説明

大型輸送品の梱包方法及び大型輸送品梱包体

【課題】大型タンクの上面に突起物が存在しても、梱包するシートが風雨の影響で破損しないようにする。
【解決手段】手摺4や付属物5が設けられている大型タンク1の屋根部1aの上側に、エア緩衝材2を、タンク中央部が高く外周へ向けて下り勾配となる山型形状を形成するように敷き詰める。山型形状に敷き詰められたエア緩衝材2の上側から密着させるように梱包用シート3を被せて大型タンク1のタンク外表面を覆う。梱包用シート3の外側を、ネット7で覆い、外周側から索状物8で縛って、大型タンク1の梱包を行なって大型タンク梱包体Iを形成する。大型タンク1の上端部を覆う梱包用シート3を、山型形状の緩衝材2により面で受けることでシート上に雨水が溜る虞を低減させる。梱包用シート3にエア緩衝材2の弾性力により所要のテンションを付与することで、風によるばたつきを防止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外輸送される大型輸送品を梱包するために用いる大型輸送品の梱包方法と、該方法に用いる大型輸送品梱包体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場で大型の建造物、たとえば、タンクを一体製作物として製作した後、該大型タンクを遠隔地の据付個所まで海上輸送することがある。この場合、大型輸送品としての上記大型タンクが一般的な輸送船の屋根付きの船倉に収まらないサイズ、たとえば、直径及び高さ寸法がそれぞれ数m〜十数mに達するようなサイズのときには、やむを得ず台船等に積載して屋外輸送を行なうようにしている。
【0003】
ところで、上記のような大型タンクがステンレス製タンクの場合には、塩害による腐食が生じると応力腐食割れ、塩化物割れ等の要因となることから、タンク全体を梱包することが望まれる。又、納入先や使用目的によってはタンク外表面の塩化物濃度が規制される場合があり、このような場合もタンク全体の梱包が望まれる。
【0004】
更には、上記大型タンクを工場製作完了時から納入先へ引渡すまでの間に陸上で屋外保管する期間がある場合、この屋外保管期間中におけるタンク外表面の汚れを防止する観点からもタンク全体の梱包が望まれることもある。
【0005】
なお、輸送品全体を覆う梱包としては、小型の輸送品、たとえば、家電製品程度のサイズのものでは梱包用の箱を用いることが多く行なわれているが、梱包用の箱に収まらないようなより大きな輸送品の全体を梱包する手法の1つとしては、対象となる輸送品の外側をシートで直接覆って固縛したり、輸送品に凹凸がある場合は該凹凸部分を囲むように枠体を設けて該枠体ごと外側からシートで覆って固縛する手法が広く一般的に行なわれている。
【0006】
そこで、上記シートを用いる梱包手法を、上記したような一般の輸送船の船倉に収まらないために屋外輸送を余儀なくされるような大型タンクの梱包に適用することが考えられる。この場合、梱包対象が非常に大きく、又、大型タンクの屋根部の上面には手摺やその他の突起物となる付属物が設けられていることから、これらの手摺や付属物により形成される凹凸の隙間(空間)に雨水が溜まらないようにするために、上記大型タンクの屋根部の上側に、木材や足場パイプを梁として屋根状に構築してなる受け台を載置し、該受け台の上側からシートでタンク全体を覆うようにして梱包することが考えられる。
【0007】
なお、従来、輸送対象となる物品を段ボール箱等の輸送用容器を用いて梱包する際に、上記物品の保護を図るために、上記物品と容器内面との隙間に緩衝材を配置して、物品が容器内面に衝突する虞を防止したり、容器外部から作用する衝撃が緩和されてから物品に伝えられるようにすることはごく一般的に行なわれている。又、上記緩衝材として、所要のフィルムによりエアを封入した気室(空気袋)を形成して、該気室の弾性力を利用する形式のエア緩衝材(エアーバッグ)も広く一般的に用いられるようになってきている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平11−278548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上述したように大型タンクの上側に屋根状の受け台を載置してシートで全体を覆うようにする梱包手法では、上記受け台を構築するための梁として木材や足場パイプ等の重量物を用いるため、梁自身の重量が過大となり、上記受け台の取付作業に費用及び期間を要するという問題がある。
【0010】
又、上記大型タンクの上面においては、上記受け台を構築している梁と接する部分に該受け台の荷重が局所的に作用するようになることから、梱包対象となる大型タンクの屋根部が薄板によって形成されている場合には、上記木材や足場パイプ等を梁として構築される受け台の重量が局所的に作用すると屋根部に変形が生じる虞が懸念されるため、上記受け台とシートを用いる梱包手法自体を採用することが困難となる。
【0011】
更に、木材や足場パイプによる梁ではシートを面で受けることができないために、該シートにおける梁同士の間に配されている部分に雨水が溜り易く、多量の雨水が溜ると、その重量によりシートに負担がかかって破損する虞が生じる。しかも、上記シートにおける梁同士の間に配されている部分にはテンションがかかり難いため、該部分に風によるばたつきが生じ易く、このために、屋外輸送中や屋外保管期間中に強い風が作用すると、上記シートのばたつきに伴って該ばたついている部分へシートが引き出されたり、シート自体に破損が発生する虞も懸念される。
【0012】
上記のような雨水の溜りによるシートの破損やシートのばたつきに起因してシートの破損が生じると、上記大型タンクの外表面が塩害を受けたり、タンク外表面に汚れが付着するため、納入先で再びタンク外表面の清掃作業を行なったり、タンク外表面における塩化物濃度について所定の基準を満たしているかを確認するための確認検査作業等が必要となる等、付帯作業量が増えることから、手間や時間、コストが嵩むという問題が生じる。
【0013】
一方、上記のような梱包状態で輸送される大型タンクを納入先で解梱するときには、上記大型タンクの上側に載置してある受け台を解体して梁として用いた木材や足場パイプ等を地上へ一旦吊り下ろす必要があり、この吊り下ろし作業のために高所での重量物の取扱いが必要になると共に、手間及び時間を要するという問題がある。
【0014】
更に、上記解梱の後は、梱包に用いていた木材や足場パイプ等は廃棄物となるため、廃棄物量が多くなり、その処理に要する費用や工期が嵩むという問題も生じる。特に、上記大型タンクの納入先が原子力関連施設である場合には、施設内に持ち込まれた後に発生する廃棄物量が多くなることはあまり好ましくない。そのために、廃棄物量の削減化を図ることが望まれることもある。
【0015】
ところで、工場で大型タンクを製作する際、屋根部の上面に突起物となる手摺等の付属物の取り付けを行なわず、この屋根部上面に突起物のない状態の大型タンクについてシートを上方から被せて梱包を行なうようにすれば、大型タンクの屋根部の上側に上記受け台を載置する必要はなく、該大型タンクをシートで直接覆うことが可能になって、該シート上に雨水が溜る虞は小さくなると考えられる。しかし、この場合であっても上記シートにおける大型タンクの屋根部の上側に位置する部分にはテンションがかかり難いため、該シートのばたつきに起因する破損が生じる虞を防止できないという問題がある。更に、この場合には、上記大型タンクを納入先へ納入した後、該大型タンクの屋根部の上面に対する手摺やその他の付属物の設置作業を、現地で高所作業として行なう必要が生じてしまう。
【0016】
なお、従来、物品の梱包時に一般的に用いられている緩衝材や、特許文献1に示されたようなエア緩衝材は、いずれも、所定形状を保持できる強度を具備した輸送用容器の内側に収納される物品の保護を目的として使用されているものであって、屋外輸送を余儀なくされるような大型輸送品をシートを用いて梱包する際に、該シートに雨水が溜る虞を防止したり、シートのばたつきを防止するために適用する考えは従来示されておらず、示唆すらされていない。
【0017】
そこで、本発明は、大型タンクのような上面に凹凸を有する大型輸送品であってもシートで覆う梱包を実施でき、且つ風雨が作用する際にも上記梱包に用いているシート上に雨水が溜って該シートが破損する虞や、該シートがばたつきに起因して破損する虞を未然に防いで健全な梱包を保つことができると共に、解梱作業を容易なものとすることができ、しかも、解梱後に生じる廃棄物量を大幅に削減できる大型輸送品の梱包方法と、該方法に用いる大型輸送品梱包体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明に対応して、大型輸送品の上面に、緩衝材を、中央部が高く外周に向けて下り勾配となる山型形状を形成するように敷き詰め、該敷き詰められた緩衝材の上側に防水性を有する梱包用シートを密着させるよう被せると共に、該梱包用シートにて上記大型輸送品の表面を覆って該大型輸送品を梱包する大型輸送品の梱包方法とする。
【0019】
上記において、大型輸送品の上面への緩衝材の敷き詰めを、上記大型輸送品の表面形状に沿って覆った表面養生用シートの上側で行うようにする。
【0020】
又、上記各構成において、大型輸送品の上面に緩衝材を敷き詰めるときに、該緩衝材を所要量ずつまとめたブロック化した状態で敷き詰めるようにすると共に、敷き詰められる上記緩衝材のブロック化されたもの同士を固縛するようにする。
【0021】
上述の各構成において、エア緩衝材を緩衝材として用いるようにする。
【0022】
又、請求項5に係る発明に対応して、大型輸送品の上面に、緩衝材を、中央部が高く且つ外周へ向けて下り勾配となるように敷き詰めて配置し、該緩衝材の上側に密着させるよう被せた梱包用シートにより上記大型輸送品の表面を覆ってなる構成を有する大型輸送品梱包体とする。
【0023】
上記構成において、大型輸送品の表面を、表面形状に沿って配した表面養生用シートで覆うようにし、該表面養生用シートで覆われた上記大型輸送品の上面に緩衝材を敷き詰めて配置すると共に、該緩衝材の上側に密着させるよう被せた梱包用シートにより上記大型輸送品の表面を更に覆うようにした構成とする
又、上記各構成において、緩衝材を、所要量ずつ袋に詰めてブロック化した状態で大型輸送品の上面に敷き詰めるようにすると共に、緩衝材を袋詰めしてブロック化している袋同士を固縛するようにした構成とする。
【0024】
上述の各構成における緩衝材を、エア緩衝材とした構成とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)大型輸送品の上面に、緩衝材を、中央部が高く外周に向けて下り勾配となる山型形状を形成するように敷き詰め、該敷き詰められた緩衝材の上側に防水性を有する梱包用シートを密着させるよう被せると共に、該梱包用シートにて上記大型輸送品の表面を覆って該大型輸送品を梱包する大型輸送品の梱包方法としてあるので、大型輸送品の上端部を覆う部分が、該大型輸送品の屋根部に敷き詰められている緩衝材により面で受けられて山型形状に沿う状態とされるため、上記梱包用シートの上側に雨水が溜る虞を低減できる。又、上記梱包用シートにおける上記大型輸送品の上端部を覆っている部分には、緩衝材の弾性力が常に下方から作用することによって所要のテンションがかけられることから、該部分が強風に晒されても梱包用シートにばたつきが発生する虞を未然に防止できる。したがって、風雨が作用しても、梱包用シートが破損する虞を回避することができて、上記大型輸送品の梱包を健全に保つことができることから、該大型輸送品の外表面が雨水によって汚れたり、塩害を生じる虞を防止できる。
(2)又、上記大型輸送品の屋根部に敷き詰められた緩衝材の荷重は、上記屋根部の全面に亘りほぼ一様に面で受けられるようになるため、上記大型輸送品の屋根部が薄板によって形成されている場合にも梱包を行なうことが可能になる。
(3)上記大型輸送品梱包体を解梱するときには、高所となる上記大型輸送品の屋根部で重量物を取扱う必要をなくすことができる。このために、解梱作業を容易に実施できて、該解梱作業に要する手間及び時間を削減できる。
(4)大型輸送品の上面への緩衝材の敷き詰めを、上記大型輸送品の表面形状に沿って覆った表面養生用シートの上側で行うようにすることにより、万一、梱包用シートに破損が生じて破損部分から雨水が侵入したり、海上輸送中に海水が侵入しても、上記表面養生用シートによって大型輸送品の外表面に直接上記雨水や海水がかかる虞を阻止できるため、上記大型輸送品の梱包の健全性をより確実なものとすることができる。
(5)大型輸送品の上面に緩衝材を敷き詰めるときに、該緩衝材を所要量ずつまとめたブロック化した状態で敷き詰めるようにすると共に、敷き詰められる上記緩衝材のブロック化されたもの同士を固縛するようにすることにより、振動が作用したり、梱包用シートの外側から風等の外力が作用するときにも、上記梱包用シートの下方で緩衝材が移動したり、片寄りが生じる虞を防止できる。
(6)緩衝材を、エア緩衝材とすることにより、緩衝材をごく軽量のものとすることができて、大型輸送品の上面に対する敷き詰め作業をより容易なものとすることができる。又、解梱作業時には、上記エア緩衝材を大型輸送品の屋根部から地上へ下ろすときには、投げ下ろすことが可能になるため、解梱作業に要する手間及び時間を削減できる。更に、使用後の上記エア緩衝材は、気室を破壊してエアを抜くことにより容易に且つ大幅に容積を縮小できるため、解梱後に生じる廃棄物の量を、大幅に削減することが可能になり、廃棄物の処理に要する費用や工期を削減することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0027】
図1及び図2は本発明の大型輸送品の梱包方法と、該方法に用いる大型輸送品梱包体の実施の一形態を示すもので、屋外輸送される大型輸送品として、たとえば、工場で一体製作された大型タンク1の梱包に適用する場合を示す。
【0028】
上記大型タンク1の梱包方法について概説すると、大型タンク1の屋根部1aの上側に、緩衝材2を、該屋根部1aの上面に設けられている突出物の存在にかかわらず、タンク中央部が最も高く外周へ向けて下り勾配となる山型形状が形成されるように敷き詰める。更に、該山型形状に敷き詰められた緩衝材2の上側に、梱包用シート3を密着させるよう被せると共に、該梱包用シート3にて上記大型タンク1のタンク外表面を覆って該大型タンク1を梱包してなる大型輸送品梱包体としての大型タンク梱包体Iを形成させるようにする。
【0029】
詳述すると、梱包対象となる上記大型タンク1は、円錐状の屋根部1aを有してなる形式とする。更に、屋根部1aの外周縁部の上面に手摺4を設置すると共に、該屋根部1aの上面の所要位置にマンホール等の突起物となる付属物5を設けた状態となるよう工場にて一体製作したものとしてある。
【0030】
かかる大型タンク1の梱包を行なう場合は、先ず、屋根部1aの上面に設置されている上記手摺4や付属物5に沿うように配置した表面養生用シート6によってタンク外表面を覆うようにする。
【0031】
次に、上記表面養生用シート6で覆われている上記大型タンク1の屋根部1aの上側に、緩衝材2を、上記手摺4や付属物5等の突出物の間を埋めて、該埋められた緩衝材2全体の上面形状がタンク中央部で高く外周へ向けて下り勾配の山型形状となるように屋根部1aの上面に一様に敷き詰める。
【0032】
次いで、上記山型形状に敷き詰められている緩衝材2の上面に沿うように、上方から梱包用シート3を密着させるよう被せると共に、該梱包用シート3によって上記大型タンク1のタンク表面を更に覆うようにする。
【0033】
更に、上記梱包用シート3の外側を全面に亘りネット7で覆い、該ネット7により上記梱包用シート3の表面全体を均等に抑えることができるようにした状態にて、上下方向に所要間隔の複数個所を、図1に一点鎖線で示す如く周方向に配したロープ等の索状物8により固縛するようにする。
【0034】
上記緩衝材2としては、重量、価格、上記大型タンク1の屋根部1aの上側へ敷き詰めるときの作業性、又、解梱する際における該緩衝材2を大型タンク1上から地上へ下ろす際の手間の削減、解梱後に生じる廃棄物の量を減容化するという観点からすると、エア緩衝材2を用いることが好ましい。
【0035】
又、上記エア緩衝材2は、上記大型タンク1の梱包期間中に何らかの原因によりいくつかの気室からの空気抜けが発生しても、エア緩衝材2の全体の容積変化を小さく抑えて、全体で山型となるようにしてある上面形状に変化が生じないようにするという点では個々の気室のサイズは小さいほうが好ましい。一方、解梱後に廃棄物の量を減容化させるために各気室からエアを抜くときの作業性を高いものとするという点では個々の気室のサイズは大きいほうが好ましい。よって、上記エア緩衝材2は、以上のような点と、入手の容易性、価格等を考慮して気室のサイズを適宜選定するようにすればよい。
【0036】
更に、上記エア緩衝材2は、振動が作用したり、梱包用シート3の外側から風等の外力が作用するときにも上記梱包用シート3の下方で移動したり、片寄りが生じる虞を防止できるようにするために、該エア緩衝材2を所定量ずつブロック化した状態で上記したような敷き詰め作業を行うと共に、該ブロック化されたもの同士を固縛するようにする。具体的には、上記エア緩衝材2をほぼ一定量ずつ袋9に詰め、該エア緩衝材2の袋詰めされたものを、上記表面養生用シート6で覆われている大型タンク1の屋根部1aの上側に敷き詰め、更に、該エア緩衝材2を詰めている袋9同士を、図示しないテープ等により固縛するようにする。
【0037】
上記大型タンク梱包体Iは搬送架台10に載置した状態で搬送するようにして、台船11上に上記大型タンク梱包体Iを積載する際には、たとえば、上記表面養生用シート6及び梱包用シート3とそれぞれ同様としてある二重の下部シート12を用いて、上記搬送架台10ごと上記大型タンク1の下端部を下方から覆うようにすると共に、該下部シート12の上端縁部と上記表面養生用シート6及び梱包用シート3の下端縁部とを、上記下部シート12が内周側になるように上下方向所要の長さ範囲に亘りラップさせて、該ラップ個所を図1に一点鎖線で示す如きロープ等の索状物8aによって周方向に固縛するようにする。
【0038】
更に、上記該大型タンク梱包体Iの上端部には、上記梱包用シート3及びネット7の上側に沿うように、上方からばたつき防止用シート13を密着させるように被せ、更に、該ばたつき防止用シート13の上側にネット14で覆って、該ネット14により上記ばたつき防止用シート13の表面全体を均等に抑えた状態として、外周側から図1に一点鎖線で示す如きロープ等の索状物8bにより周方向に固縛する。更に、上記ネット14の下端部における周方向の複数個所に所要間隔でワイヤ15の一端(上端)を接続して、該各ワイヤ15の下端側を台船11上に設置してある支持金具16に接続して、該ネット14の固定を行なうようにする。
【0039】
なお、図1及び図2では、図示する便宜上、実際には接することとなる上記大型タンク1の外表面と表面養生用シート6、搬送架台10と下部シート12、及び、各シート6と3,各シート6と12同士、並びに、各シート3,13とネット7,14の間に、それぞれ隙間を設けた状態で示してある。エア緩衝材2の数や配置、該エア緩衝材2を袋9に詰めてブロック化したものの数や配置は、いずれも図示するための便宜的なものであり、実際の数や配置は梱包対象となる大型タンク1の寸法やエア緩衝材2の寸法、袋9のサイズ等に応じて適宜変更してよい。又、上記表面養生用シート6としては、ポリエチレンシート等の防水性を備えたシートを適宜選定して用いるようにすればよい。更に、上記梱包用シート3及びばたつき防止用シート13としては、上記表面養生用シート6と同様の防水性に加えて紫外線に対する耐候性を有するUVシート等を適宜選定して用いるようにすればよい。
【0040】
以上のようにして大型タンク1を梱包することにより形成される大型タンク梱包体Iでは、梱包用シート3及びばたつき防止用シート13における大型タンク1の上端部を覆う部分が、いずれも上記大型タンク1の屋根部1aの上側に敷き詰めて配設してあるエア緩衝材2の上面形状、すなわち、中央部が高く外周へ向けて下り勾配となる山型形状に沿っった状態で配置されるようになる。このため、上記梱包用シート3及びばたつき防止用シート13は、いずれも下側から上記エア緩衝材2によって面で受けられるようになることから、該梱包用シート3やばたつき防止用シート13の上側に雨水が溜る虞を低減できる。
【0041】
更に、上記梱包用シート3及びばたつき防止用シート13は、上記山型形状に配設してあるエア緩衝材2の上側へ順次密着させるように配置してあることに伴って、該梱包用シート3及びばたつき防止用シート13における上記大型タンク1の上端部を覆っている部分に対しては、該各シート3,13によって上方から押さえつけられることにより変形する上記エア緩衝材2の復元力(弾性力)が常に下方から作用するようになる。このために、上記各シート3及び13における上記大型タンク1の上端部を覆っている部分は、常に所要のテンションが作用した状態とされることから、該部分が強風に晒されても上記各シート3,13にばたつきが発生する虞を未然に防止できる。
【0042】
したがって、上記大型タンク梱包体Iに風雨が作用しても、梱包用シート3及びばたつき防止用シート13が、雨水の重量の負担が作用することによって破損したり、風によってばたついて破損する虞を回避することができる。
【0043】
しかも、上記ばたつき防止用シート13及び梱包用シート3の外側はそれぞれネット14及び7によって外側から覆うようにしてあり、一方、エア緩衝材2は所定量ずつ袋9に詰めてブロック化してあると共に、該袋詰めしている袋9同士を固縛してあるため、万一、上記大型タンク梱包体Iにおいて上記ばたつき防止用シート13や梱包用シート3に破損が生じても、上記エア緩衝材2の袋詰めされたものを上記ネット7と14で抑えることができて、エア緩衝材2が飛散したり、脱落する虞を防止できる。更に、上記大型タンク1は、屋根部1aの手摺4や付属物5に沿うように配置した表面養生用シート6によってタンク外表面を覆ってあるため、たとえ上記のように梱包用シート3及びばたつき防止用シート13に破損が生じて、該各シート3,13の破損部分から雨水が侵入したり、海上輸送中に海水が侵入しても、上記大型タンク1の外表面に直接雨水や海水がかかる虞を阻止できるため、タンク外表面が雨水によって汚れたり、塩害が生じる虞をより確実に防止することができる。以上により、上記大型タンク1の梱包を、海上輸送中や風雨が作用するときにも健全に保つことができる。
【0044】
上記大型タンク1の屋根部1aの上側に敷き詰められるエア緩衝材2は軽量であり、しかも、該敷き詰められたエア緩衝材2の荷重は、上記屋根部1aの全面に亘ってほぼ一様に面で受けられるようになるため、上記大型タンク1の屋根部1aが薄板によって形成されている場合にも適用することが可能になる。
【0045】
上記大型タンク梱包体Iを納入先で解梱するときには、上記ネット14、ばたつき防止用シート13、ネット7、梱包用シート3を順次取り外した後、上記大型タンク1の屋根部1aに敷き詰められている上記エア緩衝材2を除去し、しかる後、表面養生用シート6を取り外すようにすればよい。
【0046】
この解梱作業の際、高所となる上記大型タンク1の屋根部1aの上側では、上記各シート3,6,13や各ネット7,14、エア緩衝材2を取り扱うのみであることから、重量物の高所での取扱いは不要となる。又、上記エア緩衝材2を上記大型タンク1の屋根部1aから地上へ下ろすときには、エア緩衝材2を袋9に詰められた状態のまま投げ下ろすことが可能であるため、該エア緩衝材2を除去する作業を非常に容易に実施することができる。よって、解梱作業に要する手間及び時間を削減できる。
【0047】
更に、使用後の上記エア緩衝材2は、気室を破壊してエアを抜くことにより容易に且つ大幅に容積を縮小できるため、上記解梱後に生じる廃棄物の量を、木材や足場パイプを梁として構築する受け台を使用する場合に比して大幅に削減することが可能になる。このために、廃棄物の処理に要する費用や工期を削減することも可能になる。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、大型タンク1の天井部1aの上側に、緩衝材2を中央部が高く外周へ向けて下り勾配となるよう敷き詰め、梱包用シート3を該緩衝材2の上側へ密着させるように被せると共に該梱包用シート3にてタンク外表面を覆うようにするという基本構成を備えていれば、たとえば、表面養生用シート6は、万一、上記梱包用シート3に破損が生じてもタンク外表面をより確実に保護できるようにするという観点からは設けることが好ましいが、省略してもよい。又、上記ばたつき防止用シート13及びネット14は、大型タンク1の上端部の保護の確実性を高めるという観点からは設けることが好ましいが、省略してもよい。更には、上記各シート3,6,12,13や各ネット7,14の材質、枚数は所望される仕様に応じて適宜変更してもよい。
【0049】
緩衝材としてはエア緩衝材2を用いることが好ましいが、ある程度の弾性を有し且つ軽量であると共に、上記大型タンク1のような大型輸送品の上面に、該上面に形成されている凹凸を埋めながら、中央部が高く外周へ向けて下り勾配となる山型形状を形成させるように敷き詰めることができれば、エア緩衝材2以外の緩衝材を用いるようにしてもよい。
【0050】
図1においては、大型タンク1の屋根部1aの上側に敷き詰めるエア緩衝材2により円錐状の山型形状を形成させるものとして示したが、中央部が高くて外周へ向けて下り勾配となるようにすれば、ドーム状の山型形状等、円錐状以外の山型形状を形成させるようにしてもよい。
【0051】
屋根部1aが平らな形式、屋根部1aの外周部に手摺4を設置しない形式、屋根部1aの上面に複数の突出部を有してなる形式、タンク外周壁面に配管等の各種付属物が設けられている形式等、いかなる形式の大型タンク1の梱包にも適用できる。更に、本発明の梱包方法は、屋外輸送される大型輸送品であれば、大型タンク1以外の大型輸送品の梱包にも適用できる。又、梱包対象となる上記大型輸送品としては、平面形状が円形以外のものであってもよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の大型輸送品梱包体としての大型タンク梱包体により大型タンクを梱包した状態を示す切断側面図である。
【図2】図1のA−A方向矢視図である。
【符号の説明】
【0053】
I 大型タンク梱包体(大型輸送品梱包体)
1 大型タンク(大型輸送品)
2 エア緩衝材(緩衝材)
3 梱包用シート
6 表面養生用シート
9 袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型輸送品の上面に、緩衝材を、中央部が高く外周に向けて下り勾配となる山型形状を形成するように敷き詰め、該敷き詰められた緩衝材の上側に防水性を有する梱包用シートを密着させるよう被せると共に、該梱包用シートにて上記大型輸送品の表面を覆って該大型輸送品を梱包することを特徴とする大型輸送品の梱包方法。
【請求項2】
大型輸送品の上面への緩衝材の敷き詰めを、上記大型輸送品の表面形状に沿って覆った表面養生用シートの上側で行うようにする請求項1記載の大型輸送品の梱包方法。
【請求項3】
大型輸送品の上面に緩衝材を敷き詰めるときに、該緩衝材を所要量ずつまとめたブロック化した状態で敷き詰めるようにすると共に、敷き詰められる上記緩衝材のブロック化されたもの同士を固縛するようにする請求項1又は2記載の大型輸送品の梱包方法。
【請求項4】
エア緩衝材を緩衝材として用いるようにする請求項1、2又は3記載の大型輸送品の梱包方法。
【請求項5】
大型輸送品の上面に、緩衝材を、中央部が高く且つ外周へ向けて下り勾配となるように敷き詰めて配置し、該緩衝材の上側に密着させるよう被せた梱包用シートにより上記大型輸送品の表面を覆ってなる構成を有することを特徴とする大型輸送品梱包体。
【請求項6】
大型輸送品の表面を、表面形状に沿って配した表面養生用シートで覆うようにし、該表面養生用シートで覆われた上記大型輸送品の上面に緩衝材を敷き詰めて配置すると共に、該緩衝材の上側に密着させるよう被せた梱包用シートにより上記大型輸送品の表面を更に覆うようにした請求項5記載の大型輸送品梱包体。
【請求項7】
緩衝材を、所要量ずつ袋に詰めてブロック化した状態で大型輸送品の上面に敷き詰めるようにすると共に、緩衝材を袋詰めしてブロック化している袋同士を固縛するようにした請求項5又は6記載の大型輸送品梱包体。
【請求項8】
緩衝材を、エア緩衝材とした請求項5、6又は7記載の大型輸送品梱包体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−238113(P2007−238113A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60698(P2006−60698)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】