説明

太陽電池の分極のモジュールレベルの解決法

太陽電池モジュール(100A)は、相互接続された太陽電池(101)と、太陽電池の正面(101)を被覆する透明カバー(201)と、太陽電池(101)の背面の背面シート(205)とを含む。太陽電池モジュール(100A)は、透明カバー(201)と、太陽電池(101)の正面との間に絶縁材(202)を含む。カプセル材(203)によって、太陽電池(101)が保護されパッケージ化される。分極させないために、絶縁材(202)は、太陽電池(101)の正面から、太陽電池モジュールの他の部分へと、透明カバー(201)を介して電荷がリークしないようにすることのできる抵抗を有する。絶縁材(202)は、(例えばコーティング等により)透明カバー(201)の下面に直接取り付けられてもよいし、あるいは、カプセル材(203)の層の間に形成される別個の層として形成されてもよい。太陽電池(101)は、背面接合型の太陽電池であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して太陽電池に係り、より詳しくは太陽電池モジュールに関するが、これに限定はされない。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽光を電気エネルギーに変換する公知のデバイスであり、半導体プロセス技術を利用して半導体基板上に製造することができる。一般的には、太陽電池は、シリコン基板上にp型領域とn型領域とを形成することにより製造することができる。各隣接するp型領域とn型領域とによって、p−n接合が形成される。太陽電池に入射する太陽光は、p型領域およびn型領域に移動する電子と正孔とを生成して、p−n接合に電圧差を生じさせる。背面接合型の太陽電池においては、p型領域とn型領域とが、外部電気回路またはデバイスを太陽電池に接続して太陽電池から受電することができるようにする金属接触とともに背面側に位置していてよい。背面接合型の太陽電池は、米国特許第5,053,083号、4,927,770号明細書でも開示されており、これらの全体をここに参照として組み込む。
【0003】
幾つかの太陽電池を接続して、1つの太陽電池アレイを形成する。太陽電池アレイは、太陽電池モジュールへとパッケージ化され、太陽電池アレイを、環境条件に耐えさせて、屋外(field)で利用可能とする保護層を含んでよい。
【0004】
注意しなければ、太陽電池は、屋外で分極が進み、出力電力が低減してしまう場合がある。太陽電池の分極の解決法については、米国特許出願第7,554,031号明細書に開示されており、この全体をここに参照として組み込む。本開示は、太陽電池の分極に対するモジュールレベルの解決法に係る。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、太陽電池モジュールは、相互接続された太陽電池と、太陽電池の正面を被覆する透明カバーと、太陽電池の背面の背面シートとを含む。太陽電池モジュールは、透明カバーと、太陽電池の正面との間に絶縁材を含む。カプセル材によって、太陽電池が保護されパッケージ化される。分極させないために、絶縁材は、太陽電池の正面から、太陽電池モジュールの他の部分へと、透明カバーを介して電荷がリークしないようにすることのできる抵抗を有する。絶縁材は、(例えばコーティング等により)透明カバーの下面に直接取り付けられてもよいし、あるいは、カプセル材の層の間に形成される別個の層として形成されてもよい。太陽電池は、背面接合型の太陽電池であってもよい。本発明のこれらの特徴またはその他の特徴が、本開示の全体(添付図面および請求項を含む)を読んだ当業者には自明である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態における太陽電池モジュールを示す。
【図2】本発明の一実施形態における、図1の太陽電池モジュールの断面図を示す。
【図3】図1の太陽電池モジュールでの利用に適した絶縁材の一般的な特徴を示す。
【図4】本発明の別の実施形態における図1の太陽電池モジュールの断面図を示す。
【図5】絶縁材を利用するモジュールレベルの分極の解決法を、絶縁材を有さない制御例と比較した試験データを示す。
【図6】ガラストップカバーの上下に絶縁材を配置する効果を比較する試験データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
異なる図面間で同じ参照符号が利用されている場合には、同じ、または類似した部材を示している。図面は実際の縮尺に即して描かれてはいない。本開示においては、本発明の完全な理解を提供するために、装置、部材、および方法の例といった数多くの詳細を提供する。当業者であれば、本発明が特定の詳細の1以上を利用しなくても実行可能であることを理解する。また他の場合には、公知の詳細を示さないようにすることで、本発明の特徴的な側面を曖昧にしないようにしている場所もある。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態における太陽電池モジュール100を示す。太陽電池モジュール100は、いわゆる「地上太陽電池モジュール」というものであり、屋根の上に搭載されたり、発電所により利用されたりする、固定して利用される用途向けのものである。図1の例では、太陽電池モジュール100は、相互に接続された太陽電池101のアレイを含む。図1では、太陽電池101の幾つかだけに参照番号を付すことで、明瞭化を期している。太陽電池101は、特に分極に弱い背面接合型の太陽電池を含んでよい。図1からは、太陽電池101の、通常動作において太陽に向かう正面側が示されている。太陽電池101の背面側は、正面側とは反対側である。フレーム102は、太陽電池アレイに機械的なサポートを提供する。
【0009】
太陽電池モジュール100の正面は、103という参照番号が付されており、太陽電池101の正面側と同じ側にあり、図1に現れているほうの側である。太陽電池モジュール100の背面104は、正面103の下側である。以下の記載から明らかになるように、正面103には、透光性の保護を提供し、絶縁性を有する材料からなる層が、太陽電池101の正面を覆うように形成されている。
【0010】
図2は、本発明の一実施形態における、図1の太陽電池モジュール100の断面図を示す。図2の太陽電池モジュール100は、「100A」という参照符号を付されており、図4の実施形態とは異なる実施形態であることが示されている。図2に示されているように、太陽電池モジュール100Aは、透明カバー201と、絶縁材202と、カプセル材203と、太陽電池101と、背面シート205とを含む。透明カバー201、絶縁材202、およびカプセル材203は、透光性の材料である。透明カバー201は、正面103の上の最上部の層であり、外部環境から太陽電池101を保護する。太陽電池モジュール100Aは、透明カバー201が、通常動作時に太陽に向かうように搭載される。太陽電池101の正面は、透明カバー101よりも(by way of)太陽の方向側を向いている。図2の例では、透明カバー201は、太陽電池101に対向する側を絶縁材202でコーティングされたたガラスを含む(例えば3.2mmの厚みのソーダライムガラス)。
【0011】
カプセル材203は、太陽電池101、絶縁材202でコーティングされた透明カバー201、および背面シート205を結合して、保護パッケージを形成する。一実施形態では、カプセル材203は、ポリエチレンビニルアセテート(poly-ethyl-vinyl acetate:EVA)を含む。
【0012】
太陽電池101の背面は、背面シート205側を向いており、カプセル材203に取り付けられている。一実施形態では、背面シート205は、テドラー/ポリエステル/EVA(Tedlar/Polyester/EVA:TPE)を含む。TPEでは、テドラーが、外部環境から保護をする最外部の層であり、ポリエステルが絶縁性をさらに高め、EVAが、カプセル材203に対する接着を促進する、非架橋型(non-crosslinked)の薄い層である。背面シート205への用途でTPEの代替物として利用可能な一例としては、テドラー/ポリエステル/テドラー(Tedlar/Polyester/Tedlar:TPT)がある。
【0013】
太陽電池101は、フレーム102から絶縁されている(electrically isolated)。絶縁材202は、太陽電池101の外部にあり、透明カバー201を介した、太陽電池101の正面からフレーム102へ、または、太陽電池モジュール100Aのその他の部分への電荷のリークを防止することにより、太陽電池の分極を防止するよう構成されている。発明者たちは、分極を効果的に防止する目的において、絶縁材202が、摂氏45から85度の通常動作温度範囲で1016(例えば1016−1019)Ωcm以上の体積比抵抗を有すると好適であることを発見した。
【0014】
絶縁材202は、フッ化炭素系のポリマーを含んでよい。一実施形態では、絶縁材202が、日本国の旭硝子社製のFluon(登録商標)ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)を含む。Fluon(登録商標)ETFEの一般的な特性を図3に示す。図2の例では、Fluon(登録商標)ETFEは、2から6ミル(mils)であり、3.2mmの厚みのガラス製透明カバー201の下面にコーティングされる。本開示においては、Fluon(登録商標)ETFE以外にも、本発明の効果が果たせる範囲を逸脱しないで利用可能な絶縁材が存在することは理解に難くないであろう。
【0015】
図4は、本発明の別の実施形態における太陽電池モジュール100の断面図を示す。図4の太陽電池モジュール100は、「100B」という参照符号を付されており、図2の実施形態とは異なる実施形態であることが示されている。太陽電池モジュール100Bは、絶縁材202が、カプセル材203の層の間に挟まれた別個の材料層であり、透明カバー201の直下に直接取り付けられていない(例えばコーティングにより)、ということ以外は、太陽電池モジュール100Aと同じである。図4の部材については、既に図2の実施形態を参照して説明済みである。図2の実施形態と比較すると、太陽電池モジュール100Bは、絶縁材202が透明カバー201に直接コーティングすることができない場合に、より好適である。図4の例では、カプセル材203は、太陽電池101、透明カバー201、絶縁材202、および背面シート205を結合して、保護パッケージを形成する。
【0016】
図5は、絶縁材202を利用するモジュールレベルの分極の解決法を、絶縁材を有さない制御例と比較した試験データを示す。図5では、垂直軸がモジュール出力を表している。水平軸は、サンプル番号1、2、3、4、5、および6の試験データを示す。サンプル番号1、2、および3は、分極を防止するための絶縁層を利用しない太陽電池モジュールであり、サンプル番号4、5、および6は、絶縁材202が透明ガラスカバーと太陽電池との間にある太陽電池モジュール100に類似した太陽電池モジュールである。サンプルの性能は、別個の4日に分けて計測され、各サンプルにつき4つのバーグラフで表されている。各サンプルにおいて、一番左のバーグラフは初日のものであり、次のバーグラフが数日後に採られたものであり、といった具合である。図5から分かるように、サンプル番号1、2および3は性能が分極のために時を経ると徐々に落ちていっている。一方で、サンプル番号4、5および6は、性能が比較的安定しており、分極に対してより有効な解決法であることが分かる。
【0017】
図5の試験データは、絶縁材202をガラス製の透明カバーの上に載置することで、比較的簡単な実装で、分極からの保護が達成されることを示している。しかし、最上部に絶縁材202を設けることには、幾つか潜在的な欠点がある。つまり、絶縁材202は直接紫外線(UV)に晒されることとなり、速い速度で劣化して、その容積抵抗(volumetric resistivity)を失う。さらに、ポリマー製の絶縁材202は、ガラス製の透明カバーよりも汚れる(soil)傾向にあり、ひょうの影響の試験要件(hail impact test requirements)を満たさない。
【0018】
図6は、ガラストップカバーの上下に絶縁材202を配置する効果を比較する試験データを示す。図6では、異なる温度のサンプル番号7、8、および9について、垂直軸が効率を表し、水平軸がバーグラフを示す。サンプル番号7は、制御に利用される従来の太陽電池モジュールである。サンプル番号8は、ガラス製の透明カバーn下に絶縁材202が追加されている以外はサンプル番号7と類似したものであり、サンプル番号9は、絶縁材202がガラス製の透明カバーの上に追加されている以外はサンプル番号7と類似したものである。試験は、摂氏120度までの温度で、1000VのDCを、1時間の間サンプルに適用することで、電圧バイアスをかけて行われた。
【0019】
図6では、サンプル番号7の効率の低さは、分極が原因であると思われる。図6から分かるように、サンプル番号8および9において絶縁材202を利用することで、効率には顕著な影響が出ている。図6の試験データは、さらに、絶縁材202を透明のカバーの下に設けることで(サンプル番号8)、絶縁材202を透明カバーの上に設けるよりも(サンプル番号9)、分極から保護する効果が高い、という予期しなかった結果が得られることを表している。
【0020】
絶縁材202は、製造の複雑性およびコストを増加させ、別の材料層を追加して、太陽光を通過させることとなる。しかし、絶縁材202を本明細書で記載するように利用して、分極を防止することによる利点は、上述した不利益を補って余りある。さらに、絶縁材202は、太陽電池101に対して変更を行う必要なく、または、接地等の電気的な変更、または、太陽電池モジュール100(つまり100Aおよび100B)のシステムレベルの構成の変更等を行う必要なく、分極を防止することができる。従い、本明細書で述べるモジュールレベルの分極の解決法は、現行および将来の設計の太陽電池モジュールにも容易に実装することができる。本発明の特定の実施形態を記載してきたが、これら実施形態はあくまで例示を目的としたものであって、限定は意図していない。さらなる数多くの実施形態も、本開示を読んだ当業者にとっては明らかとなろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールであって、
通常動作時に太陽側を向く正面、および前記正面の反対側の背面を各々が有する、相互接続された複数の太陽電池と、
前記複数の太陽電池の前記正面を覆う透明カバーと、
前記透明カバーと、前記複数の太陽電池の前記正面との間に設けられた絶縁材と、
前記複数の太陽電池の前記背面に設けられた背面シートと、
前記複数の太陽電池、前記透明カバー、前記絶縁材、および、前記背面シートを結合して、保護パッケージを構成するカプセル材と
を備え、
前記絶縁材は、前記複数の太陽電池の前記正面から、前記太陽電池モジュールの他の部分への、前記透明カバーを介した電荷のリークを防止するよう構成されており、前記絶縁材は、摂氏45から85度の温度範囲で1016Ωcm以上の体積比抵抗を有する、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記複数の太陽電池は、背面接合型の太陽電池を含む請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記絶縁材は、フッ化炭素系のポリマーを含む請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記絶縁材は、前記透明カバーの下面に直接コーティングされる請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記透明カバーは、ガラスを含む請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記透明カバーは、ガラスを含み、前記絶縁材は、前記透明カバーの下面にコーティングされる請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記絶縁材は、前記カプセル材の各層の間に設けられる請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記カプセル材は、ポリエチレンビニルアセテート(poly-ethyl-vinyl acetate)を含む請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
通常動作時に太陽側を向く正面、および前記正面の反対側の背面を各々が有する、背面接合型の複数の太陽電池と、
前記複数の太陽電池の前記正面を覆う透明カバーと、
前記透明カバーと、前記複数の太陽電池の前記正面との間に設けられた絶縁材と、
前記複数の太陽電池の前記背面に設けられた背面シートと、
前記複数の太陽電池、前記背面シート、および、前記絶縁材を結合して保護するカプセル材と
を備え、
前記絶縁材は、前記カプセル材の各層の間に設けられる、太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記絶縁材は、1016Ωcm以上の抵抗を有する請求項9に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−502051(P2013−502051A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523615(P2012−523615)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036226
【国際公開番号】WO2011/016894
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(505379467)サンパワー コーポレイション (41)
【Fターム(参考)】