説明

大型車両の潜り込み防止装置

【課題】本発明はトラック等の大型車両の潜り込み防止装置に関し、簡単かつ低コストに関らず潜り込み防止ビームの効率的な補強を行うようにすることを目的とする。
【解決手段】潜り込み防止ビーム16は車両端部においてフレーム10の下方に位置し、車両幅方向に延びる。フレーム10に固定される上部ブラケット18は下向き前方に向け延び、前端に下部ブラケット20がボルト止めされ、上下のブラケット18, 20はボルト及びナットにより締結されている。潜り込み防止ビーム16の底面に補強板28が溶接され、下部ブラケット20と補強板29とは潜り込み防止ビーム16の内側に三角形の閉断面30を形成するように溶接されている。また、補強板29は潜り込み防止ビーム16の曲折端部まで延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車高が大きいトラック等の大型車両の潜り込み防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車高が大きいトラック等の大型車両と乗用車との衝突事故の際に、大型車両ではフロントバンパが高い位置にあるため、乗用車の前部が大型車両のフロントバンパの下側に潜り込んでしまう事故が起こる恐れがある。これに鑑みて潜り込み防止装置(所謂アンダーランプロテクタ)の装着が義務付けられるようになってきている。この種の潜り込み防止装置はバンパフェーシアの背後におけるフロントバンパより車高の低い部位に潜り込み防止ビームを備えている。潜り込み防止ビームは取付ブラケットを介して車体に装着する構造となっている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−036071号公報
【特許文献2】特開2007−186051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、潜り込み防止ビームを車体(フレーム)に取り付けるブラケットは基本的に片持構造であるため、車体より外側からの外力に対して潜り込み防止ビームがブラケット付近において折損し易い問題点があった。そして、従来構造の場合、補強部材の設置スペースの確保がし難く、また可能であったとしてもコスト高になってしまう問題点があった。
【0005】
この発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単かつ低コストに関らず潜り込み防止ビームの効率的な補強を行うようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明になる大型車両の車体端部における潜り込み防止装置は、車両端部において車体の下方に位置し、車両幅方向に延びる潜り込み防止ビームと、一端が車体の端部に取り付けられ、他端が潜り込み防止ビームの車体内部側面に固定され、かつ潜り込み防止ビームの前記車体内部側面より車両内側に幾分下向きに延出する延出部を備えたブラケットと、潜り込み防止ビームの下面に固定され、潜り込み防止ビームより車両内側方向に向けて延出する補強板とを備え、補強板の延出端縁はブラケットの前記内方延出部に対し潜り込み防止ビームの裏面に閉断面を形成するように溶接されたことを特徴とする。
【0007】
前記ブラケットは車体の端部に取り付けられた第1部分と、潜り込み防止ビームの車体内部側面に固定され、前記延出部を備えた第2部分とから構成することができ、そしてブラケットの前記第1部分と第2部分とはボルト止めされる。
【0008】
また、補強板を潜り込み防止ビームの車体幅方向の夫々の端部まで延設させることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、潜り込み防止ビームに下面に固定される補強板は、潜り込み防止ビームの車体内部側面より車両内側に幾分下向きに延出するブラケットの延出部に固定され、ブラケットと補強板とで潜り込み防止ビームの裏面に閉断面を形成しており、そのため車体より外側からの入力に対して曲げ強度の大巾な増大を得ることができる。
【0010】
ブラケットの分割構造により既存の車両に対する潜り込み防止装置の装着が容易となる。また、補強板を潜り込み防止ビームの夫々の車体幅方向端部まで延設することにより車体の外側、特に、車幅方向の端部からのモーメントの大きい外力に対しても効率的な補強を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はこの発明の大型車両の潜り込み防止装置を側方より一部断面にて示す図(図2のI−I線に沿った断面図)である。
【図2】図2はこの発明の大型車両の潜り込み防止装置の概略斜視図でである。
【図3】図3はこの発明の大型車両の潜り込み防止装置の模擬実験による強度解析結果を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を車両のフロント部について説明するが、車両のリヤ部についても同様に構成することができる。図1において、想像線10はトラック等の大型車両の車体(フレーム)の前部を側面から見たところを模式的に示し、図2の斜視図に示すようにフレームは車両の両側に延びており、フレーム10の前端間に車両の幅方向に延びるフロントバンパ12が取り付けられている。図1において、想像線14はバンパフェーシアを示しており、周知のようにバンパフェーシアは樹脂素材にて成形され、上端はフロントバンパ12に固定され、下端は車体下部の前面を覆うように下方に延設されている。トラック等の大型車両の場合はフロントバンパ12は路面より相当高い所に位置しているため、フロントバンパ12の下方には相当広い空間が形成されており、乗用車との衝突の場合は乗用車の前端部分がフロントバンパ12の下方に潜り込む恐れがあり、これに対する対策として潜り込み防止装置設置の必要がある。
【0013】
この発明の潜り込み防止装置の構成を説明すると、潜り込み防止ビーム16は断面が矩形の鋼材を素材とし、車幅方向に延びている。図2に示すように潜り込み防止ビーム16の車幅方向両端部は幾分を後方(車両内向き)への曲折部16-1を有している。潜り込み防止ビーム16は潜り込み対策として、フロントパンパ12の下方の地面に近い高さ部位に位置しているが、前面はバンパフェーシア14によってカバーされている。潜り込み防止ビーム16をフレーム10に取り付けるためのブラケットはフレーム10から幾分下向きにかつ前方に延設されており、このこの実施形態においては、フレーム10に固定される上部ブラケット18(この発明のブラケット第1部分)と潜り込み防止ビーム16に固定される下部ブラケット20(この発明のブラケット第2部分)との2部品構成である。2部品化により既存のフレームに対する潜り込み防止ビーム16の装着が容易となる。上部ブラケット18は上端がフレーム10の前端部における両側壁面に固定されるようになっており、そのためのボルト孔18Aを備えている。上部ブラケット18はフレーム10の取り付け部から下向きに傾斜しつつ車体前方に延びており、前端部に車幅方向への曲折部18-1, 18-2(図2)を備えている。他方、下部ブラケット20は全体的に上部ブラケット18より幅広であり、その上側の直立部が潜り込み防止ビーム16の直立後面に溶接され、潜り込み防止ビーム16に溶接される直立部から下向きに傾斜しつつ車体後方に延びる延出部20-1を備えている。上部ブラケット18の曲折部18-1, 18-2は、夫々、下部ブラケット20の上部(直立部)、下部(延出部20-1)に重ねられ、ボルト24及びナット26により締結されている。上部ブラケット18の曲折部18-1には下部ブラケット20の直立部を介して補強用のバッキングプレート22が当てがわれ、ボルト及びナット24, 26により供締めされている。
【0014】
この発明の潜り込み防止装置は、更に、補強板28を備えており、補強板28は図1に示すようにその前端部が潜り込み防止ビーム16の底面に端縁で面一となるように溶接固定されている。図1に示すように、補強板28はその後端が後方に向けた延出部28-1をなしており、この延出部28-1の端縁は下部ブラケット20の下向き傾斜の延出部20-1の対向面に当接しかつこの当接部は溶接され(溶接部をwにて示す)、そのため、潜り込み防止ビーム16と、下部ブラケット20と、補強板28との間に三角形の閉断面部30が形成され、ブラケットによるフレームに対する潜り込み防止ビームの取り付け部の強化を図ることができる。更に、図1に示すように、補強板28は潜り込み防止ビーム16の下面に沿ってブラケットの両側(車幅方向両側)に延びており、外側の端部28-1は潜り込み防止ビーム16の端部における曲折部16-1に至っている。
【0015】
図3は潜り込み防止ビーム16に対する外力負荷における負荷子変位と負荷子反力との有限要素法による模擬実験(補強板28の効果を示す試験)の結果を模式的に示しており(負荷印加部位を図2でfにて示す)、この発明の構成(図2)による特性をラインaにて示し、図2の構成から補強板28を省略した場合の特性をラインbにて示す。この発明における補強板28の背後に閉断面部30を形成した構成による補強効果により潜り込み防止機能を高めることができる。
【0016】
また、潜り込み防止ビーム16への溶接側である下部ブラケット20を幅広とし、また補強板28を潜り込み防止ビーム16の端部における曲折部16-1に至るまで延設した構成により、車体の幅方向における端部側からの入力に対して効率的な補強を実現することができる。
【符号の説明】
【0017】
10…フレーム
12…フロントバンパ
14…バンパフェーシア
16…潜り込み防止ビーム
18…上部ブラケット(本発明のブラケット第1部分)
20…下部ブラケット20(本発明のブラケット第2部分)
28…補強板
30…三角形の閉断面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型車両の車体端部における潜り込み防止装置であって、車両端部において車体の下方に位置し、車両幅方向に延びる潜り込み防止ビームと、一端が車体長さ方向の端部に取り付けられ、他端が潜り込み防止ビームの車体内部側面に固定され、かつ潜り込み防止ビームの前記車体内部側面より車両内側に幾分下向きに延出する延出部を備えたブラケットと、潜り込み防止ビームの下面に固定され、潜り込み防止ビームより車両内側方向に向けて延出する補強板とを備え、補強板の延出端縁はブラケットの前記内方延出部に対し潜り込み防止ビームの裏面に閉断面を形成するように固定されたことを特徴とする大型車両の潜り込み防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、前記ブラケットは車体の端部に取り付けられた第1部分と、潜り込み防止ビームの車体内部側面に固定され、前記延出部を備えた第2部分とからなり、ブラケットの前記第1部分と第2部分とはボルト止めされたことを特徴とする大型車両の潜り込み防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、補強板は潜り込み防止ビームの車体幅方向の夫々の端部まで延設されていることを特徴とする大型車両の潜り込み防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−168076(P2011−168076A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31062(P2010−31062)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)