説明

太陽電池の製造方法

太陽電池はウェーハを切断しN型ドーピングを適用することによって、P型ドープ単結晶または多結晶シリコンインゴットから製造される。ウェーハは、特にプラズマ援用プロセスにおいて、フッ素、フッ化カルボニルまたはNFでエッチングすることにより改善することができる。これにより表面は粗面化され、こうして光反射度は削減され、切断作業によってひき起こされる亀裂の増殖が妨げられ、リンドーピングによりひき起こされるガラス様のリン含有酸化物コーティングが除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
全内容が本明細書に参照により援用されている2008年1月23日付けの米国仮特許出願第61/022958号明細書の利益を請求する本発明は、太陽電池の製造方法に関する。本発明の別の態様において、本発明は、フラットパネルの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽光を電流に変換するために応用される。太陽電池は通常、ホウ素ドープシリコン(P型ドーピング)の単結晶ブロックからまたは鋳造シリコンインゴット(ホウ素でP型ドープされた多結晶シリコン)から、バルク材料から所望のサイズのウェーハを切断することによって製造される。その後、リンでドープされたシリコン層が形成されてN型ドープコーティングを提供する。例えば、ウェーハをPOClと接触させることができる。次に、例えば、電池の表面上に金属を蒸発させることによって接点電極が適用される。その後、複数の各太陽電池を配置してソーラーパネルが形成される。所望の場合、電池は、(特許文献1)によって記述されている通り、例えば銅などのその他のドーパントも含んでいてよい。
【0003】
この要領で製造された電池にはなおいくつかの欠点がある。例えば、光の吸収が改善されるように、表面は非反射性でなくてはならない。ウェーハは、切断プロセス由来の亀裂を有する場合がある。リンドーピングの間、望ましくないリン含有ガラス様層が形成される場合がある。これについては、J.Rentsch、D.Decker、M.Hofmann、H.Schlemm、K.RothおよびR.Preuにより、(非特許文献1)中に記述されている。この論文においては、リンケイ酸ガラス(論文中「PSG」と呼ばれている)の湿式エッチングが、水および化学物質廃棄物の大量の廃棄ならびに高い機械的衝撃を特徴とする、ということが記述されている。さらに、切断損傷の除去ならびに太陽電池加工中の酸化物エッチングのためにPFC(ペルフルオロカーボン)とSFが一般的に使用されるということにも言及している。実験において、PSGはCF(ペルフルオロカーボン)を用いてエッチングされ、水素が使用された。ウェーハのその他のプラズマ処理は、SFを用いて実施される。PFCおよびSFは、特定のGWPを有すると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第A4249957号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】9月3〜7日、イタリアミラノで開催された第22回欧州太陽光会議および展示会(22nd European Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibition)において紹介された「PSG除去用ドライプラズマエッチングおよび裏側エミッタエッチングの工業的実施(Industrial realization of dry plasma etching for PSG removal and rear side emitter etching)」という題の論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこれらのおよびその他の問題に対する解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、太陽電池は、フッ化カルボニル、フッ素および三フッ化窒素またはその混合物を含むエッチングガスでウェーハをエッチングするステップを含む方法によって、シリコンウェーハから製造される。
【0008】
フッ化カルボニルおよびフッ素は、オゾン層に対する影響が全くなく、GWPもゼロであることから好適である。フッ化カルボニルの調製は、例えばCHFの光化学的酸素、フッ素元素とCOの反応、またはフッ素化剤でのCOClの塩素−フッ素交換によって行うことができる。
【0009】
所望の場合、一定量の公知のエッチング剤、例えばSF、飽和または不飽和ハイドロフルオロカーボン、例えばCHF、飽和または不飽和ペルフルオロカーボン、例えばCFまたはC、または飽和または不飽和ペルフルオロエーテルを添加することができる。このような付加的なエッチャントが適用される場合には、それらは好ましくは0.1重量%以上そして15重量%以下の量で含まれる。オゾン層にマイナスの効果をもたらすかまたは15超のGWP100を有するSF、NF、ハイドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロエーテルまたはその他のエッチャントのいずれもが含まれていないことが好ましい。付加的なエッチャントが全く含まれていないことが特に好ましい。
【0010】
シリコンウェーハは、好ましくは、P型ドープ(特にホウ素ドープ)多結晶または単結晶シリコンブロックから(鋸引きにより)カットされる。
【0011】
本発明の処理は、好ましくは、プラズマ反応器内でのプラズマ援用処理によって実施される。このようなプラズマ反応器は、一般に公知であり、例えばApplied Materials, Inc., または Secon Semiconductor Equipment GmbH, Austriaから市販されている。
【0012】
フッ素を処理ガスとして使用する場合、それを無希釈(neat)で使用することができる。安全上の理由から、それは窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンと混和した状態で適用される。混合物を反応装置の中で形成させることができ、あるいは、フッ素元素および1つまたは複数の不活性ガスの混合物を形成させてから反応装置内に導入することもできる。気体をこのような予め混合した形で反応装置内に導入した場合、反応装置チャンバ全体を通して均一なまたはほぼ均一な混合物を提供することができる。一般に、混合物のフッ素含有量は、安全上の理由から、好ましくは1〜35体積%の間にある。例えば、F2と不活性ガスの混合物を、加圧ボンベから供給することができる。このような加圧ボンベ内では、均一な混合物が形成される。反応器内に別々にガス構成成分を導入することも同様に可能である。以下に記す詳細な説明において、「混合物」という用語は、予備混合された気体混合物ならびにプラズマ反応器内で作り出される混合物を表わす。
【0013】
安全上の理由が関与しない場合には、無希釈のFまたはより少量の窒素またはアルゴンにより希釈されたF、例えば0.1〜20体積%の窒素またはアルゴンを含む混合物を適用することができる。
【0014】
好ましくはフッ素と窒素を含む混合物そしてフッ素とアルゴンを含む混合物、そして特に好ましくはフッ素、窒素およびアルゴンを含む混合物が適用される。
【0015】
以下では、比較的低い含有量でフッ素を含む幾つかの混合物が紹介されている。これらの混合物は技術的に非常に適しており、特に安全上の理由から有利である。
【0016】
フッ素と窒素のみを含む混合物が適用される場合、フッ素の含有量は好ましくは1体積%以上である。フッ素の含有量は好ましくは25体積%以下である。窒素含有量は好ましくは99体積%以下である。好ましくは、それは75体積%以上である。特に好ましい実施形態においては、フッ素の含有量は18〜22体積%の範囲内にある。
【0017】
フッ素とアルゴンを含む混合物が適用される場合、アルゴンの含有量は好ましくは50体積%以上である。好ましくは、それは99体積%以下である。フッ素の含有量は好ましくは1体積%以上である。好ましくは、それは50体積%以下、特に25体積%以下である。
【0018】
フッ素、窒素およびアルゴンを含む混合物が適用される場合、フッ素の含有量は好ましくは1体積%以下である。それは好ましくは25体積%以下である。アルゴン含有量は好ましくは4体積%以上である。好ましくは、アルゴン含有量は25体積%以下である。窒素含有量は好ましくは4体積%以下である。それは好ましくは75体積%以下である。
【0019】
フッ素とアルゴンの和は、好ましくは50体積%以下、特に好ましくは45体積%以下である。それは好ましくは、25体積%以上である。
【0020】
上述の混合物中、フッ素含有量は、安全上の理由から比較的低い。安全上の理由が関与しない場合には、フッ素含有量はより高いものであってよい。一般的に、フッ素含有量は25体積%以上であり得る。好ましくは、60体積%以上であり、より好ましくは75体積%以上である。100体積%に至る残りの部分は、窒素と、上述されている通り特に出力がさらに低い装置において時としてプラズマを安定させる特にアルゴンとにより構成されていてよい。望ましい場合、無希釈のフッ素でさえ適用可能であると思われる。出力の高いプラズマ装置には、比較的高いフッ素含有量およびそれに対応する比較的低いアルゴン含有量も非常に適している。エッチング反応は、フッ素含有量が高ければ高いほど速い。例えば、85〜98体積%のフッ素と2〜15体積%のアルゴンを含む混合物は非常に高速のエッチングプロセスを提供する。
【0021】
フッ化カルボニルは、無希釈の物質としてまたは酸素および/または不活性ガスと混和した状態で適用可能であり、例えば窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンと合わせて適用可能である。好ましくは、それは、無希釈の物質として適用されるか、酸素と混和される。
【0022】
特に高出力プラズマを伴う装置においては、無希釈のフッ化カルボニルの使用が可能であることが多い。比較的低いプラズマ出力のプラズマ装置においては、例えばプラズマを安定化させる上で、アルゴンがプラスの効果を有することから、(任意には窒素と併用して)アルゴンとフッ化カルボニルの混合物を適用することが賢明であるかもしれない。窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンで希釈したフッ化カルボニルも同様に、比較的安全な取り扱いを可能にし得る。例えばフッ化カルボニルは50体積%以上、好ましくは75体積%以上の量で含まれている。100体積%に至るまでの残りの部分は、酸素、窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンで構成される。フッ化カルボニル(好ましくは上記の通りのフッ化カルボニル含有量で)およびアルゴンからなる混合物が特に適している。
【0023】
本発明に係る方法は、エミッタのテクスチャ化の間にPERL(「不動態化エミッタおよび裏側局所拡散型」)太陽電池のフォトマスクをエッチングするために使用できる。PERL電池では、2つのフォトマスクステップ、すなわちリブ様の表面テクスチャを生成するためのエッチングステップと、金属接点ブリッジが上に配置されている深いn++拡散領域を適用するための局所拡散ステップとが必要である。第3のステップにおいて、次に表面にn拡散層がコーティングされる。詳細は、国際公開第1997/001189号パンフレット中に記載されている。ここではフォトマスクをエッチングするために、フッ化カルボニル、NFまたはフッ素を使用することができる。本発明のエッチング方法は、太陽電池の裏側に非励振エミッタをエッチングするために使用することもできる。
【0024】
一実施形態によると、太陽電池のために用いられるウェーハの表面は、本発明のエッチング方法により修正される(粗面化されるものと仮定される)。エッチングによるウェーハ表面の粗面化により、反射率は軽減され、こうして太陽電池の効率が高まる。反射率は、入射光の強度を反射光で除したものによって表現される合計半球反射率(全波長についての平均)が、未処理のシリコンウェーハに比べて表面処理済みシリコンウェーハについて小さい場合に、軽減されたとみなされる。
【0025】
エッチング処理は、所望の反射率削減を提供するのに充分である時間、実施される。好ましくは、処理は1秒以上の間実施される。好ましくは、処理は、10分以下、好ましくは5分以下の間実施される。エッチングは好ましくは、約0.1μm以上の表面がエッチングにより除去されるまで実施される。好ましくは、表面から500μm以下が、好ましくは100μm以下がエッチングによって除去されるまで、特に20μm以下がエッチングによって除去されるまで実施される。多くの場合、数μm、例えば10μm以下さらには5μm以下がエッチングにより除去される。
【0026】
エッチングは同様に、以下で記述されている通り、適用される電極の接着を改善するために、太陽電池の裏側にも適用できる。
【0027】
エッチング処理は、亀裂を有するシリコンウェーハを処理するためにも実施できる。等方性エッチングは非常に有利である。ウェーハをシリコンブロックからカットした結果として、亀裂が形成することが多い。これらの亀裂は増大し続け、こうしてウェーハが廃材となることが多い。COFまたはFを用いたウェーハのプラズマエッチング処理は、鋭角亀裂をキーホール様の構造に変える。亀裂のより幅広の端部はキービットを収容するキーホールの開口部に対応し、一方亀裂の鋭角は、機械的ロックのキーホールであったならば鍵の軸を受入れるかまたは収容することになる全体として丸い形状へと変形される。このようなキーホール様の構造はさらに拡張する傾向をもたず、ウェーハはさらなる使用に適している。したがって亀裂の鋭角構造をキーホール様の構造へと変形することにより、亀裂の伝播は妨げられる。
【0028】
同様に亀裂の処理のためには、上記の通り、フッ素ガスまたは酸素および/または不活性ガス特に窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンと混合状態のフッ素ガスを使用することができる。好ましくは、フッ化カルボニルが利用される。フッ化カルボニルを無希釈の物質として適用することができ、あるいは上記の通り酸素、窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンとともにそれを適用することもできる。後者の混合物は、安全な取扱いを考えるといくつかの利点を提供する。以上で言及した通り、比較的低い出力の装置においては、プラズマの安定化のため、アルゴンと混和されたフッ化カルボニルを適用することが有利であり得る。この利用分野については、気体混合物は、表面の粗面化について上述したもののように適用することができる。酸素はエッチングを改善する。
【0029】
別の実施形態においては、ガラス様のリン−シリカコーティングを有するウェーハが処理される。このようなコーティングは、N型ドーピングを達成するためにリン化合物でシリコンウェーハをドープするステップの間の望ましくない結果であり得る。このガラス様のコーティングは、電池の表面上に適用される電極の電気接点を削減する。このガラス様のコーティングは、フッ化カルボニルまたはフッ素あるいは酸素、窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンと共にフッ素またはフッ化カルボニルを含有する上述のもののような気体混合物を伴うプラズマの中でそれを処理することにより除去できる。
【0030】
プラズマ誘導エッチング処理は、減圧下で実施される。以下で、圧力は絶対値で示されている。好ましくは、圧力は0.1mbar以上である。好ましくは、それは100mbar以下である。特に好ましくは、それは50mbar以下である。
【0031】
プラズマ誘導エッチング処理の間、ウェーハは加熱する。したがって必要とされる場合には、過熱の恐れがある場合にウェーハを冷却するかまたは、ウェーハが冷却されるように時々処理を中断するかのいずれかを行わなければならない。
【0032】
プラズマ反応器を出るガスは、未反応のエッチャント、HF、SiF、フッ化リンおよびその他の反応生成物を含む。あらゆるHF、フッ化カルボニル、SiFまたはフッ素を除去するために、これらのガスを水、特にアルカリ水で洗浄することができる。洗浄機を通る全ての酸素、窒素、ヘリウムまたはアルゴンは、回収されるかまたは環境へと放出される。その他のエッチングガスに比べてアルカリ水中またはその他の周知の方法によりHF、フッ化カルボニルおよびフッ素を簡単に除去できることが、さらなる利点である。
【0033】
本発明の方法にしたがって処理されたウェーハは、次に太陽電池を生産するためにさらに処理される。特に、接点電極が適用される。これらの接点電極は電池から電流(通常は直流)を引き出すのに必要とされる。接点電極を適用する好ましい方法は、米国特許出願公開第A4249957号明細書中で言及されている通りウェーハ上に金属を蒸発させることである。チタン−パラジウム−銀由来の接点電極が非常に適している。接点電極を適用するのに使用できる代替的方法が存在する。例えば、銀粒子などの導電性粒子を含有するペーストを適用することができ、ウェーハ上にパターンを形成させるためにウェーハを焼成し、電極として機能する導電性パターンをウェーハ上に形成させる。この代替案は、欧州特許出願公開第A−0542148号明細書の中で記述されている。
【0034】
本発明の別の態様は、本発明の方法によって得られる太陽電池である。一実施形態において、表面エッチングを施されたウェーハを含む電池は、非常に低い反射性度を有する。別の実施形態において、太陽電池はキーホール様の形態をした亀裂を含んでいる。第3の実施形態において、太陽電池は両方の特性を有する。本発明は同様に、本発明の方法において得られた複数の太陽電池を組立てることによって得られるソーラーパネルにも関する。「複数の」とは、少なくとも2つの太陽電池を表わす。上限は実践的な理由から得られる。好ましくは、10個以下の太陽電池、より好ましくは少なくとも20個の太陽電池が組立てられて1つのソーラーパネルを提供する。
【0035】
本発明の利点は、水性エッチングが高速で清浄な方法により置換されるという点にある。フッ化カルボニルおよびフッ素の付加的な利点は、それらがオゾン破壊性ではなく、温室効果ガスとしての潜在性は、たとえあったとしても低く、かつ反応器を出るあらゆる排出口から容易に除去可能であるという点にある。
【0036】
さらに、フッ化カルボニルがフラットパネルの製造に適したエッチャントであることがさらに発見された。
【0037】
多用されている「アクティブマトリクス型液晶ディスプレイ」内で液晶偏光素子を切換えるために用いられる薄膜トランジスタをパターニングするために、プラズマ援用化学エッチングを用いてフラットパネルディスプレイ上に回路パターンを形成することは公知である。ディスプレイの面積全体にわたり均一なまたは制御可能な形で不均一なエッチング深さを達成することが望まれる。例えば、米国特許出願公開第5688,415号明細書中で記述されている通り、フラットパネル特に大型フラットパネルのディスプレイ基板上には被覆フィルムが提供され、既定のパターンの貫通開口部を有するフォトリソグラフィマスクがフィルム上を覆っている。次に基板は、基板の表面の面積よりも小さい突出した投影面積を有するプラズマエッチングツールに隣接して置かれる。エッチングツールは、基板の表面を横断して掃引されて、フォトリソグラフィマスクのパターンをその表面上のフィルム内に転写する。その後、マスクは、被覆するフィルムの表面から除去される。基板はガラスであってよく、フィルムは非晶質または多結晶シリコンであってよい。
【0038】
上述の方法といったようなフラットパネルディスプレイを製造するために実施される方法においては、フッ化カルボニルをエッチングガスとして使用することができる。フッ化カルボニルは、無希釈の物質としてかまたは不活性ガスと混和した状態で適用され得、例えば、それを酸素、窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンとともに利用することもできる。無希釈な物質としてそれを適用するのが好ましい。これらの気体混合物は同様にプラズマチャンバ洗浄のために使用することもできる。
【0039】
特に高出力プラズマ装置においては、無希釈のフッ化カルボニルの使用が可能であることが多い。比較的プラズマ出力の低いプラズマ装置においては、例えばプラズマを安定化する上でアルゴンがプラスの効果を有することから、フッ化カルボニルおよびアルゴン(任意には窒素と共に)の混合物を適用することが賢明であるかもしれない。酸素、窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンで希釈されたフッ化カルボニルは同様に、さらに安全な取扱いも可能にし得る。例えば、フッ化カルボニルは、50体積%以上、好ましくは75体積%以上の量で含有されている。100体積%に至るまでの残りの部分は、酸素、窒素、ヘリウムおよび/またはアルゴンにより構成される。フッ化カルボニル(好ましくは上記の通りのフッ化カルボニル含有量を有する)とアルゴンそして任意には酸素の混合物が、特に適切である。
【0040】
以下の実施例は、本発明を限定する意図なく、それをさらに説明するように意図されたものである。
【0041】
概要: Secon Semiconductor Equipment GmbH, Austriaが製造するマイクロ波プラズマエッチング装置内で、無構造の200mmプレーンシリコンウェーハにエッチングを行った。エッチングの前後にウェーハを秤量し、重量の差はエッチング速度を表わしている。水冷チャックが無い場合、エッチング時間を、冷却のための3分の間隔をおいて10分ずつ数回に制限した。実施例1および4は比較例である。
【0042】
【表1】

【0043】
マイクロ波ロッド全長にわたるプラズマの均質性を改善するためにArを用いる。それはSiのエッチング反応に対し全く影響を及ぼさない。Y/Nは、それがオンまたはオフに切替えられた場合を表わす。
【0044】
SFおよびCOFのために、流量同一(flow same)MFC(質量流量制限装置)を使用した。MFCはSFについて較正された。COFのためには2(0.544/0.27)という換算率を使用しなければならなかった。
【0045】
試験は、シリコンウェーハの表面をエッチングするためにフッ化カルボニルをうまく適用することができ、非反射性ウェーハを得ることができる一方で、エッチング時間も短縮できたことを示している。
【0046】
実施例2:亀裂を無害化するためのシリコンウェーハの処理
多結晶シリコンブロックから切断したホウ素ドープシリコンウェーハは、縁部に亀裂を有する。ウェーハをプラズマチャンバ内に移送する。チャンバを空にし、フッ化カルボニルを0.4mbarの圧力までチャンバ内に導入し、プラズマを開放させる。プラズマ処理の間、当初鋭角だった亀裂は、増殖しないキーホール様の構造へと変形させられる。この時点でウェーハはもはや無用ではなく太陽電池を得るためのさらなる処理(リンでのドーピング、電極の付着など)のために使用可能である。
【0047】
実施例3:P含有ガラス様コーティングの除去
ホウ素ドープシリコンウェーハをPOClと接触させ、960〜1000℃まで加熱してリン化合物をPに変換させる。副反応として、リン−シリカガラス様コーティングが形成される。このガラス様コーティングを除去するために、ウェーハをプラズマ処理チャンバ内に置き、チャンバを真空にし、0.4mbarの圧力が達成されるまで反応器内に無希釈のフッ化カルボニルと導入する。その後プラズマを開放させる。ガラス様のコーティングがエッチングにより除去されると直ちにプロセスを停止させる。
【0048】
実施例4:フッ素を使用したp含有ガラス様コーティングの除去
実施例4を反復するが、今度は、20体積%のフッ素、10体積%の窒素および70体積%のアルゴンからなる混合物を適用する。ガラス様コーティングをエッチングにより除去する。
【0049】
実施例5:処理済みウェーハに対する電極の適用
無希釈のフッ化カルボニルでエッチングして反射性を低くしたウェーハをさらに処理して、欧州特許出願公開第A−0542148号明細書で記述されている通りに電極を適用する。銀そして無機結合剤として酸化鉛および二酸化ケイ素を含有するぺーストを、電極構造の所望のパターンにしたがってスクリーン印刷によりウェーハの表側に適用する。裏側には、さらにアルミニウムを含有する類似の電極ペーストを適用する。その後、800℃前後でウェーハを焼成する。次に塩化銀およびチオ硫酸ナトリウムを含む浴中で、パターンをメッキする。これは、特に3頁53行目から5頁23行目までに記述されている通りに行われる。
【0050】
実施例6:フラットパネルディスプレイ上でシリコントランジスタの製造
米国特許出願公開第A−5,688,415号明細書、第5欄60行目から第9欄4行目までに記述されている通りに大型フラットパネルディスプレイ上でシリコントランジスタを形成させる。例えばインジウムスズ酸化物または酸化ケイ素などの1つ以上の透明電極材料製の被覆フィルムが、ガラス基板に提供される。既定の開口部を有するフォトレジストでコーティングを被覆する。基盤をプラズマチャンバ内にいれ、フォトリトグラフィマスクのパターンを、ガラス基板上のフィルムまで掃引により転写する。その後のステップにおいてエッチングを行なう。このステップでは、60重量%のフッ化カルボニル40重量%のアルゴンの混合物を適用する。過剰エッチングを防ぐために、計算用ハードウェアおよび適切なソフトウェアを用いて、プラズマ滞留時間バージョン位置マップを生成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化カルボニル、フッ素または三フッ化窒素またはその混合物を含むエッチングガスでウェーハをエッチングするステップを含む、シリコンウェーハから太陽電池を製造する方法。
【請求項2】
単結晶ウェーハが処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多結晶ウェーハが処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
N型ドープコーティングを伴うP型ドープシリコンウェーハが処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの亀裂を有するウェーハがエッチングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
リン−ガラス様コーティングを有するウェーハがエッチングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ウェーハの表面をエッチングして前記表面を粗面化する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エッチングガスとして、フッ化カルボニルまたはフッ素、好ましくはフッ化カルボニルが使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
遠隔プラズマによりエッチングが支援される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
エッチングの後に前記ウェーハに対して接点電極が適用される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって製造された2つ以上の太陽電池を組立てる、ソーラーパネルの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法により得られる太陽電池。
【請求項13】
請求項12に記載の複数の太陽電池を含むソーラーパネル。
【請求項14】
フッ化カルボニルまたはフッ素元素を含むエッチングガスが適用される、プラズマエッチングステップを含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項15】
回路パターンがプラズマエッチングにより形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記エッチングステップが、エッチングガスとしてのフッ化カルボニルおよび酸素および/またはアルゴンおよび/または窒素の存在下で実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記エッチングガスが、フッ化カルボニルおよびアルゴンおよび/または窒素そして任意には酸素からなる、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2011−510501(P2011−510501A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543393(P2010−543393)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055173
【国際公開番号】WO2009/092453
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】