説明

太陽観察用プレート

【課題】 望遠鏡による太陽を追尾する観察の操作性を向上する。
【解決手段】 太陽観察用プレート10の第1及び第2取付部11、12はそれぞれ板状を呈し、一体的に成形する。第2取付部12は第1取付部11に対して直交する方向に延びる。赤道儀の赤緯軸を中心に回転可能に支持されるホルダ取付部に、4つのビス穴11aを介して第1取付部11を固定する。第2取付部12に、4つのビス穴12aを介して望遠鏡の鏡筒を固定する。望遠鏡の観察光学系の光軸が赤道儀の赤緯軸と直交する方向に延びるよう、ビス穴12aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は望遠鏡の駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、望遠鏡で天体観測や太陽観察を行うとき、望遠鏡は赤道儀や経緯台にセットして使用される。例えばドイツ式赤道儀を用いる場合、三脚の上に固定的に取り付けられた赤道儀の下端にバランスウエイト軸があり、このバランスウエイト軸にウエイトが取り付けられる。バランスウエイト軸の反対側には鏡筒ホルダが設けられており、鏡筒ホルダに望遠鏡の鏡筒が取り付けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
太陽は東から昇り南を通って西に沈む。太陽観察時、この太陽の動きを望遠鏡の鏡筒が追尾できるよう赤道儀を駆動すると、太陽が子午線を通過するとき、望遠鏡の接眼部が三脚に衝突してしまう。そこで、太陽の子午線通過時、赤道儀及び鏡筒の向きを変更するセッティング(東西入替作業)を行わなければならない。従って、太陽観測を余儀なく中断する事になり連続してできないという問題がある。
【0004】
本発明は、以上の問題を解決するものであり、赤道儀にセットした望遠鏡による太陽観察の操作性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る太陽観察用プレートは、赤道儀の赤緯軸を中心として回転可能に赤道儀に固定される第1の板状部材と、第1の板状部材と直交するように形成され、観察光学系を有する少なくとも1つの望遠鏡の鏡筒を取り付ける取付機構を有する第2の板状部材とを備え、取付機構は、取り付けられた望遠鏡の鏡筒が赤道儀の赤経軸の近傍に位置するよう形成されることを特徴とする。
【0006】
好ましくは、取付機構により、観察光学系の光軸が赤緯軸と直交する方向に延びるよう鏡筒が取り付けられる。
【0007】
好ましくは、取付機構は、鏡筒が赤道儀の赤経軸上に位置するよう形成される。また、取付機構は例えば2つの鏡筒が取り付け可能であってもよく、これらの鏡筒が赤道儀の赤経軸を挟んで両側に位置するよう形成されると好ましい。さらに、前記第2の板状部材において、前記2つの鏡筒の取り付けられる位置間の中央部には、貫通孔が形成されていることがより好ましい。
【0008】
好ましくは、第1の板状部材は赤道儀の赤緯軸に直交し、第2の板状部材は該赤緯軸に平行に延びるよう、赤道儀に取り付けられる。
【0009】
好ましくは、取付機構は、望遠鏡が有する観察光学系の光軸が赤道儀の赤経軸の近傍に位置するよう、鏡筒を位置決めする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、望遠鏡の鏡筒は赤道儀の赤経軸の近傍に位置づけられるため、鏡筒を赤経軸回りに回転させるとき、鏡筒の端部に設けられる接眼部の駆動範囲を縮小させることができる。従って、太陽が子午線を通過するときでも、赤道儀が固定されている三脚に望遠鏡の接眼部が衝突することがない。その結果、上述の東西入替作業を行う必要がなく、望遠鏡で太陽を連続して観察することができるため、望遠鏡による太陽の追尾が中断されることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明に係る第1実施形態が適用される太陽観察用プレートの斜視図である。太陽観察用プレート10は、ドイツ式赤道儀を用いた天体観察時に望遠鏡の鏡筒がセッティングされる位置に取り付けられるプレートであり、望遠鏡で太陽の追尾観察を行う時に用いられる。太陽観察用プレート10の第1取付部11は板状を呈し、4つのビス穴11aが形成されている。太陽観察用プレート10の第2取付部12は板状を呈し、第1取付部11と一体的に成形される。第2取付部12は第1取付部11に対して直交する方向に延びる。換言すると、太陽観察用プレート10はL字型の縦断面形状を有する。第2取付部12には4つのビス穴12aが形成されている。
【0012】
図2乃至図4は、望遠鏡の鏡筒20を太陽観察用プレート10を介して赤道儀30に装着した状態を示す図である。図2は鏡筒20の先端部(太陽を向く側)から示す図であり、図3は図2の左方向から太陽観察用プレート10、鏡筒20、及び赤道儀30を示す図であり、図3の上方向から太陽観察用プレート10、鏡筒20、及び赤道儀30を示す図である。鏡筒20にはファインダ40が取り付けられている。赤道儀30の本体31は赤経軸(極軸)を中心に回転可能に支持される。赤道儀30のホルダ取付部32は赤緯軸を中心に回転可能に支持される。本体31の回転とホルダ取付部32の回転はそれぞれ独立して行うことが可能である。
【0013】
太陽観察用プレート10の第1取付部11は、赤道儀30のホルダ取付部32に当接させた状態で各ビス穴11aにビスを締め付けることによりホルダ取付部32に固定される。これにより、太陽観察用プレート10は赤緯軸周りに回転可能となる。また、第2取付部12の4つのビス穴12aの内壁面にはネジ山が刻設されている。鏡筒20を保持する鏡筒ホルダ21の所定位置に設けられた4つの穴(図示せず)に4つのビス穴12aをそれぞれ位置づけ、4本のビスを螺合させる。これにより、第2取付部12に鏡筒ホルダ21が固定される。図2に示すように、第2取付部12に固定される鏡筒20の軸心が赤緯軸と直交するよう、第2取付部12においてビス穴12aは形成される。
【0014】
太陽観察用プレート10を用いることにより、図2に示されるように鏡筒20は赤経軸上に位置決めされる。また、鏡筒20は太陽観察用プレート10の動きに応じて赤緯軸周りに回転可能である。従って、太陽観察時、ホルダ取付部32を回転させることにより、鏡筒20の角度を観察時の太陽高度に調整することができる。
【0015】
ここで、本実施形態の効果について説明する。本実施形態の太陽観察用プレート10を用いずに通常の望遠鏡で南中前の太陽観察を行う場合、以下の手順で行われる。まず、三脚に赤道儀30を固定し、バランスウエイト軸及びバランスウエイトを赤道儀30のバランスウエイト軸取付部33(図2参照)に取り付け、鏡筒20を保持する鏡筒ホルダ21を赤道儀30のホルダ取付部32にセットし、鏡筒20を取付ける。その後、不図示の極軸望遠鏡を用いて極軸合わせ等の各種調整処理を行う。次に、赤道儀30の本体31を極軸周りに適宜回転させ、また、ホルダ取付部32を赤緯軸周りにに適宜回転させ、鏡筒20を赤経軸に対し西側に位置させ、鏡筒20の先端部を太陽に向ける。この状態において観察者は望遠鏡の接眼部22による観察が可能である。
【0016】
この状態で太陽の追尾が開始される。すなわち、太陽の東から西への変位を追尾すべく、赤道儀30の本体31が赤経軸周りに回転する。太陽が子午線に達するとき、鏡筒20はその先端が略真上を向くような姿勢となり、接眼部22が三脚に接近する。従って、このまま本体31の回転を継続させると接眼部22が三脚に衝突してしまう。そのため、太陽が子午線に達した時点で、鏡筒20の東西入替作業が必要となる。
【0017】
東西入替作業は以下の手順で行われる。ホルダ取付部32を極軸に対し東側に位置するよう赤道儀30の本体31を極軸周りに回転させ、かつ鏡筒20の先端部が南側を向くよう、ホルダ取付部32を赤緯軸周りに回転させる。すると、鏡筒20が極軸に対し東側に位置し、鏡筒20の先端部が南を向いた状態となる。これにより、子午線から西へ変位する太陽を追尾すると接眼部22は三脚から離れていく方向へ変位するため接眼部22は三脚に衝突する事を回避でき、その後の太陽観察が可能となる。
【0018】
以上のように東西入替作業は作業は複雑であり、望遠鏡の操作に不慣れな初心者にとっては、子午線を通過する太陽の追尾は極めて困難である。また、太陽が子午線に位置するとき、地球上にいる観察者は大気層が最も薄くなる角度から太陽を観察することとなる。すなわち、大気層による影響の最も少ない鮮明な画像を得られるはずである。ところが、上述のように子午線通過時の東西入替作業のため観察を一旦中段しなければならず、鮮明な画像が得られなくなってしまう。
【0019】
これに対し、太陽観察用プレート10を用いるときは、図5に示すように、赤道儀30は三脚41に固定され、太陽観察用プレート10の第1取付部11がホルダ取付部32に固定され、第2取付部12(図2、4参照)に鏡筒20が取り付けられる。そして、鏡筒20が観察時の太陽高度に傾斜するよう、太陽観察用プレート10と共に赤緯軸回りに回転される。この状態で、上述のように鏡筒20は赤経軸上に位置し、太陽の動きを追尾する際の回転中心上に鏡筒20が位置することとなる。従って、上述のホルダ取付部32に鏡筒ホルダ21を取り付ける場合と比べ、回転中心から接眼部22までの長さが短縮される。換言すると、ホルダ取付部32に鏡筒ホルダ21を取り付ける場合よりも、太陽観察用プレート10を用いた場合の方が、接眼部22はより小さな軌跡を描いて変位することとなる。その結果、太陽の子午線通過時、鏡筒20の先端が最も高い位置に位置する時でも、接眼部22が三脚41に衝突することが回避される。すなわち、赤道儀30の本体31の赤経軸周りの回転を中止することなく、太陽の追尾を継続することができる。
【0020】
さらに、太陽観察用プレート10を取り付けた状態でも、図6に示すようにバランスウエイト60をセットすることが可能である。図2に示す状態から、赤経軸周りにホルダ取付部32を90度回転させ、鏡筒20をホルダ取付部32に付け替える。すなわち、鏡筒20を第2取付部12から第1取付部11に付け替える。第1取付部11を鏡筒ホルダ21とホルダ取付部32で挟みこんだ状態でビスをビス11aに取り付けることにより、鏡筒20は固定される。この状態で、バランスウエイト60がセットされたバランスウエイト軸61を赤道儀30のバランスウエイト軸取付部33に取り付ける。このようにしてバランスをセットした状態が図6に示されている。これにより、太陽観察用プレート10を取り付けたままでもバランスウエイト60を取り付けて天体観察が可能となる。以上のように、本実施形態によれば、太陽観察時の望遠鏡の操作性を向上することができると共に、天体観察にも対応可能となる。
【0021】
図7は、本発明に係る第2実施形態が適用される太陽観察用プレートの斜視図である。
太陽観察用プレート50において第1取付部51と第2取付部52は、第1実施形態のプレート10と同様、連続的に成形され直交している。また、第1取付部51にはプレート10の第1取付部11と同様、ホルダ取付部32に固定するためのビス穴51aが形成されている。
【0022】
第2取付部52には、4つのビス穴52a、及び4つのビス穴52bが形成されている。本実施形態においては、ビス穴52a及び52bは白色光望遠鏡の鏡筒及びHα光望遠鏡の鏡筒を取り付けるためのビス穴である。ビス穴52aに白色光望遠鏡の鏡筒を、ビス穴52bにHα光望遠鏡の鏡筒をそれぞれ取り付けてもよく、ビス穴52aにHα光望遠鏡の鏡筒を、ビス穴52bに白色光望遠鏡の鏡筒をそれぞれ取り付けてもよい。
【0023】
第2取付部52において、赤経軸が白色光望遠鏡の鏡筒とHα光望遠鏡の鏡筒との間若しくはその近傍に位置するよう、ビス穴52a及び52bは形成される。また、両ビス穴52a、52b間の中央の位置には、不図示の極軸望遠鏡用の覗き穴として利用される貫通孔52eが形成されており、この貫通孔52eを介して、極軸の調整が容易に行えるように構成されている。
【0024】
以上のように、第2実施形態によれば、2つの望遠鏡をセットすることができ、かつそれぞれの望遠鏡を極軸の近傍に位置決めすることができる。従って、太陽追尾において白色光観察による黒点等の観察やHα光観察によるプロミネンス等の観察を可能とすると共に、上述の第1実施形態と同様の効果が得られる。尚、第2実施形態の太陽観察用プレート50を用いる場合も天体観察が可能である点は第1実施形態と同様である。
【0025】
尚、第1及び第2実施形態において、第1取付部11(51)と第2取付部12(52)は一体的に形成されているが、これに限るものではなく、各取付部を別体の部材で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る第1実施形態が適用される太陽観察用プレートの斜視図である。
【図2】鏡筒が太陽観察用プレートを介して赤道儀にセットされた状態を鏡筒の先端側から示す図である。
【図3】鏡筒が太陽観察用プレートを介して赤道儀にセットされた状態を太陽観察用プレートの第1取付部の側から示す図である。
【図4】鏡筒が太陽観察用プレートを介して赤道儀にセットされた状態を太陽観察用プレートの第2取付部の側から示す図である。
【図5】太陽観察用プレートを用いて観察するときの三脚、赤道儀、望遠鏡の状態を示す斜視図である。
【図6】太陽観察用プレートを取り付けたまま天体観察をするときの三脚、赤道儀、望遠鏡、バランスウエイトの状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る第2実施形態が適用される太陽観察用プレートの斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
10、50 太陽観察用プレート
20 鏡筒
22 接眼部
30 赤道儀
40 ファインダ
60 バランスウエイト
61 バランスウエイト軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤道儀の赤緯軸を中心として回転可能に前記赤道儀に固定される第1の板状部材と、
前記第1の板状部材と直交するように形成され、観察光学系を有する少なくとも1つの望遠鏡の鏡筒を取り付ける取付機構を有する第2の板状部材とを備え、
前記取付機構は、取り付けられた前記望遠鏡の鏡筒が前記赤道儀の赤経軸の近傍に位置するよう形成されることを特徴とする太陽観察用プレート。
【請求項2】
前記取付機構により、前記観察光学系の光軸が前記赤緯軸と直交する方向に延びるよう前記鏡筒が取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の太陽観察用プレート。
【請求項3】
前記取付機構は、前記鏡筒が前記赤経軸上に位置するよう形成されることを特徴とする請求項1に記載の太陽観察用プレート。
【請求項4】
前記取付機構は2つの鏡筒が取り付け可能であって、かつこれら鏡筒が前記赤経軸を挟んで両側に位置するよう、形成されることを特徴とする請求項1に記載の太陽観察用プレート。
【請求項5】
前記第1の板状部材は前記赤緯軸に直交し、前記第2の板状部材は前記赤緯軸に平行に延びるよう、前記赤道儀に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の太陽観察用プレート。
【請求項6】
前記取付機構は、前記観察光学系の光軸が前記赤道儀の赤経軸の近傍に位置するように、前記鏡筒を位置決めすることを特徴とする請求項1に記載の太陽観察用プレート。
【請求項7】
前記第2の板状部材において、前記2つの鏡筒の取り付けられる位置間の中央部には、貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の太陽観察用プレート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−201295(P2006−201295A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10764(P2005−10764)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(502066247)株式会社昭和機械製作所 (2)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】