説明

太陽光発電システム、及び追尾制御装置

【課題】 逆潮流の発生を防止することができ、逆潮流を不可とする制約がある場合にも有効利用することが可能な太陽光発電システムを提供する。
【解決手段】 インバータの制御部が、バッテリによる逆潮流の回避可能性が有るか否か、バッテリの残容量SOCが上限値SOCuを越えているか否か、余剰分の電力がインバータの定格容量Pbcを越えているか否かを判断する。そして、逆潮流を生じさせるような状態にある場合、逆潮回避モードフラグをセットする。これを受けて(S230)、追尾制御装置の追尾制御部は、系統からの受電電力Prが閾値αを下回ると(S240:YES)、最適角度から遠ざけるように追尾角度を角度xずつずらす(S250)。つまり、太陽電池パネル11の角度を積極的に最適角度からずらす制御を行うことにより、太陽電池パネル11による発電電力を抑え、余剰分の電力が発生することを抑え、逆潮流の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統連系型のシステムであって、負荷による消費電力を太陽光発電装置による発電電力及び系統からの受電電力で賄う太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光は石油等の化石燃料に依存しない無限のエネルギーであり、この太陽光を電気エネルギーに変換する太陽電池を利用した太陽光発電システムは、地球温暖化防止対策の一つとして普及・拡大が期待されている。また、エネルギーセキュリティー上からもエネルギー源として重要である。
【0003】
太陽光発電システムで用いられる太陽電池の最小単位である太陽電池セルは、それ単体では出力が小さいため、通常は、出力電圧を上げるために直列接続して太陽電池モジュールを構成したり、さらに出力電圧を上げるために太陽電池モジュールを直列接続して太陽電池ストリングを構成したり、出力電力を上げるために太陽電池モジュール又は太陽電池ストリングを並列接続して太陽電池アレイを構成する。
【0004】
そして、一般によく知られている太陽光発電システムでは、これら太陽電池モジュール、太陽電池ストリング、又は太陽電池アレイから出力される直流の発電電力を、パワーコンディショナにて交流電力に変換して、負荷に供給したり交流系統に連系したりしている。このとき、太陽光発電システムによる発電電力が負荷よりも小さい場合には交流系統からの受電が行われる。一方、太陽光発電システムによる発電電力が負荷よりも大きくなると、余剰分の発電電力が系統へ逆流させられる、いわゆる「逆潮流」が発生する。
【0005】
従来、太陽光発電システムを構成する場合、通常、その発電電力を最大にするような工夫がなされる。例えば、太陽電池ユニットのパネル上面が太陽光に向くように傾斜させられる装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、この装置は、蓄電部と制御部とを備える筐体が太陽光を直接的に受けないようにして、その温度上昇を抑制するためのものである。
【0006】
このように太陽電池ユニットのパネルを傾斜させるという思想を利用すれば、自動的にパネルが太陽光の方向を向くようにパネルの角度を制御することが考えられる。具体的には、太陽が東の空から南の空を通って西の空へ移動することを考慮し、例えば鉛直方向を回転軸にして、パネルを回動させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−261567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、発電電力を最大にするように太陽光発電システムを運営するのが一般的であるが、上述した「逆潮流」を不可とする場合がある。例えば、「逆潮流」では電力会社が発電電力を買い上げることになり「売電」が行われることになるが、太陽光発電システムが益々普及するに連れ、「売電」が制限されることがあり得る。逆潮流を不可とする制約がある場合、逆潮流が発生すると、即座に遮断機によってシステム全体が遮断され、負荷への電力供給もできなくなる。この場合、手動による復帰を余儀なくされ、結果として、太陽光発電システムの有効利用が阻害される事態が生じる。
【0009】
例えば図6(a)に示すように、負荷100が100kWであって太陽光発電システム200の発電電力が80kWである場合、系統から20kWの電力が供給される。このとき、図6(b)に示すように、負荷100が70kWに減ると、太陽光発電システム200の発電電力80kWが負荷を上回るため、余剰分の10kWが系統へ逆流する「逆潮流」が生じる。ここで特に「逆潮流」が不可となっている場合、図6(c)に示すように、遮断機300によってシステム全体が遮断される。結果として、80kWの発電が可能であるにもかかわらず、その恩恵を受けることができず、負荷100への電力も供給されなくなる。
【0010】
また、別の手法として、逆潮流を不可とする制約がある場合、系統からの受電電力を基準に太陽光発電システムを停止させる手法がある。この場合も、太陽光発電システムの有効利用が阻害される事態が生じる。
【0011】
例えば図7(a)に示すように、負荷100が100kWであって太陽光発電システム200の発電電力が80kWである場合、系統から20kWの電力が供給される。ここで受電電力の閾値が10kWに設定されているものとする。このとき、図7(b)に示すように、負荷100が85kWに減ると、受電電力が5kWとなり受電電力の閾値10kWを下回るため、「逆潮流」の防止を目的として開放指示が送出される。これにより、図7(c)に示すように、遮断機400(あるいは、PCS)によって太陽光発電システム200の発電電力が遮断される。結果として、80kWの発電が可能であるにもかかわらず、その恩恵を受けることができず、系統より85kWを受電することになってしまう。
【0012】
さらにまた、別の手法として、逆潮流を不可とする制約がある場合、予め太陽光発電システムの運転スケジュールを決めておき、太陽光発電システムを停止させておく手法もある。この場合も、太陽光発電システムの有効利用が阻害される事態が生じる。
【0013】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、逆潮流の発生を防止することができ、逆潮流を不可とする制約がある場合にも有効利用することが可能な太陽光発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の太陽光発電システムは、系統連系型のシステムであって、負荷による消費電力を太陽光発電装置による発電電力及び系統からの受電電力で賄うものであり、太陽光発電装置と追尾制御装置とを備える。
【0015】
太陽光発電装置は、太陽光を受光することにより発電する太陽電池パネル、及び、当該太陽電池パネルの角度を変更可能なパネル駆動部を有する。
太陽電池パネルは、複数の太陽電池セルが直列接続されてなる太陽電池モジュール、複数の太陽電池モジュールが直列接続されてなる太陽電池ストリング、又は、複数の太陽電池モジュール若しくは複数の太陽電池ストリングが並列接続されてなる太陽電池アレイで構成することが例示される。
【0016】
また、太陽電池パネルの角度は、パネル駆動部によって変更可能となっている。太陽電池パネルの角度とは、予め定められた回転軸周りの回動角度である。自由度を高めるためには、回転軸を複数軸(二軸あるいは三軸)とすることが考えられる。ただし、構造を単純化するためには、回転軸を一軸にするとよい。例えば、鉛直方向を回転軸にするという具合である。
【0017】
追尾制御装置は、追尾制御部を有し、この追尾制御部によって、パネル駆動部を介し、太陽電池パネルの角度が、受光のための最適角度に制御される。最適角度は、刻一刻と変わるものであるため、例えば請求項9に示すように、追尾制御装置が、最適角度を記憶するためのデータ記憶部を有していることとしてもよい。例えば季節毎の各時間帯における最適角度をデータ記憶部に記憶しておけば、最適角度への制御は、比較的容易に実現される。
【0018】
このようなシステムでは、負荷による消費電力を太陽光発電装置の発電電力と系統からの受電電力とで賄うため、太陽光発電装置の発電電力が増加したり、負荷による消費電力が減少したりすると、系統からの受電電力は減少する。ここで特に本発明では、系統からの受電電力が開始閾値を下回ると、追尾制御部によって、太陽電池パネルの角度を最適角度から遠ざける逆潮回避制御が実行される。つまり、太陽電池パネルの角度を積極的に最適角度からずらす制御を行うことにより、太陽電池パネルの発電電力を抑え、余剰分の電力が発生することを抑えるのである。このようにすれば、逆潮流の発生を防止することができ、逆潮流を不可とする制約がある場合にも有効利用することができる。
【0019】
なお、逆潮回避制御が実行された後、請求項2に示すように、系統からの受電電力が終了閾値を上回ると、太陽電池パネルの角度を最適角度に近づける復帰制御を実行することが好ましい。ここで終了閾値は、上述した開始閾値以上に設定される。ただし、終了閾値と開始閾値とが等しい場合には、ハンチングなどの問題が生じるため、終了閾値は開始閾値を上回るものとすることが望ましい。このようにすれば、受電電力が安定し逆潮流発生の可能性が小さくなった場合、復帰制御によって太陽電池パネルの角度が最適角度に近づけられるため、発電電力を大きくすることができ、システムの有効利用に寄与する。
【0020】
また、請求項3に示すように、系統からの受電電力が開始閾値以上で且つ終了閾値以下である場合、太陽電池パネルの角度を維持する維持制御を実行することが考えられる。このようにすれば、発電電力が安定する可能性が高く、これに伴って受電電力も安定する可能性が高くなるため、適切な制御が実現される。
【0021】
ところで、逆潮を回避するという観点からは、請求項4に示すように、逆潮回避制御における角度変更ついては、復帰制御における角度変更に比べ、単位時間あたりの変更度合いを大きくすることが好ましい。つまり、発電電力を減少させる側の制御は迅速に行い、発電電力を増加させる側の制御は緩慢に行うのである。このようにすれば、逆潮流の発生を防止するという効果が際だつ。
【0022】
なお、太陽光発電システムでは、余剰電力を充電しておき、必要に応じて当該充電した電力を取り出すためのバッテリを備える構成が一般的である。そのため、余剰電力を充電することで逆潮流を回避できるならば、上述した逆潮回避制御を実行する必要はない。
【0023】
そこで、請求項5に示すように、負荷による消費電力以上の余剰電力を充電するためのバッテリと、バッテリへ電力を供給する電力供給制御及びバッテリから電力を取り出す電力取出制御を実行可能で、逆潮回避制御の開始条件の成立を判断する制御部を有するインバータと、を備える構成の下、制御部にて開始条件が成立したと判断されたときに、系統からの受電電力が開始閾値を下回ると、追尾制御部によって逆潮回避制御が実行される構成としてもよい。このようにすれば、充電した電力を利用しつつも逆潮流の発生を防止することができ、逆潮流を不可とする制約がある場合にもシステムを有効利用することができる。
【0024】
具体的には、請求項6に示すように、制御部は、バッテリの状況からバッテリによる逆潮流の回避が困難である場合に、開始条件が成立したと判断することが例示される。例えば、バッテリが完全充電されたような状態にある場合が挙げられる。このようにすれば、適切な開始条件の下で、上述した逆潮流制御が実行される。
【0025】
また具体的には、請求項7に示すように、制御部は、バッテリの残容量が予め定められる上限値を越えている場合に、開始条件が成立したと判断することが例示される。このようにすれば、適切な開始条件の下で、上述した逆潮流制御が実行される。
【0026】
さらにまた具体的には、制御部は、余剰電力がインバータの定格容量を越えている場合に、開始条件が成立したと判断することが例示される。バッテリの残容量が少なくバッテリに余裕がある場合であっても、インバータの定格容量を越える場合には、逆潮流が生じるためである。このようにすれば、適切な開始条件の下で、上述した逆潮流制御が実行される。
【0027】
以上は、太陽光発電システムの発明として説明したが、請求項10に示すように、太陽光発電システムを構成する追尾制御装置の発明として実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】太陽光発電システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】インバータ処理を示すフローチャートである。
【図3】追尾処理を示すフローチャートである。
【図4】閾値と制御との関係を示す説明図である。
【図5】負荷による消費電力、バッテリ電力、太陽光発電装置による発電電力、及び系統からの受電電力の関係を示す説明図である。
【図6】従来の逆潮流回避の手法を示す説明図である。
【図7】従来の逆潮流回避の手法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、太陽光発電システム1の概略構成を示すブロック図である。
太陽光発電システム1は、電力を消費する構成である負荷50に接続されると共に、系統連系システムとして系統に接続されている。系統への接続部分には、系統からの受電電力を計測するための計測部60が設けられている。
【0030】
また、太陽光発電システム1は、太陽光発電装置10、追尾制御装置20、インバータ30、及び、バッテリ40を備えている。
太陽光発電装置10は、太陽電池パネル11を有しており、太陽電池パネル11に太陽光が照射されることで発電を行う。太陽電池パネル11は、複数の太陽電池セルが直列接続されてなる太陽電池モジュール、複数の太陽電池モジュールが直列接続されてなる太陽電池ストリング、又は、複数の太陽電池モジュール若しくは複数の太陽電池ストリングが並列接続されてなる太陽電池アレイで構成されている。また、太陽光発電装置10は、太陽電池パネル11を駆動するパネル駆動部12を有している。パネル駆動部12は、モータなどで構成されており、ある傾斜を持って配置される太陽電池パネル11を、鉛直方向を回転軸として回動可能となっている。なお、太陽電池パネル11からの直流の発電電力は、図示しないPCSにより交流の発電電力に変換される。
【0031】
追尾制御装置20は、太陽光発電装置10の太陽電池パネル11を、パネル駆動部12を介して回動制御するための構成である。この追尾制御装置20は、追尾制御部21、及び、データ記憶部22を有している。追尾制御部21は、いわゆるコンピュータであり、パネル駆動部12を介し、太陽電池パネル11の回動を制御する。太陽電池パネル11の最適角度は、例えば数分、数十分ごとのデータとして、データ記憶部22に記憶されている。また、追尾制御装置20へは、上述した計測部60から受電点の電圧と電流の情報が入力されるようになっている。
【0032】
かかる構成により、追尾制御装置20では、追尾制御部21が追尾処理を行う。追尾処理は、データ記憶部22から太陽電池パネル11の最適角度を逐次読み出し、パネル駆動部12を介し、太陽電池パネル11を最適角度に保持するものである。
【0033】
そして、太陽光発電装置10の発電電力Ppv、バッテリ電力Pbatt、及び、系統からの受電電力Prで、負荷による消費電力Plを賄う。このとき、太陽光発電装置10の発電電力Ppvと系統からの受電電力Prで負荷Plを賄える状態になると、余剰分の電力は、バッテリ40へ充電されることになる。
【0034】
インバータ30は、バッテリ40の充放電を制御すると共に直流/交流変換を行う電力変換装置である。インバータ30は、制御部31を有し、バッテリ40の充電状態などを監視して、後述する「逆潮回避モードフラグ」をセット/リセットする。なお、インバータ30へは、上述した計測部60から受電点の電圧と電流の情報が入力されるようになっている。
【0035】
バッテリ40は、太陽光発電装置10で発電される電力を充電するための構成である。バッテリ40に対する充電、及び、バッテリ40からの電力の取り出しは、インバータ30によって管理される。
【0036】
次に、インバータ処理について説明する。図2は、インバータ処理を示すフローチャートである。このインバータ処理は、インバータ30の制御部31によって所定間隔で繰り返し実行される。
【0037】
最初のS100において、バッテリによる逆潮流の回避可能性の有無を判断する。この処理は、バッテリ40の運用モードなどに基づき、追尾処理を継続した場合でもバッテリ40によって逆潮流が防止できる可能性の有無を判断するものである。例えば、バッテリ40のメンテナンス時など、受電電力や負荷50による消費電力に関係なく一定電力で充電または放電するモードでバッテリ40が運用される場合には否定判断される。ここで逆潮流の回避可能性が有る判断された場合(S100:YES)、S110へ移行する。一方、逆潮流の回避可能性が無いと判断された場合(S100:NO)、S110及びS120の処理を実行せず、S130へ移行する。
【0038】
S110では、バッテリ40の残容量SOCが残容量の上限値SOCuよりも大きいか否かを判断する。ここで残容量SOC>上限値SOCuである場合(S110:YES)、すなわちバッテリ40が完全充電状態に近い場合には、S130へ移行する。一方、残容量≦上限値SOCuである場合(S110:NO)、すなわち、バッテリ40に余裕がある場合には、S120へ移行する。
【0039】
S120では、太陽電池ユニットの発電電力Ppvから負荷Plを減じたものに閾値αを加えたものが、インバータ30の定格容量Pbcよりも大きいか否かを判断する。なお、閾値αについては後述する。この処理は、充電しようとする電力が、インバータ30の定格容量Pbcを上回っているか否かを判断するものである。ここで(Ppv−Pl+α)>Pbcである場合(S120:YES)、S130へ移行する。一方、(Ppv−Pl+α)≦Pbcである場合(S120:NO)、S140へ移行する。
【0040】
S100で否定判断された場合、S110で肯定判断された場合、又は、S120で肯定判断された場合に移行するS130では、逆潮回避モードフラグをセットする。一方、S140では、逆潮回避モードフラグをリセットする。
【0041】
次に、追尾処理について説明する。図3は、追尾処理を示すフローチャートである。この追尾処理は、追尾制御装置20の追尾制御部21によって所定間隔で繰り返し実行される。
【0042】
最初のS200において、最適角度及び各設定値を読み込む。最適角度は、太陽電池パネル11の最適角度を示すものであり、データ記憶部22から読み込まれる。また、各設定値には、受電電力の標準値(例えば10kW)、制御に用いる閾値α,βなどが含まれる。
【0043】
続くS210では、制御対象時間か否かを判断する。追尾処理は、夜間は行わない。したがって、この処理は、太陽が出ていない夜間などの時間帯であるか否かを判断するものである。ここで制御対象時間であると判断された場合(S210:YES)、S220へ移行する。一方、制御対象時間でないと判断された場合(S210:NO)、以降の処理を実行せず、追尾処理を終了する。
【0044】
S220では、受電電力Prを計測する。この処理は、計測部60から入力される受電点の電圧と電流の情報に基づき、系統からの受電電力Prを計測するものである。
続くS230では、フラグがセットされているか否かを判断する。この処理は、インバータ30において、逆潮回避モードフラグがセットされているか否かを判断するものである。逆潮回避モードフラグは、上述したインバータ処理のS130でセットされる(図2参照)。ここでフラグがセットされていると判断された場合(S230:YES)、S240へ移行する。一方、フラグがセットされていないと判断された場合(S230:NO)、S270へ移行する。
【0045】
S240では、受電電力Prが閾値αよりも小さいか否かを判断する。閾値αは、逆潮が生じる(受電電力Pr<0となる)可能性が大きくなったことを判断するため、受電電力Prの閾値として設定されるものである。ここでPr<αである場合(S240:YES)、S250へ移行する。一方、Pr≧αである場合(S240:NO)、S260へ移行する。
【0046】
S240で肯定判断された場合に移行するS250では、追尾角度を角度xだけ最適角度から遠ざける。追尾角度とは、太陽電池パネル11の角度である。ここでは、最適角度から離れる方向へ角度xだけ太陽電池パネル11の角度をずらす。なお、角度xは、予め設定しておいてもよいし、テーブルなどから読み出すようにしてもよい。
【0047】
S240で否定判断された場合に移行するS260では、受電電力Prが閾値βよりも大きいか否かを判断する。閾値βは、逆潮が生じる可能性が小さくなったことを判断するため、受電電力Prの閾値(β>α)として設定されるものである。ここでPr>βである場合(S260:YES)、S270へ移行する。一方、Pr≦βである場合(S260:NO)、以降の処理を実行せず、S290へ移行する。
【0048】
S270では、追尾角度が最適角度であるか否かを判断する。ここで追尾角度が最適角度であると判断された場合(S270:YES)、S280の処理を実行せず、S290へ移行する。一方、追尾角度が最適角度でないと判断された場合(S270:NO)、S280へ移行する。
【0049】
S280では、追尾角度を角度yだけ最適角度へ近づける。ここでは、最適角度に近づく方向へ角度yだけ太陽電池パネル11の角度をずらす。なお、角度yは、予め設定しておいてもよいし、テーブルなどから読み出すようにしてもよい。なお、本実施形態では、角度x>角度yの関係を満たすように設定されている。
【0050】
S290では、所定時間が経過したか否かを判断する。この処理は一定間隔で追尾処理を実行するためのホールド処理である。ここで所定時間が経過したと判断された場合(S290:YES)、追尾処理を終了する。一方、所定時間が経過していないうちは(S290:NO)、S290の判断処理を繰り返す。
【0051】
つまり、追尾処理では、逆潮回避モードフラグがセットされていることを前提として(図3中のS230:YES)、図4に記号aで示すように系統からの受電電力Pr<閾値αになると(S240:YES)、最適角度から遠ざけるように追尾角度が角度xだけずらされる(S250)。また、記号bで示すように受電電力Pr<閾値αのうちは、角度xずつ追尾角度をずらし続ける。その後、記号cで示すように閾値α≦受電電力Pr≦閾値βになると(S260:NO)、その時点の追尾角度が維持される。そして、記号dで示すように、受電電力Pr>閾値βになると(S260:YES)、最適角度になるまで角度yずつ追尾角度が最適角度へ近づけられる(S270:NO,S280)。
【0052】
次に、本実施形態の太陽光発電システム1の発揮する効果を説明する。
ここでは、最初に、従来の問題を説明し、次に、本実施形態による効果を説明する。
図5(a)に示すように、通常時は、太陽光発電装置10の発電電力Ppv、系統からの受電電力Pr、及び、バッテリ電力Pbattで、負荷による消費電力Plを賄うことになる(記号a,b)。ところが負荷による消費電力Plの減少あるいは太陽光発電装置10の発電電力Ppvの増加などにより、電力の余剰分が生じると、余剰分の電力がバッテリ40へ充電される(記号c)。ところが、このような状況が進み、充電しようとする余剰分がインバータ30の定格容量を上回ったり、あるいは、バッテリ40の空きが少なくなったりすると、逆潮流が生じることになる(記号d)。
【0053】
そこで、本実施形態では、インバータ30の制御部31が、バッテリによる逆潮流の回避可能性の有無(図2中のS100)、バッテリ40の残容量SOCが上限値SOCuを越えているか否か(S110)、余剰分の電力がインバータ30の定格容量Pbcを越えているか否かを判断する(S120)。すなわち、図5(a)に記号dで示すような状態となる可能性を判断する。そして、逆潮流を生じさせるような状態にある場合、逆潮回避モードフラグをセットする(S130)。これを受けて、追尾制御装置20の追尾制御部21は、系統からの受電電力Prが閾値αを下回ると(S240:YES)、最適角度から遠ざけるように追尾角度を角度xずつずらす(S250)。つまり、太陽電池パネル11の角度を積極的に最適角度からずらす制御を行うことにより、太陽電池パネル11による発電電力を抑え、余剰分の電力が発生することを抑えるのである。
【0054】
これにより、図5(b)に記号eで示すように、太陽電池パネル11による発電電力が抑えられ、余剰分の電力は、バッテリ40への充電が可能な電力に抑えられる。かかる構成により、受電電力Prは、例えば常時10kWという具合に安定して供給されることになる。これにより、逆潮流の発生を防止することができ、逆潮流を不可とする制約がある場合にも有効利用することができる。
【0055】
また、本実施形態では、図4中の記号dで示すように受電電力Pr>閾値βになると(図3中のS260:YES)、最適角度になるまで角度yずつ追尾角度が最適角度へ近づけられる(S270:NO,S280)。これにより、受電電力Prが安定し逆潮流発生の可能性が小さくなった場合、太陽電池パネル11の角度が最適角度に近づけられるため、発電電力Ppvを大きくすることができ、システムの有効利用に寄与する。
【0056】
さらにまた、本実施形態では、図4中の記号cで示すように閾値α≦受電電力Pr≦閾値βになると(図3中のS260:NO)、その時点の追尾角度が維持される。これにより、発電電力Ppvが安定する可能性が高くなり、これに伴って受電電力Prも安定する可能性が高くなるため、適切な制御が実現される。
【0057】
また、本実施形態では、追尾角度を最適角度から遠ざける場合の角度xが、最適角度へ近づける場合の角度yよりも大きく設定されている。つまり、発電電力Ppvを減少させる側の制御は迅速に行い、発電電力Ppvを増加させる側の制御は緩慢に行うのである。これにより、逆潮流の発生を防止するという効果が際だつ。
【0058】
さらにまた、本実施形態では、インバータ30の制御部31がバッテリ40の充電能力などを判断して逆潮回避モードフラグをセットし(図2中のS130)、この逆潮回避モードフラグがセットされている場合に(図3中のS230:YES)、太陽電池パネル11の角度が調整される(S250,S280)。これにより、充電した電力を利用しつつも逆潮流の発生を防止することができ、逆潮流を不可とする制約がある場合にもシステムを有効利用することができる。
【0059】
このとき、インバータ30の制御部31は、バッテリ40による逆潮流の回避可能性の有無を判断し(図2中のS100)、逆潮流の回避可能性が無い場合に(S100:NO)、逆潮回避モードフラグをセットする(S130)。これにより、適切な条件の下で、太陽電池パネル11の角度調整が実行される。
【0060】
また、インバータ30の制御部31は、バッテリ40の残容量SOCが上限値SOCuを越えている場合に(図2中のS110:YES)、逆潮回避モードフラグをセットする(S130)。これにより、適切な条件の下で、太陽電池パネル11の角度調整が実行される。
【0061】
さらにまた、インバータ30の制御部31は、余剰分の電力がインバータ30の定格容量Pbcを越えている場合に(図2中のS120:YES)、逆潮回避モードフラグをセットする(S130)。これにより、適切な条件の下で、太陽電池パネル11の角度調整が実行される。
【0062】
また、本実施形態では、追尾制御装置20がデータ記憶部22を有しており、このデータ記憶部22に、太陽電池パネル11の最適角度が予め記憶されている。これにより、最適角度に対する太陽電池パネル11の角度調整が比較的簡単な構成で実現できる。
【0063】
なお、本実施形態における太陽光発電システム1が「太陽光発電システム」を構成し、負荷50が「負荷」を構成し、太陽光発電装置10が「太陽光発電装置」を構成し、太陽電池パネル11が「太陽電池パネル」を構成し、パネル駆動部11が「パネル駆動部」を構成し、追尾制御装置20が「追尾制御装置」を構成し、追尾制御部21が「追尾制御部」を構成し、データ記憶部22が「データ記憶部」を構成し、バッテリ40が「バッテリ」を構成し、インバータ30が「インバータ」を構成し、制御部31が「制御部」を構成する。
【0064】
また、閾値αが「開始閾値」に相当し、閾値βが「終了閾値」に相当する。
さらにまた、図3中のS220、S240及びS250の処理が「逆潮回避制御」に相当し、S220、S240、S260〜S280の処理が「復帰制御」及び「維持制御」に相当する。
【0065】
以上、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施できる。
例えば上記実施形態では、太陽電池パネル11が鉛直方向を回転軸として回動する構成となっているが、例えば南向きに固定して設置される太陽電池パネルの仰角だけが変更される構成としてもよい。また例えば、複数の回転軸周りに太陽電池パネルが回動するような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1:太陽光発電システム
10:太陽光発電装置
11:太陽電池パネル
12:パネル駆動部
20:追尾制御装置
21:追尾制御部
22:データ記憶部
30:インバータ
31:制御部
40:バッテリ
50:負荷
60:計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷による消費電力を発電電力及び、系統からの受電電力で賄う系統連系型の太陽光発電システムであって、
太陽光を受光することにより発電する太陽電池パネル、及び、当該太陽電池パネルの角度を変更可能なパネル駆動部を有する太陽光発電装置と、
前記パネル駆動部を介し前記太陽電池パネルの角度を受光のための最適角度に制御する追尾制御部を有する追尾制御装置と、を備え、
前記追尾制御部は、前記系統からの受電電力が開始閾値を下回ると、前記太陽電池パネルの角度を前記最適角度から遠ざける逆潮回避制御を実行すること
を特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽光発電システムにおいて、
前記追尾制御部は、前記系統からの受電電力が前記開始閾値以上に設定される終了閾値を上回ると、前記太陽電池パネルの角度を前記最適角度に近づける復帰制御を実行すること
を特徴とする太陽光発電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の太陽光発電システムにおいて、
前記追尾制御部は、前記系統からの受電電力が前記開始閾値以上で且つ前記終了閾値以下である場合、前記太陽電池パネルの角度を維持する維持制御を実行すること
を特徴とする太陽光発電システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の太陽光発電システムにおいて
前記逆潮回避制御における角度変更は、前記復帰制御における角度変更に比べ、単位時間あたりの変更度合いが大きくなっていること
を特徴とする太陽光発電システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の太陽光発電システムにおいて、
前記負荷による消費電力以上の余剰電力を充電するためのバッテリと、
前記バッテリへ電力を供給する電力供給制御及び前記バッテリから電力を取り出す電力取出制御を実行可能で、前記逆潮回避制御の開始条件の成立を判断する制御部を有するインバータと、をさらに備え、
前記追尾制御部は、前記制御部にて前記開始条件が成立したと判断されたときに、前記系統からの受電電力が前記開始閾値を下回ると、前記逆潮回避制御を実行すること
を特徴とする太陽光発電システム。
【請求項6】
請求項5に記載の太陽光発電システムにおいて、
前記制御部は、前記バッテリの状況から前記バッテリによる逆潮流の回避が困難である場合に、前記開始条件が成立したと判断すること
を特徴とする太陽光発電システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の太陽光発電システムにおいて、
前記制御部は、前記バッテリの残容量が予め定められる上限値を越えている場合に、前記開始条件が成立したと判断すること
を特徴とする太陽光発電システム。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか一項に記載の太陽光発電システムにおいて、
前記制御部は、前記余剰電力が前記インバータの定格容量を越えている場合に、前記開始条件が成立したと判断すること
を特徴とする太陽光発電システム。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の太陽光発電システムにおいて、
前記追尾制御装置は、前記最適角度データを記憶するためのデータ記憶部を有していること
を特徴とする太陽光発電システム。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の太陽光発電システムに用いられる追尾制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−174973(P2012−174973A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37107(P2011−37107)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】