説明

太陽電池を封入した複層ガラス

【課題】太陽電池の設置のための大面積を確保し、複層ガラスの断熱・遮音効果を損なうことのない太陽電池封入型の複層ガラスを提供する。
【解決手段】複数の板ガラス間に空気層を有する複層ガラスにおいて、該空気層はスペーサーにより形成されると共に封着材により周囲を封止することにより外気から遮断されてなり、ガラス若しくは透明樹脂を基盤とする1以上の太陽電池を前記空気層内に設け、前記スペーサーを導電体として形成し、該スペーサーの適宜箇所に前記太陽電池の端子及びバッテリーあるいは負荷等につながる外部端子を接続すると共に、該スペーサー上の適宜箇所に絶縁部を形成することにより所定の導電回路を形成したことを特徴とする複層ガラスを構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、空気層に太陽電池を設置し、導電回路を形成した複層ガラスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】無公害且つ半永久的資源である太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池は、街灯や家屋等において既に利用されている。この太陽電池としては、アモルファスシリコン等の化合物半導体を用いたもの、または単結晶あるいは多結晶の結晶シリコンを用いたものがあり、特にアモルファスシリコンを用いたいわゆる化合物薄膜半導体太陽電池が技術的に簡易であるため多用されているが、太陽エネルギーを集めるために大面積を必要とするので、屋根や地面に設置することにより対処している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、オフィスビル等において空調設備やOA機器等での、さらなる活用を図ろうとする場合、大量のエネルギーを要するため、いかにして太陽電池の設置のための大面積を確保するかが問題となる。
【0004】また、板ガラス間に空気層を有する複層ガラスが持つ性質としての断熱・遮音効果は、空気層が密封された状態を保つことにより達成されるが、空気層内に太陽電池を設けた際に電極を外部のバッテリー等に接続する必要があるため、外気と完全には遮断できないという不都合が生じる。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、オフィスビル等では一般の家屋に比べて、窓ガラスの面積の占める割合が必然的に大となる点に着目した。つまり、複数の板ガラスからなる複層ガラスの空気層の内に太陽電池を設けることで、ビルの表面積の大部分を占める窓を利用できるので、太陽エネルギーをより大面積で受けることが可能となる。また、シリコンの薄膜を保護するため通常太陽電池はガラスに覆われているが、この点については空気層を有する複層ガラスを利用することによって薄膜を保護すると共に、複層ガラスの断熱・遮音効果を達成している。
【0006】具体的には、複数の板ガラス(6)間に空気層(7)を有する複層ガラスにおいて、該空気層(7)は、スペーサー(2)により少なくとも太陽電池(1)、基盤(5)及び接着剤(16)の厚み以上の間隔を有し且つ封着材(14)(15)によりスペーサー(2)の周囲を封止することにより外気から遮断されてなり、ガラス若しくは透明樹脂を基盤(5)とする1以上の太陽電池(1)を前記空気層(7)内に設ける。
【0007】また、前記スペーサー(2)を導電路とする又は前記スペーサー(2)内に導電線(10)を埋設する等により、太陽電池(1)が設置された複層ガラス全体が、太陽電池、太陽電池の端子、外部端子及びスペーサーを構成要素として導電回路を形成するようにすることで、複層ガラスの空気層(7)を外気から完全に遮断すると共に外部への電気の供給を達成している。
【0008】以上を達成するための具体的手段としては、既述の太陽電池を封入した複層ガラスにおいて、スペーサー(2)を導電性を有する物質により導電体として形成し、該スペーサー(2)の適宜箇所に太陽電池の端子(3)及びバッテリーあるいは負荷等につながる外部端子(4)を接続すると共に、該スペーサー(2)上の適宜箇所に絶縁部(8)を形成することにより所定の導電回路を形成する。
【0009】また、既述の太陽電池を封入した複層ガラスにおいて、スペーサー(2)内部に導電線(10)を埋設し、該導電線(10)の適宜箇所に太陽電池の端子(3)及びバッテリーあるいは負荷等につながる外部端子(4)を接続すると共に、該導電線(10)上の適宜箇所に絶縁部(8)を形成することにより所定の導電回路を形成する。
【0010】
【発明の実施の形態】複数の板ガラス間に空気層を有する複層ガラスにおいて、(イ)少なくとも1枚の板ガラス(6)の片面にガラス若しくは透明樹脂を基盤(5)とする1以上の太陽電池(1)を貼り付ける。太陽電池の基盤(5)と板ガラス(6)との接着は、例えばエチレンビニールアセテートやポリビニールブチラール等の透明接着フィルムあるいはアクリル系接着テープ等の接着剤材(16)を用いる。
【0011】太陽電池については、基盤上にp、i、nあるいはp、nの各層からなるシリコン膜を形成し、pを陽極、nを陰極として端子を接続するpin接合、pn接合が代表例であるが、この点については詳しくは述べない。
【0012】尚、何れの層を受光面とするか、何れの層を板ガラスへの接着面とするか、また、複層ガラスの室内側と室外側の何れの板ガラスに太陽電池を貼り付けるかについては、いかなる設備の下において本発明を利用するかにより選択する。
【0013】(ロ)前記板ガラス(6)の太陽電池(1)を形成した面にスペーサー(2)を設置する。該スペーサー(2)の前記板ガラス(6)への接着は、図2R>2のようにスペーサー(2)と板ガラス(6)間に一次封着材(14)としてプチルゴムを用いることが板ガラスに傷を付けるおそれが少なく望ましい。同様にして該板ガラスと別の板ガラス(6)とでスペーサー(2)を挟むようにして封着し、複層ガラスを形成する。さらにスペーサー(2)の背側(空気層の内側に対して外気に触れる側)は二次封着材(15)としてシリコン、ポリサルファイド等を用いて封止する。従って以上一次封着材(14)及び二次封着材(15)からなる封着材によって空気層(7)内は外気から完全に遮断される。
【0014】該スペーサー(2)は、枠状であり前記太陽電池(1)を囲む様に設置され、且つ複層ガラス間に太陽電池(1)及び基盤(5)の厚み以上の一定の間隔を保持することにより空気層(7)を形成している。空気層はスペーサー(2)及び封着材により既述の如く封止されているため、複層ガラスの断熱・遮音効果を担保しつつ太陽電池(1)の薄膜の保護も達成している。また該スペーサー(2)は断面略四角形を呈する筒体であり、この中に乾燥剤(13)を入れることにより空気層(7)内を乾燥状態に保つ。またスペーサー内の乾燥剤は空気層をドライ雰囲気に保持し、長期に渡りハンダ・リード線の浸食防止に役立つものである。従ってスペーサー(2)の空気層(7)側に露出する面には孔(12)が形成されている。スペーサー(2)の材質としては通常アルミが用いられている。
【0015】(ハ)上記の構成により太陽電池(1)を封入した複層ガラスを形成する。太陽電池(1)はガラス又は透明樹脂を基盤(5)として形成し、該基盤(5)を複層ガラスの板ガラス(6)に接着するという構成をとっているため、太陽電池(1)を適宜に設置することが可能となる。例えば窓の採光を得るために太陽電池を部分的に抜く等が容易になる。
【0016】また、シリコンの薄膜を保護するため通常太陽電池はガラスに覆われている。この点については本発明を利用した場合、複層ガラスの一方の板ガラス上に太陽電池を形成し、もう一方の板ガラスが薄膜を保護する保護板としての機能を果たす。
【0017】もちろん板ガラス(6)に直接薄膜(太陽電池)を形成したとしても支障はない。つまり板ガラス(6)を太陽電池(1)の基盤(5)として形成する。具体的には、複数の板ガラス間に空気層(7)を有する複層ガラスにおいて、該空気層(7)はスペーサー(2)により形成されると共に封着材により周囲を封止することにより外気から遮断されており、少なくとも1枚の前記板ガラス(6)を基盤として太陽電池(1)を形成し、該太陽電池を前記空気層(7)内に設けたことを特徴として複層ガラスを構成する。
【0018】太陽電池とガラス板との間は、局部的または全面に渡り接着剤またはフィルムとで合わせ、接合する。接着面は太陽電池の表裏何れの面でも可能であり、照射面に接着剤を使用する場合は透明の接着剤を使用し、非照射面に使用する場合は不透明のものも使用が可能である。
【0019】複層ガラスは一般的には2枚の板ガラスにより構成されるため、通常は一方の板ガラスの空気層側に太陽電池を形成することになるが、3枚以上の板ガラスにより複層ガラスを構成した場合は、太陽電池が形成された板ガラス複数枚を階層的に設置することも可能であり、太陽エネルギーをより効率よく集めることが可能となる。
【0020】次にスペーサー(2)を導電体とした場合について述べる。既述の太陽電池を封入した複層ガラスにおいて、(イ)スペーサー(2)を導電性を有する導電体として複層ガラスを形成する。本発明の実施の形態においてはアルミを採用してスペーサーを形成している。
【0021】(ロ)該スペーサー(2)に、板ガラス(6)に設置された太陽電池の端子(3)を接続する。図1では複数の太陽電池を設置した状態を示しており、太陽電池同士は直列となるように接続してある。スペーサーと太陽電池の端子との接続はハンダで溶接する等により行う。
【0022】従って太陽電池(1)から得られる電気エネルギーはスペーサー(2)を伝わることになるが、このときスペーサーには絶縁部(8)を設けることが必要になる。例えば図1に示すように、枠状のスペーサーの隅4点を絶縁したり、その他スペーサーの隅の対角点の2点を絶縁する等のように結果として電気が流れればよい。
【0023】具体的には枠状スペーサー(2)の隅あるいは任意の4点に絶縁部(8)を設ける、枠状スペーサー(2)の対角点の2点に絶縁部(8)を設ける又は枠状スペーサー(2)の辺を同一とする2点に絶縁部(8)を設けることにより、プラス・マイナス両極を絶縁し導電回路を形成する。
【0024】尚、絶縁部(8)をスペーサー(2)上の何処に設けるかに関しては、スペーサー(2)と太陽電池の端子(3)及び外部端子(4)との接続位置に応じた位置にする必要がある。この様にスペーサーを導電体として適宜箇所に太陽電池の端子及び外部端子を設けられるようにすれば、いかなる設備の下においても端子の取り付け位置にとらわれることなく本発明を利用した複層ガラスの設置が可能となり、設備に応じた端子の接続が可能となる。
【0025】(ハ)既述の太陽電池(1)を封入した複層ガラスの空気層(7)を、上記構成のとおり導電性を有するスペーサー(2)により形成することによって、太陽電池(1)から得られる電気エネルギーはスペーサー(2)を導電路として伝わるので、スペーサー(2)を外部端子(4)を通じて直接バッテリーや負荷に繋ぐだけで電気の供給が可能になり、且つ空気層を外気から完全に遮断できるので複層ガラスとしての断熱・遮音効果を損なうことがない。
【0026】(ニ)スペーサー(2)を導電体とするその他の形態としては、スペーサー内部に導電線を埋設する方式が考えられる。具体的にはスペーサー(2)の筒内にリード線体(9)を埋設する。該リード線体(9)は被覆体(11)及び該被覆体(11)に包まれた導電線(10)より構成されている。該被覆体(11)は絶縁部材である。前記導電線(10)に太陽電池の端子(3)及び外部端子(4)を接続する。
【0027】これにより導電性を有しないスペーサーによる既設の複層ガラスにおいてもスペーサーを導電体とすることができるので、複層ガラスを電気導電回路として形成することができ、本発明を利用できるものである。また、導電線(10)は絶縁材たる被覆体(11)により覆われているので、アルミ等で形成した導電性を有するスペーサーを利用している場合において、スペーサー自体を導電路として扱うことが利便性を欠く等の設備の下においても、本発明を利用することができる。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、オフィスビル等において太陽電池を貼り付けるための大面積を確保することができ、且つ複層ガラス内部の空気層と外気とを遮断しつつ太陽電池との接続ができるため、複層ガラスの有する断熱・遮音効果を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複層ガラス正面図
【図2】本発明の複層ガラス一部断面図
【図3】スペーサー内にリード線体を埋設した場合の一部断面図
【符号の説明】
1 太陽電池
2 スペーサー
3 太陽電池端子
4 外部端子
5 基盤
6 板ガラス
7 空気層
8 絶縁部
9 リード線体
10 導電線
11 被覆体
12 孔
13 乾燥剤
14 一次封着材
15 二次封着材
16 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】複数の板ガラス間に空気層を有する複層ガラスにおいて、該空気層はスペーサーにより形成されると共に封着材により周囲を封止することにより外気から遮断されてなり、ガラス若しくは透明樹脂を基盤とする1以上の太陽電池を前記空気層内に設けたことを特徴とする複層ガラス。
【請求項2】複数の板ガラス間に空気層を有する複層ガラスにおいて、該空気層はスペーサーにより形成されると共に封着材により周囲を封止することにより外気から遮断されてなり、少なくとも1枚の前記板ガラスを基盤として1以上の太陽電池を形成し、該太陽電池を前記空気層内に設けたことを特徴とする複層ガラス。
【請求項3】スペーサーを導電体として形成し、該スペーサーの適宜箇所に太陽電池の端子及びバッテリーあるいは負荷等につながる外部端子を接続すると共に、該スペーサー上の適宜箇所に絶縁部を形成することにより所定の導電回路を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2の複層ガラス。
【請求項4】スペーサー内部に導電線を埋設し、該導電線の適宜箇所に太陽電池の端子及びバッテリーあるいは負荷等につながる外部端子を接続すると共に、該導電線上の適宜箇所に絶縁部を形成することにより所定の導電回路を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2の複層ガラス。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図1】
image rotate