説明

太陽光採光装置及び太陽光採光システム

【課題】簡単な構造で大容量の採光が可能となるうえ、装置の小型化を図ることができる。
【解決手段】傾動可能な方位鏡2と仰角鏡3とが2段に重なって配置されるとともに、方位鏡2と仰角鏡3とがそれぞれ間隔をもって複数並設され、方位鏡2の第1回動軸O1と、仰角鏡3の第2回動軸O2とが互いに直交する方向に向けて配置され、方位鏡2を太陽光の入射側に配置した状態で、方位鏡角度と仰角鏡角度とが太陽の位置に基づいて計算され、方位鏡2と仰角鏡3とがそれぞれ別々に制御される構成の太陽光採光装置1Aを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光した太陽光を反射させて、該太陽光を建築物の内部や中庭などの所望の位置に導光するための太陽光採光装置及び太陽光採光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の太陽光採光装置として、例えば建築物の屋根や屋上などに設置され、受光した太陽光を反射、屈折もしくは透過させつつその光軸方向を変化させて、建築物の居住空間(内部)や中庭などの所望の位置に太陽光を導く太陽光採光装置が知られている。
このような太陽光採光装置では、太陽光を受光して所望の位置に導くための反射鏡やプリズム、レンズなどを備えた採光部を支持する支持軸部が第一駆動機構によって軸線回りに回転することで、採光部の受光面の方位が変化する。また、第二駆動機構の駆動によって採光部が傾動することで、採光部の受光面の傾斜角(仰角)が変化する。そして、第一及び第二駆動機構を随時制御しながら駆動することで、採光部の受光面を、太陽を追尾するように移動させることができ、高度や方位、角度が変化する太陽の光を、確実に受光して下方の建築物の居住空間や中庭などの所望の位置に導光できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−81760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の太陽光採光装置では以下のような問題があった。
すなわち、上記の太陽光採光装置では、大容量を必要とする場合、1枚の反射鏡やプリズム、レンズなどを備えた採光部の寸法の大きなもの複数台採用することとなる。このように装置の大型化により、設置スペースの確保が困難になるうえ、装置の重量も大きくなるという問題があり、その点で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で大容量の採光が可能となるうえ、装置の小型化を図ることができる太陽光採光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る太陽光採光装置では、受光した太陽光を所望の位置に導くための太陽光採光装置であって、傾動可能な第1反射鏡と第2反射鏡とが2段に重なって配置され、第1反射鏡の第1回動軸と、第2反射鏡の第2回動軸とが異なる方向に向けて配置され、第1反射鏡及び第2反射鏡のいずれか一方を太陽光の入射側に配置した状態で、第1反射鏡の傾斜角度と第2反射鏡の傾斜角度とが太陽の位置に基づいて計算され、第1反射鏡と第2反射鏡とがそれぞれ別々に制御されることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る太陽光採光システムでは、上述した太陽光採光装置を用いた太陽光採光システムであって、複数の太陽光採光装置が採光面方向に連結されていることを特徴としている。
【0008】
本発明では、太陽光の入射側に設置した一方の反射鏡を太陽の位置に応じて効率的な反射が可能な傾斜角度に制御し、さらにその反射光を受ける他方の反射鏡を前記一方の反射鏡に応じた好適な傾斜角度に制御して、その他方の反射鏡によって反射した反射光を所望の位置に導光することができる。このように、第1反射鏡と第2反射鏡とが2段に分離されそれぞれの傾斜角度を計算して第1反射鏡と第2反射鏡を別々に制御することにより、反射光率を高めることができ、簡単な構造で大容量の採光が可能となる。
【0009】
また、第1反射鏡及び第2反射鏡が長尺板状の形状で、これらを2段に配置させた簡単な構造であり、2段で配置される第1反射鏡と第2反射鏡の幅寸法が太陽光採光装置の厚さ寸法となるので、装置全体を薄くすることができ、小型化を図ることができる。しかも、例えば第1反射鏡と第2反射鏡のそれぞれを並行に配列させて数量を増加させても、その配列方向の面積が大きくなるだけで済み、2段に配置される第1反射鏡及び第2反射鏡のみの厚さ寸法は変わらないので、装置自体の厚さ寸法を増大させずに反射鏡を増やすことができる。
【0010】
また、本発明に係る太陽光採光装置では、第1反射鏡と第2反射鏡とは、それぞれ間隔をもって複数並設されていることが好ましい。
【0011】
本発明では、複数の第1反射鏡を並設した第1反射鏡列群と、複数の第2反射鏡を並設した第2反射鏡列群とが2段に配置された太陽光採光装置を構成することになり、これにより大容量の採光を行うことができる。しかも、上述したように第1反射鏡と第2反射鏡の数量を増やす並設方向が装置の厚さ方向ではないので、装置の厚さ寸法を増大させずに反射鏡の数量を増やすことが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る太陽光採光装置では、第1回動軸と第2回動軸とが互いに直交していることが好ましい。
【0013】
この場合、入射側に設けられる一方の反射鏡の反射面と、導光側に設けられる他方の反射鏡の反射面とが直交する方向に配置されるため、入射側の反射鏡に対して太陽光が斜めに入射して反射した場合であっても、その反射光を導光側の反射鏡で確実に受けることができ、前記反射光のロスが少なくなって採光効率の低下を防ぐことができる。
【0014】
また、本発明に係る太陽光採光装置では、第1反射鏡及び第2反射鏡は、それぞれ両面に反射板が設けられていることが好ましい。
【0015】
この場合、入射側の一方の反射鏡の表裏面において移動する太陽光を入射させることができ、また導光側の他方の反射鏡の表裏面で入射側の反射鏡による反射光を入射させることが可能となる。つまり、太陽の位置に合わせて傾動させる第1反射鏡及び第2反射鏡の傾斜角度を小さくすることができるため、反射鏡を複数並設させる場合であっても隣り合う反射鏡同士の間隔を小さく、密にすることができる。したがって、同一の採光面積において反射鏡の数量を増やすことが可能となり、採光効率を向上させることができ、装置の大容量化を図ることができる。
【0016】
また、本発明に係る太陽光採光装置では、複数の第1反射鏡が第1駆動軸によって連動して所望の傾斜角度に傾動され、複数の第2反射鏡が第2駆動軸によって連動して所望の傾斜角度に傾動されることがより好ましい。
【0017】
このような構成により、複数の第1反射鏡を連動して同じ傾斜角度に傾動させ、複数の第2反射鏡を連動して同じ傾斜角度に傾動させることで、計算された傾斜角度に精度良く制御することができ、導光する位置のばらつきを防ぐことができ、採光精度を高めることができる。
【0018】
また、本発明に係る太陽光採光装置では、第1反射鏡及び第2反射鏡は、それぞれの配置枚数が異なっていてもよい。
【0019】
この場合、太陽光の反射ロスを少なくして、採光効率を高めるように、入射側に配置される反射鏡と導光側に配置される反射鏡の数量を適宜増減させることができる。
【0020】
また、本発明に係る太陽光採光装置では、第1反射鏡を太陽光の入射側に配置させ、その第1反射鏡で太陽光の東西成分又は南北成分のみを第2反射鏡側に向けて反射させ、その反射光を第2反射鏡で反射させて所定位置に向けて導光させる制御が行われることが好ましい。
【0021】
これにより、入射側に配置した第1反射鏡に入射する太陽光のベクトルを東西方向(又は南北方向)の方向余弦に分解し、東西成分(又は南北成分)の余弦のみを取り出し太陽光採光装置における東西方向(又は南北方向)に反射するように傾斜を算出して第1反射鏡を制御し、第1反射鏡によって反射した東西成分(又は南北成分)の太陽光を第2反射鏡で反射させて所定位置に向けて導光することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の太陽光採光装置及び太陽光採光システムによれば、2段に分離した第1反射鏡と第2反射鏡を重ねて配置する構成であるため、装置の小型化を図ることができる。また、第1反射鏡と第2反射鏡とのそれぞれの好適な傾斜角度を計算して別々に制御することで、反射光率を高めることができることから、簡単な構造で大容量の採光が可能となる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態による太陽光採光装置を使用した一例を示す斜視図である。
【図2】太陽光採光装置の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)は上段の方位鏡の並設状態を示す側面図、(b)は下段の仰角鏡の並設状態を示す側面図である。
【図4】(a)は上段の方位鏡の並設状態を示す平面図、(b)は下段の仰角鏡の並設状態を示す平面図である。
【図5】(a)は図4(a)に示すA−A線矢視図、(b)は図4(b)に示すB−B線矢視図である。
【図6】傾動装置の構成を示す上面図であって、一部の方位鏡を省略した図である。
【図7】上段の方位鏡における傾動装置の構成を示す側面図である。
【図8】第2の実施の形態による太陽光採光システムの構成を示す平面図である。
【図9】第3の実施の形態による太陽光採光装置を使用した他の例を示す側面図である。
【図10】第4の実施の形態による太陽光採光装置を使用した他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態による太陽光採光装置及び太陽光採光システムについて、図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本第1の実施の形態による太陽光採光装置1Aは、例えば建築物の屋根や屋上などに設置されて、太陽光Sを屋内の所望の位置に採光する際や、本実施の形態のように建物Kの屋根部外側に設置されて、建物Kに隣接する庭の所望の位置に採光する際に用いられるものである。ここで、図1の符号Mは、本実施の形態の太陽光採光装置1Aによる採光部を示している。また、図1は採光イメージの一例であり、2方向からの大陽光Sを示している。
なお、太陽光採光装置1Aにおける上下方向とは、図1に示す設置状態の場合とする。
【0026】
図1及び図2に示すように、太陽光採光装置1Aは、複数のルーバー状の反射鏡(方位鏡2及び仰角鏡3)を上下2段に配列させ、上段に方位角を調整可能な第1回動軸O1を有する複数の方位鏡2(第1反射鏡)を並設させ、下段に仰角を調整可能な第2回動軸O2を有する複数の仰角鏡3(第2反射鏡)を並設させた状態で箱状の外殻体4内に収納し、その外殻体4には第1回動軸O1及び第2回動軸O2のそれぞれを中心にして方位鏡2及び仰角鏡3を所望の角度に回動(傾動)させる傾動装置5(図6、図7参照)が設けられて概略構成されている。さらに、太陽光採光装置1Aには、方位鏡2及び仰角鏡3の傾斜角度を太陽の位置に応じて制御する制御部(図示省略)が備えられている。
ここで、太陽光採光装置1Aにおいて、第2回動軸O2に平行な方向を装置の東西方向Xとし、第1回動軸O1に平行な方向を装置の南北方向Yとする。なお、この東西方向X及び南北方向Yは、太陽光採光装置1Aにおける見かけ上の方向であって、真の東西南北方向とは異なるものである。
【0027】
外殻体4は、方位鏡2及び仰角鏡3を上下2段に配置させることが可能な箱形状をなし、上面及び下面が開放された構成、或いはアクリル製やガラス等の透明部材を備えた構成となっている。上面の一端には、傾動装置5や前記制御部に接続されるとともに、それら傾動装置5や制御部に太陽光Sより電力を供給するためのソーラーセル6が設けられている。
【0028】
なお、太陽光採光装置1Aは、方位鏡2を大陽光Sの入射側に向けた状態で、任意の傾き、方位に配置され、太陽光採光装置1Aの緯度、経度の位置と3軸(X、Y、Z)の傾きが検出された状態となっている。そして、太陽光採光装置1Aの検出値(緯度、経度の位置、及び傾き)と太陽の緯度と経度に基づいて、方位鏡角度T(第1反射鏡の傾斜角度)と仰角鏡角度R(第2反射鏡の傾斜角度)が前記制御部において計算され、方位鏡2と仰角鏡3との位置が制御され、照射位置(図1の採光部M)が求められるようになっている。
なお、太陽光採光装置1Aの緯度、経度については、日本測地系に基づいて位置確認できるが、例えばGPSを用いてその位置を確認するようにしても良い。
【0029】
図2乃至図5に示すように、方位鏡2は、第1回動軸O1を中心にして回転可能に設けられ、一方向(東西方向X)に向けて一定の間隔D1をあけて複数配列された方位鏡列群P1が2列設けられ、太陽の位置に応じて計算された方位鏡角度Tに傾動される。
仰角鏡3は、第2回動軸O2を中心にして回転可能に設けられ、他の一方向(南北方向Y)に向けて一定の間隔D2をあけて複数配列された仰角鏡列群P2が2列設けられ、方位鏡角度Tに応じて計算された仰角鏡角度Rに傾動される。
そして、方位鏡2は、仰角鏡3よりも配置数量が多く密に配置されている。
【0030】
方位鏡2及び仰角鏡3は、それぞれ長尺板状で両面2a、2b(3a、3b)が反射板をなしており、いずれか一方の面が入射する太陽光Sを所望の方向へ向けて反射させるようにして配置されている。つまり、方位鏡2及び仰角鏡3は、太陽の移動に合わせて表裏のいずれか一方の面で太陽光Sを入射することができる。
【0031】
方位鏡2は、太陽光Sを表面2a(又は裏面2b)で反射させる。このとき、太陽光Sの位置に応じて好適な方位鏡角度Tが計算され、仰角鏡3で入射する照度を最適な値とすることができる。
仰角鏡3は、方位鏡2による第1反射光を表面3a(又は裏面3b)で反射させた第2反射光S’(図1参照)を所定の採光位置(図1に示す採光部M)へ照射させるものである。このとき、仰角鏡角度Rを方位鏡角度Tに応じて傾斜させて調整することで、採光部Mの照度を最適な値とすることができる。
【0032】
上段に設けられる方位鏡列群P1と下段に設けられる仰角鏡列群P2は、上下2段に分離された構成となっている。上段の方位鏡2は、第1回動軸O1が下段の仰角鏡3の第2回動軸O2に対して直交する方向に向けて配置されている。
【0033】
これら方位鏡列群P1及び仰角鏡列群P2は、それぞれ傾動装置5によって連動し、隣り合う方位鏡2、2同士、及び仰角鏡3、3同士が互いに接触しない範囲で適宜、正回転及び逆回転の両方向に傾動する。
また、図3に示すように、上述したように方位鏡2の枚数が仰角鏡3よりも多く設けられており、上段の方位鏡2、2同士の間隔D1が下段の仰角鏡3、3同士の間隔D2よりも小さくなっている。
【0034】
図6及び図7に示すように、方位鏡2及び仰角鏡3は、上述した図示しない制御部によってそれぞれ所望の方位鏡角度T、仰角鏡角度Rになるように制御され、傾動装置5により動力が伝達され、上段の方位鏡2と下段の仰角鏡3とがそれぞれ別々に連動される構成となっている。ここで、図6及び図7は、方位鏡2(或いは仰角鏡3)の構成を説明するための図であるが、見易くするために主要な方位鏡2のみを示している。
【0035】
傾動装置5は、第1回動軸O1に平行に設けられる主軸51と、主軸51に回動軸力を付与する駆動モータ32と、方位鏡2の配列方向に沿って延在するとともに方位鏡2(仰角鏡3)を回動させる一対の駆動軸(第1駆動軸53、第2駆動軸54)と、それら第1駆動軸53、第2駆動軸54に主軸51の動力を伝達するためのリンク片55と、を備えている。
【0036】
第1駆動軸53は、軸方向の一端が主軸51に支持され、軸方向の所定位置において方位鏡2の第1回動軸O1に位置する回転中心2cに回転可能に支持している。一方、第2駆動軸54は、リンク片55を介して主軸51の動力が直接的に伝達され、方位鏡2の下端2dに回転可能に支持している。つまり、第2駆動軸54は、リンク片55の回転によって配列方向(第1回動軸O1に直交する水平方向)に沿って往復動可能となっている。
【0037】
複数の方位鏡2を連動させて所望の傾斜角度にする際には、駆動モータ52を駆動させて主軸51を所定の回転方向に回転させ、各リンク片55を介して第2駆動軸54が軸方向に移動させることで、第1駆動軸53によって回転中心2cが固定位置で支持された方位鏡2が傾動する構成となっている。
なお、図6及び図7において、方位鏡2の駆動機構について説明したが、仰角鏡3についても同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0038】
上述した制御部(図示省略)は、日時から求められる太陽の緯度及び経度に基づいて方位鏡角度Tと仰角鏡角度Rを算出し、この算出値(方位鏡角度Tと仰角鏡角度R)に基づいて方位鏡2及び仰角鏡3を制御するように構成されている。
【0039】
制御部では、方位鏡2を太陽光Sの入射側に配置させ、その反射面(表面2a、又は裏面2b)を略東西方向に向けて配置したときに、その方位鏡2で太陽光Sの東西成分のみを仰角鏡3側に向けて反射させ、その第1反射光を仰角鏡3で反射させ、その第2反射光S’を所定位置に向けて導光させる制御が行われるようになっている。
【0040】
次に、上述した構成からなる太陽光採光装置の制御方法と作用について、図面に基づいて説明する。
図2乃至図5に示すように、上述した太陽光採光装置1Aでは、太陽光Sの入射側に設置した方位鏡2を太陽の位置に応じて効率的な反射が可能な方位鏡角度Tに制御し、さらにその第1反射光を受ける仰角鏡3を方位鏡2に応じた好適な仰角鏡角度Rに制御して、その仰角鏡3によって反射した第2反射光S’を所望の位置に導光することができる。このように、方位鏡2と仰角鏡3とが上下2段に分離されそれぞれの方位鏡角度T、仰角鏡角度Rを計算して方位鏡2と仰角鏡3を別々に制御することにより、反射光率を高めることができ、簡単な構造で大容量の採光が可能となる。
【0041】
また、方位鏡2及び仰角鏡3が長尺板状の形状であり、これらを2段に配置させた簡単な構造であり、2段で配置される方位鏡2と仰角鏡3の幅寸法が太陽光採光装置1Aの厚さ寸法となるので、例えば10cm程度に装置全体を薄くすることができ、小型化を図ることができる。しかも、例えば方位鏡2と仰角鏡3のそれぞれを並行に配列させて数量を増加させても、その配列方向の面積が大きくなるだけで済み、上下2段に配置される方位鏡2及び仰角鏡3のみの厚さ寸法は変わらないので、装置自体の厚さ寸法を増大させずに反射鏡を増やすことができる。
【0042】
また、方位鏡2と仰角鏡3とは、それぞれ間隔をもって複数並設されており、複数の方位鏡2を並設した方位鏡列群P1と、複数の仰角鏡3を並設した仰角鏡列群P2とが2段に配置された太陽光採光装置1Aを構成することになり、これにより大容量の採光を行うことができる。しかも、上述したように方位鏡2と仰角鏡3の数量を増やす並設方向が装置の厚さ方向ではないので、装置の厚さ寸法を増大させずに方位鏡2及び仰角鏡3の数量を増やすことが可能となる。
【0043】
また、方位鏡2の第1回動軸O1と仰角鏡3の第2回動軸O2とが互いに直交しており、方位鏡2の反射面と、仰角鏡3の反射面とが直交する方向に配置されるため、方位鏡2に対して太陽光Sが斜めに入射して反射した場合であっても、その第1反射光を仰角鏡3で確実に受けることができ、前記反射光のロスが少なくなって採光効率の低下を防ぐことができる。
【0044】
さらに、方位鏡2及び仰角鏡3は、それぞれ両面に反射板が設けられているので、方位鏡2の表面10a、裏面10bにおいて移動する太陽光を入射させることができ、また仰角鏡3の表面20a、裏面20bで方位鏡2による第1反射光を入射させることが可能となる。つまり、太陽の位置に合わせて傾動させる方位鏡2及び仰角鏡3のそれぞれの傾斜角度(方位鏡角度T、仰角鏡角度R)を小さくすることができるため、方位鏡2及び仰角鏡3を複数並設させる場合であっても隣り合う反射鏡同士の間隔を小さく、密にすることができる。したがって、同一の採光面積において方位鏡2及び仰角鏡3の数量を増やすことが可能となり、採光効率を向上させることができ、装置の大容量化を図ることができる。
【0045】
また、第1駆動軸33Aによって複数の方位鏡2を連動して同じ傾斜角度に傾動させ、第2駆動軸33Bによって複数の仰角鏡3を連動して同じ傾斜角度に傾動させることで、計算された傾斜角度に精度良く制御することができ、導光する位置のばらつきを防ぐことができ、採光精度を高めることができる。
【0046】
また、入射側に配置される方位鏡2を導光側に配置される仰角鏡3の数量よりも多くすることで、太陽光の反射ロスを少なくして、採光効率を高めることができる。
【0047】
さらにまた、制御部における、太陽の軌道に応じて算出される方位鏡角度Tと仰角鏡角度Rの計算方法では、方位鏡2と仰角鏡3とを別々に制御する。具体的には、先ず方位鏡角度Tを算出する第1ステップと、仰角鏡角度Rを算出する第2ステップとが行われる。すなわち、第1ステップでは、方位鏡2に入射する太陽光Sのベクトルを東西方向の方向余弦に分解し、東西成分の余弦のみを取り出し太陽光採光装置1Aにおける東西方向Xに反射するように傾斜を算出して方位鏡2を制御する。第2ステップでは、方位鏡2によって反射した東西成分Xの太陽光Sを仰角鏡3で反射させた第2反射光S’を所定位置に向けて導光することができる。
【0048】
上述のように本実施の形態による太陽光採光装置及び太陽光採光システムでは、2段に分離した方位鏡2と仰角鏡3を重ねて配置する構成であるため、装置の小型化を図ることができる。
また、方位鏡2と仰角鏡3とのそれぞれの好適な傾斜角度(方位鏡角度T、仰角鏡角度R)を計算して別々に制御することで、反射光率を高めることができることから、簡単な構造で大容量の採光が可能となる効果を奏する。
【0049】
次に、本発明の太陽光採光装置及び太陽光採光システムによる他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0050】
(第2の実施の形態)
図8に示す第2の実施の形態は、上述した第1の実施の形態による太陽光採光装置1Aを採光面方向(太陽光採光装置1Aの東西方向X及び南北方向Y)に連結させた太陽光採光システム10を構成したものである。この太陽光採光システム10は、4つの太陽光採光装置1A、1A、…を連結しており、上段に配置される複数の方位鏡2、2、…は、東西方向Xに連結される装置1A、1A間で連続して並設する方位鏡列群P1を形成している。つまり、この太陽光採光システム10では、4つの方位鏡列群P1、P1、…が構成されている。
【0051】
そして、第1駆動軸53(第2駆動軸54)は、東西方向Xの装置1A、1A間で駆動軸連結部56を介して連結されている。また、主軸51についても、南北方向Yの装置1A、1A間で主軸連結部57を介して連結されている。そのため、各方位鏡列群P1は傾動装置5の1つの駆動モータ51を駆動させることで、主軸51と各リンク片55を介して第1駆動軸53(第2駆動軸54)に動力が伝達され、4つの太陽光採光装置1A、1A、…の全ての方位鏡2、2、が連動して同じ方位鏡角度になるように傾動する構成となっている。
【0052】
(第3の実施の形態)
図9に示す第3の実施の形態による太陽光採光装置1Bは、建物Eの庇の部分に方位鏡2を配置し、仰角鏡3の並設方向を上下方向に向けて設置した一例である。この場合、仰角鏡3で反射させた第2反射光S’が略水平方向に向けて照射されるので、その反射方向に別途、反射調整板7を設けて室内eを採光する構成となっている。
【0053】
(第4の実施の形態)
図10に示す第4の実施の形態による太陽光採光装置1Cは、建物Eの壁面Eaから採光する場合であって、採光面方向を縦置き(上下方向)に向けて設置した一例である。この場合、仰角鏡3で反射させた第2反射光S’が略水平方向に向けて照射されるので、その反射方向に別途、反射調整板7を設けて室内eを採光する構成となっている。
【0054】
以上、本発明による太陽光採光装置及び太陽光採光システムの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本第1の実施の形態では上段に方位鏡2を配置し、下段に仰角鏡3を配置ささせた構成としているが、これに限定されることはなく、上下を逆にして、上段の入射側に仰角鏡3を配置して、導光側の下段に方位鏡2を配置する構成にすることも可能である。この場合、上段の仰角鏡3の反射面を略南北方向に配置し、その仰角鏡3で太陽光Sの南北成分のみを下段の方位鏡2側に向けて反射させ、その反射光を方位鏡2で反射させて所定位置に向けて導光させる制御が行われる。
【0055】
また、方位鏡2及び仰角鏡3の数量も適宜設定することができ、本実施の形態のように上段の方位鏡2の数量を下段の仰角鏡3の数量よりも多くすることにも制限されることはなく、上下段の反射鏡が同数であってもかまわない。つまり、太陽光の反射ロスを少なくして、採光効率を高めるように、入射側に配置される反射鏡と導光側に配置される反射鏡の数量を適宜増減させることができる。
そして、方位鏡2、仰角鏡3のそれぞれの配列間隔も一定であることに限定されず、その間隔は適宜設定可能である。
【0056】
また、本実施の形態では方位鏡2の第1回動軸O1と仰角鏡3の第2回動軸O2とが直交しているが、直交であることに制限されることはなく、両回動軸O1、O2同士が互いに異なる方向に向けて配置されていればよい。
そして、本実施の形態では方位鏡2及び仰角鏡3の形状を長尺板状としているが、この形状に限定されることはなく、例えば円形状や正方形状(矩形状)などの形状のものを採用することも可能である。
【0057】
さらに、複数の方位鏡2及び複数の仰角鏡3のそれぞれを連動させる傾動装置5の構成は本実施の形態に限定されることはない。
さらにまた、上述した第2の実施の形態では4つの太陽光採光装置1Aを連結させた構成としているが、その連結数量や配置は使用条件に応じて任意に設定することが可能である。
また、本実施の形態では制御部への電力供給にソーラーセル6を用いているが、これに限定されることはなく、一般的な電源など他の電力供給手段を採用することも可能である。
【0058】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0059】
1A、1B、1C 太陽光採光装置
2 方位鏡(第1反射鏡)
3 仰角鏡(第2反射鏡)
4 外殻体
5 傾動装置
10 太陽光採光システム
53 第1駆動軸
54 第2駆動軸
M 採光部
O1 第1回動軸
O2 第2回動軸
P1 方位鏡列群
P2 仰角鏡列群
R 仰角鏡角度
S 太陽光
S’ 第2反射光
T 方位鏡角度
X 東西方向
Y 南北方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光した太陽光を所望の位置に導くための太陽光採光装置であって、
傾動可能な第1反射鏡と第2反射鏡とが2段に重なって配置され、
前記第1反射鏡の第1回動軸と、前記第2反射鏡の第2回動軸とが異なる方向に向けて配置され、
前記第1反射鏡及び前記第2反射鏡のいずれか一方を太陽光の入射側に配置した状態で、前記第1反射鏡の傾斜角度と前記第2反射鏡の傾斜角度とが太陽の位置に基づいて計算され、前記第1反射鏡と前記第2反射鏡とがそれぞれ別々に制御されることを特徴とする太陽光採光装置。
【請求項2】
前記第1反射鏡と前記第2反射鏡とは、それぞれ間隔をもって複数並設されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽光採光装置。
【請求項3】
前記第1回動軸と前記第2回動軸とが互いに直交していることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽光採光装置。
【請求項4】
前記第1反射鏡及び前記第2反射鏡は、それぞれ両面に反射板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の太陽光採光装置。
【請求項5】
前記複数の第1反射鏡が第1駆動軸によって連動して所望の傾斜角度に傾動され、
前記複数の第2反射鏡が第2駆動軸によって連動して所望の傾斜角度に傾動されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の太陽光採光装置。
【請求項6】
前記第1反射鏡及び前記第2反射鏡は、それぞれの配置枚数が異なっていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の太陽光採光装置。
【請求項7】
前記第1反射鏡を太陽光の入射側に配置させ、その第1反射鏡で太陽光の東西成分又は南北成分のみを前記第2反射鏡側に向けて反射させ、その反射光を前記第2反射鏡で反射させて所定位置に向けて導光させる制御が行われることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のされる太陽光採光装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の太陽光採光装置を用いた太陽光採光システムであって、
複数の前記太陽光採光装置が採光面方向に連結されていることを特徴とする太陽光採光システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−45640(P2013−45640A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182825(P2011−182825)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(390031978)株式会社テクネット (5)
【Fターム(参考)】