説明

太陽光発電装置

【課題】停電時などでも、太陽光発電パネルを自動的に水平姿勢などの受風面積を最少にでき、追尾装置の動力伝達部や上記パネルの破損を確実に防止できる太陽光発電装置を提供する。
【解決手段】縦横に複数個ずつドーム型フレネルレンズ(集光レンズ)2を連設した集光レンズユニット1を外側に有する太陽光発電パネルPと、該発電パネルPが太陽を追尾できるように、係る太陽光発電パネルPを地軸方向に沿って傾動させ且つ太陽の軌道に沿って旋回可能にして支持する支柱20と、該支柱20の上端部に配置され、上記太陽光発電パネルPを傾動可能および旋回可能とするモータM1,M2を含む動力伝達部22a,22b,26,27,31と、を備え、停電時または電気系統の故障により上記モータM1,M2が停止した際に、上記太陽光発電パネルPが自重(W)により地軸方向に沿って傾動することで、水平姿勢となる、太陽光発電装置S。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦横に複数個ずつの集光レンズを外側に有する太陽光発電パネルが太陽を追尾することで電力を得る太陽光発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を集光する複数の集光レンズを併有する集光板と、該集光板の裏面側に配設された支持板と、該支持板上で且つ上記集光レンズにより追尾していた太陽から集光された太陽光を受光する位置ごとに配置された複数の太陽電池セルと、を備えた集光型太陽光発電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記太陽光発電装置は、上記集光レンズの受光面が太陽光に対して常に直角となるように、太陽を追尾するため、経度(E−W)方向に沿った追尾(旋回)用モータと、地軸(N−S)方向に沿った高度修正(傾動)用モータとを含む追尾装置を備えており、係る2方向の追尾のために、付設の制御部で暦から計算された太陽の軌道位置を目標値として、上記モータごとに電動制御が行われている。
【0003】
更に、前記太陽光発電装置の制御部では、付属する風速計による風速が前記追尾装置の破損や倒壊のおそれに達した際に、前記2つのモータを含む当該追尾装置を駆動して、前記集光レンズと支持板とからなる太陽光発電パネルを水平姿勢とし、受風面積を最少にすることで、上記追尾装置の破損を防止している。
しかし、上記太陽光発電パネルを水平姿勢とするための退避作業は、前記2つのモータを含む追尾装置により行われるため、災害などの停電時や電気系統のトラブルが発生した場合には、不可能となる。また、太陽光発電パネルが強風によって煽られて不規則に揺動した場合、上記追尾装置のうち、該パネル側の動力伝達部からモータ側の動力伝達部に不用意なトルクが伝達されるため、当該追尾装置自体が故障ないし破損に至る、という問題があった。更に、上記太陽電池パネルが強風で不用意に煽られた場合、当該パネルと、これを上端部で支持している支柱とが接触または衝突して、破損に至る、というおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−142373号公報(第1〜8頁、図1〜5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、停電時や電気系統のトラブルが生じても、集光レンズと筺体とからなる太陽光発電パネルを自動的に水平姿勢などとして受風面積を最少にできると共に、追尾装置の動力伝達部や上記パネルの破損を確実に防止できる太陽光発電装置を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、停電時などにおいても、太陽光発電パネルが自重によって水平姿勢になり且つ該姿勢を保ち得るように構成する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の太陽光発電装置(請求項1)は、縦横に複数個ずつの集光レンズを外側に有する太陽光発電パネルと、該太陽光発電パネルが太陽を追尾できるように、係る太陽光発電パネルを地軸方向に沿って傾動させ且つ太陽の軌道に沿って旋回可能にして支持する支柱と、該支柱の上端部に配置され、上記太陽光発電パネルを傾動可能および旋回可能とするモータを含む動力伝達部と、を備え、停電時または電気系統の故障により上記モータが停止した際に、上記太陽光発電パネルが自重により地軸方向に沿って傾動することで、水平姿勢となる、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、災害などによる停電時または電気系統の故障によって、傾動用のモータが停止した場合でも、前記太陽光発電パネルを自重により地軸方向に沿って傾動させることで、自動的に設置位置の地表と平行な水平姿勢とし、上記パネルの受風面積を最少にできる。従って、太陽光発電パネルや追尾装置の破損を抑制して、前記太陽光発電パネルが常に太陽を追尾できるので、安定した太陽光発電を保証することが可能となる。
【0008】
尚、前記太陽光発電パネルは、縦横に複数個ずつの集光レンズを連設した1個の集光レンズユニットと、該ユニットの裏面側に配置され、上記集光レンズごとの直下に太陽電池セルを配置した底面を有する筺体とからなる。該パネルは、単数でも良いが、同じ平面内において縦横に沿って複数枚ずつの太陽光発電パネルを配置した後述するパネルユニットの形態としても良い。上記集光レンズは、例えば、ドーム型フレネルレンズの他、凸レンズや球面レンズなどとしても良く、これらの同じレンズごとを縦横に連設した集光レンズユニットとしても良い。
また、上記筺体は、底板およびその周辺から立設する側壁とを備えておれば、特に材料は限定されないが、太陽光発電パネルが屋外に設置されることに鑑み、耐食性および耐候性に優れたステンレス鋼、アルミニウム合金、あるいはチタン合金の板材を曲げ加工などした形態や、硬質の各種合成樹脂からなる射出成形品などが推奨される。
更に、前記太陽光発電パネルの重心は、複数の該パネルを支持するフレームの重量あるいはこれら付加される錘の重量によって定まり、該フレームおよび上記パネルの経度(東西)方向に沿った中間に位置している。
加えて、太陽光発電パネルあるいはパネルユニットが接地位置の地表と平行状の姿勢となるとは、平坦な地表でも傾斜地でも水平な姿勢となる。
【0009】
また、本発明には、前記太陽光発電パネルの重心が、地軸方向に沿って前記支柱の取付位置よりも上方に位置するように、上記パネルの重心よりも地軸に沿った下方の位置で上記支柱の上端部に取り付けるか、あるいは上記パネルの地軸に沿った上部側に錘を取り付けている、太陽光発電装置(請求項2)も含まれる。
これによれば、停電時などにおいても、自動的に前記太陽光発電パネルを接地位置の地表と平行状の姿勢にし、受風面積を最少にして、パネルや追尾装置の破損を確実に抑制することができる。
尚、錘を取り付ける形態では、前記支柱の軸方向に沿った太陽光発電パネルの地軸方向に沿った位置に1個の錘を取り付けるか、あるいは上記パネルにおいて経度方向に沿っており且つ支柱の軸心を中心に左右対称の位置に複数の錘を取り付けても良い。
【0010】
更に、本発明には、前記モータと連動し且つ前記太陽光発電パネルを地軸に沿って傾動させる動力伝達部に、両側の太径部とこれよりも細径の破断誘発部とを含み、上記モータが停止し、強風で上記パネルが傾動しようした際に生じるトルクによって上記破断誘発部が破断する伝動軸を配置してなる、太陽光発電装置(請求項3)も含まれる。
これによれば、前記モータが停止し、強風により前記太陽光発電パネルが地軸方向に沿って傾動しようする動きに伴って、動力伝達部にトルクが生じても、該トルクによって動力伝達部に配置された前記伝動軸における細径の破断誘発部が最初に破断する。従って、上記トルクによって、モータ側の動力伝達部や当該モータが不用意に駆動して破損する事態を確実に防止することができる。
【0011】
また、本発明には、前記モータが停止し、且つ前記太陽光発電パネルが自重または錘により地軸方向に沿って傾動することで、水平の姿勢となった際に、上記パネルにおける前記集光レンズのない裏面と前記支柱の上端部との間に、上記パネルを水平状の姿勢に保持するロック手段を配設している、太陽光発電装置(請求項4)も含まれる。
これによれば、停電時などにおいて、自動的に前記太陽光発電パネルを水平状の姿勢にして、受風面積を最少にしたまま、ロック手段によって上記パネルの水平な姿勢を保てるので、当該パネルや追尾装置の破損を確実に防止できる。
【0012】
更に、本発明には、前記ロック手段は、前記太陽光発電パネルにおける前記集光レンズのない裏面側に地軸と直交する向きに取り付けた棒と、前記支柱の上部に取り付けられ、上向きの開口部の幅が可変とされたホルダとから構成されている、太陽光発電装置(請求項5)も含まれる。
これによれば、前記太陽光発電パネルが水平状の姿勢になった際に、該パネル側に取り付けた棒がホルダの開口部の幅を一時的に拡大して当該ホルダ内に進入することで、上記棒をホルダに拘束して、上記パネルの不用意な動きを予防することができる。尚、前記棒は、一部に平坦面を有する形態の棒材が好ましい。
【0013】
加えて、本発明には、複数の前記太陽光発電パネルが同一平面に配置されたパネルユニットは、前記支柱の上端部に支持される部分から地軸方向に沿って抜き部を有している、太陽光発電装置(請求項6)も含まれる。
これによれば、複数の前記太陽光発電パネルからなるパネルユニットは、当該パネルユニットにおける支柱の上端部に支持される部分から地軸方向に沿って抜き部を有しているので、停電時などにおいて強風時により上記パネルユニットが煽られても、各パネルと支柱との接触や衝突を確実に予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の太陽光発電装置を示す正面図。
【図2】上記太陽光発電装置を示す側面図。
【図3】上記太陽光発電装置の要部を示す部分拡大側面図。
【図4】上記太陽光発電装置に用いる1枚の太陽光発電パネルを示す正面図。
【図5】図4中のX−X線に沿った矢視の垂直断面図。
【図6】上記太陽光発電装置の傾動前の状態を示す側面図。
【図7】上記太陽光発電装置の傾動後の状態を示す側面図。
【図8】上記太陽光発電装置に用いるロック手段を示す概略図。
【図9】上記ロック手段の挙動を示す概略図。
【図10】本太陽光発電装置の動力伝達部に用いる伝動軸の挙動を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の太陽光発電装置Sを示す正面図、図2は、該発電装置Sを示す側面図、図3は、該発電装置Sの要部を示す一部断面を含む拡大側面図である。尚、図3では、作図上、パネルユニットPUを相対的に縮小して示している。
上記太陽光発電装置Sは、図1,図2に示すように、水平な地表GLに設けた基礎B上に立設した支柱20と、該支柱20の上端部付近で支持され、複数の集光型太陽光発電パネルPからなり、且つ地軸(N−S軸:南北方向)に沿った傾動および経度(東西)方向に旋回が可能なパネルユニットPUと、を備えている。
集光型太陽光発電パネルPは、例えば、縦方向に3個で且つ横方向に5個を、支持体であるトラス状のフレーム28の同じ平面(前面)内で連結されてパネルユニットPUを形成し、該ユニットPUには、支柱20付近に該支柱20との干渉を防ぐため抜き部Nが形成されており、正面視でほぼ逆凹形を呈している。
尚、個々の上記太陽光発電パネルPは、後述する正面側の集光型レンズユニット1と、その背面側に配置された筺体5とから構成されている。
【0016】
図1〜図3に示すように、前記パネルユニットPUの背面側において、フレーム28の中央部付近には、直方体状の傾動筺25が突設されている。該傾動筺25は、その内側の円弧壁25aおよび軸受24を介して、支柱20の上端面で経度方向に沿って回転可能に支持され、且つ該軸受24を垂直に貫通する回転軸psによって、緯度方向に沿って旋回可能とされている。当該傾動筺25内に位置する円弧壁25aの内側25sには、互いに噛み合うウォーム27とウォームホイール26とが配置され、該ホイール26の回転軸PSが、当該傾動筺25を介して前記パネルユニットPUを、地軸方向に沿って傾動可能に支持している。
【0017】
図3に示すように、上記軸受24からは、水平な支え板23が背面側に突設され、該支え板23上には、互いに連動する電動モータM1と減速機22aとが直列に配置されている。該減速機22aと上記ウォーム27との間は、後述する破断誘発部を含む伝動軸31によって連結されている。
従って、モータM1を駆動し、その回転数を減速機22aで低減されたトルクは、伝動軸31、ウォーム27、およびウォームホイール26を介して、ホイール26の回転軸PSに伝動され、図3中で縦向きにカーブした実線の矢印で示すように、前記パネルユニットPUを地軸方向に沿って傾動可能としている。尚、上記モータM1、減速機22a、伝動軸31、ウォーム27、およびウォームホイール26は、追尾装置における傾動(南北方向)側の動力伝達部を構成している。
【0018】
また、図3に示すように、前記支柱20の上端部の内側20sには、互いに連動する電動モータM2と減速機22bとが直交して配置され、該減速機22bにおける出力側の回転軸psが軸受24を貫通し、且つ前記傾動筺25の底面に接続されている。従って、モータM2を駆動し、その回転数を減速機22bで低減されたトルクは、回転軸psと傾動筺25を介して、図3中で扁平な実線の矢印で示すように、前記パネルユニットPUを経度方向に沿って旋回可能に支持している。尚、上記モータM2、減速機22b、および回転軸psは、追尾装置における旋回側の動力伝達部を構成している。
【0019】
更に、図3に示すように、支柱20の上端部から背面側に延びた水平板20dの先端には、垂直に立設するポスト35と、該ポスト35の上端に位置するホルダ36とが取り付けられている。一方、パネルユニットPUの筺体5ごとの背面に取り付けられた補強用のフレーム28において、前記傾動筺25よりも上方には、支持材29を介してほぼ円筒形で且つ一部に平坦面を有する棒30が水平に固定されている。該棒30は、上記ホルダ36と共に、ロック手段を構成している。
尚、図3中の符号Wは、前記傾動筺25、フレーム28、および筒体30などを含むパネルユニットPUの重心を示し、係る重心Wは、当該ユニットPUの傾動方向の回転中心である回転軸PSよりも、地軸方向で上方に位置している。また、上記重心Wは、パネルユニットPUの背面における中心部で支柱20に支持された当該パネルユニットPUの上記中心部よりも上方に図示しない錘を取り付けることで位置決めする形態としても良い。何れの形態であっても、係る重心Wは、パネルユニットPUの左右(経度)方向における中間に位置している。
【0020】
加えて、前記集光型太陽光発電装置Sは、図2に示すように、支柱20の下部に、太陽光追尾装置21を備えており、図示しない電波時計やGPS信号による正確な時刻と信号とSの位置(経度、緯度を入力)のプリセット値情報に基づいて太陽の位置を算出し、前記集光型太陽光発電パネルPごとの正面側に配置された集光レンズユニット1が太陽に常時指向し、且つ後述する太陽電池セルの表面が入射する太陽光に対して常時直角となるように、傾動用の前記モータM1および旋回用のモータM2を、制御部により制御しつつ駆動するようにしている。即ち、地球の自転に応じて日の出から日没までの間における太陽の動き(軌道)を追尾するための制御は、旋回用の前記モータM2によって行われ、地球の公転に応じて太陽高度の変化に対応するための制御は、傾動用の前記モータM1によって行われると共に、これらが併用される。
【0021】
図4は、前記太陽光発電装置Sに用いられた1枚の集光型太陽光発電パネルPを示す平面図、図5は、図4中のX−X線の矢視に沿った垂直断面図である。
集光型太陽光発電パネルPは、図4,図5に示すように、縦横で且つ格子状に5個ずつのドーム型フレネルレンズ(集光レンズ)2を連設した集光レンズユニット1と、該集光レンズユニット1における上記レンズ2ごとの凹み側である背面側(下方)に配置され、平面視が正方形の底板6および該底板6の周辺(四辺)から立設した四組の側壁7からなる筺体5と、を備えている。
【0022】
上記集光レンズユニット1は、例えば、光学的特性に優れたアクリル樹脂を射出成形することで形成され、図4に示すように、縦横に5個ずつのドーム型フレネルレンズ2を格子状に連設し、個々の該レンズ2の裾部は、各コーナーにアールが付されたほぼ正方形を呈する。これらのうち、最外側に位置するドーム型フレネルレンズ2ごとの周縁3は、上(正面)向きに緩くカーブした端面であり、隣接する筺体5の側壁7との間に位置する断面が鋭角の溝gには、例えば、シリコンなどからなる防水用のシーラントCが充填されている。
尚、前記各フレネルレンズ2の裏面側には、同心円の位置にリング状の段差を複数設けたドーム型フレネルレンズが刻設されている。また、隣接する4個の上記レンズ2,2間には、平面視でほぼ十字形の平坦面が位置している。更に、複数のドーム型フレネルレンズ2は、正面視で市松(千鳥)模様の位置で集光レンズユニット1に配設されていても良い。
【0023】
一方、筺体5は、例えば、アルミニウム合金の板材を曲げ加工し、且つ各コーナーを挟んで隣接する側壁7,7間を適宜ビスなどにより連結されている。尚、各側壁7の上端面(上辺)8は、塵埃の滞留を防ぐため、側面視で前記レンズ2の周縁3に沿った曲線とすることが望ましいが、直線の形態としても良い。
図5に示すように、筺体5の底板6上の中空部10において、前記ドーム型フレネルレンズ2ごとの直下の位置に、図示しない座板、該座板の上面に形成した第1・第2リード電極18、該電極18の中央部に配置した位置状の太陽電池セル16、該電池セル16の上に立設した角錐形状のホモジナイザ14、および該ホモジナイザ14の上に配置され且つ中央に太陽光を通す円形の貫通孔hを有する遮光板(光カバー)12を備えた発電モジュールが個別に配設されている。
上記ホモジナイザ14は、4つの内面が光反射面である光学ガラスにより構成されているが、金属筒体により構成する形態としても良い。
【0024】
また、前記太陽電池セル16は、吸収波長帯が相違する複数種類のpn接合、例えば、上部接合層、中間接合層、および底部接合層を順次積層した多接合型構造を有し、係る上部接合層、中間接合層、および底部接合層に個別に設けたpn接合は、電気的に直列で接続され、中心波長が互いに異なる吸収波長帯を備えている。例えば、上部接合層が波長300〜600nmの青色光を、中間接合層が波長600〜1000nmの黄色光を、底部接合層が波長1000〜1800nmの赤色光を、それぞれ吸収することで、太陽光の波長のうち、吸収波長帯を広域化して光−電気の高い変換効率を保証可能とされている。
図5中の矢印で示すように、ドーム型フレネルレンズ2ごとの上側(正面側)に平行に到達した太陽光は、裏面側の図示しないフレネルレンズによって、遮光板12の貫通孔h付近の焦点に集光され、ホモジナイザ14の内部を反射しつつ透過した後、太陽光電池セル16に入射する。その結果、太陽光(エネルギー)が効率良く電力に変換される。該電力は、筺体5ごと接続した図示しない配線を介して、電源に送信される。
【0025】
前記のような太陽光発電装置Sによれば、日の出から日没までの間における太陽の軌道を追尾して、前記太陽光発電パネルPごとの集光レンズユニット1の各レンズ2および太陽電池セル16の表面に太陽光を常に直角に入射させて集光するため、前記モータM2のトルクが、前記減速機22b、回転軸ps、および傾動筺25を介して前記パネルユニットPUを経度方向に沿って旋回させている。一方、前記モータM1のトルクが、伝動軸31、ウォーム27、およびウォームホイール26を介して、ホイール26の回転軸PSに伝動され、前記パネルユニットPUを地軸方向に沿って傾動させて、地球の公転に伴う太陽の高度位置の修正をしている。その結果、太陽光発電パネルPごとの太陽電池セル16において、季節に拘わらず、効率の良い太陽光発電を常に行うことが可能である。
【0026】
ところで、例えば、台風あるいは発達中の低気圧が接近したり、あるいは設置位置を通過する際に際生じる強風は、前記太陽光発電装置SのパネルユニットPUを不用意に煽るなどして破損させる、という悪影響を及ぼす公算が高くなる。
そのため、前記太陽光発電装置Sは、図示しない風速計によって常に付近の風速を測定し、複数の太陽光発電パネルPを含む前記パネルユニットPUや、追尾装置の動力伝達部(モータM1,M2、減速機22a,22b、伝動軸31、ウォーム27、ウォームホイール26、回転軸ps)が破損や倒壊するおそれがある強風を受けた場合には、モータM1,M2が駆動しない停電状態や電気系統の故障に拘わらず、以下のような退避動作を自動的に行えるように設計されている。
【0027】
例えば、台風に伴う暴風雨により停電した場合、追尾装置のうち、前記モータM1、減速機22a、伝動軸31、ウォーム27、およびウォームホイール26からなる傾動側の動力伝達部は、自己保持が不能となる。
その際、図6中のカーブした一点鎖線の矢印で示すように、フレーム28などを含むパネルユニットPUは、その重心Wによって、前記ウォームホイール26の回転軸PSを回転中心として、各パネルPの筺体5の背面側に傾きつつ傾動する。その結果、上記パネルユニットPUは、図6に示すような太陽光発電可能な縦長の姿勢から、図7に示すように、水平な地表GLとほぼ平行であり、受風面積を最少にできる水平の姿勢に自動的に移行する。
【0028】
図8に示すように、本発明のロック手段の一方を構成するホルダ36は、内側37aを有するほぼ半円形の本体37と、その開口部の両側に位置する左右一対の筒部38と、該筒部38の内側38aにスライド可能に収容され、バネ39aによって先端の傾斜面が出没する左右一対のストッパ39とから構成されている。
前記パネルユニットPUが水平姿勢に近付くと、図8に示すように、棒30のアール面が、バネ39aを圧縮させ、左右一対のストッパ39の傾斜面を外向きに押してホルダ36の開口部の幅を拡大するので、棒30は本体37の内側37aに入り込もうとする。そして、パネルユニットPUが水平姿勢になると同時に、図9に示すように、左右一対のストッパ39が棒30の平坦面に沿って互いに接近し、ホルダ36の開口部の幅が元の小さな寸法に戻される。
【0029】
その結果、棒30を含むパネルユニットPUは、前記図7に示すように、水平な姿勢に保持され且つ地表GLと平行となるので、強風によって不用意に煽られたり、揺動することが抑制される。係る棒30とホルダ36とからなるロック手段は、別途の手段で解除可能とされている。
この間において、前記パネルユニットPUが縦長の姿勢から背面側に約90度近く傾いて傾動するため、その回転中心の前記回転軸PSにより生じたトルクTは、ウォームホイール26、およびウォーム27を介して、伝動軸31、減速機22a、およびモータM1側に、順次伝達される。このうち、伝動軸31は、図9の上方に示すように、減速機22aとウォーム27との端部に個別にボルト止めされた左右一対の継手33、それらの間に位置する一対の太径部32、およびその間に位置する細径の破断誘発部34とから構成されている。
【0030】
そのため、図10の上方中の実線の矢印で示すように、ウォーム27側から右側の太径部32に上記トルクTが伝達されると、該太径部32と左側の太径部32との間で円周方向に沿って生じた捻り応力が破断誘発部34に集中する。
その結果、図10の下方に示すように、破断誘発部34が破断34hするので、これ以降では、前記パネルユニットPUは、自重(W)によって前記のように傾動する。しかも、係る傾動の際に生じた前記トルクTが傾動用の上記動力伝達部を伝搬しても、減速機22aおよびモータM1のような複雑な駆動源や変速手段を保護できると共に、前記ロック手段30,36と相まって、受風面積が最少となる水平姿勢にした前記パネルユニットPUを安全に保つことが可能となる。
尚、前記のような伝動軸31は、追尾装置における旋回用の動力伝達部における前記回転軸psと減速機22bとの間にも配置しても良い。
【0031】
尚、本発明は、以上において説明した形態に限定されるものではない。
例えば、前記太陽光発電パネルは、前記フレーム28がなくて、複数の筺体5自体が強度部材を兼ねている形態としても良い。
更に、前記傾動用や旋回用の駆動源には、油圧モータを適用しても良い。
また、傾動用の動力伝達部におけるトルクの方向変換手段は、前記ウォームホイールおよびウォームからなるウォームギアに替えて、一対の傘歯車を用い且つ両者の歯数に差を設けて、減速機能を併せて与えるようにしても良い。
更に、前記ロック手段は、パネルユニット側の矢印形を呈する凸部と、開口部の両側にバネ圧によって接近している一対の斜め片を対称に有する凹部とによって構成しても良い。
また、前記ロック手段は、パネルユニット側の片矢形を呈する凸部と、開口部の片側にバネ圧によって当該開口部を狭めている一つの斜め片を有する凹部とによって構成しても良い。
加えて、前記水平な地表GLに替えて、前記ベースBを含む基礎を海中から海面上に設けた形態、あるいは上記ベースBを含む基礎を水中から下線や湖沼などの水面上に設けた形態としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の太陽光発電装置によれば、停電時や電気系統のトラブルが生じても、太陽光発電パネルを自動的に水平姿勢などとして受風面積を最少にできると共に、動力伝達部や上記パネルの破損を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0033】
1…………………集光レンズユニット
2…………………ドーム型フレネルレンズ(集光レンズ)
20………………支柱
22a,22b…減速機(動力伝達部)
26………………ウォームホイール(動力伝達部)
27………………ウォーム(動力伝達部)
30………………棒(ロック手段)
31………………伝動軸
32………………太径部
34………………破断誘発部
36………………ホルダ(ロック手段)
S…………………太陽光発電装置
P…………………太陽光発電パネル
PU………………パネルユニット
W…………………重心
N…………………抜き部
GL………………地表
M1,M2………モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦横に複数個ずつの集光レンズを外側に有する太陽光発電パネルと、
上記太陽光発電パネルが太陽を追尾できるように、係る太陽光発電パネルを地軸方向に沿って傾動させ且つ太陽の軌道に沿って旋回可能にして支持する支柱と、
上記支柱の上端部に配置され、上記太陽光発電パネルを傾動可能および旋回可能とするモータを含む動力伝達部と、を備え、
停電時または電気系統の故障により上記モータが停止した際に、上記太陽光発電パネルが自重により地軸方向に沿って傾動することで、水平姿勢となる、
ことを特徴とする太陽光発電装置。
【請求項2】
前記太陽光発電パネルの重心が、地軸方向に沿って前記支柱の取付位置よりも上方に位置するように、上記パネルの重心よりも地軸に沿った下方の位置で上記支柱の上端部に取り付けるか、あるいは上記パネルの地軸に沿った上部側に錘を取り付けている、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電装置。
【請求項3】
前記モータと連動し且つ前記太陽光発電パネルを地軸に沿って傾動させる動力伝達部に、両側の太径部とこれよりも細径の破断誘発部とを含み、上記モータが停止し、強風で上記パネルが傾動しようした際に生じるトルクによって上記破断誘発部が破断する伝動軸を配置してなる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽光発電装置。
【請求項4】
前記モータが停止し、且つ前記太陽光発電パネルが自重または錘により地軸方向に沿って傾動することで、水平の姿勢となった際に、上記パネルにおける前記集光レンズのない裏面と前記支柱の上端部との間に、上記パネルを水平状の姿勢に保持するロック手段を配設している、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の太陽光発電装置。
【請求項5】
前記ロック手段は、前記太陽光発電パネルにおける前記集光レンズのない裏面側に地軸と直交する向きに取り付けた棒と、前記支柱の上部に取り付けられ、上向きの開口部の幅が可変とされたホルダとから構成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の太陽光発電装置。
【請求項6】
複数の前記太陽光発電パネルが同一平面に配置されたパネルユニットは、前記支柱の上端部に支持される部分から地軸方向に沿って抜き部を有している、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の太陽光発電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−204471(P2012−204471A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65902(P2011−65902)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【出願人】(000149505)大同マシナリー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】