説明

多関節型ロボット

【課題】 ハウジング内の機器・部品に対する保守・メンテナンスが容易で、かつ組立が容易な多関節型ロボットを提供する。
【解決手段】 旋回部2に第1のロボット腕3を構成する双腕構造の第1、第2の片腕3a、3bの一端が回動可能に取り付けられている。第1の片腕3aは駆動力を伝える骨格構造とされ、他端にハウジング4aが取り付けられている。第2の片腕3bはケーブルや配管等を収納する構造となっており、他端にカバー4bが回動自在に取り付けられている。ハウジング4aにカバー4bが固定具6で固着され第2のロボット腕4を形成している。該腕4に手首が接続されている。固定具6を取り外し、第2の片腕3bを第1の片腕3aに対して相対的に回動させることによってハウジング4aを開放させる。ハウジング4aが大きく開放されハウジングに格納された機器・部品へのアクセスが容易となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アーク溶接ロボット、バリ取りロボット、ハンドリングロボット等に用いられる多関節型ロボットにおいて、双腕構造の一方の片腕を駆動力を伝える骨格構造とし、他方の片腕をケーブルや配管等を収納する腕とする双腕構造の腕を有する多関節型ロボットに関する。
【0002】
【従来の技術】一方の片腕を駆動力を伝える骨格構造とし、他方の片腕をケーブルや配管等を収納する腕とした双腕構造のロボット腕を備えた多関節型ロボットはすでに知られている。図3、図4はこの公知の双腕構造のロボット腕を備えた多関節型ロボットの一例の概要を示す図である。
【0003】基台1には、該基台1の取り付け面に垂直な軸周りに旋回する旋回部2が取り付けられ、該旋回部2には第1のロボット腕3を構成する双腕構造の第1、第2の片腕3a、3bの一端が、基台1の取り付け面と平行な軸でかつ同一軸の周りに回動可能に取り付けられている。片腕の一方、例えば第1の片腕3aは駆動力を伝える骨格構造とされ、回動可能に旋回部2に取り付けられている。又、他方の片腕の第2の片腕3bの一端は旋回部2に回動自在に軸支され、該第2の片腕3bはケーブルや配管等を収納する構造となっている。
【0004】第1のロボット腕3の第1、第2の片腕3a、3bの他端には、基台1の取り付け面と平行な軸でかつ同一軸の周りに回動可能に、第2のロボット腕4を形成するハウジング4cが取り付けられている。該ハウジング4cには、この第2のロボット腕4を第1のロボット腕3に対して相対的に回動させるためのモータや減速機等の駆動源や、後述する手首5を回動させるモータ、減速機さらには、エンドエフェクタのためのエアー配管、弁等が格納されている。又、ハウジング4cの上部は開口され、該開口部を覆うカバー4dがボルト等の固定具でハウジング4cに装着されている。該ハウジング4c(第2のロボット腕4)には、エンドエフェクタを取り付ける手首5が連結されている。図示しない駆動源を駆動して旋回部2を駆動すると、旋回部2が基台1に対して回動し、旋回部2と共に第1のロボット腕3、第2のロボット腕4及び手首5も旋回する。又、第1のロボット腕3を駆動する駆動源により、第1のロボット腕3の第1の片腕3aを駆動すると、第1の片腕3aは旋回部2に対して相対的に回動し、第2のロボット腕4を移動させる。又、第2の片腕3bは第2のロボット腕4のハウジング4cに回動自在に軸支され、かつ旋回部2に回動自在に軸支されているから、該第2の片腕3bも第1の片腕3aと共に回動する。又、第2ロボット腕4を駆動する駆動源を駆動すれば、第2のロボット腕4は第1のロボット腕3(第1、第2の片腕3a、3b)に対して相対的に回動することになる。
【0005】以上のような双腕構造のロボット腕を備えた多関節型ロボットにおいて、ハウジング4cに格納されたモータや減速機、弁等の機器の保守・メンテナンスを行う際には、図4に示すように、カバー4dを取り外し、さらにはケーブルや配管が格納された第2の片腕3bのカバーも取り外し、ハウジング4c内の機器・部品にアクセスすることになるが、ハウジング4cの上方面のみしか開放されないこと、さらにケーブルや配管がハウジング4c内に敷設されていることから、カバーが取り外された第2の片腕3b内のケーブルや配管を操作しながら、ハウジング4c内の機器・部品の保守目メンテナンスを行う必要があり、操作性が悪く、保守・メンテナンスが困難であった。また、ロボットの組立時においても、ハウジング4c内にケーブルや配管を通す必要があり、ケーブルや配管を通す第1のロボット腕3の第2の片腕3bのカバーの組み付けとハウジング4c内へのケーブル、配管の配設を別工程で同時並行して組立ができず、生産効率が低かった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、ハウジング内の機器・部品に対する保守・メンテナンスが容易で、かつ組立が容易な多関節型ロボットを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、駆動力を伝える骨格構造となる第1の片腕と、ケーブル,配管等を格納する第2の片腕が平行に配設された双腕構造の第1のロボット腕と、該第1のロボット腕の先端に一端が軸支された第2のロボット腕とを少なくとも備えた多関節型ロボットにおいて、第1の片腕の先端には前記第2のロボット腕のハウジングを、第2の片腕の先端には前記ハウジングのカバーをそれぞれ回転可能に軸支し、カバーはハウジングに固定具で固着しておき、固定具を取り外し第2の片腕を第1の片腕に対して相対的に回動させることによって、前記ハウジングとカバーを分離しハウジングを開口できるようにすることによって、ハウジング内の機器・部品の保守・メンテナンスを容易に実施できるようにした。
【0008】
【発明の実施の形態】図1は本発明の多関節型ロボットの一実施形態の概要斜視図である。図3,図4に示す従来例の構成と同一構成のものは同一符号を付している。
【0009】基台1上には、該基台1の取り付け平面に対して垂直な軸周りに旋回する旋回部2が取り付けられ、該旋回部2には第1のロボット腕3を構成する双腕構造の第1、第2の片腕3a、3bが取り付けられている。すなわち、従来例と同じように、第1、第2の片腕3a、3bの一端は基台1の取り付け面と平行な軸でかつ同一の軸の周りに回動可能に取り付けられている。第1の片腕3aは駆動力を伝える骨格構造とされ、回動可能に旋回部2に取り付けられている。又、第2の片腕3bの一端は回動部2に回動自在に軸支され、該第2の片腕3bはケーブルや配管等を収納する構造となっている。
【0010】一方、第1の片腕3aの他端には、基台1の取り付け面と平行な軸周りに回動可能に第2のロボット腕4を構成するハウジング4aが取り付けられている。該ハウジング4aには、この第2のロボット腕4を第1のロボット腕3に対して相対的に回動させるためのモータM1や減速機等の駆動源、手首5を回動させるモータM2、減速機、ケーブルさらには、エンドエフェクタのためのエアー配管、弁等が格納されている。なお、これらの構造は従来例と同様である。
【0011】従来例と相違する点は、第2のロボット腕4のハウジング4aの開口面が第2の片腕3b側に設けられている点である。そして、この開口面を覆うカバー4bがボルト等の固定具6でハウジング4aに取り付けられている。図1で示す例ではハウジング4aとカバー4bで略直方体を形成し、該直方体の上面の対角線(ハウジング4a)に沿って、かつその対角線両端の直方体の稜線に沿って縦方向に分断され、ハウジング4aとカバー4bを形成している。
【0012】そして、カバー4bは第1のロボット腕3の第2の片腕3bに回転自在に軸支され、該カバー4bをハウジング4aに取り付けた際、第1の片腕3aに対するハウジング4aの回転軸線と第2の片腕3bに対するカバー4bの回転軸線が一致するようにカバー4bは第2の片腕3bに取り付けられている。又、ハウジング4a(第2のロボット腕4)には、従来例と同様に先端にエンドエフェクタを取り付ける手首5が連結されている。従来例と同様に、旋回部2を基台1に対して回動させると、旋回部2と共に第1のロボット腕3、第2のロボット腕4及び手首5も旋回する。又、第1のロボット腕3を駆動する駆動源により第1のロボット腕3の第1の片腕3aを駆動すると、第1の片腕3aは旋回部2に対して相対的に回動し、第2のロボット腕4を移動させる。又、第2の片腕3bは第2のロボット腕4のハウジング4a、カバー4bを介して第1の片腕3aによって駆動され、該第1の片腕3aと共に回動する。第2ロボット腕4を駆動するモータM1を駆動すれば第2のロボット腕4は第1のロボット腕3(第1、第2の片腕3a、3b)に対して相対的に回動する。
【0013】ハウジング4a内のモータM1,M2や減速機等の機器、配管、ケーブル、その他の部品等の保守・メンテナンスの際には、ボルト等の固定具6を取り外し、ハウジング4aとカバー4bを分離し、図2に示すように、第2の片腕3bを第1の片腕3aに対して反手首方向に回動させる。第2の片腕3bは旋回部2に回動自在に軸支されているだけであるから、図2に示すように第2の片腕3bは自由に回動でき、ハウジング4aとカバー4bが分離し、ハウジング4aを開放することができる。
【0014】この実施形態では、ハウジング4aとカバー4bで形成する直方体を上面対角線上に沿って縦方向に分離するようにしたから、ハウジング4aは、後面(反手首側)、側面(第2の片腕3b側)及び上下面の略半分の面が開放されることになり、ハウジング4aに配置されているモータや減速機、配管、ケーブル、弁等の機器、部品に対するアクセスが容易とり、保守・メンテナンスが容易となる。しかも、ハウジング4aを開放した際、ケーブルや配管も露出することになるから、従来例のように第2の片腕3bを取り外しケーブルや配管を操作する必要がなく、第2の片腕3bを分解しないでよい分、保守・メンテナンスが容易となる。又、ロボットの組立の際にも、ハウジング4a内へのモータM1,M2や減速機等の機器・部品の取り付けと、第2の片腕3bの組立を別工程で行い、その後、第2の片腕3bから導き出されたケーブルや配管をハウジング4a内の機器、部品に接続すればよく、ロボットの組立も容易となる。又、カバー4bは第2の片腕3bに取り付けられていることから、該第2の片腕3bがガイドの機能をはたし、ハウジング4aに対するカバー4bの位置決めが容易となる。さらには、ハウジング4aとカバー4bの分割面を平面とすることができ、該分割面のパッキンやシール構造を容易に構築することができる。
【0015】なお、上記実施形態ではハウジング4aとカバー4bで形成される直方体を上面対角線上に沿って縦方向に分割したが、必ずしもこのような分割方法を採らなくてもよい。ハウジング4a内に格納する機器等を取り付ける面が手首5を取り付ける面のみでよい場合(第1の片腕3aを取り付ける面が一部必要)には、この面だけでハウジングを形成し、他の5面(上面、下面、両側面、後面)はカバーで形成してもよい。又、手首5の取り付け面と反第2の片腕3b側の側面若しくは底面で、ハウジングを形成し他の面はカバーとしてもよい。すなわち、ハウジング4aは、少なくとも該ハウジング4aに格納する機器等を取り付ける面、及び手首5、第1の片腕3aの取り付け面で形成し、ハウジング4aを開放したとき該ハウジング4a内の機器にアクセスが容易となるように他の面をカバー4bで構成するようにすればよい。
【0016】
【発明の効果】本発明は、ロボット腕等を分解することなく、ハウジング内に格納された機器、部品等に容易にアクセスでき、これらの機器、部品の保守・メンテナンスが容易となる。又、ロボット組立時も容易で、生産工程も簡素化でき生産性を向上させることができる。又、ハウジングとカバーの分割面を平面とすることができ、その分割面のパッキン、シール構造を容易に構築することができる。又、カバーをハウジングに取り付ける際の位置決めもカバーが取り付けられた片腕によってガイドされるから容易に位置決めができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の概要斜視図である。
【図2】同実施形態においてハウジングを開放したときを説明する説明図である。
【図3】双腕構造を備えた多関節型ロボットの従来例の概要斜視図である。
【図4】同従来例におけるハウジングを開放したときを説明する説明図である。
【符号の説明】
1 基台
2 旋回部
3 第1のロボット腕
3a 第1の片腕
3b 第2の片腕
4 第2のロボット腕
4a ハウジング
4b カバー
5 手首
6 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動力を伝える骨格構造となる第1の片腕と、ケーブル,配管を格納する第2の片腕が平行に配設された双腕構造の第1のロボット腕と、該第1のロボット腕の先端に一端が軸支された第2のロボット腕とを少なくとも備えた多関節型ロボットにおいて、前記第1の片腕の先端には前記第2のロボット腕のハウジングが回転軸支され、前記第2の片腕の先端には前記第2のロボット腕のハウジングのカバーが回転軸支され、該カバーは前記ハウジングに固定具で固着され、該固定具を取り外し、前記第2の片腕を前記第1の片腕に対して相対的に回動させることによって、前記ハウジングとカバーを分離しハウジングを開口できるようにしたことを特徴とする多関節型ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3001877号(P3001877)
【登録日】平成11年11月12日(1999.11.12)
【発行日】平成12年1月24日(2000.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−375056
【出願日】平成10年12月14日(1998.12.14)
【審査請求日】平成10年12月14日(1998.12.14)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)