天井埋込型空気調和機
【課題】室内ユニットに排煙機能の後付けや、排煙装置を新しい物と取り替えることが容易であるとともに、火災時に発生する煙その他の有毒ガスや微燃性冷媒の漏洩時の冷媒を屋外へ排出することができる天井埋込型空気調和機を提供する。
【解決手段】室内ユニット本体に未使用のオプションパーツ取付穴が設けられている天井埋込型空気調和機において、オプションパーツ取付穴に開閉機構を備えた排気装置(排気ダクト20)を取り付け、非常時、室内ユニット本体は、排気ダクト20の開閉機構を開放するとともに、パネル部の吹出口を閉じ、室内ユニット本体の送風機7を回転駆動して吸込み口から吸い込まれた室内空気を排気ダクト20を通じて屋外へ排出する。
【解決手段】室内ユニット本体に未使用のオプションパーツ取付穴が設けられている天井埋込型空気調和機において、オプションパーツ取付穴に開閉機構を備えた排気装置(排気ダクト20)を取り付け、非常時、室内ユニット本体は、排気ダクト20の開閉機構を開放するとともに、パネル部の吹出口を閉じ、室内ユニット本体の送風機7を回転駆動して吸込み口から吸い込まれた室内空気を排気ダクト20を通じて屋外へ排出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時に発生する煙その他の有毒ガスや微燃性冷媒の漏洩時にこれらを屋外へ排出する機能を有する手段を備える天井埋込型空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで空気調和機に用いられてきたR410Aなどの不燃性冷媒に代わり、R32、HC冷媒、R290などの微燃性冷媒へ将来的に変更となる可能性がある。これまでに、火災時に排煙機能を持たせた空気調和機は提案されているが、微燃性冷媒を排出する機能を備えた空気調和機は存在しない(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−229440号公報
【特許文献2】実用新案登録第3093665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示された空気調和機の排煙を可能にする手段は、本体そのもので構成されているため、排煙機能の後付や、据付から年月が経っても取替えが困難である。また、漏洩した微燃性冷媒を排出する機能は備わっていない。
【0005】
上記特許文献2に示された空気調和機も上記特許文献1に示された空気調和機と同様に最初から煙感知センサーや室内ユニット本体に排煙用の開閉機構を備えた特殊な構造の室内ユニットである。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、火災時に発生する煙その他の有毒ガスや微燃性冷媒の漏洩時の冷媒を屋外へ排出することができる天井埋込型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る天井埋込型空気調和機は、室内ユニット本体にオプションパーツ取付穴が設けられている天井埋込型空気調和機において、オプションパーツ取付穴に開閉機構を備えた排気装置を取り付け、非常時、室内ユニット本体は、排気装置の開閉機構を開放するとともに、室内ユニット本体の吹出口を閉じ、室内ユニット本体の送風機を回転駆動して吸込み口から吸い込まれた室内空気を排気装置を通じて屋外へ排出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、標準の室内ユニットに設けられている普段は使われていないオプションパーツ取付穴を利用して排気装置を追加できるため、据付けから年月の経った空気調和機にも排気機能を追加することが可能である。また、排気装置の据付けから年月が経っても、取り替えが容易であることから、非常時に経年劣化により作動しないというようなリスクを軽減できる。また、微燃性冷媒の漏洩時に漏洩冷媒を排出できることにより、冷媒へ引火して火災が発生することを未然に防ぐことや、火災時に発生する煙その他の有毒ガスを屋外へ排出することで、人が避難する時間を稼ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態における天井埋込型空気調和機の斜視図で、天井面に据付けられている4方向カセット形空気調和機を室内から見た斜視図である。
【図2】4方向カセット形空気調和機の斜視図である。
【図3】(a)は図2の断面斜視図、(b)はパネル部を除いた本体部分の断面斜視図である。
【図4】通常運転時の空気の流れを示す室内ユニットの断面斜視図である。
【図5】オプションパーツ取付穴を開口したときの室内ユニットの断面斜視図である。
【図6】分配ダクトを取り付けたときの室内ユニットの断面斜視図である。
【図7】実施の形態における排気ダクトの斜視図である。
【図8】排気ダクトを取り付けた状態の室内ユニットの斜視図である。
【図9】図8の断面斜視図である。
【図10】非常時の空気の流れを示す室内ユニットの断面斜視図である。
【図11】排気ダクトの開閉機構の一例を示す斜視図である。
【図12】排気用送風機を設けた排気ダクトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る天井埋込型空気調和機の一実施の形態について図1〜図12に基づいて説明する。なお、この実施の形態では、天井埋込型空気調和機の一例として4方向カセット形空気調和機について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態における天井埋込型空気調和機の斜視図で、天井面に据付けられた4方向カセット形空気調和機を室内側から見た図である。図2は、4方向カセット形空気調和機の斜視図である。
この4方向カセット形空気調和機の室内ユニット10は、図2に示すように、化粧パネルと呼ばれるパネル部1と室内ユニット本体2とから構成されている。パネル部1は室内の天井面100に取り付けられ、室内ユニット本体2はその天井面100の開口部を通して裏側の空間内に設置されている。
【0012】
パネル部1は、図1および図2に示すように、中央部に室内空気の吸込み口3を有し、四方に空気調和された空調空気を吹き出す吹出口4を有し、吹出口4はそれぞれ風向調整用のベーン5を備えている。また、室内温度を検知する輻射温度センサー6がパネル部1に設けられ、天井側から床面に向かって赤外線センサーで温度変化をみる役割を果たしている。
【0013】
図3(a)は図2の断面斜視図であり、図3(b)はパネル部を除いた本体部分の断面斜視図である。
図3に示すように、室内ユニット本体2は、内部に送風機7と熱交換器8を備えている。室内ユニット10は、マイコンからなる制御装置(図示せず)を内蔵しており、該制御装置により送風機7を回転駆動することにより吸込み口3から室内空気を吸い込み、この吸い込まれた室内空気を熱交換器8に通すことで熱交換器8を流れる冷媒と熱交換され、この熱交換により空気調和された空調空気が吹出口4から室内に送風されるようになっている。吹出口4に設けられたベーン5は、空調空気の風向調整に用いられ、運転されていない時には吹出口4を塞ぐ役割を持っている。また、室内ユニット本体2は、ドラムと呼ばれる板金製の外殻2aと、熱交換された空気と機外とを断熱する断熱材の役割を持つインナーカバー2bとで内部が覆われている。
【0014】
ここで、室内ユニット本体2の側面には、図2に示すように、オプションパーツの取付穴となるノックアウト穴11が設けられている。
本発明は、このオプションパーツ取付穴を利用して、火災時に発生する煙その他の有害ガスまたは微燃性冷媒が漏れた際の微燃性冷媒を屋外へ排出するように構成したことに特徴を有するものである。
【0015】
本発明の構成を説明する前に、図4にて室内ユニット10における通常運転時の空気の流れを説明する。
オプションパーツが使用されていない室内ユニット10においては、通常の空調運転時には、ノックアウト穴11は塞がれているので、空気の流れは、(A)送風機7が回転することにより吸込み口3から室内空気を吸い込み、(B)熱交換器8にて暖められた、又は冷やされた空気は、(C)吹出口4から室内へと送られるという流れになる。
【0016】
オプションパーツが使用される場合は次のようになる。
図5はノックアウト穴11を開け、オプションパーツ取付穴12を開口したときの室内ユニット10の断面斜視図、図6は分配ダクトを取り付けたときの室内ユニットの断面斜視図である。
オプションパーツとして分ダクトフランジと呼ばれる分配ダクト13を用いる場合は、図4、図5に示すように本体側面に設けられているノックアウト穴11を開け、その穴に合うようにインナーカバー2bにも穴を開ける。そして、開口されたオプションパーツ取付穴12に図6に示すように分配ダクト13を取り付けることにより、この分配ダクト13および配管(図示せず)を通して、熱交換された空調空気(D’)を他の部屋にも分配して送ることができる。
【0017】
本発明では、上記のようなオプションパーツが用いられていない場合に、使用されない分配ダクト取付用のノックアウト穴11を利用する。すなわち、上記のように開口した未使用のオプションパーツ取付穴12に、開閉機構を備えた排気装置を取り付けて室内ユニット10に煙等の排気機能を持たせるものである。
ここでは、排気装置の一例として上記の分配ダクト13と同じような構成の排気ダクト20をオプションパーツ取付穴12に取り付ける例を示す。
【0018】
図7は排気ダクト20の斜視図、図8は排気ダクト20を取り付けた状態の室内ユニット10の斜視図である。
排気ダクト20は、図7に示すように、円筒状の形状をしており、円筒状の部分に溶接などによりL字状の取付脚22を取り付け、取付脚22をネジ21により図8のように室内ユニット本体2の側面にネジ締めして固定する。なお、排気ダクト20には不燃材を用いることが望ましい。また、排気ダクト20には屋外へ排気する配管(図示せず)が接続されている。
【0019】
図9は図8の断面斜視図を示しており、排気ダクト20が室内ユニット本体2の側面に取り付けられた状態では、排気ダクト20の開閉機構は閉じた状態となっている。
【0020】
図10は非常時の空気の流れを示す室内ユニット10の断面斜視図である。ここで、非常時というのは、火災時又は微燃性冷媒の漏洩時をいうものとする。火災時には、先に述べたように煙その他の有毒ガスが発生する。また、微燃性冷媒の漏洩時には室内ユニット10の機能低下、故障等を引き起こす。さらにこの時、火災が発生すると漏洩した微燃性冷媒に引火して火災が発生し有毒ガスが発生することがあるため、さらに深刻な事態となるおそれがある。
【0021】
そこで、室内ユニット10は、熱交換器8や配管接続部付近に微燃性冷媒の漏れを検知する冷媒漏れセンサー(図示せず)およびパネル部1に室内の温度変化を検知する輻射温度センサー6を備えている。室内ユニット本体2内に設けられた制御装置(図示せず)が冷媒漏れセンサー(図示せず)および輻射温度センサー6からの信号によって以下に示す制御を行っている。
すなわち、冷媒漏れセンサーが微燃性冷媒の漏れを検知したとき、又は輻射温度センサー6が室内温度の異常な(あるいは急激な)温度上昇を検知したとき、冷媒漏れセンサー又は輻射温度センサー6の検知信号により、排気ダクト20の開閉機構が開くとともに、吹出口4のベーン5が閉じ、送風機7が回転する。したがって、非常時における空気の流れは、図10に示すように、まず、(A)送風機7により室内空気と共に漏洩冷媒又は煙を吸込み、(B)熱交換器8を通って、(D)排気ダクト20へと流れ、排気ダクト20および配管(図示せず)を通じて漏洩冷媒又は煙は屋外へ排出される。
【0022】
なお、輻射温度センサー6が検知した室内温度の異常な(急激な)温度上昇というのは、温度の上昇速度が所定値を超えるか、あるいは、所定時間内の上昇温度が所定の上限温度に達したときをいう。また、冷媒漏れセンサー又は輻射温度センサー6の検知信号により警報を発するようにしてもよい。冷媒漏れセンサーには圧力センサーやガス感知センサー等が用いられる。
【0023】
上記のように屋外への排出機能を備えるためには、空気の流れる穴を室内ユニット本体2の側面に設けなければならないが、常に穴の開いた状態では、そこから空気が漏れてしまうため、通常時に空調機としての役割を果たすことができない。そこで、標準ユニットにオプションパーツを取り付けるノックアウト穴11を流用し、排出機能を追加する場合には、そのノックアウト穴11を開け、その穴に排気ダクト20を取り付けるとともに、排気ダクト20に備えた開閉機構により、非常時以外の場合は穴を塞いでおくものである。
【0024】
以上のように、空気調和機本体側に排気用の開閉機構を設けるのではなく、未使用のオプションパーツ取付穴12を利用して開閉機構を備えた排気ダクト20を取り付けることで、排気装置の後付けや付け替えがきわめて容易である。また、ユニット据付時から年月が経過した場合などには、排気ダクト20のみを付け替えることにより、非常時に経年劣化などにより開閉機構が機能しないといったリスクを軽減させることが可能となる。
【0025】
排出ダクト20の取付構造は、図7、図8に示すように、室内ユニット本体側面へのネジ止めであり、廃却時の分別も容易である。また、排気ダクト20のみの付け替えも非常に容易である。
【0026】
また、既存のオプションパーツの取付構造を流用することにより、室内ユニット本体側の改良などによる開発費や新規部品の追加などが無いため、コスト削減となり、余分な物は作らないという点で環境にも優しい。
【0027】
さらに、火災を感知するセンサーには、煙センサーではなく、空調の機能を満足するのに用いられている輻射温度センサーを流用し、屋内の異常な(急激な)温度上昇を感知するようにすることで、新たな検知センサーの設置を削減可能である。
【0028】
排気ダクト20は、分ダクトフランジとして取付実績のある構造と同一にすることで、据付時やサービス時において、設置作業者への負担を軽減できる。
【0029】
排気ダクト20の作動条件に、室内ユニットの熱交換器や配管接続部付近に備えられた冷媒漏れを感知するセンサーの反応を加えることにより、微燃性冷媒が漏れた場合にも、それを屋外へ排出することが可能である。
【0030】
排気ダクト20の開閉機構は、例えば図11に示すように、扇のように開かれた蓋の部分が、非常時を感知した室内ユニット基板から排気ダクト20に備えられたモーターなどの駆動装置に指令を出し、折りたたませるような簡素な構造で良い。
【0031】
また、図12に示すように、排気ダクト20に排気用送風機23を内蔵し、非常時には排気用送風機23を回転させて室内空気を屋外へ向かって流すことにより、排気効率を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 パネル部、2 室内ユニット本体、2a 外殻、2b インナーカバー、3 吸込み口、4 吹出口、5 ベーン、6 輻射温度センサー、7 送風機、8 熱交換器、10 室内ユニット、11 ノックアウト穴、12 オプションパーツ取付穴、13 分配ダクト、20 排気ダクト、21 ネジ、22 取付脚、23 排気用送風機、100 天井面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時に発生する煙その他の有毒ガスや微燃性冷媒の漏洩時にこれらを屋外へ排出する機能を有する手段を備える天井埋込型空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで空気調和機に用いられてきたR410Aなどの不燃性冷媒に代わり、R32、HC冷媒、R290などの微燃性冷媒へ将来的に変更となる可能性がある。これまでに、火災時に排煙機能を持たせた空気調和機は提案されているが、微燃性冷媒を排出する機能を備えた空気調和機は存在しない(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−229440号公報
【特許文献2】実用新案登録第3093665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示された空気調和機の排煙を可能にする手段は、本体そのもので構成されているため、排煙機能の後付や、据付から年月が経っても取替えが困難である。また、漏洩した微燃性冷媒を排出する機能は備わっていない。
【0005】
上記特許文献2に示された空気調和機も上記特許文献1に示された空気調和機と同様に最初から煙感知センサーや室内ユニット本体に排煙用の開閉機構を備えた特殊な構造の室内ユニットである。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、火災時に発生する煙その他の有毒ガスや微燃性冷媒の漏洩時の冷媒を屋外へ排出することができる天井埋込型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る天井埋込型空気調和機は、室内ユニット本体にオプションパーツ取付穴が設けられている天井埋込型空気調和機において、オプションパーツ取付穴に開閉機構を備えた排気装置を取り付け、非常時、室内ユニット本体は、排気装置の開閉機構を開放するとともに、室内ユニット本体の吹出口を閉じ、室内ユニット本体の送風機を回転駆動して吸込み口から吸い込まれた室内空気を排気装置を通じて屋外へ排出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、標準の室内ユニットに設けられている普段は使われていないオプションパーツ取付穴を利用して排気装置を追加できるため、据付けから年月の経った空気調和機にも排気機能を追加することが可能である。また、排気装置の据付けから年月が経っても、取り替えが容易であることから、非常時に経年劣化により作動しないというようなリスクを軽減できる。また、微燃性冷媒の漏洩時に漏洩冷媒を排出できることにより、冷媒へ引火して火災が発生することを未然に防ぐことや、火災時に発生する煙その他の有毒ガスを屋外へ排出することで、人が避難する時間を稼ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態における天井埋込型空気調和機の斜視図で、天井面に据付けられている4方向カセット形空気調和機を室内から見た斜視図である。
【図2】4方向カセット形空気調和機の斜視図である。
【図3】(a)は図2の断面斜視図、(b)はパネル部を除いた本体部分の断面斜視図である。
【図4】通常運転時の空気の流れを示す室内ユニットの断面斜視図である。
【図5】オプションパーツ取付穴を開口したときの室内ユニットの断面斜視図である。
【図6】分配ダクトを取り付けたときの室内ユニットの断面斜視図である。
【図7】実施の形態における排気ダクトの斜視図である。
【図8】排気ダクトを取り付けた状態の室内ユニットの斜視図である。
【図9】図8の断面斜視図である。
【図10】非常時の空気の流れを示す室内ユニットの断面斜視図である。
【図11】排気ダクトの開閉機構の一例を示す斜視図である。
【図12】排気用送風機を設けた排気ダクトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る天井埋込型空気調和機の一実施の形態について図1〜図12に基づいて説明する。なお、この実施の形態では、天井埋込型空気調和機の一例として4方向カセット形空気調和機について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態における天井埋込型空気調和機の斜視図で、天井面に据付けられた4方向カセット形空気調和機を室内側から見た図である。図2は、4方向カセット形空気調和機の斜視図である。
この4方向カセット形空気調和機の室内ユニット10は、図2に示すように、化粧パネルと呼ばれるパネル部1と室内ユニット本体2とから構成されている。パネル部1は室内の天井面100に取り付けられ、室内ユニット本体2はその天井面100の開口部を通して裏側の空間内に設置されている。
【0012】
パネル部1は、図1および図2に示すように、中央部に室内空気の吸込み口3を有し、四方に空気調和された空調空気を吹き出す吹出口4を有し、吹出口4はそれぞれ風向調整用のベーン5を備えている。また、室内温度を検知する輻射温度センサー6がパネル部1に設けられ、天井側から床面に向かって赤外線センサーで温度変化をみる役割を果たしている。
【0013】
図3(a)は図2の断面斜視図であり、図3(b)はパネル部を除いた本体部分の断面斜視図である。
図3に示すように、室内ユニット本体2は、内部に送風機7と熱交換器8を備えている。室内ユニット10は、マイコンからなる制御装置(図示せず)を内蔵しており、該制御装置により送風機7を回転駆動することにより吸込み口3から室内空気を吸い込み、この吸い込まれた室内空気を熱交換器8に通すことで熱交換器8を流れる冷媒と熱交換され、この熱交換により空気調和された空調空気が吹出口4から室内に送風されるようになっている。吹出口4に設けられたベーン5は、空調空気の風向調整に用いられ、運転されていない時には吹出口4を塞ぐ役割を持っている。また、室内ユニット本体2は、ドラムと呼ばれる板金製の外殻2aと、熱交換された空気と機外とを断熱する断熱材の役割を持つインナーカバー2bとで内部が覆われている。
【0014】
ここで、室内ユニット本体2の側面には、図2に示すように、オプションパーツの取付穴となるノックアウト穴11が設けられている。
本発明は、このオプションパーツ取付穴を利用して、火災時に発生する煙その他の有害ガスまたは微燃性冷媒が漏れた際の微燃性冷媒を屋外へ排出するように構成したことに特徴を有するものである。
【0015】
本発明の構成を説明する前に、図4にて室内ユニット10における通常運転時の空気の流れを説明する。
オプションパーツが使用されていない室内ユニット10においては、通常の空調運転時には、ノックアウト穴11は塞がれているので、空気の流れは、(A)送風機7が回転することにより吸込み口3から室内空気を吸い込み、(B)熱交換器8にて暖められた、又は冷やされた空気は、(C)吹出口4から室内へと送られるという流れになる。
【0016】
オプションパーツが使用される場合は次のようになる。
図5はノックアウト穴11を開け、オプションパーツ取付穴12を開口したときの室内ユニット10の断面斜視図、図6は分配ダクトを取り付けたときの室内ユニットの断面斜視図である。
オプションパーツとして分ダクトフランジと呼ばれる分配ダクト13を用いる場合は、図4、図5に示すように本体側面に設けられているノックアウト穴11を開け、その穴に合うようにインナーカバー2bにも穴を開ける。そして、開口されたオプションパーツ取付穴12に図6に示すように分配ダクト13を取り付けることにより、この分配ダクト13および配管(図示せず)を通して、熱交換された空調空気(D’)を他の部屋にも分配して送ることができる。
【0017】
本発明では、上記のようなオプションパーツが用いられていない場合に、使用されない分配ダクト取付用のノックアウト穴11を利用する。すなわち、上記のように開口した未使用のオプションパーツ取付穴12に、開閉機構を備えた排気装置を取り付けて室内ユニット10に煙等の排気機能を持たせるものである。
ここでは、排気装置の一例として上記の分配ダクト13と同じような構成の排気ダクト20をオプションパーツ取付穴12に取り付ける例を示す。
【0018】
図7は排気ダクト20の斜視図、図8は排気ダクト20を取り付けた状態の室内ユニット10の斜視図である。
排気ダクト20は、図7に示すように、円筒状の形状をしており、円筒状の部分に溶接などによりL字状の取付脚22を取り付け、取付脚22をネジ21により図8のように室内ユニット本体2の側面にネジ締めして固定する。なお、排気ダクト20には不燃材を用いることが望ましい。また、排気ダクト20には屋外へ排気する配管(図示せず)が接続されている。
【0019】
図9は図8の断面斜視図を示しており、排気ダクト20が室内ユニット本体2の側面に取り付けられた状態では、排気ダクト20の開閉機構は閉じた状態となっている。
【0020】
図10は非常時の空気の流れを示す室内ユニット10の断面斜視図である。ここで、非常時というのは、火災時又は微燃性冷媒の漏洩時をいうものとする。火災時には、先に述べたように煙その他の有毒ガスが発生する。また、微燃性冷媒の漏洩時には室内ユニット10の機能低下、故障等を引き起こす。さらにこの時、火災が発生すると漏洩した微燃性冷媒に引火して火災が発生し有毒ガスが発生することがあるため、さらに深刻な事態となるおそれがある。
【0021】
そこで、室内ユニット10は、熱交換器8や配管接続部付近に微燃性冷媒の漏れを検知する冷媒漏れセンサー(図示せず)およびパネル部1に室内の温度変化を検知する輻射温度センサー6を備えている。室内ユニット本体2内に設けられた制御装置(図示せず)が冷媒漏れセンサー(図示せず)および輻射温度センサー6からの信号によって以下に示す制御を行っている。
すなわち、冷媒漏れセンサーが微燃性冷媒の漏れを検知したとき、又は輻射温度センサー6が室内温度の異常な(あるいは急激な)温度上昇を検知したとき、冷媒漏れセンサー又は輻射温度センサー6の検知信号により、排気ダクト20の開閉機構が開くとともに、吹出口4のベーン5が閉じ、送風機7が回転する。したがって、非常時における空気の流れは、図10に示すように、まず、(A)送風機7により室内空気と共に漏洩冷媒又は煙を吸込み、(B)熱交換器8を通って、(D)排気ダクト20へと流れ、排気ダクト20および配管(図示せず)を通じて漏洩冷媒又は煙は屋外へ排出される。
【0022】
なお、輻射温度センサー6が検知した室内温度の異常な(急激な)温度上昇というのは、温度の上昇速度が所定値を超えるか、あるいは、所定時間内の上昇温度が所定の上限温度に達したときをいう。また、冷媒漏れセンサー又は輻射温度センサー6の検知信号により警報を発するようにしてもよい。冷媒漏れセンサーには圧力センサーやガス感知センサー等が用いられる。
【0023】
上記のように屋外への排出機能を備えるためには、空気の流れる穴を室内ユニット本体2の側面に設けなければならないが、常に穴の開いた状態では、そこから空気が漏れてしまうため、通常時に空調機としての役割を果たすことができない。そこで、標準ユニットにオプションパーツを取り付けるノックアウト穴11を流用し、排出機能を追加する場合には、そのノックアウト穴11を開け、その穴に排気ダクト20を取り付けるとともに、排気ダクト20に備えた開閉機構により、非常時以外の場合は穴を塞いでおくものである。
【0024】
以上のように、空気調和機本体側に排気用の開閉機構を設けるのではなく、未使用のオプションパーツ取付穴12を利用して開閉機構を備えた排気ダクト20を取り付けることで、排気装置の後付けや付け替えがきわめて容易である。また、ユニット据付時から年月が経過した場合などには、排気ダクト20のみを付け替えることにより、非常時に経年劣化などにより開閉機構が機能しないといったリスクを軽減させることが可能となる。
【0025】
排出ダクト20の取付構造は、図7、図8に示すように、室内ユニット本体側面へのネジ止めであり、廃却時の分別も容易である。また、排気ダクト20のみの付け替えも非常に容易である。
【0026】
また、既存のオプションパーツの取付構造を流用することにより、室内ユニット本体側の改良などによる開発費や新規部品の追加などが無いため、コスト削減となり、余分な物は作らないという点で環境にも優しい。
【0027】
さらに、火災を感知するセンサーには、煙センサーではなく、空調の機能を満足するのに用いられている輻射温度センサーを流用し、屋内の異常な(急激な)温度上昇を感知するようにすることで、新たな検知センサーの設置を削減可能である。
【0028】
排気ダクト20は、分ダクトフランジとして取付実績のある構造と同一にすることで、据付時やサービス時において、設置作業者への負担を軽減できる。
【0029】
排気ダクト20の作動条件に、室内ユニットの熱交換器や配管接続部付近に備えられた冷媒漏れを感知するセンサーの反応を加えることにより、微燃性冷媒が漏れた場合にも、それを屋外へ排出することが可能である。
【0030】
排気ダクト20の開閉機構は、例えば図11に示すように、扇のように開かれた蓋の部分が、非常時を感知した室内ユニット基板から排気ダクト20に備えられたモーターなどの駆動装置に指令を出し、折りたたませるような簡素な構造で良い。
【0031】
また、図12に示すように、排気ダクト20に排気用送風機23を内蔵し、非常時には排気用送風機23を回転させて室内空気を屋外へ向かって流すことにより、排気効率を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 パネル部、2 室内ユニット本体、2a 外殻、2b インナーカバー、3 吸込み口、4 吹出口、5 ベーン、6 輻射温度センサー、7 送風機、8 熱交換器、10 室内ユニット、11 ノックアウト穴、12 オプションパーツ取付穴、13 分配ダクト、20 排気ダクト、21 ネジ、22 取付脚、23 排気用送風機、100 天井面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内ユニット本体にオプションパーツ取付穴が設けられている天井埋込型空気調和機において、
前記オプションパーツ取付穴に開閉機構を備えた排気装置を取り付け、非常時、前記室内ユニット本体は、前記排気装置の開閉機構を開放するとともに、パネル部の吹出口を閉じ、前記室内ユニット本体の送風機を回転駆動して吸込み口から吸い込まれた室内空気を前記排気装置を通じて屋外へ排出することを特徴とする天井埋込型空気調和機。
【請求項2】
室内温度を検知する輻射温度センサーを備え、
前記輻射温度センサーが室内温度の異常な温度上昇を検知したとき、輻射温度センサーの信号により、前記送風機の駆動、前記排気装置の開閉機構の開放、および、前記吹出口の閉鎖を行うことを特徴とする請求項1記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項3】
微燃性冷媒の漏れを検知する冷媒漏れセンサーを備え、
前記冷媒漏れセンサーが微燃性冷媒の漏れを検知したとき、前記冷媒漏れセンサーの信号により、前記送風機の駆動、前記排気装置の開閉機構の開放、および、前記吹出口の閉鎖を行うことを特徴とする請求項1記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項4】
前記排気装置に排気用送風機を内蔵したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項1】
室内ユニット本体にオプションパーツ取付穴が設けられている天井埋込型空気調和機において、
前記オプションパーツ取付穴に開閉機構を備えた排気装置を取り付け、非常時、前記室内ユニット本体は、前記排気装置の開閉機構を開放するとともに、パネル部の吹出口を閉じ、前記室内ユニット本体の送風機を回転駆動して吸込み口から吸い込まれた室内空気を前記排気装置を通じて屋外へ排出することを特徴とする天井埋込型空気調和機。
【請求項2】
室内温度を検知する輻射温度センサーを備え、
前記輻射温度センサーが室内温度の異常な温度上昇を検知したとき、輻射温度センサーの信号により、前記送風機の駆動、前記排気装置の開閉機構の開放、および、前記吹出口の閉鎖を行うことを特徴とする請求項1記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項3】
微燃性冷媒の漏れを検知する冷媒漏れセンサーを備え、
前記冷媒漏れセンサーが微燃性冷媒の漏れを検知したとき、前記冷媒漏れセンサーの信号により、前記送風機の駆動、前記排気装置の開閉機構の開放、および、前記吹出口の閉鎖を行うことを特徴とする請求項1記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項4】
前記排気装置に排気用送風機を内蔵したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の天井埋込型空気調和機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−88086(P2013−88086A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231050(P2011−231050)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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