説明

大豆蛋白質含有食品の製造方法

【課題】 簡便な処理で、大豆臭を低減した大豆蛋白質含有食品を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 大豆蛋白質含有食品を製造する際に、原料である乾燥大豆蛋白質に白酒、特に紹興酒の酒粕を蒸留して得た糟焼を接触させることにより、食品本来の風味を損なうことなく、大豆臭が低減した大豆蛋白質含有食品を得ることができる。白酒は、単独で使用するだけでなく、塩、醤油、糖、みりん、発酵液等を適当な割合で含む調味液にして使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥大豆蛋白質の異臭を低減させた大豆蛋白質含有食品を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大豆蛋白質は低カロリー性の点、および栄養的な見地から、各種畜肉加工食品、惣菜、水産加工製品等を含めて多方面で利用されている。しかし、保存性を向上させ、取り扱いを容易にした乾燥大豆蛋白質には、大豆特有の青臭味を持った苦味、渋み、嫌味等が付与されており、その風味改善が望まれている。
【0003】
大豆蛋白質含有食品の風味改善方法として、従来より香辛料を添加する方法が知られている。しかし、手軽に実施できる方法として汎用性はあるものの、その強い風味によって食品本来の風味を損なうことが問題となっている。
【0004】
また、ポリフェノール類を添加する方法(例えば特許文献1参照)、トレハロースを添加することによる風味改善の方法(例えば特許文献2参照) が記されているが、これらの方法はマスキング効果が弱く満足できる効果を出せるまでには至っていない。さらに、加熱加圧下で大豆蛋白質原料に老酒を混練することで風味改善を狙う方法(例えば特許文献3参照)も記されているが、加熱加圧条件下にする必要があり汎用性の点において課題がある。このように、大豆蛋白質臭を抑制する技術は近年とみに要望されているにも関わらず、今もって抜本的解決策のないのが実状である。
【0005】
【特許文献1】特開平8−103225号
【特許文献2】特開平10−66516号
【特許文献3】特開2001−8635号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、食品本来の風味を損なうことなく、大豆蛋白質特有の不快な風味のない大豆蛋白質含有食品を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、大豆蛋白質含有食品の製造の際に、白酒を一定量の水で希釈した溶液に乾燥大豆蛋白質を含浸、吸水させてから使用することで、食品本来の風味を損なうことなく、大豆蛋白質特有の不快な風味(以下、大豆臭という)を低減できることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)に関する。
(1)大豆臭が低減された大豆蛋白質含有食品の製造方法において、原料である乾燥大豆蛋白質に白酒を接触させることを特徴とする方法。
(2)白酒が、糟焼である(1)記載の方法。
(3)白酒の接触量が、乾燥大豆蛋白質に対して0.1〜20.0重量%である(1)記載の方法。
(4)白酒が、あらかじめ水で希釈された希釈白酒である(1)記載の方法。
(5)希釈白酒が、0.1〜20.0重量%の白酒を希釈したものである(4)記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明において用いる白酒(パイチュウ)とは、中国産の蒸留酒の総称である。その例としては、高粱(コウリャン)、米、小麦、豆類等を原料とする一般に無色透明な蒸留酒である芽台酒(マオタイシュ)、五粮液(ゴリョウエキ)、汾酒(フンシュ)、糟焼(ツァオシャオ)等を挙げることができる。白酒の中で、特に本発明の目的に好適なものとして、紹興酒の酒粕を蒸留して得た糟焼を挙げることができる。この白酒の風味改善効果は、料理上マスキングを目的として用いられることのある他の酒類、例えば焼酎、ウイスキー、日本酒、ワイン、老酒等よりも少量で効果を発揮する。
【0010】
すなわち、白酒は醸造酒や白酒以外の蒸留酒よりも、大豆蛋白質臭を抑制する香気成分が多く含まれている。その中で、他の酒よりも含量が多く、特筆すべき白酒の香気成分として、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸イソアミル、カプロン酸エチル、酢酸β-フェネチル等を挙げることができ、それぞれの含有量は酢酸エチル500〜2000ppm、乳酸エチル800〜2000ppm、酢酸イソアミル1.5〜8.0 ppm、カプロン酸エチル2〜100ppm、酢酸β-フェネチル1〜2.5ppm程度である。理論に拘泥するものではないが、これら成分が一体となり大豆蛋白質臭を抑制するのに寄与しているものと思われる。
【0011】
本発明に使用する白酒の量は、乾燥大豆蛋白質に対して0.1〜20.0重量%が適当であり、更に好ましくは1.0〜10.0重量%である。接触させる量が0.1重量%未満であると大豆臭低減効果が期待するほどではなく、20.0重量%を超えると白酒の風味が表に立ってくることがあり食品の種類によっては好ましくない場合がある。また、これら白酒は、単独で使用するだけでなく、塩、醤油、糖、みりん、発酵液等を適当な割合で含む調味液にして使用することもできる。
【0012】
本発明における白酒の乾燥大豆蛋白質への接触方法は、所定量の白酒を乾燥大豆蛋白質に添加・混合する方法等、特に限定されないが、所定量の白酒を水で希釈した後、これに乾燥大豆蛋白質を含浸させ、十分に吸水させる方法が目的を達成するためには好ましい。なお、白酒を希釈する水は、純水に限定されるものではなく、塩、醤油、糖、みりん、発酵液等を適宜混合したものも包含する。
【0013】
本発明を適用することのできる大豆蛋白質含有食品は、乾燥大豆蛋白質を該食品中に5〜50%含有する食品であれば、特に限定されるものではない。また、商品形態は常温流通食品、低温流通食品、冷凍食品のいずれであってもよい。
【0014】
以上述べたとおり、本発明により、大豆蛋白質特有の不快な風味を低減させた大豆蛋白質含有食品の製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例1
表1記載の配合割合の大豆蛋白質含有ハンバーグに各酒(白酒、焼酎、老酒、ワイン)を1.5%使用し、常法により製造した。乾燥大豆蛋白質は「戻し水」で30分間含浸、吸水させてから使用した。試験に用いた酒は料理上マスキング効果が高いと思われるものである。また、対照として酒の代わりに水を用いた。なお、使用した白酒は糟焼である。
【0017】
【表1】

【0018】
上記方法で試作した大豆蛋白質含有ハンバーグについてパネラー4人にて官能評価を行った。その官能評価の結果を表2に示す。官能評価の結果は、◎:大豆臭が全くない、○:大豆臭ほとんどない、△:大豆臭がわずかにある、×:大豆臭が強くある、を意味する。
【0019】
【表2】

【0020】
表2より、白酒(A)の添加で大豆臭が改善されたことがわかる。老酒(C)やワイン(D)においても大豆臭の低減効果は認められるが、本実施例のように豚肉に対して大豆蛋白質の含量が多く、大豆臭が強い試験区においては白酒と比較すると効果が十分ではない。焼酎(B)は、本実施例のように大豆臭が強い試験区では白酒等と比較すると効果が劣る。
【0021】
以上のように白酒は同少量の添加量で、マスキング効果があると思われる酒よりも優れた大豆臭の改善効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明により、大豆蛋白質臭が改善された大豆蛋白質含有加工食品の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆臭が低減された大豆蛋白質含有食品の製造方法において、原料である乾燥大豆蛋白質に白酒を接触させることを特徴とする方法。
【請求項2】
白酒が、糟焼である請求項1記載の方法。
【請求項3】
白酒の接触量が、乾燥大豆蛋白質に対して0.1〜20.0重量%である請求項1記載の方法。
【請求項4】
白酒が、あらかじめ水で希釈された希釈白酒である請求項1記載の方法。
【請求項5】
希釈白酒が、0.1〜20.0重量%の白酒を希釈したものである請求項4記載の方法。

【公開番号】特開2007−274965(P2007−274965A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105426(P2006−105426)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000001915)メルシャン株式会社 (48)