説明

多雪地帯の駐車場、道路、航空滑走路に適した透雪槽

【課題】駐車場、道路、航空滑走路などの常に雪の除去が必要である場所に適した地表面及び地下の構造物を提供する。
【解決手段】水槽(あるいは、側溝)の上部に網目の材料を蓋した状態の構造とする。当該水槽には、吸入管と排水管を施す。鉄板、FRP(強化プラスチック)、鉄筋コンクリートなどの材料を用いる。雪は上部網目を通し自然に落下し水槽あるいは側溝に大量に溜める。その地域で1年間の積雪量を越える深さの水槽とすることで、融雪が不要である。想定外の大雪があったときには、溜った雪を浴槽排水、あるいは雨水排水の温水を吸入口より注入し雪を溶かし排水管に流すことで溜った雪を除去できる。上部網目の上に乗用車又は航空機が乗ることができるだけの強度を備えた構造物である。上部網目を支持する補強材が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多雪地帯での積雪が好ましくない場所、例えば駐車場、道路、航空滑走路などの地表面及び地下の構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
北海道の札幌市、旭川市などの多雪地帯にあっては、数十年前から融雪槽といわれるものが、家庭においても設けられて、除雪に無くてはならないものとなっている。融雪槽は、家庭などの庭の一部の地中にタンクを埋設して、表の道から家の玄関までを雪かきして出た雪、屋根から降ろした雪などを、そのタンクに放り込み、温水などで融かすものである。
多雪地帯、豪雪地帯にあっては、12月から3月までの間、雪かきが毎日の日課となる。積雪が望ましくない場所から雪を取り除くのみならず、取り除いた雪を邪魔にならない場所に移動させる労力、また雪の山の上にさらに雪を積み上げる労力のことを考えると、自宅に融雪槽を設けたいと考える家庭が多いことも頷ける。
【0003】
特許文献1には、生活排水の温熱を利用して融雪を行うことにより、設置費及びランニングコストの低減を図った融雪槽が開示されている。
特許文献2には、路面の融雪設備が開示されている。
特許文献3には、道路などの開口部に使用し、その上を自動車で走行したり、歩行者が歩行することが可能なグレーティングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−075291号公報
【特許文献2】特開2007−177490号公報
【特許文献3】特開 平08−060738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
融雪は、一般に電力、灯油、ガスなどの熱源を用いるものであり、設置費及びランニングコストが掛かるのみならず、機器の調整などのメンテナンスにも費用と手間が掛かる。また、雪が融けた後の水の除去が不徹底であると、排水管の中の水が凍結することによる詰まり、管の破裂などのトラブルも発生し得る。この問題は、除雪を欲する場所の局所的な問題にとどまらず、その地域、全域にわたる大きな問題にまで広がる可能性を持った深刻な問題である。
【0006】
本願の発明者は、これらの融雪の問題を解決すべく、そもそも融雪がなぜ必要であるのかに立ち返って、解決方法を探った。そして、天啓を得て、雪が積もらないようにするアイデアに達したものである。
【0007】
本発明の目的は、駐車場、道路、航空滑走路などの常に雪の除去が必要である場所に適した地表面及び地下の構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の透雪槽は、水槽(あるいは、側溝)の上部に網目の材料を蓋した状態の構造とする。当該水槽には、吸入管と排水管を施す。鉄板、FRP(強化プラスチック)、鉄筋コンクリートなどの材料を用いる。雪は上部網目を通し自然に落下し水槽あるいは側溝に大量に溜める。その地域で1年間の積雪量を越える深さの水槽とすることで、融雪が不要である。想定外の大雪があったときには、溜った雪を浴槽排水、あるいは雨水排水の温水を吸入口より注入し雪を溶かし排水管に流すことで溜った雪を除去できる。上部網目の上に乗用車又は航空機が乗ることができるだけの強度を備えた構造物である。上部網目を支持する補強材が設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の透雪槽によれば、降雪をそのままにすることで、除雪ができる。すなわち、降った雪を人力であれ、ブルドーザや、除雪車のような機械であれ、用いることなく、さらにまた、電気、ガス、灯油などの熱源を用いることなく、除雪ができる。また、自動車用道路、航空機滑走路に用いることで、道路や滑走路の冬期のメンテナンス作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る透雪槽の実施形態を図4の(I)−(I)の位置(底面付近)で見た伏図である。
【図2】図2は、本発明に係る透雪槽の実施形態を図4の(II)−(II)の位置(網目状部材の下)で見た伏図である。
【図3】図3は、本発明に係る透雪槽の実施形態を図4の(III)−(III)の位置(網目状部材の上)で見た伏図である。
【図4】図4は、本発明に係る透雪槽を図1の(IV)ー(IV)の位置で見た鉛直断面図である。
【図5】図5は、一般道路、航空滑走路の場合の実施例の伏図である。
【図6】図6は、一般道路、航空滑走路の場合の実施例の鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る透雪槽の実施形態について説明する。「透雪槽」は出願人の造語である。従来からある融雪槽が、降雪からそれほど時間をおかずに雪を除去し融かしてしまうのに比べると、本願の水槽は、もっと長期にわたって雪をそのまま溜め込むことを主眼とするものであること、及び雪が地表面に設けた網目状の構造物を透り抜けることに着眼してネーミングしたものである。
【0012】
図1は、本発明に係る透雪槽の実施形態を図4の(I)−(I)の位置(底面付近)で見た伏図(平面図)である。図1で、横方向に(IV)と(IV)とを結ぶ一点鎖線が描かれている。この一点鎖線は、図4の鉛直断面図がこの位置で切ったものであることを示している。また、図1の縦方向中ほどに省略を示す二重線が描かれている。この二重線は、図1の横方向にいくらでもこの透雪槽を延長して施工可能であることを示している。
【0013】
本発明に係る透雪槽は、多雪地帯であって、積雪がこのましくない場所、例えば、自動車の駐車場、一般道路、航空滑走路に用いるものであるが、本実施形態にあっては、駐車場、特に数十台分の屋外駐車場を想定して実施形態を述べる。
【0014】
施工にあたっては、まず、駐車場として用いる部分の広がり(必要があれば、道路との間の通路となる部分を含めて)全体にわたって、当該地域の年間積雪量をカバーできる深さだけ、掘る。例えば、年間積雪量が3メートルの地域ならば、3メートルの深さとする。そして、必要ならば、地盤改良を施した上で、杭打ちを行う。図1で(E)と描かれた部分に杭を打ち、その上に鉄骨の柱を立てて固定する。後述する網目部材が自動車の重みに耐えるための補強材Eとなるものである。
【0015】
透雪槽を構成する要素のうち、水槽Aに当たる部分の底面と側面とは、ここでは鉄筋コンクリートとする。比較的小規模な駐車場(家庭用、商店用)などでは、FRP(強化プラスチック)製の水槽を用いることもできる。ここで、「水槽」の語を用いたが、「水槽」は、水を溜めることのできるものを意味するものであって、使用の際に、水が溜っていることを前提とするものではない。本願の透雪槽は、一年間の積雪量をカバーできるだけの深さをもっており、雪を融かさないまま、長期保存が可能なものだからである。
【0016】
図1で、排水管Dは、水槽Aに溜った積雪が融けた場合に、それを排水するための管である。排水管Dは、水槽Aの底面近くに設けられ、図示しない排水ポンプに接続される。排水ポンプは、地上に設けられ、穏やかな天候で、周囲に迷惑をかけない時及び状況を選んで運転される。水槽Aが十分に深いため、急いで排水する必要がないからである。
【0017】
図2は、本発明に係る透雪槽の実施形態を図4の(II)−(II)の位置(網目状部材の下)で見た伏図である。吸入管Cは、水槽Aに溜った積雪を溶かす必要のあるときに、家庭の風呂の残り湯、雨水排水などを導くのに用いられる。風呂の残り湯を導く方法は、特許文献1に開示されたものを用いることができる。また、雨水タンク、浴槽排水タンクなどを別に備えて、吸入管Cに遠隔操作可能な開閉栓を介して接続しておき、必要なときのみ温水を供給することができる。
【0018】
前述した鉄骨の柱同士の間、また鉄骨の柱と水槽Aの側面との間には、鉄骨の梁材が設けられ、例えば、ボルトによる固定がなされる。また、当該梁材と梁材との間、梁材と水槽Aの側面との間にも梁材が設けられ、後述する網目部材Bを支持する補強材Eを構成する。補強材Eの強度は、支えるべき、自動車の重量、及び該自動車の走行時にかかる力などが計算された上で、決定される。
【0019】
図3は、本発明に係る透雪槽の実施形態を図4の(III)−(III)の位置(網目状部材の上)で見た伏図である。図2では、補強材Eを施した結果、横長の升目ができる構成としてある。それに対し、図3では、それと直角に交差する方向の縦長の網目状部材を敷き詰めることとして施工している。この網目状部材は、例えば特許文献3に記載されているグレーティングを用いることができる。このグレーティングを例に挙げたのは、実施可否の疑義をさしはさまないための例示にすぎない。鉄板、FRP(強化プラスチック)、鉄筋コンクリートなど、材料の種類は問わない。自動車の重みを支えることができ、自動車走行に耐え、かつ、降雪をただちに透過して、直下の水槽Aに落とす透孔を至る所に備えたものであればよい。
【0020】
該透孔は、例えば、5センチ四方程度の正方形または長方形の格子状のものとすることができる。また、透孔の形状は、四角形に限らず、三角形、六角形、五角形などであってもかまわない。透孔は、積雪を落とすためには、雪がすべる材質が望ましいが、自動車の走行のためには、適度の摩擦が必要とされる。また、駐車場に車を置いたあとの運転者が歩く際に、靴を該透孔に挟まれないほどの大きさとすべきであることも考慮して、当該透孔の大きさ、材質、形状などが決定される。
【0021】
図4は、本発明に係る透雪槽を図1の(IV)−(IV)の位置で見た鉛直断面図である。図1、図2、図3の伏図を描いた位置を(I)−(I)、(II)−(II)、(III)−(III)の一点鎖線でそれぞれ示してある。また、排水管Dは、水槽Aの底面近くに設け、吸入管Cは排水管Dよりも少し高い位置に設けてあることが描かれている。さらに柱の上部に梁材がボルト止めしてある様子が示されている。また、網目状部材Bが補強材E(梁材)の上に固定されている様子が示されている。柱を下から支える杭体や、地中の地盤改良体などは、図4では描くのを省略してある。
【実施例1】
【0022】
次に、本発明にかかる透雪槽を一般の自動車用道路に用いた実施例について図5及び図6を参照しつつ、説明する。
図5は、一般道路、航空滑走路の場合の実施例の伏図である。この伏図は、図5の上半分が網目状部材を補強材E(梁材)に接合する工程の途中を描いたものであり、図5の下半分が補強材Eの構造的な骨組みを示したものである。図5の上半分左側には、吸入管Cが示されている。図5の下半分右側には、排水管Dが示されている。図5の中ほどに縦横それぞれに二重線が描かれているのは、縦方向、横方向、それぞれに延長が可能であることを表している。本発明にかかる透雪槽を一般の自動車用道路に用いる場合には、道路の長さと同じだけ、地下の水槽Aが延長されて設けられる。これにより、従来のような除雪車の運用は必要が無くなる。仮に、雪質が特殊であるなどの理由で、下に落ちにくい積雪がある場合であっても、降雪を下に落とすための作業をするブレードを車の前方につけた作業車を運行すればよく、道路わきに雪を寄せる、邪魔になった雪を他の場所に運ぶなど、従来の除雪車がしていた作業をこの道路においてはする必要がない。
【0023】
図6は、一般道路、航空滑走路の場合の実施例の鉛直断面図である。図4に示す駐車場の場合とほぼ同様である。違う点は、規模が大きくなること、多くの交通量にも耐えるだけの強度計算をして補強材E、網目状部材Bの準備をする必要があることである。透雪槽上部に設ける網目状部材は計算により500トン以上の荷重に耐える誘導路にも使用可能なものとすることができる。
【0024】
また、道路においては、下水管、雨水管などの配置を考えて、吸入管C、排水管Dの配置を決めることになる。さらに、実施形態にあっては、水槽Aの底面は、水平でかまわなかったが、道路の場合は、平行して設けられる下水管、雨水管が存在する場合に、その勾配に合わせて、水槽Aの底面に同様の勾配をもたせるのが望ましいと考えられる。
【実施例2】
【0025】
本発明の透雪槽を航空滑走路に用いた実施例は、実施例1と同様であるが、航空機の離着陸に耐えるだけの強度を備えた補強材E及び網目状部材Bが用いられることが異なる。また、航空滑走路としたが、誘導路、整備場への通路など、空港設備の至るところへの応用が可能である。
【実施例3】
【0026】
水槽Aは、側溝でもよい。その場合、実施例1の道路の場合と同じように、その底面に勾配を設けて、融雪水が下流方向に流れるようにする。
【実施例4】
【0027】
水槽あるいは、側溝に溜った雪を浴槽排水、あるいは雨水排水の温水を吸入口より注入し雪を溶かし排水管に流すことで、熱源を使用しないものとすることができる。特に熱源により熱しない雨水であっても、雪に比べると温かい水であるから、温水として扱うことができる。浴槽の残り湯や雨水排水のエネルギーを水槽あるいは側溝に利用することで、エコ施設とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
一般家庭用駐車場、店舗用駐車場、マンションの駐車場、一般の道路、航空滑走路、その他除雪が必要な箇所に使用可能である。
【符号の説明】
【0029】
A 水槽(或いは側溝)
B 網目状部材
C 吸入管
D 排水管
E 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多雪地帯の駐車場、道路、航空滑走路に適した地表面及び地下の構造物からなる透雪槽であって、
除雪を欲する地表面全体に設けられ、至る所に多数の透孔を有する網目状部材と、
該網目状部材の真下にその広がり全体に亘って設けられ、前記多雪地帯の一年間の積雪量を十分に越える深さを有する水槽と、
該水槽に固定して設けられ、前記網目状部材を支持する補強材と
を有し、前記網目状部材の至るところに設けられた多数の透孔は雪を降雪後まもなく下に落とす大きさであり、前記網目状部材が前記補強材に支持される結果、前記網目状部材は自動車の重さを支えることができるものである透雪槽。
【請求項2】
請求項1に記載した透雪槽であって、
前記水槽は、
該水槽内に溜った雪を融かすための温水を導きいれる吸入管と、
該吸入管が導いた温水によって融かされてできる融雪水を外部に排水する排水管と
を有することを特徴とする透雪槽。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一に記載した透雪槽であって、自動車用道路の全体に亘って設け、前記補強材は、当該道路の交通量を考慮して強度計算がなされて設けられたことを特徴とする透雪槽。
【請求項4】
請求項1又は2のいずれか一に記載した透雪槽であって、航空機滑走路の全体に亘って設け、前記補強材は、航空機の重量、離着陸頻度を考慮して強度計算がなされて設けられたことを特徴とする透雪槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−94354(P2011−94354A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247966(P2009−247966)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(591087378)
【Fターム(参考)】