータを示す幾つかの異なる曲線に対して、標準平均位相推定値技術に対する図1に示すアルゴリズムの性能の向上を示す。この場合、標準平均位相推定には、平均及び分散推定値に大きな誤差を生じる位相ラッピングの問題がある。この方法により、モジュロ境界によって発生する問題をより良く処理することができるため、平均の推定が向上する。
【0035】
位相のモジュロ平均及び分散が判断されたら、位相差のモジュロ平均から来る整数位相推定


に(1又はそれ以上のずれ)の誤差がある確率を推定することができる。この可能性はモジュロ分散と近似操作の境界への距離の両方に依存し、下記式が成り立つ。
【0036】
【数9】


例えば、整数位相差


と、分散σを有するガウス位相誤差分布を仮定すると、これは下記式を介して計算することができる。
【0037】
【数10】


その他の誤差分布も同様に対応することができる。
【0038】
確率は分類することができ、もし余分なトーンが用いられるならば、一番低い確率を有する位相のサブセットを使用して推定される遅延


を計算することができる。これによりマルチパス及び干渉によって発生する誤差を除くことができる。ある実施形態では、ノイズ及びマルチパス/干渉の両方の誤差検出及び補正のために、m=f/fが互いに素であるトーンのセットを選択することができ、サブセット{mi=l、2、...、uにより{mi=u+l、...、wが冗長係数である必要な全領域が判断される。各位相のモジュロ平均及び分散を予測することができ、各係数mに対して整数の位相差及び分散{μ、σ}を計算することができる。次に、係数Jセットにおいて定義される順番で、位相のセット{p(μ、σ)}を分類することができる。
【0039】
システムが、上記損傷トーンが


で選択されるマルチパス/干渉構成において稼動すると仮定しよう。そうすると、最も低いサブセットのJ


の各lに対し、中国の剰余定理(CRT)を使用してDが評価される。ここで


は標準二項係数を表している。最も頻繁に生じる{D}の値を正確な遅延として選択することができ、2回以上生じる値がない場合は、Jの最も低いu係数を使用する値を選択することができる。
【0040】
上記の方法は、モジュロ平均をそのまま使用するだけのものよりも複雑であるが、これはまた、特にマルチパス及び/又は干渉信号によって発生する現実的な条件下でより良い性能を発揮する。表1には性能の向上を示すサンプル結果が含まれる。ここでσは各位相の計測値におけるガウス性ノイズを制御し、σによってu=3である係数のセット{7、9、11、13、17}に対する遅延の総誤差が発生する値が示される。使用される係数が多いほど、さらに大きい範囲のσに対応することができ、これは係数の数が増えるほど、誤差クリフが高くなるからである。
【0041】
【表1】

【0042】
ある実施形態では、ドップラー/周波数のオフセットの推定値を生成することができる。例として、トラッキングフィルタを遅延の出力に適用することができ、これにより長い期間をかけて共通のドップラー及び周波数のオフセットが推定される。オフセットは、外部で発生したドップラー及び/又は周波数のオフセットを推定するため、全ての係数チャネルに対して共通のものであってよい。このオフセットを使用して、中心の参照トーンと、場合によりフィルタの幅の両方を調節することができる。
【0043】
したがって、本明細書に説明しているのは信号の同期化に使用できる複数セットのトーン(すなわち、純粋な単一周波数正弦波)を構成する方法である。トーンはマルチパス及び/又は干渉の検出に基づいて環境状態の変化に対してトーンのセットを適合させる論理を含むことができる送信機によって送信することができる。さらに、状態の変化に対応する、又は無認可の使用を制限するために、トーンのフレームを自動的に変化させる技術を実行することができる。受信所において受信機はこれらのトーンを受信して各トーンの位相を計算することができる。
【0044】
図3は実施形態による多重トーン送信機及び受信機を含む通信システムの概要図である。図3を参照すると、送信モジュールが図の左側に示され、受信モジュールが図の右側に示されている。ある実施形態では、送信モジュールはそれぞれの周波数F1、F2、...Fnにおいてトーンを発振する複数のトーン発振器310a、310b、...310nを含む。これらのトーン発振器を本明細書ではまとめて参照番号310で表示することができる。当業者はトーン発振器310の数nが理論的には無限であることを認識するだろう。実際にはトーン発振器310の数は送信に利用可能な帯域幅の関数であってよい。
【0045】
トーン発振器310は、選択された周波数分解能fに対して互いに素であるべきトーン周波数のセットfi、i=1、...、nを発振する。つまり、f/fは整数として互いに素であるべきである。この互いに素という方針があっても尚、構成の余裕は十分ある。下記の図4は、ただ互いに素であるよりもより厳しい条件、周波数がすべて完全に素数であることが要求される場合の、4つの異なる帯域幅内での周波数の漸近的数の選択肢を示す。互いに素の場合、選択肢の数はさらに多い。
【0046】
ある実施形態では、トーンを発振する手順は下記のように実行され得る。信号対ノイズ比(SNR)、動作Rの周波数範囲、最大ドップラー及び最大の環境変化を含む様々な初期のシステムパラメータを利用してシステムの周波数分解能fを選択することができる。互いに素である整数Fのリストが初期化されて空になる。次に、R/fが整数のセット


として定義されるように、整数f∈R/fが選択される。1よりも大きいfと最大公約数を有するR/fの整数を除去することができる。この結果得られる整数fを次にFセットに加えることができる。この工程は適切な長さのリストが作成されるまで繰り返すことができる。この工程により、互いに素である整数の増加するリストが作成され、対応するセット{fF}はそして、本発明において説明する多重トーン同期化アルゴリズムとともに使用することができる動作周波数の範囲R内に含まれる実際の周波数のセットである。
【0047】
トーン発振器310によって発振されるトーンはデジタルIF発振器312に入力され、ここからの出力が加算器314に送られて加算器314において追加の伝達信号に加算される。例として、追加の伝達信号は送信機のその他の構成部品によって発振される伝達コンテンツを表すことができる。加算器314の出力はアップコンバータ/送信モジュール316に送られて、伝達周波数にアップ・コンバートされ、アンテナ318を介して送信される。
【0048】
アンテナ318によって送信された信号は、受信機のアンテナ330によって受信され、アナログ信号をデジタル信号に変換するために低ノイズ増幅器332、チューナー334、及びアナログ−デジタル(A/D)コンバータ336に送られる。A/Dコンバータからのデジタル信号の出力は、まとめて参照番号340で示すことができる周波数ミキサー340a、340b、...、340nに入力され、ここでそれぞれの出力は基準トーン発振器338によって発振された基準トーンと混合される。
【0049】
周波数ミキサー340の出力は各ローパス・フィルタ342a、342b、...、342nに入力され、ここで信号はフィルタ処理され間引きされた後で、まとめて参照番号344で示される各位相推定器に通される。
【0050】
伝播媒体により周波数依存非線形遅延が起きると、図3のアーキテクチャにより式4で説明したように各周波数の個々の非線形補正が可能になる。具体的には、位相推定器344a、344b、...、344nの出力が非線形補正器346a、346b、...、346nに通されて、位相が補正される。
【0051】
それぞれ補正された位相推定値は、上述したCRTアルゴリズムを使用してそれぞれの信号に対する位相/遅延推定値を生成するCRTベースの位相/遅延推定モジュール350へ出力される。位相遅延推定値は、それぞれの信号に対してマルチパス/干渉推定値を生成するマルチパス/干渉推定モジュール352に入力される。ある実施形態では、マルチパス干渉推定モジュール352は上述したアルゴリズムを実行する。マルチパス/干渉推定モジュール352の出力は、上述したように周波数オフセット推定値を生成する周波数オフセット推定モジュール354に入力され、生成された周波数オフセット推定値はLPF/デシメータ回路342及び最終遅延推定モジュール356にフィードバックされ、最終遅延推定モジュール356は後に記載する幾つかの可能な周波数フレーム変更アルゴリズムのうちの一つを使用して最終遅延推定値を生成する。
【0052】
ある実施形態では、トーンのセットは一定のままであってよく、その一方でその他の実施形態では、トーンのセットは状態の変化に応じて適合させることができる、又は未知の又は追跡不能な状態に対応するため、又は無認可のユーザーによって検出される可能性を低減するために時間の経過とともにランダムに変化させることができる。f(R)i=l、...、N(R)を、連続してなくてよい動作周波数範囲R内のfに対する互いに素の周波数N(R)の最も大きいセットとする。このセットは上述したように、構成時点において判断することができる。長さwの周波数のサブセットは、遅延範囲及び位相誤差を決定する信号対ノイズ比(SNR)、及び対象システムのマルチパス/干渉レベルに適応するように選択することができる。各周波数のセットはフレームと呼ぶことができる。非一定の動作が所望される場合には、周波数が変動する無線構成と同様のやり方で新規の周波数のサブセット(すなわち新規のフレーム)を選択することができる。受信機は次に、シーケンスの知識と、一致するまでシーケンス順に異なるセットの周波数を試す初期の取得ステップを利用してフレームに同期化することができる。
【0053】
下記は、3つの特定周波数フレーム変化のアルゴリズムの説明である。第1アルゴリズムを図5に示し、ここでは多重トーン同期受信機が監視受信機として使用される図3からのコンポーネント356(すなわち、最終遅延推定値)が拡張される。受信機のコンポーネントは上述した図3に示す受信機のコンポーネントとほぼ同じであってよい。ある実施形態では、受信機はトーンが破損した不良周波数リスト356を送信機に報告することができる。
【0054】
送信機の同期モジュールは不良周波数リストを受信し、一連の動作を実行して送信機が新しい周波数に切り替わることを可能にする。ランダムな整数j’は非線形シフトレジスタ512から読み出される(動作514)。ある実施形態では、整数j’は0〜N(R)間の整数のセットから選択される。動作516において整数j’が一意的なものでない場合、制御装置は動作514に戻り、新しい整数j’が非線形シフトレジスタ514から選択される。対照的に、動作516において整数j’が一意的なものである場合、制御装置は動作518に進み、ここでこのセットの周波数のうちにM有効値があるか否かが判断される。動作520において同期モジュールはフレームを示し、動作522において同期モジュールは不良の中心周波数のセットを{F、...、F}から新しいセット{Fj’、...、Fk’}に変更し、これは図3に示すトーン発振器310に送られる。新しい周波数のセットはそれぞれトーン発振器で送信機に送られることができる。
【0055】
第2アルゴリズムを図6に示す。図6に示すアルゴリズムはフレームごとに一回に一つの周波数のみを変更することによって各w周波数のセットを通る最小変更ルーティンを実行する以外は、図5に示すアルゴリズムと同様である。図6を参照すると、動作610において送信機の同期モジュールは図5に示すように受信機から不良周波数リストを受信する。動作615において、周波数重み(W)サブセットが選択される。動作620において、フレームが示され、動作622において示されたフレームの新規の中心周波数が設定される。新規中心周波数はトーン発振器310へ送られる。
【0056】
動作624において、さらに処理するフレームがある場合、制御装置は動作626に進み、次のフレームが選択される。動作628においてフレームの単一周波数が選択され、制御装置は動作615に戻る。したがって、動作620〜628は、変更が最小になるように周波数の変更を実行するループを定義する。
【0057】
図7に第3アルゴリズムを示す。図7に示すアルゴリズムは、不良周波数のみを変更することに制限するかわりに、周波数の変化を起こさせる疑似ランダムシーケンスを使用する。無認可のユーザーはこのシーケンスを知ることはないため、大変な労力なしにはトーンシーケンス、したがって同期化を引き出すことができない。この場合、疑似ランダムトーンシーケンスの相互知識を通して送信機及び受信機の両方が周波数の変化を把握しているため、周波数が変化したときに送信機及び受信機間の通信は必要ない。
【0058】
図7を参照すると、動作710において図5及び6に示すように送信機の同期モジュールは受信機から不良周波数リストを受信する。動作715において、ランダム周波数重み(W)サブセットが選択される。動作720においてフレームが示され、動作722において示されたフレームに対し新規の中心周波数が設定される。新規の中心周波数はトーン発振器310へ送られる。
【0059】
動作724において、処理するフレームがさらにある場合、制御装置は動作726に進み次のフレームが選択される。ランダム整数jが非線形シフトレジスタ728から読み出される(動作730)。ある実施形態では、整数jは0〜N(R)間の整数のセットから選択される。動作732において、整数jが一意的でない場合、制御装置は動作728に戻り、非線形シフトレジスタ730から新規の整数jが選択される。対照的に、動作732において整数jが一意的である場合、制御装置は動作734に進み、ここで周波数のセットのうちにM有効値があるか否かが判断される。
【0060】
したがって、本明細書に記載した同期化技術は従来の同期化技術よりも多数の有利点を提供する。例として、本明細書に記載された技術は既知の干渉エミッタの周波数を回避し、任意の(近接していない)周波数範囲を占めるように構成することができる。さらに、同期化技術は、全チップ速度で動作し、一致するコードがないために、コード位相全体の探索を要さない高速相関エンジンよりも、低(出力)速度で動作する一連のローパス・デシメーションフィルタを採用する。その代わり、狭帯域デシメーションフィルタの全ての出力から、遅延の推定値が得られる。またさらに、全てのトーンが狭帯域であるため、コードドップラーの妨害作用がなく、ドップラー・オフセットのために、一致したフィルタ相関法への振幅効果もない。ドップラー又は発振器のオフセットの唯一の作用は、全ての周波数が一定量シフトすることである。この同期化技術はまたマルチパスに起因する不具合を検出し補正する自然な能力も有する。
【0061】
ある実施形態では、本明細書に記載した同期化技術を実行する同期化モジュールを、例えば無線ネットワークの送信機及び/又は受信機等の電子デバイスのRF通信機能800に組み込むことができる。ここで、図8を参照して、一又は複数の実施形態による、RF通信機能800のブロック図を説明する。図8はRF通信機能800の主要要素を示しているが、本明細書に図示されていない様々なその他の要素に加えて、代替実施形態により少ない、又は追加の要素を含むことができ、請求される主題の範囲はこれらの事項に限定されない。
【0062】
RF通信機能800は、RF通信機能の制御機能を司るための、メモリ812に結合したベースバンドプロセッサ810を含むことができる。入力/出力(I/O)ブロック814は、RF通信機能を電子デバイスの一又は複数のその他のデバイス又はコンポーネントに結合する様々な回路を含むことができる。例えば、I/Oブロック814は、RF通信機能800をモデム又はその他のデバイスに結合するための、一又は複数のイーサネット(登録商標)ポート及び/又は一又は複数のユニバーサル・シリアル・バス(USB)ポートを含むことができる。無線通信に対しては、RF通信機能800はさらに、伝達信号を変調する、及び/又は無線通信リンクを介して受信した信号を復調するための無線周波数(RF)変調器/復調器820を含むことができる。
【0063】
デジタル対アナログ(D/A)コンバータ816は、アナログ及び/又はデジタルRF送信技術を介してRF変調器/復調器820によって変調及び送信を行うために、ベースバンドプロセッサ810からのデジタル信号をアナログ信号へ変換することができる。同様に、アナログ対デジタル(A/D)コンバータ818は、RF変調器/復調器820によって受信し復調されたアナログ信号を、ベースバンドプロセッサ810が処理できる形式のデジタル信号へ変換することができる。電力増幅器(PA)822は、一又は複数のアンテナ828及び/又は830を介して発信信号を送信し、低ノイズ増幅器(LNA)824はアンテナ828及び/又は830を介して一又は複数の着信信号を受信し、これらは上記双方向通信を制御するためにスイッチング及びマッチングモジュールを介して結合させることができる。一又は複数の実施形態では、RF通信機能800は単一入力、単一出力(SISO)タイプの通信を実行することができ、一又は複数の代替実施形態では、RF通信機能は多入力、多出力(MIMO)通信を実行することができるが、請求される主題の範囲はこれらの事項に限定されない。
【0064】
本明細書で参照する「一つの実施形態」又は「幾つかの実施形態」は、その実施形態に関連して説明した特定の機構、構造又は特徴が少なくとも一つの実行形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所において見られる表現「ある実施形態では」は全て同じ実施形態を指している、又は指していない場合がある。
【0065】
実施形態は構造的特徴及び/又は方法論的作用を特有の言語で説明してきたが、当然ながら請求される主題は説明した特定の特徴及び作用に限定できるものではない。むしろ、特定の特徴及び作用は請求される主題を実行するサンプル形態として開示された。
【符号の説明】
【0066】
310a、310b、310c、310n トーン発振器
312 デジタルIF発振器
314 加算器
316 アップコンバータ/送信モジュール
318、330、828、830 アンテナ
332 低ノイズ増幅器
334 チューナー
336 A/Dコンバータ
338 基準トーン発振器
340a、340b、340c、340n 周波数ミキサー
342a、342b、342c、342n ローパス・フィルタ
344a、344b、344c、344n 位相推定器
346a、346b、346c、346n 非線形補正器
350 CRTベースの位相/遅延推定モジュール
352 マルチパス/干渉推定モジュール
354 周波数オフセット推定モジュール
356 最終遅延推定モジュール
810 ベースバンドプロセッサ
812 メモリ
814 入力/出力(I/O)ブロック
816 デジタル対アナログ(D/A)コンバータ
818 アナログ対デジタル(A/D)コンバータ
820 RF変調器/復調器
822 電力増幅器(PA)
824 低ノイズ増幅器(LNA)
、F、F、F 周波数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムのタイミング取得工程において使用される動作周波数範囲内のトーン周波数のセットを生成する方法であって:
システムの周波数分解能、fを選択し;
無線通信システムの周波数分解能fに対して、及び動作周波数範囲、R内の互いに素となる整数である周波音のセットを生成する
ことを含む方法。
【請求項2】
無線通信システムの周波数分解能fに対して、及び動作周波数範囲、R内の互いに素となる整数である周波音のセットを生成するステップが、周波数分解能で割られた周波数トーンが1以下の最大公約数を有する周波音のセットを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トーンのセットを送信媒体の一又は複数の環境状態の変化に適合させる、又は無線通信システムの無認可の使用を制限するように適合させる
ことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トーンのセットを適合させることが:
前記周波音のセットから周波音の第1サブセットを選択し;
送信機から前記周波音のサブセットを送信する
ことを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記周波音の第1サブセットを含む少なくとも2つの信号を受信し;
2つの信号間の位相差を計算する
ことをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記周波音の第1サブセットの一又は複数の周波音が破損したことを示すフィードバックを少なくとも1つの受信機から受信し;
前記受信に応答して、前記周波音の第1サブセットと少なくとも一部分が異なる周波音の第2サブセットを選択する
ことをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記周波音の第2サブセットを送信機から送信する
ことをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
無線通信システムのタイミング取得工程において使用される動作周波数範囲内のトーン周波数のセットを生成する装置であって:
プロセッサと、
実行された時にプロセッサに、
システム周波数分解能、fを選択させ、
無線通信システムの周波数分解能fに対しての、及び動作周波数範囲、R内の互いに素となる整数である周波音のセットを生成させる
論理命令を含むメモリモジュール
を含む装置。
【請求項9】
実行された時にプロセッサに請求項2、3、4、6、又は7のうちのいずれか1項に記載の方法を実施させる論理命令をさらに含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記周波音の第1サブセットを含む少なくとも2つの信号を受信する受信機と、
プロセッサと、
実行された時にプロセッサに2つの信号間の位相差を計算させる論理命令を含むメモリモジュール
をさらに含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
無線通信システムであって:
周波音の第1サブセットを生成し送信する送信ノードと、
受信ノードであって、
周波音の第1サブセットを含む少なくとも2つの信号を受信し、
2つの信号間の位相差を計算し、
位相差を使用して送信機及び受信機を同期化する
受信ノード
を含むシステム。
【請求項12】
送信ノードが、
プロセッサと、
メモリモジュールであって、実行された時にプロセッサに、
システム周波数分解能、fを選択させ、
無線通信システムの周波数分解能fに対しての、及び動作周波数範囲、R内の互いに素となる整数である周波音のセットを生成させ、
前記周波音のセットから周波音の第1サブセットの送信を選択させる
論理命令を含むメモリモジュール
を含む、請求項11に記載の無線通信システム。
【請求項13】
受信機が:
プロセッサと、
メモリモジュールであって、実行された時にプロセッサに、
一又は複数の周波音が破損したことを示す信号を生成し、
前記信号を送信ノードに返信する
論理命令を含むメモリモジュール
を含む、請求項12に記載の無線通信システム。
【請求項14】
送信モジュールが、実行された時にプロセッサに、
受信ノードからの信号を受信させ、
前記周波音の第1サブセットの一又は複数の周波音が損傷したことを示す信号に応答して、前記周波音の第1サブセットと少なくとも一部分異なる周波音の第2サブセットを生成させる
論理命令をさらに含む、請求項13に記載の無線通信システム。
【請求項15】
送信モジュールがさらに、実行された時にプロセッサに、前記周波音の第1サブセットの少なくとも一つの周波数を変えることによって周波音の第2サブセットを生成させる論理命令を含む、請求項14に記載の無線通信システム。
【請求項16】
通信モジュールがさらに、実行された時にプロセッサに、疑似ランダムシーケンスを使用して、前記周波音の第1サブセットの少なくとも一つの周波数を変えることによって周波音の第2サブセットを生成させる論理命令を含む、請求項14に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−191614(P2012−191614A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−47540(P2012−47540)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】