説明

天吊型空気調和装置

【課題】 十分な循環風量が得られ、これによって新鮮な空気質が得られ、高い温度分布性能を得ることができる天井吊型空気調和装置を提供する。
【解決手段】 天井に吊り下げられる空気調和機本体100Aと、この空気調和機本体と一体化された全熱交換器本体200Aとを備え、各本体の吹出し口32,34を夫々独立させると共に、空気調和機本体100Aの吹出し口32から吹出される空気と、全熱交換器本体200Aの吹出し口34から吹出される空気とを、各吹出し口の出口でミキシング自在に、各吹出し口32,34を近接配置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に吊り下げられる天吊型空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、換気機能を備えたものとしては、ビルトインタイプが主流である。しかし、このビルトインタイプには、既設の建物に据え付ける場合、多大な工事費と工事期間がかかるという欠点がある。また、この天吊型空気調和装置のほかに、全熱交換器を別置きするタイプが提案されている。しかし、これだと、空気調和装置の吹出し口から吹出される空気の空気質や温度、湿度等が異なる空気が、全熱交換器から吹出されることになるため、室内空気にムラが生じるといった問題がある。
【0003】
これに対し、空気調和機本体と、この空気調和機本体と一体化された全熱交換器本体とを備えた空気調和装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
この場合、全熱交換器本体で熱交換された外気を、空気調和機本体の室内熱交換器の一次側に導入し、この一次側で外気と内気とをミキシングし、これらを熱交換した後、空気調和機本体の吹出し口から吹出すように構成されている。
【特許文献1】実公平3−3871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、全熱交換器本体で熱交換された外気を、空気調和機本体の室内熱交換器の一次側に導入した場合、この空気調和機本体の室内送風機の能力が不足して、十分な循環風量が得られなくなり、これによって新鮮な空気質が得られなくなると共に、温度分布性能が低くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、十分な循環風量が得られ、これによって新鮮な空気質が得られ、高い温度分布性能を得ることができる天井吊型空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、天井に吊り下げられる空気調和機本体と、この空気調和機本体と一体化された全熱交換器本体とを備え、各本体の吹出し口を夫々独立させると共に、空気調和機本体の吹出し口から吹出される空気と、全熱交換器本体の吹出し口から吹出される空気とを、各吹出し口の出口でミキシング自在に、各吹出し口を近接配置させたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、全熱交換器本体を空気調和機本体の後部に配置してもよく、全熱交換器本体の吹出し口を、空気調和機本体の吹出し口の上部に近接配置させてもよい。また、全熱交換器本体の高さよりも空気調和機本体の高さを低くし、この低くなった空気調和機本体の上部に全熱交換器本体の給気風路を形成してもよい。全熱交換器本体の吹出し口の近傍に当該吹出し口から吹出される空気を空気調和機本体の吹出し口側に案内する案内手段を備えてもよい。
【0009】
また、全熱交換器本体につながる外気の吸気及び/又は排気ダクトを全熱交換器本体の下面若しくは背面から引き出せるようにしてもよい。さらに、全熱交換器本体の制御部と、空気調和機本体の制御部とを1つのリモコンにパッケージングしてもよい。また、全熱交換器本体に加湿器を内蔵してもよく、空気調和機本体の吸込グリルと全熱交換器本体の吸込グリルとを一体化してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、十分な循環風量が得られ、これによって新鮮な空気質が得られ、高い温度分布性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を添付した図面を参照して説明する。
【0012】
図1において、100は空気調和装置を示し、200は全熱交換器を示している。この空気調和装置100は、圧縮機1を備え、この圧縮機1には四方弁2を介して室外熱交換器3が接続されている。この室外熱交換器3には二つのメカ弁4、5を介して室内熱交換器6が接続され、この室内熱交換器6には上記四方弁2を介してアキュームレータ7が接続され、このアキュームレータ7は圧縮機1に接続されている。
【0013】
この空気調和装置100において、実線の矢印は、冷房運転時の冷媒の流れを示す。圧縮機1から吐出された冷媒は、四方弁2を経て室外熱交換器3に至り、ここで凝縮する。そして、メカ弁4、5を経て室内熱交換器6に至り、ここで、室内送風機6Aからの送風を受けて蒸発して、四方弁2、アキュームレータ7を経て圧縮機1に戻る。上述した室内送風機6Aによる送風により被調和室が冷房される。
【0014】
破線矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示す。この場合において、圧縮機1から吐出された冷媒は、四方弁2を経て室内熱交換器6に至り、ここで、室内送風機6Aからの送風を受けて凝縮した後、メカ弁5、4を経て室外熱交換器3に至る。そして、ここで蒸発して、四方弁2、アキュームレータ7を経て圧縮機1に戻る。上述した室内送風機6Aによる送風により被調和室が暖房される。
【0015】
全熱交換器200は、全熱交換素子11を備えて構成される。この全熱交換素子11は、蛇行状に折り曲げた折曲げ紙に平板状紙をのせ、その上に、上記折曲げ紙とはその折り曲げ方向を変えた折曲げ紙を重ねるようにして、これら折曲げ紙と平板状紙とを順次積層させて構成されている。この全熱交換素子11には、外気が導入されると共に、被調和室からの排気(内気)が供給される。そして、この内気と外気の間で熱交換した後、外気を被調和室に供給し、内気を被調和室の外に排気する機能を備える。ここで、外気は、給気ダクト12、給気ファン13を経た後、外気フィルタ14を介して全熱交換素子11に至り、ここから給気風路15、加湿器16、吹出しフラップ17、吹出しルーバ18を経て被調和室に吹出される。この加湿器16には加湿タンク500が接続され、このタンクに直接給水しておけば、この加湿器16に加湿水が順次供給される。
【0016】
被調和室からの内気は、吸込みグリル21を経て全熱交換素子11に至り、この全熱交換素子11を経てダンパ22、排気ファン23、排気ダクト24を介して室外に排気される。ダンパ22は風路を遮断自在であり、これが風路を遮断した場合、吸込みグリル21を経た内気は、全熱交換素子11をバイパスし、普通換気風路25を介して排気ファン23に至り、排気ダクト24を介して室外に排気される。
【0017】
符号400は、空気調和装置100の運転制御を行うリモコンを示し、このリモコンは空気調和機本体100Aの制御部401と、全熱交換器本体200Aの制御部402とを1つのケースに収めて構成される。ここで、制御部401は室内送風機6Aやメカ弁5などの制御を行い、制御部402は排気ファン23、吸気ファン13などの制御を行うものである。このように、1つのリモコン400に2つの制御部401,402をパッケージングしたことにより、リモコン内のマイコンを共通化でき、また、これによってリモコン代が安価となり、リモコンの操作性が向上する。
【0018】
図2は空気調和装置100を下から見た斜視図である。
【0019】
本実施形態では、空気調和装置100が、天井に吊り下げられる空気調和機本体100Aと、この空気調和機本体100Aの後部に連結されて一体化された外気調温用の全熱交換器本体200Aとを備えて構成されている。
【0020】
空気調和機本体100Aの内部には、図3に示すように、上述した室内熱交換器6、室内送風機6A、ドレンパン6B、さらには電装箱19等が配置され、その吸込みグリル9にはフィルタ9Aが配置されている。これが運転されると、吸込みグリル9を介して内気が吸い込まれ、この内気は、室内送風機6Aを経て室内熱交換器6に至り、ここで冷媒と熱交換した後に、吹出し口32を介して被調和室に吹出される。
【0021】
全熱交換器本体200Aの内部には、上述した全熱交換素子11、給気ファン13、排気ファン23等が配置され、その吸込みグリル21にはフィルタ21Aが配置されている。これが運転されると、吸込みグリル21を介して内気が吸い込まれ、この内気は、全熱交換素子11に至り、ここで、外気と熱交換した後に、排気ファン23を介して室外に排気される。一方、外気は、給気ファン13を介して、全熱交換素子11に至り、ここで、内気と熱交換した後に、給気風路15(図1参照)、加湿器16、吹出しフラップ17、吹出しルーバ18等を経て、吹出し口34から被調和室に吹出される。全熱交換器本体200Aには、給排気ダクト12、24が接続されるが、これら給排気ダクト12、24は、全熱交換器本体200Aの下面若しくは背面に接続される。
【0022】
図3に示すダンパ22が動作すると、内気の排出経路における全熱交換素子11の出口が封鎖され、内気は、全熱交換素子11をバイパスし、普通換気風路25(図1参照)を介して排気ファン23に至り、排気ダクト24を介して室外に排気される。なお、図3では、加湿器16、吹出しフラップ17等の図示を省略している。
【0023】
上記構成では、各本体100A,200Aの吹出し口32,34が夫々独立して形成されている。そして、各吹出し口32,34は、近接配置され、空気調和機本体100Aの吹出し口32から吹出される空気と、全熱交換器本体200Aの吹出し口34から吹出される空気とを、各吹出し口32,34の出口でミキシング自在に構成されている。このように、各吹出し口32,34は夫々独立し、本ユニット内では、全熱交換器本体200Aの空気が、空気調和機本体100A内に進入することがない。
【0024】
この構成では、例えば、空気調和機本体100Aの吹出し風量が1000m3/hで設計され、全熱交換器本体200Aの吸込み風量が500m3/hで設計された場合、各吹出し口32,34が夫々独立であるため、そのときの循環風量は1500m3/hに維持される。ちなみに、従来の構成のように、全熱交換器本体200Aの給気風路が、空気調和機本体100Aの熱交換器の一次側に接続される構成であれば、各風量が、仮に上記と同様に設計されたとしても、そのときの循環風量は1500m3/hを大きく下回り、むしろ若干の風量アップに止まる。そのため、循環風量不足に至り、新鮮な空気質が得られなくなり、温度分布性能が低くなる。
【0025】
本実施形態では、吹出し口32,34が夫々独立であるため、循環風量が大きくなり、これによって新鮮な空気質が得られ、高い温度分布性能を得ることができる。
【0026】
この空気調和機本体100Aの高さH1は、図3に示すように、全熱交換器本体200Aの高さH2よりも低く形成され、この低くなった空気調和機本体100Aの上部には、全熱交換器本体200Aの給気風路15が配置されている。そして、この給気風路15を含んだ全熱交換器本体200Aの全高が、空気調和機本体100Aの高さH1とほぼ等しくなるように形成されている。
【0027】
上記給気風路15の先端部には、当該給気風路15の幅とほぼ同一幅の吹出し口34を備え、この吹出し口34の全幅は、図2及び図4に示すように、空気調和機本体100Aの吹出し口32の全幅と等しくなるように形成されている。また、全熱交換器本体200Aの吹出し口34には、図3に示すように、当該吹出し口34から吹出される空気を、空気調和機本体100Aの吹出し口32側に案内する案内羽根(案内手段)35が配置されている。この案内羽根35の取り付け角度を適宜調整すれば、各吹出し口32,34の出口でのミキシング効果を高めることができる。
【0028】
上記構成では、空気調和機本体100Aと全熱交換器本体200Aをユニット化したため、各本体を別々に吊り下げる場合に比べ、据付時の吊り工程が一回で済むため、据付作業に要する労力を軽減することができる。また、天吊り全熱交換器本体200Aの電源を天吊り空気調和機本体100Aと出荷の時点で共通とすることで、据付時の電気工事が一回で済むため、工事に要する労力を軽減でき、工事費を格安に抑えることができる。さらに、従来のビルトインタイプに比べた場合、余分な屋根裏工事が不要になる。天吊り空気調和機本体100Aの吹出し口32と天吊り全熱交換器本体200Aの吹出し口34を、接近させた状態としたことで、吹出した後、即時に気流がミキシングされるので、室内の温度ムラを少なくすることができると共に、空気質(供給外気と既存室内気)のムラを少なくすることができる。天吊り空気調和装置100を一体型とすることで、例えば、上述したようにリモコン400を一つにすることができ、操作性を向上させることができると共に、リモコン費用を低減することができる。
【0029】
上記空気調和装置100では、全熱交換器本体200Aの下面から給排気ダクト12、24を引き出す構成としたため、空気調和装置100の後側に壁面300がある場合、そのダクトに1つのエルボ301をつけるだけで、ダクトを後方に引き回すことができる。これによれば、ダクトの引き回し作業が容易となるだけでなく、空気調和装置100を壁面300に寄せて設置することができ、見栄えが向上する。
【0030】
全熱交換器本体200Aに加湿器16を設置すれば、室内に露出するため、簡単に給水を行うことができる等の効果が得られる。
【0031】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものでないことは云うまでもない。例えば、上記実施形態では、吹出し口32,34を上下に配置したが、この上下が逆であってもよいし、吹出し口34が吹出し口32を囲うように周囲に配置されていてもよい。また、全熱交換器本体200Aが、空気調和機本体100Aの後部に連結されていたが、これに限定されず、例えば、空気調和機本体100Aの側部に連結されていてもよい。また、図2に示すように、空気調和機本体100Aの吸込グリル21と全熱交換器本体200Aの吸込グリル9とを別々に設けているが、例えば、これらのグリルにつながる吸込通路を1つにして、この吸込グリルを1つにすれば、吸込グリルのサービス点検が一度で事足り、サービスの手間が省けると共に、吸込グリルの共通化によりコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による天吊型空気調和装置の一実施形態を示す回路図である。
【図2】同天吊型空気調和装置を下から見た斜視図である。
【図3】同天吊型空気調和装置の断面図である。
【図4】同天吊型空気調和装置の平面図である。
【符号の説明】
【0033】
6 室内熱交換器
6A 室内送風機
11 全熱交換素子
13 給気ファン
15 給気風路
23 排気ファン
32,34 吹出し口
35 案内羽根(案内手段)
100A 空気調和機本体
200A 全熱交換器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に吊り下げられる空気調和機本体と、
この空気調和機本体と一体化された全熱交換器本体とを備え、
各本体の吹出し口を夫々独立させると共に、
空気調和機本体の吹出し口から吹出される空気と、全熱交換器本体の吹出し口から吹出される空気とを、各吹出し口の出口でミキシング自在に、各吹出し口を近接配置させたことを特徴とする天吊型空気調和装置。
【請求項2】
全熱交換器本体を空気調和機本体の後部に配置したことを特徴とする請求項1記載の天吊型空気調和装置。
【請求項3】
全熱交換器本体の吹出し口を空気調和機本体の吹出し口の上部に近接配置させたことを特徴とする請求項1又は2記載の天吊型空気調和装置。
【請求項4】
全熱交換器本体の高さよりも空気調和機本体の高さを低くし、この低くなった空気調和機本体の上部に全熱交換器本体の給気風路を形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の天吊型空気調和装置。
【請求項5】
全熱交換器本体の吹出し口の近傍に当該吹出し口から吹出される空気を空気調和機本体の吹出し口側に案内する案内手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の天吊型空気調和装置。
【請求項6】
全熱交換器本体につながる外気の吸気及び/又は排気ダクトを全熱交換器本体の下面若しくは背面から引き出せるようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の天吊型空気調和装置。
【請求項7】
全熱交換器本体の制御部と、空気調和機本体の制御部とを1つのリモコンにパッケージングしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の天吊型空気調和装置。
【請求項8】
全熱交換器本体に加湿器を内蔵したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項記載の天吊型空気調和装置。
【請求項9】
空気調和機本体の吸込グリルと全熱交換器本体の吸込グリルとを一体としたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項記載の天吊型空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−107726(P2007−107726A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−13853(P2004−13853)
【出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(504027657)株式会社イーズ (12)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)