説明

天井クレーン

【課題】クレーン本体に配置する電動機制御装置を走行中のクレーン本体の振動から保護できるレードルクレーンを提供する。
【解決手段】ガーダ1、ガーダ1に搭載された主巻き装置4と、主巻き装置4にワイヤを介して吊下げられており、主巻き装置4によるワイヤの巻き上げ巻き下げによって昇降可能とされた主フック3とを有するレードルクレーンにおいて、主巻き装置4の電動機6によるワイヤの巻き上げ巻き下げの速度制御をする電動機制御装置20を備えており、電動機制御装置20高圧マトリクスコンバータにより速度制御が行われるものであり、電動機制御装置20は全方位振動減衰型の防振ゴム40してガーダ1に取付けられ、内蔵する多巻線変圧器50の上部を筐体枠24に固定する固定用桟52と、内蔵するセル61の車輪62,63の上部および後部が嵌る凹所66と固定座65を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井クレーンに関する。さらに詳しくは、高圧マトリクスコンバータを用いた電動機制御装置を搭載したレードルクレーンに代表される天井クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
レードルクレーンは、製鉄所や製鋼所でレードル(取鍋)を運ぶ、天井クレーンの一種である。電気炉や転炉で作られた溶鋼は、レードルに入れられ、このレードルをレードルクレーンで吊下げてタンディッシュまで運搬し、レードルクレーンを使って内部の溶鋼をタンディッシュに移し替える。そして、タンディッシュから鋳型に注湯して鋳造される。
レードルクレーンは、汎用の天井クレーンと同様に、クレーン本体と走行モータを備えると共に、溶鋼を入れたレードルを吊下げる主フックと、この主フックを上げ下げする主巻き装置と、レードルの下部を持ち上げてレードルを傾斜させる補フックと、この補フックを上げ下げする補巻き装置を備えている。
【0003】
従来のレードルクレーンを含む天井クレーンは、走行モータや主巻き装置、補巻き装置等の各モータと、これらモータの出力を制御するモータ制御部と、モータ制御部が内部に配置された電気室とが設けられ、電気室がクレーン本体に着脱可能に配置されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
天井クレーンは、建屋の柱に設置されたレール上を走行するが、このレールは1本物ではなく、10m位のものも複数本接続して長くしたものである。そして、隣接するレールとレールの間は、溶接して接続するが、均一なグラインダー仕上げが出来ていなかったり、クレーン車輪の走行によって磨滅していると、その部分を車輪が通過する度に車輪とレール端が衝突して、激しい振動を生じさせる。また、レールとレールの間を溶接していない場合もあり、そのような設備ではレール間の乗り移り時に、当然により激しい振動を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−56484号公報(第4−10頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の天井クレーンは、モータ制御部が内部に配置された電気室がクレーン本体に設置されているため、クレーン本体に発生する振動が電気室の取付けや、内部のモータ制御部における部材の取付け等に影響を及ぼし、モータ制御部を含む電気室(以下、電動機制御装置という)の信頼性を損ねるという問題があった。また、特許文献1には、電動機制御装置を保護するための振動対策は一切記載されておらず、前述のクレーン本体の振動に対して考慮されていないという問題があった。
しかるに、高圧マトリクスコンバータを電動機制御装置に用いた場合は、碍子等を多く必要とするので、これらの部品を振動から守ることが重要となる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、クレーン本体に配置する電動機制御装置をクレーン本体の振動から保護できるレードルクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の天井クレーンは、ガーダと、前記ガーダに搭載された主巻き装置と、前記主巻き装置にワイヤを介して吊下げられており、前記主巻き装置による前記ワイヤの巻き上げ巻き下げによって昇降可能とされた主フックを有する天井クレーンにおいて、前記主巻き装置の電動機による前記ワイヤの巻き上げ巻き下げの速度制御をする電動機制御装置を備えており、該電動機制御装置は、高圧マトリクスコンバータにより速度制御が行われるものであり、前記電動機制御装置は、全方位振動減衰型の防振ゴムを介して前記ガーダに取付けられており、前記防振ゴムは、前記電動機制御装置の底部とガーダの間に直接介装されていることを特徴とする。
第2発明の天井クレーンは、第1発明において、前記防振ゴムは、上取付板と下取付板との間にラバースプリングを介装させたものであり、該ラバースプリングは、垂直方向の縦振動と水平面内の横振動を吸収する機能を有し、かつ4本以上のラバースプリングが配置されていることを特徴とする。
第3発明の天井クレーンは、第1発明において、前記電動機制御装置は、内蔵する多巻線変圧器の固定構造を有しており、該固定構造は、前記多巻線変圧器の上部を前記電動機制御装置の筐体枠に取付けられた固定用桟に固定するものであることを特徴とする。
第4発明の天井クレーンは、第1発明において、前記電動機制御装置は、内蔵する複数のセルの固定構造を有しており、該固定構造は、前記各セルの底部における前方と後方に取付けた車輪を収容する桟を有しており、該桟には前方の車輪を落とし込む凹所と後方の車輪に嵌合して車輪の上面および後面が当接する固定座と、前記各セルの出力をスター結線するケーブルのうち中性点を形成する二本のケーブルを固定するクランプとを有していることを特徴とする。
第5発明の天井クレーンは、第1発明において、前記電動機制御装置は、内蔵する制御部の固定構造を有しており、該固定構造は、入力及び出力電圧を分圧する抵抗の本体を縛着する支えと、制御回路用のDC電源装置に取付けられ、該DC電源装置を取付け板に固定する固定座とを備えており、該固定座は、上下方向の振動を抑制する第1の固定座と左右方向の振動を抑制する第2の固定座が結合したものであることを特徴とする。
第6発明の天井クレーンは、第1発明において、前記電動機制御装置は、プリント配線基板と該プリント配線基板に脚部が取付けられたコンデンサ、半導体素子および抵抗を備えており、前記脚部はそれぞれ樹脂で前記プリント配線基板に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、レードルクレーンの走行時の振動がガーダを介して伝達される前に防振ゴムによって、減衰されるので、電動機制御装置に伝えられる振動は少なくなり、内部の高圧マトリクスコンバータを保護することができる。また、防振ゴムがガーダと電動機制御装置との間の最短距離の部位で振動を減衰することになる。このため、取付腕によって防振ゴムを介在させた場合のように、取付腕自体の共振等の不具合が発生する余地がなく、振動減衰効率が高くなる。
第2発明によれば、ラバースプリングが縦振動も横振動も吸収することに加え、4本のラバースプリングが互いに隣接するラバースプリングの曲げに抵抗として作用するので、電動機制御装置に伝わる振動を全方位で吸収すると共に振動を早く抑制することができる。
第3発明によれば、電動機制御装置の内部においても高圧マトリクスコンバータの多巻線変圧器の上部が固定されているので、耐振性が高くなっており、防振ゴムの共振点付近でも、その振動の影響を受けないようにすることができる。
第4発明によれば、電動機制御装置の内部において、セルの車輪を凹と固定座で拘束したことでセルの振動を防止することができ、かつケーブルの振動もクランプで抑制できるもので、耐振性が高くなっており、防振ゴムの共振点付近でも、その振動の影響を受けないようにすることができる。
第5発明によれば、制御部の内部にあるDC電源装置を2個の固定座で上下振動にも左右振動にも耐えるように拘束したので、耐振性をさらに強めることができ、防振ゴムの共振点付近でも、その振動の影響を受けないようにすることができる。
第6発明によれば、プリント配線基板に取付けられたコンデンサや半導体素子、抵抗の脚部は樹脂により固定されているので、振動を受けても破損しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る天井クレーンにおける電動機制御装置の正面図である。
【図2】図1の電動機制御装置の底面図である。
【図3】本発明に係る防振ゴムの一例の説明図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図4】図1の電動機制御装置の内部を示す正面図である。
【図5】本実施形態に係る高圧マトリクスコンバータトランス盤における変圧器の固定構造の説明図である。
【図6】本実施形態に係る高圧マトリクスコンバータにおける制御回路用DC電源装置の固定構造の説明図であって(a)は制御回路部品の取付け全体図、(b)はDC電源装置への固定座の取付構造の説明図である。
【図7】本実施形態に係る高圧マトリクスコンバータトランス盤における入出力電圧検出用抵抗の固定構造の説明図である。
【図8】本実施形態に係る高圧マトリクスコンバータセルにおける車輪の固定構造の説明図であって、(a)はセル盤へのセルの搬入方向を示す図、(b)はセル盤にセルが搬入固定された状態の概略図、(c)はセルの車輪の固定座による固定状況を示す部分図である。
【図9】本実施形態に係る高圧マトリクスコンバータセル盤における中性点用ケーブルの固定構造の説明図である。
【図10】本発明が適用される天井クレーンの正面図である。
【図11】本発明が適用される天井クレーンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明は各種の天井クレーンに適用されるが、その一種であるレードルクレーンを例にとって以下の実施形態を説明する。
【0012】
図10および図11に示すように、レードルクレーンAは、ガーダ1と車輪2とを備えており、建屋の柱に設置されたレールR上を走行するようになっている。
ガーダ1上には、走行用の駆動装置のほか、主フック3を巻き上げ下げする主巻き装置4が主トロリー5上に搭載されている。主巻き装置4は2台の主電動機6と2台の主ドラム7とからなり、主ドラム7と主フック3との間には、ワイヤロープが掛けまわされている。このため、主電動機6を正逆転させることで、主フック3を昇降することができる。
【0013】
また、ガーダ1上には、補フック13を巻き上げ下げする補巻き装置14が補トロリー15上に搭載されている。補巻き装置は補電動機16と補ドラム17とからなり、補ドラム17と補フック13との間にはワイヤロープが掛けまわされている。
【0014】
電動機制御装置20は、前記主電動機6の回転速度を制御するものであり、ガーダ1上に設置されている。
この電動機制御装置20は、高圧マトリクスコンバータを用いたものである。高圧マトリクスコンバータは、3000V以上の交流電源の交流電圧を直接3000V以上の交流電圧に変換する装置で、インバータのような直流電圧部分の電解コンデンサを持たずこの部分の保守が不要で、また変換ロスが少なく高効率という特徴を有する電動機用の速度制御装置である。
【0015】
図1は図11に示す本発明の一実施形態に係る電動機制御装置20を示している。
同図に示すように、電動機制御装置20は、例えばトランス盤21とセル盤22とから構成されている。トランス盤21の内部には二次側に複数巻線を有する多巻線変圧器が設置される。セル盤22の内部には、R相とS相とT相を構成するセルが、各相につき、複数台取付けられ、各セルはFRP等の絶縁材で形成した桟に取付けられる。
【0016】
前記電動機制御装置20は、主巻き装置4を構成する2台の主電動機6に対応して2組が設けられており、2組の電動機制御装置20が取付台30に設置されている。
【0017】
取付台30は、下部フレーム31と上部フレーム32と、それらを結合する側枠33とからなる立方体構造物である。
下部フレーム31は、レードルクレーンAのガーダ1上にボルト等で固定される部材である。
図1に示すように、トランス盤21とセル盤22は、それぞれの底部の下に防振ゴム40を介装して下部フレーム31に取付けられている。
【0018】
図2は図1の取付台30における下部フレーム31の右側または左側の半分を示している。
図において下部フレーム31は、トランス盤21設置用のフレーム部34とセル盤22設置用のフレーム部35からなり、各フレーム部34,35とも、長方形の外枠材とその内部で渡し掛けられた内部材とから、各盤の取付けに好適なように構成されている。
【0019】
そして、各フレーム部34,35とも四隅に防振ゴム40が設置されている。そして、各防振ゴム40には、トランス盤21の四隅が取付けられ、またセル盤22の四隅が取付けられるようになっている。
【0020】
上記のように、本実施形態の防振構造は、電動機制御装置20全体を一体として防振措置を施したものである。
このように、電動機制御装置20全体に伝わる振動を減衰するので、内部の高圧マトリクスコンバータを振動から保護できる。
また、防振ゴム40がガーダ1と電動機制御装置20との間の最短距離の部位で振動を減衰することになる。このため、取付腕によって防振ゴムを介在させた場合のように、取付腕自体の共振等の不具合が発生する余地がなく、振動減衰効率が高くなる。
【0021】
図3は防振ゴムの一例の説明図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
図において、防振ゴム40は、上取付板41と下取付板42との間にラバースプリング43を介装させたものである。ラバースプリング43は、それ自体が垂直方向に伸縮して縦振動を吸収する機能と、水平面内全方向に揺れ動いて横振動を吸収する全方位の減衰機能を有するものである。そして、図示の例ではラバースプリング43を4個用い四角形の各頂点となる位置に配置している。なお、ラバースプリング43は、四角形の頂点以外の場所に設置してもよく、また4本以上を設置してもよい。
【0022】
上記防振ゴム40において、上取付板41と下取付板42との間は、ボルト44で連結されているが、この連結は緩いもので、上取付板41と下取付板42との間の相対変位を許容できるようになっている。
上取付板41に設けた孔45は、上取付板41とトランス盤21やセル盤22を結合するボルト等を通す孔である。下取付板42に設けた孔46は、下取付板42をコンバータ取付台30の下部フレーム31に取付けるボルト等を通す孔である。
【0023】
図1に示すように、トランス盤21やセル盤22の底部を防振ゴム40を介して下部フレーム31に取付けておくと、防振ゴム40のラバースプリング43が縦振動も横振動も吸収するので、電動機制御装置20に伝わる振動を全方位で吸収することができる。
【0024】
また、上記防振ゴム40は、1本1本のラバースプリング43自体が横振動を吸収するものであるが、これに加えて、隣接する4本のラバースプリング43が互いに横振動を抑制するよう作用する。すなわち、4本のうちの1本のラバースプリング43に生ずる曲げに対しこれに隣接するラバースプリング43が抵抗となって曲げを抑制する働きをするので、早期に振動を収束させる。そして、四角形の各頂点となる位置への配置は、すべての方向の横振動に抵抗を発生させるので、全方位の横振動の吸収効果が高くなるものである。
【0025】
本実施形態の防振ゴム40は、全方位(XYZ方向)で10Hz以上の有効な減衰特性のある防振ゴムであり、高圧マトリクスコンバータ内部の電気機器(トランス、セル、コントロール基板等)に大きな振動を受けないようにすることができる。
また、防振ゴム40のラバースプリング43の選定に当たってはクレーンの固有振動数と防振ゴム40の共振周波数が一致しないように振動帯域を外して選定しているので、レードルクレーンの振動によって共振することはない。
【0026】
次に、電動機制御装置20の内部の防振構造を説明する。本実施形態では、前述した防振ゴム40による振動減衰対策に加え、トランス盤21とセル盤22の内部に各種固定用部材を追加することで、防振ゴム自体の共振点でもその振動の影響を受けないようにすることができる。
【0027】
図4に図1示したトランス盤21とセル盤22の内部を示す。
トランス盤21は直方体の枠組みである筐体枠24を有しており、セル盤22も直方体の枠組みである筐体枠27を有している。そして、2つの筐体枠24,27は互いに結合されている。
【0028】
図5は本実施形態に係る高圧マトリクスコンバータトランス盤における変圧器の固定構造の説明図である。
同図に示すように、トランス盤21内に設置される多巻線変圧器50は、その底部が従来と同様に、筐体枠24の底板24a上に固定された固定座51にボルト等で取付けられている。これに加え、多巻線変圧器50の上方空間において固定用桟52を渡し掛け、その両端を筐体枠24の側枠24b,24b間に固定している。そして、多巻線変圧器50の上端部は、固定用桟52にボルト等で取付けることにより固定するようにしている。このように、多巻線変圧器50の上下両端部を固定することで、垂直方向のみならず水平方向の振動が加わっても、多巻線変圧器50が上下にも前後左右にも動かないようにされている。そして、防振ゴム40の共振点付近でも、その振動の影響を受けないようにすることができる。
【0029】
図4に示すトランス盤21の上部空間、すなわち前記多巻線変圧器50の上方空間には、制御部25が取付けられており、この制御部25にはDC電源装置54が取付けられている。
図6は本実施形態に係る高圧マトリクスコンバータにおける制御回路用DC電源装置の固定構造の説明図である。
図6に示すように、取付け板53は、各種制御器を取り付ける部材であり、その上に固定される制御回路用のDC電源装置54は、従来と同様に底面を取付け板53に接合させ、水平方向前方に張り出して取付けられている。このDC電源装置54は高さ方向の寸法(前面への突出量)が一番大きいので、従来の取付け構造のみでは垂直、左右方向の振動による影響を受けやすい。そこで本実施形態ではDC電源装置の下方側面に第1の固定座55を取付けて、上下方向の振動による影響を抑制すると共に、左右方向の振動による影響も抑制するため、上面がDC電源装置54の底面と接する第2の固定座56を追加している。この第2の固定座56は、互いに直交する2枚の側面板56a,56bを天板56cで結合した剛性の高い部材であって、この第2の固定座56の二つの側面板56a,56bをそれぞれ第1の固定座55と取付け板53に接合して固定し、かつ天板56cにDC電源装置54を載せて保持している。
このような取付け構造とすることにより、上下方向のみならず左右方向の振動が加わってもDC電源装置54を前後左右に動かないように拘束することができる。そして、防振ゴム40の共振点付近でも、その振動の影響を受けないようにすることができる。
【0030】
図7は本実施形態に係る高圧マトリクスコンバータトランス盤における入出力電圧検出用抵抗の固定構造の説明図である。
同図に示す抵抗57は、トランス盤21に装備され入出力の電圧を検出するために、入出力の電圧を分圧し、制御回路に入力可能な低電圧に変換するために設けられている。従来はこの抵抗57は取付けベース58上に装備された碍子59aと端子台59bに二本の足を各々接続することで抵抗本体が宙に浮いた状態で固定されていた。本実施形態では、これに加え、支え60を取付けベース58上に取付けて、この支え60に抵抗57の本体をインシュロックで固定している。このため、振動により抵抗57の足が折損することを回避することができる。そして、防振ゴム40の共振点付近でも、その振動の影響を受けないようにすることができる。
【0031】
図4に示すセル盤22では、複数個のセル61、図示の実施形態では9個のセル61が装備されている。
図8は本実施形態に係る高圧マトリクスコンバータセルにおける車輪の固定構造の説明図である。
同図に示すように、セル61は底部において前側の車輪62と奥側の車輪63を有している。一方、図4に示すセル盤22の筐体枠27の9個の収容室内には図8(A)に示す桟64がそれぞれ設置されている。この桟64の前方には前記車輪62を落し込む凹所66を形成しており、奥側には固定座65を設けている。この固定座65は、同図(C)に示すように、後方の車輪63の後面に当接する基部65aと、その基部65aの上方から前方に突出し車輪63の上面に当接する突出部65bを有している。
したがって、同図(A)の矢印の方向にセル61を桟64に挿入すると、同図(B)に示すように前方の車輪63は凹所66に落し込まれ、後方の車輪63は固定座65に嵌合して、前後にも動かず上下にも動かないように拘束される。よって、前後方向の振動に垂直方向の振動にも影響を受けないで、セル61をしっかりと保持することができる。そして、防振ゴム40の共振点付近でも、その振動の影響を受けないようにすることができる。
【0032】
図9は本実施形態に係る高圧マトリクスコンバータセル盤における中性点用ケーブルの固定構造の説明図である。
図に示すように、R相とS相とT相を構成する各セル61は、それぞれ上段、中段、下段の三段に配置され、各段で隣接するセル61の出力端子をケーブル71で接続することで各相の出力回路を構成し、さらに各段の左端または右端の3個のセル61の出力端子を2本のケーブルで接続することで中性点回路を構成し、全体としてスター結線の三相出力回路を構成している。この中性点回路の2本のケーブル71は、曲げ加工によりコの字形状となっており、その固定は両端のアンプをセル61の出力端子に接続することにより行っている。
【0033】
本実施形態では更に、セル盤の筐体27にクランプ72を取付け、このクランプ72で各ケーブル71を固定することで振動を受けにくい構造としている。そして、防振ゴム40の共振点付近でも、その振動の影響を受けないようにすることができる。
【0034】
また、トランス盤21に装備された図示しない制御部及びセル盤22の各セル61に装備された制御部のプリント配線基板に取付けられた半導体素子や抵抗、コンデンサなどのディスクリート部品の脚部は、それぞれ樹脂により固定され、振動を受けても破損しにくくされている。
【0035】
また本発明の上記実施形態に係る防振構造につき、溶銑用レードルクレーンで振動測定を行って、その効果を確認した。
(1)加速度減衰試験
図4に示す電動機制御装置20を実施例1とし、これに加速度センサ(圧電式加速度ピックアップ(3方向)加速度センサ)を取付けた。取付箇所は以下の6箇所である。
a1)防振ゴム40の下
a2)防振ゴム40の上
b)トランスフレーム上部中央
c)セル固定ビーム
d)セル本体下部
e)フレーム枠の上部
実験は、実用3年間に相当する負荷を与えた。
防振構造を採用していないクレーン実機でこの加振試験を行うと、振動により電動機制御装置が破壊されてしまう可能性があるが、上記実施形態に係る防振構造を採用した電動機制御装置では、上記(a1)〜(e)の箇所について振動を許容値内に抑えることができることを確認できた。
(2)防振ゴム自体の減衰効果
防振ゴムの効果を確認するため、防振ゴム40の下(a1)と上(a2)との2箇所について加速度データを比較し評価した。
加速度データを比較したところ、防振ゴム40上(a2)が下(a1)に比べ大幅に加速度が減少していることが確認された。
(3)まとめ
・実施例1の測定結果は、電動機制御装置20内で制御機器の許容値以内となった。これは、電動機制御装置(高圧マトリクスコンバータ)の耐久性に問題のないことを意味する。
・制御機器に影響がある加速度について、防振ゴムの効果が確認できた。
【0036】
以上のとおり、本発明の防振構造は効果が高く振動からの保護がとくに強く要求される高圧マトリクスコンバータの信頼性確保に有益なものである。
【符号の説明】
【0037】
1 ガーダ
2 車輪
3 主フック
4 主巻き装置
5 主トロリー
6 主電動機
7 主ドラム
13 補フック
14 補巻き装置
17 補ドラム
20 電動機制御装置
21 トランス盤
22 セル盤
30 取付台
31 下部フレーム
32 上部フレーム
34 トランス盤設置用のフレーム部
35 セル盤設置用のフレーム部
40 防振ゴム
41 上取付板
42 下取付板
43 ラバースプリング
50 多巻線変圧器
51 固定座
52 固定用桟
53 取付け板
54 DC電源装置
55 第1の固定座
56 第2の固定座
57 抵抗
60 支え
61 セル
62 車輪
63 車輪
64 桟
65 固定座
66 凹所
72 クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーダと、前記ガーダに搭載された主巻き装置と、前記主巻き装置にワイヤを介して吊下げられており、前記主巻き装置による前記ワイヤの巻き上げ巻き下げによって昇降可能とされた主フックを有する天井クレーンにおいて、
前記主巻き装置の電動機による前記ワイヤの巻き上げ巻き下げの速度制御をする電動機制御装置を備えており、
該電動機制御装置は、高圧マトリクスコンバータにより速度制御が行われるものであり、
前記電動機制御装置は、全方位振動減衰型の防振ゴムを介して前記ガーダに取付けられており、
前記防振ゴムは、前記電動機制御装置の底部とガーダの間に直接介装されている
ことを特徴とする天井クレーン。
【請求項2】
前記防振ゴムは、上取付板と下取付板との間にラバースプリングを介装させたものであり、該ラバースプリングは、垂直方向の縦振動と水平面内の横振動を吸収する機能を有し、かつ4本以上のラバースプリングが配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の天井クレーン。
【請求項3】
前記電動機制御装置は、内蔵する多巻線変圧器の固定構造を有しており、
該固定構造は、前記多巻線変圧器の上部を前記電動機制御装置の筐体枠に取付けられた固定用桟に固定するものである
ことを特徴とする請求項1記載の天井クレーン。
【請求項4】
前記電動機制御装置は、内蔵する複数のセルの固定構造を有しており、
該固定構造は、前記各セルの底部における前方と後方に取付けた車輪を収容する桟を有しており、該桟には前方の車輪を落とし込む凹所と後方の車輪に嵌合して車輪の上面および後面が当接する固定座と、
前記各セルの出力をスター結線するケーブルのうち中性点を形成する二本のケーブルを固定するクランプとを有している
ことを特徴とする請求項1記載の天井クレーン。
【請求項5】
前記電動機制御装置は、内蔵する制御部の固定構造を有しており、
該固定構造は、入力及び出力電圧を分圧する抵抗の本体を縛着する支えと、制御回路用のDC電源装置に取付けられ、該DC電源装置を取付け板に固定する固定座とを備えており、
該固定座は、上下方向の振動を抑制する第1の固定座と左右方向の振動を抑制する第2の固定座が結合したものである
ことを特徴とする請求項1記載の天井クレーン。
【請求項6】
前記電動機制御装置は、プリント配線基板と該プリント配線基板に脚部が取付けられたコンデンサ、半導体素子および抵抗を備えており、前記脚部はそれぞれ樹脂で前記プリント配線基板に固定されている
ことを特徴とする請求項1記載の天井クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−225374(P2011−225374A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71304(P2011−71304)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(503002732)住友重機械エンジニアリングサービス株式会社 (25)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】