説明

太陽光発電用接続箱

【課題】 接続箱の気密性を維持しつつ内部の発生熱を効果に外部に放熱することができる太陽光発電用接続箱を提供する。
【解決手段】 逆流防止ダイオード2を装着した放熱板5を、ケース本体1の背板1aに近接する部位においてケース背板1aと平行に配置し、放熱板5の背面及びケース背面1a上の放熱板5に対峙する面の双方に、熱放射率が0.6以上の熱放射膜8を設けた。熱放射膜8は粘着シート状の放熱シートとして形成され、放熱シートを該当部位に貼着して熱放射膜8を作成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムにおいて太陽電池が発電した電力を集電する接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムは、複数の太陽電池パネルにより発電が行われ、発電された直流電力が接続箱で1回路の出力にまとめられて家庭で利用できる交流電力に変換するためのパワーコンディショナに送られる。そのため、接続箱には開閉器や逆流防止ダイオード、更にサージアブソーバ等が組み込まれている。
また、接続箱は屋外に設置されるため、雨水等の侵入が無いよう気密性を有するよう形成されている。しかしながら、ここで組み込まれる逆流防止ダイオードは発熱を伴うため、密閉された空間の中でも高熱にならないよう放熱対策を実施する必要があった。例えば特許文献1では、逆流防止ダイオードに放熱板を取り付けると共に、箱の上部に放熱用の孔を設けた。また、この孔から雨水が入らないように箱に外扉を設けて二重構造とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−261177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成は放熱板を介して、また放熱用の孔を介して良好に放熱を実施できるが、放熱用の孔を上部に設けているため、雨水の浸入を防ぐことができても塵や埃が侵入し易く、気密性に難があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、接続箱の気密性を維持しつつ内部の発生熱を効果に外部に放熱することができる太陽光発電用接続箱を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、ケース内に逆流防止ダイオード、直流開閉器等が組み込まれた太陽光発電用接続箱であって、前記逆流防止ダイオードを装着した放熱板を、前記ケースの背板に近接する部位においてケース背板と平行に配置し、前記放熱板の背面及び前記ケース背面上の前記放熱板に対峙する面のうち、少なくとも前記ケース背面上の前記放熱板に対峙する面に、熱放射率が0.6以上の熱放射膜を、前記逆流防止ダイオードの前記放熱板への装着領域を覆うよう設けたことを特徴とする。
この構成によれば、放熱板と接続箱背板の間の空気層の熱伝達特性が向上し、ケース外への放熱性能が向上する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、熱放射膜は、合成樹脂製フィルム上に貼着材と混合して膜状に形成した粘着シート状に形成され、前記粘着シートを該当部位に貼着して熱放射膜を設けることを特徴とする。
この構成によれば、熱放射膜を容易に設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放熱板と接続箱背板の間の空気層の熱伝達特性が向上し、ケース外への放熱性能が向上する。よって、太陽光発電用接続箱の箱体に放熱用の開口部を設けず密閉形成しても放熱を良好に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る太陽光発電用接続箱の説明図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】(a)はA−A線断面図、(b)は一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1,図2は本発明に係る太陽光発電用接続箱の説明図であり、図1は斜視図、図2は正面図である。何れもケース前面を開放した状態を示し、1はケース本体、2は逆流防止ダイオード、3は直流開閉器、4は端子台、5は放熱板である。逆流防止ダイオード2、直流開閉器3、端子台4の何れもが放熱板上に組み付けられ、放熱板5はケース本体1の背板1aにネジ6により固定されている。尚、ケース前面を閉塞する蓋板は省略してある。
【0011】
図3(a)はA−A線断面図を示し、図3(b)はB部の拡大図を示している。図3において、8(8a,8b)は熱放射膜を示し、放熱板5とケース本体1の双方に設けられている。
放熱板5は、図3に示すようにケース本体1の背板1aに設けられた装着用突起6aにネジ6を螺入して固定され、背板1aに対して僅かな隙間を有し背板1aに対して平行に取り付けられている。また、上部はL字状に折り曲げられて、ケース本体1の天面に密着するよう配置されている。
一方、逆流防止ダイオード2等はネジ止め等で放熱板5に取り付けられている。そのため、放熱板5の背面にはネジ端部等が突起し、放熱板5とケース本体1との間にはそのための隙間が設けられている。
【0012】
熱放射膜8はこの隙間に、即ち放熱板5とケース本体1の双方の間に対峙するように形成されている。具体的に、図2に示すように3個の逆流防止ダイオード2,2,2は横一列に配置されており、この部位に合わせて放熱板5の背面とケース本体1の背板1a上の双方に、逆流防止ダイオード2の装着領域を覆う幅で帯状に形成されている。
この熱放射膜8は、樹脂製シート上に放熱部材を混入した粘着材を塗布した貼着シート状の放熱シートを貼着して形成されている。放熱シートは、一例としてTGM社製のRed−1シートが使用できる。このシートは、具体的に熱放射率ε=0.97、熱伝導率λ=170W/mKの特性を有し、例えば厚み6μmの樹脂シートに25μmの厚さでRed−1フィラーを混入した貼着材を添付して形成されている。
【0013】
尚、放熱板5及びケース本体1は通常アルミで形成され、アルミの熱放射率は0.31である。そのため、作成する熱放射膜にこの熱放射率より高い特性を持たせれば、理論上放熱特性は改善されることになるが、約2倍の0.6或いはそれ以上の熱放射率を有する熱放射膜を作成することで顕著な改善をみることができ好ましい。
【0014】
表1はこのTGM社製のRed−1シートを貼着して放熱板5とケース本体1の双方に熱放射膜を上述した形状で形成した太陽光発電用接続箱の放熱特性の実測データを示している。また表2は放熱シートを貼着しない現行品の場合の実測データを示している。尚、4回路(逆流防止ダイオード2を4個)備えて、各回路に10アンペア流して発熱させた場合のデータを示している。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
この表1,表2に示すように、ダイオード(逆流防止ダイオード)2の温度は、熱放射膜を設けることで4,1℃から7.6℃低下し、放熱板5からケース本体1へ放熱が良好に行われることが解る。
【0018】
このように、熱放射膜8を形成することで、放熱板5と接続箱の背板1aの間の空気層の熱伝達が効率良く行われ、放熱性能が向上する。よって、太陽光発電用接続箱の箱体に放熱用の開口部を設けず密閉形成しても放熱を良好に行うことが可能となる。また、シート状に形成した放熱シートを使用することで、熱放射膜を容易に形成できる。
【0019】
尚、上記実施形態は、放熱板5とケース本体1の双方に熱放射膜8(8a,8b)を設けているが、ケース本体1側のみに設けるだけでも放熱性能は向上する。また、放熱板5背面に対してケース本体1の背板1aのほうが突起部が無いため熱放射膜8を形成し易い。また、複数の逆流防止ダイオード2,2・・に対して熱放射膜8を連続形成したが、個々の逆流防止ダイオードに対して個別に形成しても良いし、更に広く例えば放熱板5の背面全域を覆うように設けても良い。
更に、熱放射膜8を放熱シートを使用して形成しているが、塗料状に液体化した放熱材を塗布して形成しても良い。塗料状にした場合、例えばネジ等が突起した面や曲面部のような平坦でない部位であっても容易に膜を形成でき、良好な放熱を実施できる。
【符号の説明】
【0020】
1・・ケース本体(ケース)、1a・・背板、2・・逆流防止ダイオード、3・・直流開閉器、4・・端子台、5・・放熱板、8(8a,8b)・・熱放射膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に逆流防止ダイオード、直流開閉器等が組み込まれた太陽光発電用接続箱であって、
前記逆流防止ダイオードを装着した放熱板を、前記ケースの背板に近接する部位においてケース背板と平行に配置し、
前記放熱板の背面及び前記ケース背面上の前記放熱板に対峙する面のうち、少なくとも前記ケース背面上の前記放熱板に対峙する面に、熱放射率が0.6以上の熱放射膜を、前記逆流防止ダイオードの前記放熱板への装着領域を覆うよう設けたことを特徴とする太陽光発電用接続箱。
【請求項2】
前記熱放射膜は、合成樹脂製フィルム上に貼着材と混合して膜状に形成した粘着シート状に形成され、
前記粘着シートを該当部位に貼着して熱放射膜を設けることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電用接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−51263(P2013−51263A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187374(P2011−187374)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】