説明

太陽電池の検査方法および検査装置

【課題】 太陽電池セルの欠陥の検査精度を上げるとともにストリングを製造する工程において発生するハンダ接続不良を検査することができる太陽電池の検査装置と検査方法を提供する。
【解決手段】 1つ以上の太陽電池セルを有する太陽電池の良否を判定する検査装置を、第1の検査装置と第2の検査装置とを有し、前記第1の検査装置が、検査対象となる太陽電池に電流を通電する電源手段と、前記電源手段により通電された前記太陽電池からの発光光を撮影する発光光撮影手段と、前記発光光撮影手段で撮影した太陽電池の撮影画像を解析するEL像解析手段と、を有し、前記第2の検査装置が、検査対象となる太陽電池を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された前記太陽電池の温度を測定するサーモ像撮影手段と、前記サーモ像撮影手段で撮影した太陽電池の撮影画像を解析するサーモ像解析手段と、を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも1つの太陽電池セルを備えた太陽電池を検査する太陽電池の検査装置及び検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの利用方法として、シリコン型の太陽電池が知られている。太陽電池の製造においては、太陽電池が目的の発電能力を有しているかどうかの性能評価が重要である。一般的な性能評価方法として、ソーラーシミュレータによる出力特性の測定を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のソーラーシミュレータとは異なる方法として、特許文献2の方法があった。この方法では、シリコンの多結晶型の太陽電池セルに対して順方向に電圧を印加することで、順方向に電流を流しエレクトロルミネッセンス(EL)作用を生じさせ、発光状態から太陽電池セルの良否を判定する方法を提案している。太陽電池セルから発光されるEL光を観察することによって、電流密度分布が分かり、電流密度分布の不均一から太陽電池セルの発光していない部分を欠陥のある部分と判断する。そして、1つの太陽電池セルからの発光光量を測定し、所定の光量があれば良品、この光量に達しない場合は、不良品と判断していた。
【0004】
しかしながら、特許文献2の方法では、太陽電池セルからの発光光の明るさのみで良否の判断をしているので、たとえば、大きなクラックがあっても、明るさが所定の値以上であれば良品と判断される。しかし、大きなクラックがある場合は、急激に太陽電池としての能力が低下してしまう可能性が大きいので、不良品と判断すべきである。
【0005】
また、特許文献3では、太陽電池の欠陥を基板クラック、電極破断、接触不良等の外的要因による欠陥と、基板材料の物性に起因する結晶欠陥、転移、結晶粒界等の内的要因による欠陥とに分けている。そして、内的欠陥は温度変化の影響を受けることに注目し、発光光の観測時に、太陽電池セルを加熱する。このようにすることで内的欠陥を縮小させて外的欠陥の判断を容易にし、外的欠陥と内的欠陥の種類を判断し易くするものである。
【0006】
また、特許文献4では、太陽電池に順方向の電流を流し、温度分布を撮影して欠陥部分を特定する技術が記載されている。太陽電池に電流を流すと、電気的短絡部分には電流が多く流れ、それによって短絡部分が発熱するのを利用した方法である。しかし、この方法は感度および分解能が悪いため、太陽電池の欠陥を正確に検出することはできない。
【0007】
また、特許文献5では、電源手段によって検査対象となる太陽電池内の太陽電池セルに電流を通電し、通電によって太陽電池セルを発光させ、太陽電池セル毎の発光光を撮影手段によって撮影している。そして、撮影した太陽電池セルの撮影画像について、撮影画像中の明暗が混在する部分における平均の明るさから閾値を決め、この閾値によって撮影画像を明部と暗部とに分け、明部と暗部とを2値化表示することによって強調し、太陽電池セルごとの欠陥の有無を判定する工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
この特許文献5の欠陥判定方法によれば、欠陥のパターンをダークエリア、基板クラック、フィンガー断線等のタイプごとに分け、タイプごとの閾値と比較することで、欠陥の判定を短時間で行うことが可能となる。
上記の問題以外に太陽電池セルをリード線により直列に接続したストリングを製造する工程において、太陽電池セルに割れやフィンガー断線が発生したり、リード線と太陽電池セルとの接続部の不良により発電効率が低下するという問題がある。
これまで太陽電池セルの欠陥およびリード線との接続不良を同時に検査する機能を有する検査装置は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−88419
【特許文献2】WO2006/059615
【特許文献3】WO2007/129585
【特許文献4】特開平8−37317
【特許文献5】特許第4235685
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたもので、太陽電池セルの欠陥の検査精度を上げるとともにストリングを製造する工程において発生する割れ、フィンガー断線などのセルの欠陥やハンダ接続不良を検査することができる太陽電池の検査装置と検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明に係る太陽電池の検査装置は、以下の構成を特徴としている。
【0012】
第1発明の太陽電池の検査装置は、1つ以上の太陽電池セルを有する太陽電池の良否を判定する検査装置であって、第1の検査装置と第2の検査装置とを有し、 前記第1の検査装置が、検査対象となる太陽電池に電流を通電する電源手段と、前記電源手段により通電された前記太陽電池からの発光光を撮影する発光光撮影手段と、前記発光光撮影手段で撮影した太陽電池の撮影画像を解析するEL像解析手段と、を有し、前記第2の検査装置が、検査対象となる太陽電池を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された前記太陽電池の温度を測定するサーモ像撮影手段と、 前記サーモ像撮影手段で撮影した太陽電池の撮影画像を解析するサーモ像解析手段と、を有することを特徴としている。
【0013】
第1発明の検査装置は、EL検査手段を使用した第1の検査装置と、サーモ検査手段を使用した第2の検査装置を有している。 本発明では、まず、第1の検査装置で太陽電池を構成する各太陽電池セルに電流を流してEL発光させる。太陽電池セルの良好な部分は発光するが、欠陥部分は発光が弱くなるか発光しないことから、欠陥部分を推定することができる。 つぎに、第2の検査装置で、太陽電池に通電すると、太陽電池セルの配線欠陥部分が加熱される。そこで、サーモ像撮影手段で太陽電池のサーモグラフィ画像を得て、温度の高い部分を配線欠陥と推定する。
【0014】
以上より、太陽電池の欠陥(フィンガー断線・欠け・割れ)を正確に把握することができる。更に、ストリングの製造工程において発生する太陽電池セルの割れ、フィンガー断線などのセルの欠陥やハンダ接続部の不良も検査することができる。このような検査装置を使用することによりストリングの状態でどのような欠陥がありまたその発生原因が分かるため、欠陥の発生を防止することができ、歩留まりの向上を図ることができる。また、ハンダ接続不良部は、発熱するために太陽電池部材の経年劣化を促進し、セルの発電効率の低下を招き、所定の電流電圧特性を得ることができないことに繋がる。また欠陥によっては、将来欠陥が大きくなるかどうかの判断も可能な場合もあり、現在の不良箇所のみならず、将来不良箇所になるおそれのある箇所も判定することが可能になる。これにより太陽電池を長期使用する場合の検査の信頼性を向上することができる。
【0015】
第2発明の太陽電池の検査装置は、第1発明において、前記第1の検査装置の発光光撮影手段が太陽電池の表面側に配置され、前記第2の検査装置のサーモ像撮影手段が前記太陽電池の表面側または裏面側のいずれかに配置されていることを特徴としている。
【0016】
第2発明によれば、太陽電池の欠陥を検出精度を向上させ本発明の検査装置の構造を簡単で安価なものとすることができる。特に前記第1の検査装置の発光光撮影手段が太陽電池の表面側に配置し、前記第2の検査装置のサーモ像撮影手段を前記太陽電池の表面側に配置することにより検査装置のサイズをより省スペースとすることが可能である。
【0017】
第3発明の太陽電池の検査装置は、第1発明又は第2発明において、前記太陽電池が、複数の太陽電池セルを電気的に接続して平面的に配置し、封止樹脂を介して透明保護層とバックシートで表裏を挟んだラミネート構造の太陽電池パネルであることを特徴としている。
【0018】
第3発明によれば、透明基板、充填材、太陽電池セル(ストリング、マトリックスを含む)、充填材、及び裏面材の順番に積層された構造を有する太陽電池の欠陥だけでなく、ストリングを製造する工程において発生する割れ、フィンガー断線などのセルの欠陥やハンダ接続不良を検査することができる
【0019】
第4発明の太陽電池の検査装置は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記第2の検査装置の加熱手段が、検査対象となる太陽電池に電流を通電するものであることを特徴としている。
【0020】
第4発明によれば、太陽電池に電流を流すことにより加熱するので、早期に所定の温度に加熱することができ、短時間で太陽電池の欠陥を検査することができる。
【0021】
上記の目的を達成するために本発明に係る太陽電池の検査方法は、以下の構成を特徴と
している。
【0022】
第5発明の太陽電池の検査方法は、電源手段によって検査対象となる太陽電池に電流を通電する工程と、前記通電によって前記太陽電池を発光させ、太陽電池セル毎の発光光を発光光撮影手段によって撮影する工程と、前記発光光撮影手段で撮影した太陽電池の撮影画像からEL像解析手段によって欠陥位置と推定される箇所を特定する工程と、太陽電池を加熱手段によって加熱する工程と、前記加熱によって前記太陽電池の温度分布をサーモ像撮影手段によって撮影する工程と、前記サーモ像撮影手段で撮影した太陽電池の撮影画像からサーモ像解析手段によって欠陥位置と推定される箇所を特定する工程と、前記EL像解析手段により太陽電池の欠陥の種類と位置を特定し。前記サーモ像解析手段によって太陽電池セルのハンダ接続の不良箇所を特定する工程と、を有することを特徴としている。
【0023】
第5発明によれば、第1発明と同様の効果が得られる。
【0024】
第6発明の太陽電池の検査方法は、第5発明において、前記発光光撮影手段が太陽電池の表面側から撮影し、前記サーモ像撮影手段が前記太陽電池の表面側または裏面側のいずれかから撮影することを特徴としている。
【0025】
第6発明によれば、第2発明と同様の効果が得られる。
【0026】
第7発明の太陽電池の検査方法は、第5発明又は第6において、前記太陽電池が、複数の太陽電池セルを電気的に接続して平面的に配置し、封止樹脂を介して透明保護層とバックシートで表裏を挟んだラミネート構造の太陽電池パネルであることを特徴としている。
【0027】
第7発明によれば、第3発明と同様の効果が得られる。
【0028】
第8発明の太陽電池の検査方法は、第5発明から第7発明のいずれかにおいて、前記太陽電池を加熱手段によって加熱する工程が、太陽電池に通電することで行われることを特徴としている。
【0029】
第8発明によれば、第4発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】検査対象としての太陽電池パネルを模式的に示した図で、(a)は平面図、(b)は積層構造を示す分解断面図である。
【図2】1枚の太陽電池セルを受光面から見た平面図である。
【図3】本発明に係る太陽電池の検査装置の全体構成を示す図である。
【図4】図3の本発明に係る太陽電池の検査装置の概略構成を示す図である。
【図5】本発明に係る太陽電池の検査装置の別形態の全体構成を示す図である。
【図6】太陽電池セルのフィンガー断線のEL撮影画像である。
【図7】太陽電池セルの割れのEL撮影画像である。
【図8】太陽電池セルの欠けのEL撮影画像である。
【図9】太陽電池セルのハンダ付け部のサーモ撮影画像である。
【図10】太陽電池セルのハンダ付け不良部のサーモ撮影画像である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<1>太陽電池パネルの構成
まず本実施例の検査装置が扱う検査対象としての太陽電池パネル10について説明する。図1は、検査対象としての太陽電池パネル10の構造を示す図で、(a)は平面図、(b)はラミネート加工する前の断面図である。
【0032】
図1(a)の平面図に示す様に、角型の太陽電池セル18がリード線19により複数個直列に接続されてストリング15を形成している。そして、ストリング15を複数列リード線19により接続し、両端に電極16、17を接続したものが、検査対象としての太陽電池パネル10となる。
【0033】
太陽電池パネル10の成形は以下のようにして行う。まず図1(b)に示すように、下側に配置された透明保護層としてのカバーガラス11上に充填材13を置き、その上に複数個直列に接続されたストリング15を置き、その上から充填材14を配置し、最後に不透明な素材からなる裏面材12を載せている。充填材13、14としては、EVA樹脂(エチレンビニルアセテート)を使用している。この後、上記のように構成部材を積層しラミネート装置などにより、真空の加熱状態下で圧力を加え、EVA樹脂を架橋反応させてラミネート加工する。
【0034】
本発明の検査対象の太陽電池としては、上記の太陽電池パネル10に限定されず、ラミネート加工前の太陽電池セル18が1枚だけのもの、太陽電池セル18を複数枚直線的につないだストリング15の状態のもの、更にストリングを複数列接続したマトリックスも含まれる。また、ラミネート加工前後のどちらの状態でも検査対象とすることができる。
【0035】
被測定物が図1のラミネート加工後の太陽電池パネルの場合は、本検査装置は以下の様に設置して使用する。すなわちラミネート装置の後工程に本検査装置を設置してラミネート加工後の太陽電池パネルを検査する。またはライン外に本検査装置を設置する場合は、ラミネート加工後の太陽電池パネルを本検査装置に運び込み投入し検査する形態で使用することも可能である。
【0036】
被測定物がラミネート加工前の太陽電池セル18が1枚だけのもの、太陽電池セル18を複数枚直線的につないだストリング15の状態のものは、本検査装置は以下の様に設置して使用する。すなわち太陽電池セルのストリンガー装置(ハンダ接続装置)の後工程に本検査装置を設置してハンダ接続後の被測定物を検査する。またはライン外に本検査装置を設置する場合は、ハンダ接続後の被測定物を本検査装置に運び込んで投入し検査する形態で使用することも可能である。
【0037】
図2は、1枚の太陽電池セル18を受光面から見た平面図である。太陽電池セル18は薄板状のシリコン半導体の表面に電気を取り出すための電極であるバスバー18aが印刷されている。加えてシリコン半導体の表面には効率よく電流をバスバーに集めるためにバスバーと垂直方向にフィンガー18bと呼ばれる細い導体が印刷されている。
【0038】
図2に示す本発明の実施例では、検査対象として、一般にシリコンの多結晶型と呼ばれる太陽電池を例示している。しかし、本発明の検査装置および検査方法は、多結晶型に限定されず、単結晶型の太陽電池にも適用可能である。
【0039】
<2>太陽電池の検査装置の説明
次に、本発明の太陽電池の検査装置100の構成を説明する。図3は、本発明に係る太陽電池の検査装置の全体構成を示す図である。図3に示すように本発明の太陽電池の検査装置は、第1の検査装置30と、および第2の検査装置40と、全体制御部50を備えている。全体制御部50は、図3には図示していないが、装置内の適宜の場所に収納されている。図3の検査装置では、被測定物の太陽電池パネル10に対して第1の検査装置30上側にあり、第2の検査装置40は下側に配置している。従って被測定物の太陽電池パネル10は、図1の形態の被測定物をカバーガラス11が上側になるように検査装置に載置する。尚本検査装置は、その内部に
図4には、図3の本発明に係る太陽電池の検査装置の概略構成を示す図である。以下図4により、本発明の検査装置の構成を説明する。
【0040】
第1の検査装置30は、EL(エレクトロルミネッセンス)発光を用いた検査装置である。この検査装置は、検査対象となる太陽電池パネル10に電流を通電する電源手段31と、電源手段により通電された太陽電池セルからのELの発光光を撮影する発光光撮影手段32と、発光光撮影手段32で撮影した太陽電池パネル10の撮影画像を解析するEL像解析手段33と、を有する。
【0041】
第2の検査装置40は、サーモグラフを利用した検査装置である。この検査装置は、検査対象となる太陽電池パネル10に通電して太陽電池セル内の欠陥部分を加熱する加熱手段41と、加熱手段41により加熱された前記太陽電池パネル10の温度分布を撮影するサーモ像撮影手段42と、サーモ像撮影手段42で撮影した太陽電池パネル10の撮影画像を解析するサーモ像解析手段43と、を有する。加熱手段41としては、第2の検査装置30に使用される電源手段31を共用してもよい。
【0042】
全体制御部50は、第1と第2の検査装置30、40を、1つの検査装置として統一した動作をさせるものである。これは、パソコンを含み、太陽電池セル18の間隔、ストリング/マトリックスの場合の太陽電池セル18の数(縦、横)、太陽電池セル18の寸法情報(バスバー18aの位置と本数、角の面取り、フィンガー18bの配置、ディップ位置など)の設定情報等が入力され、インストールされたプログラムによって、第1と第2の検査装置30、40を駆動する。また、第1の検査装置30の発光光撮影手段32と第2の検査装置40のサーモ像撮影手段42は、それぞれ移移動装置を備え、被測定物の太陽電池セルそれぞれに対して移動測定する構成も可能である。全体制御部50は、この移動装置の制御も行うことができる。
【0043】
図3および図4の構成の検査装置100においては、発光光撮影手段32は、被測定物の太陽電池パネルとともに暗室内に配置している。EL発光の発光光撮影手段32とサーモ像撮影手段42は、各1組が設けられているので移動手段33,34により移動させて検査測定を行う。従って検査装置のスペースは大きくなるが、EL発光の発光光撮影手段32とサーモ像撮影手段42を同時に並行して動作させることが可能であり検査時間を短縮することができる。更に検査測定時間を短縮するために、移動手段33,34を設けないで、EL発光の発光光撮影手段32とサーモ像撮影手段42を複数個設ける構成とすることも可能である。
【0044】
また、第1の検査装置30と第2の検査装置40を、被測定物の太陽電池パネル10に対して第2の検査装置40を上側に配置し、第1の検査装置30を下側に配置する構成としても良い。この場合、被測定物の太陽電池パネル10は、被測定物のカバーガラス11を下側になるように検査装置に載置する。
【0045】
本発明の検査装置は、図5のような構成とすることもできる。図5においては、EL発光の発光光撮影手段32とサーモ像撮影手段42は、被測定物の太陽電池モジューとともに暗室内に配置している。EL発光の発光光撮影手段32とサーモ像撮影手段42は共に被測定物の太陽電池モジュールよりも下に設置している。また被測定物である太陽電池モジュールを暗室の上部に載置し、遮光手段60により光が侵入しないように構成することもできる。これにより検査装置は、省スペース化され、構造も簡単になり安価な構成となる。また図5の構成においてもEL発光の発光光撮影手段32とサーモ像撮影手段42は各1組に移動手段を設け移動させ検査測定を行う。更に検査測定時間を短縮するために、移動手段を設けないで、EL発光の発光光撮影手段32とサーモ像撮影手段42を複数個設ける構成とすることも可能である。
【0046】
<3>EL発光法による検査の概要
第1の検査装置30による検査方法は、上記の特許文献5に詳細が記載されているので、ここでは簡単に説明する。検査対象としての太陽電池パネル10に、順方向に所定電流を供給すると、太陽電池パネル10内の太陽電池セル18は、EL(エレクトロルミネッセンス)光源となり、発光する。しかし、欠陥部分では発光しないことから、発光光撮影手段32でこの発光状態を撮影することで各太陽電池セル18の欠陥を知ることができる。発光光撮影手段32で撮影するEL発光による発光光量は、微弱であり、暗室内で発光させて微弱な光を撮影している。このため、発光光撮影手段32としては微量感度の良いカメラを用いる。このEL発光法により、欠け、割れ、フィンガー断線などが検知され、それぞれの位置を特定することができる。
【0047】
<4>サーモグラフによる検査の概要
サーモグラフを利用した検査は、特許文献4に記載されているので、簡単に説明する。太陽電池の電極層の間に電圧が印加されると、通常、欠陥を含む部分では、周囲領域に比べて電場がより不均一になり、より大きくなる。局部的に不均一で大きな電場により、装置のこの部分の電極層間には、周囲部分に比べてより多くの電流が流れる。電流の流れは、熱発生につながるため、IRサーモグラフィ、液晶顕微鏡技術、蛍光ミクロサーマル結像技術またはシュリーレン結像技術のようなサーモグラフィック技術を用いて、欠陥を含む部分を局部的な熱源として同定することができる。本願では、サーモ像撮影手段42として赤外線カメラを使用し、太陽電池パネル10の裏面材12側(下側)から撮影している。サーモ像撮影手段42の画像から、欠陥部分と推定される位置を特定することができる。
【0048】
<5>本発明による検査方法
本発明の検査方法は、太陽電池セル18をストリンガー装置でハンダ接続した後のストイグを検査することを目的としている。このためストリンガー装置にてハンダ接続した後、セルにはハンダ接続の際の加熱及び押圧により割れやフィンガー断線が発生する。このようなセルの欠陥を第1の検査装置でEL発光法により検査する。一方ストリンガー装置にてハンダ接続した後、セルとリード線の接続が不十分なで箇所(セルに対してリード線が浮き上がっている部分)がある。このようなハンダ接続が不十分な箇所は接触抵抗が大きくなり通電すると発熱する傾向がある。このようなハンダ接続の不良箇所をサーモグラフ法により検査する。本発明の検査方法では、被測定物を本発明の検査装置に搬入し、第1の検査装置の発光光撮影手段32と第2の検査装置のサーモ像撮影手段42により太陽電池セルの欠陥部かたはハンダ付け不良部を撮影検査する。その撮影結果をもとに欠陥部またはハンダ付け不良部分である判断する。
【0049】
図6から図8は、第1の検査装置30を用いてハンダ接続が完了した状態の太陽電池セル18をEL発光させた状態を、発光光撮影手段32で表側から撮影した画像である。図6の画像中では、代表的な欠陥であるフィンガー断線がフィンガーに沿って平行に矩形状の暗部として発現する。その他割れや欠けも図7や図8のように発現する。これらのセルの欠陥については、特許文献5にその定量評価法が記載されているので良品か不良品かを判断する方法の説明は省略する。
【0050】
サーモ像撮影手段42は、太陽電池セル18に対して透明カバーガラス11側に配置しても良いし、裏面材12側に配置しても良い。例えば、室温から加熱されたセルの最高温度までの温度範囲について、低温部を青色から高温部を赤色で表示する条件にすると、温度の高い部分は、赤色や黄色で画像表示され、太陽電池セル18とリード線19との接合部が発熱の大きな部分である。図9は、太陽電池セルのハンダ付けがほぼ正常に行われ比較的高温な部分(図中斜線部)がハンダ付けされたリード線に沿って均一な幅(図中の斜線部)で存在する。一方ハンダ付け不良部が有るときは、サーモ像撮影手段42による撮影画像は、図10のように高温部の形が「ひょうたん形」(図中の斜線部)を呈する。特に表面の負極配線の隣のセルに接合された部分の発熱が認められるのが特徴である。太陽電池セルとリード線が接続された状態を示す側面図を参照しながら説明する。リード線が隣接する太陽電池セルの下側に潜り込む側はリード線に対して高温部(図中斜線部)の幅が広く、リード線に沿ってセル端に行くに従って高温部の幅は狭くなる傾向にある。
このようなサーモ撮影手段により得られた画像の傾向に基づき太陽電池セルのハンダ付け不良部分を特定し、配線条件を最適化することで均一発熱にする。これにより配線状態を判定することが可能となる。
【0051】
以上のように、本発明では、EL検査機能とサーモグラフィ検査機能を使用し、太陽電池セルをハンダ接続した後のセルの欠陥やハンダ接続の不良箇所を特定できる。このような欠陥やハンダ付け不良部を太陽電池セルのストリングの状態で確認することができれば、このような不良品は後工程に流出することが無い。また不良品が発生した場合、ストリンガー装置の製造条件を修正し再度の本発明の検査装置にて太陽電池セルの欠陥及びハンダ接続部不良が無いことを確認することが可能である。
【0052】
また、本発明の検査装置を図1に示すようなラミネート加工が完了した製品を検査することにも使用できる。ラミネート工程などを経た製品内の太陽電池セルの割れやハン接続不良部を確認するために使用できることは言うまでもない。更に完成した太陽電池モジュールを実際に長期間屋外で使用して発電効率低下などのトラブルが発生した場合、製造工程における問題点の把握や確認にも使用可能である。すなわち、当該太陽電池モジュールを本発明の検査装置により、太陽電池の欠陥やハンダ接続部不良箇所の発現状態を確認し、その結果に基づき太陽電池モジュールの製造条件の見直をすることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 太陽電池パネル
11 カバーガラス(透明保護層)
12 裏面材
13、14 充填材
15 ストリング
18 太陽電池セル
100 本発明の検査装置
30 第1の検査装置
31 電源手段
32 発光光撮影手段
33 EL像解析手段
34、44 移動手段
40 第2の検査装置
41 加熱手段
42 サーモ像撮影手段
43 サーモ像解析手段
50 全体制御部
60 遮光手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の太陽電池セルを有する太陽電池の良否を判定する検査装置であって、第1の
検査装置と第2の検査装置とを有し、
前記第1の検査装置が、
検査対象となる太陽電池に電流を通電する電源手段と、
前記電源手段により通電された前記太陽電池からの発光光を撮影する発光光撮影手段と、
前記発光光撮影手段で撮影した太陽電池の撮影画像を解析するEL像解析手段と、を有し、
前記第2の検査装置が、
検査対象となる太陽電池を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により加熱された前記太陽電池の温度を測定するサーモ像撮影手段と、
前記サーモ像撮影手段で撮影した太陽電池の撮影画像を解析するサーモ像解析手段と、を有すること
を特徴とする太陽電池の検査装置。
【請求項2】
前記第1の検査装置の発光光撮影手段が太陽電池の表面側に配置され、前記第2の検査装置のサーモ像撮影手段が前記太陽電池の表面側または裏面側のいずれかに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項3】
前記太陽電池が、複数の太陽電池セルを電気的に接続して平面的に配置し、封止樹脂を介して透明保護層とバックシートで表裏を挟んだラミネート構造の太陽電池パネルであることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
【請求項4】
前記第2の検査装置の加熱手段が、検査対象となる太陽電池に電流を通電するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
【請求項5】
電源手段によって検査対象となる太陽電池に電流を通電する工程と、
前記通電によって前記太陽電池を発光させ、太陽電池セル毎の発光光を発光光撮影手段によって撮影する工程と、
前記発光光撮影手段で撮影した太陽電池の撮影画像からEL像解析手段によって欠陥位置と推定される箇所を特定する工程と、
太陽電池を加熱手段によって加熱する工程と、
前記加熱によって前記太陽電池の温度分布をサーモ像撮影手段によって撮影する工程と、
前記サーモ像撮影手段で撮影した太陽電池の撮影画像からサーモ像解析手段によって欠陥位置と推定される箇所を特定する工程と、
前記EL像解析手段により太陽電池の欠陥の種類と位置を特定し。前記サーモ像解析手段によって太陽電池セルのハンダ接続の不良箇所を特定する工程と、
を有することを特徴とする太陽電池の検査方法。
【請求項6】
前記発光光撮影手段が太陽電池の表面側から撮影し、前記サーモ像撮影手段が前記太陽電池の表面側または裏面側のいずれかから撮影することを特徴とする請求項5に記載の太陽電池の検査方法。
【請求項7】
前記太陽電池が、複数の太陽電池セルを電気的に接続して平面的に配置し、封止樹脂を介して透明保護層とバックシートで表裏を挟んだラミネート構造の太陽電池パネルであることを特徴とする請求項5又は6に記載の太陽電池の検査方法。
【請求項8】
前記太陽電池を加熱手段によって加熱する工程が、太陽電池に通電することで行われることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の太陽電池の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−98411(P2013−98411A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241058(P2011−241058)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(709002303)日清紡メカトロニクス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】