太陽光追尾センサの再調整方法
【課題】太陽光追尾センサを容易に、かつ、高精度で設置できる太陽光追尾センサの方位設定方法。
【解決手段】ヘリオスタット2によって集光された反射光の光軸11上に太陽光追尾ガイド35を設置し、該太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cと同一軸になるように太陽光追尾ガイド35の後端部に光学望遠鏡を装着し、該光学望遠鏡の視野中に設けた+印が集光目標位置10の中心位置10aになるように前記太陽光追尾ガイド35の姿勢を調整して取付台座に固定し、次に、太陽光追尾ガイド35から光学望遠鏡を取り外して太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cと同一軸になるように太陽光追尾ガイド35の後端部に太陽光追尾センサ12を取り付ける。
【解決手段】ヘリオスタット2によって集光された反射光の光軸11上に太陽光追尾ガイド35を設置し、該太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cと同一軸になるように太陽光追尾ガイド35の後端部に光学望遠鏡を装着し、該光学望遠鏡の視野中に設けた+印が集光目標位置10の中心位置10aになるように前記太陽光追尾ガイド35の姿勢を調整して取付台座に固定し、次に、太陽光追尾ガイド35から光学望遠鏡を取り外して太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cと同一軸になるように太陽光追尾ガイド35の後端部に太陽光追尾センサ12を取り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光追尾センサの再調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱発電装置に適用する太陽光集光装置としては、従来、トラフ型(分散型)集光装置、タワー型(集光型)集光装置およびディッシュ型集光装置の3種類の集光装置が知られている。
【0003】
トラフ型(分散型)集光装置は、放物曲面鏡(若しくは、平面鏡+放物曲面鏡)で太陽光を集め、液体(熱媒体)の入ったパイプ(集熱管)を温める方式である。このトラフ型集光装置は、設置場所を規模に応じて変えやすく、また、追加しやすい設計であるが、集める太陽光がタワー型集光装置に比べて少なくなるので、温度が低く、高効率化が望めないという欠点がある。
【0004】
タワー型集光装置は、地上に並べられた平面鏡で反射させた太陽光を中央のタワーに集めて、液体(熱媒体)の入ったパイプ(集熱管)を温める方式である。ヘリオスタットの設置に場所を取る分、集められる太陽光も多くなり、必然的に熱媒体を高温にすることが可能である。したがって、他の集光装置に比べて高効率の発電が可能であるが、その分、大規模でないと採算が取れない。
【0005】
ディッシュ型集光装置は、パラボラアンテナのような形をした曲面鏡(ディッシュ)で反射させた太陽光を中央にあるレシーバーに集めて、スターリングエンジン(空気の温度差による圧力を利用した外燃機関)などで発電する方式である。ディッシュ型集光装置は、施設の規模を小さくすることができるが、まだ、初期レベルの研究開発段階である。
【0006】
上記のように、従来の太陽光集光装置については、一長一短があったり、或いは、研究開発段階であることから、新たにビームダウン式集光装置が提案されている。このビームダウン式集光装置は、図9に示すように、地上1に同心円状に配列した多数のヘリオスタット2の反射光3をタワー(図示せず)の上部に集光し、これを更に第2の反射鏡4で反射して地上に導く方式である。
【0007】
タワー上部に設けた反射鏡は、イスラエルのWeizmann(ウェッマン)研究所が開発を行なっている凸面鏡(双曲面鏡)を用いる方式と、東京工業大学炭素循環エネルギー研究センターが開発を行なっている凹面鏡(楕円鏡)を用いる方式があるが、いずれの方式も利用可能である。これにより、溶融塩などの熱媒体をタワー上部に循環させる必要がなくなり、太陽熱を吸収するためのレシーバーもタワー上部に設置しなくて良いという利点がある。
【0008】
地上に導かれた太陽光は、CPC(Compound Parabolic Concentrator ) と呼ばれる二次集光器5により更に集光され、溶融塩を加熱するのに用いられる。溶融塩で蓄熱することにより、プラントを24時間稼働させることが可能となる。
【0009】
ところで、ヘリオスタット姿勢制御用の太陽光追尾センサを設置する場合、従来は、図10及び図11に示すように、先ず、集光目標位置10の光軸11を決定し、その後、この光軸11に3次元方向を合わせて太陽光追尾センサ12の取り付けを行なっている。図中、符号2はヘリオスタット、13は太陽光追尾センサ取付架台、Sは太陽である。
【0010】
即ち、従来は、図12に示すように、目標集光軸11上に測定機器(例えば、トランシット等)14を据え付け、更に、必要ポイント、例えば、集光目標10の中心15、太陽光追尾センサ12の前端部中心16、太陽光追尾センサ12の後端部中心17、ヘリオスタット2の中心18にそれぞれ「印」を付け、そして、肉眼Mでトランシット14を覗いて各ポイントに太陽光追尾センサ12のセンサ軸(図示せず)が一致するように太陽光追尾センサ12を設置する方法を取っている。
【0011】
このセンサ設置方法では、上記にように、測定機器(例えば、トランシット等)14によるセンサ取付け位置を決定していたが、測量によって「印」を付けたセンサ取付け位置に、太陽光追尾センサ12を後から正確に設置することが難しかった。
【0012】
また、上記のような方法により、正確に太陽光追尾センサを取り付けた場合でも、外乱(例えば、風、熱、振動等)による目標光軸に狂い(ズレ)が発生し、結果的に目標の集光性能に狂いが発生したり、あるいは、集光性能の低下につながっていた。また、このズレ量の測定には、多大な作業が必要となる(例えば、多数のヘリオスタットのどの装置が狂っているか調べるには、装置全数の点検が必要になる。)。
【0013】
また、太陽光追尾センサのセンサ軸と目標光軸との間にズレが発生した場合、その調整方法は、各機器の位置計測を詳細に測量して各々の微調整を必要とし、この作業の効率化が望まれていた。
【0014】
更に、図13に示すように、幾つかの鏡を通過して集光する場合は、ヘリオスタット2及び第2の反射鏡20の位置および向きの調整を必要とし、単独反射鏡の場合の数倍もの設置、調整、計測作業を必要とする。また、従来は、太陽光追尾センサの位置ズレか、或いは、第2反射鏡のズレか測定する必要があった。図中、符号Nは太陽光照射面を示している。
【0015】
また、従来は、図10および図11に示すように、ヘリオスタット取付台座21に太陽光追尾センサ取付架台13を取り付けたため、ヘリオスタット2と太陽光追尾センサ取付架台13との干渉を回避するための切欠き部22をヘリオスタット面に設ける必要があり、ヘリオスタット2の面積低減になっていた。
【0016】
尚、太陽光集光装置の関連技術には、多くの発明がなされているが(例えば、特許文献1及び2参照。)、本件に類似する発明は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−333003号公報
【特許文献2】実公平5−24165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記ような問題を解消するためになされたものであり、その目的は、経年による太陽光追尾センサの光軸ズレを容易に、かつ、高精度で再調整できる太陽光追尾センサの再調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願の発明に係る太陽光追尾センサの再調整方法は、ヘリオスタットによって集光された反射光の光軸上に設置させた太陽光追尾センサを再調整するに際し、経年による太陽光追尾センサの光軸ズレ発生時に、前記太陽光追尾センサが装着されている太陽光追尾ガイドの前端部に太陽光追尾ガイドのガイド軸と同一軸になるようにレーザ光発振機を取り付け、該レーザ光発振機よりレーザ光を発振して集光目標位置でマーキングし、前記光軸に対するマーキングポイントのズレ量を計測し、しかる後に、前記集光目標位置の中心位置にマーキングポイントが一致するように前記太陽光追尾ガイドの姿勢を再調整することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本願の発明は、ヘリオスタットによって集光された反射光の光軸上に設置させた太陽光追尾センサを再調整するに際し、経年による太陽光追尾センサの光軸ズレ発生時に、前記太陽光追尾センサが装着されている太陽光追尾ガイドの前端部に太陽光追尾ガイドのガイド軸と同一軸になるようにレーザ光発振機を取り付け、該レーザ光発振機よりレーザ光を発振して集光目標位置でマーキングし、前記光軸に対するマーキングポイントのズレ量を計測し、しかる後に、前記集光目標位置の中心位置にマーキングポイントが一致するように前記太陽光追尾ガイドの姿勢を再調整するため、経年による太陽光追尾センサの光軸ズレを容易に、かつ、高精度で再調整できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る太陽光集光装置の側面図である。
【図2】図1のA部の太陽光追尾ガイドとこのガイドに装着する各種機器との関連を示す説明図である。
【図3】太陽光追尾ガイドの設置方法を示す平面図である。
【図4】太陽光追尾ガイドの調整方法を示す平面図である。
【図5】太陽光追尾ガイドの調整方法を示す側面図である。
【図6】太陽光追尾センサの設置方法を示す側面図である。
【図7】レーザ光発振機の設置方法を示す側面図である。
【図8】マーキングポイントのズレ量を測定する測定方法を示す正面図である。
【図9】ダウンビーム型太陽発電方式の説明図である。
【図10】従来の太陽光集光装置の平面図である。
【図11】従来の太陽光集光装置の側面図である。
【図12】従来の太陽光追尾センサの設置方法を示す説明図である。
【図13】第2の反射鏡がある場合の設置作業等の難しさを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。図1ではフラット型のヘリオスタットで図示しているが、いわゆるTボーン型のヘリオスタットでも同様である。
【0023】
図1に示すように、本発明に関連する太陽光集光装置30は、太陽光集光用の複数のヘリオスタット2がヘリオスタット台座24を介して回転台25の上に設定されている。ヘリオスタットに取り付けられている鏡は、本来、円錐曲線をもった3次元で製作することが望まれるが、製作コストのアップ、精度保持が難しいなどの理由から、小さな鏡(ファセット)を擬似的に円錐曲線に合わせることが行なわれている。
【0024】
上記回転台25は、その下面に設けた大歯車26と一緒に回転するようになっている。大歯車26は、固定盤27上に回転自在に設けられている。大歯車26は、小歯車28と噛合して時計方向または反時計方向に回転する。小歯車28は、回転台25に設置した電動モータ29によって駆動される。
【0025】
複数のヘリオスタット2は、連結リンク31によって互いに連結され、同時に俯仰するようになっている。ヘリオスタット2の俯仰運動は、ヘリオスタット2の背面に取り付けた円弧状の歯車32と、ヘリオスタット台座24を設けたピニオン33との噛み合わせにより行なわれる。
【0026】
太陽光追尾ガイド35は、中央のヘリオスタット2の斜め上方に位置しており、設定光軸11に同一軸になるように設けられる。この太陽光追尾ガイド35は、門形状に形成された太陽光追尾センサ取付架台36の水平フレーム36aの中央に位置している。このため、太陽光追尾ガイド35は、左右方向の位置合わせを容易に行なうことができる。この太陽光追尾センサ取付架台36は、両側の支柱部36bが上記回転台25の両側に立設されている。
【0027】
図2に示すように、太陽光追尾ガイド35は、所定の長さを有する円筒体であり、太陽光追尾ガイド取付台37に取り付けられている。この太陽光追尾ガイド取付台37は、台座38と、その上に回転自在に搭載した支持体39により形成されている。符号O1 は、支持体39の回転中心軸であり、台座38に対して垂直になっている。
【0028】
上記太陽光追尾ガイド35は、その両側に設けた片持軸40を介して支持体39に俯仰自在に取り付けられているが、支持体39のブラケット41に設けたボルト等の締付具42を締め付けることによって所定の迎え角θに固定できる。また、この支持体39は、回転板43の周囲に設けたボルト等の締付具44を締め付けることによって回転中心軸O1 を中心にして所定の回転角度に固定できるようになっている。
【0029】
太陽光追尾ガイド35は、その後端部にボス状の連結具46を有している。この連結具46は、太陽光追尾センサ12や光学望遠鏡(フィールドスコープ)47を装着するものであり、その周囲に設けたボルト等の締付具48によって太陽光追尾センサ12やフィールドスコープ47を太陽光追尾ガイド35のガイド軸49と同一軸になるようにすることができる。他方、太陽光追尾ガイド35の先端部にレーザ光発振機50を装着できるようになっている。
【0030】
次に、本発明の太陽光追尾センサの方位設定方法、計測方法および再調整方法に付いて説明する。
【0031】
(A)太陽光追尾センサの方位設定方法
ヘリオスタットによって集光された光束の光軸上に太陽光追尾センサを設置する場合は、図3に示すように、先ず、太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cが光軸11上に位置するように、太陽光追尾センサー取付架台36の所定位置に太陽光追尾ガイド35を設置する。
【0032】
次に、図4及び図5に示すように、太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cと同一軸になるように太陽光追尾ガイド35の後端部に光学望遠鏡47を装着する。そして、光学望遠鏡47を肉眼Mで覗いて視野中に設けた+印が集光目標位置10の中心位置10aになるように太陽光追尾ガイド35の姿勢を微調整して既に説明した取付台座(図1参照。)に固定する。
【0033】
しかる後に、太陽光追尾ガイド35から光学望遠鏡47を取り外して太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cと同一軸になるように太陽光追尾ガイド35の後端部に太陽光追尾センサ12を取り付ける(図6参照。)。
【0034】
そして、ヘリオスタット2によって集束された光束6の光軸11が太陽光追尾ガイド35のガイド軸と一致するように太陽光追尾センサ12によってヘリオスタット2の向きがコンピュータ制御される。
【0035】
(B)太陽光追尾センサの光軸ズレの計測方法および再調整方法
設置から数年または十数年が経過して経年による太陽光追尾センサの光軸ズレが発生した場合には、図7に示すように、太陽光追尾センサ12が装着されている太陽光追尾ガイド35の前端部に太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cと同一軸になるようにレーザ光発振機50を取り付ける。
【0036】
そして、レーザ光発振機50よりレーザ光7を発振して図8のように集光目標位置10でマーキングし、集光目標位置10にてマーキングポイント8の光軸11(集光目標位置10の中心位置10a)からのズレ量(例えば、マーキングポイント8のズレ量δX ,δY )を計測する。この計測作業は、太陽光のない夜間に行なう。
【0037】
しかる後に、マーキングポイント8が集光目標位置10の中心位置10aと一致するように太陽光追尾ガイド35の姿勢を再調整する。
【符号の説明】
【0038】
2 ヘリオスタット
10a 集光目標位置の中心位置
11 光軸
12 太陽光追尾センサ
35 太陽光追尾ガイド
38 取付台座
47 光学望遠鏡
C 太陽光追尾ガイドのガイド軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光追尾センサの再調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱発電装置に適用する太陽光集光装置としては、従来、トラフ型(分散型)集光装置、タワー型(集光型)集光装置およびディッシュ型集光装置の3種類の集光装置が知られている。
【0003】
トラフ型(分散型)集光装置は、放物曲面鏡(若しくは、平面鏡+放物曲面鏡)で太陽光を集め、液体(熱媒体)の入ったパイプ(集熱管)を温める方式である。このトラフ型集光装置は、設置場所を規模に応じて変えやすく、また、追加しやすい設計であるが、集める太陽光がタワー型集光装置に比べて少なくなるので、温度が低く、高効率化が望めないという欠点がある。
【0004】
タワー型集光装置は、地上に並べられた平面鏡で反射させた太陽光を中央のタワーに集めて、液体(熱媒体)の入ったパイプ(集熱管)を温める方式である。ヘリオスタットの設置に場所を取る分、集められる太陽光も多くなり、必然的に熱媒体を高温にすることが可能である。したがって、他の集光装置に比べて高効率の発電が可能であるが、その分、大規模でないと採算が取れない。
【0005】
ディッシュ型集光装置は、パラボラアンテナのような形をした曲面鏡(ディッシュ)で反射させた太陽光を中央にあるレシーバーに集めて、スターリングエンジン(空気の温度差による圧力を利用した外燃機関)などで発電する方式である。ディッシュ型集光装置は、施設の規模を小さくすることができるが、まだ、初期レベルの研究開発段階である。
【0006】
上記のように、従来の太陽光集光装置については、一長一短があったり、或いは、研究開発段階であることから、新たにビームダウン式集光装置が提案されている。このビームダウン式集光装置は、図9に示すように、地上1に同心円状に配列した多数のヘリオスタット2の反射光3をタワー(図示せず)の上部に集光し、これを更に第2の反射鏡4で反射して地上に導く方式である。
【0007】
タワー上部に設けた反射鏡は、イスラエルのWeizmann(ウェッマン)研究所が開発を行なっている凸面鏡(双曲面鏡)を用いる方式と、東京工業大学炭素循環エネルギー研究センターが開発を行なっている凹面鏡(楕円鏡)を用いる方式があるが、いずれの方式も利用可能である。これにより、溶融塩などの熱媒体をタワー上部に循環させる必要がなくなり、太陽熱を吸収するためのレシーバーもタワー上部に設置しなくて良いという利点がある。
【0008】
地上に導かれた太陽光は、CPC(Compound Parabolic Concentrator ) と呼ばれる二次集光器5により更に集光され、溶融塩を加熱するのに用いられる。溶融塩で蓄熱することにより、プラントを24時間稼働させることが可能となる。
【0009】
ところで、ヘリオスタット姿勢制御用の太陽光追尾センサを設置する場合、従来は、図10及び図11に示すように、先ず、集光目標位置10の光軸11を決定し、その後、この光軸11に3次元方向を合わせて太陽光追尾センサ12の取り付けを行なっている。図中、符号2はヘリオスタット、13は太陽光追尾センサ取付架台、Sは太陽である。
【0010】
即ち、従来は、図12に示すように、目標集光軸11上に測定機器(例えば、トランシット等)14を据え付け、更に、必要ポイント、例えば、集光目標10の中心15、太陽光追尾センサ12の前端部中心16、太陽光追尾センサ12の後端部中心17、ヘリオスタット2の中心18にそれぞれ「印」を付け、そして、肉眼Mでトランシット14を覗いて各ポイントに太陽光追尾センサ12のセンサ軸(図示せず)が一致するように太陽光追尾センサ12を設置する方法を取っている。
【0011】
このセンサ設置方法では、上記にように、測定機器(例えば、トランシット等)14によるセンサ取付け位置を決定していたが、測量によって「印」を付けたセンサ取付け位置に、太陽光追尾センサ12を後から正確に設置することが難しかった。
【0012】
また、上記のような方法により、正確に太陽光追尾センサを取り付けた場合でも、外乱(例えば、風、熱、振動等)による目標光軸に狂い(ズレ)が発生し、結果的に目標の集光性能に狂いが発生したり、あるいは、集光性能の低下につながっていた。また、このズレ量の測定には、多大な作業が必要となる(例えば、多数のヘリオスタットのどの装置が狂っているか調べるには、装置全数の点検が必要になる。)。
【0013】
また、太陽光追尾センサのセンサ軸と目標光軸との間にズレが発生した場合、その調整方法は、各機器の位置計測を詳細に測量して各々の微調整を必要とし、この作業の効率化が望まれていた。
【0014】
更に、図13に示すように、幾つかの鏡を通過して集光する場合は、ヘリオスタット2及び第2の反射鏡20の位置および向きの調整を必要とし、単独反射鏡の場合の数倍もの設置、調整、計測作業を必要とする。また、従来は、太陽光追尾センサの位置ズレか、或いは、第2反射鏡のズレか測定する必要があった。図中、符号Nは太陽光照射面を示している。
【0015】
また、従来は、図10および図11に示すように、ヘリオスタット取付台座21に太陽光追尾センサ取付架台13を取り付けたため、ヘリオスタット2と太陽光追尾センサ取付架台13との干渉を回避するための切欠き部22をヘリオスタット面に設ける必要があり、ヘリオスタット2の面積低減になっていた。
【0016】
尚、太陽光集光装置の関連技術には、多くの発明がなされているが(例えば、特許文献1及び2参照。)、本件に類似する発明は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−333003号公報
【特許文献2】実公平5−24165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記ような問題を解消するためになされたものであり、その目的は、経年による太陽光追尾センサの光軸ズレを容易に、かつ、高精度で再調整できる太陽光追尾センサの再調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願の発明に係る太陽光追尾センサの再調整方法は、ヘリオスタットによって集光された反射光の光軸上に設置させた太陽光追尾センサを再調整するに際し、経年による太陽光追尾センサの光軸ズレ発生時に、前記太陽光追尾センサが装着されている太陽光追尾ガイドの前端部に太陽光追尾ガイドのガイド軸と同一軸になるようにレーザ光発振機を取り付け、該レーザ光発振機よりレーザ光を発振して集光目標位置でマーキングし、前記光軸に対するマーキングポイントのズレ量を計測し、しかる後に、前記集光目標位置の中心位置にマーキングポイントが一致するように前記太陽光追尾ガイドの姿勢を再調整することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本願の発明は、ヘリオスタットによって集光された反射光の光軸上に設置させた太陽光追尾センサを再調整するに際し、経年による太陽光追尾センサの光軸ズレ発生時に、前記太陽光追尾センサが装着されている太陽光追尾ガイドの前端部に太陽光追尾ガイドのガイド軸と同一軸になるようにレーザ光発振機を取り付け、該レーザ光発振機よりレーザ光を発振して集光目標位置でマーキングし、前記光軸に対するマーキングポイントのズレ量を計測し、しかる後に、前記集光目標位置の中心位置にマーキングポイントが一致するように前記太陽光追尾ガイドの姿勢を再調整するため、経年による太陽光追尾センサの光軸ズレを容易に、かつ、高精度で再調整できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る太陽光集光装置の側面図である。
【図2】図1のA部の太陽光追尾ガイドとこのガイドに装着する各種機器との関連を示す説明図である。
【図3】太陽光追尾ガイドの設置方法を示す平面図である。
【図4】太陽光追尾ガイドの調整方法を示す平面図である。
【図5】太陽光追尾ガイドの調整方法を示す側面図である。
【図6】太陽光追尾センサの設置方法を示す側面図である。
【図7】レーザ光発振機の設置方法を示す側面図である。
【図8】マーキングポイントのズレ量を測定する測定方法を示す正面図である。
【図9】ダウンビーム型太陽発電方式の説明図である。
【図10】従来の太陽光集光装置の平面図である。
【図11】従来の太陽光集光装置の側面図である。
【図12】従来の太陽光追尾センサの設置方法を示す説明図である。
【図13】第2の反射鏡がある場合の設置作業等の難しさを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。図1ではフラット型のヘリオスタットで図示しているが、いわゆるTボーン型のヘリオスタットでも同様である。
【0023】
図1に示すように、本発明に関連する太陽光集光装置30は、太陽光集光用の複数のヘリオスタット2がヘリオスタット台座24を介して回転台25の上に設定されている。ヘリオスタットに取り付けられている鏡は、本来、円錐曲線をもった3次元で製作することが望まれるが、製作コストのアップ、精度保持が難しいなどの理由から、小さな鏡(ファセット)を擬似的に円錐曲線に合わせることが行なわれている。
【0024】
上記回転台25は、その下面に設けた大歯車26と一緒に回転するようになっている。大歯車26は、固定盤27上に回転自在に設けられている。大歯車26は、小歯車28と噛合して時計方向または反時計方向に回転する。小歯車28は、回転台25に設置した電動モータ29によって駆動される。
【0025】
複数のヘリオスタット2は、連結リンク31によって互いに連結され、同時に俯仰するようになっている。ヘリオスタット2の俯仰運動は、ヘリオスタット2の背面に取り付けた円弧状の歯車32と、ヘリオスタット台座24を設けたピニオン33との噛み合わせにより行なわれる。
【0026】
太陽光追尾ガイド35は、中央のヘリオスタット2の斜め上方に位置しており、設定光軸11に同一軸になるように設けられる。この太陽光追尾ガイド35は、門形状に形成された太陽光追尾センサ取付架台36の水平フレーム36aの中央に位置している。このため、太陽光追尾ガイド35は、左右方向の位置合わせを容易に行なうことができる。この太陽光追尾センサ取付架台36は、両側の支柱部36bが上記回転台25の両側に立設されている。
【0027】
図2に示すように、太陽光追尾ガイド35は、所定の長さを有する円筒体であり、太陽光追尾ガイド取付台37に取り付けられている。この太陽光追尾ガイド取付台37は、台座38と、その上に回転自在に搭載した支持体39により形成されている。符号O1 は、支持体39の回転中心軸であり、台座38に対して垂直になっている。
【0028】
上記太陽光追尾ガイド35は、その両側に設けた片持軸40を介して支持体39に俯仰自在に取り付けられているが、支持体39のブラケット41に設けたボルト等の締付具42を締め付けることによって所定の迎え角θに固定できる。また、この支持体39は、回転板43の周囲に設けたボルト等の締付具44を締め付けることによって回転中心軸O1 を中心にして所定の回転角度に固定できるようになっている。
【0029】
太陽光追尾ガイド35は、その後端部にボス状の連結具46を有している。この連結具46は、太陽光追尾センサ12や光学望遠鏡(フィールドスコープ)47を装着するものであり、その周囲に設けたボルト等の締付具48によって太陽光追尾センサ12やフィールドスコープ47を太陽光追尾ガイド35のガイド軸49と同一軸になるようにすることができる。他方、太陽光追尾ガイド35の先端部にレーザ光発振機50を装着できるようになっている。
【0030】
次に、本発明の太陽光追尾センサの方位設定方法、計測方法および再調整方法に付いて説明する。
【0031】
(A)太陽光追尾センサの方位設定方法
ヘリオスタットによって集光された光束の光軸上に太陽光追尾センサを設置する場合は、図3に示すように、先ず、太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cが光軸11上に位置するように、太陽光追尾センサー取付架台36の所定位置に太陽光追尾ガイド35を設置する。
【0032】
次に、図4及び図5に示すように、太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cと同一軸になるように太陽光追尾ガイド35の後端部に光学望遠鏡47を装着する。そして、光学望遠鏡47を肉眼Mで覗いて視野中に設けた+印が集光目標位置10の中心位置10aになるように太陽光追尾ガイド35の姿勢を微調整して既に説明した取付台座(図1参照。)に固定する。
【0033】
しかる後に、太陽光追尾ガイド35から光学望遠鏡47を取り外して太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cと同一軸になるように太陽光追尾ガイド35の後端部に太陽光追尾センサ12を取り付ける(図6参照。)。
【0034】
そして、ヘリオスタット2によって集束された光束6の光軸11が太陽光追尾ガイド35のガイド軸と一致するように太陽光追尾センサ12によってヘリオスタット2の向きがコンピュータ制御される。
【0035】
(B)太陽光追尾センサの光軸ズレの計測方法および再調整方法
設置から数年または十数年が経過して経年による太陽光追尾センサの光軸ズレが発生した場合には、図7に示すように、太陽光追尾センサ12が装着されている太陽光追尾ガイド35の前端部に太陽光追尾ガイド35のガイド軸Cと同一軸になるようにレーザ光発振機50を取り付ける。
【0036】
そして、レーザ光発振機50よりレーザ光7を発振して図8のように集光目標位置10でマーキングし、集光目標位置10にてマーキングポイント8の光軸11(集光目標位置10の中心位置10a)からのズレ量(例えば、マーキングポイント8のズレ量δX ,δY )を計測する。この計測作業は、太陽光のない夜間に行なう。
【0037】
しかる後に、マーキングポイント8が集光目標位置10の中心位置10aと一致するように太陽光追尾ガイド35の姿勢を再調整する。
【符号の説明】
【0038】
2 ヘリオスタット
10a 集光目標位置の中心位置
11 光軸
12 太陽光追尾センサ
35 太陽光追尾ガイド
38 取付台座
47 光学望遠鏡
C 太陽光追尾ガイドのガイド軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリオスタットによって集光された反射光の光軸上に設置させた太陽光追尾センサを再調整するに際し、経年による太陽光追尾センサの光軸ズレ発生時に、前記太陽光追尾センサが装着されている太陽光追尾ガイドの前端部に太陽光追尾ガイドのガイド軸と同一軸になるようにレーザ光発振機を取り付け、該レーザ光発振機よりレーザ光を発振して集光目標位置でマーキングし、前記光軸に対するマーキングポイントのズレ量を計測し、しかる後に、前記集光目標位置の中心位置にマーキングポイントが一致するように前記太陽光追尾ガイドの姿勢を再調整することを特徴とする太陽光追尾センサの再調整方法。
【請求項1】
ヘリオスタットによって集光された反射光の光軸上に設置させた太陽光追尾センサを再調整するに際し、経年による太陽光追尾センサの光軸ズレ発生時に、前記太陽光追尾センサが装着されている太陽光追尾ガイドの前端部に太陽光追尾ガイドのガイド軸と同一軸になるようにレーザ光発振機を取り付け、該レーザ光発振機よりレーザ光を発振して集光目標位置でマーキングし、前記光軸に対するマーキングポイントのズレ量を計測し、しかる後に、前記集光目標位置の中心位置にマーキングポイントが一致するように前記太陽光追尾ガイドの姿勢を再調整することを特徴とする太陽光追尾センサの再調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−159962(P2010−159962A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3801(P2010−3801)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【分割の表示】特願2007−284110(P2007−284110)の分割
【原出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(505201397)株式会社アクシス (4)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【分割の表示】特願2007−284110(P2007−284110)の分割
【原出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(505201397)株式会社アクシス (4)
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