説明

大空間建築物の局所暖房方法

【課題】 大空間建築物1の建築物空間下方部6に設けられた各種イベント用施設の一部を数時間程度使用する場合の経済的な暖房方法。
【解決手段】 施設使用開始時までに行う予熱時暖房の第1段階で、建築物周壁部3の中間高さ位置から水平に温風を吹き出して、建築物空間上方部5に設定温度以上の高温空気層を形成した後、第2段階で、使用施設設置区域(暖房域7)の下方部に温風吹き出し方式や輻射暖房方式で熱を供給してこの区域を設定温度に暖房し、施設使用中の定常時暖房で前記状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大空間建築物(大空間を有する例えば、大規模・多目的ドームのような建築物)の局所暖房方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】大空間建築物を暖房する場合の従来方式は、建築物周壁側の空調機から建築物内にほぼ水平に温風を吹き出して、建築物空間の全体の温度を上方部から下方部に向かって徐々に高める、いわゆる全域暖房方式が一般的であるが、この方式では建築物空間下方部に設けられた各種イベント用施設の一部を限られた時間(3〜6時間程度)使用する場合には、効率が悪く不経済である。
【0003】そして、前記全域暖房方式の問題点を解決するために、建築物空間下方部に設けられた各種イベント用施設を仕切り壁等で区画し、所要の区域のみを暖房することも考えられるが、この場合は多大の施設費を要する点で問題である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題(本発明の目的)は、建築物空間下方部に設けられた各種イベント用施設の一部を数時間程度の限られた時間使用する場合に有効で、従来の全域暖房方式に比べて暖房用エネルギーの大幅な節減と暖房用設備の小型化が期待できる大空間建築物の局所暖房方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明の大空間建築物の局所暖房方法(以下、本発明の暖房方法と略称する)では、基本的に、建築物空間下方部に設けられた各種イベント用施設の一部を数時間程度の限られた時間使用する場合に、使用開始時までに行う予熱時暖房を2段階に分け、第1段階で、建築物周壁部の高さ方向中間位置に設けた空調吹き出し口からほぼ水平に温風を吹き出して、建築物空間上方部に設定温度より高い高温空気層を形成した後、第2段階で、使用施設設置区域の下方部に適宜手段で熱を供給して、この区域を設定温度に暖房し、施設使用中の定常時暖房において、空調機等を適宜制御して前記状態を維持するようにしている(請求項1)。
【0006】なお、本発明の暖房方法では、使用施設設置区域の暖房を温風吹き出し方式で行うか、輻射暖房方式(床暖房方式や赤外線パネルヒーター方式等)で行うか、或いは、それらの両者で行うか、その何れでもよく、各施設設置区域にそれぞれ最適の方式を適用して行うことができる(請求項2〜4)。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の暖房方法の模式的説明図である図1において、1は大空間建築物、2は建築物天井部、3は建築物周壁部、4は建築物床部、5は建築物空間上方部、6は建築物空間下方部を、それぞれ示している。
【0008】建築物空間下方部6には各種イベント用施設があり、その一部を限られた時間使用する場合に本発明の暖房方法では使用施設設置区域のみを局所的に所定の設定温度に暖房するのであるが、図1において、7はその暖房域、8は暖房域7に隣接する非暖房域を、それぞれ示している。
【0009】例えば、或る施設を18時から21時まで使用する場合、16時頃から予熱時暖房を開始し、施設使用開始の時点(18時)に暖房域7が設定温度(例えば、18゜C)に暖房されているようにする。
【0010】予熱時暖房は2段階に分けて行い、先ず、第1段階で、建築物周壁部3の高さ方向中間位置に設けた空調吹き出し口9から温風をほぼ水平に吹き出し、建築物空間上方部5を予熱する。
【0011】空調吹き出し口9から吹き出した温風は建築物天井部2に向かって上昇し、暖気による高温成層現象が発生して、建築物空間上方部5の気温が高まり、やがて、前記設定温度を越えるが、これで建築物空間上方部5の予熱は終了であり、その後は建築物空間上方部5の高温空気層の温度が設定温度以上に維持されるように温風供給を制御する。
【0012】次いで、第2段階で、暖房域7の下方部から熱を供給して暖房域7を予熱暖房するが、その暖房手段は任意であり、温風吹き出し方式によるか、輻射暖房方式(床暖房方式や赤外線パネルヒーター方式等)によるか、或いは、それらの両者によるか、その何れでもよい。
【0013】暖房域7の下方部から供給された熱で暖められた空気は上昇するが、建築物空より、それを越えて上昇することがなく、また、熱の供給が静かになされる限り、暖房域7の熱気が水平方向の非暖房域8に及ぶことは少なく、かくして、暖房域7のみを容易に設定温度に予熱することができる。
【0014】以上のようにして予熱暖房した後の施設使用中の定常時暖房では、前記状態、すなわち、建築物空間上方部5の高温空気層の温度が設定温度以上で、暖房域7の温度が設定温度である状態が維持されるように、空調機等を制御する。
【0015】なお、図1において、10は暖房域7に設けた局所空調吹き出し口であり、この局所空調吹き出し口10は暖房域7の予熱時暖房と定常時暖房の双方に利用できるものであるが、その設置態様は図示の場合に限定されず、例えば、建築物床部4等に上向きに設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の暖房方法の模式的説明図であり、(イ)は予熱時暖房の第1段階を説明するための大空間建築物の断面図、(ロ)は予熱時暖房の第2段階を説明するための大空間建築物の断面図である。
【符号の説明】
1:大空間建築物、2:建築物天井部、3:建築物周壁部、4:建築物床部、5:建築物空間上方部、6:建築物空間下方部、7:暖房域、8:非暖房域、9:空調吹き出し口、10:局所空調吹き出し口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 建築物空間下方部に設けられた各種イベント用施設の一部を数時間程度の限られた時間使用する場合に、施設使用開始時までに行う予熱時暖房を2段階に分け、第1段階で、建築物周壁部の高さ方向中間位置に設けた空調吹き出し口からほぼ水平に温風を吹き出して、建築物空間上方部に設定温度以上の高温空気層を形成した後、第2段階で、使用施設設置区域の下方部に適宜手段で熱を供給して、この区域を設定温度に暖房し、施設使用中の定常時暖房において、空調機等を適宜制御して前記状態を維持することを特徴とする大空間建築物の局所暖房方法。
【請求項2】 使用施設設置区域を温風吹き出し方式で暖房する請求項1記載の大規模の大空間建築物の局所暖房方法。
【請求項3】 使用施設設置区域を輻射暖房方式で暖房する請求項1記載の大空間建築物の局所暖房方法。
【請求項4】 使用施設設置区域を温風吹き出し方式と輻射暖房方式の双方で暖房する請求項1記載の大空間建築物の局所暖房方法。

【図1】
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