説明

太陽電池の製造方法、及び太陽電池

【課題】トップセルへ反射する光を増やすことができ、光の利用効率を高め、変換効率の高い太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池の製造方法は、透明導電膜付き基板を用い、pin型の光電変換ユニットを、透明導電膜に順に重ねて設けてなり、透明導電膜が、ZnOを基本構成元素とし、光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなり、透明導電膜と、光電変換ユニットを構成するp層との間に、TiOからなる特性制御層が配されている太陽電池の製造方法であって、透明基板上に、透明導電膜を成膜するステップAと、透明導電膜上に、特性制御層を形成するステップBと、特性制御層上に、光電変換ユニットのp層、i層及びn層を順に形成するステップCと、を少なくとも順に備え、ステップBにおいて、加熱成膜することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光入射側の電力取り出し電極として機能する上部電極が、ZnOを基本構成元素とする透明導電膜を備えた太陽電池の製造方法、及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光に含まれる光子というエネルギー粒子がi層に当たると光起電力効果により、電子と正孔(hole)が発生し、電子はn層、正孔はp層に向かって移動する。この光起電力効果により発生した電子を上部電極と裏面電極により取り出して、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子が太陽電池である。
【0003】
図11は、アモルファスシリコン太陽電池の概略断面図である。太陽電池100は、表面を構成するガラス基板101と、ガラス基板101上に設けられた酸化亜鉛系の透明導電膜からなる上部電極103と、アモルファスシリコンで構成されたトップセル105と、微結晶シリコンで構成されたボトムセル109と、透明導電膜からなるバッファー層110と、金属膜からなる裏面電極111とが積層されている。
【0004】
トップセル105は、p層(105p)、i層(105i)、n層(105n)の3層構造で構成されており、このうちi層(105i)がアモルファスシリコンで形成されている。また、ボトムセル109もトップセル105と同様にp層(109p)、i層(109i)、n層(109n)の3層構造で構成されており、このうちi層(109i)が微結晶シリコンで構成されている。
【0005】
上述した太陽電池100において、ガラス基板101側から入射した太陽光は、上部電極103、トップセル105(p-i-n層)、バッファー層110を通って、裏面電極111で反射される。太陽電池には光エネルギーの変換効率を向上させるために、裏面電極111で太陽光を反射させたり、上部電極101には入射した太陽光の光路を伸ばすプリズム効果と光の閉じ込め効果を目的としたテクスチャーと呼ばれる構造を設けるなどの工夫がなされている。バッファー層110は裏面電極111に用いられている金属膜の拡散防止などを目的としている。
【0006】
太陽電池のデバイス構造により、光起電力効果に使用する波長帯域は異なるが、いずれにしても、上部電極を構成する透明導電膜には、i層で吸収するための光を透過する性質と光起電力で発生した電子を取り出す電気伝導性が要求され、SnOにフッ素を不純物として添加したFTOやZnO系酸化物半導体薄膜が用いられている。バッファー層においても、i層で吸収するために裏面電極で反射する光及び裏面電極で反射された光を透過する性質と、裏面電極に正孔を移動するための電気伝導性が要求される。
【0007】
太陽電池に用いられる透明導電膜に要求される特性は大きく分けて、導電性、光学特性、テクスチャー構造の3要素である。1つめの導電性においては、発電した電気を取り出すため低い電気抵抗が要求される。一般的に太陽電池用透明導電膜に使用されているFTOは、CVDにより作成される透明導電膜でSnOにFを添加することにより、FがOを置換し導電性を得ている。また、ポストITOとして注目の高いZnO系材料はスパッタによる成膜が可能で、酸素欠損とAlやGaを含む材料をZnOに添加することにより導電性を得ている。
【0008】
2つめに、太陽電池用透明導電膜は主に入射光側で使用されるため、発電層で吸収される波長帯域を透過する光学特性が要求される。
3つめに、太陽光を効率的に発電層で吸収するために光を散乱させるテクスチャー構造が必要となり、通常、スパッタプロセスで作成したZnO系薄膜は平坦な表面状態となるため、ウェットエッチング等によるテクスチャー形成処理が必要となる。
【0009】
このようなテクスチャーが形成された透明導電膜が、透明基板上に配されてなる、透明導電膜付き基板が、各種ガラスメーカー等により開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0010】
ところで、このようなa−Si/μc−Siタンデム構造の太陽電池の場合、電流が直列構造になるため、モジュール全体の電流は低いほうの電流に律速されてしまう。
トップセルのJQE<ボトムセルのJQEである場合、トップセルへ反射する光を増やして効率を改善することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−140930号公報
【特許文献2】特開2002−1583665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した従来の実情に鑑みて考案されたものであり、トップセルへ反射する光を増やすことができ、光の利用効率を高め、変換効率の高い太陽電池の製造方法を提供することを第一の目的とする。
また、本発明は、トップセルへ反射する光を増やすことができ、光の利用効率を高め、変換効率の高い太陽電池を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に記載の太陽電池の製造方法は、透明導電膜付き基板を用い、p型半導体層(p層)、実質的に真性なi型半導体層(i層)、n型半導体層(n層)を積層したpin型の光電変換ユニットを、前記透明導電膜に順に重ねて設けてなり、前記透明導電膜が、ZnOを基本構成元素とし、前記光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなり、前記透明導電膜と、前記光電変換ユニットを構成する前記p層との間に、TiOからなる特性制御層が配されている太陽電池の製造方法であって、前記透明基板上に、前記透明導電膜を成膜するステップAと、前記透明導電膜上に、前記特性制御層を形成するステップBと、前記特性制御層上に、前記光電変換ユニットのp層、i層及びn層を順に形成するステップCと、を少なくとも順に備え、前記ステップBにおいて、加熱成膜することを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の太陽電池の製造方法は、請求項1において、前記ステップAにおいて、所望のプロセスガス雰囲気中にて、前記透明導電膜の母材をなすターゲットにスパッタ電圧を印加しつつ、該ターゲットの表面に水平磁界を発生させてスパッタを行い、前記透明基板上に前記透明導電膜を成膜し、前記母材として、ZnOを主成分とした材料を用いること、を特徴とする。
本発明の請求項3に記載の太陽電池の製造方法は、請求項2において、前記ステップAにおいて、前記透明導電膜として、酸化亜鉛系材料Al添加ZnO(AZO)からなる第一透明導電膜を形成すること、を特徴とする。
本発明の請求項4に記載の太陽電池の製造方法は、請求項3において、前記酸化亜鉛系材料として、Al添加ZnO(AZO)を用いること、を特徴とする。
本発明の請求項5に記載の太陽電池の製造方法は、請求項1乃至4のいずれか一項において、前記ステップAと前記ステップBとの間に、前記透明導電膜に対してウェットエッチングを行い、該透明導電膜表面に微細テクスチャーを形成するステップDを、さらに備えること、を特徴とする。
本発明の請求項6に記載の太陽電池の製造方法は、請求項1乃至5のいずれか一項において、前記ステップBとステップCの間に、前記特性制御層上に、酸化亜鉛系材料Ga添加ZnO(GZO)からなる第二透明導電膜を形成するステップEと、前記第二透明導電膜上に、結晶質のシリコン系薄膜からなるp層を形成するステップFと、をさらに備えること、を特徴とする。
本発明の請求項7に記載の太陽電池の製造方法は、請求項6において、前記酸化亜鉛系材料として、Ga添加ZnO(GZO)を用いること、を特徴とする。
本発明の請求項8に記載の太陽電池は、透明導電膜付き基板を用い、p型半導体層(p層)、実質的に真性なi型半導体層(i層)、n型半導体層(n層)を積層したpin型の光電変換ユニットを、前記透明導電膜に順に重ねて設けてなる太陽電池であって、前記透明導電膜が、ZnOを基本構成元素とし、前記光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなり、前記透明導電膜と、前記光電変換ユニットを構成する前記p層との間に、TiOからなる特性制御層が配されていること、を特徴とする。
本発明の請求項9に記載の太陽電池は、請求項8において、前記透明導電膜が、酸化亜鉛系材料からなる第一透明導電膜であること、を特徴とする。
本発明の請求項10に記載の太陽電池は、請求項9において、前記第一透明導電膜がAl添加ZnO(AZO)であること、を特徴とする。
本発明の請求項11に記載の太陽電池は、請求項8乃至10のいずれか一項において、前記特性制御層と、前記光電変換ユニットを構成する前記p層との間に、酸化亜鉛系材料からなる第二透明導電膜が配され、さらに、前記第二透明導電膜と前記p層との間に、結晶質のシリコン系薄膜からなるp層が中間層として配されていること、を特徴とする。
本発明の請求項12に記載の太陽電池は、請求項11において、前記第二透明導電膜がGa添加ZnO(GZO)であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の太陽電池の製造方法では、前記透明導電膜と、前記光電変換ユニットを構成する前記p層との間に、TiOからなる特性制御層が配されており、前記透明導電膜上に、前記特性制御層を形成するステップBにおいて、加熱成膜しているので、得られた太陽電池では、特性制御層の中間屈折率効果によりトップセルへ反射する光を増やすことができる。その結果、本発明では、光の利用効率を高め、変換効率の高い太陽電池の製造方法を提供することができる。
また、本発明の太陽電池では、前記透明導電膜と、前記光電変換ユニットを構成する前記p層との間に、TiOからなる特性制御層が配されているので、特性制御層の中間屈折率効果によりトップセルへ反射する光を増やすことができる。その結果、本発明では、光の利用効率を高め、変換効率の高い太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る太陽電池の一例(第一実施形態)を示す断面図。
【図2】本発明の太陽電池の製造方法に好適な成膜装置を示す概略構成図。
【図3】図2の成膜装置において成膜室の主要部を示す断面図。
【図4】成膜装置の別な一例を示す断面図。
【図5】連続成膜装置の一例を示す模式図。
【図6】本発明に係る太陽電池の一例(第二実施形態)を示す断面図。
【図7】実施例1において、特性制御層を成膜する前の表面SEM像を示す図。
【図8】実施例1において、特性制御層を成膜する前の断面SEM像を示す図。
【図9】実施例1において、特性制御層を成膜した後の表面SEM像を示す図。
【図10】実施例1において、特性制御層を成膜した後の断面SEM像を示す図。
【図11】従来の太陽電池の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る太陽電池及びその製造方法の最良の形態について、図面に基づき説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0017】
(太陽電池)
<第一実施形態>
本実施形態では、本発明に係る太陽電池1の一実施形態を、第一光電変換ユニット6(トップセル)としてアモルファスシリコン型の太陽電池、第二光電変換ユニット7(ボトムセル)として微結晶シリコン型の太陽電池として積層したタンデム構造の太陽電池の場合を例に図面に基づいて説明する。
まず、本発明の太陽電池について、図1に基づいて説明する。図1は太陽電池1A(1)の構成の一例を示す断面図である。
太陽電池1A(1)は、表面を構成するガラス基板等からなる絶縁性の透明基板2と、透明基板2上に設けられた酸化亜鉛系の透明導電膜4からなる上部電極3と、アモルファスシリコンで構成された第一光電変換ユニット6と、微結晶シリコンで構成された第二光電変換ユニット7と、透明導電膜からなるバッファー層11と、金属膜からなる裏面電極12とが積層されている。
【0018】
この透明導電膜(第一透明導電膜)4は、酸化亜鉛系材料[たとえば、Al添加ZnO(AZO)、Ga添加ZnO(GZO)]からなり、後述する製造方法により成膜されていることで所望の荒さの微細テクスチャーを有するものとなる。これにより、本発明の太陽電池1は、テクスチャー構造によるプリズム効果と光の閉じ込め効果を十分に有し、変換効率の高いものとなる。
後述する製造方法においては、透明導電膜(第一透明導電膜)4をAl添加ZnO(AZO)とした一例を述べるが、これに代えてGa添加ZnO(GZO)を用いても、本発明の作用・効果は得られる。
【0019】
また、太陽電池1は、a−Si/微結晶Siタンデム型太陽電池となっている。このようなタンデム構造の太陽電池1では、短波長光を第一光電変換ユニット6で、長波長光を第二光電変換ユニット7でそれぞれ吸収することで発電効率の向上を図ることができる。なお、上部電極3の膜厚は、2000Å〜10000Åの膜厚で形成されている。
【0020】
第一光電変換ユニット6は、p層(6p)、i層(6i)、n層(6n)の3層構造で構成されており、これらp層(6p)、i層(6i)及びn層(6n)はアモルファスシリコンで形成されている。また、第二光電変換ユニット7も、第一光電変換ユニット6と同様にp層(7p)、i層(7i)、n層(7n)の3層構造で構成されており、これらp層(7p)、i層(7i)及びn層(7n)は微結晶シリコンで構成されている。
【0021】
このような構成の太陽電池1A(1)は、太陽光に含まれる光子というエネルギー粒子がi層に当たると光起電力効果により、電子と正孔(hole)が発生し、電子はn層、正孔はp層に向かって移動する。この光起電力効果により発生した電子を上部電極3と裏面電極63により取り出して、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0022】
また、透明基板2側から入射した太陽光は、各層を通過して裏面電極12で反射される。太陽電池1には光エネルギーの変換効率を向上させるために、上部電極3に入射した太陽光の光路を伸ばすプリズム効果と光の閉じ込め効果を目的としたテクスチャー構造を採用している。
【0023】
そして特に本発明の太陽電池1A(1)は、透明導電膜4と、光電変換ユニット(第一光電変換ユニット6)を構成するp層6iとの間に、TiOからなる特性制御層5が配されていること、を特徴とする。
本発明の太陽電池1A(1)では、透明導電膜4と、第一光電変換ユニット6を構成するp層6pとの間に、TiOからなる特性制御層5が配されているので、特性制御層5の中間屈折率効果によりトップセル(第一光電変換ユニット6)へ反射する光を増やすことができる。その結果、本発明の太陽電池1A(1)は、光の利用効率を高めることができ、変換効率の高いものとなる。
【0024】
特性制御層5の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば5〜60nmの範囲であることが好ましい。例えば300Åとする。特性制御層5の厚さが5〜60nmの範囲において、中間屈折率効果が増大し、光電変換効率が増大する効果が認められる。
後述するように、この特性制御層5は、例えばスパッタ法により成膜されるが、このとき加熱成膜される。加熱成膜することで、TiOの結晶化が促進される。これにより、太陽電池1A(1)の光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0025】
(太陽電池の製造方法)
次に、上述した太陽電池1A(1)の製造方法について説明する。
本発明の太陽電池の製造方法は、前記透明基板2上に、前記透明導電膜4を成膜するステップAと、前記透明導電膜4上に、前記特性制御層5を形成するステップBと、前記特性制御層5上に、前記光電変換ユニットのp層、i層及びn層を順に形成するステップCと、を少なくとも順に備え、前記ステップBにおいて、加熱成膜することを特徴とする。
【0026】
本発明の太陽電池の製造方法では、透明導電膜4上に、特性制御層5を形成するステップBにおいて、加熱成膜しているので、得られた太陽電池1A(1)では、特性制御層5の中間屈折率効果によりトップセル(第一光電変換ユニット6)へ反射する光を増やすことができる。その結果、本発明では、光の利用効率を高め、変換効率の高い太陽電池1A(1)を作製することが可能となる。
【0027】
(1)前記透明基板2上に、前記透明導電膜4を成膜する(ステップA)。本実施形態では、前記透明導電膜4として、Al添加ZnO(AZO)からなる第一透明導電膜を形成する。
まず、本発明の太陽電池の製造方法において、上部電極3をなす酸化亜鉛系の透明導電膜4を形成するのに好適なスパッタ装置(成膜装置)の一例を説明する。
(スパッタ装置1)
図2は、本発明の太陽電池1の製造方法に用いられるスパッタ装置(成膜装置)の一例を示す概略構成図、図3は同スパッタ装置の成膜室の主要部を示す断面図である。スパッタ装置20は、インターバック式のスパッタ装置であり、例えば、白板ガラス基板(図示せず)等の基板を搬入/搬出する仕込み/取出し室22と、基板上に酸化亜鉛系の透明導電膜4を成膜する成膜室(真空容器)23とを備えている。
【0028】
仕込み/取出し室22には、この室内を粗真空引きするロータリーポンプ等の粗引き排気手段24が設けられ、この室内には、基板を保持・搬送するための基板トレイ25が移動可能に配置されている。
【0029】
一方、成膜室23の一方の側面23aには、基板26を加熱するヒータ31が縦型に設けられ、他方の側面23bには、酸化亜鉛系材料のターゲット27を保持し所望のスパッタ電圧を印加するスパッタカソード機構(ターゲット保持手段)32が縦型に設けられ、さらに、この室内を高真空引きするターボ分子ポンプ等の高真空排気手段33、ターゲット7にスパッタ電圧を印加する電源34、この室内にガスを導入するガス導入手段35が設けられている。
【0030】
スパッタカソード機構32は、板状の金属プレートからなるもので、ターゲット7を口ウ材等でボンディング(固定)により固定するためのものである。
電源34は、ターゲット27に直流電圧に高周波電圧が重畳されたスパッタ電圧を印加するためのもので、直流電源と高周波電源(図示略)とを備えている。
【0031】
ガス導入手段35は、Ar等のスパッタガスを導入するスパッタガス導入手段35aと、水素ガスを導入する水素ガス導入手段35bと、酸素ガスを導入する酸素ガス導入手段35cと、水蒸気を導入する水蒸気導入手段35dとを備えている。
【0032】
なお、このガス導入手段35では、水素ガス導入手段35b〜水蒸気導入手段35dについては、必要に応じて選択使用すればよく、例えば、水素ガス導入手段35bと酸素ガス導入手段35c、水素ガス導入手段35bと水蒸気導入手段35d、のように2つの手段により構成してもよい。
【0033】
(スパッタ装置2)
図4は、本発明の太陽電池の製造方法に用いられる別なスパッタ装置の一例、即ちインターバック式のマグネトロンスパッタ装置の成膜室の主要部を示す断面図である。図4に示すマグネトロンスパッタ装置40が、図2、3に示すスパッタ装置20と異なる点は、成膜室23の―方の側面23aに酸化亜鉛系材料のターゲット27を保持し所望の磁界を発生するスパッタカソード機構(ターゲット保持手段)42を縦型に設けた点てある。
【0034】
スパッタカソード機構42は、ターゲット27をロウ材等でボンディング(固定)した背面プレート43と、背面プレート43の裏面に沿って配置された磁気回路44とを備えている。この磁気回路44は、ターゲット27の表面に水平磁界を発生させるもので、複数の磁気回路ユニット(図4では2つ)44a、44bがブラケット45により連結されて一体化され、磁気回路ユニット44a、44bそれぞれは、背面プレート43側の表面の極性が相互に異なる第1磁石46および第2磁石47とこれらを装着するヨーク48とを備えている。
【0035】
この磁気回路44では、背面プレート43側の極性が異なる第1磁石46および第2磁石47により、磁力線49で表される磁界が発生する。これにより、第1磁石46と第2磁石47との間におけるターゲット7の表面においては、垂直磁界が0(水平磁界が最大)となる位置50が発生する。この位置50に高密度プラズマが生成することで、成膜速度を向上しうるようになっている。
【0036】
次に、本発明の太陽電池の製造方法の一例として、図2、3に示すスパッタ装置1を用いて、太陽電池1の上部電極3をなす酸化亜鉛系の透明導電膜4を透明基板2上に成膜する方法について例示する。
【0037】
まず、ターゲット27をスパッタカソード機構32にロウ材等でボンディングして固定する。ここで、ターゲット材としては、酸化亜鉛系材料、例えば、アルミニウム(Al)を0.1〜10質量%添加したアルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、ガリウム(Ga)を0.1〜10質量%添加したガリウム添加酸化亜鉛(GZO)等が挙げられ、中でも、比抵抗の低い薄膜を成膜することができる点て、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)が好ましい。
【0038】
次いで、例えばガラスからなる太陽電池1の基板26(透明基板2)を仕込み/取出し室22の基板トレイ25に収納した状態で、仕込み/取出し室22及び成膜室23を粗引き排気手段4で粗真空引きし、仕込み/取出し室22及び成膜室23が所定の真空度、例えば0.27Pa(2.0mTorr)となった後に、基板26を仕込み/取出し室22から成膜室23に搬入し、この基板26を、設定がオフになった状態のヒータ31の前に配置し、この基板26をターゲット27に対向させ、この基板26をヒータ31により加熱して、100℃〜600℃の温度範囲内とする。
【0039】
次いで、成膜室23を高真空排気手段33で高真空引きし、成膜室23が所定の高真空度、例えば2.7×10−4Pa(2.0×10−3mTorr)となった後に、成膜室23に、スパッタガス導入手段35によりAr等のスパッタガスを導入し、成膜室23内を所定の圧力(スパッタ圧力)とする。
【0040】
次いで、電源34によりターゲット27にスパッタ電圧、例えば、直流電圧に高周波電圧を重畳したスパッタ電圧を印加する。スパッタ電圧印加により、基板26上にプラズマが発生し、このプラズマにより励起されたAr等のスパッタガスのイオンがターゲット27に衝突し、このターゲット7からアルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)等の酸化亜鉛系材料を構成する原子を飛び出させ、基板26上に酸化亜鉛系材料からなる透明導電膜4を成膜する。
【0041】
ここで、スパッタ時における成膜圧力と成膜速度との関係について説明する。
ターゲット材料やプロセスガスの種類にも依存するが、マグネトロンスパッタ法で成膜を行う場合、一般的に2mTorrから10mTorrの間の成膜圧力が選択される。成膜圧力が低い場合、プラズマのインピーダンスが高く放電できなかったり、放電できてもプラズマが不安定になる。逆に成膜圧力が高い場合は、プロセスガスとスパッタされたターゲット材料がスキャッタリングすることにより、基板への付着効率(成膜速度)が低下したり、カソード周辺部品にスパッタされたターゲット材料が着膜することで、カソードとアースが短絡したりと生産性が低下する。
以上のようにして基板26上に酸化亜鉛系材料からなる透明導電膜4を成膜した後、この基板26(透明基板2)を成膜室23から仕込み/取出し室2に搬送し、この仕込み/取出し室2の真空を破り、この酸化亜鉛系の透明導電膜4が形成された基板26(透明基板2)を取り出す。
【0042】
(2)前記透明導電膜4に対してウェットエッチングを行い、該透明導電膜4表面に微細テクスチャーを形成する(ステップD)。
次いで、前記透明導電膜4に対してウェットエッチング処理を行う。このとき、ウェットエッチングの各種条件を変えることで、テクスチャーの形状を制御することができる。これにより、透明導電膜4の表面に自由度が高く所望の形状を有する微細テクスチャーが形成される。
【0043】
このようにして、透明基板2上に酸化亜鉛系の透明導電膜4が形成されてなる透明導電膜付き基板10が得られる。この透明導電膜4は、表面に自由度が高く所望の形状を有する微細なテクスチャー構造を有するものとなる。
上述した透明導電膜付き基板10を太陽電池1A(1)に用いることで、入射した太陽光の光路を伸ばすプリズム効果と光の閉じ込め効果を最大限に得ることができ、光電変換効率の高い太陽電池1A(1)を作製することができる。
【0044】
(3)前記透明導電膜4上に、TiOからなる特性制御層5を形成する(ステップB)。特に本発明では、特性制御層5を形成するに際し、加熱成膜することを特徴とする。
成膜時の温度としては特に限定されるものではないが、例えば200〜400℃とすることが好ましい。例えば250℃とする。温度が高すぎると、TiO成膜時の酸素プラズマにより、その下地となる透明導電膜(AZOまたはGZO)4の酸化が促進され、電気特性が劣化するので芳しくない。成膜温度を上記範囲とすることにより、光電変換効率の高い太陽電池1A(1)を作製することができる。
【0045】
次に、このような透明導電膜付き基板10を用いた、タンデム構造の太陽電池1A(1)の製造方法について工程順に説明する。
(4)前記特性制御層5上に、前記光電変換ユニットのp層、i層及びn層を順に形成する(ステップC)。
まず、特性制御層5上に、第一光電変換ユニット6のp型半導体層6p、i型半導体層6i、n型半導体層6nと、第二光電変換ユニット7のp型半導体層7pを各々別々のプラズマCVD反応室内で形成する。すなわち、第一光電変換ユニット6のn型半導体層6n上に、第二光電変換ユニット7を構成するp型半導体層7pが設けられた太陽電池第一中間品が形成される。
【0046】
引き続き、第二光電変換ユニット7のp型半導体層7pを大気中に露呈させた後、大気中に露呈されたp型半導体層7p上に、第二光電変換ユニット7を構成するi型シリコン層(結晶質シリコン層)7i、n型半導体層7nを同一のプラズマCVD反応室内で形成する。すなわち、第一光電変換ユニット6上に、第二光電変換ユニット7が設けられた太陽電池第二中間品が形成される。
【0047】
そして、第二光電変換ユニット7のn型半導体層7n上に、バッファー層11、裏面電極12を形成することにより、図1に示すような太陽電池1A(10)とする。
特に、透明導電膜4と第一光電変換ユニット6のp層6pとの間に、個別の成膜室で特性制御層5、を形成することで、良好な特性を有する太陽電池1A(10)を得ることができる。
【0048】
次に、この太陽電池1A(10)の製造システムを図面に基づいて説明する。
本発明に係る太陽電池1の製造システムは、第一光電変換ユニット6におけるp型半導体層6p、i型シリコン層(非晶質シリコン層)6i、n型半導体層6nと、第二光電変換ユニット7のp型半導体層7pの各層を各々別々に形成するチャンバーと呼ばれる成膜反応室を複数直線状に連結して配置した、いわゆるインライン型の第一成膜装置60と、第二光電変換ユニット7のp層を大気中に露呈させる暴露装置と、第二光電変換ユニット7におけるi型シリコン層(結晶質シリコン層)7i、n型半導体層7n、を同一の成膜反応室内で、複数の基板を同時に処理して形成する、いわゆるバッチ型の第二成膜装置70とを順に配置したものである。
【0049】
この太陽電池の製造システムを図5に示す。
製造システムは、図5に示すように、第一成膜装置60と、第二成膜装置70と、第一成膜装置60で処理した基板を大気に曝した後、第二成膜装置70へ移動する暴露装置80とから構成される。
製造システムにおける第一成膜装置60は、最初に基板を搬入し減圧雰囲気下とする仕込(L:Lord)室61が配置されている。なお、L室の後段に、プロセスに応じて、基板温度を一定温度まで加熱する加熱チャンバーを設けても良い。引き続き、透明導電膜4上にTiOからなる特性制御層5を形成する成膜反応室62、第一光電変換ユニット6のp型半導体層6pを形成するp層成膜反応室63、同i型シリコン層(非晶質シリコン層)6iを形成するi層成膜反応室64、同n型半導体層6nを形成するn層成膜反応室65、第二光電変換ユニット7のp型半導体層7pを形成するp層成膜反応室66、が連続して直線状に配置されている。そして最後に、減圧状態を大気雰囲気に戻し基板を搬出する取出(UL:Unlord)室67を配置して構成されている。
この際、図5中A地点において、透明基板2上に透明導電膜4が成膜された透明導電膜付き基板10が準備される。また、図5中B地点において、透明基板2の上に成膜された透明導電膜4上に、特性制御層5、第一光電変換ユニット6のp型半導体層6p、i型シリコン層(非晶質シリコン層)6i、n型半導体層6nと、第二光電変換ユニット7のp型半導体層7pの各層が設けられた太陽電池第一中間品が形成される。
【0050】
また、製造システムにおける第二成膜装置70は、最初に第一成膜装置60で処理された太陽電池第一中間品を搬入して減圧雰囲気下としたり、あるいは減圧下にある基板を大気雰囲気として基板を搬出するための仕込・取出(L/UL)室71が配置されている。引き続き、この仕込・取出(L/UL)室71を介して、第二光電変換ユニット7のp型半導体層7p上に、第二光電変換ユニット7のi型シリコン層(結晶質シリコン層)7i、n型半導体層7n、を同一の反応室内で順次形成する、複数の基板を同時に処理することが可能な成膜反応室72を配置して構成されている。
この際、図5中C地点において、第一光電変換ユニット6上に、第二光電変換ユニット7が設けられた太陽電池第二中間品が形成される。
【0051】
また、図5において、インライン型の第一成膜装置60は、2つの基板が同時に処理されるように示され、i層成膜反応室64は4つの反応室64a,64b,64c,64dによって構成されたものとして示されている。また、図5において、バッチ型の第二成膜装置70は、6つの基板が同時に処理されるように示されている。
【0052】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
なお、以下の説明においては、上述した第一実施形態と異なる部分について主に説明し、第一実施形態と同様の部分については、その説明を省略する。
図6は、本実施形態にかかる太陽電池1B(1)の層構成を示す構造断面図である。
【0053】
この太陽電池1B(10)は、透明基板2と、透明基板2上に設けられた酸化亜鉛系の透明導電膜4からなる上部電極3と、TiOからなる特性制御層5と、アモルファスシリコンで構成された第一光電変換ユニット6と、微結晶シリコンで構成された第二光電変換ユニット7と、透明導電膜からなるバッファー層11と、金属膜からなる裏面電極12とが積層されている。
そして、この太陽電池1B(10)では、前記特性制御層5と、前記光電変換ユニット(第一光電変換ユニット6)を構成する前記p層6pとの間に、酸化亜鉛系材料[たとえば、Ga添加ZnO(GZO)、Al添加ZnO(AZO)]からなる第二透明導電膜13が配され、さらに、前記第二透明導電膜13と前記p層6pとの間に、結晶質のシリコン系薄膜からなるp層が中間層14として配されている。
後述する製造方法においては、第二透明導電膜13をGa添加ZnO(GZO)とした一例を述べるが、これに代えてAl添加ZnO(AZO)を用いても、本発明の作用・効果は得られる。
【0054】
本実施形態の太陽電池1B(1)においても、前記透明導電膜4と、前記第一光電変換ユニット6を構成する前記p層6pとの間に、TiOからなる特性制御層5が配されているので、特性制御層5の中間屈折率効果によりトップセル(第一光電変換ユニット6)へ反射する光を増やすことができる。その結果、太陽電池1B(1)は、光の利用効率を高めることができ、変換効率の高いものとなる。
【0055】
さらに太陽電池1B(10)では、特性制御層5と、第一光電変換ユニット6を構成しアモルファスのシリコン系薄膜からなるp層(6p)との間に、Ga添加ZnO(GZO)からなる第二透明導電膜13が配され、さらに、結晶質のシリコン系薄膜からなるp層を中間層14として形成しているので、透明導電膜4と、アモルファスのシリコン系薄膜からなるp層(6p)との界面における不整合を緩和することができる。これにより、第一光電変換ユニット6の曲線因子(FF)を向上させることができる。このように中間層14を挿入することにより、FFを向上することができ、第一光電変換ユニット6の発電効率を向上することができ、ひいては装置全体としての光電変換効率を向上することが可能である。
【0056】
中間層14の厚さは、例えば5〜10nmの範囲であることが好ましい。例えば50Åとすることができる。中間層14の厚さが5〜10nmの範囲において、曲線因子(FF)と電圧(Voc)が増大し、光電変換効率が増大する効果が認められる。
【0057】
つぎに、このような太陽電池1B(1)の製造方法について説明する。
本発明の太陽電池の製造方法は、前記透明基板2上に、前記透明導電膜4を成膜するステップAと、前記透明導電膜4上に、前記特性制御層5を形成するステップBと、前記特性制御層5上に、Ga添加ZnO(GZO)からなる第二透明導電膜13を形成するステップEと、前記第二透明導電膜13上に、結晶質のシリコン系薄膜からなるp層(中間層14)を形成するステップFと、前記中間層14上に、前記光電変換ユニットのp層、i層及びn層を順に形成するステップCと、を少なくとも順に備え、前記ステップBにおいて、加熱成膜することを特徴とする。
【0058】
本実施形態においても、透明導電膜4上に、特性制御層5を形成するステップBにおいて、加熱成膜しているので、変換効率の高い太陽電池1B(1)を作製することが可能となる。
【0059】
なお、上述した第一及び第二実施形態では、タンデム構造の太陽電池を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、シングル構造の太陽電池や、トリプル構造の多雨用電池についても、本発明は適用可能である。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
図2及び図3に示したような成膜装置(スパッタ装置)を用いて、基板上に透明導電膜を成膜した。
(実施例1)
まず、スパッタカソード機構32に、310mm×1600mmのターゲット27を取り付けた。ターゲット27には、ZnOに不純物としてAlを2質量%添加した材料を用いた。その後、仕込み/取出し室22に白板ガラス基板(基板26)を入れ、粗引き排気手段24で排気後、成膜室23に搬送した。このとき、成膜室23は高真空排気手段33により所定の真空度に保たれている。
【0061】
スパッタガス導入手段35から、プロセスガスとしてArガスと、酸素ガスを導入後、コンダクタンスバルブにより所望のスパッタ圧力(2.0Pa)に調圧後、スパッタカソード機構32にDC電源により8.4kWの電力を印加することにより、スパッタカソード機構32に取り付けたAl添加ZnOターゲットをスパッタした。なお、このときの成膜温度は250℃であった。
これらの作業を一連のフローとして、白板ガラス基板上にAZO透明導電膜を800nmの厚さに形成した。その後、仕込み/取出し室22から基板を取り出した。
透明導電膜を成膜後、20重量%酢酸アンモニウム水溶液を用いて、液温35℃で90秒間のウェットエッチングを行い、透明導電膜の表面にテクスチャーを形成した。
【0062】
さらに、図2及び図3に示したような成膜装置(スパッタ装置)を用いて、透明導電膜上に、TiOからなる特性制御層を成膜した。
まず、スパッタカソード機構32に、310mm×1600mmのターゲット27を取り付けた。ターゲット27には、Tiを用いた。その後、仕込み/取出し室22に白板ガラス基板(基板26)を入れ、粗引き排気手段24で排気後、成膜室23に搬送した。このとき、成膜室23は高真空排気手段33により所定の真空度に保たれている。
【0063】
スパッタガス導入手段35から、プロセスガスとしてArガスと、酸素ガスを導入後、コンダクタンスバルブにより所望のスパッタ圧力(0.67Pa)に調圧後、スパッタカソード機構32にDC電源により8.4kWの電力を印加することにより、スパッタカソード機構32に取り付けたTiターゲットをスパッタした。なお、このときの成膜温度は250℃であった。
これらの作業を一連のフローとして、透明導電膜上にTiからなる特性制御層を30nmの厚さに形成した。その後、仕込み/取出し室22から基板を取り出した。
【0064】
表面に微細テクスチャーが形成された透明導電膜を上部電極として用いて、pin型の光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなる太陽電池を作製した。
【0065】
(実施例2)
実施例1と同様にして、基板上にAZOからなる透明導電膜を成膜した。透明導電膜を成膜後、ウェットエッチングを行い、透明導電膜の表面にテクスチャーを形成した(加熱成膜)。
さらに、透明導電膜上に、TiOからなる特性制御層を成膜した。
前記特性制御層上に、Ga添加ZnO(GZO)からなる第二透明導電膜を成膜した。
この透明導電膜を上部電極として用いて、pin型の光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなる太陽電池を作製した。このとき、前記第二透明導電膜と前記p層との間に、結晶質のシリコン系薄膜からなるp層を中間層として形成した。
【0066】
(比較例1)
実施例1と同様にして、基板上にAZOからなる透明導電膜を成膜した。透明導電膜を成膜後、ウェットエッチングを行い、透明導電膜の表面にテクスチャーを形成した。 この透明導電膜を上部電極として用いて、pin型の光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなる太陽電池を作製した。
【0067】
(比較例2)
実施例1と同様にして、基板上にAZOからなる透明導電膜を成膜した。透明導電膜を成膜後、ウェットエッチングを行い、透明導電膜の表面にテクスチャーを形成した。
この透明導電膜を上部電極として用いて、pin型の光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなる太陽電池を作製した。このとき、前記透明導電膜と前記p層との間に、結晶質のシリコン系薄膜からなるp層を中間層として形成した。
【0068】
(比較例3)
実施例1と同様にして、基板上にAZOからなる透明導電膜を成膜した。透明導電膜を成膜後、ウェットエッチングを行い、透明導電膜の表面にテクスチャーを形成した。
さらに、透明導電膜上に、TiOからなる特性制御層を成膜した。このとき、成膜時に加熱しなかった。
前記特性制御層上に、Ga添加ZnO(GZO)からなる第二透明導電膜を成膜した。
この透明導電膜を上部電極として用いて、pin型の光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなる太陽電池を作製した。このとき、前記第二透明導電膜と前記p層との間に、結晶質のシリコン系薄膜からなるp層を中間層として形成した。
【0069】
(比較例4)
基板上にSnOからなる透明導電膜を成膜した。透明導電膜を成膜後、ウェットエッチングを行い、透明導電膜の表面にテクスチャーを形成した。
この透明導電膜を上部電極として用いて、pin型の光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなる太陽電池を作製した。
【0070】
(比較例5)
基板上にSnOからなる透明導電膜を成膜した。透明導電膜を成膜後、ウェットエッチングを行い、透明導電膜の表面にテクスチャーを形成した。
実施例1と同様にして、透明導電膜上に、TiOからなる特性制御層を成膜した(加熱性膜)。
この透明導電膜を上部電極として用いて、pin型の光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなる太陽電池を作製した。
【0071】
実施例1において、特性制御層を成膜する前の表面SEM像を図7に、断面SEM像を図8に、それぞれ示す。また、実施例1において、特性制御層を成膜した後の表面SEM像を図9に、断面SEM像を図10に、それぞれ示す。
【0072】
また、各実施例及び比較例で作製された太陽電池について、ソーラーシミュレーターYSS−50A(山下電装株式会社製)により太陽電池性能として、短絡電流(Jsc)、曲線因子(FF)、光電変換効率(Eff)をそれぞれ評価した。その結果を表1に示す。なお、下表における「Pa−Si」はp型のアモルファスシリコン系薄膜を、「Pμc−Si」はp型の結晶質のシリコン系薄膜を、「BM」は裏面電極を、それぞれ意味する。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から明らかなように、AZOにPa−Si〜裏面電極までを成膜した比較例1では、FF、Effともに低い。
AZOとPa−Siの層間に「Pμc−Si」を設けた比較例2では、AZOとPа−Siのコンタクトが改善しFFが増加するが、Pμc−Siを追加したことによりJscが減少してしまった。全体的にはEffが向上傾向にある。
AZOとPμc−Siの層間に「TiO(無加熱)/GZO」を設けた比較例3では、TiOの中間屈折率効果によりJscが改善するが、FFが低下してしまった。TiOの抵抗に起因していると考えられる。
【0075】
これに対し、AZOとPa−Siの層間に、「TiO(加熱)」を設けた実施例1及び「TiO(加熱)/GZO/Pμc−Si」を設けた実施例2では、Jsc、Voc、FF、Effのいずれも高い値が得られている。
TiO成膜時に加熱した実施例2と加熱しなかった比較例2とを比較すると、実施例2では比較例2に比べて向上傾向があるので、TiO成膜時に加熱することにより、TiOの膜質が変化し、反射防止以外の機能が付加されたと考えられる。
実施例1は、実施例2に対して「GZO/pμc−Si」を除いた層構成となっているが、層数(厚み)が少なくなったことで各層における吸収が低減し、Jsc、Voc、FF、Effのいずれも実施例2に対して良好な値が得られている。
【0076】
また、比較例4.比較例5では、透明導電膜の材料をZnO系材料からSnO系材料に代えて、同様に実験を行った。
しかし、TiO成膜時に加熱した比較例5と非加熱の比較例4とでは得られた電池性能にほとんど違いは見られなかった。したがって、本発明の効果は、透明導電膜がZnO系材料であるときに得られることが確認された。
【0077】
以上、本発明の太陽電池の製造方法及び太陽電池について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、光入射側の電力取り出し電極として機能する上部電極が、ZnOを基本構成元素とする透明導電膜を備えた太陽電池の製造方法及び太陽電池に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 太陽電池、2 ガラス基板(透明基板)、3 上部電極、4 透明導電膜(第一透明導電膜)、5 特性制御層、6 第一光電変換ユニット、7 第二光電変換ユニット、11 バッファー層、12 裏面電極、13 第二透明導電膜、14 中間層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電膜付き基板を用い、p型半導体層(p層)、実質的に真性なi型半導体層(i層)、n型半導体層(n層)を積層したpin型の光電変換ユニットを、前記透明導電膜に順に重ねて設けてなり、
前記透明導電膜が、ZnOを基本構成元素とし、
前記光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなり、
前記透明導電膜と、前記光電変換ユニットを構成する前記p層との間に、TiOからなる特性制御層が配されている太陽電池の製造方法であって、
前記透明基板上に、前記透明導電膜を成膜するステップAと、
前記透明導電膜上に、前記特性制御層を形成するステップBと、
前記特性制御層上に、前記光電変換ユニットのp層、i層及びn層を順に形成するステップCと、
を少なくとも順に備え、
前記ステップBにおいて、加熱成膜することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記ステップAにおいて、
所望のプロセスガス雰囲気中にて、前記透明導電膜の母材をなすターゲットにスパッタ電圧を印加しつつ、該ターゲットの表面に水平磁界を発生させてスパッタを行い、前記透明基板上に前記透明導電膜を成膜し、
前記母材として、ZnOを主成分とした材料を用いること、を特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記ステップAにおいて、前記透明導電膜として、酸化亜鉛系材料からなる第一透明導電膜を形成すること、を特徴とする請求項2に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記酸化亜鉛系材料として、Al添加ZnO(AZO)を用いること、を特徴とする請求項3に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記ステップAと前記ステップBとの間に、
前記透明導電膜に対してウェットエッチングを行い、該透明導電膜表面に微細テクスチャーを形成するステップDを、さらに備えること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記ステップBとステップCの間に、
前記特性制御層上に、酸化亜鉛系材料からなる第二透明導電膜を形成するステップEと、
前記第二透明導電膜上に、結晶質のシリコン系薄膜からなるp層を形成するステップFと、さらに備えること、を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記酸化亜鉛系材料として、Ga添加ZnO(GZO)を用いること、を特徴とする請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
透明導電膜付き基板を用い、p型半導体層(p層)、実質的に真性なi型半導体層(i層)、n型半導体層(n層)を積層したpin型の光電変換ユニットを、前記透明導電膜に順に重ねて設けてなる太陽電池であって、
前記透明導電膜が、ZnOを基本構成元素とし、
前記光電変換ユニットを構成するp層、i層及びn層がアモルファスのシリコン系薄膜からなり、
前記透明導電膜と、前記光電変換ユニットを構成する前記p層との間に、TiOからなる特性制御層が配されていること、を特徴とする太陽電池。
【請求項9】
前記透明導電膜が、酸化亜鉛系材料からなる第一透明導電膜であること、を特徴とする請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第一透明導電膜がAl添加ZnO(AZO)であること、を特徴とする請求項9に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記特性制御層と、前記光電変換ユニットを構成する前記p層との間に、酸化亜鉛系材料からなる第二透明導電膜が配され、
さらに、前記第二透明導電膜と前記p層との間に、結晶質のシリコン系薄膜からなるp層が中間層として配されていること、を特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第二透明導電膜がGa添加ZnO(GZO)であること、を特徴とする請求項11に記載の太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−58639(P2013−58639A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196474(P2011−196474)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】