説明

太陽光発電システム

【課題】昇温による太陽電池の発電効率の低下が発生し難く、冷却用水の水質悪化を防止することができ、周辺領域の気温上昇を抑制することもできる、太陽光発電システムを提供する。
【解決手段】太陽光発電システム10は、周囲の地面より低位置にある地盤11上に敷設された遮水性のシート材12と、シート材12の上面に形成された貯水層13と、貯水層13の上面に形成された透水性濾過層14と、透水性濾過層14の上面に形成された透水性保水層15と、を備え、透水性保水層15上に複数の太陽電池パネル16が設置され、貯水層13内に貯留された水Wを太陽電池パネル16に散水する散水手段である送水管17及びポンプPが設けられている。また、透水性保水層15の表面の全体にわたって地被植物18の生育領域が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光によって電力を発生させる太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽エネルギの有効利用を図るために太陽電池パネルを設置したり、夏場の室内温度の上昇を抑制するために建築物の屋上などに緑化領域を設けたりする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、太陽電池は、その温度が上昇するほど発電効率が低下する性質があるため、稼働中の太陽電池パネルの表面に散水して冷却することにより、発電効率の低下を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−296442号公報
【特許文献2】特開2010−34108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された「高所緑地への散水装置」は、太陽電池パネル(ソーラーパネル)の冷却手段を備えていないので、夏場などは気温上昇による発電効率の低下を回避することができない。また、屋上緑地に降った雨などは土壌を通過して、そのまま地下貯水槽に導入されるので、水の循環を行う機能を有していても、地下貯水内の水質が徐々に悪化し、様々な弊害を生じるおそれがある。
【0006】
一方、特許文献2記載の「太陽電池パネルの冷却装置」は、雨水貯留槽に貯留された雨水を循環させながら太陽電池パネルに散水する方式であるため、夏場などの高温時期は、雨水貯留槽内の冷却用水の温度が上昇し、冷却機能が低下することがある。また、雨水貯留槽内で水質悪化した水を太陽電池パネルに散水されると、太陽電池パネルが徐々に汚損し、発電効率が低下するおそれもある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、昇温による太陽電池の発電効率の低下が発生し難く、冷却用水の水質悪化を防止することができ、周辺領域の気温上昇を抑制することもできる、太陽光発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の太陽光発電システムは、周囲の地面より低位置にある地盤上に敷設された遮水性のシート材と、前記シート材の上面に形成された貯水層と、前記貯水層の上面に形成された透水性濾過層と、前記透水性濾過層の上面に形成された透水性保水層と、を備え、前記透水性保水層上に設置された太陽電池パネルと、前記貯水層内に貯留された水を前記太陽電池パネルに散水する散水手段と、を設けたことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、貯水層内に貯留された水を散水手段で太陽電池パネルに散水することにより、太陽電池を冷却することができるので、昇温による太陽電池の発電効率の低下が発生し難い。また、太陽電池パネルが設置された透水性保水層に降り注いだ雨水は、透水性保水層及び透水性濾過層を通過して浄化された後、貯水層内に貯留されるので、冷却用水の水質悪化を防止することができる。また、気温の高い時期は、透水性保水層に含まれる水分が蒸発する際に気化熱を奪っていくので、周辺領域の気温上昇を抑制することもできる。
【0010】
ここで、前記透水性保水層に地被植物の生育領域を設けることが望ましい。このような構成とすれば、透水性保水層における雑草繁殖を抑制することができるほか、透水性保水層からの輻射熱による太陽電池パネルの昇温も防止することができる。
【0011】
また、前記透水性濾過層が、当該透水性濾過層を通過する水分中の懸濁成分を吸着する機能を有する多孔質材料を含むものであることが望ましい。このような構成とすれば、雨水などに含まれる微細な物質が、透水性濾過層の通過中に除去されるため、貯水層に流入する水の清浄度を高めることができる。
【0012】
この場合、前記多孔質物質として、木炭、竹炭、籾殻炭のうちのいずれか1以上を用いれば、雨水などに含まれる微細な物質を効率よく吸着、除去することができる。また、これらの多孔質材料は天然由来の物質であるため、環境汚染を生じるおそれもない。
【0013】
一方、前記透水性保水層は、土材、セメント系固化剤及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成したものであることが望ましい。このような構成とすれば、前記混合物を透水性濾過層上に打設して、固化させるだけで透水性保水層を形成することができるため、施工を容易化することができる。この場合、土材とセメント系固化剤とを混合した後、団粒化剤を加えると、イオンの作用により、土材とセメント系固化剤の粒子とが立体的な団粒構造を形成し、連続した空隙が発生する。従って、これらの混合物を固化させることにより、降り注いだ雨水を保水する機能と、保水しきれない雨水を流下させる機能と、を兼備した、透水性と保水性とのバランスの良い透水性保水層を形成することができる。
【0014】
前記貯水層が、前記シート上に設けられた貯水空間と、前記透水性保水層及び前記透水性濾過層を支えるため前記貯水空間内に配置された支持構造体と、を備えたものであることが望ましい。このような構成とすれば、比較的小さな占有スペースでありながら、強度に優れ、大量の水を貯留可能な貯水層を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、昇温による太陽電池の発電効率の低下が発生し難く、冷却用水の水質悪化を防止することができ、周辺領域の気温上昇を抑制することもできる、太陽光発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である太陽光発電システムを示す図である。
【図2】図1に示す太陽光発電システムの垂直断面図である。
【図3】図1示す太陽光発電システムの雨天時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図3に示すように、本実施形態の太陽光発電システム10は、周囲の地面より低位置にある地盤11上に敷設された遮水性のシート材12と、シート材12の上面に形成された貯水層13と、貯水層13の上面に敷設された通水性のシート材20と、シート材20上に形成された路盤層21と、路盤層21上に形成された透水性濾過層14と、透水性濾過層14の上面に形成された透水性保水層15と、を備え、透水性保水層15上に複数の太陽電池パネル16が設置され、貯水層13内に貯留された水Wを太陽電池パネル16に散水する散水手段として送水管17及びポンプPが設けられている。また、透水性保水層15の表面の全体にわたって地被植物18(例えば、クラピア、芝など)の生育領域が設けられている。
【0018】
貯水層13は、地盤11上に設けられたプール状の凹部の底面及び周面に遮水性のシート材12を敷設して形成された貯水空間の内部に、支持構造体19を収容することによって形成されている。この支持構造体19は、複数の空間支持体19aを貯水空間で積層状態に積み重ねることによって構築されている。即ち、貯水層13内の支持構造体19は、硬質合成樹脂製の複数の空間支持体19aを水平方向及び垂直方向に三次元的に配列することによって構築されている。空間支持体19aは内部に貯水可能な空洞を備えており、上下方向に隣接する空間支持体19a同士が互いに90度異なる方向を向くように積み重ねていくことによって支持構造体19が形成されている。なお、空間支持体19aの形状は、特に限定しないので、ブロック体形状、板体形状、柱体形状あるいは格子体形状などの空間支持体を三次元的に組み合わせて支持構造体19を形成することができる。
【0019】
また、透水性保水層15上において、必要なときに貯水層13に貯留された水Wを汲み上げることができるように、地上と貯水層13内とを連通する取水管(図示せず)が配管され、この取水管の地上側の端部に開閉弁(図示せず)が設けられている。また、貯水層13の貯留容量を越える雨水などが流入したときに排水するためのドレイン管(図示せず)が、貯水層13上部から所定の排水施設(図示せず)に向かって配管されている。
【0020】
さらに、支持構造体19の上面の最上部に位置する空間支持体19aの上面を覆うように透水性のシート材20が敷設され、このシート材20の上面に、路盤層21及び透水性濾過層14が形成されている。透水性濾過層14は、水中の懸濁物質を吸着する機能を有する多孔質材料として木炭を含んでおり、具体的には、木炭と砕石との混合物を路盤層21上に打設することによって形成されている。なお、多孔質材料として、木炭のほかに、竹炭や籾殻炭などを用いることもできる。
【0021】
透水性保水層15は、土材、セメント系固化剤及び団粒化剤を混合して形成した混合物を、透水性濾過層14上に打設して固化させることによって形成している。
【0022】
本実施形態の場合、透水性保水層15を形成する原料となる前記混合物は以下のような組成としている。即ち、土材1m3に対し、セメント系固化剤10kg〜80kg及び団粒化剤2.0リットル〜4.0リットルを混合して前記混合物を形成している。
【0023】
このような混合物を形成する工程において、土材とセメント系固化剤とを混合したものに団粒化剤を加えると、イオンの作用で土材とセメント系固化剤の粒子とが立体的な団粒構造を形成して連続した空隙が発生する。したがって、この混合物を固化させることにより、降雨時は雨水を保水する機能と、保水しきれない雨水は下方へ浸透させる機能とを兼備した、透水性と保水性のバランスの良い透水性保水層15を形成することができる。
【0024】
この場合、土材は透水性保水層15を形成する主材料となり、団粒化剤は土材とセメント系固化剤の粒子を立体的な団粒構造へと変化させ、セメント系固化剤は、団粒化剤によって形成された団粒構造を外力で破壊されない程度まで固める機能を果たす。本実施形態では、団粒化剤として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物である、有限会社グローバル研究所製の商品名「GB−2000」を用いたところ、強固な団粒構造を形成することができた。また、セメント系固化剤として、住友大阪セメント株式会社製の商品名「タフロック3E(TL−3E)」を用いたところ、前記団粒構造を強固に固化させることができた。
【0025】
本実施形態において、土材として砂質土を用いたところ、透水性と保水性のバランスが良好な透水性保水層15を形成することができた。なお、土材として、施工現場で発生した土材や産廃土などを用いれば、廃棄物の有効利用を図ることができる。
【0026】
図1に示すように、晴天時の太陽光発電システム10においては、太陽光を受けて稼動する太陽電池パネル16で発生した電力を蓄電池(図示せず)に貯留したり、所定の電気機器(図示せず)に給電したりして、適宜利用することができる。また、気温が上昇したときは、貯水層13内に貯留された水WをポンプPで汲み上げて送水管17から太陽電池パネル16に散水することにより、太陽電池を冷却することができるので、昇温による太陽電池の発電効率の低下を防止することができる。
【0027】
また、図3に示すように、雨天時には、太陽電池パネル16が設置された透水性保水層15に降り注いだ雨水などは透水性保水層15へ浸透して地被植物18の生育に供されるほか、その下方の透水性濾過層14を通過した後、路盤層21及び透水性のシート材20を通過して貯水層13へ流入する。このため、降り注いだ雨水などを効率良く貯水層13内に貯留することができる。また、雨水などは、透水性保水層15及び透水性濾過層14などを通過して浄化された後、貯水層13内に貯留されるので、冷却用水の水質悪化を防止することができる。貯水槽13内に貯留された水Wは清浄度が高いので、太陽電池パネル16に水Wを散水したときの太陽電池パネル16の汚損を抑制し、発電効率の低下を防止することができる。また、気温の高い時期は、透水性保水層15に含まれる水分が蒸発する際に気化熱を奪っていくので、周辺領域の気温上昇を抑制することもできる。
【0028】
一方、透水性保水層15には地被植物18の生育領域が設けられているので、透水性保水層15における雑草繁殖を抑制することができるだけでなく、透水性保水層15からの輻射熱による太陽電池パネル16の昇温も抑制することができる。
【0029】
また、透水性濾過層14は、当該透水性濾過層14を通過する水分中の懸濁成分を吸着する機能を有する多孔質材料である木炭(若しくは竹炭、籾殻炭)を含んでいるので、雨水などに含まれる微細な物質を効率よく吸着、除去することができる。また、これらの多孔質材料は天然由来の物質であるため、環境汚染を生じるおそれもない。
【0030】
また、雨水に伴って土砂などが貯水層13へ流入することがないので、貯水層13の底部への土砂堆積がなくなり、土砂除去作業なども不要である。また、土砂堆積に起因する貯水機能の低下も発生しないので、耐久性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の太陽光発電システムは、自然エネルギである太陽光を利用した発電手段として各種産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 太陽光発電システム
11 地盤
12,20 シート材
13 貯水層
14 透水性濾過層
15 透水性保水層
16 太陽電池パネル
17 送水管
18 地被植物
19 支持構造体
19a 空間支持体
21 路盤層
P ポンプ
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の地面より低位置にある地盤上に敷設された遮水性のシート材と、前記シート材の上面に形成された貯水層と、前記貯水層の上面に形成された透水性濾過層と、前記透水性濾過層の上面に形成された透水性保水層と、を備え、前記透水性保水層上に設置された太陽電池パネルと、前記貯水層内に貯留された水を前記太陽電池パネルに散水する散水手段と、を設けたことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記透水性保水層に地被植物の生育領域を設けた請求項1記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記透水性濾過層が、当該透水性濾過層を通過する水分中の懸濁成分を吸着する機能を有する多孔質材料を含む請求項1または2記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記多孔質物質として、木炭、竹炭、籾殻炭のうちのいずれか1以上を用いた請求項3記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記透水性保水層を、土材、セメント系固化剤及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成した請求項1〜4のいずれかに記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
前記貯水層が、前記シート上に設けられた貯水空間と、前記透水性保水層及び前記透水性濾過層を支えるため前記貯水空間内に配置された支持構造体と、を備えた請求項1〜5のいずれかに記載の太陽光発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−38102(P2013−38102A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170369(P2011−170369)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(500305380)株式会社シーマコンサルタント (30)
【Fターム(参考)】