説明

多関節型ケーブル類保護案内装置

【課題】屈曲姿勢や直線姿勢を伴うケーブル類の相互接触を回避してケーブル類を確実に保護して案内誘導し、多関節支持部材を軽量な合成樹脂製ブロック体のみで構成して使用状況に応じた切り継ぎが簡便な多関節型ケーブル類保護案内装置を提供すること。
【解決手段】ケーブル類C毎にそれぞれ挿通可能な複数の中央管状部111とこの中央管状部111に沿って並列配置した左右一対の側方管状部112とを一体成形してなる可撓性ベルト部材110と、多数の合成樹脂製ブロック体121のみで繰り返し相互に連結されて可撓性ベルト部材110の側方管状部112内にそれぞれ挿通する左右一対の多関節支持部材120とで構成され、中央管状部111内で保護されたケーブル類Cを多関節支持部材120で直線姿勢と屈曲姿勢とを呈して誘導案内する多関節型ケーブル類保護案内装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、電子機器、産業用ロボット、運搬機械などに使用され、これら移動する機械、あるいは機械の移動部に給電、給液、給気等を行う電線ケーブル、光ファイバーケーブル、流体供給ホースなどの可撓性のケーブルやホース等(以下、「ケーブル類」と称する)を保護して誘導案内するケーブル類保護案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械、土木機械、搬送装置等の移動体へケーブル類を接続すると、移動に伴ってケーブル類に無理なねじれや引張力が生じ、ケーブル類を傷めたり、外観も雑然となるため、これらのケーブル類を支持して誘導案内するケーブル類保護案内装置が使用されている。
【0003】
そこで、従来のケーブル類保護案内装置として、導体、ガスなどを搬送する導管と一連の非連動動作制限固形物を備えた連続材料ストリップからなる支持部材とを複数のチャンネル内に封入して平行に配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4157096号公報(特許請求の範囲、段落[0031]ないし段落[0034]、図21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のケーブル類保護案内装置では、支持部材を構成する可撓性材料がステンレス鋼材や板バネであるため、屈曲姿勢を呈する際に正確な屈曲半径を保つことができず、屈曲半径が大きくなり、近接する位置に障害物などに接触したりして所定の空間内に設置することが困難となるという問題があり、特に、可撓性材料としてステンレス鋼材を用いた場合には、長期間の使用により疲労破壊を生じて断裂し、使用不可能になるという問題があった。
【0006】
そして、支持部材を構成する可撓性材料がステンレス鋼材や板バネであることにより、ステンレス鋼材や板バネは簡単に切り継ぎができないため、支持部材の長さを長く変更する場合に別の新しい支持部材に取り替えなければならず、支持部材の無駄使いが発生するという問題があり、また、屈曲する際に捩れ剛性が低いため、共振を生じて屈曲姿勢や直線姿勢の動作が不安定になるという問題があった。
【0007】
さらに、ステンレス鋼材や板バネに樹脂からなる駒を1個ずつ射出成形しなければならず、製造時に多大な負担と時間を要することになり、大量に生産ができないという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、屈曲姿勢や直線姿勢を伴うケーブル類の相互接触を回避してケーブル類を確実に保護して案内誘導するとともに、多関節支持部材を軽量な合成樹脂製ブロック体のみで構成して使用状況に応じた切り継ぎが簡便な多関節型ケーブル類保護案内装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る本発明は、ケーブル類毎にそれぞれ挿通可能な複数の中央管状部と該中央管状部に沿って並列配置した左右一対の側方管状部とを一体成形してなる可撓性ベルト部材と、多数の合成樹脂製ブロック体のみで繰り返し相互に連結されて前記可撓性ベルト部材の側方管状部内にそれぞれ挿通する左右一対の多関節支持部材とで構成され、前記中央管状部内で保護されたケーブル類を多関節支持部材で直線姿勢と屈曲姿勢とを呈して誘導案内する多関節型ケーブル類保護案内装置であって、前記側方管状部に挿通された多関節支持部材を構成する合成樹脂製ブロック体の前方側面部位に設けた連結ピンが、先行する合成樹脂製ブロック体の後方側面部位に設けた連結ピン穴に凹凸嵌合して屈曲自在に連結されているとともに、前記前方側面部位の連結ピンを後方側面部位の連結ピン穴に向けて上下方向から凹凸嵌合させるテーパ状の切り欠き嵌入部が、前記後方側面部位の連結ピン穴に連続して凹設され、前記可撓性ベルト部材が、ポリウレタン樹脂からなる伸縮層の表裏両面にフッ素樹脂層を積層した2枚のシートの相互間に前記中央管状部と側方管状部とをそれぞれ膨出させた状態で形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項2に係る本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置は、請求項1に記載の構成に加えて、前記合成樹脂製ブロック体同士を直線状態に保持する直線姿勢保持面と前記合成樹脂製ブロック体同士を屈曲状態に保持する屈曲姿勢保持面とを備えていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項3に係る本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置は、請求項1または請求項2に記載の構成に加えて、前記可撓性ベルト部材が、合成樹脂材料で成形されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0012】
請求項4に係る本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の構成に加えて、前記合成樹脂製ブロック体が、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂で成形されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0013】
請求項5に係る本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の構成に加えて、前記合成樹脂製ブロック体が、長手方向に沿って外周の四隅を面取りした矩形断面を有していることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0014】
そこで、本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置によれば、ケーブル類毎にそれぞれ挿通可能な複数の中央管状部とこの中央管状部に沿って並列配置した左右一対の側方管状部とを一体成形してなる可撓性ベルト部材と、この可撓性ベルト部材の側方管状部内にそれぞれ挿通する左右一対の多関節支持部材とで構成されていることにより、中央管状部がケーブル類毎に挿入可能になるため、ケーブル類の相互接触を回避するとともに、中央管状部内で保護されたケーブル類を多関節支持部材で直線姿勢と屈曲姿勢とを呈して案内誘導することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0015】
すなわち、請求項1に係る本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置によれば、側方管状部に挿通された多関節支持部材が多数の合成樹脂製ブロック体のみで繰り返し相互に連結して構成されていることにより、従来のようなステンレス鋼材や板バネに駒を1個ずつ射出成形する必要もなく、合成樹脂製ブロック体のみを繰り返し連結するだけで多関節支持部材が得られるため、従来のようなステンレス鋼材からなる切り継ぎ困難な支持部材を構成する可撓性材料と比較すると使用状況に応じた多関節支持部材の切り継ぎを簡便に達成でき、多数の合成樹脂製ブロック体が相互に凹凸嵌合して屈曲自在に連結されるため、屈曲姿勢や直線姿勢を伴うケーブル類を確実に保護して案内誘導でき、しかも、従来のような使用状況に応じて様々な長短寸法を保有しなければならなかった支持部材と比較すると部品点数が少なくなるため、部品管理負担を著しく軽減することができる。
そして、側方管状部に挿通された多関節支持部材を構成する多数のブロック体が合成樹脂材料で成形されていることにより、合成樹脂製ブロック体を構成する前方側面部位の連結ピン、後方側面部位の連結ピン穴、直線状態に保持する直線姿勢保持面、屈曲状態に保持する屈曲姿勢保持面、連結ピンを凹凸嵌合させる切り欠き嵌入部などの形態が加工成形し易くなるため、使用状況に応じて切り継ぎ可能な軽量の合成樹脂製ブロック体を簡便に製作することができるばかりでなく、多関節支持部材として合成樹脂材料が自己潤滑作用を発揮するため、連結し合う相互の合成樹脂製ブロック体が連結ピンと連結ピン穴との軸支部分を中心として円滑に回動して屈曲姿勢と直線姿勢との間の移行動力負担を大幅に軽減することができる。
【0016】
また、側方管状部に挿通された多関節支持部材を構成する合成樹脂製ブロック体の前方側面部位に設けた連結ピンが先行する合成樹脂製ブロック体の後方側面部位に設けた連結ピン穴に凹凸嵌合して屈曲自在に連結されていることにより、後続する合成樹脂製ブロック体の連結ピンが先行する合成樹脂製ブロック体の連結ピン穴へ回転自在に軸支されるため、多関節支持部材の合成樹脂製ブロック体が相互に直線姿勢から屈曲姿勢へ円滑に移行したり屈曲姿勢から直線姿勢へ円滑に移行したりしてケーブル類を円滑に案内誘導することができる。
【0017】
さらに、前方側面部位の連結ピンを後方側面部位の連結ピン穴に向けて上下方向から凹凸嵌合させるテーパ状の切り欠き嵌入部が後方側面部位の連結ピン穴に連続して凹設されていることにより、多関節支持部材の合成樹脂製ブロック体同士の切り継ぎ時に、後続する合成樹脂製ブロック体の連結ピンが先行する合成樹脂製ブロック体のテーパ状の切り欠き嵌入部を経由して連結ピン穴に過大な嵌入力を必要とすることなく装着されるため、使用状況に応じた切り継ぎを簡便に達成することができる。
【0018】
請求項2に係る本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置によれば、請求項1に記載された多関節型ケーブル類保護案内装置が奏する効果に加えて、合成樹脂製ブロック体が、合成樹脂製ブロック体同士を直線状態に保持する直線姿勢保持面と合成樹脂製ブロック体同士を屈曲状態に保持する屈曲姿勢保持面とを備えていることにより、直線姿勢保持面および屈曲姿勢保持面が多関節支持部材に要求される直線姿勢と屈曲姿勢に位置決め保持するため、たとえ、障害物などが近接した設置空間であっても、屈曲姿勢や直線姿勢を伴うケーブル類を確実に保護して案内誘導することができる。
【0019】
請求項3に係る本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置によれば、請求項1または請求項2に記載された多関節型ケーブル類保護案内装置が奏する効果に加えて、可撓性ベルト部材が合成樹脂材料で成形されていることにより、可撓性ベルト部材を構成する複数の中央管状部と左右一対の側方管状部の形態が加工成形し易くなるため、ケーブル類の形状に応じた軽量の可撓性ベルト部材を簡便に製作することができるばかりでなく、可撓性ベルト部材として合成樹脂材料が自己潤滑作用を発揮するため、可撓性ベルト部材とケーブル類との間で生じがちな摺接摩耗を低減することができる。
【0020】
請求項4に係る本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された多関節型ケーブル類保護案内装置が奏する効果に加えて、合成樹脂製ブロック体がガラス繊維強化ポリアミド66樹脂で成形されていることにより、多関節支持部材の剛性と耐摩耗性が向上するため、従来のような屈曲繰り返し使用で疲労破壊して断裂し易かったステンレス鋼材からなる支持部材と比較すると長期間の繰り返し使用にも充分に耐え、長寿命を達成することができる。
【0021】
請求項5に係る本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置によれば、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された多関節型ケーブル類保護案内装置が奏する効果に加えて、合成樹脂製ブロック体が長手方向に沿って外周の四隅を面取りした矩形断面を有していることにより、合成樹脂製ブロック体が可撓性ベルト部材の側方管状部内で上下左右に相対的に変位しても合成樹脂製ブロック体の外周の四隅で側方管状部内に引っかけることが無くなるため、多数連結された合成樹脂製ブロック体が可撓性ベルト部材の側方管状部内で屈曲姿勢と直線姿勢とを呈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例である多関節型ケーブル類保護案内装置の概要図。
【図2】図1に示す合成樹脂製ブロック体の前方斜め上部からみた斜視図。
【図3】図1に示す合成樹脂製ブロック体の後方斜め上部からみた斜視図。
【図4】図1に示す多関節支持部材の組み立て分解図。
【図5】図1に示す多関節支持部材の屈曲状態を説明する図。
【図6】多関節支持部材の直線状態を示す側面図。
【図7】多関節支持部材の屈曲状態を示す一部断面を含む側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、ケーブル類毎にそれぞれ挿通可能な複数の中央管状部とこの中央管状部に沿って並列配置した左右一対の側方管状部とを一体成形してなる可撓性ベルト部材と、多数の合成樹脂製ブロック体のみで繰り返し相互に連結されて可撓性ベルト部材の側方管状部内にそれぞれ挿通する左右一対の多関節支持部材とで構成され、中央管状部内で保護されたケーブル類を多関節支持部材で直線姿勢と屈曲姿勢とを呈して誘導案内する多関節型ケーブル類保護案内装置であって、側方管状部に挿通された多関節支持部材を構成する合成樹脂製ブロック体の前方側面部位に設けた連結ピンが先行する合成樹脂製ブロック体の後方側面部位に設けた連結ピン穴に凹凸嵌合して屈曲自在に連結されているとともに、前方側面部位の連結ピンを後方側面部位の連結ピン穴に向けて上下方向から凹凸嵌合させるテーパ状の切り欠き嵌入部が後方側面部位の連結ピン穴に連続して凹設され、屈曲姿勢や直線姿勢を伴うケーブル類を確実に保護して案内誘導するとともに、多関節支持部材を軽量な合成樹脂製ブロック体のみで構成して使用状況に応じた切り継ぎが簡便なものであれば、その具体的な実施の形態は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0024】
例えば、本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置で用いる可撓性ベルト部材は、ケーブル類をそれぞれ挿通する複数の中央管状部と該中央管状部に沿って並列配置した左右一対の側方管状部とを一体成形してなるものであって、2枚のシートの相互間に表裏に膨出させてなる複数の管状部空間を並列配置した状態で積層したものである。
【0025】
そして、上述した中央管状部および側方管状部の具体的な形態については、円形断面を有するもの、矩形断面を有するものの何れであっても良く、また、中央管状部の設置本数については、少なくとも1本以上であれば良く、ケーブル類毎に挿入可能な本数であるため、ケーブル類の相互接触を回避することができる。
【0026】
さらに、可撓性ベルト部材の素材については、複数の中央管状部と左右一対の側方管状部などを形成することのできる合成樹脂材料であれば良く、例えば、伸縮層の表裏両面にフッ素樹脂層を積層したものを用いた場合には、伸縮層が可撓性ベルト部材の伸縮性を発揮するとともにフッ素樹脂層が可撓性ベルト部材の摺動性を発揮することができる。
ここで、可撓性ベルト部材のフッ素樹脂層には、低摩耗性であり、比較的剛性を備えている点でPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いるのが好適である。
そして、可撓性ベルト部材として2枚のシートをラミネートする方式であるため、繰り返し使用可能なツールによってシートが自在に形状を変えることができ、複数の中央管状部および側方管状部を同時に形成することができ、その意味でケーブル類保護案内装置に使用した場合の取扱性に優れている。
また、この方式によって、シート屑の発生を最小限にすることができ、商品のコストを低減することができる。
また、可撓性ベルト部材として2枚のシートをラミネートする場合には、シートをラミネートする際に複数の中央管状部又は側方管状部の幅を同じ幅又は異なる幅に適宜設計することができる。
また、同様に、複数の中央管状部又は側方管状部の厚さも同じ厚さ又は異なる厚さに適宜設計することができる。また、伸縮層の材質として、ポリウレタン樹脂を使用することができる。
【0027】
また、本発明の多関節型ケーブル類保護案内装置に用いる多関節支持部材の具体的な形態については、相互に凹凸嵌合して屈曲自在に連結する多数の合成樹脂製ブロック体で構成されるものであれば良く、さらに、合成樹脂製ブロック体の具体的な形態については、合成樹脂製ブロック体の前方側面部位に設けた連結ピンが先行する合成樹脂製ブロック体の後方側面部位に設けた連結ピン穴に凹凸嵌合して屈曲自在に連結されるもの、あるいは、合成樹脂製ブロック体の後方側面部位に設けた連結ピンが後続する合成樹脂製ブロック体の前方側面部位に設けた連結ピン穴に凹凸嵌合して屈曲自在に連結されるものの何れであっても良いが、特には前者が好ましい。
【0028】
また、多関節支持部材を構成する合成樹脂製ブロック体の具体的な素材については、前方側面部位の連結ピン、後方側面部位の連結ピン穴、直線状態に保持する直線姿勢保持面、屈曲状態に保持する屈曲姿勢保持面、連結ピンを凹凸嵌合させる切り欠き嵌入部などの形態を保持することのできる合成樹脂材料であれば良く、例えば、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂が好ましく、特に、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂を用いた場合には、多関節支持部材の剛性と耐摩耗性が向上するため、長期間の繰り返し使用にも充分に耐え、長寿命を達成することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例である多関節型ケーブル類保護案内装置を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例である多関節型ケーブル類保護案内装置の概要図であり、図2は、図1に示す合成樹脂製ブロック体の前方斜め上部からみた斜視図であり、図3は、図1に示す合成樹脂製ブロック体の後方斜め上部からみた斜視図であり、図4は、図1に示す多関節支持部材の組み立て分解図であり、図5は、図1に示す多関節支持部材の屈曲状態を説明する図であり、図6は、多関節支持部材の直線状態を示す側面図であり、図7は、多関節支持部材の屈曲状態を示す一部断面を含む側面図である。
【0030】
本発明の一実施例である多関節型ケーブル類保護案内装置100は、工作機械、電子機器、産業用ロボット、運搬機械などに使用され、これら移動する機械、あるいは、機械の移動部に給電、給液、給気等を行う電線ケーブル、光ファイバーケーブル、流体供給ホースなどの可撓性のケーブルやホース等(以下、「ケーブル類C」と称する。)を保護して誘導案内するものである。
【0031】
まず、本実施例である多関節型ケーブル類保護案内装置100は、図1に示すように、ケーブル類Cをそれぞれ挿通する4本の中央管状部111とこの中央管状部111に沿って並列配置した左右一対の側方管状部112とを一体成形してなる可撓性ベルト部材110と、この可撓性ベルト部材110の側方管状部112内にそれぞれ挿通する左右一対の多関節支持部材120とで構成されている。
これにより、上述した中央管状部111内で保護されたケーブル類Cを左右一対の多関節支持部材120で直線姿勢と屈曲姿勢とを呈して案内誘導するようになっている。
【0032】
そして、上述した可撓性ベルト部材110は、図示していないが、ポリウレタン樹脂層の表裏両面にフッ素樹脂層を積層した2枚のシートを用い、これらシートの間にケーブル類をそれぞれ挿通する4本の中央管状部111とこれらの中央管状部111に沿って並列配置した左右一対の側方管状部112とを表裏に膨出させて一体成形したものである。
これにより、ポリウレタン樹脂層が可撓性ベルト部材110の伸縮性を発揮するとともにフッ素樹脂層の自己潤滑作用が可撓性ベルト部材110の摺動性を発揮してケーブル類Cを抵抗なく保護することができる。
【0033】
他方、上述した多関節支持部材120は、図1乃至図4に示すような相互に凹凸嵌合して屈曲自在に連結する多数の合成樹脂製ブロック体121のみで構成されている。
【0034】
そこで、本実施例の多関節型ケーブル類保護案内装置100が最も特徴とする合成樹脂製ブロック体121の詳細な形態について、図2乃至図7に基づいて詳しく説明する。
すなわち、上述した合成樹脂製ブロック体121の前方側面部位には、図2乃至図3に示すように、左右一対の連結ピン121aが設けられているとともに、その後方側面部位には、左右一対の連結ピン穴121bが設けられている。
これにより、合成樹脂製ブロック体121の連結ピン121aが、先行する合成樹脂製ブロック体121の後方側面部位に設けた連結ピン穴121bに凹凸嵌合して回転自在に軸支され、相互の合成樹脂製ブロック体121が屈曲自在に連結されている。
【0035】
また、合成樹脂製ブロック体121の後方側面部位には、上述した連結ピン121aを連結ピン穴121bに向けて上下方向から凹凸嵌合させるテーパ状の切り欠き嵌入部121cが後方側面部位の連結ピン穴121bに連続して凹設されている。
これにより、多関節支持部材120の合成樹脂製ブロック体121同士の切り継ぎ時に、図4に示すように、後続する合成樹脂製ブロック体121の連結ピン121aが先行する合成樹脂製ブロック体121の切り欠き嵌入部121cを経由して連結ピン穴121bに過大な嵌入力を必要とすることなく装着され、使用状況に応じた切り継ぎを簡便に達成している。
【0036】
さらに、合成樹脂製ブロック体121の前方側の別異の位置には、図2乃至図7に示すように、前後の合成樹脂製ブロック体121同士を相互に上下方向から当接した状態で位置決めして直線状態に保持する直線姿勢保持面121dをそれぞれ備えているとともに、合成樹脂製ブロック体121の後方側の別異の位置には、前後の合成樹脂製ブロック体121同士を相互に前後方向から当接した状態で位置決めして屈曲状態に保持する屈曲姿勢保持面121eをそれぞれ備えている。
これにより、直線姿勢保持面121dおよび屈曲姿勢保持面121eが、それぞれに多関節支持部材120に要求される直線姿勢と屈曲姿勢に位置決め保持し、たとえ、障害物などが近接した設置空間であっても、図4または図6に示す直線姿勢や図5または図7に示す屈曲姿勢を伴うケーブル類Cを確実に保護して案内誘導している。
【0037】
なお、上述した合成樹脂製ブロック体121は、図示していないが、長手方向に沿って外周の四隅を面取りした矩形断面を有している。
これにより、合成樹脂製ブロック体121は、可撓性ベルト部材110の側方管状部112内で上下左右に相対的に変位しても合成樹脂製ブロック体121の外周の四隅で側方管状部112内に引っかけることが無く、多数連結された合成樹脂製ブロック体121が可撓性ベルト部材110の側方管状部112内で屈曲姿勢と直線姿勢とを円滑に呈するようになっている。
【0038】
そして、本実施例の多関節型ケーブル類保護案内装置100に用いた多関節支持部材120を構成する全ての合成樹脂製ブロック体121は、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂で成形されている。
これにより、合成樹脂製ブロック体121を構成する前方側面部位の連結ピン121a、後方側面部位の連結ピン穴121b、連結ピン121aを凹凸嵌合させる切り欠き嵌入部121c、直線状態に保持する直線姿勢保持面121d、屈曲状態に保持する屈曲姿勢保持面121e、などの形態を加工成形し易くして、使用状況に応じて切り継ぎ可能な軽量のブロック体121を簡便に製作しているばかりでなく、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂の自己潤滑作用を発揮させて、連結ピン121aと連結ピン穴121bとの軸支部分を円滑に回動させ、屈曲姿勢と直線姿勢との間の移行動力を大幅に軽減している。
【0039】
このようにして得られた本実施例の多関節型ケーブル類保護案内装置100は、ケーブル類Cをそれぞれ挿通する4本の中央管状部111とこの中央管状部111に沿って並列配置した左右一対の側方管状部112とを一体成形してなる可撓性ベルト部材110と、この可撓性ベルト部材110の側方管状部112内にそれぞれ挿通する左右一対の多関節支持部材120とで構成されていることにより、中央管状部111内で保護されたケーブル類Cを多関節支持部材120で直線姿勢と屈曲姿勢とを呈して確実かつ円滑に案内誘導することができる。
【0040】
そして、多関節支持部材120が相互に凹凸嵌合して屈曲自在に連結する多数の合成樹脂製ブロック体121のみで構成されていることにより、従来のようなステンレス鋼材からなる切り継ぎ困難な可撓性材料と比較すると使用状況に応じた多関節支持部材120の切り継ぎを簡便に達成でき、屈曲姿勢や直線姿勢を伴うケーブル類Cを確実に保護して案内誘導でき、しかも、従来のような使用状況に応じて様々な長短寸法を保有しなければならなかった支持部材と比較すると部品点数が少なくなるため、部品管理負担を著しく軽減することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0041】
100 ・・・ 多関節型ケーブル類保護案内装置
110 ・・・ 可撓性ベルト部材
111 ・・・ 中央管状部
112 ・・・ 側方管状部
120 ・・・ 多関節支持部材
121 ・・・ 合成樹脂製ブロック体
121a・・・ 連結ピン
121b・・・ 連結ピン穴
121c・・・ テーパ状の切り欠き嵌入部
121d・・・ 直線姿勢保持面
121e・・・ 屈曲姿勢保持面
C ・・・ ケーブル類



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル類毎にそれぞれ挿通可能な複数の中央管状部と該中央管状部に沿って並列配置した左右一対の側方管状部とを一体成形してなる可撓性ベルト部材と、多数の合成樹脂製ブロック体のみで繰り返し相互に連結されて前記可撓性ベルト部材の側方管状部内にそれぞれ挿通する左右一対の多関節支持部材とで構成され、前記中央管状部内で保護されたケーブル類を多関節支持部材で直線姿勢と屈曲姿勢とを呈して誘導案内する多関節型ケーブル類保護案内装置であって、
前記側方管状部に挿通された多関節支持部材を構成する合成樹脂製ブロック体の前方側面部位に設けた連結ピンが、先行する合成樹脂製ブロック体の後方側面部位に設けた連結ピン穴に凹凸嵌合して屈曲自在に連結されているとともに、
前記前方側面部位の連結ピンを後方側面部位の連結ピン穴に向けて上下方向から凹凸嵌合させるテーパ状の切り欠き嵌入部が、前記後方側面部位の連結ピン穴に連続して凹設されていることを特徴とする多関節型ケーブル類保護案内装置。
【請求項2】
前記合成樹脂製ブロック体が、前記合成樹脂製ブロック体同士を直線状態に保持する直線姿勢保持面と前記合成樹脂製ブロック体同士を屈曲状態に保持する屈曲姿勢保持面とを備えていることを特徴とする請求項1記載の多関節型ケーブル類保護案内装置。
【請求項3】
前記可撓性ベルト部材が、合成樹脂材料で成形されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多関節型ケーブル類保護案内装置。
【請求項4】
前記合成樹脂製ブロック体が、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂で成形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の多関節型ケーブル類保護案内装置。
【請求項5】
前記合成樹脂製ブロック体が、長手方向に沿って外周の四隅を面取りした矩形断面を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の多関節型ケーブル類保護案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−112224(P2011−112224A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239865(P2010−239865)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【分割の表示】特願2009−269012(P2009−269012)の分割
【原出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)