説明

天体撮影装置、天体撮影方法及び天体撮影システム

【課題】 天体撮影時において、発光移動体の写真への写り込みを防止する。
【解決手段】 撮影対象の天体を追尾しつつ該天体を含む天空を撮影範囲として一定時間露光して撮影する撮影手段を備えた天体撮影装置であって、天体を除く発光移動体の軌道を認識する認識手段と、該認識手段によって認識された発光移動体の軌道情報に基づいて、当該発光移動体が前記撮影手段の撮影画角内に侵入するか否かを判定する判定手段と、該判定手段で前記発光移動体が前記撮影画角内に侵入すると判定された場合には、露光を中断する露光制御手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天体撮影装置、天体撮影方法及び天体撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラを搭載した天体望遠鏡によって星等の天体を撮影する場合、撮影対象である天体の光量が非常に小さいために数十分〜数時間と長時間露光する必要がある。この露光時間の間に天体は移動してしまうので赤道儀を用いて撮影対象の天体を追尾しなければならないが、近年では自動追尾機能を持つ赤道儀を使用した天体撮影装置も市場に出回っており、非常に高精度且つ簡単に天体撮影を行えるようになっている。例えば、このような天体撮影装置に関する従来技術が下記特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平2−35409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように天体撮影を行う場合、長い露光時間中に人工衛星や飛行機等の予期しない発光移動体がカメラの画角内に侵入し、それら発光移動体の光跡が写真に写り込んでしまうという問題がある。これを防ぐためには撮影者が常に撮影対象の天体周辺を目視で監視し、上記発光移動体がカメラの画角(撮影範囲)内に侵入しそうであれば手動で露光を停止するしかなく、撮影者にとって大きな負担となっており、また、目視による監視にも限界があるため発光移動体を見逃してしまう可能性もある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、天体撮影時において、発光移動体の写真への写り込みを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、天体撮影装置に係る第1の解決手段として、撮影対象の天体を追尾しつつ該天体を含む天空を撮影範囲として一定時間露光して撮影する撮影手段を備えた天体撮影装置であって、天体を除く発光移動体の軌道を認識する認識手段と、該認識手段によって認識された発光移動体の軌道情報に基づいて、当該発光移動体が前記撮影手段の撮影画角内に侵入するか否かを判定する判定手段と、該判定手段で前記発光移動体が前記撮影画角内に侵入すると判定された場合には、露光を中断する露光制御手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
また、本発明では、天体撮影装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記認識手段は、撮影位置を検出する検出手段と無線通信手段とを有し、当該無線通信手段によって前記検出手段で検出された撮影位置に関する情報を、無線通信網を介して発行移動体の軌道情報が予め保持されているサーバに送信し、当該サーバから前記撮影位置に対応した発光移動体の軌道情報を受信することによって、発光移動体の軌道を認識する、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明では、天体撮影装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記検出手段は、GPS(Global Positioning System)によって撮影位置の経度及び緯度を測位することにより当該撮影位置を検出する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、天体撮影装置に係る第4の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記撮影手段は、前記撮影対象の天体を含む天空を第1の撮影範囲とする第1の撮影手段と、前記第1の撮影範囲を含み、且つ該第1の撮影範囲より広い第2の撮影範囲を撮影する第2の撮影手段とを備え、前記認識手段は、前記第2の撮影手段によって撮影された画像の所定の画像解析を行うことにより前記発光移動体の存在を検知する検知手段を有し、該検知手段による検知に基づいて前記発光移動体の軌道を認識すると共に、前記判定手段は、前記認識手段によって認識された発光移動体の軌道情報に基づいて、当該発光移動体が前記第1の撮影手段の撮影画角内に侵入するか否かを判定し、前記露光制御手段は、前記判定手段で前記発光移動体が前記第1の撮影手段の撮影画角内に侵入していると判定された場合には、露光を中断する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明では、天体撮影装置に係る第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記検知手段は、前記第2の撮影手段の撮影範囲の画像の時間的変化に基づいて、前記撮影対象の天体の移動速度と異なる移動速度を持つ動光点を探索し、当該動光点を発光移動体として検知することを特徴とする。
【0010】
一方、本発明では、天体撮影方法に係る第1の解決手段として、撮影対象の天体を追尾しつつ該天体を含む天空を撮影範囲として一定時間露光して撮影する撮影手段を用いた天体撮影方法であって、天体を除く発光移動体の軌道を認識する認識ステップと、該認識ステップで認識された発光移動体の軌道情報に基づいて、当該発光移動体が前記撮影手段の撮影画角内に侵入するか否かを判定する判定ステップと、該判定ステップで前記発光移動体が前記撮影画角内に侵入すると判定された場合には、露光を中断する露光制御ステップとを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、天体撮影方法に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記認識ステップは、撮影位置を検出する検出ステップと、無線通信を行う無線通信ステップとを含み、当該無線通信ステップでは、前記検出ステップで検出された撮影位置に関する情報を、無線通信網を介して発行移動体の軌道情報が予め保持されているサーバに送信すると共に、当該サーバから前記撮影位置に対応した発光移動体の軌道情報を受信することによって、発光移動体の軌道を認識する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明では、天体撮影方法に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記検出ステップでは、GPS(Global Positioning System)によって撮影位置の経度及び緯度を測位することにより当該撮影位置を検出する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明では、天体撮影方法に係る第4の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記撮影手段には、前記撮影対象の天体を含む天空を第1の撮影範囲とする第1の撮影手段と、前記第1の撮影範囲を含み、且つ該第1の撮影範囲より広い第2の撮影範囲を撮影する第2の撮影手段とが備えられ、前記認識ステップは、前記第2の撮影手段によって撮影された画像の所定の画像解析を行うことにより前記発光移動体の存在を検知する検知ステップを含み、該検知ステップによる検知に基づいて前記発光移動体の軌道を認識すると共に、前記判定ステップでは、前記認識ステップで認識された発光移動体の軌道情報に基づいて、当該発光移動体が前記第1の撮影手段の撮影画角内に侵入するか否かを判定し、前記露光制御ステップでは、前記判定ステップで前記発光移動体が前記第1の撮影手段の撮影画角内に侵入していると判定された場合には、露光を中断する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明では、天体撮影方法に係る第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記検知ステップは、前記第2の撮影手段の撮影範囲の画像の時間的変化に基づいて、前記撮影対象の天体の移動速度と異なる移動速度を持つ動光点を探索し、当該動光点を発光移動体として検知することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明では、天体撮影システムに係る第1の解決手段として、発光移動体の軌道情報を収集及び配信する軌道情報収集配信サーバと、各地に配置され、発光移動体を検知し、当該発光移動体の軌道情報を前記軌道情報収集配信サーバに送信する発光移動体検知手段と、前記軌道情報収集配信サーバから発光移動体の軌道情報を取得する請求項2または3記載の天体撮影装置とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮影対象の天体を追尾しつつ、該天体を含む天空を撮影範囲として一定時間露光する撮影手段を備えた天体撮影装置において、天体を除く発光移動体の軌道を認識して、当該発光移動体が前記撮影手段の撮影画角内に侵入している間は露光を中断するので前記発光移動体の写真への写り込みを防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係わる天体撮影装置の構成概略図である。この図において、符号Cは本天体撮影装置、Nはネットワーク(無線通信網)、Sは軌道情報配信サーバである。図示するように、本天体撮影装置Cは、ネットワークNを介して軌道情報配信サーバSと接続されている。
【0018】
このような本天体撮影装置Cは、天体望遠鏡c1、赤道儀c2、カメラc3、固定支持台c4、入力部c5、制御部c6及びGPS(Global Positioning System)機能付き通信端末(無線通信手段)c7から構成されている。
【0019】
天体望遠鏡c1は、周知のように撮影対象となる星や星座等の天体を観望するためのものであり、赤道儀c2の上部に赤緯軸に対して直角になるように取り付けられている。赤道儀c2は、図示していないが、上記天体望遠鏡c1を赤経軸及び赤緯軸の軸回りに回転させるためのサーボモータを各軸に備えており、これらのサーボモータは制御部c6から入力される捕捉・追尾制御信号により撮影対象の天体を捕捉・追尾するように制御されている。また、赤道儀c2は、赤経軸上に極軸合わせ用の極軸望遠鏡を内蔵している。
【0020】
カメラc3は、例えば、高感度の冷却CCDカメラであり、天体望遠鏡c1の接眼レンズに接続され、撮影対象となる天体を撮影するものである。また、このカメラc3は、制御部c6から入力される撮影制御信号によって露光時間、フォーカス合わせ及びシャッタ開閉等が制御されている。固定支持台c4は、上記赤道儀c2が振動しないように固定するための支持台座である。
【0021】
入力部c5は、撮影者が撮影対象として選択した天体の赤経及び赤緯を入力するためのもので、上記赤経及び赤緯を示すデータ信号を制御部c6に出力する。
【0022】
制御部c6は、入力部c5から入力された撮影対象となる天体の赤経及び赤緯を示すデータ信号に基づいて捕捉・追尾制御信号を生成して赤道儀c2(具体的は赤経軸及び赤緯軸に設けられたサーボモータ)に出力し、撮影対象となる天体の捕捉及び追尾を制御する。また、制御部c6は、撮影制御信号をカメラc3に出力し、露光時間、フォーカス合わせ及びシャッタ開閉等を制御する。
【0023】
さらに、制御部c6は、GPS機能付き通信端末c7に対して軌道情報取得指示を出力して天体を除く人工衛星や飛行機等の発光移動体の軌道情報を取得させ(認識手段)、当該軌道情報に基づいて上記発光移動体がカメラc3の撮影画角内に侵入するか否かを判定し(判定手段)、その判定結果に基づいてシャッタの開閉を指示するための撮影制御信号をカメラc3に出力する(露光制御手段)。
【0024】
GPS機能付き通信端末c7は、全地球測位システム(Global Positioning System)を利用して本天体撮影装置Cが設置されている位置(撮影位置)を計測するものであり、制御部c6から入力される軌道情報取得指示に同期してGPS用人工衛星から発せられる信号を受信し、撮影位置の経度及び緯度を計測する。さらに、GPS機能付き通信端末c7は、その経度及び緯度を撮影位置情報としてネットワークNを介して軌道情報配信サーバSに送信する。
【0025】
軌道情報配信サーバSは、天体を除く人工衛星や飛行機等の発光移動体の軌道情報を配信しているサーバであり、GPS機能付き通信端末c7から受信した撮影位置情報に基づいて発光移動体の軌道情報をネットワークNを介してGPS機能付き通信端末c7に配信する。
【0026】
次に、このように構成された本第1実施形態の天体撮影装置Cの動作について説明する。
【0027】
図2は、本天体撮影装置Cの天体撮影動作を示すフローチャート図である。
まず、撮影者が撮影対象となる天体の赤経及び赤緯を入力部c5に入力する(ステップS1)。制御部c6は、入力部c5から赤経及び赤緯を示すデータ信号を取得すると、この赤経及び赤緯の方向に天体望遠鏡c1が向くように、赤道儀c2の赤経軸及び赤緯軸に設けられたサーボモータに対して捕捉・追尾制御信号を出力する(ステップS2)。これらのサーボモータは、捕捉・追尾制御信号に基づいて回転駆動し、天体望遠鏡c1を撮影対象となる天体の方向に向けて捕捉した後、自動追尾を開始する。もちろん、このような撮影対象となる天体の捕捉・追尾を行う前に、赤道儀c2の極軸合わせを正確に行っている。
【0028】
そして、制御部c6は、撮影対象となる天体の捕捉が完了すると、撮影制御信号をカメラc3に出力してフォーカス合わせや露光時間の設定等を行い、撮影を開始する(ステップS3)。この時、制御部c6は、カメラc3のシャッタを開くための撮影制御信号(シャッタオープン信号)を出力し続けている。続いて、制御部c6は、GPS機能付き通信端末c7に対して軌道情報取得指示を出力する(ステップS4)。GPS機能付き通信端末c7は、上記軌道情報取得指示に同期して撮影位置の経度及び緯度を計測し(ステップS5)、その経度及び緯度を撮影位置情報としてネットワークNを介して軌道情報配信サーバSに送信する(ステップS6)。そして、GPS機能付き通信端末c7は、軌道情報配信サーバSから撮影位置に応じた発光移動体の軌道情報を取得し(ステップS7)、当該軌道情報及び撮影位置情報を制御部c6に出力する。
【0029】
続いて、制御部c6は、現在カメラc3が向いている方向(赤経及び赤緯)、カメラc3の撮影画角、上記発光移動体の軌道情報及び撮影位置情報(経度及び緯度)に基づいて発光移動体がカメラc3の撮影画角内に侵入するか否かを判定する(ステップS8)。制御部c6は、ステップS8で発光移動体がカメラc3の撮影画角内に侵入すると判定すると、上記発光移動体がカメラc3の撮影画角内に侵入する時刻(侵入時刻)と撮影画角内から離脱する時刻(離脱時刻)とを算出する(ステップS9)。そして、制御部c6は、侵入時刻から離脱時刻までの間、カメラc3のシャッタを閉じるための撮影制御信号(シャッタクローズ信号)をカメラc3に出力する(ステップS10)。
【0030】
カメラc3は、制御部c6からシャッタクローズ信号が入力されるとシャッタを閉じて露光を中断する(ステップS11)。制御部c6は、離脱時刻になるとシャッタクローズ信号の出力を止め、シャッタオープン信号をカメラc3に出力し、カメラc3は、このシャッタオープン信号に基づいてシャッタを再度開き露光を再開する(ステップS12)。そして、制御部c6は、撮影画角内に侵入する発光移動体が複数存在する場合はステップS10に戻り、ステップS10〜S12までの動作を繰り返す(ステップS13)。制御部c6は、ステップS13で撮影画角内に侵入する他の発光移動体が無ければ、露光時間終了までシャッタオープン信号をカメラc3に出力し、撮影を終了する(ステップS14)。なお、制御部c6は、ステップS8で撮影画角に侵入する発光移動体は存在しないと判定すると、露光時間終了までシャッタオープン信号をカメラc3に出力し、撮影を終了する。
【0031】
このように、本第1実施形態によれば、軌道情報配信サーバSから発光移動体の軌道情報を入手し、その軌道情報に基づいて発光移動体が撮影画角内に侵入する時刻を算出して、その時刻のみ露光を中断するので、発光移動体の写真への写り込みを防止することが可能である。
【0032】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係わる天体撮影装置の構成概略図である。この図に示すように、本第2実施形態の天体撮影装置は、第1実施形態と略同様の構成からなる天体撮影部Aと、発光移動体を検知するための発光移動体検知部Bとを備えている。この発光移動体検知部Bは、検知用天体望遠鏡b1、検知用赤道儀b2、検知用カメラb3、固定支持台b4、画像解析部b5から構成されている。なお、図3において、第1実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0033】
検知用天体望遠鏡b1は、天体望遠鏡c1と同じ撮影対象の天体を観望するためのものであり、検知用赤道儀b2の上部に赤緯軸に対して直角になるように取り付けられている。この検知用赤道儀b2は、赤道儀c2と同じく制御部c6Aから入力される捕捉・追尾制御信号により撮影対象の天体を捕捉・追尾するように制御されている。検知用カメラb3は、高感度のビデオカメラであり、図4に示すようにカメラc3の撮影画角(第1の画角)を含むような広い撮影画角(第2の画角)を持ち、この第2の画角の監視をする。
【0034】
画像解析部b5は、検知用カメラb3で撮影した動画の画像解析を行うことによって第2の画角内における発光移動体の存在を検知し、この発光移動体が第1の画角内に侵入すると侵入検知信号を制御部c6Aに出力する。
【0035】
制御部c6Aは、第1実施形態と同じく、入力部c5から入力される撮影対象となる天体の赤経及び赤緯の方向に天体望遠鏡c1及び検知用天体望遠鏡b1が向けられるように捕捉・追尾制御信号を赤道儀c2及び検知用赤道儀b2に出力し、撮影制御信号をカメラc3及び検知用カメラb3に出力する。また、制御部c6Aは、画像解析部b5から入力される侵入検知信号に基づいてシャッタの開閉を指示するための撮影制御信号をカメラc3に出力する。
【0036】
次に、このように構成された本第2実施形態の天体撮影装置の動作について説明する。
図5は、本第2実施形態の天体撮影装置の動作フローチャート図である。
【0037】
まず、撮影者が撮影対象となる天体の赤経及び赤緯を入力部c5に入力する(ステップS20)。制御部c6Aは、入力部c5から赤経及び赤緯を示すデータ信号を取得すると、この赤経及び赤緯の方向に天体望遠鏡c1及び検知用天体望遠鏡b1が向くように、赤道儀c2及び検知用赤道儀b2の赤経軸及び赤緯軸に設けられたサーボモータに対して捕捉・追尾制御信号を出力する(ステップS21)。上記サーボモータは、捕捉・追尾制御信号に基づいて回転駆動し、天体望遠鏡c1及び検知用天体望遠鏡b1を撮影対象となる天体の方向に向けて捕捉した後、自動追尾を開始する。
【0038】
そして、制御部c6Aは、撮影対象となる天体の捕捉が完了すると、撮影制御信号をカメラc3及び検知用カメラb3に出力して撮影を開始する(ステップS22)。この時、図4に示すように、カメラc3の第1の画角が検知用カメラb3の第2の画角内に入るようにセッティングされている。
【0039】
画像解析部b5は、検知用カメラb3によって撮影された第2の画角の動画を画像解析し、天体とは異なる速度で移動する動光点を探索する(ステップS23)。そして、画像解析部b5は、上記のような動光点を検知すると(ステップS24)、この動光点を発光移動体と認識し、当該動光点の移動方向(軌道)から第1の画角内に侵入するか否かを判定する(ステップS25)。また、ステップ24で動光点が検知されない場合、またはステップS25で動光点が第1の画角内に侵入しないと判定された場合は、ステップS28の動作に移行する。
【0040】
画像解析部b5は、ステップS25で動光点が第1の画角内に侵入すると判定すると以後の動光点の動きを常に監視し、動光点が第1の画角内に侵入した時に侵入検知信号を制御部c6Aに出力する。制御部c6Aは、上記侵入検知信号に同期してシャッタクローズ信号をカメラc3に出力して、露光を中断する(ステップS26)。そして、画像解析部b5は、動光点が第1の画角内から離脱すると侵入検知信号の出力を停止し、制御部c6Aはシャッタオープン信号をカメラc3に出力して露光を再開する(ステップS27)。
このようなステップS23〜S27までの動作は撮影終了まで繰り返される(ステップS28)。
【0041】
以上のように、本第2実施形態によれば、天体撮影部Aと発光移動体検知部Bとを備え、検知用カメラb3で撮影した動画の画像解析を行うことによって発光移動体を検知して天体撮影部Aにおける露光を中断するので、上記発光移動体の写真への写り込みを防止することが可能である。
【0042】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係わる天体撮影システムの構成概略図である。この図において、符号Dは発光移動体検知装置、Cは第1実施形態における天体撮影装置、Nはネットワーク、S1は軌道情報配信サーバである。
【0043】
発光移動体検知装置Dは、第2実施形態の天体撮影装置と同様の発光移動体検知部B(検知用天体望遠鏡b1、検知用赤道儀b2、検知用カメラb3、固定支持台b4、画像解析部b5)と、記憶部d1、制御部d2及びGPS機能付き通信端末d3から構成されている。
【0044】
検知用天体望遠鏡b1は、撮影対象となる天体を観望するためのものであり、検知用赤道儀b2の上部に赤緯軸に対して直角になるように取り付けられている。この検知用赤道儀b2は、制御部d2から入力される捕捉・追尾制御信号により撮影対象となる天体を捕捉・追尾するように制御されている。検知用カメラb3は、広画角且つ高感度のビデオカメラであり、この画角を撮影範囲とした動画の撮影を行う。画像解析部b5は、検知用カメラb3で撮影した動画の画像解析を行うことによって検知用カメラb3の画角内における発光移動体の存在を検知し、さらに発光移動体の軌道情報を作成して制御部d2に出力する。
【0045】
記憶部d1は、複数の天体の赤経及び赤緯を記憶しており、制御部d2は、記憶部d1から撮影対象となる天体の赤経及び赤緯を取得して捕捉・追尾制御信号を生成し、検知用赤道儀b2に出力し、撮影対象となる天体の捕捉及び追尾を制御する。さらに、制御部d2は、画像解析部b5から発光移動体の軌道情報を取得すると、GPS機能付き通信端末d3に対して軌道情報送信指示及び上記軌道情報を出力する。
【0046】
GPS機能付き通信端末d3は、撮影位置の経度及び緯度を撮影位置情報として計測し、制御部d2の軌道情報送信指示に従って当該撮影位置情報と上記軌道情報とをネットワークNを介して軌道情報配信サーバS1に送信する。
【0047】
上記のように構成された発光移動体検知装置Dは、世界各地に設置されており、それぞれの撮影位置から検知した発光移動体の軌道情報を各撮影位置情報と共にネットワークNを介して軌道情報配信サーバS1に送信している。軌道情報配信サーバS1は、上記のような発光移動体検知装置Dから送信される撮影位置情報及び発光移動体の軌道情報を収集・保存しており、ネットワークNを介して接続された天体撮影装置Cに対して上記発光移動体の軌道情報を配信している。なお、この天体撮影装置Cも世界各地に設置されており、各ユーザがそれぞれ所望の天体を撮影するために使用されている。
【0048】
次に、このように構成された本第3実施形態の天体撮影システムの動作について説明する。図7は、本天体撮影装置システムの動作フローチャート図である。
【0049】
まず、制御部d2は、記憶部d1から撮影対象となる天体の赤経及び赤緯を取得し、この赤経及び赤緯の方向に検知用天体望遠鏡b1が向くように、検知用赤道儀b2の赤経軸及び赤緯軸に設けられたサーボモータに対して捕捉・追尾制御信号を出力する(ステップS30)。これらのサーボモータは、捕捉・追尾制御信号に基づいて回転駆動し、検知用天体望遠鏡b1を撮影対象となる天体の方向に向けて捕捉した後、自動追尾を開始する。
【0050】
そして、制御部d2は、撮影対象となる天体の捕捉が完了すると、撮影制御信号を検知用カメラb3に出力して撮影を開始する(ステップS31)。続いて、GPS機能付き通信端末d3は、撮影位置の経度及び緯度を撮影位置情報として計測する(ステップS32)。
【0051】
画像解析部b5は、検知用カメラb3によって撮影された動画を画像解析し、天体とは異なる速度で移動する動光点を探索する(ステップS33)。そして、画像解析部b5は、上記のような動光点を検知すると(ステップS34)、この動光点を発光移動体と認識し、当該発光移動体の画角内における軌道情報を作成する(ステップS35)。そして、制御部d2は、画像解析部b5から上記軌道情報を取得すると、GPS機能付き通信端末d3に軌道情報送信指示及び上記軌道情報を出力し、GPS機能付き通信端末d3は、上記軌道情報及び撮影位置情報をネットワークNを介して軌道情報配信サーバS1に送信する(ステップS36)。
【0052】
軌道情報配信サーバS1は、撮影位置情報及び軌道情報を取得すると(ステップS37)、これらの撮影位置情報及び軌道情報を内部のデータベースに保存する(ステップS38)と共に、各地から送られてくる撮影位置情報及び軌道情報を基に発光移動体の3次元での軌道を算出し、ネットワークNを介して接続された天体撮影装置Cに対して発光移動体の軌道情報を配信する(ステップS39)。天体撮影装置Cは、これら発光移動体の軌道情報に基づいてシャッタの開閉を制御し、写真への写り込みを防止している。
【0053】
このように、本天体撮影システムによれば、世界各地に設置された発光移動体検知装置Dから発光移動体の軌道情報を軌道情報配信サーバS1に収集し、各天体撮影装置Cにこれらの軌道情報を配信することで、発光移動体の軌道情報を各ユーザで共有化し、リアルタイムに軌道情報を得ることができる。従って、より確実に発光移動体の写真への写り込みを防止することが可能である。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
【0055】
(1)上記第1実施形態及び第2実施形態では、撮影者が撮影対象となる天体の赤経及び赤緯を入力していたが、例えば、様々な天体の星図表が記憶されたデータベースを備え、撮影者が所望の天体名と撮影日時とを入力すれば、自動的にその天体を捕捉・追尾するような構成にしても良い。
【0056】
(2)上記第2実施形態及び第3実施形態において、画像解析部b5によって発光移動体の軌道だけでなく明るさも同時に検出し、この明るさが写真に写り込むレベルであるか否かを判定し、写真に写り込む程の明るさではなかった場合は発光移動体として認識しないようにしても良い。これにより、余分なシャッタの開閉動作を抑えることができる。
【0057】
(3)GPS機能付き通信端末c7、d3は、例えば、GPS機能を有する携帯電話やPHS(Personal Handyphone System)端末等の携帯通信端末でも良い。
【0058】
(4)上記第2実施形態において、発光移動体検知部Bは、天体撮影部Aの赤道儀c2上に撮影用の天体望遠鏡c1と平行して設置された検知用天体望遠鏡b1、検知用カメラb3及び画像解析部b5としても良い。また、この検知用天体望遠鏡b1が第3の実施形態における検知用天体望遠鏡b1である場合、軌道情報配信サーバS1は、撮影者の数だけ発光移動体の軌道情報を収集することができるため、より高い精度で軌道の算出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる天体撮影装置の構成概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態における天体撮影装置の動作フローチャート図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係わる天体撮影装置の構成概略図である。
【図4】本発明の第2実施形態における第1の画角と第2の画角との関係を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態における天体撮影装置の動作フローチャート図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係わる天体撮影システムの構成概略図である。
【図7】本発明の第3実施形態における天体撮影システムの動作フローチャート図である。
【符号の説明】
【0060】
C…天体撮影装置、c1…天体望遠鏡、c2…赤道儀、c3…カメラ、c4、b4…固定支持台、c5…入力部、c6、c6A、d2…制御部、d1…記憶部、c7、d3…GPS機能付き通信端末、D…発光移動体検知装置、b1…検知用天体望遠鏡、b2…検知用赤道儀、b3…検知用カメラ、N…ネットワーク、S、S1…軌道情報配信サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象の天体を追尾しつつ該天体を含む天空を撮影範囲として一定時間露光して撮影する撮影手段を備えた天体撮影装置であって、
天体を除く発光移動体の軌道を認識する認識手段と、
該認識手段によって認識された発光移動体の軌道情報に基づいて、当該発光移動体が前記撮影手段の撮影画角内に侵入するか否かを判定する判定手段と、
該判定手段で前記発光移動体が前記撮影画角内に侵入すると判定された場合には、露光を中断する露光制御手段と
を具備することを特徴とする天体撮影装置。
【請求項2】
前記認識手段は、撮影位置を検出する検出手段と無線通信手段とを有し、当該無線通信手段によって前記検出手段で検出された撮影位置に関する情報を、無線通信網を介して発行移動体の軌道情報が予め保持されているサーバに送信し、当該サーバから前記撮影位置に対応した発光移動体の軌道情報を受信することによって、発光移動体の軌道を認識する、ことを特徴とする請求項1記載の天体撮影装置。
【請求項3】
前記検出手段は、GPS(Global Positioning System)によって撮影位置の経度及び緯度を測位することにより当該撮影位置を検出する、ことを特徴とする請求項2記載の天体撮影装置。
【請求項4】
前記撮影手段は、前記撮影対象の天体を含む天空を第1の撮影範囲とする第1の撮影手段と、前記第1の撮影範囲を含み、且つ該第1の撮影範囲より広い第2の撮影範囲を撮影する第2の撮影手段とを備え、
前記認識手段は、前記第2の撮影手段によって撮影された画像の所定の画像解析を行うことにより前記発光移動体の存在を検知する検知手段を有し、該検知手段による検知に基づいて前記発光移動体の軌道を認識すると共に、
前記判定手段は、前記認識手段によって認識された発光移動体の軌道情報に基づいて、当該発光移動体が前記第1の撮影手段の撮影画角内に侵入するか否かを判定し、
前記露光制御手段は、前記判定手段で前記発光移動体が前記第1の撮影手段の撮影画角内に侵入していると判定された場合には、露光を中断する、ことを特徴とする請求項1記載の天体撮影装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記第2の撮影手段の撮影範囲の画像の時間的変化に基づいて、前記
撮影対象の天体の移動速度と異なる移動速度を持つ動光点を探索し、当該動光点を発光移動体として検知することを特徴とする請求項4記載の天体撮影装置。
【請求項6】
撮影対象の天体を追尾しつつ該天体を含む天空を撮影範囲として一定時間露光して撮影する撮影手段を用いた天体撮影方法であって、
天体を除く発光移動体の軌道を認識する認識ステップと、
該認識ステップで認識された発光移動体の軌道情報に基づいて、当該発光移動体が前記撮影手段の撮影画角内に侵入するか否かを判定する判定ステップと、
該判定ステップで前記発光移動体が前記撮影画角内に侵入すると判定された場合には、露光を中断する露光制御ステップと
を有することを特徴とする天体撮影方法。
【請求項7】
前記認識ステップは、撮影位置を検出する検出ステップと、無線通信を行う無線通信ステップとを含み、当該無線通信ステップでは、前記検出ステップで検出された撮影位置に関する情報を、無線通信網を介して発行移動体の軌道情報が予め保持されているサーバに送信すると共に、当該サーバから前記撮影位置に対応した発光移動体の軌道情報を受信することによって、発光移動体の軌道を認識する、ことを特徴とする請求項6記載の天体撮影方法。
【請求項8】
前記検出ステップでは、GPS(Global Positioning System)によって撮影位置の経度及び緯度を測位することにより当該撮影位置を検出する、ことを特徴とする請求項7記載の天体撮影方法。
【請求項9】
前記撮影手段には、前記撮影対象の天体を含む天空を第1の撮影範囲とする第1の撮影手段と、前記第1の撮影範囲を含み、且つ該第1の撮影範囲より広い第2の撮影範囲を撮影する第2の撮影手段とが備えられ、
前記認識ステップは、前記第2の撮影手段によって撮影された画像の所定の画像解析を行うことにより前記発光移動体の存在を検知する検知ステップを含み、該検知ステップによる検知に基づいて前記発光移動体の軌道を認識すると共に、
前記判定ステップでは、前記認識ステップで認識された発光移動体の軌道情報に基づいて、当該発光移動体が前記第1の撮影手段の撮影画角内に侵入するか否かを判定し、
前記露光制御ステップでは、前記判定ステップで前記発光移動体が前記第1の撮影手段の撮影画角内に侵入していると判定された場合には、露光を中断する、ことを特徴とする請求項6記載の天体撮影方法。
【請求項10】
前記検知ステップは、前記第2の撮影手段の撮影範囲の画像の時間的変化に基づいて、前記撮影対象の天体の移動速度と異なる移動速度を持つ動光点を探索し、当該動光点を発光移動体として検知することを特徴とする請求項9記載の天体撮影方法。
【請求項11】
発光移動体の軌道情報を収集及び配信する軌道情報収集配信サーバと、
各地に配置され、発光移動体を検知し、当該発光移動体の軌道情報を前記軌道情報収集配信サーバに送信する発光移動体検知手段と、
前記軌道情報収集配信サーバから発光移動体の軌道情報を取得する請求項2または3記載の天体撮影装置と
を具備することを特徴とする天体撮影システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−3662(P2007−3662A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181687(P2005−181687)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】