説明

太陽電池の建造物への取付構造

【課題】 建造物への太陽電池モジュールの新たな取付構造に関し、多くのパネル枚数が取り付けられる、建造物に負担を掛けずに強固に取り付けられる、広い土地を占有せずに効率的に太陽光を受けられる、太陽電池の建造物への取付構造を提供する。
【解決手段】 建造物1から離れた地面Eに束石40を埋設し、建造物1のパラペット4の上部と束石40の間に複数本の梁材10を斜めに掛け渡し、梁材10の所望位置に太陽電池モジュールSを取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋などの建造物への太陽電池モジュールの新たな取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は地球環境の点からも注目され普及が進んでいる。その太陽電池モジュールの設置は、通常は南向きの傾斜した屋根に沿って並べられる。寒冷地の場合は、屋根に設置すると積雪により発電が妨げられるのを避けるため、南向きの壁面やベランダに太陽電池モジュールを取り付ける場合がある。
【0003】
例えば壁面への取り付けでは、特許第4556215号公報に示されるように、壁面上下に並行に固定されたL形鋼材からなる一対の主材にモジュールを装着するモジュール装着手段と、該モジュール装着手段によって装着された各モジュール周囲の隙間をカバーするカバー装着手段とを備え、壁面に沿ってモジュールを設置するものが知られている。
【0004】
この太陽電池アレイ用架台壁面設置システムは、壁面に対してモジュールを装着する部材や装着された各モジュール周囲の隙間を覆うカバーを、全て主材を介して取付けできるようにシステム化されており、モジュール装着手段は、装着するモジュールを載置片に仮置きしてから装着できるので、壁面にモジュールを取り付ける際に、一人でも取付けることが可能なものである。
【0005】
またベランダへの取り付けでは、特開2002−111033号公報に示されるように、上端部が開放された壁体に、これを挟持するようにして設置される太陽電池装置であって、太陽電池の側部より外側に延出した後、U字状に非受光面側に折り返して該太陽電池の背面まで延出された支持材を有し、前記壁体と前記太陽電池の間の空間上部に、前記支持材の存在しない空気流通口を設けたものが知られている。
【0006】
この太陽電池装置では、太陽電池装置をベランダの腰壁、もしくは柵等に設置固定する場合に、ベランダの腰壁、柵等の外側への太陽電池の設置を工事作業の専門家でない素人がベランダ内側だけの作業で済ますことができると共に、太陽電池装置を誤って落下させてしまう懸念がなく、安全に確実に固定することができるものである。
【0007】
また建造物から離れて独立して地盤に設置するものとしては、特開2010−258024号公報に示されるように、複数の太陽電池モジュールを水平面に対して所定の傾斜角度で支持する支持構造であって、各太陽電池モジュールの複数の支持箇所に対応して設置されたコンクリートブロックと、各コンクリートブロック上に支持された取付金具とを備え、該取付金具は、前記コンクリートブロック上に起立する保持板と、該保持板に保持された支持片とを備え、太陽電池モジュールは、前記支持片の上部に対して該上部の延在方向に沿って所定値以上の外力で滑動し得るように締結されているものが知られている。
【0008】
この太陽電池モジュールの支持構造及びその取付金具では、軟弱地盤や長期的観点での地盤の不安定性に対して、低いコストで安定的に太陽電池モジュールを支持し得る支持構造及びそのための取付金具を提供することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4556215号公報
【特許文献2】特開2002−111033号公報
【特許文献3】特開2010−258024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般家屋などの建造物の外壁面に直接太陽電池モジュールを取り付ける場合、窓や換気孔などを塞がないように取り付けるために取り付けられる壁面が限られ、太陽電池モジュールのパネル枚数が一般家庭の消費量に見合う定格発電量(おおよそ3KW以上とされている)に満たない、という問題がある。定格発電量が少ないと、パワーコンディショナなどのパネル枚数に比例しないコストが掛かるため、設置費用の回収に至らない場合がある。
【0011】
また、特開2002−111033号公報に示されるように、家屋のベランダの腰壁や柵などのみに太陽電池モジュールを取り付ける場合、古くて強度の不足した家屋のベランダの手摺などに取り付けると、太陽電池モジュールの重さに家屋のベランダが耐えられない、という問題がある。
【0012】
また先に示した、建造物から離れて独立して地盤に設置する、特開2010−258024号公報のものでは、家屋以外に占有できる広い土地が必要となり、一般家庭には不向きなものとなっている。
【0013】
また、家屋の外壁面と平行に太陽電池モジュールを取り付ける場合、屋根に設置したときのような積雪の問題は無いが、日差しの強い日中に効率的に太陽光を受けられないという問題がある。
【0014】
そこで本発明は、建造物の外壁面に直接太陽電池モジュールを取り付ける場合よりも多くのパネル枚数が取り付けられる、建造物に負担を掛けずに強固に取り付けられる、広い土地を占有せずに効率的に太陽光を受けられる、太陽電池の建造物への取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明の太陽電池の建造物への取付構造は、建造物1から離れた地面Eに束石40を埋設し、建造物1のパラペット4やベランダ5の上部と束石40の間に複数本の梁材10,20,30を斜めに掛け渡し、梁材10,20,30の所望位置に太陽電池モジュールSを取り付けたものである。
【0016】
請求項2の発明の太陽電池の建造物への取付構造は、梁材10,20の上部取付部11,21が建造物1のパラペット4やベランダ5の上部にほぼ強固に固定され、梁材10,20の下部取付材13,23が束石40と上下方向に遊び嵌めしたものである。
【0017】
請求項3の発明の太陽電池の建造物への取付構造は、梁材30の上部取付部31が建造物1のパラペット4やベランダ5の上部と上下方向に遊び嵌めされ、梁材30の下部取付材33が束石40にほぼ強固に固定されたものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、建造物1から離れた地面Eに束石40を埋設し、建造物1のパラペット4やベランダ5の上部と束石40の間に複数本の梁材10,20,30を斜めに掛け渡し、梁材10,20,30の所望位置に太陽電池モジュールSを取り付けたことにより、窓などに少しかかっても太陽電池モジュールSが取り付けられるから、建造物1の外壁面2に直接取り付ける場合よりも多くのパネル枚数が取り付けられる。
【0019】
また、建造物1のパラペット4やベランダ5の上部と束石40の間に複数本の梁材10,20,30を斜めに掛け渡し、梁材10,20,30の所望位置に太陽電池モジュールSを取り付けたことにより、占有できる位置の地面Eに束石40を埋設できるから、広い土地を占有せずに効率的に太陽光を受けられる。
【0020】
請求項2の発明によれば、梁材10,20の上部取付部11,21が建造物1のパラペット4やベランダ5の上部にほぼ強固に固定され、梁材10,20の下部取付材13,23が束石40と上下方向に遊び嵌めしたから、束石40が凍上や沈降により移動しても梁材10,20や建造物1に不要の力を加えない。
【0021】
請求項3の発明によれば、梁材30の上部取付部31が建造物1のパラペット4やベランダ5の上部と上下方向に遊び嵌めされ、梁材30の下部取付材33が束石40にほぼ強固に固定されたから、束石40が凍上や沈降により移動しても梁材30や建造物1のパラペット4やベランダ5の上部に不要の力を加えないことになり、建造物1に負担を掛けずに強固に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は太陽電池の建造物への取付構造の実施例1を示す一部を切り欠いた側面図である。
【図2】図2は図1の正面図である。
【図3】図3は図1の部分拡大図である。
【図4】図4は図1の部分拡大図である。
【図5】図5は図1の実施例2を示す図である。
【図6】図6は図5の部分拡大図である。
【図7】図7は図3の実施例3を示す図である。
【図8】図8は図4の実施例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
建造物1の外壁面2に直接太陽電池モジュールSを取り付ける場合よりも多くのパネル枚数が取り付けられる、建造物1に負担を掛けずに強固に取り付けられる、広い土地を占有せずに効率的に太陽光を受けられる、太陽電池の建造物への取付構造を提供する目的を、建造物1から離れた地面Eに束石40を埋設し、建造物1のパラペット4やベランダ5の上部と束石40の間に複数本の梁材10,20,30を斜めに掛け渡し、梁材10,20,30の所望位置に太陽電池モジュールSを取り付けたことで実現した。
【実施例1】
【0024】
図1から図4は、本発明の実施例1に係る太陽電池の建造物への取付構造である。
【0025】
建造物1としてM型無落雪屋根の2階建て家屋を示している。建造物1の外壁面2には複数の窓3が設けられている。建造物1の外壁面2上部の周囲にはパラペット4が屋根の一部として立設している。
【0026】
建造物1から離れた地面Eに複数の束石40を埋設し、束石40はコンクリート製で、束石40の上面には取付金具41が上方に突出している。
【0027】
建造物1のパラペット4の上部と束石40の間に複数本の梁材10を斜めに掛け渡す。
【0028】
梁材10の上部は上部取付部11とし、上部取付部11は倒立Jの字形状で、パラペット4の上部に断面略コの字状の補強体15を固定し、パラペット4の上部と上部取付部11の間に補強体15を介して、パラペット4の上部に巻き付くように締め付け、梁材10の上部取付部11がパラペット4の上部にほぼ強固に固定される。
【0029】
梁材10の下部は下部取付材13とし、下部取付材13の下端部に上下方向の長孔14を設け、束石40の取付金具41と下部取付材13の長孔14の間にボルトを通し、梁材10の下部取付材13が束石40と上下方向に遊び嵌めする。
【0030】
梁材10の中間部は太陽電池モジュールSを取り付ける支持材12とし、支持材12の間に渡る水平方向に長い上挟持金具51と下挟持金具52とを設け、上挟持金具51と下挟持金具52および支持材12で太陽電池モジュールSを挟んで固定する。
【0031】
梁材10の支持材12の所望位置、つまり塞いでも良い窓3は塞ぎ開けておきたい窓3の所は開けて、太陽電池モジュールSを取り付ける。
【0032】
以上の実施例1は、太陽電池モジュールSの荷重を建造物1のパラペット4の上部でほぼ受ける例である。
【実施例2】
【0033】
図5から図6は、本発明の実施例2に係る太陽電池の建造物への取付構造である。実施例1と同じものは同じ番号で示し、説明を省略する。
【0034】
建造物1の二階の外壁面2の一部にベランダ5が設けられ、ベランダ5には腰壁5aや手摺5bが立設している。
【0035】
建造物1のベランダ5の上部の腰壁5aと束石40の間に複数本の梁材20を斜めに掛け渡す。
【0036】
梁材20の上部は上部取付部21とし、上部取付部21は倒立Jの字形状で、ベランダ5の上部の腰壁5aと上部取付部21の間に断面略コの字状の樹脂板などの緩衝体25を介し、腰壁5aの上部に上部取付部21を巻き付け、梁材20の上部取付部21がベランダ5の上部の腰壁5aにほぼ強固に固定される。
【0037】
梁材20の下部は下部取付材23とし、下部取付材13の下端部に上下方向の長孔を設け、束石40の取付金具と下部取付材13の長孔の間にボルトを通し、梁材20の下部取付材23が束石40と上下方向に遊び嵌めする。
【0038】
梁材20の中間部は太陽電池モジュールSを取り付ける支持材22とし、支持材22の間に渡る水平方向に長い上挟持金具51と下挟持金具52とを設け、上挟持金具51と下挟持金具52および支持材22で太陽電池モジュールSを挟んで固定する。
【0039】
梁材20の支持材22の所望位置、つまり塞いでも良い窓3は塞ぎ開けておきたい窓3の所は開けて、太陽電池モジュールSを取り付ける。
【0040】
以上の実施例2は、太陽電池モジュールSの荷重を建造物1のベランダ5の上部でほぼ受ける例である。
【実施例3】
【0041】
図7から図8は、本発明の実施例3に係る太陽電池の建造物への取付構造である。実施例1と同じものは同じ番号で示し、説明を省略する。
【0042】
建造物1のパラペット4の上部と束石40の間に複数本の梁材30を斜めに掛け渡す。
【0043】
梁材30の上部は上部取付部31とし、上部取付部31は倒立Jの字形状で、パラペット4の上部に断面略コの字状の補強案内体35を固定し、上部取付部31とパラペット4の上部の間に補強案内体35を介して上下方向には移動可能に案内し、上部取付部31の内側は補強案内体35の上部と接しないよう隙間を開け、梁材30の上部取付部31がパラペット4の上部と上下方向に遊び嵌めする。
【0044】
梁材30の下部は下部取付材33とし、下部取付材33の下端部に取付孔34を設け、束石40の取付金具41と下部取付材33の取付孔34の間にボルトを通して締め付け、梁材30の下部取付材33が束石40にほぼ強固に固定される。
【0045】
梁材30の中間部は太陽電池モジュールSを取り付ける支持材32とし、支持材32の間に渡る水平方向に長い上挟持金具51と下挟持金具52とを設け、上挟持金具51と下挟持金具52および支持材32で太陽電池モジュールSを挟んで固定する。
【0046】
梁材30の支持材32の所望位置、つまり塞いでも良い窓3は塞ぎ開けておきたい窓3の所は開けて、太陽電池モジュールSを取り付ける。
【0047】
以上の実施例3は、太陽電池モジュールSの荷重を地面Eに埋設した束石40でほぼ受ける例である。
【0048】
以上の実施例では、建築物1として木造家屋の例を示したが、建築物1は鋼製構造材やコンクリート構造材のものでも良い。
【0049】
また、地面Eに複数の束石40を埋設した例を示したが、不等沈下を防ぐために束石は一枚のコンクリート板のようなものとしても良いし、市販のグリッドポストのようなものを用いても良い。
【0050】
また、梁材10,20の下部取付材13,23が下部取付材13,23の長孔14により束石40と上下方向に遊び嵌めした例を示したが、梁材10,20の下部取付材と支持材の間で伸縮するようにしても良い。
【0051】
また、梁材30の上部取付部31がパラペット4の上部と上下方向に遊び嵌めする例を示したが、梁材30の上部取付部と支持材の間で伸縮するようにしても良い。
【0052】
また、ベランダ5の上部の腰壁5aと束石40の間に梁材20を斜めに掛け渡す例を示したが、ベランダは天井の無いバルコニーや一側面開放の共用通路のようなものでも良いし、腰壁は手摺や柵のようなものでも良い。
【符号の説明】
【0053】
1 建造物
4 パラペット
5 ベランダ
10 梁材
11 上部取付部
13 下部取付材
20 梁材
21 上部取付部
23 下部取付材
30 梁材
31 上部取付部
33 下部取付材
40 束石
E 地面
S 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物から離れた地面に束石を埋設し、建造物のパラペットやベランダの上部と束石の間に複数本の梁材を斜めに掛け渡し、梁材の所望位置に太陽電池モジュールを取り付けた太陽電池の建造物への取付構造。
【請求項2】
梁材の上部取付部が建造物のパラペットやベランダの上部にほぼ強固に固定され、梁材の下部取付材が束石と上下方向に遊び嵌めした請求項1記載の太陽電池の建造物への取付構造。
【請求項3】
梁材の上部取付部が建造物のパラペットやベランダの上部と上下方向に遊び嵌めされ、梁材の下部取付材が束石にほぼ強固に固定された請求項1記載の太陽電池の建造物への取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−53408(P2013−53408A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190365(P2011−190365)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000137063)株式会社ホクエイ (29)
【出願人】(508082120)株式会社Mr.ルーフマン (3)
【出願人】(500407466)株式会社ホーム企画センター (6)
【Fターム(参考)】