説明

天然拮抗剤などの散布器

本発明は、有機的および/または総合的な方式下で温室もしくは露地で栽培される作物を処理する天然拮抗剤の機械的散布に使用されるデバイスであって、現状技術における他の公知システムに対して、散布の均一性を改善すると共に、散布に消費される時間を付随的に短縮するというデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機的および/または総合的な方式下で温室もしくは露地で栽培される作物を処理する天然拮抗剤(natural antagonist)の機械的散布に使用されるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ十年にわたりイタリアは、ECの規則および規定によるだけでなく、コストを低く抑え得ると共に、常に消費者によりたびたび要求される様に“残留物のない”農作物を収穫し得るという環境に優しい耕作技術を採用するという必要性により促進された埋め込み露地有機栽培(in-earth open-field organic cultivation)の顕著な増加に直面してきた。
【0003】
現在、病害虫に対する生物的防除によれば、潜伏期間に従う必要なしで、人間および他の無害な生物に対する薬害現象を引き起こさずに多くの植物病原性物質を駆除することが可能とされ、要約すると、環境への少ない影響を以て高品質の農作物を収穫し得る。
【0004】
保護された環境における野菜の生物学的防衛は、季節毎の植菌もしくは大量放飼による天然拮抗剤の使用を予見させる。斯かる拮抗剤は数年にわたり既に使用されている“バイオ植物”により育てられると共に、該拮抗剤は、多くの場合に一定程度の水分を有する散布用材料(概略的にはバーミキュライトおよび/またはソバ殻、まれに“おが屑”)と共に種々の容量(250、500および1,000cm3)を有するプラスチック瓶にて市販されている。寄生された植物に対する現在の手作業による放飼は、技術者による相当な時間的負担を伴うが、未だ、拮抗剤の均一な散布は達成されていない。
【0005】
これらの防衛介入を機械化する選択肢に関して実施された研究は依然として限られており、膨大な作物に対して試験は、小型飛行機もしくはトラクタにより牽引された空気流散布器により実施されているが、保護される作物に関する使用に対しては、最近、ファンにより生成された空気流により放飼を実施する携帯式の機械装置が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、請求項1に実質的に記述された如く、散布用材料の機械的散布に適したデバイスを提供することにより上記問題を解決するに在る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主題である上記デバイスは、現在の技術状況に見られるのとは異なる動作原理であって、天然拮抗剤の機械的散布に対して適切かつ良好であることが数回の実験室試験により判明したという動作原理を利用している。保護された環境においては、たとえば植え付けが完了した列の間を操作者が進むことにより、手動操作に関して優れた均一性および時間節約を以て、植物に対する拮抗剤の散布を達成することが可能である。
【0008】
故に本発明の主題は、例えば温室野菜生産の分野の競合力および生産性を改善するという要望を満足することにより、栽培物の生物学的防衛における決定的な役割を実現する。
【0009】
本発明の更なる利点、特徴および動作モードは、添付図面を参照して例示的にのみ与えられるが限定目的ではない本発明の幾つかの実施形態に関する以下の詳細な説明において明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の主題であるデバイス1の実施形態の斜視図である。
【図2】本発明の主題であるデバイス1の垂直断面図である。
【図3】有機的または総合的な農業において利用されて対象物質(天然拮抗剤および散布用材料)の散布のためにデバイス1を使用する移動可能装置の組立て図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において明らかとされるデバイスの動作原理は、回転ディスクにより生成される遠心力、すなわち、散布されるべき対象物質に対し、散布に必要とされる運動エネルギを必要な場合に与えるという力に基づいている。
【0012】
図1を参照すると、本発明の主題であるデバイス1の実施形態が斜視図で示される。
【0013】
デバイス1の種々の部材は以下において明らかとされる様式で、垂直ポスト17を備える基本構造14上に取付けられ、該垂直ポストからは、実質的に相互に平行である2本の水平ポスト18および33が分岐する。
【0014】
散布されるべき対象物質は、取入区画10および吐出区画11を有する実質的に円錐形状のホッパ6内へと注がれる。ホッパ6は取入区画10において、装入口8を有する着脱可能カバー7を備え、該装入口を通して対象物質がホッパ内へと装入される。
【0015】
故にホッパ6は、散布されるべき対象物質に対する蓄積タンクとして機能し、対象物質は吐出区画11を通して吐出されて、その下方に配置された散布用ディスク4上へと落下する。
【0016】
偶発的な使用上の必要性に従い、散布されるべき対象物質の流量を調節するために、ホッパ6の垂直軸心上では、実質的に吐出区画11に底端部が位置するというウォームネジ12が回転する。ウォームネジ12の回転は、好適には速度調節可能であるDCかつ低電圧の電気モータ13を用いて設定される。
【0017】
故にウォームネジは“螺旋状の計器”の役割を果たす、と言うのも、ホッパ6から吐出される対象物質の流量は、ウォームネジに対して付与されるべき回転数を設定することにより、または、直径が選択可能である(不図示の)適切な工具により吐出区画の直径を改変することにより、または最後に、デバイスの交換可能な部材であるウォームネジの直径を変更することにより、調節され得るからである。
【0018】
更にウォームネジは、その種々の高さにて、この特定実施形態においては可撓タングから構成される複数の攪拌器19を備えている。
【0019】
攪拌器は、散布用ディスク4に対する対象物質の流入物を調整し、ホッパの内側における可能的な目詰りを回避する役割を有する。
【0020】
ホッパの吐出区画は、実質的に円形状の支持部材9上に設けられた貫通孔25にて固定され、支持部材の中心は、長手ポスト18の端部に設定され且つ該端部の回りで自由に旋回する。
【0021】
故に、基本構造14の対称軸心に関する角度であって、散布されるべき対象物質が投出されるという角度は、ポスト18の回りにおける円形支持部9の回転によりホッパの位置を角度的に変更することで調節され得ることは明らかである。好適には貫通孔25は、径方向に配置されたスロット状の長寸形状を有する。この場合、スロットに沿う径方向においても、ホッパ位置決め手段が好適に配備される。
【0022】
円形支持部9の下方にて実質的に平行な位置に配置された散布用ディスク4は、底部長手ポスト33に対して固定される。
【0023】
斯かる散布用ディスク4は、その径方向進展部に沿い複数のフラップ26を備えると共に、垂直軸心の回りにおける該ディスクの回転は、好適にはDCかつ低電圧の可変速度モータを備える駆動手段5を用いて設定される。
【0024】
故に、基本構造14、特に2本のポスト18および33は協働して、ホッパの計量アセンブリである支持部材9と散布用ディスク4とを所定距離に保持する。
【0025】
ホッパ6の吐出区画から吐出された対象物質は、回転が駆動手段5により設定された散布用ディスク4であって、吐出されつつある該対象物質に対して運動エネルギを伝達するという散布用ディスク4上に落下することから、該対象物質に対しては、散布用ディスクの回転数と、該散布用ディスク上に設けられたフラップの個数と、該散布用ディスクに関するホッパの吐出区画の径方向位置と、該散布用ディスクの構成材料とに対して密接に関連付けられた速度が付与される。
【0026】
駆動手段5および13は、同様に頂部長手ポスト18に対して固定され且つ接続手段28により該各モータに対して接続されたバッテリ・パック27により給電され得る。
【0027】
当然乍ら、バッテリ・パックは異なる様に配置され得るか、または、ユーザによりナップザック内にも担持され得ることは理解される。
【0028】
図2は、本発明の主題であるデバイスの垂直断面を示している。
【0029】
特にこの図は、基本構造14が如何に構成されるか、および、該基本構造がホッパ6および散布用ディスク4を如何にして一体的に保持するかを更に明確に示している。
【0030】
依然として図2を参照すると、モータ5が垂直位置に如何に保持されるかが更に良好に明らかである。実際、それは接続要素38により長手ポスト33に対して固定される。
【0031】
代わりにモータ13は、結合部材32によりカバー7に対して一体的に配置される。
【0032】
更に基本構造14は、摺動し得る管状部分15であって、垂直ロッド20上の好適位置に固定されるという管状部分15を備える。
【0033】
故に本発明の主題は、散布高さを調節して一定に維持し得るシステムにより実現され得ると共に、現在においてそれは、防衛されるべき作物の各列間を進む操作者により手動搬送されるか、または、トラクタにより牽引されるバー、単軌道もしくは他のデバイスに対して装着されることで、処理されるべき作物の列に沿い前進し得ることが想起される。
【0034】
此処まで記述されたデバイスは、ロッド20により該デバイスを好適に支持し得るユーザにより容易に手動搬送され得る。代替的に、ユーザが上記デバイスを“着用”することを許容する支持ベルトなどの使用が想起され得る。
【0035】
更に図3に示された如く、本発明は、此処まで記述された散布デバイスを担持し得ると共に操作者により搬送され得るという移動可能装置を提供する。
【0036】
故に上記装置は、デバイス1が固定されるロッド20を備え、該ロッド20は、前側車輪22および後側車輪23を有する支持フレーム21上に溶接され得る。支持部の役割を果たす車輪22は、それ自体の水平軸心であってフレーム21により担持された(不図示の)フォークにより固定されるという水平軸心の回りで回転する。
【0037】
上記装置は、方向の変更を容易にすべく旋回形式とされた第2車輪23により正しい位置に保持される。
【0038】
フレーム21に対しては、スタンド29と、適切なピン30により操作者により高さが調節可能である2本のハンドルバー31とが接続される。ハンドルバー31の夫々の頂端部には、ゴム製取手24が位置されることで、握りが更に人間工学的かつ安全とされ、同様に、2個の取手の一方の近傍には、モータ操作のための(不図示の)制御スィッチが配置される。
【0039】
最後に、デバイス1は垂直ロッド20に沿い固定されることで、特定の作物に対し且つその発育段階に対し、散布高さを適合させ得る。
【0040】
拮抗剤と、それと共に市販されている散布用材料との散布に対する上記動作原理の適切さを評価するために、
・計器を通る移行によっても、遠心式の散布用ディスクの影響によっても、拮抗剤は損傷されないこと、
・適切な回分量が散布され得ること、
・対象物質は目標物に到達すること、
・寸法および全積載物重量は、手動搬送され得るシステムに適合すること、
・製造コストが合理的であり且つ環境に対する影響が実際的に皆無であること、
が予め試験された。
【0041】
示された実施形態において、ホッパは、ポリプロピレンで作成されると共に、約999.6 m2(約10,760平方フィート)の温室における経路に沿い補充の必要なしで作動すべく寸法設定された容量を有している。散布用ディスクは好適には、PVC製である。
【0042】
上述のシステムは、更に適切で軽量な材料を利用することにより選択的に最適化されることで、上記デバイスが作成された目的を更に完全に満足し得る。更に、大量生産プロセスによれば、既に合理的な製造コストが更に低減されることで、農家の間における本発明の普及が可能とされるであろう。
【0043】
此処まで示された実施形態は限定目的ではなく例示的にのみ示されており、異なる実施形態であるが全てが後記の各請求項により示された保護範囲内に収まるという実施形態により、同一の動作原理が他の状況における用途に適用され得ることは理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業などのための対象物質の機械的散布のためのデバイス(1)において、
該デバイスは基本構造(14)を備え、該基本構造に対しては、
a)散布用材料の制御式供給のための供給手段(9、12、13、6)と、
b)前記供給手段(9、12、13、6)により供給された前記散布用材料を自身上に受容し得る回転式散布用ディスク(4)と、
c)前記散布用ディスク(4)に対して接続され、該ディスクの回転を設定し得る駆動手段(5)とが固定され、
前記散布用ディスク(4)は、その径方向進展部に沿い配置された複数のフラップ(26)を備える、ことを特徴とするデバイス(1)。
【請求項2】
前記供給手段(9、12、13、6)は、取入区画(10)と吐出区画(11)とを有する実質的に円錐状のホッパ(6)を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ホッパ(6)は前記取入区画(10)において着脱可能カバー(7)を備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記着脱可能カバー(7)は装入口(8)を備え、該装入口により前記散布用材料は前記ホッパ(6)内へと装入される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記供給手段(9、12、13、6)は、前記散布用材料の流量を調節する手段(12)を備える、請求項1から請求項4のいずれか一つの請求項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記流量を調節する前記手段は、当該ウォームネジ(12)の自由端部が実質的に前記吐出区画(11)に載置される様に前記ホッパ(6)の対称軸心に位置された交換可能なウォームネジ(12)を備える、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記流量を調節する前記手段は、前記ホッパ(6)の内側にて回転が設定され得る攪拌器(19)を備える、請求項5または請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記攪拌器は前記ウォームネジ(12)上に取付けられた一つ以上の可撓タング(19)を備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記可撓タング(19)はプラスチックで作成される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記供給手段は、前記ウォームネジ(12)に対して接続された駆動手段(13)であって該ウォームネジの回転を設定し得るという駆動手段(13)を備える、請求項6から請求項9のいずれか一つの請求項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記駆動手段(13)は可変速度の電気モータを備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記電気モータはDCかつ低電圧の形式である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記供給手段は、前記ホッパ(6)の支持部材(9)であって、前記基本構造(14)上に枢動的に取付けられた支持部材(9)を備える、請求項2から請求項12のいずれか一つの請求項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記支持部材(9)は、実質的に円形の形状を有し、実質的に前記散布用ディスク(4)に対して重ね合わされ、且つ、前記ホッパの吐出区画における少なくとも一つの貫通孔を有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記貫通孔は長寸のスロット状の形状を有し、且つ、前記支持部材(9)は前記スロットに沿う前記ホッパの位置決めのための手段を備える、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ホッパ(6)の前記支持部材は、実質的に前記散布用ディスク(4)に対して平行な位置に固定される、請求項13から請求項15のいずれか一つの請求項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記吐出区画(11)は、直径が選択可能である工具により調節可能な直径を有する、請求項2から請求項16のいずれか一つの請求項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記散布用ディスク(4)の前記駆動手段(5)は、速度が調節可能な電気モータを備える、請求項1から請求項17のいずれか一つの請求項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記電気モータはDC形式である、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記基本構造(14)は垂直ポスト(17)を備え、該垂直ポストに対しては、ホッパ(6)および散布用ディスク(4)を夫々担持すると共に実質的に相互に平行であるという少なくとも2つの長手ポスト(18)が一体化される、請求項1から請求項19のいずれか一つの請求項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記基本構造(14)の前記垂直ポスト(17)は、ロッド(20)上を摺動し得る管状部分(15)を備える、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
一つ以上の車輪(22、23)を備えたフレーム(21)と、請求項1から請求項21のいずれか一つの請求項に記載の散布デバイス(1)とを備える、農業などのための対象物質の散布のための装置。
【請求項23】
前記フレーム(21)に対してフォークにより固定された当該車輪自体の夫々の水平軸心の回りで自由に回転する支持用の前側車輪(22)および旋回用の後側車輪(23)を備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
一つ以上の取手(24)を備える、請求項22または請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記デバイス(1)の摺動に適した実質的に垂直なロッド(20)を備える、請求項22から24のいずれか一つの請求項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−514457(P2010−514457A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544468(P2009−544468)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055280
【国際公開番号】WO2008/084355
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(509186166)ウニベルシタ デリィ ストゥディ ディ カターニア (1)
【Fターム(参考)】