説明

太陽追尾装置

【課題】減速機およびモータの数を削減することができ、小型化および軽量化できると共に製造コストを低減できる太陽追尾装置を提供すること。
【解決手段】モータ4の一方向の回転が減速機5から駆動軸6に伝達され、第1伝達部10及び第2伝達部20に回転が伝達される。第1伝達部10の第1ワンウェイクラッチ11により、第1軸7に回転が伝達されるので、少なくとも第1軸7は太陽の方位または高度に対応して回転される。一方、モータ4の他方向の回転が駆動軸6に伝達されると、第1ワンウェイクラッチ11により、第1軸7への回転の伝達が遮断され、第2伝達部20は第2軸8に回転を伝達する。これにより第1軸7を回転させることなく、第2軸8を回転させることができる。その結果、モータ4及び減速機5により第1軸7及び第2軸8が任意の位置に回転し、受光部9の傾きが変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽追尾装置に関し、特に、減速機およびモータの数を削減することができ、小型化および軽量化できると共に製造コストを低減できる太陽追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽光を光電変換して発電を行う太陽光発電システム、太陽光を反射させて集光し太陽熱により汽力発電を行う太陽熱発電システム、太陽光を反射させ日陰に導き採光照明や太陽熱利用等をする太陽利用システムが開発されている。それらシステムにおいて、発電効率や採光量等を向上させるために、太陽光を受ける受光部の傾きを太陽の方位および高度に応じて変化させる太陽追尾装置が採用される。従来の太陽追尾装置としては、例えば、太陽の方位に対応させて受光部の傾きを変化させる一方の軸と、太陽の高度に対応させて受光部の傾きを変化させる他方の軸と、それら2つの軸をそれぞれ回転駆動する2つのモータと、それらモータの回転数を減じて各々の軸に出力する2つの減速機とを備えるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−258369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に開示される技術は、天球上を太陽が移動する速度に対応して2つの軸を独立して回転させるために、モータ及び高減速比の減速機が2つずつ必要となる。モータ及び減速機を2つずつ駆動させるから、装置が大型化すると共に重量が大きくなり、さらに製造コストが増加するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、モータ及び減速機の数を削減することができ、小型化および軽量化できると共に製造コストを低減できる太陽追尾装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の太陽追尾装置によれば、大地に対して軸心の位置が固定されると共に、太陽の方位または高度の一方に対応して軸心の回りに回転可能に構成される第1軸と、その第1軸の回りに太陽の方位または高度の他方に対応して回転可能に構成されると共に、太陽光を受光する受光部が固定される第2軸とを備えている。モータの一方向の回転が減速機により減速されて駆動軸に伝達されると、その駆動軸から第1伝達部および第2伝達部に回転が伝達される。第1伝達部または第2伝達部の一方は、第1ワンウェイクラッチにより、第1軸または第2軸の一方に回転を伝達する。これにより、少なくとも第1軸または第2軸の一方は、太陽の方位または高度に対応して回転される。
【0007】
ここで、第1軸および第2軸が回転する速度、即ち各時刻における受光部の傾きは、第1伝達部および第2伝達部の速度伝達比によって決定される。従って、太陽追尾装置の設置場所の緯度や経度に応じて第1伝達部および第2伝達部の速度伝達比を設定することで、受光部が太陽を追尾できるようにすることは可能である。しかし、第1伝達部および第2伝達部の誤差(速度伝達比の誤差)や太陽追尾装置の据え付け誤差等が生じると、天球上の太陽の位置と受光部の傾きとの間に不一致が生じる。即ち、受光部が太陽を追尾できなくなる。
【0008】
太陽を追尾するには、目標とする回転位置にない第1軸または第2軸の回転位置を補正する必要がある。そのような場合にモータが他方向に回転駆動され、モータの他方向の回転が駆動軸に伝達されると、駆動軸から第1伝達部および第2伝達部に回転が伝達される。第1伝達部または第2伝達部の一方は、第1ワンウェイクラッチにより、第1軸または第2軸の一方への回転の伝達を遮断し、第1伝達部または第2伝達部の他方は第1軸または第2軸の他方に回転を伝達する。これにより第1軸または第2軸の一方を回転させることなく、第1軸または第2軸の他方を回転させることができ、天球上の太陽の位置と受光部の傾きとの間の不一致を解消できる。その結果、受光部に太陽を追尾させることができる。
【0009】
以上のように、2つのモータ及び減速機により第1軸および第2軸を独立して回転させなくても、1つずつのモータ及び減速機により第1軸および第2軸を回転させて太陽を追尾できるので、モータ及び減速機の数を削減することができる。その結果、太陽追尾装置を小型化および軽量化できると共に、削減されたモータ及び減速機と追加された第1ワンウェイクラッチとの差分だけ製造コストを低減できる効果がある。
【0010】
また、太陽追尾装置の設置場所ごとに第1伝達部および第2伝達部の速度伝達比を個別に設定する必要がなくなるので、第1伝達部および第2伝達部の部品の共通化を図ることができる効果がある。
【0011】
なお、第1軸または第2軸の回転位置を補正する順序を限定するものではないので、初めにモータを他方向に回転して第1軸または第2軸の他方を回転させ、次にモータを一方向に回転して第1軸または第2軸の一方を回転させるようにすることは可能である。
【0012】
請求項2記載の太陽追尾装置によれば、モータの一方向の回転により受光部の傾きが変化する速度は、第1ワンウェイクラッチを介して回転が伝達される第1軸または第2軸の一方の回りの速度成分が、第1軸または第2軸の他方の回りの速度成分より小さく設定されている。そのため、モータを一方向に回転させて第1軸または第2軸の一方を太陽の方位または高度に合致させ、受光部の傾きを太陽の方位または高度に対応させると、第1軸または第2軸の他方については、その時刻における太陽の方位または高度より少し先行して回転する。
【0013】
そこで、その先行分を調整するように、モータを他方向に回転して第1軸または第2軸の他方にモータの他方向の回転を伝達すると、第1軸または第2軸の他方が太陽の追尾方向と逆向きに回転されて、その時刻における太陽の方位または高度に合致させることができる。なお、第1軸または第2軸の一方は、第1ワンウェイクラッチによりモータの他方向の回転が遮断されるので、太陽の方位または高度に合致した状態が維持される。
【0014】
これに対し、第1ワンウェイクラッチを介してモータの一方向の回転が伝達される第1軸または第2軸の一方の回りの速度成分が、第1軸または第2軸の他方の回りの速度成分より大きく設定されている場合は、モータを一方向に回転して第1軸または第2軸の一方を太陽の方位または高度に合致させると、第1軸または第2軸の他方については、その時刻における太陽の方位または高度より少し遅れて回転する。
【0015】
その遅れ分を調整するには、モータを他方向に回転して第1軸または第2軸の他方を約360°回転させなければならず、この調整に長時間を要する。また、モータを他方向に回転している間は、第1軸または第2軸の一方を回転させることができないので、太陽を追尾する精度が低下する。請求項2記載の太陽追尾装置によれば、これを防止することができ、請求項1の効果に加え、第1軸または第2軸の他方の調整を短時間で行うことができ、太陽を追尾する精度を向上できる効果がある。なお、第1軸または第2軸の回転位置を補正する順序を限定するものではない。
【0016】
請求項3記載の太陽追尾装置によれば、第1ワンウェイクラッチは、太陽の方位に対応して回転するように設定される第1軸または第2軸に配設されているので、太陽を追尾するときに、第1ワンウェイクラッチが配設された第1軸または第2軸を常に太陽の方位に対応させることができる。
【0017】
ここで、日の出から日の入りまでの太陽の天球上の位置を考えると、方位角は漸次増加する一方、高度角は日の出からある時間までは漸次増加するものの、その後は日の入りまで漸次減少する。第1ワンウェイクラッチが配設された第1軸または第2軸を、太陽の高度に対応して回転するように設定した場合、高度角は日の出からある時間まで漸次増加し、その後は日の入りまで漸次減少するので、その第1軸または第2軸を他方向に戻す必要が生じる。しかし、第1軸または第2軸は、第1ワンウェイクラッチによりモータの他方向の回転の伝達が遮断されているので、第1軸または第2軸を他方向にわずかに戻したいときでも、一方向に約360°回転させなければならない。この約360°の回転に長時間を要し、この間の受光部の傾きは太陽に対応していないため、太陽を追尾する精度が低下する。
【0018】
これに対し、第1ワンウェイクラッチが配設された第1軸または第2軸を太陽の方位に対して回転するように設定することで、第1軸または第2軸を日の出から日の入りまで一方向に回転させれば良く、他方向に戻す必要をなくすことができる。その結果、請求項1又は2の効果に加え、太陽を追尾する精度を向上できる効果がある。
【0019】
請求項4記載の太陽追尾装置によれば、モータの一方向の回転が駆動軸に伝達されると、第1伝達部または第2伝達部の他方は、第2ワンウェイクラッチにより、第1軸または第2軸の他方への回転の伝達を遮断する。これにより第1軸または第2軸の他方を回転させることなく、第1軸または第2軸の一方を回転させることができ、第1軸または第2軸の一方による太陽の追尾ができる。
【0020】
一方、モータの他方向の回転が駆動軸に伝達されると、第1伝達部または第2伝達部の他方は、第2ワンウェイクラッチにより、第1軸または第2軸の他方に回転を伝達する。これにより第1軸または第2軸の一方を回転させることなく、第1軸または第2軸の他方を回転させることができ、第1軸または第2軸の他方による太陽の追尾ができる。以上のように、第2ワンウェイクラッチにより第1軸と第2軸とを独立して回転できるので、請求項1又は3の効果に加え、太陽を追尾するためのモータの一方向および他方向の回転制御を簡素化できる効果がある。
【0021】
請求項5記載の太陽追尾装置によれば、第1ワンウェイクラッチ又は第2ワンウェイクラッチを備える第1伝達部または第2伝達部は、第1軸または第2軸からの荷重の入力により駆動軸が回転不能に設定されているので、請求項1から4のいずれかの効果に加え、機械的または電気的なブレーキ機構を設けなくても、風力等により受光部の傾きが変化することを防止できる効果がある。
【0022】
請求項6記載の太陽追尾装置によれば、大地に対して軸心の位置が固定されると共に、太陽の方位または高度の一方に対応して軸心の回りに回転可能に構成される第1軸と、その第1軸の回りに太陽の方位または高度の他方に対応して回転可能に構成されると共に、太陽光を受光する受光部が固定される第2軸とを備えている。モータの一方向の回転が減速機により減速されて第2軸に伝達されると、伝達部により、第2軸から第1軸に回転が伝達される。伝達部は、ワンウェイクラッチにより、第1軸に回転を伝達する。これにより、第1軸は太陽の方位に対応して回転され、第2軸は太陽の高度に対応して回転される。
【0023】
ここで、第1軸および第2軸が回転する速度、即ち各時刻における受光部の傾きは、伝達部の速度伝達比によって決定される。従って、太陽追尾装置の設置場所の緯度や経度に応じて伝達部の速度伝達比を設定することで、受光部が太陽を追尾できるようにすることは可能である。しかし、伝達部の誤差(速度伝達比の誤差)や太陽追尾装置の据え付け誤差等が生じると、天球上の太陽の位置と受光部の傾きとの間に不一致が生じる。即ち、受光部が太陽を追尾できなくなる。
【0024】
太陽を追尾するには、目標とする回転位置にない第1軸または第2軸の回転位置を補正する必要がある。そのような場合にモータが他方向に回転駆動される。モータの他方向の回転が第2軸に伝達されると、伝達部は、ワンウェイクラッチにより第1軸への回転の伝達を遮断する。これにより第1軸を回転させることなく、第2軸を回転させることができ、天球上の太陽の位置と受光部の傾きとの間の不一致を解消できる。その結果、受光部に太陽を追尾させることができる。
【0025】
以上のように、2つのモータ及び減速機により第1軸および第2軸を独立して駆動させなくても、1つずつのモータ及び減速機により第1軸および第2軸を駆動させて太陽を追尾できるので、太陽追尾装置を小型化および軽量化できると共に、削減されたモータ及び減速機と追加されたワンウェイクラッチとの差分だけ製造コストを低減できる効果がある。
【0026】
また、太陽追尾装置の設置場所ごとに伝達部の速度伝達比を個別に設定する必要がなくなるので、伝達部の部品の共通化を図ることができる効果がある。
【0027】
なお、第1軸または第2軸の回転位置を補正する順序を限定するものではないので、初めにモータを他方向に回転して第2軸を回転させ、次にモータを一方向に回転して第1軸および第2軸を回転させるようにすることは可能である。
【0028】
請求項7記載の太陽追尾装置によれば、ワンウェイクラッチを備える伝達部は、第1軸からの荷重の入力により第2軸が回転不能に設定されているので、請求項6記載の効果に加え、機械的または電気的なブレーキ機構を設けなくても、風力等により受光部の傾きが変化することを防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)は第1実施の形態における太陽追尾装置の斜視図であり、(b)は内部構造を模式的に示した太陽追尾装置の斜視図である。
【図2】(a)はモータを一方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(b)はモータを一方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(c)はモータを他方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(d)はモータを他方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置のスケルトン図である。
【図3】(a)は第2実施の形態における太陽追尾装置において、モータを一方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(b)はモータを一方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(c)はモータを他方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(d)はモータを他方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置のスケルトン図である。
【図4】(a)は第3実施の形態における太陽追尾装置において、モータを一方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(b)はモータを一方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(c)はモータを他方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(d)はモータを他方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置のスケルトン図である。
【図5】(a)は第4実施の形態における太陽追尾装置において、モータを一方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(b)はモータを一方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(c)はモータを他方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置のスケルトン図であり、(d)はモータを他方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置のスケルトン図である。
【図6】第5実施の形態における太陽追尾装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1(a)は本発明の第1実施の形態における太陽追尾装置1の斜視図である。なお図1(a)では、受光部9の中間部分の図示を省略している。図1(a)に示すように、太陽追尾装置1は、大地に対して固定される台部2と、その台部2に対して回転可能に構成される筐体3とを備えており、モータ4を駆動し減速機5を介して駆動軸6を回転させ、第2軸8を回転させることにより受光部9の傾きを変化させる装置である。
【0031】
受光部9は、第2軸8に固定されており、筐体3及び第2軸8の回転に伴い、太陽の方位および高度に応じて傾きが変化される部材である。受光部9は、太陽追尾装置1が組み込まれるシステムに応じて、太陽光のエネルギーを直接的に電力に変換する太陽電池パネル、太陽光を集光して熱源として利用する太陽熱発電システムや採光のために太陽光を反射する反射鏡等が適宜選択され採用される。
【0032】
次に図1(b)を参照して、太陽追尾装置1の内部構造について説明する。図1(b)は筐体3(図1(a)参照)を取り外した内部構造を模式的に示した太陽追尾装置1の斜視図であり、台部2及び受光部9の図示を省略している。図1(b)に示すように、駆動軸6及び第2軸8は直交するように配置され、駆動軸6及び第2軸8にそれぞれ直交するように第1軸7が配置されている。第1軸7は台部2(図1(a)参照)に立設されて軸心Oの位置が軸受(図示せず)等により固定されると共に、軸心Oの回りに回転可能に構成されている。
【0033】
モータ4は一方向および他方向の回転を出力可能に構成されており、減速機5によりモータ4の回転数が減速される。駆動軸6は減速機5の出力により回転される部材であり、軸方向に所定の間隔をあけて第1伝達部10及び第2伝達部20が配設されている。
【0034】
第1伝達部10は、駆動軸6の一方向の回転を第1軸7に伝達する一方、駆動軸6の他方向の回転の第1軸7への伝達を遮断する部材である。本実施の形態では、第1伝達部10は、スプラグタイプのワンウェイクラッチを備えるウォームギヤにより構成されており、駆動軸6に配設されたワンウェイクラッチ(第1ワンウェイクラッチ11)と、その第1ワンウェイクラッチ11の外周に形設されたウォーム12と、ウォーム12と噛合するように第1軸7に配設されたウォームホイール13とを備えている。
【0035】
第2伝達部20は、駆動軸6の一方向および他方向の回転を駆動軸6から第2軸8に伝達する部材である。本実施の形態では、第2伝達部20はウォームギヤにより構成されており、駆動軸6に形設されたウォーム21と、ウォーム21と噛合するように第2軸8に配設されたウォームホイール22とを備えている。以上のように、モータ4の一方向の回転は第1伝達部10及び第2伝達部20により第1軸7及び第2軸8に伝達され、モータ4の他方向の回転は第2伝達部20により第2軸8に伝達される。
【0036】
なお、モータ4の一方向の回転による第1伝達部10及び第2伝達部20の速度伝達比は、駆動軸6の1回転当たりにおける第2軸8の回転数が第1軸7の回転数より大きくなるように設定される。これにより、モータ4の一方向の回転により受光部9の傾きが変化する速度は、第1軸7の回りの速度成分が、第2軸8の回りの速度成分より小さく設定されている。
【0037】
次に図2を参照して、太陽追尾装置1の動作について説明する。図2(a)はモータ4を一方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置1のスケルトン図であり、図2(b)はモータ4を一方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置1のスケルトン図である。図2(a)に示すように、モータ4を一方向に回転すると駆動軸6が一方向に回転し、それに伴い第2伝達部20のウォーム21が一方向に回転する。また、第1伝達部10では第1ワンウェイクラッチ11のスプラグ11aがロックし、ウォーム12が一方向に回転する。なお、図2では、スプラグ11aにハッチングを付してロックしたことを図示し(図2(a)参照)、ロックが解除されたフリーのスプラグ21aを白抜きで図示する(図2(c)参照)。なお、このロック又はフリーを示すハッチング又は白抜きは、図3から図5において同じである。
【0038】
ウォーム12,21が一方向に回転することにより、図2(b)に示すように、ウォーム12,21にそれぞれ噛み合うウォームホイール13,22が一方向に回転する。その結果、第1軸7は方位方向に回転し、第2軸8は高度方向の一方向に回転する。天球上の太陽の移動速度に合致するようにモータ4の回転数、減速機5の減速比、第1伝達部10及び第2伝達部20の速度伝達比を設定しておく(専用部品化する)ことで、第2軸8に固定された受光部9の傾きを、太陽の方位および高度に応じて変化させることができる。
【0039】
しかし、第1伝達部10及び第2伝達部20の誤差(速度伝達比の誤差)や太陽追尾装置1の据え付け誤差等が生じると、天球上の太陽の位置と受光部9の傾きとの間に不一致が生じる。即ち、受光部9が太陽を追尾できなくなる。受光部9に太陽を追尾させるには、目標とする回転位置にない第1軸7又は第2軸8の回転位置を補正する必要がある。そのような場合に、図2(c)に示すようにモータ4を他方向に駆動する。図2(c)はモータ4を他方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置1のスケルトン図であり、図2(d)はモータ4を他方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置1のスケルトン図である。
【0040】
図2(c)に示すように、モータ4を他方向に回転すると駆動軸6が他方向に回転し、それに伴い第2伝達部20のウォーム21が他方向に回転する。また、第1伝達部10では第1ワンウェイクラッチ11のスプラグ11aのロックが解除され、ウォーム12への動力の伝達が遮断される。
【0041】
ウォーム21が他方向に回転することにより、図2(d)に示すように、ウォーム21に噛み合うウォームホイール22が他方向に回転する。その結果、第1軸7の方位方向の回転が停止され、第2軸8が高度方向の他方向に回転されるので、天球上の太陽の位置と受光部9の傾きとの間の不一致を解消できる。その結果、受光部9に太陽を追尾させることができる。
【0042】
このように、モータ4及び減速機5により第1軸7及び第2軸8を回転させて太陽を追尾できるので、モータ4及び減速機5をそれぞれ1つに削減することができる。その結果、太陽追尾装置1を小型化および軽量化できると共に、削減されたモータ及び減速機と追加された第1ワンウェイクラッチ11との差分だけ製造コストを低減できる。
【0043】
また、太陽追尾装置1の設置場所ごとに第1伝達部10及び第2伝達部20の速度伝達比を個別に設定(専用部品化)する必要がなくなるので、第1伝達部10及び第2伝達部20の部品の共通化を図ることができる。
【0044】
また、モータ4の一方向の回転により受光部9の傾きが変化する速度は、第1軸7の回りの速度成分が、第2軸8の回りの速度成分より小さく設定されているので、モータ4を一方向に回転させて第1軸7を太陽の方位に合致させ、受光部9の傾きを太陽の方位に対応させると、第2軸8については、その時刻における太陽の高度より少し先行して回転する。その先行分を調整するように、モータ4を他方向に回転して第2軸8にモータ4の他方向の回転を伝達すると、第2軸8が太陽の追尾方向と逆向きに回転されて、その時刻における太陽の高度に合致させることができる。その結果、受光部9の傾きを太陽の方位および高度に対応させることができる。
【0045】
逆に、モータ4の一方向の回転による第1伝達部10及び第2伝達部20の速度伝達比が、駆動軸6の1回転当たりにおける第2軸8の回転速度が第1軸7の回転速度より小さくなるように設定されていると、モータ4の一方向の回転により受光部9の傾きが変化する第2軸8の回りの速度成分は、第1軸7の回りの速度成分より小さくなる。その場合にモータ4を一方向に回転して第1軸7を太陽の方位に合致させると、第2軸8は、その時刻における太陽の高度より少し遅れて回転する。
【0046】
その遅れ分を調整するには、モータ4を他方向に回転して第2軸8を約360°回転させなければならず、長時間を要する。また、モータ4を他方向に回転している間は、第1軸7及び第2軸8を一方向に回転させることができないので、太陽を追尾できない。そのため、太陽を追尾する精度が低下する。本実施の形態によればこれを防止することができ、第2軸8の調整を短時間で行うことができ、太陽を追尾する精度を向上できる。
【0047】
また、本実施の形態と異なり、第1軸7を太陽の高度に対応して回転するように設定した場合、高度角は日の出からある時間まで漸次増加し、その後は日の入りまで漸次減少するので、第1軸7を他方向に戻す必要が生じる。しかし、第1軸7は第1ワンウェイクラッチ11によりモータ4の他方向の回転の伝達が遮断されているので、第1軸7を他方向にわずかに戻したいときでも、一方向に約360°回転させなければならない。これに長時間を要し、その間の受光部9の傾きは太陽と無関係なため、太陽を追尾する精度が低下する。
【0048】
これに対し本実施の形態では、第1ワンウェイクラッチ11により他方向の回転が遮断される第1軸7を、太陽の方位に対して回転するように設定されているので、日の出から日の入りまで、第1軸7を他方向に戻す必要をなくすことができる。その結果、受光部9の傾きを常に太陽の方位に対応させることができ、太陽を追尾する精度を向上できる。
【0049】
また本実施の形態では、第1軸7を太陽の方位に対応して配設し、第2軸8を太陽の高度に対応して配設している。第2軸8は第2伝達部20によりモータ4の一方向および他方向の回転が伝達されるので、第2軸8を太陽の高度に応じて一方向および他方向に回転させることができ、太陽の高度方向の追尾を自在に行うことができる。
【0050】
また、第1ワンウェイクラッチ11を備える第1伝達部10は、第1軸7からの荷重の入力により駆動軸6が回転不能に設定されている。具体的には、機械的または電気的なブレーキ機構がない状態であっても、ウォームホイール13(第1軸7)からウォーム12(駆動軸6)を回転できないように設定されている。より具体的には、ウォームホイール13からウォーム12を回転させるときの第1伝達部10の伝達効率が0又は負に設定されている。これにより、風力等によって第1軸7の回りを駆動軸6が回転されることを防止し、受光部9の傾きが変化することを防ぎ、太陽の追尾精度を向上できる。
【0051】
なお、第2伝達部20も同様に、伝達効率を調整することによりウォームホイール22(第2軸8)からウォーム21(駆動軸6)を回転できないように設定することは可能である。また、モータ4や減速機5のフリクション(機械的なブレーキ機構)を利用して、ウォームホイール22からウォーム21を回転不能にすることも可能である。
【0052】
次に図3を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、駆動軸6から第1軸7に動力を伝達する第1伝達部10が第1ワンウェイクラッチ11を備える場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、駆動軸6から第2軸8に動力を伝達する第2伝達部120が第1ワンウェイクラッチ121を備える場合について説明する。なお、第2実施の形態において、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3(a)は第2実施の形態における太陽追尾装置101において、モータ4を一方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置101のスケルトン図であり、図3(b)はモータ4を一方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置101のスケルトン図である。
【0053】
図3(a)に示すように、第1伝達部110は、駆動軸6の一方向および他方向の回転を駆動軸6から第1軸7に伝達する部材である。本実施の形態では、第1伝達部110はウォームギヤにより構成されており、駆動軸6に形設されたウォーム111と、ウォーム111と噛合するように第1軸7に配設されたウォームホイール112とを備えている。
【0054】
第2伝達部120は、駆動軸6の一方向の回転を第2軸8に伝達する一方、駆動軸6の他方向の回転の第2軸8への伝達を遮断する部材である。本実施の形態では、第2伝達部120は、スプラグタイプのワンウェイクラッチを備えるウォームギヤにより構成されており、駆動軸6に配設されたワンウェイクラッチ(第1ワンウェイクラッチ121)と、その第1ワンウェイクラッチ121の外周に形設されたウォーム122と、ウォーム122と噛合するように第2軸8に配設されたウォームホイール123とを備えている。以上のように太陽追尾装置101は構成されているので、モータ4の一方向の回転は第1伝達部110及び第2伝達部120により第1軸7及び第2軸8に伝達され、モータ4の他方向の回転は第1伝達部110により第1軸7に伝達される。
【0055】
なお、モータ4の一方向の回転による第1伝達部110及び第2伝達部120の速度伝達比は、駆動軸6の1回転当たりにおける第1軸7の回転数が第2軸8の回転数より大きくなるように設定されている。これにより、モータ4の一方向の回転により受光部9の傾きが変化する速度は、第1軸7の回りの速度成分が、第2軸8の回りの速度成分より小さく設定されている。
【0056】
図3(a)に示すように、モータ4を一方向に回転すると駆動軸6が一方向に回転し、第2伝達部120では第1ワンウェイクラッチ121のスプラグ121aがロックし、ウォーム122が一方向に回転する。また、第1伝達部110においてもウォーム111が一方向に回転する。
【0057】
ウォーム111,122が一方向に回転することにより、図3(b)に示すように、ウォーム111,122にそれぞれ噛み合うウォームホイール112,123が一方向に回転する。その結果、第1軸7は方位方向に回転し、第2軸8は高度方向の一方向に回転する。モータ4の一方向の回転による第1伝達部110及び第2伝達部120の速度伝達比は、駆動軸6の1回転当たりにおける第1軸7の回転速度が第2軸8の回転速度より大きくなるように設定されているので、受光部9の高度方向の傾きが太陽の高度に対応している場合に、受光部9の方位方向の傾きは、天球上の太陽の方位より先行する。
【0058】
これを解消するため、図3(c)に示すようにモータ4を他方向に回転駆動する。図3(c)はモータ4を他方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置1のスケルトン図であり、図3(d)はモータ4を他方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置1のスケルトン図である。
【0059】
図3(c)に示すように、モータ4を他方向に回転すると駆動軸6が他方向に回転し、第2伝達部120では第1ワンウェイクラッチ121のスプラグ121aのロックが解除され、ウォーム122への動力の伝達が遮断される。また、第1伝達部110では、ウォーム111が他方向に回転する。
【0060】
ウォーム111が他方向に回転することにより、図3(d)に示すように、ウォーム111に噛み合うウォームホイール112が他方向に回転する。その結果、第2軸8の高度方向の回転が停止され、第1軸7が方位方向の他方向に回転されるので、受光部9の方位方向の傾きを、太陽の方位に対応させることができる。その結果、受光部9に太陽を追尾させることができる。
【0061】
また、第1ワンウェイクラッチ121を備える第2伝達部120は、第2軸8からの荷重の入力により駆動軸6が回転不能に設定されている。具体的には、機械的または電気的なブレーキ機構がない状態であっても、ウォームホイール123(第2軸8)からウォーム122(駆動軸6)を回転できないように設定されている。より具体的には、ウォームホイール123からウォーム122を回転させるときの第2伝達部120の伝達効率が0又は負に設定されている。これにより、風力等によって受光部9の傾きが変化することを防止でき、太陽の追尾精度を向上できる。
【0062】
なお、第1伝達部110も同様に、伝達効率を調整することによりウォームホイール122(第1軸7)からウォーム111(駆動軸6)を回転できないように設定することは可能である。また、モータ4や減速機5のフリクション(機械的なブレーキ機構)を利用して、ウォームホイール122からウォーム111を回転不能にすることも可能である。
【0063】
次に図4を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、第1伝達部10,110又は第2伝達部20,120の一方がワンウェイクラッチ(第1ワンウェイクラッチ11,121)を備える場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、第1伝達部210及び第2伝達部220の両方がワンウェイクラッチを備える場合について説明する。なお、第3実施の形態において、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4(a)は第3実施の形態における太陽追尾装置201において、モータ4を一方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置201のスケルトン図であり、図4(b)はモータ4を一方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置201のスケルトン図である。
【0064】
図4(a)に示すように、第1伝達部210は、駆動軸6の一方向の回転を第1軸7に伝達する一方、駆動軸6の他方向の回転の第1軸7への伝達を遮断する部材である。本実施の形態では、第1伝達部210は、スプラグタイプのワンウェイクラッチを備えるウォームギヤにより構成されており、駆動軸6に配設されたワンウェイクラッチ(第1ワンウェイクラッチ211)と、その第1ワンウェイクラッチ211の外周に形設されたウォーム212と、ウォーム212と噛合するように第1軸7に配設されたウォームホイール213とを備えている。
【0065】
第2伝達部220は、駆動軸6の他方向の回転を第2軸8に伝達する一方、駆動軸6の一方向の回転の第2軸8への伝達を遮断する部材である。本実施の形態では、第2伝達部220は、スプラグタイプのワンウェイクラッチを備えるウォームギヤにより構成されており、駆動軸6に配設されたワンウェイクラッチ(第2ワンウェイクラッチ221)と、その第2ワンウェイクラッチ221の外周に形設されたウォーム222と、ウォーム222と噛合するように第2軸8に配設されたウォームホイール223とを備えている。
【0066】
以上のように太陽追尾装置201は構成されているので、モータ4の一方向の回転は第1伝達部210により第1軸7に伝達され、モータ4の他方向の回転は第2伝達部220により第2軸8に伝達される。
【0067】
図4(a)に示すように、モータ4を一方向に回転すると駆動軸6が一方向に回転し、第1伝達部210では第1ワンウェイクラッチ211のスプラグ211aがロックし、ウォーム212が一方向に回転する。一方、第2伝達部220では第2ワンウェイクラッチ221のスプラグ221aのロックが解除され、ウォーム222は駆動されない。
【0068】
ウォーム212が一方向に回転することにより、図4(b)に示すように、ウォーム212に噛み合うウォームホイール213が一方向に回転する。その結果、第1軸7は方位方向に回転し、受光部9の方位方向の傾きを太陽の方位に対応させることができる。
【0069】
また、図4(c)に示すように、モータ4を他方向に回転すると駆動軸6が他方向に回転し、第2伝達部220では第2ワンウェイクラッチ221のスプラグ221aがロックし、ウォーム222が他方向に回転する。一方、第1伝達部210では第1ワンウェイクラッチ211のスプラグ211aのロックが解除され、ウォーム212は駆動されない。
【0070】
ウォーム222が他方向に回転することにより、図4(d)に示すように、ウォーム222に噛み合うウォームホイール223が他方向に回転する。その結果、第2軸8は高度方向に回転し、受光部9の高度方向の傾きを太陽の高度に対応させることができる。以上のように、モータ4を一方向または他方向に回転させることによって、第1ワンウェイクラッチ211及び第2ワンウェイクラッチ221により第1軸7と第2軸8とを独立して回転できるので、太陽を追尾するためのモータ4の回転制御を簡素化できる。
【0071】
また、第1ワンウェイクラッチ211を備える第1伝達部210は、第1軸7からの荷重の入力により駆動軸6が回転不能に設定されている。具体的には、機械的または電気的なブレーキ機構がない状態であっても、ウォームホイール213(第1軸7)からウォーム212(駆動軸6)を回転できないように設定されている。より具体的には、ウォームホイール213からウォーム212を回転させるときの第1伝達部210の伝達効率が0又は負に設定されている。
【0072】
また、第2ワンウェイクラッチ221を備える第2伝達部220は、第2軸8からの荷重の入力により駆動軸6が回転不能に設定されている。具体的には、機械的または電気的なブレーキ機構がない状態であっても、ウォームホイール223(第2軸8)からウォーム222(駆動軸6)を回転できないように設定されている。より具体的には、ウォームホイール223からウォーム222を回転させるときの第2伝達部220の伝達効率が0又は負に設定されている。第1伝達部210及び第2伝達部220を以上のように設定することにより、風力等によって受光部9の傾きが変化することを防止でき、太陽の追尾精度を向上できる。
【0073】
次に図5を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態から第3実施の形態では、減速機5が駆動軸6にモータ4の回転を出力する場合について説明した。これに対し、第4実施の形態では駆動軸6を省略し、減速機5が第2軸308にモータ4の回転を出力する場合について説明する。なお、第4実施の形態において、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5(a)は第4実施の形態における太陽追尾装置301において、モータ4を一方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置301のスケルトン図であり、図5(b)はモータ4を一方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置301のスケルトン図である。図5(a)に示すように、第2軸308は減速機5の出力により回転される部材であり、第1軸7に直交するように配置され、伝達部310及び受光部9が配設されている。
【0074】
伝達部310は、第2軸308の一方向の回転を第1軸7に伝達する一方、第2軸308の他方向の回転の第1軸7への伝達を遮断する部材である。本実施の形態では、伝達部310は、スプラグタイプのワンウェイクラッチを備えるウォームギヤにより構成されており、第2軸308に配設されたワンウェイクラッチ311と、そのワンウェイクラッチ311の外周に形設されたウォーム312と、ウォーム312と噛合するように第1軸7に配設されたウォームホイール313とを備えている。
【0075】
以上のように太陽追尾装置301は構成されているので、モータ4の一方向および他方向の回転は第2軸308より受光部9に伝達される。また伝達部310により、モータ4の一方向の回転は第1軸7に伝達される。なお、伝達部310の速度伝達比は、モータ4の一方向の回転において、第2軸308の回転速度が第1軸7の回転速度より大きくなるように設定されている。
【0076】
図5(a)に示すように、モータ4を一方向に回転すると第2軸308が一方向に回転し、伝達部310ではワンウェイクラッチ311のスプラグ311aがロックし、ウォーム312が一方向に回転する。また、第2軸308の回転に伴い、受光部9の高度方向における傾きが変化する。
【0077】
ウォーム312が一方向に回転することにより、図5(b)に示すように、ウォーム312に噛み合うウォームホイール313が一方向に回転する。その結果、第1軸7は方位方向に回転し、受光部9の方位方向における傾きが変化する。モータ4の一方向の回転による伝達部310の速度伝達比は、第2軸308の回転速度が第1軸7の回転速度より大きくなるように設定されているので、受光部9の方位方向の傾きが太陽の方位に対応している場合に、受光部9の高度方向の傾きは太陽の高度より先行する。
【0078】
受光部9に太陽を追尾させるには、目標とする回転位置にない第2軸308の回転位置を補正する必要がある。そのような場合に、図5(c)に示すようにモータ4を他方向に回転駆動する。図5(c)はモータ4を他方向に回転したときの正面視における太陽追尾装置301のスケルトン図であり、図5(d)はモータ4を他方向に回転したときの側面視における太陽追尾装置301のスケルトン図である。
【0079】
図5(c)に示すように、モータ4を他方向に回転すると第2軸308が他方向に回転し、伝達部310ではワンウェイクラッチ311のスプラグ311aのロックが解除され、ウォーム312への動力の伝達が遮断される。また、第2軸308の他方向の回転により、受光部9の高度方向における傾きが変化する。その結果、受光部9の高度方向の傾きを変化させ、太陽の高度に対応させることができる。
【0080】
第4実施の形態における太陽追尾装置301においても、モータ4及び減速機5により第1軸7及び第2軸308を駆動させて太陽を追尾できるので、モータ4及び減速機5をそれぞれ1つに削減することができる。その結果、太陽追尾装置301を小型化および軽量化できると共に、削減されたモータ及び減速機と追加されたワンウェイクラッチ311との差分だけ製造コストを低減できる。また、太陽追尾装置301の設置場所ごとに伝達部310の速度伝達比を個別に設定(専用部品化)する必要がないので、伝達部310の部品の共通化を図ることができる。
【0081】
また、ワンウェイクラッチ311を備える伝達部310は、第1軸7からの荷重の入力により第2軸308が回転不能に設定されている。具体的には、機械的または電気的なブレーキ機構がない状態であっても、ウォームホイール313(第1軸7)からウォーム312(第2軸308)を回転できないように設定されている。より具体的には、ウォームホイール313からウォーム312を回転させるときの伝達効率が0又は負に設定されている。これにより、風力等によって第1軸7の回りを第2軸308が回転されることを防止し、受光部9の傾きが変化することを防ぎ、太陽の追尾精度を向上できる。なお、第2軸308は、モータ4や減速機5のフリクションを利用して、風力等の外力が加わっても回転不能にできる。
【0082】
次に図6を参照して、第5実施の形態について説明する。第1実施の形態から第4実施の形態では、第1軸7が台部2に立設される場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、第1軸407が台部402に横設される場合について説明する。なお、第5実施の形態において、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図6は第5実施の形態における太陽追尾装置401の斜視図である。なお図6では、モータ4、減速機5及び駆動軸6の図示を省略している。
【0083】
図5に示すように、太陽追尾装置401は、大地に対して固定される台部402と、その台部402に軸支されつつ横設される第1軸407と、その第1軸407に固定され第1軸407の回転に伴い揺動される略コ字状のフレーム403と、そのフレーム403に軸支されると共に受光部9が固定される第2軸408とを備えている。第1軸407及び第2軸408は駆動軸(図示せず)に連係されており、駆動軸は図示しないモータ及び減速機の出力により回転されるように構成され、第1軸407及び第2軸408の回転により受光部9の傾きが変化される。太陽追尾装置401は、第1軸407が横設されており第2軸408がフレーム304に支持されているので、台部402の直上に受光部9を設けることができる。そのため受光部9の面積を大きくすることができる。
【0084】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量等)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0085】
上記各実施の形態では、第1伝達部10,110,210、第2伝達部20,120,220及び伝達部310がウォームギヤにより構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の伝達機構を採用することは当然可能である。他の伝達機構としては、例えばベベルギヤ(直歯または曲り歯)、クラウンギヤ等が挙げられる。
【0086】
また上記各実施の形態では、駆動軸6に対して第1軸7及び第2軸8が直交方向に配設される場合、第1軸7,407に対して第2軸308,408が直交方向に配設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、直交以外の他の角度で各軸を斜交させることは当然可能である。各軸が直交以外の他の角度で斜交するような場合、第1伝達部10,110,210、第2伝達部20,120,220及び伝達部310にベベルアンギュラーを用いることで動力の伝達を可能にできる。
【0087】
上記各実施の形態では、ワンウェイクラッチ(第1ワンウェイクラッチ11,121,211、第2ワンウェイクラッチ221及びワンウェイクラッチ311)がスプラグタイプの場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他のワンウェイクラッチ、例えばローラタイプ、ラチェットタイプを採用することは当然可能である。
【0088】
上記各実施の形態では、モータ4及び減速機5が別部材として構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ギヤードモータ等のようにモータ4及び減速機5が一体に構成された機構を採用することは当然可能である。
【0089】
上記各実施の形態では、第1軸7が鉛直方向に配置される場合(大地に対して略直交)、第1軸407が水平方向に配置される場合(大地に対して略平行)について説明したが、必ずしもこれらに限られるものではなく、第1軸7,407を大地に対して斜交させて配置することは当然可能である。この場合も第1軸7,407と第2軸8,308,408とを連係させて、受光部9の傾きを変化させることができる。
【0090】
上記各実施の形態では、受光部9の傾きを補正するときは、初めに第1ワンウェイクラッチ11,121,211又はワンウェイクラッチ311がロックする方向にモータ4を回転させて、次に第1ワンウェイクラッチ11,121,211又はワンウェイクラッチ311がフリーとなる方向にモータ4を回転させる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。初めに第1ワンウェイクラッチ11,121,211又はワンウェイクラッチ311がフリーとなる方向にモータ4を回転させて、次に第1ワンウェイクラッチ11,121,211又はワンウェイクラッチ311がロックする方向にモータ4を回転させることで受光部9の傾きを補正することは当然可能である。モータ4の回転順に関らず、同様の効果を実現できるからである。
【符号の説明】
【0091】
1,101,201,301,401 太陽追尾装置
4 モータ
5 減速機
6 駆動軸
7,407 第1軸
8,308,408 第2軸
9 受光部
10,110,210 第1伝達部
20,120,220 第2伝達部
11,121,211 第1ワンウェイクラッチ
221 第2ワンウェイクラッチ
310 伝達部
311 ワンウェイクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大地に対して軸心の位置が固定されると共に、太陽の方位または高度の一方に対応して前記軸心の回りに回転可能に構成される第1軸と、
その第1軸の回りに太陽の方位または高度の他方に対応して回転可能に構成されると共に、太陽光を受光する受光部が固定される第2軸と、
一方向および他方向の回転を出力可能なモータと、
そのモータの回転数を減じて出力する減速機と、
その減速機の回転が伝達される駆動軸と、
その駆動軸から前記第1軸に回転を伝達する第1伝達部および前記駆動軸から前記第2軸に回転を伝達する第2伝達部とを備え、
前記第1伝達部または前記第2伝達部の一方は、
前記第1軸または前記第2軸の一方に前記モータの一方向の回転を伝達する一方、前記第1軸または前記第2軸の一方への前記モータの他方向の回転の伝達を遮断する第1ワンウェイクラッチを備えていることを特徴とする太陽追尾装置。
【請求項2】
前記モータの一方向の回転により前記受光部の傾きが変化する速度は、前記第1ワンウェイクラッチを介して回転が伝達される前記第1軸または前記第2軸の一方の回りの速度成分が、前記第1軸または前記第2軸の他方の回りの速度成分より小さく設定されていることを特徴とする請求項1記載の太陽追尾装置。
【請求項3】
前記第1ワンウェイクラッチは、太陽の方位に対応して回転するように設定される前記第1軸または前記第2軸に配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽追尾装置。
【請求項4】
前記第1伝達部または前記第2伝達部の他方は、前記第1ワンウェイクラッチが伝達する前記モータの回転方向と逆方向の回転を前記第1軸または前記第2軸の他方に伝達する一方、前記第1ワンウェイクラッチが伝達する前記モータの回転方向と同方向の回転の前記第1軸または前記第2軸の他方への伝達を遮断する第2ワンウェイクラッチを備えていることを特徴とする請求項1又は3に記載の太陽追尾装置。
【請求項5】
前記第1ワンウェイクラッチ又は前記第2ワンウェイクラッチを備える前記第1伝達部または前記第2伝達部は、前記第1軸または前記第2軸からの荷重の入力により前記駆動軸が回転不能に設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の太陽追尾装置。
【請求項6】
大地に対して軸心の位置が固定されると共に、太陽の方位または高度の一方に対応して前記軸心の回りに回転可能に構成される第1軸と、
その第1軸の回りに太陽の方位または高度の他方に対応して回転可能に構成されると共に、太陽光を受光する受光部が固定される第2軸と、
一方向および他方向の回転を出力可能なモータと、
そのモータの回転数を減じて前記第2軸に出力する減速機と、
前記第2軸から前記第1軸に回転を伝達する伝達部とを備え、
その伝達部は、前記モータの一方向の回転を前記第1軸に伝達する一方、前記モータの他方向の回転の前記第1軸への伝達を遮断するワンウェイクラッチを備えていることを特徴とする太陽追尾装置。
【請求項7】
前記ワンウェイクラッチを備える前記伝達部は、前記第1軸からの荷重の入力により前記第2軸が回転不能に設定されていることを特徴とする請求項6記載の太陽追尾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−16527(P2013−16527A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143865(P2011−143865)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000154347)株式会社ユニバンス (132)
【Fターム(参考)】