説明

太陽光発電パネル及びコンテナ船

【課題】コンテナと共に運用しやすい太陽光発電パネル及び該太陽光発電パネルを搭載したコンテナ船を提供する。
【解決手段】太陽光発電パネル3は、太陽光の光エネルギーを電力に変換する太陽電池を直並列に複数接続した太陽電池モジュール4と、太陽電池モジュール4を支持する支持部材5と、を有し、太陽電池モジュール4は、コンテナ船に搭載されるコンテナ2上に積載可能な大きさに形成されるとともに、支持部材5の角隅部にコンテナ2に接続可能かつコンテナ2の荷役装置に接続可能な隅金具6が配置されている。また、支持部材5の角隅部を構成する八隅にはコンテナ2の八隅に使用されている隅金具6と同じ隅金具6が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電パネル及びコンテナ船に関し、特に、コンテナと共に運用しやすい太陽光発電パネル及び該太陽光発電パネルを搭載したコンテナ船に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水上を航行する船舶は、長時間、太陽光に曝されるため、船上に太陽光発電パネルを設置し、太陽光発電パネルから電力を得るのに適している。実際に、船上に太陽光発電パネルを設置して電力を得る船舶等が提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、比較的広い上甲板を有する船舶(例えば、自動車運搬船)に太陽電池を設置した船舶用太陽光発電利用給電設備が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、推進機構を備えたプラットフォーム形の船体に、太陽光を光電変換して電気エネルギーを得る太陽光発電システムと、風力を受けて回転する風車により発電機を運転して電気エネルギーを得る風力発電システムと、各発電システムによって発電した電気エネルギーを貯蔵する蓄電池と、を備える発電プラント船が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、船上に太陽光発電パネルを搭載した様々な船舶が記載されている。特に、特許文献3の図6には、積載している各コンテナの最上部位に太陽光パネルを装設したコンテナ船が記載されている。また、コンテナの最上部位を覆うように太陽光パネルデッキを装設し、該デッキに太陽光パネルを配置するコンテナ船についても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−315195号公報
【特許文献2】特開2001−213388号公報
【特許文献3】特開2009−161032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された船舶では、太陽光発電パネルを配置可能な十分な平面状の領域を有していることが前提となっており、甲板の大部分がコンテナで埋め尽くされているコンテナ船に適用することは困難であった。特に、コンテナ船の場合には、コンテナの積載高さが不均一であり広い平面状の領域が少ない、コンテナの荷役の際に太陽光発電パネルが邪魔になる、という問題もあった。
【0008】
また、特許文献3には、コンテナ船にも太陽光発電パネルを設置できる旨が記載されているものの、どのように太陽光発電パネルを配置すればよいか、コンテナの積載高さの不均一やコンテナの荷役に基づく問題点をどのように解決するのか等については、具体的に記載されていない。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、コンテナと共に運用しやすい太陽光発電パネル及び該太陽光発電パネルを搭載したコンテナ船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、太陽光の光エネルギーを電力に変換する太陽電池を直並列に複数接続した太陽電池モジュールを有する太陽光発電パネルであって、前記太陽電池モジュールは、コンテナ船に搭載されるコンテナ上に積載可能な大きさに形成されるとともに、角隅部に前記コンテナに接続可能かつ前記コンテナの荷役装置に接続可能な隅金具が配置されている、ことを特徴とする太陽光発電パネルが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、船体上に多行多列に配置され多段に積載される複数のコンテナを運搬するコンテナ船であって、最上段のコンテナの上面に、太陽光の光エネルギーを電力に変換する太陽電池を直並列に複数接続した太陽電池モジュールを有し、該太陽電池モジュールが、前記コンテナ上に積載可能な大きさに形成されるとともに、角隅部に前記コンテナに接続可能かつ前記コンテナの荷役装置に接続可能な隅金具が配置されている太陽光発電パネルが配置されている、ことを特徴とするコンテナ船が提供される。
【0012】
上述の本発明に係る太陽光発電パネル及びコンテナ船において、前記隅金具は、前記角隅部を構成する八隅に配置されていてもよいし、上下一対の角隅部を一つの角隅部とみなした四隅に配置されていてもよい。
【0013】
また、前記太陽光発電パネルは、前記太陽電池モジュールを支持する支持部材を有し、該支持部材の角隅部に前記隅金具が配置されていてもよい。
【0014】
また、前記支持部材は、前記太陽電池モジュールの厚さ以上かつ前記コンテナの厚さ以下の厚さを有し、前記太陽電池モジュールの下部に附帯機器を搭載可能な収容部を有してもよい。
【0015】
また、前記コンテナと前記隅金具とは、例えば、前記コンテナ同士の接続又は固縛に使用される締結金物と同じ締結金物により接続又は固縛される。
【0016】
また、前記隅金具は、例えば、前記荷役装置のスプレッダに接続可能に構成されており、前記荷役装置によって荷役される。
【0017】
また、前記太陽電池モジュールは、例えば、船体側に配置された配電設備と有線又は無線により送電可能に構成されている。
【0018】
また、上述の本発明に係るコンテナ船において、前記最上段のコンテナは、隣接するコンテナよりも高さが低く、航海中に太陽光が遮られる遮光率が50%以上である場合に、前記太陽光発電パネルが配置されなくてもよい。
【0019】
また、前記最上段のコンテナは、隣接する全てのコンテナよりも高さが低い場合に前記太陽光発電パネルが配置されなくてもよい。
【0020】
また、前記コンテナは、航海中に太陽光に曝されやすい側に傾斜するように階段上に積載されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上述した本発明に係る太陽光発電パネル及びコンテナ船によれば、太陽光発電パネルをコンテナに接続可能かつコンテナと同様の荷役装置で荷役可能に構成したことにより、広い平面状の領域が少なくコンテナの積載高さが不均一なコンテナ船であっても、容易に太陽光発電パネルをコンテナ上に配置することができ、コンテナの荷役の際にはコンテナと同様の操作により太陽光発電パネルを移動させることができる。したがって、コンテナと共に運用しやすい太陽光発電パネル及び該太陽光発電パネルを搭載したコンテナ船を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るコンテナ船の第一実施形態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、である。
【図2】本発明に係る太陽光発電パネルの実施形態を示す鳥瞰図であり、(a)はコンテナ接続前の状態、(b)はコンテナ接続後の状態、(c)は変形例、を示している。
【図3】図2に示した太陽光発電パネルとコンテナとの接続方法の一例を示す図であり、(a)は接続前の状態、(b)は係止前の状態、(c)は係止後(接続後)の状態、を示している。
【図4】コンテナ船における太陽光発電パネル及びコンテナの積降しを説明するための図であり、(a)は太陽光発電パネルの積降し状態、(b)はコンテナの積降し状態、を示している。
【図5】本発明に係る太陽光発電パネルの配線方法の一例を示した説明図であり、(a)は配線前、(b)は配線後、を示している。
【図6】本発明に係る太陽光発電パネルの変形例を示す図であり、(a)はパネル全体図、(b)は隅金具の拡大図、(c)は隅金具の変形例を示す説明図、である。
【図7】本発明に係るコンテナ船の他の実施形態を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、(c)は第四実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るコンテナ船の第一実施形態及び該コンテナ船に使用される太陽光発電パネルについて、図1乃至図4を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係るコンテナ船の第一実施形態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、である。また、図2は、本発明に係る太陽光発電パネルの実施形態を示す鳥瞰図であり、(a)はコンテナ接続前の状態、(b)はコンテナ接続後の状態、(c)は変形例、を示している。また、図3は、図2に示した太陽光発電パネルとコンテナとの接続方法の一例を示す図であり、(a)は接続前の状態、(b)は係止前の状態、(c)は係止後(接続後)の状態、を示している。また、図4は、コンテナ船における太陽光発電パネル及びコンテナの積降しを説明するための図であり、(a)は太陽光発電パネルの積降し状態、(b)はコンテナの積降し状態、を示している。
【0024】
本発明の第一実施形態に係るコンテナ船1は、図1(a)及び(b)に示すように、船体上に多行多列に配置され多段に積載される複数のコンテナ2を運搬するコンテナ船1であって、最上段のコンテナ2の上面に太陽光発電パネル3が配置されている。
【0025】
前記コンテナ船1は、コンテナ2を運搬する専用船である。コンテナ船1は、荷役方法によって、リフトオン/オフ式コンテナ船とロールオン/オフ式コンテナ船とに区分されるが、本発明はいずれの形式のコンテナ船にも適用することができる。また、図示しないが、コンテナ船1の船倉内はセル構造をなしており、セルガイドを利用することにより、コンテナ2の保持及び荷役作業の効率化を図っている。また、上甲板上に積載されるコンテナ2は、一般に、ハッチカバー上の暴露部に積載されている。
【0026】
また、一般に、コンテナ2の船体の前後方向の隙間には、ラッシングブリッジ(図示せず)が立設されており、暴露部に積層されたコンテナ2は、ラッシングブリッジを介してターンバックルやラッシングロッド等の締結金物により固縛されている。コンテナ船1が、ラッシングブリッジを有しない小型船の場合には、コンテナ2は、ハッチカバー間に設置されたアイプレートを介して締結金物により固縛されてもよい。また、コンテナ2を積載する暴露部が、船倉内と同様にセル構造をなしている場合には、コンテナ2は、セルガイドによって保持されていてもよい。
【0027】
前記コンテナ2は、鋼鉄、アルミニウム等で形成され、規格化された直方体の容器である。コンテナ2には様々な物を収容することができ、その収容物によって、コンテナ2は、ドライコンテナ、オープントップコンテナ、冷凍コンテナ、バルクコンテナ、フラットトラックコンテナ、タンクコンテナ等の種類に分類される。また、コンテナ2は、海上輸送ではコンテナ船1により運搬され、陸上輸送では、トレーラーや貨物列車等により運搬される。
【0028】
また、コンテナ2は、図2に示したように、コンテナ2を構成する直方体の八隅に隅金具6を有する。かかる隅金具6により、コンテナ2は、図1(a)及び(b)に示したように、船体上に多行多列に配置されると共に多段に積載される。そして、上下に積層されたコンテナ2同士及び左右に隣接するコンテナ2同士は、ツイストロック、ポジショニングコーン、バーティカルスタッカ、アッパセキュアリングフィッティング、ターンバックル、ラッシングロッド等の締結金物により、接続及び固縛される。隅金具6は、図3(a)に示したように、コンテナ2の角隅部を構成する三つの平面部61を有し、各平面部61に長孔形状の開口部62が形成されている。この開口部62に適宜金物を接続することにより、コンテナ2が接続又は固縛される。
【0029】
前記太陽光発電パネル3は、図2及び図3に示すように、太陽光の光エネルギーを電力に変換する太陽電池を直並列に複数接続した太陽電池モジュール4と、太陽電池モジュール4を支持する支持部材5と、を有し、太陽電池モジュール4は、コンテナ船1に搭載されるコンテナ2上に積載可能な大きさに形成されるとともに、支持部材5の角隅部にコンテナ2に接続可能かつコンテナ2の荷役装置に接続可能な隅金具6が配置されている。
【0030】
太陽電池モジュール4は、いわゆる太陽電池をパネル状に複数接続したものであってもよいし、一般的な1m×2m程度の太陽電池モジュールをさらに直並列に複数接続した太陽電池アレイであってもよい。すなわち、太陽電池モジュール4は、規格化されたコンテナ2の平面内に配置可能な大きさに複数の太陽電池をパネル状に敷き詰めた構成を有していればよい。
【0031】
支持部材5は、例えば、角材やアングル材により直方体に形成された支持枠体51を有する。支持枠体51は、太陽光発電パネル3の骨格となる部品である。太陽電池モジュール4は、かかる支持枠体51に固定金具等により直に固定するようにしてもよい。また、太陽電池モジュール4と支持枠体51との間に固定用のアダプタ52を配置するようにしてもよい。アダプタ52は、太陽電池モジュール4の外周を覆うと共に支持枠体51に固定金具等により接続される。また、アダプタ52内に緩衝材を内蔵して、太陽電池モジュール4を荷役時等の衝撃から保護するように構成してもよいし、アダプタ52内に駆動モータ等を配置して、太陽電池モジュール4を任意の方向に傾動できるように構成してもよい。
【0032】
また、支持枠体51(すなわち、支持部材5)の角隅部を構成する八隅にはコンテナ2の八隅に使用されている隅金具6と同じ隅金具6が配置されている。このように、支持部材5をコンテナ2の規格に合わせて構成することにより、太陽光発電パネル3をコンテナ2と同様に運用することができる。具体的には、図3(a)に示したように、隅金具6は、支持枠体51の角隅部を構成する三つの平面部61を有し、各平面部61に長孔形状の開口部62が形成されている。したがって、図2(a)に示したように、太陽光発電パネル3をコンテナ2の上方に移動し、図2(b)に示したように、太陽光発電パネル3をコンテナ2の上に載置することによって、太陽光発電パネル3とコンテナ2とを容易に接続及び固縛することができる。
【0033】
また、太陽光発電パネル3は、例えば、図2(b)に示したように、コンテナ2の厚さDcより薄い厚さDpを有する。太陽光発電パネル3は、太陽電池モジュール4を保持し得る厚さDpを有していればよい。
【0034】
また、図2(c)の変形例に示したように、太陽光発電パネル3は、太陽電池モジュール4の下部に附帯機器7を搭載可能な収容部8を有していてもよい。附帯機器7は、例えば、種々の配線、配電盤、蓄電池、温度調節装置、塩害対策装置等、航海中における太陽電池モジュール4の運用やメンテナンス等に必要となる機器である。そして、必要な附帯機器7の種類や大きさによって、太陽光発電パネル3の厚さDpが設定される。このとき、太陽光発電パネル3をコンテナ2と同様の操作により運用するためには、太陽光発電パネル3の厚さDpをコンテナ2の厚さDc以下とすることが好ましい。かかる収容部8を太陽光発電パネル3に配置することにより、航海中における太陽電池モジュール4の運用やメンテナンス等を効率よく行うことができる。
【0035】
ここで、図3は、太陽光発電パネル3とコンテナ2との接続方法の一例を示している。図3(a)に示すように、コンテナ2は角隅部に隅金具6を有し、太陽光発電パネル3も角隅部に隅金具6を有する。そして、コンテナ2の上面と太陽光発電パネル3の下面との対応する位置に配置された隅金具6同士は、例えば、ツイストスタッカー等の締結金物9により接続される。
【0036】
例えば、締結金物9は、二つの突起部91,92と、これらの突起部91,92を連結する連結部93と、連結部93の中央に設置されたフランジ部94と、を有する。突起部91,92は、開口部62に挿入可能な長円形状を有し、図示しないレバーにより連結部93の周囲に回動可能に構成されており、その回動によって、突起部91,92が開口部62に係止される。具体的には、図3(b)に示したように、一方の突起部91をコンテナ2の隅金具6の上面の開口部62に挿入し、他方の突起部92を太陽光発電パネル3の隅金具6の下面の開口部62に挿入した後、突起部91,92を回動させることにより、図3(c)に示したように、突起部91,92を両方の隅金具6に係止させる。その結果、締結金物9により、太陽光発電パネル3とコンテナ2とが接続される。
【0037】
かかる締結金物9は、コンテナ2同士の接続にも使用される締結金物9であり、コンテナ2同士の接続と同様の操作により、太陽光発電パネル3をコンテナ2上に容易に接続することができる。
【0038】
ここでは、上下に隣接する太陽光発電パネル3とコンテナ2との接続方法について説明したが、左右に隣接する太陽光発電パネル3同士の接続及び積載時に側面部に位置する開口部62を利用したラッシングブリッジ等との固縛においても、コンテナ2同士の接続又は固縛に使用される締結金物と同じ締結金物を使用することができる。したがって、コンテナ2同士の接続と同様の操作により、太陽光発電パネル3をコンテナ2上に容易に接続及び固縛することができる。
【0039】
次に、コンテナ船1における太陽光発電パネル3及びコンテナ2の積降しについて説明する。いま、コンテナ2の最上段に太陽光発電パネル3が積載されたコンテナ船1が寄港した場合を想定する。港では、コンテナ船1から所定のコンテナ2が積降される。そこで、図4(a)に示したように、例えば、最初に、太陽光発電パネル3がコンテナ船1から陸上側(港)に積降される。
【0040】
上述したように、太陽光発電パネル3には、コンテナ2に使用されている隅金具6と同じ隅金具6が配置されている。したがって、太陽光発電パネル3の隅金具6は、コンテナ2を荷役するガントリークレーン等の荷役装置10のスプレッダ101に接続可能に構成されており、かかる荷役装置10によって太陽光発電パネル3を荷役することができ、コンテナ船1から容易に積降すことができる。
【0041】
ここで、コンテナ船1に積載されている全ての太陽光発電パネル3を降ろす必要はなく、当該港で荷役する対象のコンテナ2の最上段に配置された太陽光発電パネル3のみを陸上側(港)に降ろすようにしてもよい。また、陸上側に太陽光発電パネル3を載置しておく空間が不足する場合には、陸上側で太陽光発電パネル3を積み上げて載置領域を節約してもよいし、コンテナ船1上のコンテナ2や太陽光発電パネル3の上に積み上げるようにしてもよい。
【0042】
そして、積降し対象の太陽光発電パネル3を移動させた後、図4(b)に示したように、所望のコンテナ2が荷役装置10によりコンテナ船1から積降される。なお、積荷の場合も同様に、荷役装置10によりコンテナ2及び太陽光発電パネル3がコンテナ船1上に荷役される。
【0043】
以上、本発明の第一実施形態に係るコンテナ船1及び太陽光発電パネル3によれば、太陽光発電パネル3をコンテナ2と同様に荷役装置10で取り扱うことができるため、太陽光発電パネル3をコンテナ2の荷役の妨げにならないように容易に移動させることができる。また、コンテナ2同士を接続又は固縛する方法と同様の方法で太陽光発電パネル3をコンテナ2上に接続又は固縛することができるので、太陽光発電パネル3以外の新たな設備等が不要であり、コストの面でも安価に済ますことができる。
【0044】
すなわち、太陽光発電パネル3をコンテナ2に接続可能かつコンテナ2と同様の荷役装置10で荷役可能に構成したことにより、広い平面状の領域が少なくコンテナ2の積載高さが不均一なコンテナ船1であっても、容易に太陽光発電パネル3をコンテナ2上に配置することができ、コンテナ2の荷役の際にはコンテナ2と同様の操作により太陽光発電パネル3を移動させることができる。
【0045】
なお、太陽光発電パネル3を用いた発電システムに必要な、配電設備、制御装置、電力変換装置等の機器は、一般に、コンテナ船1の船体側に配置される。かかる発電システムには、太陽光発電パネル3が発電した電力を蓄電する単数又は複数の蓄電池を組み込むようにしてもよい。また、配電設備は、積載されたコンテナ2間に立設されたラッシングブリッジ近傍に配置された既存の配電設備を利用するようにしてもよい。そして、太陽光発電パネル3(太陽電池モジュール4)は、船体側に配置された配電設備と有線又は無線により送電可能に構成される。ここで、太陽光発電パネル3の配線方法の一例について説明する。図5は、本発明に係る太陽光発電パネルの配線方法の一例を示した説明図であり、(a)は配線前、(b)は配線後、を示している。
【0046】
図5に示したように、太陽光発電パネル3は、コンテナ2の最大積載高さと同程度の長さを有する接続ケーブル31と、接続ケーブル31の先端に配置されたプラグ32と、を備える。接続ケーブル31は、太陽光発電パネル3の側面から垂らされており、プラグ32は、ラッシングブリッジ11等の船体に配置された船体側レセップ12に接続される。また、接続ケーブル31は、太陽光発電パネル3又は収容部8の内部に折り畳んで収容可能に構成されていてもよいし、リール等により巻き取り及び引き出し可能に構成されていてもよい。このように、接続ケーブル31を収納可能に構成することにより、太陽光発電パネル3の荷役時等に接続ケーブル31が邪魔になることがない。なお、接続ケーブル31を収納可能に構成した場合には、引き出し用の紐を接続ケーブル31に配置するようにしてもよい。
【0047】
また、上述した接続ケーブル31を用いた有線接続による送電方法に替えて、非接触送電技術を用いた送電方法を採用することもできる。かかる非接触送電技術を用いた送電方法には、例えば、電磁誘導方式、マイクロ波方式、レーザ方式等の送電方法がある。
【0048】
次に、上述した太陽光発電パネル3の変形例について説明する。ここで、図6は、本発明に係る太陽光発電パネルの変形例を示す図であり、(a)はパネル全体図、(b)は隅金具の拡大図、(c)は隅金具の変形例を示す説明図、である。
【0049】
図6(a)に示した太陽光発電パネル3は、太陽光の光エネルギーを電力に変換する太陽電池を直並列に複数接続した太陽電池モジュール4を有し、太陽電池モジュール4は、コンテナ船1に搭載されるコンテナ2上に積載可能な大きさに形成されるとともに、角隅部にコンテナ2に接続可能かつコンテナ2の荷役装置10に接続可能な隅金具6が配置されたものである。すなわち、支持部材5を使用せずに、太陽電池モジュール4に直に隅金具6を配置したものである。このように、太陽光発電パネル3が薄い場合には、隅金具6は、必ずしも角隅部を構成する八隅に配置する必要はなく、上下一対の角隅部を一つの角隅部とみなした四隅に配置するようにしてもよい。これは、支持部材5を使用した太陽光発電パネル3の場合も同様である。
【0050】
図6(b)に示したように、隅金具6は、太陽光発電パネル3の角隅部を構成する四つの平面部61を有し、各平面部61に長孔形状の開口部62が形成されている。このように、太陽光発電パネル3の上面及び下面を構成する平面部61及び開口部62を備えた隅金具6を四隅の角隅部に配置することにより、八隅の角隅部に隅金具6を配置した場合と同様に、太陽光発電パネル3をコンテナ2上に積載したり、荷役装置10で荷役したりすることができる。また、太陽光発電パネル3の薄型化、軽量化、積載時高さの低減化等を図ることもできる。なお、隅金具6は、ツイストスタッカー等の締結金物9が上下に挿入可能な高さに形成される。
【0051】
また、図6(c)に示した隅金具6の変形例は、太陽光発電パネル3の下面を構成する平面部61に、開口部62の替わりにスタッキングコーン63を形成したものである。スタッキングコーン63は、コンテナ2の隅金具6の上面に形成された長孔形状の開口部62に挿入可能な長円形状に形成された突起である。また、スタッキングコーン63は、ツイストスタッカーに使用されているような可動式のコーンに変更してもよい。かかる構成によっても、太陽光発電パネル3をコンテナ2上に積載したり、荷役装置10で荷役したりすることができる。また、太陽光発電パネル3の薄型化、軽量化、積載時高さの低減化、接続工程の省力化等を図ることもできる。
【0052】
続いて、本発明の他の実施形態に係るコンテナ船1について説明する。ここで、図7は、本発明に係るコンテナ船の他の実施形態を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、(c)は第四実施形態、を示している。なお、第一実施形態に示した構成部品と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0053】
図7(a)に示した第二実施形態は、コンテナ船1に積載されたコンテナ2の一部の最上段に太陽光発電パネル3を配置したものである。ここでは、コンテナ2の最上段が、一定の高さよりも高い位置にある部分に太陽光発電パネル3を配置している。一般に、コンテナ船1におけるコンテナ2の積載高さは不均一であり、高く積載されたコンテナ2の周囲では太陽光が遮られる割合(遮光率)が高い。そこで、太陽光発電パネル3は、遮光率が低く、太陽光が効率的に当る箇所に配置されることが好ましい。このように、太陽光がよく当る箇所にのみ、太陽光発電パネル3を配置した場合、少ない太陽光発電パネル3で効率的に発電を行うことができる。
【0054】
例えば、最上段のコンテナ2が、隣接するコンテナ2よりも高さが低く、航海中に太陽光が遮られる遮光率が50%以上である場合に、太陽光発電パネル3が配置されないようにしてもよい。遮光率は、コンテナ船1の航路、運航スケジュール、天候等の条件から計算により算出するようにしてもよいし、予めコンテナ船1上の各箇所の平均遮光率を測定して算出するようにしてもよい。なお、ここでは遮光率が50%の場合について言及したが、太陽光発電パネル3を設置する利点を考慮して、遮光率を40%や60%等のように任意に閾値を設定することができる。
【0055】
図7(b)に示した第三実施形態は、最上段のコンテナ2が、隣接する全てのコンテナ2よりも高さが低い場合に、太陽光発電パネル3を配置しないようにしたものである。このように、周囲の全てのコンテナ2よりも最上段のコンテナ2の高さが低い場合、太陽光発電パネル3を配置したとしても、太陽光が周囲のコンテナ2により遮られ易い。そこで、このような場合には、遮光率を算出することなく、太陽光発電パネル3を配置しないようにしてもよい。したがって、太陽光がよく当る箇所にのみ、太陽光発電パネル3を容易に配置することができ、少ない太陽光発電パネル3で効率的に発電を行うことができる。
【0056】
図7(c)に示した第四実施形態は、コンテナ2が航海中に太陽光に曝され易い側に傾斜するように階段上に積載されており、その最上段に太陽光発電パネル3を配置したものである。一般に、コンテナ船1は、航路及び運航スケジュールが予め定まっているため、コンテナ2の積荷計画を、太陽光発電パネル3が太陽光に曝され易くなることを条件に設定することができる。かかるコンテナ2の積荷計画は任意に設定することができ、中央を高く積載した山形であってもよいし、船首側及び船尾側で傾斜の方向を変更するようにしてもよいし、船首側又は船尾側に向かって傾斜させるようにしてもよい。このように、航路と太陽の位置とを考慮してコンテナ2の積荷計画を設定することにより、太陽光発電パネル3で効率的に発電を行うことができる。
【0057】
本発明は上述した実施形態に限定されず、太陽光発電パネル3は、コンテナ船1上だけでなく、陸上に積載されたコンテナ2上に配置して利用することもできる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 コンテナ船
2 コンテナ
3 太陽光発電パネル
4 太陽電池モジュール
5 支持部材
6 隅金具
7 附帯機器
8 収容部
9 締結金物
10 荷役装置
101 スプレッダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光の光エネルギーを電力に変換する太陽電池を直並列に複数接続した太陽電池モジュールを有する太陽光発電パネルであって、
前記太陽電池モジュールは、コンテナ船に搭載されるコンテナ上に積載可能な大きさに形成されるとともに、角隅部に前記コンテナに接続可能かつ前記コンテナの荷役装置に接続可能な隅金具が配置されている、ことを特徴とする太陽光発電パネル。
【請求項2】
前記隅金具は、前記角隅部を構成する八隅に配置されている、又は上下一対の角隅部を一つの角隅部とみなした四隅に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電パネル。
【請求項3】
前記太陽電池モジュールを支持する支持部材を有し、該支持部材の角隅部に前記隅金具が配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電パネル。
【請求項4】
前記支持部材は、前記太陽電池モジュールの厚さ以上かつ前記コンテナの厚さ以下の厚さを有し、前記太陽電池モジュールの下部に附帯機器を搭載可能な収容部を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の太陽光発電パネル。
【請求項5】
前記コンテナと前記隅金具とは、前記コンテナ同士の接続又は固縛に使用される締結金物と同じ締結金物により接続又は固縛される、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電パネル。
【請求項6】
前記隅金具は、前記荷役装置のスプレッダに接続可能に構成されており、前記荷役装置によって荷役される、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電パネル。
【請求項7】
前記太陽電池モジュールは、船体側に配置された配電設備と有線又は無線により送電可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電パネル。
【請求項8】
船体上に多行多列に配置され多段に積載される複数のコンテナを運搬するコンテナ船であって、
最上段のコンテナの上面に請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の太陽光発電パネルが配置されている、ことを特徴とするコンテナ船。
【請求項9】
前記最上段のコンテナは、隣接するコンテナよりも高さが低く、航海中に太陽光が遮られる遮光率が50%以上である場合に、前記太陽光発電パネルが配置されない、ことを特徴とする請求項8に記載のコンテナ船。
【請求項10】
前記最上段のコンテナは、隣接する全てのコンテナよりも高さが低い場合に前記太陽光発電パネルが配置されない、ことを特徴とする請求項8に記載のコンテナ船。
【請求項11】
前記コンテナは、航海中に太陽光に曝されやすい側に傾斜するように階段上に積載されている、ことを特徴とする請求項8に記載のコンテナ船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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