説明

太陽電池セル検査装置

【課題】 太陽電池セルの接続不良を検出できるとともに、太陽電池セルのリーク不良も検出できるようにする。
【解決手段】 通電回路66は、コントローラ70により制御されて、第1及び第2オフセット電圧に第1及び第2交流信号をそれぞれ重畳した第1及び第2印加電圧を太陽電池パネルSPにそれぞれ印加して、太陽電池パネルSPに電流を流す。第2オフセット電圧及び第2交流信号の振幅は、第1オフセット電圧及び第1交流信号の振幅よりもそれぞれ小さい。コントローラ70は、第1印加電圧の印加状態で磁気センサ10から取得した磁界信号を用いて太陽電池セルの接続不良を検出し、第2印加電圧の印加状態で磁気センサ10から取得した磁界信号を用いて太陽電池セルのリーク不良を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電により太陽電池に流れる電流によって発生する磁界を複数の箇所で検出して、太陽電池セルを検査する太陽電池セル検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルには、アモルファス太陽電池の場合によくあるように、図9A及び図9Bに示すように複数の発電セルを直列接続にした構造にして太陽電池セルのみで高電圧を取出すことができるようにしたものがある。このような太陽電池セルは両端にある外部に電流を取出すための取出電極と内部電極とを導電性ペースト又は半田により接続しているが、複数の太陽電池セルを接続して製造される太陽電池パネルは、高温、低温、雨、雪等に晒される環境下で使用されるため、長期間が経過すると、この接続箇所が劣化する可能性がある。そのため、長期間使用した太陽電池パネルは、太陽電池セルごとにこの接続箇所に接続不良が発生していないことを検査する必要がある。また、太陽電池セルを製造した直後又は太陽電池セルから太陽電池パネルを製造した直後も、この接続箇所に接続不良がないことを検査する必要がある。さらに、前記取出電極の接続不良よりも発生頻度は低いが、製造直後の太陽電池セルには発電面にも欠陥が存在する場合があり、検査によりこのような太陽電池セルを取り除く必要がある。この欠陥の一つは、発電面内にクラック、ピンホールなどが存在して発電面部分の抵抗が大きくなって、電流が流れ難くなっている状態であり、以下の説明では、この欠陥を発電面の接続不良と呼ぶ。
【0003】
太陽電池セルや、太陽電池セルから製造される太陽電池パネルを検査する方法にはいくつかの方法があるが、例えば下記特許文献1に紹介されているように、発電によって発生する電流によって各点で発生する磁界を磁気センサにより検出し、磁界の分布状態又は磁界から計算され得る電流の分布状態を、正常なものと比較することで欠陥の有無を判断する方法がある。この方法であれば、太陽電池セルであっても、太陽電池パネル(下記特許文献1では太陽電池モジュールと記載されている)であっても、検査対象を発電により電流が流れる状態にすれば、取出電極及び発電面の接続不良及び接続不良箇所を非接触で精度よく検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−171065号公報
【発明の概要】
【0005】
この発電により太陽電池セルに電流を流す方法によれば、前述した取出電極及び発電面の接続不良に関しては、精度よく検出することができる。しかしながら、発明者が実験した結果、発電面の欠陥の他の一つであり、発電セル間の電極が導通されていて、又は同一発電セルの正極と負極とが導通されていてリーク電流が発生するような欠陥、すなわち前記接続不良とは逆に電流が流れ易くなっている状態(以下、この状態を発電面のリーク不良という)の場合、発電により電流を流しても、発生する磁界の分布状態又は磁界から計算される得る電流の分布状態には正常な場合と比較して大きな差が現われないことが分かった。よって、太陽電池セルに発電により電流を流して、電流により発生する磁界を各点で測定する方法では、発電面のリーク不良を精度よく検出することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、この問題を解消するためになされたもので、太陽電池に流れる電流により発生する磁界を複数の箇所で検出して、太陽電池セルの欠陥を検出する太陽電池セル検査装置において、太陽電池セルの発電面のリーク不良をも精度よく検出することができるようにすることにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、第1方向に沿って配置されるとともに直列接続されてなり、光の照射により発電する複数の発電セル(83)と、第1方向とは直交する第2方向に延設されるとともに、複数の発電セルのうちの両端の一対の発電セルにそれぞれ内部電極(86,88)を介して接続されて、複数の発電セルによって発電された電力を取出すための一対の長尺状の取出電極(81,82)とを有する太陽電池セルを検査するための太陽電池セル検査装置において、太陽電池セルに対向するように配置されて、太陽電池セルの各部に流れる電流によって発生される磁界を検出する磁気センサ(10)と、太陽電池セルの接続不良を検出するために、一対の取出電極に第1印加電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出す第1磁界信号取出手段(65〜68,70,S206〜S210,S220〜S254)と、太陽電池セルのリーク不良を検出するために、一対の取出電極に第1印加電圧よりも低い第2印加電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出す第2磁界信号取出手段(65〜68,70,S212〜S218,S220〜S254)とを備えたことにある。
【0008】
この場合、例えば、太陽電池の接続不良は一対の取出電極の接続不良及び一対の取出電極間の発電面領域の接続不良のうちの少なくとも一方の接続不良であり、かつ太陽電池セルのリーク不良は発電面領域のリーク不良であり、第1磁界信号取出手段は、一対の取出電極の近傍領域及び発電面領域のうちの少なくとも一方の領域の各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出し、第2磁界信号取出手段は、発電面領域の各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出す。
【0009】
前述のように、発電による電流を太陽電池セルに流せば、取出電極及び発電面の接続不良に関しては、精度よく検出することができるが、発電面のリーク不良に関しては、発電により電流を流しても、発生する磁界の分布状態又は磁界から計算される得る電流の分布状態が正常な場合と比較して大きな差が現われない。そこで、本発明者は、実験により、外部から太陽電池セルに電圧を印加して太陽電池に電流を流すことにより、取出電極及び発電面の接続不良の位置に流れる電流がその周りの正常部分に流れる電流よりも非常に小さくなり、これに伴い、取出電極及び発電面の接続不良の位置で発生する磁界もその周りの正常部分で発生する磁界よりも非常に小さくなることを確認した。そして、これに加え、発電面のリーク不良に関しては、太陽電池セルに印加する電圧を前記取出電極及び発電面の接続不良を検査する場合よりも小さくすると、発電面のリーク不良の位置に流れる電流がその周りの正常部分に流れる電流よりも非常に大きくなり、発電面のリーク不良の位置で発生する磁界もその周りの正常部分で発生する磁界より非常に大きくなり、発電面のリーク不良も検出できることを発見した。そして、前記のように構成した本発明によれば、第1磁界信号取出手段が、太陽電池セルの接続不良を検出するために、一対の取出電極に第1印加電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出し、第2磁界信号取出手段が、太陽電池セルのリーク不良を検出するために、一対の取出電極に第1印加電圧よりも低い第2印加電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出す。これにより、第1及び第2磁界信号取出手段によってそれぞれ取出された太陽電池セルの各部に流れる電流によりそれぞれ発生される磁界信号を用いれば、太陽電池セルの接続不良を精度よく検出できるとともに、太陽電池セルのリーク不良も精度よく検出できる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、さらに、一対の取出電極に第3印加電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、一対の取出電極と交差して第1方向に沿った各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出す第3磁界信号取出手段(65〜68,70,S106〜S128)と、第3磁界信号取出手段によって取出された信号に基づいて、一対の取出電極と交差して第1方向に沿った各部にて第2方向に流れる電流の大きさをそれぞれ計算する電流計算手段(70,S302〜S324)と、電流計算手段によって計算された電流の大きさの分布におけるピーク値の位置を一対の取出電極の位置として決定する取出電極位置決定手段(70,S326)と、取出電極位置決定手段によって決定された一対の取出電極位置を用いて、一対の取出電極の近傍領域及び発電面領域を決定する領域決定手段(70,S330〜S344)とを備えたことにある。
【0011】
この種の太陽電池セルにおいては、一対の取出電極間の発電面部では主に第1方向(取出電極の延設方向と直交する方向)に電流が流れ、一対の取出電極部では主に第2方向(取出電極の延設方向)に電流が流れる。したがって、前記本発明の他の特徴のように、電流計算手段により、第3磁界信号取出手段によって取出された信号に基づいて計算される、一対の取出電極と交差して第1方向に沿った各部にて第2方向に流れる電流の大きさは、取出電極位置において発電面位置に比べて極めて大きくなる。したがって、取出電極位置決定手段によって取出電極の位置が的確に決定されるとともに、領域決定手段によって一対の取出電極の近傍領域及び発電面領域が自動的かつ的確に決定される。その結果、第1磁界信号取出手段により磁界信号を取出す領域と、第2磁界信号取出手段により磁界信号を取出す領域とが自動的かつ的確に決定でき、取出電極の接続不良、発電面の接続不良及びリーク不良が効率よく的確に検出されるようになる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、第1印加電圧は第1オフセット電圧に第1交流信号を重畳した電圧であるとともに、第2印加電圧は第1オフセット電圧よりも低い第2オフセット電圧に第1交流信号の振幅よりも小さな振幅の第2交流信号を重畳した電圧であり、かつ第1及び第2印加電圧の最小値はそれぞれ太陽電池セルの順方向電圧降下より高く、第1磁界信号取出手段は、第1交流信号の周期で変化する磁界信号をそれぞれ取出し、かつ、第2磁界信号取出手段は、第2交流信号の周期で変化する磁界信号をそれぞれ取出すようにしたことにある。
【0013】
このような交流信号をオフセット電圧に重畳させた第1及び第2印加電圧においても、第2印加電圧は第1印加電圧よりも低いので、取出電極及び発電面の接続不良に加えて、発電面のリーク不良も精度よく検出される。また、前記のように構成した本発明によれば、太陽電池セルには、第1及び第2交流信号の周期を有する電流が流れ、第1及び第2磁界信号取出手段は、第1及び第2交流信号の周期で変化する磁界信号をそれぞれ取出す。したがって、これによれば、外乱光や、外部磁界が存在しても、これらの影響を受けずに、太陽電池セルに対向する各部の箇所で磁界を検出することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、さらに、太陽電池セルの各部に流れる電流によってそれぞれ発生されて第1磁界信号取出手段によってそれぞれ取出された磁界信号に基づいて、太陽電池セルの各部における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさを第1対象物理量として計算する第1対象物理量計算手段(70,S402〜S414,S426)と、太陽電池セルの各部に流れる電流によってそれぞれ発生されて第2磁界信号取出手段によってそれぞれ取出された磁界信号に基づいて、太陽電池セルの各部における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさを第2対象物理量として計算する第2対象物理量計算手段(70,S404〜S414,S424)を備えたことにある。
【0015】
本発明者は、前述した太陽電池セルの接続不良(取出電極の接続不良及び発電面の接続不良)及び太陽電池セルのリーク不良(発電面のリーク不良)における電流の大きさ及び磁界の強さの変化が、第1方向(取出電極の延設方向と直交する方向)の電流の大きさの変化及び第2方向(取出電極の延設方向)の磁界の強さの変化が極めて大きいことも実験により発見している。したがって、この本発明の他の特徴によれば、太陽電池セルの各部における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさが第1及び第2対象物理量として計算されるので、太陽電池セルの接続不良及び太陽電池セルのリーク不良をより簡単かつ精度よく検出できるようになる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、第1対象物理量計算手段によって計算された太陽電池セルの各部における第1対象物理量を用いて、前記各部について互いに第1方向に所定距離だけ離れた位置の第1対象物理量間の差をそれぞれ計算する第1差計算手段(70,S600,S602,S610〜S614)と、第2対象物理量計算手段によって計算された太陽電池セルの各部における第2対象物理量を用いて、前記各部について互いに第1方向に所定距離だけ離れた位置の第2対象物理量間の差をそれぞれ計算する第2差計算手段(70,S604,S606,S612,S616,S618)を備えたことにある。
【0017】
この本発明の他の特徴においては、第1及び第2差計算手段によって、互いに第1方向に所定距離だけ離れた位置の第1対象物理量間の差、及び互いに第1方向に所定距離だけ離れた位置の第2対象物理量間の差がそれぞれ計算される。そして、この第1方向に所定距離だけ離れた一対の各部の第1及び第2対象物理量の差(第1方向の電流の大きさの変化及び第2方向の磁界の強さの変化)は、接続不良及びリーク不良の発生を顕著に表すので、太陽電池セルの接続不良及びリーク不良を簡単かつ精度よく検出できるようになる。
【0018】
なお、この場合、さらに、第1及び第2差検出手段によって計算された差の変動を表す特性値をそれぞれ計算する変動特性値計算手段(70,710,S726,S736)を設けるとよい。さらに、変動特性値計算手段によって計算された特性値が第1及び第2差検出手段によって計算された差の変動が大きいことを表すことを条件に、取出電極の接続不良、発電面の接続不良及び発電面のリーク不良を判定する判定手段(70,S712、S714,S728,S736)を設けるとよい。また、第1及び第2差検出手段によって計算された差の分布を視覚的に示す画像を表示する表示手段を設けるとよい。これらによれば、作業者は、前記取出電極の接続不良、発電面の接続不良及び発電面のリーク不良をより簡単に認識できるようになる。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、さらに、第1対象物理量計算手段によって計算された太陽電池セルの各部における第1対象物理量と、第2対象物理量計算手段によって計算された太陽電池セルの各部における第2対象物理量とを表示する表示手段(70,S800)を備えたことにある。
【0020】
前述のように、第1及び第2対象物理量(第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさ)の変化は、太陽電池セルの接続不良(取出電極の接続不良及び発電面の接続不良)及び太陽電池セルのリーク不良(発電面のリーク不良)を表す。そして、この本発明の特徴においては、表示手段によって第1及び第2対象物理量が表示されるので、太陽電池セルの接続不良及び太陽電池セルのリーク不良が視覚的に認識される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池セル検査装置の全体構成図である。
【図2】図1のステージ及び磁気センサのスライド機構の具体例を示す概略斜視図である。
【図3】図1の磁気センサ及びセンサ信号取出回路の詳細回路ブロック図である。
【図4】図1のロックインアンプの詳細回路ブロック図である。
【図5A】図1のコントローラによって実行されるデータ取得プログラムの先頭部分を示すフローチャートである。
【図5B】前記データ取得プログラムの図5Aに続く部分を示すフローチャートである。
【図5C】前記データ取得プログラムの図5Bに続く部分を示すフローチャートである。
【図6A】図5Aのデータ取得プログラム中の領域区分サブルーチンの前半部分を示すフローチャートである。
【図6B】前記領域区分サブルーチンの後半部分を示すフローチャートである。
【図7A】図1のコントローラによって実行される評価プログラムの先頭部分を示すフローチャートである。
【図7B】前記評価プログラムの図7Aに続く部分を示すフローチャートである。
【図7C】前記評価プログラムの図7Bに続く部分を示すフローチャートである。
【図7D】前記評価プログラムの図7Cに続く部分を示すフローチャートである。
【図7E】前記評価プログラムの図7Dに続く部分を示すフローチャートである。
【図7F】前記評価プログラムの図7Eに続く部分を示すフローチャートである。
【図7G】前記評価プログラムの図7Fに続く部分を示すフローチャートである。
【図8】太陽電池パネルの一例を示す概略平面図である。
【図9A】図8の太陽電池セルの概略平面図である。
【図9B】図9AのB−B線に沿って見た太陽電池セルの拡大断面図である。
【図10】太陽電池パネルに印加される電圧波形を示す波形図である。
【図11】(A)は太陽電池パネルの電極近傍領域と発電面領域を説明するための説明図であり、(B)は電極を検出するためのY方向電流の大きさの変化を示す図である。
【図12】磁気センサによる太陽電池パネルの走査態様を説明するための説明図である。
【図13】太陽電池セルの取出電極に接続不良がある場合における電流の変化を説明するための説明図である。
【図14】太陽電池セルの発電面に接続不良がある場合における電流の変化を説明するための説明図である。
【図15】太陽電池セルの発電面にリーク不良がある場合における電流の変化を説明するための説明図である。
【図16】太陽電池パネルに流れる電流の大きさの分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
a.構成例
以下、本発明の一実施形態に係る太陽電池セル検査装置について図面を用いて説明する。図1は、この太陽電池セル検査装置の全体概略図である。太陽電池セル検査装置は、磁気センサ10を支持固定するセンサ支持台11を有し、センサ支持台11は、X方向スライド機構20によってX方向(紙面左右方向)に移動するとともに、Y方向スライド機構30によってY方向(紙面垂直方向)に移動する。センサ支持台11は、図2に詳細に示すように、方形状の平板で構成されて、上面にて磁気センサ10を支持固定する。このセンサ支持台11は、X方向スライド機構20の一部を構成する方形状の移動部材21により支持されている。この移動部材21には、センサ支持台11を上下に変位させて磁気センサ10の上下方向位置を調整する調整機構(図示しない)が設けられており、調整つまみ22の操作によりセンサ支持台11が上下方向に位置調整されるようになっている。
【0023】
移動部材21の下面には、Y方向に所定の幅を有する凸部21aが設けられている。この凸部21aは、X方向に延設された支持部材23の上面に設けた溝23aに侵入して、溝23a内をX方向にスライドするようになっている。支持部材23の溝23a内には、X方向に延設されて移動部材21の凸部21aを貫通する雄ねじ24が収容されている。移動部材21の凸部21a内には、雄ねじ24に螺合した図示しないナットが組み込まれており、雄ねじ24の回転により、移動部材21がX方向に移動するようになっている。すなわち、雄ねじ24と移動部材21に組み込まれたナットにより、ボールねじ機構が構成されている。雄ねじ24の一端は、支持部材23の一端に組み付けたX方向モータ25の回転軸に連結され、雄ねじ24の他端は支持部材23の他端に回転可能に支持されている。これにより、X方向モータ25の回転により雄ねじ24が軸線周りに回転して、移動部材21、センサ支持台11及び磁気センサ10がX方向に移動する。
【0024】
支持部材23のX方向の両端近傍部の下面には、X方向に所定の幅を有する凸部23b,23cがそれぞれ設けられている。これらの凸部23b、23cは、Y方向にそれぞれ延設された支持部材31,32の上面に設けた溝31a,32aに侵入して、溝31a,32a内をY方向にスライドするようになっている。支持部材31の溝31a内には、Y方向に延設されて支持部材23の凸部23bを貫通する雄ねじ33が収容されている。支持部材23の凸部23b内には、雄ねじ33に螺合した図示しないナットが組み込まれており、雄ねじ33の回転により、支持部材23がY方向に移動するようになっている。すなわち、雄ねじ33と支持部材23に組み込まれたナットにより、ボールねじ機構が構成されている。雄ねじ33の一端は、支持部材31の一端に組み付けたY方向モータ34の回転軸に連結され、雄ねじ33の他端は支持部材31の他端に回転可能に支持されている。これにより、Y方向モータ34の回転により雄ねじ33が軸線周りに回転して、支持部材23が移動部材21、センサ支持台11及び磁気センサ10と共にY方向に移動する。
【0025】
また、この太陽電池セル検査装置は、太陽電池パネルSPを載置するための、ステージ40を備えている。ステージ40は、支持部材31,32の各端部から上方に延設された連結部41a,41b,41c,41dを介して、支持部材31,32の上方に配置された方形状の枠体42を有している。枠体42は、支持部材31,32の上方にそれぞれ位置する支持部42a,42bと、両支持部42a,42bの両端部をそれぞれ連結する支持部42c、42dとを備えている。支持部42a,42b,42cには、内側方向に突出して太陽電池パネルSPを載置する載置部が設けられている。支持部42a,42bには、移動載置部材43が両端部にてY方向に摺動可能に組み付けられている。この移動載置部材43にも、支持部42c方向に突出して太陽電池パネルSPを載置する載置部が設けられている。そして、太陽電池パネルSPを枠体42の支持部42a,42b,42c及び移動載置部材43上に載置した状態では、磁気センサ10が太陽電池パネルSPの下方に位置するようになっている。
【0026】
ふたたび図1の説明に戻ると、X方向モータ25内には、X方向モータ25の回転を検出して、その回転を表す回転信号を出力するエンコーダ25aが組み込まれている。この回転信号は、X方向モータ25が所定の微少角度だけ回転するたびにハイレベルとローレベルとを交互に切替えるパルス列信号であって、回転方向を識別するために互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号とB相信号とで構成される。回転信号は、X方向位置検出回路61及びX方向フィードモータ制御回路62に出力される。X方向位置検出回路61は、前記回転信号のパルス数をX方向モータ25の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値からX方向モータ25によるステージ40(太陽電池パネルSP)に対するセンサ支持台11のX方向位置(すなわち磁気センサ10のX方向位置)を検出し、検出したX方向位置をX方向フィードモータ制御回路62及び後述するコントローラ70に出力する。X方向フィードモータ制御回路62は、コントローラ70の指示により、X方向モータ25の駆動及び停止を制御する。このX方向モータ25の駆動時においては、X方向フィードモータ制御回路62は、エンコーダ25aからの回転信号を用いてX方向モータ25を所定の回転速度で回転させる。
【0027】
X方向位置検出回路61におけるカウント値の初期設定は、電源投入時にコントローラ70の指示によって行われる。すなわち、コントローラ70は、電源投入時に、X方向フィードモータ制御回路62にセンサ支持台11の初期位置に対応したX方向限界位置への移動、及びX方向位置検出回路61に初期設定を指示する。この指示により、X方向フィードモータ制御回路62は、X方向モータ25を駆動してセンサ支持台11を初期位置に対応したX方向限界位置まで移動させる。X方向位置検出回路61は、センサ支持台11のX方向への移動中、X方向モータ25内のエンコーダ25aからの回転信号を入力し続けている。そして、センサ支持台11が初期位置に対応したX方向限界位置まで達してX方向モータ25の回転が停止すると、X方向位置検出回路61はエンコーダ25aからの回転信号の入力停止を検出して、カウント値を「0」にリセットする。このとき、X方向位置検出回路61は、X方向フィードモータ制御回路62に出力停止のための信号を出力し、これにより、X方向フィードモータ制御回路62はX方向モータ25への駆動信号の出力を停止する。その後に、X方向モータ25が駆動された際には、X方向位置検出回路61は、回転信号のパルス数をX方向モータ25の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値に基づいてセンサ支持台11のX方向位置を計算し、計算したX方向位置をX方向フィードモータ制御回路62及びコントローラ70に出力し続ける。
【0028】
Y方向モータ34内には、Y方向モータ34の回転を検出して、前記X方向モータ25と同様に、その回転を表す回転信号を出力するエンコーダ34aが組み込まれている。この回転信号は、Y方向位置検出回路63及びY方向フィードモータ制御回路64に出力される。Y方向位置検出回路63は、前記回転信号のパルス数をY方向モータ34の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値からY方向モータ34によるセンサ支持台11のY方向位置(すなわち磁気センサ10のY方向位置)を検出し、検出したY方向位置をY方向フィードモータ制御回路64及びコントローラ70に出力する。Y方向フィードモータ制御回路64は、コントローラ70の指示により、前記X方向フィードモータ制御回路62の場合と同様に、Y方向モータ34の駆動及び停止を制御する。
【0029】
Y方向位置検出回路63におけるカウント値の初期設定は、電源投入時にコントローラ70の指示によって行われる。すなわち、コントローラ70は、電源投入時に、Y方向フィードモータ制御回路64にセンサ支持台11の初期位置に対応したY方向限界位置への移動、及びY方向位置検出回路63に初期設定を指示する。この指示により、Y方向フィードモータ制御回路64は、Y方向モータ34を駆動してセンサ支持台11を初期位置に対応したY方向限界位置まで移動させる。Y方向位置検出回路63は、センサ支持台11のY方向への移動中、Y方向モータ34内のエンコーダ34aからの回転信号を入力し続けている。そして、センサ支持台11が初期位置に対応したY方向限界位置まで達してY方向モータ34の回転が停止すると、Y方向位置検出回路63はエンコーダ34aからの回転信号の入力停止を検出して、カウント値を「0」にリセットする。このとき、Y方向位置検出回路63は、Y方向フィードモータ制御回路64に出力停止のための信号を出力し、これにより、Y方向フィードモータ制御回路64はY方向モータ34への駆動信号の出力を停止する。その後に、Y方向モータ34が駆動された際には、Y方向位置検出回路63は、回転信号のパルス数をY方向モータ34の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値に基づいてセンサ支持台11のY方向位置を計算し、計算したY方向位置をY方向フィードモータ制御回路64及びコントローラ70に出力し続ける。
【0030】
この太陽電池検査装置は、さらに、通電信号供給回路65、通電回路66、センサ信号取出回路67、ロックインアンプ68及びコントローラ70を備えている。通電信号供給回路65は、正弦波発振器及び矩形波変換回路を含み、コントローラ70によって作動制御されて、正弦波発振器によって発振される正弦波信号を通電信号として通電回路66に供給する。なお、通電信号は、「0」を基準に正負に変化する信号であり、その周波数は、例えば数10ヘルツから数100ヘルツ程度である。また、通電信号供給回路65は、前記正弦波信号からなる通電信号を矩形波変換回路による変換により、前記通電信号と同期して「0」を中心として正負に変化する矩形波信号を生成して、参照信号としてロックインアンプ68に出力する。
【0031】
通電回路66も、コントローラ70によって作動制御されて、前記供給された通電信号に基づいて接続端子St1,St2を介して詳しくは後述する太陽電池パネルSPに通電する。この場合、通電回路66は、通電信号供給回路65から供給される「0」を基準に正負に変化する正弦波信号に正のオフセット電圧を加算して、前記オフセット電圧を中心に正弦波状に変化して常に正の範囲内で変化する通電信号に変換して、太陽電池パネルSPの接続端子St1に接続ラインL1を介して正側電圧としてそれぞれ供給する(図8参照)。一方、通電回路66の接地電圧は、太陽電池パネルSPの接続端子St2に接続ラインL2を介して負側電圧として供給される。すなわち、所定周波数の交流成分を重畳させた直流電圧が、太陽電池パネルSPの接続端子St1,St2間に印加される。
【0032】
この場合、通電回路66は、コントローラ70によって制御されて、通電信号供給回路65からの正弦波信号の振幅及びオフセット電圧を変更して、第1印加電圧と第2印加電圧を太陽電池パネルSPにそれぞれ印加する。第1印加電圧の平均電圧(オフセット電圧)Vave1及び交流信号(正弦波信号)の振幅Vp-p1は、図10に示すように、第2印加電圧の平均電圧(オフセット電圧)Vave2及び交流信号(正弦波信号)の振幅Vp-p2よりも大きい。第1印加電圧の平均電圧Vave1及び交流信号の振幅Vp-p1は、例えば5.2V及び4Vである。第2印加電圧の平均電圧Vave2及び交流信号の振幅Vp-p2は、例えば3.5V及び0.5Vである。なお、第1及び第2印加電圧の最小電圧は、太陽電池セルSPの順方向電圧降下(順方向に電流を流すのに必要な最低限の電圧:例えば3.0V程度)より大きい電圧である。特に、本実施形態では、第1印加電圧の平均電圧Vave1は順方向電圧降下よりもかなり大きいが、第2印加電圧の平均電圧Vave2は順方向電圧降下よりもやや大きな電圧で、第2印加電圧の交流信号の振幅Vp-p2はかなり小さい。
【0033】
次に、磁気センサ10について説明しておく。磁気センサ10は、図3に示すように、X方向の磁界を検出するX方向磁気センサ10Aと、Y方向の磁界の変化を検出するY方向磁気センサ10Bとを備えている。X方向磁気センサ10Aは、抵抗r11,r12,r13及び磁気抵抗素子MR1からなるブリッジ回路で構成されており、抵抗r11,r13の接続点と、抵抗r12及び磁気抵抗素子MR1の接続点との間に、センサ信号取出回路67の後述する定電圧供給回路67aから電圧+V,−Vが印加されるようになっている。また、X方向磁気センサ10Aにおいては、抵抗r13及び磁気抵抗素子MR1の接続点と、抵抗r11,r12間の接続点との間の電圧をX方向磁気検出信号として出力する。抵抗r11,r12,r13の値は同じであり、磁界の強さが「0」であるときの磁気抵抗素子MR1の抵抗値に等しい。これにより、ほぼ「0」を基準としたX方向の磁界の正負の変化により、X方向磁気検出信号はほぼ「0」を基準にX方向の磁界の大きさに比例して正負に変化する電圧信号となる。
【0034】
Y方向磁気センサ10Bは、抵抗r21,r22,r23及び磁気抵抗素子MR2からなるブリッジ回路で構成されており、抵抗r21,r22の接続点と、抵抗r23及び磁気抵抗素子MR2の接続点との間に、センサ信号取出回路67の後述する定電圧供給回路67bから電圧+V,−Vが印加されるようになっている。また、Y方向磁気センサ10Bにおいては、抵抗r22及び磁気抵抗素子MR2の接続点と、抵抗r21,r23間の接続点との間の電圧をY方向磁気検出信号として出力する。抵抗r21,r22,r23の値は同じであり、磁界の強さが「0」であるときの磁気抵抗素子MR2の抵抗値に等しい。これにより、ほぼ「0」を基準としたY方向の磁界の正負の変化により、Y方向磁気検出信号はほぼ「0」を基準にY方向の磁界の大きさに比例して正負に変化する電圧信号となる。
【0035】
センサ信号取出回路67は、定電圧供給回路67a,67b及び増幅器67c,67dを備えている。定電圧供給回路67a,67bは、コントローラ70からの指示により、X方向磁気センサ10A及びY方向磁気センサ10Bに対して、定電圧+V,−Vを供給する。増幅器67c、67dは、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号をそれぞれ増幅してロックインアンプ68に出力する。
【0036】
ロックインアンプ68は、図4に詳細に示すように、X方向磁気センサ10Aから増幅器67cを介して供給されるX方向磁気検出信号を入力するハイパスフィルタ68aと、Y方向磁気センサ10Bから増幅器67dを介して供給されるY方向磁気検出信号を入力するハイパスフィルタ68bとを備えている。ハイパスフィルタ68a,68bは、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号に含まれる、磁界の強さに比例した信号成分以外の不要な成分を取り除くとともに、信号をグランドレベルを中心に変化するようにする。
【0037】
ハイパスフィルタ68aの出力は、増幅器68cを介して位相検波回路68d,68eに供給される。位相検波回路68d,68eは、それぞれ乗算器によって構成されている。位相検波回路68dは、ハイパスフィルタ68a及び増幅器68cを介して供給されるX方向磁気検出信号に、通電信号供給回路65からの参照信号を乗算してローパスフィルタ68fに出力する。位相検波回路68eは、ハイパスフィルタ68a及び増幅器68cを介して供給されるX方向磁気検出信号に、通電信号供給回路65からの参照信号を位相シフト回路68gで90度位相を遅らせた遅延参照信号を乗算してローパスフィルタ68hに出力する。これにより、ローパスフィルタ68fにはX方向磁気検出信号の発光制御信号(参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ68fは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してX方向磁気検出信号の発光制御信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ68hにはX方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号(遅延参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ68hは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してX方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。
【0038】
ハイパスフィルタ68bの出力は、増幅器68iを介して位相検波回路68j,68kに供給される。位相検波回路68j,68kには、ローパスフィルタ68m,68nが接続されている。位相検波回路68j,68k及びローパスフィルタ68m,68nは、前述した位相検波回路68d,68e及びローパスフィルタ68f,68hと同様に構成されている。これにより、ローパスフィルタ68mにはY方向磁気検出信号の発光制御信号(参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ68mは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してY方向磁気検出信号の発光制御信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ68nにはY方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号(遅延参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ68nは供給された成分信号をローパス処理してY方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ68f,68h,68m,68nは、A/D変換器68o,68p,68q,68rにそれぞれ接続されている。A/D変換器68o,68p,68q,68rは、所定の時間間隔ごとに、ローパスフィルタ68f,68h,68m,68nからの信号をそれぞれA/D変換してコントローラ70に供給する。
【0039】
ふたたび図1の説明に戻り、コントローラ70は、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータと、ハードディスクや不揮発性メモリなどの記憶装置と、入出力インタフェース等から構成される電子制御装置である。コントローラ70は、記憶装置に記憶された図5A乃至図5Bのデータ取得プログラム、図6A及び図6Bの領域区分サブルーチン、並びに図7A乃至図7Gの評価プログラムを実行してこの太陽電池セル検査装置の動作を制御する。コントローラ70には、作業者が各種パラメータや処理等を指示するための入力装置71と、作業者に対して作動状況等を視覚的に知らせるための表示装置72とが接続されている。
【0040】
b.太陽電池パネル例
次に、太陽電池パネルSPについて説明しておく。太陽電池パネルSPは、図8に示すように、マトリクス状に配置されて基板80上に固定された多数の太陽電池セルSCを有する。本実施形態では、X方向にtmax個、Y方向にsmax個の太陽電池セルSCが配置されているものとする。
【0041】
各太陽電池セルSCは、図9A及び図9Bに示すように、方形状に形成され、外部に電力を取出すための長尺状の一対の取出電極(正電極及び負電極)81,82を上面にて平行に延設させており、一対の取出電極81,82の間を前記取出電極81,82と同一方向に延設させた複数の発電セル83を直列接続した構造を有している。各発電セル83は、表面電極83a、半導体層83b及び裏面電極83cからなる。半導体層83bは、上側をP層とするとともに下側をN層としており、発電による発生電流は裏面電極83cから表面電極83aの方向に流れる。ただし、本実施形態では、太陽電池セルSCに対する電圧の印加により太陽電池セルSC内に電流を流すので、電圧印加による通電電流は、表面電極83aから裏面電極83cの方向に流れる。隣り合う発電セル83,83間は、一方の表面電極83aと他方の裏面電極83cが導電層84によって電気的に接続され、かつ絶縁層85によって絶縁されている。一端(図示右側端)の発電セル83の表面電極83aは、導電層からなる内部電極86を介して取出電極81に接続され、この発電セル83の外側には絶縁層87aが設けられている。他端(図示左側端)の発電セル83の裏面電極83cは、導電層からなる内部電極88を介して取出電極82に接続されており、この発電セル83の外側には絶縁層87bが設けられている。この太陽電池セルSCの上面はガラス層89で覆われており、取出電極81,82は、内部電極86,88に導電性ペースト又は半田により接続されている。
【0042】
そして、図8に示すように、Y方向に配置されたsmax個の太陽電池セルSCの各電極81,82は接続線91でそれぞれ直列に接続され、この直列に接続されたsmax個の電極81,82は接続線92,93によりそれぞれ並列に接続されている。そして、接続線92側に接続端子St1が設けられるとともに、接続線93側に接続端子St2が設けられている。そして、通電回路66による電圧の印加により、電流は図示矢印の方向に流れる。
【0043】
c.作動説明
次に、上記のように構成した太陽電池セル検査装置の動作について説明する。作業者は、図1に示すように、通電回路66の出力端子を、導線L1,L2を介して検査対象となる太陽電池パネルSPの接続端子St1,St2に接続する。この場合、接続端子St1すなわち取出電極81側に正電圧が供給されるように接続される。そして、太陽電池セルSCをステージ40上に載置する。この場合、太陽電池パネルSPのX−Y平面の原点となる位置(後述するプログラムで変数n,mが共に「1」となる位置)の近傍のコーナーを、ステージ40の所定位置(本実施形態では図2の左下に位置するコーナー付近)に合わせる。この状態で、太陽電池セル検査装置の電源が投入されると、上述したように、コントローラ70の指示により、X方向フィードモータ制御回路62及びY方向フィードモータ制御回路64は磁気センサ10をX方向及びY方向の限界位置に移動させるとともに、X方向位置検出回路61及びY方向位置検出回路63は検出されるX方向位置及びY方向位置を初期値に設定する。
【0044】
その後、作業者は、入力装置71を操作することにより、太陽電池パネルSPの計測に必要なパラメータを入力する。この場合、必要なパラメータとしては、太陽電池パネルSPのX,Y方向の長さ、X,Y方向への磁気センサ10の移動ピッチ(太陽電池パネルSPのX,Y方向の走査間隔)ΔX,ΔY、太陽電池セルSCのX方向及びY方向の数tmax,smax、各太陽電池セルSCのX方向及びY方向の長さなどである。この入力されたパラメータは、コントローラ70に記憶される。また、後述するデータ処理プログラムや評価プログラムにて使用されるX方向終了位置Xmax、Y方向終了位置Ymax、値Nn、値Nm等のパラメータが、この入力されたパラメータから計算されて記憶される。なお、移動ピッチΔX,ΔYは微小値(例えば、1mm)であり、作業者が入力するのではなく、予め用意された値でもよい。
【0045】
この状態で、作業者は、入力装置71を操作することにより、コントローラ70に図5A及び図5Bのデータ取得プログラムの実行を開始させる。すなわち、太陽電池パネルSPの計測の開始をコントローラ70に指示する。この指示に応答して、コントローラ70は、図5AのステップS100にてデータ取得プログラムの実行を開始し、ステップS102にて変数p,qをそれぞれ「1」に初期設定する。変数pは、図11(A)に示すように、X方向の初期値Xsによって表される開始位置から終了値Xmaxによって表される終了位置を越えるまで所定の移動ピッチΔXずつ移動制御される磁気センサ10の走査位置を示す変数である。変数qは、図8に示す太陽電池パネルSPにおいて、「1」により最上段の複数の太陽電池セルSCを示し、「2」により最下段の複数の太陽電池セルSCを示す。
【0046】
なお、以下に説明するステップS104〜S136の処理は、太陽電池パネルSPの平面位置を発電面領域と電極近傍領域とに区分して、X方向の走査位置(測定位置)を表す変数nを発電面領域又は電極近傍領域に割当てるための処理である。発電面領域とは、図8及び図11(A)にて、取出電極82から右方に距離C・ΔXだけ離れた境界位置(破線位置)と、取出電極81から左方に距離C・ΔXだけ離れた境界位置(破線位置)に挟まれた領域(太陽電池セルSCの取出電極81,82間の中央領域)である。電極近傍領域は、前記発電面領域以外の領域すなわち取出電極81,82の左右近傍の領域である。ここで、C・ΔXは例えば6mm程度である。また、Cは比較的小さな所定の整数値であり、前述のようにΔX=1mmであれば、c=6である。
【0047】
前記ステップS102の処理後、コントローラ70は、ステップS104にて、X方向フィードモータ制御回路62に対して磁気センサ10をX方向に移動して測定位置がX方向の初期値Xsによって表される初期位置になるように指示するとともに、Y方向フィードモータ制御回路64に対して磁気センサ10をY方向に移動して測定位置が値Ys+Aによって表される第1位置になるように指示する。値Ysは測定位置のY方向の初期値である。値Aは、値Ys+Aで指定されるY方向の測定位置が図8に示す太陽電池パネルSPにおける最上段の複数の太陽電池セルSCのY方向の中央付近になるように、太陽電池セルSCのY方向の長さの半分程度の値であり、前記入力された太陽電池セルSCのY方向の長さから計算される。この指示に応答して、X方向フィードモータ制御回路62は、X方向位置検出回路61からX方向検出位置を入力しながら、X方向検出位置が初期値Xsに一致するまでX方向モータ25を駆動制御する。Y方向フィードモータ制御回路64は、Y方向位置検出回路63からY方向検出位置を入力しながら、Y方向検出位置が値Ys+Aに一致するまでY方向モータ34を駆動制御する。これにより、磁気センサ10の位置は、図8の太陽電池パネルSPの最も左上の太陽電池セルSCの取出電極82の延設方向のほぼ中央であって、取出電極82の若干左側に位置することになる。
【0048】
ステップS104の処理後、コントローラ70は、ステップS106にて通電信号供給回路65に作動開始を指示する。この指示に応答して、通電信号供給回路65は、作動を開始して正弦波信号を通電回路66に供給し始めるとともに、ロックインアンプ68に前記正弦波信号と同期した矩形波信号を供給し始める。次に、コントローラ70は、ステップS108にて通電回路66に作動開始を指示するとともに第1印加電圧(図10参照)を出力するように指示する。この指示に応答して、通電回路66は、第1印加電圧を接続線L1,L2を介して太陽電池パネルSPの接続端子St1,St2間にそれぞれ供給する。その結果、太陽電池パネルSPにおいては、取出電極81,82に図8の矢印で示す方向に電流が流れ始めるとともに、各太陽電池セルSC内では取出電極81から取出電極82に向かってX方向の電流が流れ始める。
【0049】
次に、コントローラ70は、ステップS110にてセンサ信号取出回路67の作動開始を指示する。この指示に応答して、センサ信号取出回路67内の定電圧供給回路67a,67bは、X方向磁気センサ10A及びY方向磁気センサ10Bに定電圧信号+V,−Vを供給し始める。これにより、X方向磁気センサ10A及びY方向磁気センサ10BによるX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号が、増幅器67c,67dを介してロックインアンプ68にそれぞれ供給され始める。この場合、前記通電回路66による太陽電池パネルSPへの通電によって太陽電池パネルSPには電流が流れており、各太陽電池セルSCの表裏面近傍には、前記電流による磁界Hが発生する。したがって、X方向磁気センサ10Aは、X方向の磁界Hxの大きさに比例した電圧をX方向磁気検出信号として出力し始める。また、Y方向磁気センサ10Bは、Y方向の磁界Hxの大きさに比例した電圧をY方向磁気検出信号として出力し始める。これらのX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号は、各太陽電池セルSCに流れる電流が正弦波状に変化するので、正弦波状に変化する信号である。ただし、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号の位相は、通電回路66から出力される正弦波状の第1印加電圧の位相とは若干異なる。
【0050】
ロックインアンプ68においては、入力されたX方向磁気検出信号がハイパスフィルタ68a及び増幅器68cを介して位相検波回路(乗算器)68d,68eにそれぞれ供給されるとともに、入力されたY方向磁気検出信号がハイパスフィルタ68b及び増幅器68iを介して位相検波回路(乗算器)68j,68kにそれぞれ供給される。位相検波回路68d,68jには、通電信号信号供給回路65からの矩形波状の参照信号が供給されている。また、位相検波回路68e,68kには、前記参照信号の位相を位相シフト回路68gで90度遅らせた遅延参照信号が供給されている。そして、位相検波回路68d,68eは、増幅器68cを介して供給されたX方向磁気検出信号に参照信号及び遅延参照信号をそれぞれ乗算して、乗算した信号をローパスフィルタ68f,68hを介してA/D変換器68o,68pにそれぞれ供給する。位相検波回路68j,68kは、増幅器68cを介して供給されたY方向磁気検出信号に参照信号及び遅延参照信号をそれぞれ乗算して、乗算した信号をローパスフィルタ68m,68nを介してA/D変換器68q,68rにそれぞれ供給する。
【0051】
ここで、ローパスフィルタ68f,68h,68m,68nは供給された信号の成分の大きさを表す信号すなわち正弦波状の信号の振幅に比例した大きさを表す信号を出力するように機能する。したがって、A/D変換器68oには、X方向磁気検出信号の参照信号(すなわち発光制御信号)に同期した信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器68pには、X方向磁気検出信号の参照信号から90度だけ位相の遅れた信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器68qには、Y方向磁気検出信号の参照信号に同期した信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器68rには、Y方向磁気検出信号の参照信号から90度だけ位相の遅れた信号成分の大きさを表す信号が供給される。そして、A/D変換器68o,68p,68q,68rは、それぞれ供給された信号を所定時間ごとにサンプリングしてA/D変換し、A/D変換したサンプリングデータをコントローラ70に供給する。したがって、コントローラ70には前記各信号成分の所定時間ごとの大きさを表すサンプリングデータが所定時間ごとに供給されるようになる。
【0052】
前記ステップS110の処理後、コントローラ70は、ステップS112にて、ロックインアンプ68のA/D変換器68o,68p,68q,68rから供給されるサンプリングデータを取込み、ステップS114にて取込んだ各サンプリングデータの数が所定数Kに達したか否かを判定する。この所定数Kは、例えば数個から数十個の各サンプリングデータの数を表す値に設定されている。各サンプリングデータの数が所定数Kに達していなければ、コントローラ70は、ステップS114にて「No」と判定して、ステップS114にてA/D変換器68o,68p,68q,68rから次に出力されるサンプリングデータを取込む。そして、A/D変換器68o,68p,68q,68rから取込んだ各サンプリングデータの数が所定数Kに達すると、コントローラ70は、ステップS114にて「Yes」と判定して、ステップS116以降の処理を実行する。ステップS112にて取込まれたサンプリングデータは、変数p,qによって指定されるサンプリングデータ群として、RAMに記憶される。
【0053】
具体的には、A/D変換器68oから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx1(p,q)としてRAMに記憶される。A/D変換器68pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx2(p,q)としてRAMに記憶される。A/D変換器68pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy1(p,q)としてRAMに記憶される。A/D変換器68rから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy2(p,q)としてRAMに記憶される。なお、この場合の変数p,qは、共に「1」である。
【0054】
前記ステップS112,114の処理後、コントローラ70は、ステップS116にて、値Xs+p・ΔXがX方向の終了値Xmaxよりも大きいか否かを判定する。値Xs+p・ΔXは、X方向の走査間隔を表す所定値ΔXに変数pを乗算して初期値Xsを加算した値であり、次のX方向の測定位置を表す値である。この場合、変数pは「1」であり、値Xs+p・ΔXが終了値Xmax以下であるので、コントローラ70は、ステップS116にて「No」と判定して、ステップS118にて、X方向フィードモータ制御回路62に、磁気センサ10の中心位置をX方向正側に移動させるように指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路62は、X方向モータ25を作動させて磁気センサ10の中心位置をX方向正側に移動させ始める。
【0055】
次に、コントローラ70は、ステップS120にてX方向位置検出回路61からX方向位置を入力し、ステップS122にて入力したX方向位置が次のX方向の測定位置に達したか否か、すなわちX方向位置を示す値が値Xs+p・ΔX以上になったか否かを判定する。そして、X方向位置検出回路61から入力したX方向位置が次のX方向の測定位置に達するまで、コントローラ70は、ステップS122にて「No」と判定し続けて、ステップS120,S122の処理を繰り返し実行する。X方向位置検出回路61から入力したX方向位置が次のX方向の測定位置に達すると、コントローラ70は、ステップS1222にて「Yes」と判定し、ステップS124にてX方向フィードモータ制御回路62に、磁気センサ10のX方向正側への移動を停止させることを指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路62は、X方向モータ25の作動を停止させて、磁気センサ10のX方向正側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ10は、値Xs+p・ΔXで表されたX方向位置、かつ値Ys+Aによって表されるY方向位置を測定位置として、太陽電池パネルSPの磁界を検出し始める。
【0056】
前記ステップS124の処理後、コントローラ70は、ステップS126にて変数pに「1」を加算してステップS112に戻り、前述のステップS112,S114のサンプリングデータの取込み処理を実行する。これらのステップS112,S114の処理により、値Xs+(p−1)・ΔXで表されたX方向位置、かつ値Ys+Aによって表されるY方向位置を測定位置とする磁気センサ10の磁界検出によるサンプリングデータがRAMに新たに記憶される。具体的には、X方向磁気検出信号の参照信号及び遅延参照とそれぞれ同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータが、サンプリングデータ群Sx1(p,q),Sx2(p,q)としてRAMに記憶される。また、Y方向磁気検出信号の参照信号及び遅延参照信号とそれぞれ同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータが、サンプリングデータ群Sy1(p,q),Sy2(p,q)としてRAMに記憶される。なお、この場合の変数pは「2」であり、変数qは「1」である。
【0057】
そして、コントローラ70は、次のX方向の測定位置(X方向の走査位置)を表す値Xs+p・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなるまで、ステップS112〜S126の処理により、磁気センサ10による測定位置をX方向正側に所定値ΔXずつ移動させるとともに、変数pを「1」ずつ増加させながら、サンプリングデータを取込む。そして、次のX方向の測定位置を表す値Xs+n・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなると、コントローラ70は、ステップS116にて「Yes」と判定して、ステップS128に進む。この状態では、サンプリングデータ群Sx1(p,q),Sx2(p,q),Sy1(p,q),Sy2(p,q)(p=1,2,3・・・pmax,q=1)がRAMに記憶されている。なお、値pmaxは、終了値Xmax直前の測定位置によるサンプリングデータ群に関する変数pの値であって、X方向における測定位置の数を表している。
【0058】
ステップS128においては、変数qが「2」であるか否かを判定する。この場合、変数qは「1」であるので、コントローラ70は、ステップS128にて「No」と判定して、コントローラ70は、ステップS130にて変数pを「1」に初期設定し、ステップS132にて変数qを「2」に変更する。次に、ステップS134の処理を実行した後、ステップS112に戻る。ステップS134においては、コントローラ70は、X方向フィードモータ制御回路62に対して磁気センサ10をX方向に移動して測定位置がX方向の初期値Xsによって表される初期位置になるように指示するとともに、Y方向フィードモータ制御回路64に対して磁気センサ10をY方向に移動して測定位置が値Ys+Bによって表される第2位置になるように指示する。値Bは、値Ys+Bで指定されるY方向の測定位置が図8に示す太陽電池パネルSPにおける最下段の複数の太陽電池セルSCのY方向の中央付近になるように、太陽電池パネルSPのY方向の長さから太陽電池セルSCのY方向の長さの半分の長さを減算した程度の値であり、前記入力された太陽電池パネルSPのY方向の長さ及び太陽電池セルSCのY方向の長さから計算される。
【0059】
この指示に応答して、X方向フィードモータ制御回路62は、X方向位置検出回路61からX方向検出位置を入力しながら、X方向検出位置が初期値Xsに一致するまでX方向モータ25を駆動制御する。Y方向フィードモータ制御回路64は、Y方向位置検出回路63からY方向検出位置を入力しながら、Y方向検出位置が値Ys+Bに一致するまでY方向モータ34を駆動制御する。これにより、磁気センサ10の位置は、図8の太陽電池パネルSPの最も左下の太陽電池セルSCの取出電極82の延設方向のほぼ中央であって、取出電極82の若干左側に位置することになる。
【0060】
前記ステップS134の処理後、コントローラ70は、ステップS112に戻り、X方向の測定位置(X方向の走査位置)を表す値Xs+p・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなるまで、ステップS112〜S126の処理により、磁気センサ10による測定位置をX方向正側に所定値ΔXずつ移動させるとともに、変数pを「1」ずつ増加させながら、サンプリングデータを取込む。その結果、前記値Ys+Bによって示されるY方向位置において、本実施形態においては図8の太陽電池パネルSPの最下段の複数の太陽電池セルSCのY方向のほぼ中央位置において、X方向における初期値Xsによって表される初期位置からの終了値Xmaxによって表される終了位置の直前位置までの各測定位置ごとのサンプリングデータ群Sx1(p,q),Sx2(p,q),Sy1(p,q),Sy2(p,q)(p=1,2,3・・・pmax,q=2)がRAMに記憶される。
【0061】
そして、X方向の測定位置(X方向の走査位置)を表す値Xs+p・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなると、コントローラ70は、ステップS116にて「Yes」と判定して、ステップS128にて変数qが「2」であるかを判定する。この場合、変数qは、「2」に設定されているので、コントローラ70は、ステップS128にて「Yes」と判定して、ステップS136にて、領域区分サブルーチンを実行する。
【0062】
領域区分サブルーチンは図6AのステップS300にて開始され、コントローラ70は、ステップS302にて、変数p,qをそれぞれ「1」に初期設定する。変数pは、前記場合と同様に、X方向における測定位置を指定するための変数である。また、変数qは、図8の太陽電池パネルSPのY方向の異なる2つの位置における複数の太陽電池セルSCを指定する変数、本実施形態では、最上段及び最下段の複数の太陽電池セルSCを指定する変数である。次に、コントローラ70は、ステップS304にて、変数p,qによって指定される所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1(p,q),Sx2(p,q),Sy1(p,q),Sy2(p,q)の磁界の大きさの各平均値Sx1,Sx2,Sy1,Sy2を計算する。具体的には、各サンプリングデータ群Sx1(p,q),Sx2(p,q),Sy1(p,q),Sy2(p,q)ごとに、K個のサンプリングデータを加算して値Kで除算する。
【0063】
次に、コントローラ70は、ステップS306にて、前記計算した平均値Sx1,Sx2を用いた下記式1,2の演算の実行により、X方向磁気検出信号の極大値Hxと、X方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θxとを計算する。
Hx=(Sx12+Sx22)1/2 …式1
θx=tan-1(Sx2/Sx1) …式2
これにより、X方向磁気検出信号としてHx・sin(2πft+θx)が検出されたことになる。なお、fは、通電信号供給回路65から出力される通電信号及び参照信号の周波数に等しい。
【0064】
次に、コントローラ70は、ステップS308にて、前記計算した平均値Sy1,Sy2を用いた下記式3,4の演算の実行により、Y方向磁気検出信号の極大値Hyと、Y方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θyとを計算する。
Hy=(Sy12+Sy22)1/2 …式3
θy=tan-1(Sy2/Sy1) …式4
これにより、Y方向磁気検出信号としてHy・sin(2πft+θy)が検出されたことになる。
【0065】
次に、コントローラ70は、ステップS310にて、前記計算したHx,θx,Hy,θyを用いた下記式5,6の演算の実行により、通電電流すなわち第1印加電圧が最大となるタイミング(前記X方向磁気検出信号Hx・sin(2πft+θx)及び前記Y方向磁気検出信号Hy・sin(2πft+θy)における2πftがπ/2のタイミング)における、測定位置の磁界の強さHxy及び磁界の向きθxyを計算する。この場合、通電電流が最大となるタイミングを採用した理由は、位相シフト量θx,θyは小さく、通電電流が最大となるタイミング近傍で測定位置の磁界の強さHxyが最大値近傍の値になるためである。なお、位相シフト量θx,θyが小さくなく、通電電流が最大となるタイミング近傍で測定位置の磁界の強さHxyが最大値近傍にならない場合には、磁界の強さHxyが最大値近傍になるようなタイミングの角度をπ/2に代えて用いればよい。
Hxy=[{Hx・sin(π/2+θx)}2+{Hy・sin(π/2+θy)}2]1/2 …式5
θxy=tan-1{Hy・sin(π/2+θy)}/{Hx・sin(π/2+θx)} …式6
【0066】
次に、コントローラ70は、ステップS312にて、太陽電池パネルSPに流れる電流は前記磁界の強さHxyに比例し、かつ方向が磁界の方向θxyと−π/2異なることから、前記計算したHxy,θxyを用いた下記式7,8の演算の実行により、通電電流が最大となるタイミングにおける、太陽電池パネルSPの測定位置に流れる電流の大きさIxy及び方向θixyを計算する。ただし、この場合の値Kは、比例定数である。
Ixy=K・Hxy …式7
θixy=θxy−π/2 …式8
【0067】
次に、コントローラ70は、ステップS314にて、前記計算したIxy,θixyを用いた下記式9の演算の実行により、太陽電池パネルSPの測定位置においてY方向に流れる電流の大きさIyを計算する。
Iy=Ixy・sinθixy …式9
そして、このステップS314にて、前記計算された電流の大きさIyは、太陽電池パネルSPの測定位置を表す変数p,qを用いて電流の大きさデータIy(p,q)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
【0068】
次に、コントローラ70は、ステップS316にて変数pがX方向の測定位置数を表す値pmaxに達したか否かを判定する。変数pが値pmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS316にて「No」と判定し、ステップS318にて変数pに「1」を加算してステップS304に戻る。そして、前述したステップS304〜S314の処理を実行した後、コントローラ70は、ステップS316にてふたたび変数pが値pmaxに達したか否かを判定する。変数pが値pmaxに達しない限り、ステップS304〜318の処理が繰り返し実行される。
【0069】
このようなステップS304〜S318の繰り返し処理中、変数pが値pmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS316にて「Yes」と判定して、ステップS320にて変数qが2番目のY方向位置における複数の太陽電池セルSCを表す値「2」であるかを判定する。変数qが「2」でなければ、コントローラ70は、ステップS320にて「No」と判定し、ステップS312にて変数qを「2」に変更して、ステップS324にて変数pを「1」に初期設定して、ステップS304に戻る。そして、変数pが値pmaxに達するまで前述したステップS304〜S318の処理を繰り返し実行した後、コントローラ70は、ステップS320にてふたたび変数qが値「2」であるかを判定する。この場合、変数qが「2」であるので、コントローラ70は、ステップS320にて「Yes」と判定して、図6BのステップS326に進む。
【0070】
ステップS326においては、コントローラ70は、変数q(=1,2)ごとに、Y方向の電流の大きさデータIy(p,q)を変数p(=1〜pmax)の順に並べて、電流の大きさデータIy(p,q)のピーク位置を検出し、ピーク位置を表す変数pを順に並べてピーク位置p(k,q)(k=1,2,3・・・kmax,q=1,2)として記憶する。なお、値kmaxは、X方向の取出電極81,82の数(X方向の太陽電池セルSCの数tmaxの2倍)(図8参照)に等しい。この場合、太陽電池パネルSPにおいては、図11(B)に示すように、取出電極81,82部分に他の部分に比べて極めて大きなY方向の電流が流れるので、図8の最上段及び最下段の複数の太陽電池セルSCの取出電極81,82のX方向の位置が検出され、検出された取出電極81,82のX方向の位置を表す変数pがピーク位置p(k,q)として記憶されることになる。
【0071】
次に、コントローラ70は、ステップS328にて、ピーク位置p(k,1),p(k,2)の数がそれぞれY方向の太陽電池セルSCの数tmaxの2倍(2・tmax)であるかを判定する。この場合、前記ステップS326の処理によって図8の最上段及び最下段の複数の太陽電池セルSCの取出電極81,82が正確に検出されていれば、ピーク位置p(k,1),p(k,2)の数はそれぞれY方向の太陽電池セルSCの数tmaxの2倍であるはずである。したがって、前記取出電極81,82が正確に検出されていれば、コントローラ70は、ステップS328にて「Yes」と判定し、ステップS330にて変数kを「1」に初期設定して、ステップS332〜S342の循環処理を繰返し実行する。なお、前記取出電極81,82が正確に検出されていなければ、コントローラ70は、ステップS328にて「No」と判定して、詳しくは後述するステップS346,S348の処理を実行する。
【0072】
前記循環処理においては、コントローラ70は、ステップS332にて、ピーク位置p(k,1)とピーク位置p(k,2)との差の絶対値|p(k,1)−p(k,2)|が所定の許容値以下であるかを判定する。この場合、太陽電池パネルSPがステージ40上に正しくセットされていれば、図8の最上段と最下段の各太陽電池セルSCの取出電極81,82のX方向位置はそれぞれ等しいはずであり、前記ステップS328の処理によって取出電極81,82のX方向の位置が正確に検出されていれば、両ピーク位置p(k,1),p(k,2)はほぼ等しいはずである。したがって、太陽電池パネルSPが正しくセットされ、かつ取出電極81,82が正確に検出されていれば、コントローラ70はステップS332にて「Yes」判定してステップS334に進む。そうでない場合には、コントローラ70は、ステップS332にて「No」と判定して、詳しくは後述するステップS346,S348の処理を実行する。
【0073】
ステップS334においては、コントローラ70は、変数kが奇数であるか否かを判定する。この判定処理は、ピーク位置p(k,1),p(k,2)が太陽電池セルSCの取出電極81,82のうちのいずれに関するものであるかを判定する処理であり、変数kが奇数であればピーク位置p(k,1),p(k,2)は取出電極82に関するものであることを示し、変数kが偶数であればピーク位置p(k,1),p(k,2)は取出電極81に関するものであることを示しである(図11(A)参照)。
【0074】
そして、変数kが奇数であれば、コントローラ70は、ステップS334にて「Yes」と判定して、ステップS336にて、ピーク位置p(k,1),p(k,2)の平均値{p(k,1)+p(k,2)/2}の小数部を切捨て又は切上げすることにより、平均値{p(k,1)+p(k,2)/2}を整数値化して、この整数値化した値に前述した所定の整数値Cを加算して、加算結果をL(k)として設定する。これにより、図11(A)に示すように、取出電極82の直近右側の発電面領域の境界線位置が境界位置L(k)として設定される。また、変数kが偶数であれば、コントローラ70は、ステップS334にて「No」と判定して、ステップS338にて、ピーク位置p(k,1),p(k,2)の平均値{p(k,1)+p(k,2)/2}の小数部を切捨て又は切上げすることにより、平均値{p(k,1)+p(k,2)/2}を整数値化して、この整数値化した値から前述した所定の整数値Cを減算して、減算結果をL(k)として設定する。これにより、図11(A)に示すように、取出電極81の直近左側の発電面領域の境界線位置が境界位置L(k)として設定される。なお、境界位置L(k)は、変数1,2,3・・・kmaxのいずれかの整数値によってX方向の位置を示すデータである。
【0075】
前記ステップS336,S338の処理後、コントローラ70は、ステップS340にて変数kに「1」を加算して、ステップS342にて変数kが最大値kmax(X方向の検査終了位置に最も近い取出電極82に対応)を超えたかを判定する。コントローラ70は、変数kが最大値kmaxを超えるまで、ステップS342にて「No」と判定して前述したステップS332〜342の循環処理を繰返し実行する。そして、変数kが最大値kmaxを超えると、コントローラ70は、ステップS342にて「Yes」と判定してステップS344に進む。この状態では、図11(A)に示すように、複数の取出電極82,81に対する境界位置L(1),L(2),L(3)・・・L(kmax)がそれぞれ設定されている。そして、奇数である変数kによって指定される境界位置L(k)(L(1),L(3)・・L(kmax−1))は取出電極82の直近右側の発電面領域の境界線位置を示し、偶数である変数kによって指定される境界位置L(k)(L(2),L(4)・・L(kmax))は取出電極81の直近左側の発電面領域の境界線位置を示す。
【0076】
ステップS344においては、コントローラ70は、後述する処理によって用いられてX方向の測定位置を表す変数n(n=1,2,3・・・nmax)に対して電極近傍領域又は発電面領域をそれぞれ割当て、変数n(n=1,2,3・・・nmax)によって指定される領域指定値d(n)を電極近傍領域を表す「1」又は発電面領域を表す「2」に設定する。具体的には、奇数である変数kによって指定される境界位置L(k),L(k+1)に対して、変数nが境界位置L(k)以上かつ境界位置L(k+1)以下である変数n(L(k)≦n≦L(k+1))には発電面領域が割当てられて、前記条件の変数nによって指定される領域指定値d(n)は「2」に設定される。偶数である変数kによって指定される境界位置L(k),L(k+1)に対して、変数nが境界位置L(k)より大きくかつ境界位置L(k+1)未満である変数n(L(k)<n<L(k+1))には電極近傍領域が割当てられて、前記条件の変数nによって指定される領域指定値d(n)は「1」に設定される。また、変数nが境界位置L(1)未満又は境界位置L(kmax)より大きい変数n(n<L(1)又はn>L(kmax))には電極近傍領域が割当てられて、前記条件の変数nによって指定される領域指定値d(n)は「1」に設定される。その結果、図11(A)に示すように、取出電極81,82の近傍領域の領域指定値d(n)は「1」に設定され、取出電極82,81間の発電面領域の領域指定値d(n)は「2」に設定される。そして、ステップS344の処理後、コントローラ70はステップS350にて領域区分サブルーチンの実行を終了して、図5AのステップS138に戻る。
【0077】
次に、前述のように、太陽電池パネルSPがステージ40上に正しくセットされておらず、又は取出電極81,82が正確に検出されなくて、ステップS328又はステップS332にて「No」と判定された場合について説明する。この場合、コントローラ70は、ステップS346にて表示装置72に「異常」を表示し、ステップS348にて変数p(=1〜pmax)によって指定される電流の大きさデータIy(p,1),Iy(p,2)によって表されるY方向の電流の大きさの変化を示す曲線を表示装置72に表示する。これにより作業者は、異常発生により次の処理が行えないことを知ると同時に、前記表示装置72に表示された曲線、すなわちX方向におけるY方向の電流の大きさの変化から異常の原因を知ることができる。前記ステップS348の処理後、コントローラ70は、ステップS350にて領域区分サブルーチンの実行を終了して、図5AのステップS138に戻る。
【0078】
ステップS138においては、コントローラ70は、前述したステップS346の「異常」の表示がなされたか否かを判定する。「異常」の表示がなされなければ、コントローラ70は、ステップS138にて「No」と判定して、図5BのステップS200以降の処理を実行して、太陽電池パネルSPの測定及び検査のためのプログラムの実行を続行する。一方、「異常」の表示がなされた場合には、コントローラ70は、ステップS138にて「Yes」と判定して、図5CのステップS256以降の処理を実行して、太陽電池パネルSPの測定及び検査のためのプログラムの実行を終了する。
【0079】
この太陽電池パネルSPの測定及び検査のためのプログラムの実行を終了について先に説明しておく。この場合、コントローラ70は、ステップS256にてセンサ信号取出回路67の作動停止を指示し、ステップS268にて通電回路66の作動停止を指示し、ステップS260にて通電信号供給回路65の作動停止を指示する。これらの作動停止の指示により、センサ信号取出回路67、通電信号供給回路65、通電回路66、ロックインアンプ68及び磁気センサ10の作動が停止する。前記ステップS260の処理後、コントローラ70は、ステップS262にて、磁気センサ10をX方向駆動限界位置まで移動させることをX方向位置検出回路61及びX方向フィードモータ制御回路62に指示するとともに、磁気センサ10をY方向駆動限界位置まで移動させることをY方向位置検出回路63及びY方向フィードモータ制御回路64に指示して、ステップS264にてデータ取得プログラムの実行を終了する。X方向フィードモータ制御回路62は、前述の初期設定のように、X方向位置検出回路61と協働して、磁気センサ10をX方向駆動限界位置まで移動させる。Y方向フィードモータ制御回路64は、前述のように、Y方向位置検出回路63と協働して、磁気センサ10をY方向駆動限界位置まで移動させる。
【0080】
そして、この場合には、図7A〜図7Gの評価プログラムは実行されない。この場合、前述したステップS328又はステップS332にて「No」と判定された理由が判明すれば、その理由を解消した後に、太陽電池パネルSPの測定を再び開始すればよい。また、太陽電池セル検査装置自体に異常が発生していれば、その異常を解消するか、他の太陽電池セル検査装置を用意して、太陽電池パネルSPの測定を再び開始すればよい。
【0081】
次に、太陽電池パネルSPがステージ40上に正しくセットされ、かつ取出電極81,82が正確に検出されて、前述したステップS328又はステップS332にて「Yes」と判定されて、プログラムが図5BのステップS200に進められた場合について説明する。この場合、コントローラ70は、ステップS200にて変数nを「0」に初期設定するとともに、変数m,aをそれぞれ「1」に初期設定する。変数n,mは、太陽電池パネルSPに対する磁気センサ10の走査位置(測定位置)を示す変数である。なお、磁気センサ10は、図12に示すように、まず、X方向に初期値Xsによって表される開始位置から終了値Xmaxによって表される終了位置を越えるまで所定の移動ピッチΔXずつ移動制御される。そして、X方向の終了位置に達すると、磁気センサ10はY方向に所定の移動ピッチΔYだけ移動制御され、その後に、X方向の終了位置からX方向の開始位置まで移動ピッチΔXずつ移動制御される。そして、ふたたび、磁気センサ10はY方向に移動ピッチΔYだけ移動制御されて、X方向の開始位置から終了位置まで移動ピッチΔXずつ移動制御される。このように、磁気センサ10は、X方向に往復運動しながらY方向に移動して、太陽電池パネルSPを走査する。なお、移動ピッチΔX,ΔYは、太陽電池セルSCの縦横の長さに比べて極めて小さい。変数aは、「1」により磁気センサ10の中心位置がX方向正側に移動している状態を表し、「−1」により磁気センサ10の中心位置がX方向負側に移動している状態を表している。以降、この磁気センサ10の中心位置を測定位置という。
【0082】
前記ステップS200の処理後、コントローラ70は、ステップS202にて、X方向フィードモータ制御回路62に対して磁気センサ10をX方向に移動して測定位置がX方向の初期値Xsによって表される初期位置になるように指示するとともに、Y方向フィードモータ制御回路64に対して磁気センサ10をY方向に移動して測定位置がY方向の初期値Ysによって表される初期位置になるように指示する。この指示に応答して、X方向フィードモータ制御回路62は、X方向位置検出回路61からX方向検出位置を入力しながら、X方向測定位置が初期値Xsに一致するまでX方向モータ25を駆動制御する。Y方向フィードモータ制御回路64は、Y方向位置検出回路63からY方向検出位置を入力しながら、Y方向測定位置が初期値Ysに一致するまでY方向モータ34を駆動制御する。
【0083】
前記ステップS202の処理後、コントローラ70は、ステップS204〜S240からなる測定処理を実行する。ステップS204においては、コントローラ70は、変数nに変数aを加算する。この場合、ステップS204の処理前の変数nは「0」であり、変数aは「1」であるので、変数nは「1」に変更される。前記ステップS204の処理後、コントローラ70は、ステップS206にて、通電回路66に対して第1印加電圧(図10参照)を出力するように指示する。この指示に応答して、通電回路66は、第1印加電圧を接続線L1,L2を介して太陽電池パネルSPの接続端子St1,St2間にそれぞれ供給する。その結果、太陽電池パネルSPにおいては、取出電極81,82に図8の矢印で示す方向に第1印加電圧による電流が流れ始めるとともに、各太陽電池セルSC内では取出電極81から取出電極82に向かってX方向に第1印加電圧による電流が流れ始める。ただし、このステップS206の処理は後述するステップS214の処理によって通電回路66から出力される電圧を第2印加電圧から第1印加電圧に切換えるための処理であり、初期の段階では、前述のように、通電回路66から既に第1印加電圧が出力されているので、このステップS206の処理によって太陽電池セル検査装置の動作が実質的に変更されるものではない。また、この状態では、センサ信号取出回路67及びロックインアンプ68も作動しているので、コントローラ70には、A/D変換器68o,68p,68q,68rから上述のような磁界に関する各信号成分の大きさを表すサンプリングデータが所定時間ごとに供給されている。
【0084】
前記ステップS206の処理後、コントローラ70は、上記図5AのステップS112,S114と同様なステップS208,S210の処理により、ロックインアンプ68のA/D変換器68o〜68rから所定数Kずつのサンプリングデータを取込んで、サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)としてそれぞれRAMに記憶する。なお、変数n,mはX方向及びY方向の測定位置を表す変数(上述した変数p,qに対応した変数)であり、この場合には、変数n,mは共に「1」である。変数hは、「1」により太陽電池パネルSPへの第1印加電圧の印加による前記サンプリングデータであることを表し、「2」
により太陽電池パネルSPへの第2印加電圧の印加による前記サンプリングデータであることを表す。そして、この場合には、太陽電池パネルSPへの第1印加電圧の印加による前記サンプリングデータであるので、サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h) の変数hは「1」である。
【0085】
前記ステップS208,210の処理後、コントローラ70は、ステップS212にて、変数nによって指定される領域指定値d(n)が「2」であるか否かを判定する。領域指定値d(n)が「1」であれば、コントローラ70は、ステップS212にて「No」と判定して、ステップS220に進む。一方、領域指定値d(n)が「2」であれば、コントローラ70は、ステップS212にて「Yes」と判定し、ステップS214にて通電回路66に対して第2印加電圧(図10参照)を出力するように指示する。この指示に応答して、通電回路66は、第2印加電圧を接続線L1,L2を介して太陽電池パネルSPの接続端子St1,St2間にそれぞれ供給する。その結果、太陽電池パネルSPにおいては、取出電極81,82に図8の矢印で示す方向に第2印加電圧による電流が流れ始めるとともに、各太陽電池セルSC内では取出電極81から取出電極82に向かってX方向に第2印加電圧による電流が流れ始める。
【0086】
このステップS214の処理後、コントローラ70は、前記ステップS208,S210と同様なステップS216,S218の処理により、ロックインアンプ68のA/D変換器68o〜68rから所定数Kずつのサンプリングデータを取込んで、サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)としてそれぞれRAMに記憶する。ただし、この場合、太陽電池パネルSPへの第2印加電圧の印加による前記サンプリングデータであるので、サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)の変数hは「2」である。前記ステップS218の処理後、ステップS220に進む。なお、変数nが前記のように「1」であれば、測定位置は電極近傍領域にあって、領域指定値d(n)が「1」であるので、ステップS214〜S218からなる処理は実行されない。そして、変数nが「1」よりも大きくなる今後の処理においても、ステップS214〜S218からなる処理は、あくまでも測定位置が発電面領域にあって領域指定値d(n)が「2」である場合にのみ実行されるもので、測定位置が電極近傍領域にあって領域指定値d(n)が「1」である場合には実行されるものではない。
【0087】
前記ステップS206〜S218の処理後、コントローラ70は、ステップS220にて変数aが「1」であるか否かを判定する。変数aは「1」に初期設定されているので、この場合、コントローラ70は、ステップS220にて「Yes」と判定して、ステップS222にて、値Xs+n・ΔXがX方向の終了値Xmaxよりも大きいか否かを判定する。値Xs+n・ΔXは、X方向の走査間隔を表す所定値ΔXに変数nを乗算して初期値Xsを加算した値であり、次のX方向の測定位置(X方向の走査位置)を表す値(図12参照)である。この場合、変数nが「1」であり、値Xs+n・ΔXが終了値Xmax以下であるので、コントローラ70は、ステップS222にて「No」と判定して、ステップS224にて、X方向フィードモータ制御回路62に、磁気センサ10の中心位置をX方向正側に移動させるように指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路62は、X方向モータ25を作動させて磁気センサ10の中心位置をX方向正側に移動させ始める。
【0088】
次に、コントローラ70は、ステップS226にてX方向位置検出回路61からX方向検出位置を入力し、ステップS228にて入力したX方向検出位置が次のX方向の測定位置に達したか否か、すなわちX方向検出位置を示す値が値Xs+n・ΔX以上になったか否かを判定する。そして、X方向位置検出回路61から入力したX方向検出位置が次のX方向の測定位置に達するまで、コントローラ70は、ステップS228にて「No」と判定し続けて、ステップS226,S228の処理を繰り返し実行する。X方向位置検出回路61から入力したX方向検出位置が次のX方向の測定位置に達すると、コントローラ70は、ステップS228にて「Yes」と判定し、ステップS230にてX方向フィードモータ制御回路62に、磁気センサ10のX方向正側への移動を停止させることを指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路62は、X方向モータ25の作動を停止させて、磁気センサ10のX方向正側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ10は、値Xs+n・ΔXで表されたX方向位置、かつY方向初期値Ysを磁気センサ10の測定位置として、太陽電池パネルSPの磁界を検出し始める。
【0089】
前記ステップS230の処理後、コントローラ70は、ステップS204に戻って、ステップS204の処理によって変数nに変数a(この場合、a=1)を加算して、前述のステップS206〜S218の太陽電池パネルSPへの第1及び第2印加電圧の印加及びサンプリングデータの取込み処理を実行する。これらのステップS206〜S218の処理により、値Xs+(n−1)・ΔXで表されたX方向位置、かつY方向初期値Ysを測定位置とする磁気センサ10の磁界検出による所定数KのサンプリングデータSx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)がRAMに記憶される。なお、この場合の変数nは「2」であり、変数mは「1」である。また、この場合も、変数nは小さく、測定位置は電極近傍領域にあって領域指定値d(n)が「1」であるので、ステップS206〜S210の処理によって変数hが「1」であるサンプリングデータSx1(n,m,1),Sx2(n,m,1),Sy1(n,m,1),Sy2(n,m,1)はRAMに記憶されるが、ステップS214〜S218からなる処理は実行されず、変数hが「2」であるサンプリングデータSx1(n,m,2),Sx2(n,m,2),Sy1(n,m,2),Sy2(n,m,2)はRAMには記憶されない。
【0090】
そして、コントローラ70は、次のX方向の測定位置(X方向の走査位置)を表す値Xs+n・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなるまで、ステップS204〜S230の処理により、磁気センサ10による測定位置をX方向正側に所定値ΔXずつ移動させるとともに、変数nを「1」ずつ増加させながら、サンプリングデータを取込む。この場合、変数nの変化により、測定位置が発電面領域にあって領域指定値d(n)が「2」であれば、ステップS206〜S210の処理によって変数hが「1」であるサンプリングデータSx1(n,m,1),Sx2(n,m,1),Sy1(n,m,1),Sy2(n,m,1)がRAMに記憶されるとともに、ステップS214〜S218の処理によって変数hが「2」であるサンプリングデータSx1(n,m,2),Sx2(n,m,2),Sy1(n,m,2),Sy2(n,m,2)もRAMには記憶される。ただし、前述のように、変数nが大きくなっても、測定位置が電極近傍領域にあって領域指定値d(n)が「1」であれば、ステップS206〜S210の処理によって変数hが「1」であるサンプリングデータSx1(n,m,1),Sx2(n,m,1),Sy1(n,m,1),Sy2(n,m,1)はRAMに記憶されるが、ステップS214〜S218からなる処理は実行されず、変数hが「2」であるサンプリングデータSx1(n,m,2),Sx2(n,m,2),Sy1(n,m,2),Sy2(n,m,2)はRAMには記憶されない。
【0091】
このようなステップS204〜S230からなる循環処理により、次のX方向の測定位置を表す値Xs+n・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなると、コントローラ70は、ステップS222にて「Yes」と判定して、プログラムを図5CのステップS242に進める。この状態では、サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)(n=1,2,3・・・nmax,m=1,h=1,2)がRAMに記憶されている。なお、値nmaxは、終了値Xmax直前の測定位置によるサンプリングデータ群に関する変数nの値であって、X方向における測定位置の数を表している。また、変数hが「2」の場合には、変数n(=1,2,3・・・nmax)の全てに関して、サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)が存在するわけではない。
【0092】
コントローラ70は、ステップS242において、Y方向フィードモータ制御回路64に、磁気センサ10による測定位置をY方向正側に移動させるように指示する。これにより、Y方向フィードモータ制御回路64は、Y方向モータ34を作動させて磁気センサ10による測定位置をY方向正側に移動させ始める。次に、コントローラ70は、ステップS244にてY方向位置検出回路63からY方向検出位置を入力し、ステップS246にて入力したY方向検出位置が次のY方向の測定位置Ys+m・ΔYに達したか否かを判定する。この次のY方向の測定位置Ys+m・ΔYは、X方向の次の測定位置Xs+n・ΔXと同様に、Y方向の走査間隔を表す所定値ΔYに変数mを乗算して初期値Ysを加算した値である(図12参照)。そして、Y方向位置検出回路63から入力したY方向検出位置が次のY方向の測定位置に達するまで、コントローラ70は、ステップS246にて「No」と判定し続けて、ステップS244,S246の処理を繰り返し実行する。Y方向位置検出回路63から入力したY方向検出位置が次のY方向の測定位置に達すると、コントローラ70は、ステップS246にて「Yes」と判定し、ステップS248にてY方向フィードモータ制御回路64に、磁気センサ10のY方向正側への移動を停止させることを指示する。これにより、Y方向フィードモータ制御回路64は、Y方向モータ34の作動を停止させて、磁気センサ10測定位置のY方向正側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ10は、値Xs+(n-1)・ΔX(=Xs+(nmax-1)・ΔX)で表されたX方向位置、かつ値Ys+m・ΔY(=Ys+ΔY)で表されたY方向位置を測定位置として、太陽電池パネルSPの表面近傍の磁界を検出し始める。
【0093】
前記ステップS248の処理後、コントローラ70は、ステップS250にて、Y方向位置検出回路63からY方向検出位置を入力して、入力したY方向検出位置が終了値Ymaxによって表されたY方向の走査終了位置を越えたか否かを判定する。この場合、Y方向位置はYs+ΔYであり、Y方向検出位置が走査終了位置Ymaxを越えていないので、コントローラ70は、ステップS250にて「No」と判定して、ステップS252にて変数mに「1」を加算し、ステップS254にて変数aに「−1」を乗算する。この場合、ステップS252の処理によって変数mは「2」になり、ステップS254の処理によって変数aは「−1」になる。また、変数nは値nmaxに保たれている。前記ステップS254の処理後、コントローラ70は、ステップS206に戻って、ステップS206〜S218の処理より、前述の太陽電池パネルSPへの第1及び第2印加電圧の印加及びサンプリングデータの取込み処理を実行する。
【0094】
前記ステップS206〜S218の処理後、コントローラ70は、ステップS220にて変数aは「1」であるか否かを判定する。この場合、前記ステップS254の処理によって変数aは「−1」に設定されているので、コントローラ70は、ステップS220にて「No」と判定して、ステップS232にて、値Xs+(n−2)・ΔXがX方向の初期値Xsよりも小さいか否かを判定する。この場合、変数nはnmaxであり、値Xs+(n−2)・ΔXは、太陽電池パネルSPの図12における終了値Xmax直前の測定位置を左側へ移動させた際における次のX方向の測定位置(X方向の走査位置)を表す値である。この場合、値Xs+(n−2)・ΔXが初期値Xsよりも小さいので、コントローラ70は、ステップS232にて「No」と判定して、ステップS234にて、X方向フィードモータ制御回路62に、磁気センサ10による測定位置をX方向負側に移動させるように指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路62は、X方向モータ25を作動させて磁気センサ10による測定位置をX方向負側に移動させ始める。
【0095】
次に、コントローラ70は、ステップS236にてX方向位置検出回路61からX方向検出位置を入力し、ステップ238にて入力したX方向位置が次のX方向の測定位置に達したか否か、すなわちX方向位置を示す値が値Xs+(n−2)・ΔX以下になったか否かを判定する。そして、X方向位置検出回路61から入力したX方向検出位置が次のX方向の測定位置に達するまで、コントローラ70は、ステップS238にて「No」と判定し続けて、ステップS236,S238の処理を繰り返し実行する。X方向位置検出回路61から入力したX方向検出位置が次のX方向の測定位置に達すると、コントローラ70は、ステップS238にて「Yes」と判定し、ステップS240にてX方向フィードモータ制御回路62に、測定位置のX方向負側への移動を停止させることを指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路62は、X方向モータ25の作動を停止させて、磁気センサ10による測定位置のX方向負側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ10は、値Xs+(n−2)・ΔX(=Xs+(nmax−2)・ΔX)で表されたX方向位置、かつ値Ys+(m−1)・ΔYs(=Ys+ΔYs)で表されたY方向位置を測定位置として、太陽電池パネルSPの表面近傍の磁界を検出し始める。
【0096】
前記ステップS240の処理後、コントローラ70は、ステップS204に戻って、ステップS204の処理によって変数nに変数a(この場合、a=−1)を加算して、前述のステップS206〜S218の太陽電池パネルSPへの第1及び第2印加電圧の印加及びサンプリングデータの取込み処理を実行する。これらのステップS206〜S218の処理により、前記ステップS204の処理前の値Xs+(n−2)・ΔX(=Xs+(nmax−2)・ΔX)で表されたX方向位置、かつ値Ys+(m−1)・ΔYs(=Ys+ΔYs)で表されたY方向位置を測定位置とするK個ずつの各サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)が取込み記憶される。なお、この取込み記憶されるサンプリングデータ群に関する変数nは値nmax−1であり、変数mは「2」である。そして、この場合も、前述のように、測定位置が発電面領域にあって領域指定値d(n)が「2」であれば、変数hが「1」及び「2」であるサンプリングデータSx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)がRAMに記憶されるが、測定位置が電極近傍領域にあって領域指定値d(n)が「1」であれば、変数hが「1」であるサンプリングデータSx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)のみがRAMに記憶される。
【0097】
そして、コントローラ70は、次のX方向の測定位置(X方向の走査位置)を表す値Xs+(n−2)・ΔXが初期値Xsよりも小さくなるまで、ステップS204〜S220,S232〜S240の処理により、測定位置をX方向負側に所定値ΔXずつ移動させるとともに、変数nを「1」ずつ減少させながら、サンプリングデータを取込む。そして、次のX方向の測定位置を表す値Xs+(n−2)・ΔXが初期値Xsよりも小さくなると、コントローラ70は、ステップS232にて「Yes」と判定して、図5cのステップS242に進む。なお、このときの変数nは「1」である。この状態では、前述したサンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)(n=1,2,3・・・nmax,m=1,h=1,2)に加えて、サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)(n=1,2,3・・・nmax,m=2,h=1,2)がRAMに記憶されている。
【0098】
コントローラ70は、前述したステップS242〜S248の処理により、Y方向モータ34を作動させて磁気センサ10による測定位置を次のY方向測定位置Ys+m・ΔYに移動させる。その結果、磁気センサ10は、初期値Xsで表されたX方向の初期位置、かつ値Ys+m・ΔY(=Ys+2・ΔY)で表されたY方向位置を測定位置として、太陽電池パネルSPの表面近傍の磁界を検出し始める。次に、コントローラ70は、Y方向位置検出回路63によって検出されたY方向位置が終了位置を越えていないことを条件に、コントローラ70は、ステップS250にて「No」と判定して、ステップS252にて変数mに「1」を加算し、ステップS254にて変数aに「−1」を乗算する。この場合、ステップS252の処理によって変数mは「3」になり、ステップS254の処理によって変数aは「1」になる。また、変数nは「1」に保たれている。前記ステップS254の処理後、コントローラ70は、ステップS206に戻って、ステップS206〜S218の処理より、前述の太陽電池パネルSPへの第1及び第2印加電圧の印加及びサンプリングデータの取込み処理を実行する。
【0099】
前記ステップS206〜S218の処理後、コントローラ70は、ステップS220にて変数aは「1」であるか否かを判定する。この場合、前記ステップS254の処理によって変数aは「1」に設定されているので、コントローラ70は、ステップS220にて「Yes」と判定して、前述したステップS222〜S230,S204〜S220の処理を、値Xs+n・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなるまで繰り返し実行する。これにより、磁気センサ10による測定位置がX方向正側に走査されて、サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)(n=1,2,3・・・nmax,m=3,h=1,2)がRAMに新たに記憶される。
【0100】
そして、変数mを「3」に設定した状態で、磁気センサ10の測定位置のX方向正側への走査が終了すると、ステップS222の判定処理により、ステップS242〜S254の処理が実行されて、磁気センサ10による測定位置が次のY方向位置に変更されるとともに、変数m,aが変更される。そして、前述したステップS204〜S220,S232〜S240の処理により、磁気センサ10による測定位置がX方向負側へ走査され、サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)(n=1,2,3・・・nmax,m=4,h=1,2)がRAMに新たに記憶される。
【0101】
このようなステップS204〜S254の処理により、磁気センサによる測定位置がX方向を往復するように走査されるとともにY方向正側に走査されて、Y方向位置検出回路63によって検出されるY方向検出位置が終了値Ymaxよりも大きくなると、コントローラ70は、ステップS250にて「Yes」と判定して、ステップS256以降の処理を実行する。この状態では、RAM内に、K個ずつの各サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)(n=1〜nmax,m=1〜mmax,h=1,2)が記憶されている。なお、値mmaxは、終了値Ymax直前の測定位置におけるサンプリングデータ群に関する変数mの値であって、Y方向における測定位置の数を表している。また、前述のように、測定位置が発電面領域にあって領域指定値d(n)が「2」であれば、変数hが「1」及び「2」であるサンプリングデータSx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)がRAMに記憶されているが、測定位置が電極近傍領域にあって領域指定値d(n)が「1」であれば、変数hが「1」であるサンプリングデータSx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)のみがRAMに記憶されている。
【0102】
そして、コントローラ70は、前述したステップS256〜S260の処理により、センサ信号取出回路67、通電信号供給回路65、通電回路66、ロックインアンプ68及び磁気センサ10の作動を停止させ、前述したステップS262の処理により、磁気センサ10をX方向及びY方向駆動限界位置まで移動させて、ステップS264にてデータ取得プログラムの実行を終了する。
【0103】
次に、前記データ取得プログラムで取得した所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)(n=1〜nmax,m=1〜mmax,h=1,2)を用いて、太陽電池パネルSPを評価する方法について説明する。前記データ取得プログラムの実行終了後、コントローラ70は図7A乃至図7Gの評価プログラムの実行を開始する。この評価プログラムにおいては、太陽電池パネルSPの合否判定が行われ、また作業者が太陽電池パネルSP(太陽電池セルSC)の合否を判定するために、太陽電池パネルSPのX−Y座標の各点における電流の大きさと向きである電流分布の画像が表示装置72に表示される。
【0104】
そこで、評価プログラムを説明する前に、太陽電池セルSCの取出電極81,82に欠陥が発生した場合と、太陽電池セルSCの発電面に欠陥が存在する場合について説明しておく。取出電極81,82の欠陥に関しては、取出電極81,82が内部電極86,88に導電性ペースト又は半田により接続されているので、取出電極81,82と内部電極86,88との間の接続不良が欠陥の原因となる。また、発電面の欠陥に関しては、接続不良とリーク不良の2種類がある。接続不良の原因は、ピンホール、クラック、異物混入など様々であるが、太陽電池セルSCの各層からなる構造に正規の構造とは異なる構造が生じていることが原因であり、発電面に電流が流れ難い状態である。一方、リーク不良は、発電セル間の電極が導通されていて、又は同一発電セルの正極と負極とが導通されていてリーク電流が発生するものである。そして、本実施形態においては、これらの不良の検出に関して、太陽電池セルSCに外部から印加電圧を印加して、太陽電池セルSCの各部に電流を流すことにより検出するものである。また、前記実験により、このリーク不良においては、取出電極81,82の接続不良及び発電面の接続不良の場合のようにある程度大きな電圧を印加してある程度大きな電流を流しても、発生する磁界の分布状態又は磁界から計算される得る電流の分布状態が正常な場合と比較して大きな差が現われないことが分かった。そして、このリーク不良の場合には、小さな電圧を印加して小さな電流を流すことにより、リーク不良箇所には正常箇所に比べて大きな電流が流れて正常箇所との差を検出できることが実験により分かった。
【0105】
1つの太陽電池セルSCにおいて、取出電極81,82が正常な場合と接続不良による場合との電流の分布について、図13を用いて説明する。(A)は、×印位置にて、取出電極81と内部電極86との間に接続不良が発生している状態を示している。(B)は、実線により、太陽電池セルSCが正常な状態において、取出電極81の位置における電流の大きさIxyを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。また、(B)は、破線により、太陽電池セルSCに前記接続不良が発生した状態において、取出電極81の位置における電流の大きさIxyを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。この場合、Y方向位置に応じて電流の大きさIxyが変化するのは、(A)の矢印のように電流が流れるため、すなわち上側位置に流れる電流は下側位置にも重なって流れるためである。なお、この場合の電流の大きさとは、電流の向きとは無関係な電流の大きさの絶対値である。したがって、(B)のグラフからは、太陽電池セルSCの取出電極81,82が正常な場合と接続不良の場合とでは、電流の大きさIxyの変化において差があまり大きくなく、電流の大きさIxyは共に滑らかに変化していることが分かる。これは、接続不良の欠陥箇所においても、取出電極81及び内部電極86自体には、接続不良が発生しているわけではなく、取出電極81及び内部電極86が延設されているY方向には前記接続不良とは無関係に充分な電流が流れ得るからであると推定される。
【0106】
一方、(C)は、実線により、太陽電池セルSCの取出電極81,82が正常な状態において、取出電極81の延設方向における各測定位置(Y方向の各測定位置)のX方向(取出電極81に直交する方向)の電流の大きさIxから、取出電極81から太陽電池セルSCの内側X方向に所定距離だけ隔てた位置すなわち取出電極81と対となる取出電極82側のX方向内側位置における同じY方向の各測定位置のX方向(取出電極81に直交する方向)の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。なお、前記所定距離とは例えば5mm程度の距離であり、前記X方向内側位置とは、例えば取出電極81の位置から5mm程度内側の位置である。前記のように移動ピッチΔXが1mm程度であると、前記X方向内側位置は取出電極81からa・ΔX(a=5)だけ内側に入った位置となる。また、(C)は、破線により、太陽電池セルSCに前記接続不良が発生した状態において、前記電流差Deを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。そして、(C)のグラフからは、太陽電池セルSCの取出電極81が正常な場合と接続不良の場合とでは、電流差Deの変化において差が大きく、正常な場合にはほぼ一定の値であるが、接続不良の場合には電流差Deは接続不良箇所近傍で大きく変動していることが分かる。これは、接続不良箇所において、接続不良箇所を避けて電流がY方向に傾いて流れ、X方向の電流の大きさが減少するためであると推定される。
【0107】
一方、(D)は、実線により、太陽電池セルSCが正常な状態において、取出電極81のX方向近傍位置(具体的には、例えば取出電極81から内側へ1〜2mm程度の位置、すなわち移動ピッチΔXが1mmとするとΔX又は2・ΔX程度内側の位置)のY方向における各測定位置のX方向の電流の大きさIxから、前記X方向近傍位置から所定距離(例えば、5mm程度の短い距離)だけ内側の位置(前記のように移動ピッチΔXが1mm程度であると、前記X方向近傍位置からa・ΔX(a=5)だけ内側に入った位置)における同じY方向位置の各測定位置におけるX方向の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。また、(D)は、破線により、太陽電池セルSCに前記接続不良が発生した状態において、前記電流差Deを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。そして、(D)のグラフからは、太陽電池セルSCが正常な場合にはほぼ一定の値であるが、接続不良の場合には電流差Deは接続不良箇所近傍で大きく変動していることが分かる。なお、(D)の場合には、(C)の場合よりも、電流差Deが大きい。これも、接続不良箇所において、接続不良箇所を避けて電流がY方向に傾いて流れ、X方向の電流が減少するためであると推定される。
【0108】
本発明は、これらの取出電極81の位置又は近傍位置における前記電流差Deの変化に着目して、取出電極81,82の接続不良を検出するものである。また、取出電極82と内部電極88との間の接続不良の発生時においても同じ結果を得ている。すなわち、本発明は、取出電極81,82の位置又はその近傍位置における前記電流差DeのY方向に沿った変化において、前記電流差Deの変動が接続不良箇所の近傍にて大きくなることに着目して、取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良を検出するようにしている。
【0109】
1つの太陽電池セルSCにおいて、発電面に接続不良が発生した場合の電流の分布について、図14を用いて説明する。(A)は、図示AのX方向位置の×印位置にて、発電面に接続不良が生じて電流が流れ難くなっている状態を示している。(B)は、実線により、図示AのX方向位置に発電面の接続不良が生じていない状態すなわち太陽電池セルSCが正常な状態において、図示AのX方向位置におけるY方向の各測定位置のX方向の電流の大きさIxから、前記各測定位置から太陽電池セルSCの内側X方向に所定距離だけ隔てた位置における同じY方向の各測定位置のX方向(取出電極81に直交する方向)の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、前記各測定位置のY方向位置に対応させて示している。すなわち、取出電極81、82のX方向中央位置を挟んで、各測定位置が取出電極81に近い場合には、各測定位置のX方向の電流の大きさIxから、各測定位置から取出電極82側のX方向に所定距離だけ離れた位置のX方向の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、前記各測定位置のY方向位置に対応させて示している。また、取出電極81、82のX方向中央位置を挟んで、各測定位置が取出電極82に近い場合には、各測定位置のX方向の電流の大きさIxから、各測定位置から取出電極81側のX方向に所定距離だけ離れた位置のX方向の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、前記各測定位置のY方向位置に対応させて示している。なお、この場合も、前記所定距離は、例えば5mm程度の短い距離であり、前記のように移動ピッチΔXが1mm程度であると、a・ΔX(a=5)程度の距離である。また、(B)は、破線により、前記図示AのX方向位置の一部に発電面に接続不良が生じている状態において、前記電流差DeをY方向位置に対応させて示している。そして、(B)のグラフからは、太陽電池セルSCの発電面が正常な場合と発電面に接続不良がある場合とでは、電流差Deの変化において差が大きく、正常な場合にはほぼ「0」であるが、接続不良の場合には電流差Deは接続不良位置で大きく負の値に変動していることが分かる。これは、発電面の接続不良箇所において、接続不良箇所を避けて電流がY方向に傾いて流れ、X方向の電流の大きさが減少するためであると推定される。
【0110】
1つの太陽電池セルSCにおいて、発電面にリーク不良が発生した場合の電流の分布について、図15を用いて説明する。(A)は、図示AのX方向位置の×印位置にて、発電面にリーク不良が発生してリーク電流が流れる状態を示している。(B)は、実線により、図示AのX方向位置に発電面のリーク不良がない状態すなわち太陽電池セルSCが正常な状態において、図示AのX方向位置におけるY方向の各測定位置のX方向の電流の大きさIxから、前記各測定位置から太陽電池セルSCの内側X方向に所定距離だけ隔てた位置における同じY方向の各測定位置のX方向(取出電極81に直交する方向)の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、前記各測定位置のY方向位置に対応させて示している。すなわち、取出電極81、82のX方向中央位置を挟んで、各測定位置が取出電極81に近い場合には、各測定位置のX方向の電流の大きさIxから、各測定位置から取出電極82側のX方向に所定距離だけ離れた位置のX方向の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、前記各測定位置のY方向位置に対応させて示している。また、取出電極81、82のX方向中央位置を挟んで、各測定位置が取出電極82に近い場合には、各測定位置のX方向の電流の大きさIxから、各測定位置から取出電極81側のX方向に所定距離だけ離れた位置のX方向の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、前記各測定位置のY方向位置に対応させて示している。なお、この場合も、前記所定距離は、例えば5mm程度の短い距離であり、前記のように移動ピッチΔXが1mm程度であると、a・ΔX(a=5)程度の距離である。また、(B)は、破線により、前記図示AのX方向位置の一部に発電面のリーク不良が生じて電流が流れ易くなっている状態において、前記電流差DeをY方向位置に対応させて示している。そして、(B)のグラフからは、太陽電池セルSCの発電面が正常な場合と発電面にリーク不良がある場合とでは、電流差Deの変化において差が大きく、正常な場合にはほぼ「0」であるが、リーク不良の場合には電流差Deはリーク不良箇所で大きく正の値に変動していることが分かる。これは、発電面のリーク不良箇所において、他の部分に比べてX方向に多くの電流が流れ、X方向の電流の大きさが増加するためであると推定される。
【0111】
本発明は、前記各測定位置のX方向の電流の大きさIxの変化に着目して、太陽電池セルSCの発電面の接続不良とリーク不良を検出するものである。すなわち、本発明は、取出電極81,82に挟まれた太陽電池セルSCの発電面において、発電面の不良部分のX方向の電流の大きさIxがその近傍位置に比べて小さくなること又は大きくなることに着目して、太陽電池セルSCの発電面の接続不良及びリーク不良を検出するようにしている。
【0112】
次に、評価プログラムの実行について説明する。この評価プログラムの実行は図7AのステップS400にて開始され、コントローラ70は、ステップS402にて変数n,m,hをそれぞれ「1」に初期設定する。変数n,mはそれぞれX,Y方向における検出位置を指定するための変数であり、変数hは、「1」により電極近傍領域及び発電面領域における第1印加電圧の印加による検出結果を指定し、「2」により発電面領域における第2印加電圧の印加による検出結果を指定する変数である。そして、値nmax,mmaxは、前述のように、それぞれX,Y方向における測定位置の数を表している。前記ステップS102の処理後、コントローラ70は、ステップS404にて、変数n,m,hによって指定される所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)の磁界の大きさの各平均値Sx1,Sx2,Sy1,Sy2を計算する。具体的には、各サンプリングデータ群Sx1(n,m,h),Sx2(n,m,h),Sy1(n,m,h),Sy2(n,m,h)ごとに、K個のサンプリングデータを加算して値Kで除算する。
【0113】
次に、コントローラ70は、上記図6AのステップS306〜S310の処理と同様なステップS406〜S410の処理により、前記計算した平均値Sx1,Sx2,Sy1,Sy2を用いた上記式1〜6の演算の実行により、測定位置の磁界の強さHxy及び磁界の向きθxyを計算する。
【0114】
次に、コントローラ70は、上記ステップS312の処理と同様なステップS412の処理により、上記式7,8を用いて太陽電池パネルSPの測定位置に流れる電流の大きさIxy及び方向θixyを計算する。そして、この場合には、前記計算された電流の大きさIxy及び方向θixyは、太陽電池パネルSPの測定位置を表す変数n,m,hを用いて電流の大きさデータIxy(n,m,h)及び方向データθixy(n,m,h)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
【0115】
次に、コントローラ70は、ステップS414にて、上記ステップS314と同様な処理により、前記計算したIxy,θixyを用いた上記式9の演算の実行によりY方向に流れる電流の大きさIyを計算するとともに、前記計算したIxy,θixyを用いた下記式10の演算の実行により、太陽電池パネルSPの測定位置においてX方向に流れる電流の大きさIxも計算する。
Ix=Ixy・cosθixy …式10
そして、このステップS414においても、前記計算された電流の大きさIx,Iyも、太陽電池パネルSPの測定位置を表す変数n,m,hを用いて電流の大きさデータIx(n,m,h),Iy(n,m,h)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
【0116】
次に、コントローラ70は、ステップS416にて、領域指定値d(n)が「2」であるか否かを判定する。現在の測定位置が電極近傍領域であって、変数nによって指定される領域指定値d(n)が「1」であれば、コントローラ70は、ステップS416にて「No」と判定して、ステップSS418に進む。ステップS418においては、コントローラ70は、変数nがX方向の測定位置数を表す値nmaxに達したか否かを判定する。変数nが値nmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS418にて「No」と判定し、ステップS420にて変数nに「1」を加算してステップS404に戻り、前述したステップS404〜S414の処理を実行する。これによれば、変数nを「1」増加させて、すなわちX方向の測定位置を変更したうえで、第1印加電圧による、次の電流の大きさIxy、電流の方向θxy、X方向の電流の大きさIx及びY方向の電流の大きさIyが計算されて、電流の大きさデータIxy(n,m,h)、電流の方向データθxy(n,m,h)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,h)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m,h)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
【0117】
一方、領域指定値d(n)が「2」であれば、コントローラ70は、ステップS416にて「Yes」と判定し、ステップS422にて変数hが「1」であるかを判定する。変数hが「1」であれば、コントローラ70は、ステップS422にて「Yes」と判定し、ステップS424にて変数hを「2」に変更して、ステップS404に戻戻り、前述したステップS404〜S414の処理を実行する。この場合、変数nは以前の値に保たれて変数h(=2)により指定される第2印加電圧の印加による、次の電流の大きさIxy、電流の方向θxy、X方向の電流の大きさIx及びY方向の電流の大きさIyが計算されて、電流の大きさデータIxy(n,m,h)、電流の方向データθxy(n,m,h)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,h)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m,h)としてRAM又は記憶装置に記憶される。すなわち、前記第1印加電圧の印加による電流の大きさデータIxy(n,m,1)、電流の方向データθxy(n,m,1)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m,1)に加えて、前記第2印加電圧の印加による電流の大きさデータIxy(n,m,2)、電流の方向データθxy(n,m,2)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m,2)が計算されるとともにRAM又は記憶装置に記憶される。
【0118】
そして、この場合には、前記ステップS414の処理後、ステップS416にて領域指定値d(n)が「2」であるか判定されるとともに、ステップS422にて変数hが「1」であるかが判定される。そして、この場合には、領域指定値d(n)が「2」であり、変数hは「2」に変更されているので、コントローラ70は、ステップS416にて「Yes」と判定し、ステップS422にて「No」と判定し、ステップS426にて変数hを「1」に変更して、前記ステップS418にて変数nがX方向の測定位置数を表す値nmaxに達したか否かをふたたび判定する。そして、変数nが値nmaxに達しない限り、ステップS404〜426の処理が繰り返し実行される。
【0119】
このようなステップS404〜S426の繰り返し処理中、変数nが値nmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS418にて「Yes」と判定して、ステップS428にて変数mがY方向の測定位置数を表す値mmaxに達したか否かを判定する。変数mが値mmaxに達しなければ、コントローラ70は、ステップS428にて「No」と判定し、ステップS430にて変数mに「1」を加算し、ステップS432にて変数nを「1」に初期設定して、ステップS404に戻る。そして、変数nが所定値nmaxに達するまで前述したステップS404〜S426の処理を繰り返し実行した後、コントローラ70は、ステップS428にてふたたび変数mが値mmaxに達したか否かを判定する。変数mが値mmaxに達しない限り、ステップS404〜432の処理が繰り返し実行される。そして、変数mが値mmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS428にて「Yes」と判定して、図7BのステップS500に進む。
【0120】
この時点では、太陽電池パネルSPの測定位置ごとに、電流の大きさデータIxy(n,m,h)、電流の方向データθixy(n,m,h)、X方向の電流の大きさデータIx(,m,h)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m,h)(n=1〜nmax,m=1〜mmax,h=1,2)が、RAM又は記憶装置に記憶されている。
【0121】
次に、取出電極81,82の位置を示す電極位置座標Bxy(n,m)(すなわち磁気センサ10による測定位置群)を検出して、マトリクス状に配置した取出電極81,82のX方向及びY方向の順番を特定するX方向電極番号gx及びY方向電極番号gy(図8参照)を、前記検出した電極位置座標Bxy(n,m)に割当てる図7B及び図7CのステップS500〜S542の処理について説明する。なお、値n,mは、X方向及びY方向の磁気センサ10による測定位置をそれぞれ示す変数である。
【0122】
まず、コントローラ70は、ステップS500にて、前記計算した全ての電流の大きさデータIxy(n,m,1)の中から、取出電極81,82位置及びその近傍位置の電流の大きさデータIxy(n,m,1)を取出す。この場合、電流の大きさデータIxy(n)の分布は、図16に示すように、取出電極81,82位置及びその近傍位置における大きな電流の分布と、それ以外の部分における小さな電流の分布とに大別される。したがって、このステップS500においては、前記全ての電流の大きさデータIxy(n,m,1)の中から、予め決められた所定値以上の値を有する電流の大きさデータIxy(n,m,1)を抽出すればよい。次に、コントローラ70は、ステップS502にて、変数nを「1」に初期設定するとともに、X方向電極番号gx及びY方向電極番号gyをそれぞれ「1」に初期設定する。
【0123】
前記ステップS502の処理後、コントローラ70は、ステップS504にて、前記ステップS500にて抽出した全ての電流の大きさデータIxy(n,m,1)に含まれて変数nによって指定される電流の大きさデータIxy(n,m,1)の数を値Nnmとして計算する。そして、コントローラ70は、ステップS506にて、この値Nnmが所定数以上であるかを判定する。これらのステップS504,S506の処理は、変数nによって指定されるX方向位置が取出電極81,82の位置に対応していれば、取出電極81,82の位置では電流の大きさデータIxy(n,m,1)はかなり多いはずであるので、値Nnmもかなり大きいはずである。なお、前記所定数は、取出電極81,82のY方向の合計長さとY方向の移動距離単位ΔYによって決まる値であり、例えば、前記合計長さを移動距離単位ΔYで除した値よりも若干小さな値である。変数nによって指定されるX方向位置が取出電極81,82の位置に対応していなければ、値Nnmは小さいので、コントローラ70は、ステップS506にて「No」と判定して、ステップS508にて変数nがX方向の測定位置数を表す値nmaxに達したか判定する。変数nが値nmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS508にて「No」と判定して、ステップS510にて変数nに「1」を加算して、前記ステップS504,S506の処理を実行する。
【0124】
変数nによって指定されるX方向位置が取出電極81,82の位置に対応していて値Nnmが所定数よりも大きくなると、コントローラ70は、ステップS506にて「Yes」と判定して、ステップS512にて、Y方向の磁気センサ10の測定位置を示す変数mを「1」に初期設定するとともに、取出電極81,82のY方向の測定位置の数(取出電極81,82の長さをY方向の移動距離単位ΔYで除した数)をカウントするための変数pを「0」に初期設定して、ステップS514の判定処理を実行する。
【0125】
ステップS514においては、変数n,mによって指定されるX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)が所定の小さな値ΔIx以下であるかを判定することにより、変数n,mによって示される測定位置が取出電極81,82の位置にあるか、取出電極81,82の間の接続線91にあるかを判定する。これは、変数mによって指定されるY方向位置が取出電極81,82に対応した位置にあるときには、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)はある程度の値を示すが、変数mによって指定されるY方向位置が取出電極81,82の間の接続線91に対応した位置にあるときには、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)はほぼ「0」である。
【0126】
したがって、変数mによって指定されるY方向位置が取出電極81,82に対応する位置であれば、コントローラ70は、ステップS514にて「No」と判定して、ステップS516にて変数pに「1」を加算し、ステップS518にて変数mに「1」を加算して、ステップS514に戻る。変数mの増加によって測定位置がY方向に移動されても、測定位置が取出電極81,82に対応する位置である限り、前記ステップS514〜S518の循環処理が繰り返し実行されて、変数pが変数mの増加に従って増加する。このステップS514〜S518の循環処理中、測定位置が取出電極81,82を超えて接続線91の領域に入ると、コントローラ70は、ステップS514にて「Yes」と判定して、図7CのステップS520に進む。
【0127】
ステップS520においては、前記変数pが所定数以上であるかを判定する。この場合、所定数は、取出電極81,82の長さを移動距離単位ΔYで除した値よりも若干小さな値であり、前記入力した太陽電池セルSCのY方向の長さと移動距離単位ΔYとにより予め決められた値である。取出電極81,82の位置に対応したX方向の電流の大きさIx(n,m,1)が正確に検出されていれば、変数pは所定数以上であるので、コントローラ70はステップS520にて「Yes」と判定して、ステップS522にて取出電極81,82のX−Y座標位置を表す電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)内のいずれかにX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられているか否かを判定する。この判定処理は、今回検出した取出電極81,82の位置を表す電極位置座標Bxy(n,m)を定義して同電極位置座標Bxy(n,m)にX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyを割当てる前に、X方向位置が変数n−1で指定される前回検出の取出電極81,82の位置に対応した電極位置座標Bxy(n−1,m)にX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが既に割当てられているかを判定するものである。もし、前回検出の取出電極81,82の位置を表す電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)に未だX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられていなければ(すなわち電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)が未だ定義されていなければ)、コントローラ70は、ステップS522にて「No」と判定して、ステップS524にて電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)を定義してX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyを割当て、ステップS534に進む。この場合、変数pの使用により、取出電極81,82の長さに対応した位置分の電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が定義されて、この定義された電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)にX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられたことになる。
【0128】
一方、前回検出の電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)にX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが既に割当てられていれば、コントローラ70は、ステップS522にて「Yes」と判定して、ステップS526,S528に進む。ステップS526においては、前回検出の電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)に対応した位置の電流の大きさデータIxy(n−1,m−p)〜Ixy(n−1,m−1)の平均値Iavebが計算される。また、ステップS528においては、今回検出の電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)に対応した位置の電流の大きさデータIxy(n,m−p)〜Ixy(n,m−1)の平均値Iaveaが計算される。そして、コントローラ70は、ステップS530にて、今回の平均値Iaveaが前回の平均値Iaveb以上であるか否かを判定する。今回の平均値Iaveaが前回の平均値Iaveb以上であれば、コントローラ70は、ステップS530にて「Yes」と判定して、前回検出の電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)に割当てられているX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyを、今回検出の電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)に割当て、ステップS534に進む。
【0129】
一方、今回の平均値Iaveaが前回の平均値Iaveb以上でなければ、コントローラ70は、ステップS530にて「No」と判定して、前記割当ての変更を行うことなく、ステップS534に進む。これらのステップS522〜S532の処理により、1つの取出電極81又は82に対しては、最も平均電流の大きな1組の電流の大きさデータIxy(n,m−p)〜Ixy(n,m−1)に対応した電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)にのみ、X方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられる。ステップS534においては、コントローラ70は、Y方向電極番号gyに「1」を加算して、ステップS536に進む。これは、図8のY方向に沿って次の取出電極81,82の検出を意味する。
【0130】
また、前記ステップS520の判定処理において、「No」すなわち変数pが所定数未満である場合には、コントローラ70は、ステップS520にて「No」と判定して、ステップS522〜S534の処理を実行しないで、ステップS536に進む。この場合、電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)に対する、X方向電極番号gx及びY方向電極番号gyの割当ては行われない。
【0131】
ステップS536においては、変数mが値mmax(すなわち終了値Ymax直前の測定位置によるサンプリングデータ群に関する変数mの値)に達したかが判定される。変数mが値mmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS536にて「No」と判定し、ステップS538にて変数pを「0」に初期設定して、図7BのステップS518に進む。コントローラ70は、ステップS518にて変数mに「1」を加算し、ステップS514の判定処理をふたたび実行する。ステップS514の処理は、前述のように、Y方向の測定位置が取出電極81,82に対応しているか、取出電極81,82間の接続線91に対応しているかを判定する処理である。そして、測定位置が接続線91に対応した位置にある状態では、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)は所定値ΔIx以下であり、コントローラ70は、ステップS514にて「Yes」と判定して、図7CのステップS520に進む。この場合、変数pは前記ステップS538の処理により「0」に保たれるので、コントローラ70はステップS520にて「No」と判定し続けて、図7CのステップS520,S536,S538及び図7BのステップS518,S514の循環処理を繰り返し実行する。
【0132】
この循環処理中、ステップS518による変数mの増加により、測定位置が取出電極81,82に対応した位置まで来ると、前述の場合と同様に、コントローラ70は、ステップS514にて「No」と判定して、ステップS514〜S518の循環処理を繰り返し実行する。そして、測定位置が接続線91の領域に入ると、前述のように、コントローラ70は、ステップS514にて「Yes」と判定して、図7CのステップS520〜S534の処理を実行する。これらのステップS520〜S534の処理により、Y方向の次の取出電極81,82に対応した電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が定義されて次のX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられる。また、変数pが所定数未満のときには、ステップS520における「No」との判定のもとに、X方向電極番号gx及びY方向電極番号gyの割当ては行われない。
【0133】
これらのステップS520〜S534の処理後、コントローラ70は、前記ステップS536,S538の処理を実行して、ふたたび図7BのステップS518に進む。これにより、変数mの増加により、図8に示すY方向の取出電極81,82の位置を表す電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が次々に定義されてX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられていく。そして、変数mが値mmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS536にて「Yes」と判定し、ステップS540にてX方向電極番号gxに「1」を加算し、ステップS542にてY方向電極番号gyを「1」に戻して、図7BのステップS510に進む。コントローラ70は、ステップS510にて変数nに「1」を加算した後、ステップS504に進み、前述したステップS504〜S510の循環処理により、図8に示すX方向の次の取出電極81,82の列を検出する。そして、前記ステップS514〜S538の処理により、次のX方向の列におけるY方向の複数の取出電極81,82を検出し、前記ステップS540,S542の処理後の図7BのステップS504〜S518及び図7CのステップS520〜S538の処理により、X方向に移動しながら次々に取出電極81,82を検出して、取出電極81,82の位置を表す電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が次々に定義されてX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられていく。そして、変数nが値nmax(終了値Xmax直前の測定位置によるサンプリングデータ群に関する変数nの値)に達すると、コントローラ70は、ステップS508にて「Yes」と判定して、図7DのステップS600に進む。
【0134】
次に、第1及び第2印加電圧の印加によるデータであって、太陽電池パネルSPの合否の判定に利用する変数n,mによって指定される位置のX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1),Ix(n,m,2)から、前記位置から太陽電池セルSCの取出電極81,82の内側のX方向に所定距離だけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,1),データIx(n+a,m,2)(又はIx(n−a,m,1),Ix(n−a,m,2))を減算した差データDe(n,m,1),De(n,m,2)を計算する図7DのステップS600〜S630の処理について説明する。この場合、前記所定距離は例えば5mm程度であり、移動ピッチΔX,ΔYが前述のように例えば1mm程度であれば、前記値aは例えば「5」程度の値である。これらの変数n,mも、測定位置のX座標値(n=1〜nmax)及びY座標値(y=1〜mmax)を示す値である(図8参照)。
【0135】
ステップS600においては、コントローラ70は、第1印加電圧の印加による測定結果である全てのX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)に対して、Ix(n,m,1)−Ix(n+a,m,1)なる演算を実行して演算結果を差データDe(n,m,1,1)として記憶する。この差データDe(n,m,1,1)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)からX方向右側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,1)を減算した値である。なお、この演算において、値n+aが値nmaxよりも大きい場合には、前記Ix(n,m,1)−Ix(n+a,m,1)なる演算を行わない。次に、ステップS602において、コントローラ70は、第1印加電圧の印加による測定結果である全てのX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)に対して、Ix(n,m,1)−Ix(n−a,m,1)なる演算を実行して演算結果を差データDe(n,m,1,2)として記憶する。この差データDe(n,m,1,2)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)からX方向左側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n−a,m,1)を減算した値である。なお、この演算においても、値n−aの値が値「1」よりも小さい場合には、前記Ix(n,m,1)−Ix(n−a,m,1)なる演算を行わない。
【0136】
ステップS604においては、コントローラ70は、第2印加電圧の印加による測定結果である全てのX方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)に対して、Ix(n,m,2)−Ix(n+a,m,2)なる演算を実行して演算結果を差データDe(n,m,2,1)として記憶する。この差データDe(n,m,2,1)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)からX方向右側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,2)を減算した値である。なお、この演算において、電流の大きさデータIx(n+a,m,2)が存在しない場合には、前記Ix(n,m,2)−Ix(n+a,m,2)なる演算を行わない。次に、ステップS606において、コントローラ70は、第2印加電圧の印加による測定結果である全てのX方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)に対して、Ix(n,m,2)−Ix(n−a,m,2)なる演算を実行して演算結果を差データDe(n,m,2,2)として記憶する。この差データDe(n,m,2,2)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)からX方向左側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n−a,m,2)を減算した値である。なお、この演算においても、電流の大きさデータIx(n−a,m,2)が存在しない場合には、前記Ix(n,m,2)−Ix(n−a,m,2)なる演算を行わない。
【0137】
前記ステップS600〜S606の処理後、コントローラ70は、まず、ステップS608にて、変数k,s,tを「1」にそれぞれ初期設定する。図8に示すように、変数kは、X方向電極番号gxを指定するための1〜kmaxで変化する変数である。変数sは、Y方向電極番号gyを指定するための1〜smaxで変化する変数である。変数tは、X方向の太陽電池セルSCを指定するための1〜tmaxで変化する変数である。次に、コントローラ70は、ステップS610にて、前記ステップS600の処理によって記憶した差データ群De(n,m,1,1)及び前記ステップS602の処理によって記憶した差データ群De(n,m,1,2)の中から、変数kに等しいX方向電極番号gx(=k)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)と、変数k+1に等しいX方向電極番号gx(=k+1)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)とを含む、それらの電極位置座標群Bxy(n,m)の間に位置する座標群(n,m)に対応した差データ群De(n,m,1,1),De(n,m,1,2)を抽出する。言い換えれば、Y方向電極番号gy(=s)及び変数tにより指定される太陽電池セルSCに関する差データ群De(n,m,1,1),De(n,m,1,2)を抽出する。この場合、変数k,s,tは共に「1」であるので、図8の最上段の最も左の太陽電池セルSCに関する差データ群De(n,m,1,1),De(n,m,1,2)を抽出する。
【0138】
次に、コントローラ70は、ステップS612にて、前記座標位置(n,m)中の変数nの最大値と最小値とを抽出して、変数nの最大値から最小値を減算し、減算結果を「2」で除して、除した結果を変数nの最小値に加算して、加算結果を中央値Cenとする。この中央値Cenは、前記座標位置(n,m)すなわちY方向電極番号gy(=s)及び変数tにより指定される太陽電池セルSCのX方向の中央位置を示す。そして、コントローラ70は、ステップS614にて、前記計算した中央値Cen、前記抽出した差データ群De(n,m,1,1),De(n,m,1,2)を用いて、差データ群De(n,m,1)を生成する。具体的には、変数nが中央値Cen未満である差データ群De(n,m,1,1)を差データ群De(n,m,1)とし、変数nが中央値Cen以上である差データ群De(n,m,1,2)を差データ群De(n,m,1)とする。これにより、前記太陽電池セルSCのX方向中央よりも左側の差データ群De(n,m,1)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)からX方向右側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,1)を減算した値となる。また、前記太陽電池セルSCのX方向中央よりも右側の差データ群De(n,m,1)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)からX方向左側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n−a,m,1)を減算した値となる。これにより、図8の最上段の最も左の太陽電池セルSCに関する第1印加電圧の印加による差データ群De(n,m,1)が計算される。
【0139】
次に、コントローラ70は、ステップS616にて、前記ステップS604の処理によって記憶した差データ群De(n,m,2,1)及び前記ステップS606の処理によって記憶した差データ群De(n,m,2,2)の中から、変数kに等しいX方向電極番号gx(=k)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)と、変数k+1に等しいX方向電極番号gx(=k+1)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)とを含む、それらの電極位置座標群Bxy(n,m)の間に位置する座標群(n,m)に対応した差データ群De(n,m,2,1),De(n,m,2,2)を抽出する。言い換えれば、Y方向電極番号gy(=s)及び変数tにより指定される太陽電池セルSCに関する差データ群De(n,m,2,1),De(n,m,2,2)を抽出する。この場合も、変数k,s,tは共に「1」であるので、図8の最上段の最も左の太陽電池セルSCに関する差データ群De(n,m,2,1),De(n,m,2,2)を抽出する。
【0140】
次に、コントローラ70は、前記ステップS612にて計算した中央値Cen、前記抽出した差データ群De(n,m,2,1),De(n,m,2,2)を用いて、差データ群De(n,m,2)を生成する。具体的には、変数nが中央値Cen未満である差データ群De(n,m,2,1)を差データ群De(n,m,2)とし、変数nが中央値Cen以上である差データ群De(n,m,2,2)を差データ群De(n,m,2)とする。これにより、前記太陽電池セルSCのX方向中央よりも左側の差データ群De(n,m,2)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)からX方向右側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,2)を減算した値となる。また、前記太陽電池セルSCのX方向中央よりも右側の差データ群De(n,m,2)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)からX方向左側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n−a,m,2)を減算した値となる。これにより、図8の最上段の最も左の太陽電池セルSCに関する第2印加電圧の印加による差データ群De(n,m,2)が計算される。
【0141】
前記ステップS618の処理後、コントローラ70は、ステップS620にて、変数tがX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達したか否かを判定する。変数tが数tmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS620にて「No」と判定して、図8の最上段の左から2番目の太陽電池セルSCを指定するために、ステップS622にて変数kに「2」を加算し、ステップS624にて変数tに「1」を加算する。そして、コントローラ70は、前述したステップS610〜S618の処理を実行する。これにより、図8の最上段の左から2番目の太陽電池セルSCに関する前述の差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)が計算される。
【0142】
そして、コントローラ70は、ステップS620にて、ふたたび、変数tがX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達したか否かを判定する。そして、変数tが数tmaxに達するまで、コントローラ70は、ステップS620にて「No」と判定し続けて、ステップS622,S624,S610〜S618からなる循環処理を実行し続ける。そして、図8の最上段の全ての太陽電池セルSCに関する前述の差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)が計算されて、変数tがX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS620にて「Yes」と判定して、ステップS626に進む。
【0143】
ステップS626においては、コントローラ70は、変数sがY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達したか否かを判定する。変数sが数smaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS626にて「No」と判定して、図8の上から2段目の最も左の太陽電池セルSCを指定するために、ステップS628にて変数sに「1」を加算し、ステップS630にて変数k、tを「1」に初期設定する。そして、コントローラ70は、前述したステップS610〜S624の処理を実行する。これにより、図8の上から2段目の変数t(=1〜tmax)によって指定される全ての太陽電池セルSCに関する前述の差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)が計算される。その後、変数sがY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達するまで、コントローラ70は、ステップS626にて「No」と判定して、前述したステップS628,S630の処理によってY方向の次の全ての太陽電池セルSCを指定して、前記次の全ての太陽電池セルSCに関する前述の差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)を計算する。その後、変数sがY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達すると、コントローラ70は、ステップS626にて「Yes」と判定して、図7EのステップS700に進む。
【0144】
次に、太陽電池パネルSPの合否の判定を行う図7E及び図7FのステップS700〜S756の処理について説明する。まず、コントローラ70は、ステップS700にて、変数k,s,t,epを「1」にそれぞれ初期設定する。この場合も、図8に示すように、変数kは、X方向電極番号gxを指定するための1〜kmaxで変化する変数である。変数sは、Y方向電極番号gyを指定するための1〜smaxで変化する変数である。変数tは、X方向の太陽電池セルSCを指定するための1〜tmaxで変化する変数である。変数epは、1つの太陽電池セルSC内の取出電極81,82を指定するための変数であり、「1」により図8の左側の取出電極82を示し、「2」により図8の右側の取出電極81を示す。なお、前記変数k,s,t,epの「1」への初期設定により、図8の最上段の最も左側の取出電極82が指定されることになる。
【0145】
前記ステップS700の処理後、コントローラ70は、ステップS702にて、変数epが「1」であるか否かを判定する。この初期の状態では、変数epは「1」であるので、コントローラ70は、ステップS702にて「Yes」と判定して、ステップS704にて値neを予め決めた正の小さな整数値Aに設定する。一方、後述するように、変数epが「2」である場合は、コントローラ70は、ステップS702にて「No」と判定して、ステップS706にて値neを予め決めた絶対値の小さな負の整数値−Aに設定する。この値ne(値A,−A)は、図8の取出電極81,82の内側近傍の測定位置、すなわち前述したステップS500〜S542の処理によって変数gx,gyを割当てた電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が示すX方向位置の内側近傍の測定位置(取出電極82にあっては右側近傍位置、取出電極81にあっては左側近傍位置)を指定するための値である。これは、図13(C)(D)で説明したように、太陽電池セルSCの取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良においては、取出電極81,82の位置よりもそれらの内側近傍位置のX方向の電流の大きさのY方向における変化が大きいためである。したがって、値Aは、前記電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が示すX方向位置と、前記接続不良時の電流の大きさの変化が最大となるX方向位置との差に対応した値がX方向の移動ピッチΔX(例えば、1mm程度)を用いて計算して予め設定されている。例えば、値Aは、取出電極81,82の位置よりも1〜2mm程度内側を示す値「1」又は「2」に設定されている。
【0146】
前記ステップS704の処理後のステップS708においては、コントローラ70は、前記図7DのステップS614の処理によって生成した差データ群De(n,m,1)及び前記図7AのステップS414の処理によって記憶したX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)の中から、変数kに等しいX方向電極番号gx及び変数sに等しいY方向電極番号gyが割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)の内側近傍位置すなわち右側近傍位置の座標群(n+ne,m)に対応した差データ群De(n+ne,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)を抽出する。すなわち、X方向電極番号gx(=k)及びY方向電極番号gy(=s)によって指定される取出電極82の右側の近傍位置であって、取出電極82と平行な位置の差データ群De(n+ne,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)が抽出される。なお、これらの差データ群De(n+ne,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)は、「1」ずつ順次増加する変数mによって指定される取出電極82のY方向の長さ分のデータ数を含む。
【0147】
前記ステップS708の処理後、コントローラ70は、ステップS710にて、前記抽出した差データ群De(n+ne,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)を用いて次のような計算を実行する。まず、前記抽出した差データ群De(n+ne,m,1)を前記抽出したX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)でそれぞれ除算することにより、比率データ群Der(n+ne,m,1)(=De(n+ne,m,1)/Ix(n+ne,m,1))をそれぞれ計算する。そして、この比率データDer(n+ne,m,1)の最大値と最小値との差を評価データB(t,s,ep)として記憶する。次に、前記比率データ群Der(n+ne,m,1)の標準偏差を計算して評価データC(t,s,ep)として記憶する。この状態では、変数t,s,epによって指定される取出電極(この場合、図8の最上段の最も左側の太陽電池セルSCの左側の取出電極82に関する比率データ群Der(n+ne,m)の評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)が計算されて記憶されることになる。そして、これらの評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)は、前記差データ群De(n+ne,m,1)及び比率データ群Der(n+ne,m,1)の変動を表している。
【0148】
前記ステップS710の処理後、コントローラ70は、ステップS712にて、評価データB(t,s,ep)が所定の許容値よりも大きいか否かを判定するとともに、ステップS714にて評価データC(t,s,ep)が所定の許容値よりも大きいか否かを判定する。評価データB(t,s,ep)が所定の許容値よりも大きければ、コントローラ70は、ステップS712にて「Yes」と判定して、ステップS716にて取出電極に関するエラーデータEr1(t,s,ep)を“1”に設定して、図7FのステップS718に進む。また、評価データC(t,s,ep)が所定の許容値よりも大きければ、コントローラ70は、ステップS714にて「Yes」と判定して、ステップS716にて取出電極に関するエラーデータEr1(t,s,ep)を“1”に設定して、ステップS718に進む。また、評価データB(t,s,ep)が所定の許容値以下であり、かつ評価データC(t,s,ep)が所定の許容値以下であれば、コントローラ70は、ステップS712、S714にて共に「No」と判定して、ステップS718に進む。
【0149】
ステップS718においては、コントローラ70は、変数epが「2」であるかを判定する。この場合、変数epは「1」であるので、コントローラ70は、ステップS718にて「No」と判定し、ステップS720にて変数epに「1」を加算して「2」に設定し、ステップS722にて変数kに「1」を加算して「2」に設定して、図7EのステップS702に戻る。この状態では、変数s,tは「1」に初期設定されたままであり、変数k,epは「2」に変更されているので、図8の最上段の左から2番目の取出電極81が指定されることになる。そして、コントローラ70は、ステップS702にて「No」すなわち変数epが「1」でないと判定して、ステップS706にて値neを負の値−Aに設定する。そして、コントローラ70は、前述したステップS708〜S716の処理を実行する。ステップS708においては、値neが負の値−Aに設定されているために、変数kに等しいX方向電極番号gx及び変数sに等しいY方向電極番号gyが割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)の左側近傍位置の座標群(n+ne,m)に対応した差データ群De(n+ne,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)が抽出される。すなわち、X方向電極番号gx(=k)及びY方向電極番号gy(=s)によって指定される取出電極81の左側の近傍位置(例えば、取出電極81から左側へ1〜2mm程度離れた位置)であって、取出電極81と平行な位置の差データ群De(n+ne,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)が抽出される。
【0150】
そして、ステップS710の処理により、前記取出電極81の左側の近傍位置に関する前述した評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)が計算される。次に、ステップS712〜S716の処理により、前記計算された評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)が評価されて、前記取出電極81と内部電極86との接続不良が発生していれば、変数t,s,epによって指定されるエラーデータEr(t,s,ep)が“1”に設定されてRAM又は記憶装置に記憶される。その結果、この状態では、図8の最上段の左から1番目の太陽電池セルSCの一対の取出電極81,82の接続不良が判定される。
【0151】
前記ステップS712〜S716の処理後、コントローラ70は、ステップS718にて変数epが「2」であるかをふたたび判定する。この場合、変数epが「2」であるので、コントローラ70は、ステップS718にて「Yes」と判定し、ステップS724に進む。ステップS724においては、コントローラ70は、前記図7DのステップS614の処理によって生成した差データ群De(n,m,1)及び前記図7AのステップS414の処理によって記憶したX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)の中から、変数k−1に等しいX方向電極番号gx(=k−1)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)の内側位置(図8の右側位置)の座標群 (n+d,m)と、変数kに等しいX方向電極番号gx(=k)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)の内側位置(図8の左側位置)の座標群(n−d,m)とを含む、それらの座標群 (n+d,m), (n−d,m)の間に位置する座標位置(n,m)に対応した差データ群De(n,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)を抽出する。なお、これらの差データ群De(n,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)は、発電面の接続不良を検出するために第1印加電圧を太陽電池パネルSPに印加した場合の測定結果に基づくものである。
【0152】
この場合、値dは例えば「8」程度の値であり、移動ピッチΔX,ΔYが1mm程度であることを考慮すれば、図8の1つの太陽電池セルSCの取出電極82の右側に8mm程度の位置から、取出電極81の左側に8mm程度の位置までの間の位置における差データ群De(n,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)が抽出されることになる。これらの抽出したデータ群De(n,m,1),Ix(n,m,1)は、太陽電池セルSCの発電面の接続不良を検出するもので、取出電極82,81からそれらの内側に8mm程度の位置までのデータ群De(n,m,1),Ix(n,m,1)を削除した理由は、前述した取出電極82,81に接続不良があった場合には差データ群De(n,m,1)が異常な値を示すためである。
【0153】
前記ステップS724の処理後、コントローラ70は、ステップS726にて、前記抽出した差データ群De(n,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)を用いて次のような計算を実行する。前記抽出した差データ群De(n,m,1)を前記抽出したX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)でそれぞれ除算することにより、比率データ群Der(n,m,1)(=De(n,m,1)/Ix(n,m,1))をそれぞれ計算する。そして、コントローラ70は、ステップS728にて、前記計算した全ての比率データDer(n,m,1)の中に、許容値(所定の負の値)よりも小さな比率データDer(n,m,1) が存在するかを判定する。存在すれば、コントローラ70は、ステップS728にて「Yes」と判定し、ステップS730にて該当する比率データDer(n,m,1)を不良位置データErp(n,m,1)として記憶し、ステップS732にて変数t,sによって指定されるエラーデータEr2(t,s)を“1”に設定する。これらの不良位置データErp(n,m,1)及びエラーデータEr2(t,s)は対応させて記憶される。また、前記計算した全ての比率データDer(n,m,1)の中に、許容値(所定の負の値)よりも小さな比率データDer(n,m,1) が存在しなければ、コントローラ70は、ステップS728にて「No」と判定して、ステップS734に進む。なお、前記許容値を負の所定値に設定した理由は、接続不良が存在している位置のX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)は、他の位置の電流の大きさデータ、本実施形態では接続不良の存在位置から太陽電池セルSCの内側に5mm程度離れた位置の電流の大きさデータIx(n+a,m,1)又はIx(n−a,m,1)(値aは、図7DのステップS600,S602で用いた値)よりも小さいからである。
【0154】
ステップS734においては、コントローラ70は、前記図7DのステップS618の処理によって生成した差データ群De(n,m,2)及び前記図7AのステップS414の処理によって記憶したX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)の中から、変数k−1に等しいX方向電極番号gx(=k−1)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)の内側位置(図8の右側位置)の座標群 (n+d,m)と、変数kに等しいX方向電極番号gx(=k)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)の内側位置(図8の左側位置)の座標群(n−d,m)とを含む、それらの座標群
(n+d,m), (n−d,m)の間に位置する座標位置(n,m)に対応した差データ群De(n,m,2)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)を抽出する。なお、これらの差データ群De(n,m,2)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)は、発電面のリーク不良を検出するために第2印加電圧を太陽電池パネルSPに印加した場合の測定結果に基づくものである。
【0155】
この場合も、値dは例えば「8」程度の値であり、移動ピッチΔX,ΔYが1mm程度であることを考慮すれば、図8の1つの太陽電池セルSCの取出電極82の右側に8mm程度の位置から、取出電極81の左側に8mm程度の位置までの間の位置における差データ群De(n,m,2)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)が抽出されることになる。これらの抽出したデータ群De(n,m,2),Ix(n,m,2)は、太陽電池セルSCの発電面のリーク不良を検出するもので、取出電極82,81からそれらの内側に8mm程度の位置までのデータ群De(n,m,2),Ix(n,m,2)を削除した理由は、前記発電面の接続不良の場合と同じである。
【0156】
前記ステップS734の処理後、コントローラ70は、ステップS736にて、前記抽出した差データ群De(n,m,2)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)を用いて次のような計算を実行する。前記抽出した差データ群De(n,m,2)を前記抽出したX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)でそれぞれ除算することにより、比率データ群Der(n,m,2)(=De(n,m,2)/Ix(n,m,2))をそれぞれ計算する。そして、コントローラ70は、ステップS738にて、前記計算した全ての比率データDer(n,m,2)の中に、許容値(所定の正の値)よりも大きな比率データDer(n,m,2) が存在するかを判定する。存在すれば、コントローラ70は、ステップS738にて「Yes」と判定し、ステップS740にて該当する比率データDer(n,m,2)を不良位置データErp(n,m,2)として記憶し、ステップS742にて変数t,sによって指定されるエラーデータEr3(t,s)を“1”に設定する。これらの不良位置データErp(n,m,2)及びエラーデータEr3(t,s)は対応させて記憶される。また、前記計算した全ての比率データDer(n,m,2)の中に、許容値(所定の正の値)よりも大きな比率データDer(n,m,2) が存在しなければ、コントローラ70は、ステップS738にて「No」と判定して、ステップS746に進む。なお、前記許容値を正の所定値に設定した理由は、リーク不良が存在している位置のX方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)は、他の位置の電流の大きさデータ、本実施形態ではリーク不良の存在位置から太陽電池セルSCの内側に5mm程度離れた位置の電流の大きさデータIx(n+a,m,2)又はIx(n−a,m,2)(値aは、図7DのステップS604,S606で用いた値)よりも大きいからである。
【0157】
この場合、変数k,epは「2」であり、変数s,tは「1」である。したがって、前述したステップS702〜S742の処理により、図8の最上段の最も左の太陽電池セルSCに関する欠陥が検出される。具体的には、前述したステップS702〜S716の処理により、前記太陽電池セルSCの1対の取出電極82,81の接続不良が検出される。すなわち、前記太陽電池セルSCの1対の取出電極82,81の接続不良が判定され、接続不良が判定された場合には、エラーデータEr1(t,s,ep)(t,s=1,ep=1又は2)が“1”に設定される。また、前述したステップS724〜S732の処理により、前記太陽電池セルSCの発電面の接続不良が検出される。すなわち、前記太陽電池セルSCの発電面の接続不良が判定され、接続不良が判定された場合には、エラーデータEr2(t,s)(t,s=1)が“1”に設定される。また、この場合には、不良位置を表す不良位置データErp(n,m,1)も記憶される。さらに、前述したステップS734〜S742の処理により、前記太陽電池セルSCの発電面のリーク不良が検出される。すなわち、前記太陽電池セルSCの発電面のリーク不良が判定され、リーク不良が判定された場合には、エラーデータEr3(t,s)(t,s=1)が“1”に設定される。また、この場合には、不良位置を表す不良位置データErp(n,m,2)も記憶される。
【0158】
前記ステップS702〜S742の処理後、コントローラ70は、ステップS746にて変数tが前記入力したX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達したか否かを判定する(図8参照)。変数tがX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS746にて「No」と判定し、ステップS748にて変数tに「1」を加算し、ステップS750にて変数epを初期値「1」に戻し、ステップS722にて変数kに「1」を加算して、ステップS702に戻る。そして、コントローラ70は、前述したステップS702〜S716の処理により、図8の最上段の左から2番目の太陽電池セルSCの1対の取出電極82,81の接続不良を検出する。また、前述したステップS724〜S732の処理により、図8の最上段の左から2番目の太陽電池セルSCの発電面の接続不良を検出する。さらに、前述したステップS734〜S742の処理により、図8の最上段の左から2番目の太陽電池セルSCの発電面のリーク不良を検出する。
【0159】
その後、変数tが前記入力したX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達するまで、ステップS746にて「No」と判定され続けて、ステップS748,S750,S722の処理より変数t,ep,kが変更されて、前述したステップS702〜S742の処理により、図8の最上段において順次右に向かって太陽電池セルSCの1対の取出電極82,81の接続不良が検出されるとともに、太陽電池セルSCの発電面の接続不良及びリーク不良が検出される。そして、変数tが前記入力したX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS746にて「Yes」と判定し、ステップS752にて変数sが前記入力したY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達したか否かを判定する。この場合、変数sは「1」であり、変数sがY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達していないので、コントローラ70は、ステップS752にて「No」と判定し、ステップS754にて変数sに「1」を加算し、ステップS756にて変数k,t,epを初期値「1」に戻して、ステップS702に戻る。そして、コントローラ70は、前述したステップS702〜S756の処理を繰り返し実行して、図8の最上段から2段目以降の太陽電池セルSCであって変数t,s,epによって指定される取出電極82,81の接続不良を検出するとともに、同太陽電池セルSCの発電面の接続不良及びリーク不良を検出する。
【0160】
そして、これらのステップS702〜S756の処理を全ての太陽電池セルSCに対して実行した後、コントローラ70は、ステップS752にて「Yes」すなわち変数sがY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達していると判定して、図7GのステップS800に進む。
【0161】
ステップS800においては、コントローラ70は、前記RAM又は記憶装置に記憶した電流の大きさデータIxy(n,m,h)、電流の方向データθixy(n,m,h)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,h)、Y方向の電流の大きさデータIy(n,m,h)及び差データDe(n,m,h)(n=1〜N,m=1〜M,h=1,2)から表示用画像データを生成して、表示装置72に画像データによって表された画像を表示する。この画像は、例えば、太陽電池セルSCの測定位置ごとに、電流の大きさデータIxy(n,m,h)に応じて明度、色彩などを異ならせて表示するとともに、電流の方向データθixy(n,m,h)によって示された方向を示す矢印を表示する。また、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,h)、Y方向の電流の大きさデータIy(n,m,h)及び差データDe(n,m,h)に応じて明度、色彩などを異ならせて表示するとよい。また、表示装置72の表示画面の大きさに応じて、画像を拡大して、各太陽電池セルSCごと、又は各太陽電池セルSCの一部のみを表示したりするようにするとよい。
【0162】
また、本実施形態では、取出電極81,82の接続不良を視覚判断できるように、取出電極81,82の対応位置及びその近傍位置(取出電極81,82の間であって取出電極81,82の近傍位置)の差データDe(n,m,1),De(n+ne,m,1)のみを、取出電極81,82ごと又は太陽電池セルSCごとに表示するようにするとよい。この場合、ステップS708の処理により抽出した差データDe(n+ne,m,1)をそれぞれ記憶しておいて、取出電極81,82の近傍位置に関しては、前記値ne分だけ左側又は右側の差データDe(n+ne,m,1)を表示装置72で表示する。また、取出電極81,82の対応位置に関しては、差データDe(n,m,1)を表示装置72で表示する。さらに、取出電極81,82の近傍位置及び対応位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+ne,m,1),Ix(n,m,1)を同時に表示してもよい。
【0163】
前記ステップS800の処理後、コントローラ70は、ステップS802〜S806の判定処理を実行する。ステップS802においては、エラーデータEr1(t,s,ep)(t=1〜tmax,s=1〜smax,ep=1,2)の中に“1”を示すエラーデータが存在するかを調べる。ステップS804においては、エラーデータEr2(t,s)(t=1〜tmax,s=1〜smax)の中に“1”を示すエラーデータが存在するかを調べる。ステップS804においては、エラーデータEr3(t,s)(t=1〜tmax,s=1〜smax)の中に“1”を示すエラーデータが存在するかを調べる。エラーデータEr1(t,s,ep),Er2(t,s),Er3(t,s)に“1”を示すエラーデータが存在しなければ、コントローラ70は、ステップS802〜S804にて「No」と判定して、ステップS808にて表示装置72に「合格」を表示し、ステップS820にてこの評価プログラムの実行を終了する。
【0164】
一方、“1”を示すエラーデータがエラーデータEr1(t,s,ep)、Er2(t,s),Er3(t,s)のいずれかに存在すると、コントローラ70は、ステップS802〜S806のいずれかにて「Yes」と判定して、ステップS810にて表示装置72に「不合格」を表示する。
【0165】
前記ステップS810の処理後、エラーデータEr1(t,s,ep)に“1”が含まれていれば、ステップS812にて、エラーデータEr1(t,s,ep)が“1”である変数t,s,epを取り出して、前記表示した画像中の変数t,s,epによって指定される取出電極81,82を接続不良ありとして表示する。また、エラーデータEr2(t,s)に“1”が含まれていれば、ステップS814にて、エラーデータEr2(t,s)が“1”である変数t,sを取り出して、前記表示した画像中の変数t,sによって指定される太陽電池セルSCの発電面に接続不良ありとして表示するとともに、前記図7FのステップS730の処理によって記憶した不良位置データErp(n,m,1)の変数n,mを取り出して、変数n,mによって指定される太陽電池セルSCの発電面の接続不良位置を表示する。さらに、エラーデータEr3(t,s)に“1”が含まれていれば、ステップS816にて、エラーデータEr3(t,s)が“1”である変数t,sを取り出して、前記表示した画像中の変数t,sによって指定される太陽電池セルSCの発電面にリーク不良ありとして表示するとともに、前記図7FのステップS740の処理によって記憶した不良位置データErp(n,m,2)の変数n,mを取り出して、変数n,mによって指定される太陽電池セルSCの発電面のリーク不良位置を表示する。そして、コントローラ70は、ステップS820にてこの評価プログラムの実行を終了する。
【0166】
上記のように動作する太陽電池セル検査装置においては、通電回路66は、オフセット電圧に交流信号を重畳した電圧を太陽電池パネルSPに印加することにより、太陽電池パネルSPに電流を流す。そして、X方向及びY方向スライド機構20,30により、磁気センサ10で太陽電池パネルSPの表面全体を走査し、センサ信号取出回路67及びロックインアンプ68が、太陽電池パネルSPに流れる電流により発生する磁界であって、前記所定周期と等しい周期で強度が変化する磁界を検出する。したがって、外乱光や、外部磁界が存在しても、コストを抑えたうえで、これらの影響を受けずに、太陽電池パネルSPに対向する複数の箇所で磁界を精度よく検出することができる。
【0167】
そして、前記検出結果に基づいて、コントローラ70は、図5AのステップS100〜S136及び図6A及び図6BのステップS300〜S350の処理により、前記検出磁界に基づくY方向の電流Iyの大きさを用いて、太陽電池パネルSPの表面を電極近傍領域と発電面領域とに区分する。そして、図5B及び図5CのステップS200〜S254の処理により、太陽電池パネルSPへの印加電圧を第1印加電圧に設定して、電極近傍領域及び発電面領域の両方の領域の磁界を検出するとともに、太陽電池パネルSPへの印加電圧を第2印加電圧に設定して、発電面領域の磁界を検出する。第1及び第2印加電圧は、平均電圧(オフセット電圧)に交流信号(正弦波信号)を重畳したものである。第1印加電圧は接続不良を検出するための印加電圧であり、第2印加電圧はリーク不良を検出するための印加電圧であり、第1印加電圧の平均電圧は第2印加電圧の平均電圧よりも大きく、かつ第1印加電圧の交流信号の振幅は第2印加電圧の交流信号の振幅よりも大きい。そして、第1及び第2印加電圧の最小電圧は、太陽電池セルSPの順方向電圧降下より大きい。
【0168】
さらに、図7AのステップS400〜S432の処理により、太陽電池パネルSPに第1印加電圧を印加した状態における検出磁界に基づいて、太陽電池パネルSPの電極近傍領域及び発電面領域の各測定位置の電流の大きさデータIxy(n,m,1)、電流の方向データθixy(n,m,1)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m,1)を計算する。また、太陽電池パネルSPに第2印加電圧を印加した状態における検出磁界に基づいて、太陽電池パネルSPの発電面領域の各測定位置の電流の大きさデータIxy(n,m,2)、電流の方向データθixy(n,m,2)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m,2)を計算する。また、コントローラ70は、ステップS500〜S542の処理により、太陽電池パネルSP上の複数の太陽電池セルSCの取出電極位置Bxy(n,m)を検出する。さらに、ステップS600〜S630の処理により、太陽電池パネルSP内の複数の太陽電池セルSCのそれぞれに対して、取出電極81,82間の各位置のX方向の電流の大きさデータから、太陽電池セルSCのX方向内側に所定距離(5mm程度)だけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータを減算した差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)を計算する。なお、差データ群De(n,m,1)は第1印加電圧の印加による測定結果に基づくデータ群であり、差データ群De(n,m,2)は第2印加電圧の印加による測定結果に基づくデータ群である。
【0169】
図7EのステップS700〜S716の処理により、前記第1印加電圧の印加による差データ群De(n,m,1)とX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)の中から、取出電極81,82の近傍位置における差データ群De(n+ne,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)を抽出する。そして、これらの差データ群De(n+ne,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1))を用いて、取出電極81,82の延設方向に沿った前記差データ群De(n,m,1)の変動を表す評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算して、取出電極81,82の接続不良を判定する。
【0170】
このような太陽電池セルSCにおいては、図13を用いて説明したように、前記差データ群De(n+ne,m,1)は取出電極81,82が正常であればほぼ一定値である。しかし、取出電極81,82に接続不良が発生している場合には、接続不良位置において、前記差データ群De(n+ne,m,1)は一定値から大きく変動する。したがって、上記実施形態によれば、取出電極81,82の接続不良を高精度で簡単に検出することができる。
【0171】
また、ステップS724〜S732の処理により、前記第1印加電圧の印加による差データ群De(n,m,1)とX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)の中から、取出電極81,82間の位置における差データ群De(n,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)を抽出する。そして、これらの差データ群De(n,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)を用いて、前記X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)に対する差データDe(n,m,1)の比の値である比率データDer(n,m,1)が負の値の許容値より小さいことを条件に、太陽電池セルSCの発電面の接続不良を検出する。
【0172】
このような太陽電池セルSCにおいては、図14を用いて説明したように、前記差データDe(n,m,1)は太陽電池セルSCの発電面が正常であればほぼ「0」である。しかし、太陽電池セルSCの発電面に接続不良がある場合には、接続不良位置において、前記差データDe(n,m,1)は「0」から負側に大きく変動する。したがって、上記実施形態によれば、太陽電池セルSCの発電面の接続不良を高精度で簡単に検出することができる。
【0173】
また、ステップS734〜S742の処理により、前記第2印加電圧の印加による差データ群De(n,m,2)とX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)の中から、取出電極81,82間の位置における差データ群De(n,m,2)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)を抽出する。そして、これらの差データ群De(n,m,2)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)を用いて、前記X方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)に対する差データDe(n,m,2)の比の値である比率データDer(n,m,2)が正の値の許容値より大きいことを条件に、太陽電池セルSCの発電面のリーク不良を検出する。
【0174】
このような太陽電池セルSCにおいては、図15を用いて説明したように、前記差データDe(n,m,2)は太陽電池セルSCの発電面が正常であればほぼ「0」である。しかし、太陽電池セルSCの発電面にリーク不良がある場合には、リーク不良位置において、前記差データDe(n,m,2)は「0」から正側に大きく変動する。したがって、上記実施形態によれば、太陽電池セルSCの発電面のリーク不良を高精度で簡単に検出することができる。特に、第1印加電圧とは異なり、第2印加電圧の平均電圧及び交流信号の振幅を小さく、すなわち第2印加電圧の平均電圧及び交流信号の振幅よりも小さくしたので、リーク不良の検出が良好となる。
【0175】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
【0176】
上記実施形態においては、太陽電池パネルSPをX方向において電極近傍領域と発電面領域に区分するために、図8に示す太陽電池パネルSPにおける最上段の複数の太陽電池セルSCと最下段の複数の太陽電池セルSCの各Y方向中央付近においてY方向に流れる電流の大きさIyをX方向に沿って検出するようにした。しかし、これらの最上段及び最下段の複数の太陽電池セルSCでなくても、X方向に沿って配置された2列の複数の太陽電池セルSCなら、Y方向の任意の位置の複数の太陽電池セルSCにおいてY方向に流れる電流を用いて前記領域区分を行うようにしてもよい。また、2列でなく、さらに多くの列の複数の太陽電池セルSCにおけるY方向に流れる電流を用いて前記領域区分を行うようにしてもよい。また、この領域区分はそれほど厳密に領域を区分するものでもないので、X方向に沿って配置された1列の複数の太陽電池セルSCにおけるY方向に流れる電流のみを用いて前記領域区分を行うようにしてもよい。さらに、検査対象である太陽電池パネルSPが限定されていて取出電極81,82の位置が予め分かっているならば、取出電極81,82の位置検出を行わずに、前記領域区分を行うようにしてもよい。
【0177】
また、上記実施形態では、取出電極81,82の位置を検出して電極近傍領域と発電面領域に区分し、電極近傍領域では太陽電池パネルSPに第1印加電圧を印加し、発電面領域では第1及び第2印加電圧を印加して、磁気センサ10を太陽電池パネルSPの全体にわたって1回走査させるだけで磁界検出を行うようにした。しかし、これに代えて、取出電極81,82の接続不良及び発電面領域の接続不良の検出のために、太陽電池パネルSPに第1印加電圧を印加した状態で、磁気センサ10を太陽電池パネルSPの全体にわたって走査させて磁界検出を行い、この磁界検出で得られた磁界に基づいて取出電極81,82の位置を検出して、電極近傍領域と発電面領域に区分するようにしてもよい。その後、発電面領域のリーク不良の検出のために、太陽電池パネルSPに第2印加電圧を印加した状態で、磁気センサ10を発電面領域のみを走査させて磁界検出を行い、この磁界検出で得られた磁界に基づいて発電面領域のリーク不良の検出を行うようにしてもよい。
【0178】
また、上記実施形態では、電極近傍領域では取出電極81,82を接続不良を検出するために第1印加電圧の印加による磁界の測定を行い、発電面領域では発電面の接続不良及びリーク不良を検出するために第1及び第2印加電圧の印加による磁界の測定を行うようにした。しかし、これに代えて、発電面領域では、発電面のリーク不良を検出するために第2印加電圧の印加による磁界の測定を行い、発電面の接続不良を検出するために第1印加電圧とは異なる第3印加電圧の印加による磁界の測定を行うようにしてもよい。なお、この第3印加電圧においては、その平均電圧及び交流信号の振幅は第2印加電圧の平均電圧及び交流信号の振幅よりもそれぞれ大きく、かつその最低電圧は太陽電池セルSCにおけるPN接合の順方向電圧降下よりも大きい。また、発電面領域でリーク不良の検査のみを行いたい場合には、発電面領域では第2印加電圧の印加による磁界の測定のみを行うようにすればよい。また、取出電極81,82の接続不良の検査が不要な場合には、電極近傍領域における第1印加電圧の印加による磁界の測定を省略すればよい。
【0179】
また、上記実施形態では、交流成分を含む直流電圧を太陽電池パネルSPに印加して磁界の測定を行うようにした。しかし、地磁気の影響、及び外部磁界の影響を無視することができれば、一定値の直流電圧である第1及び第2印加電圧を太陽電池パネルSPに印加して磁界の測定を行うようにしてもよい。この場合も、取出電極81,82及び発電面の接続不良の検出のための第1印加電圧は発電面のリーク不良の検出のための第2印加電圧よりも大きく、かつ第1及び第2印加電圧は共に太陽電池セルSCにおけるPN接合の順方向電圧降下よりも大きい。そして、例えば、この変形例に係る第1印加電圧を上記実施形態の第1印加電圧の平均電圧(オフセット電圧)Vave1に等しく設定し、この変形例に係る第2印加電圧を上記実施形態の第2印加電圧の平均電圧(オフセット電圧)Vave2に等しく設定するとよい。
【0180】
また、上記実施形態では、取出電極81,82の近傍位置のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)(又はIx(n−ne,m,1))から、前記近傍位置から所定距離(5mm:a・ΔX)だけX方向内側に離れた位置のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne+a,m,1)(又はIx(n−ne−a,m,1))を減算した差データ群De(n,m,1)の変動により太陽電池セルSCの取出電極81,82の接続不良(取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良)を検出するようにした。しかし、これに代えて、図13(D)に示すように、太陽電池セルSCの取出電極81,82に接続不良が発生すれば、取出電極81,82位置にてX方向に流れる電流の大きさデータIx(n,m,1)から、取出電極81,82から所定距離(5mm:a・ΔX)だけX方向内側に離れた位置のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+a,m,1)(又はIx(n−a,m,1))を減算した差データ群De(n,m,1)も変動する。したがって、この差データDe(n,m,1)を用いて、太陽電池セルSCの取出電極81,82の接続不良を検出するようにしてもよい。なお、この場合には、図7EのステップS702〜S706の処理が不要となるとともに、ステップS708においては電極位置座標群Bxy(n,m)に対応した差データ群De(n,m,1)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)が抽出されて、ステップS710にてデータ群De(n+ne,m,1),Ix(n+ne,m,1)に代えてデータ群De(n,m,1),Ix(n,m,1)が用いられる。
【0181】
また、上記実施形態においては、X方向電極番号gx及びY方向電極番号gyを電極位置座標Bxy(n,m)に割当てる図7B及び図7CのステップS500〜S542の処理において、電流の大きさデータIxy(n,m,1)を用いて取出電極81,82の位置を検出するようにした。しかし、取出電極81,82位置を流れる電流の向きはほぼY方向であるので、前記電流の大きさデータIxy(n,m,1)に代えて、Y方向の電流の大きさデータIy(n,m,1)を用いるようにしてもよい。
【0182】
また、上記実施形態では、図7AのステップS404〜S410の処理により、磁気センサ10の測定位置のX方向磁気検出信号の極大値Hx、X方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θx、Y方向磁気検出信号の極大値Hy、Y方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θy、磁界の強さHxy及び磁界の向きθxyを計算して、ステップS412,S414の処理により、磁気センサ10の測定位置の電流の大きさデータIxy(n,m,1),Ixy(n,m,2)、前記電流の方向データθixy(n,m,1),θixy(n,m,2)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1),Ix(n,m,2)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m,1),Iy(n,m,2)を計算した。次に、図7DのステップS600〜S618の処理により、X方向の電流の大きさデータIx(n,m,1),Ix(n,m,2)を用いて差データDe(n,m,1),De(n,m,2)を計算した。そして、図7E及び図7FのステップS700〜S756の処理により、この差データDe(n,m,1)及びX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)を用いて、太陽電池セルSCの取出電極81,82の接続不良を検出するとともに、太陽電池セルSCの発電面の接続不良を検出するようにした。また、差データDe(n,m,2)及びX方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)を用いて、太陽電池セルSCの発電面のリーク不良を検出するようにした。
【0183】
しかし、電流の大きさは磁界の大きさに比例しており、電流の方向は磁界の方向とπ/2異なるだけである。したがって、磁界に関する情報を電流に関する情報に変換しなくても、磁気センサ10の各測定位置のY方向磁気検出信号の極大値Hyを、上記実施形態のX方向の電流の大きさIx(n,m,1),Ix(n,m,2)に代えて用いることにより、差データDe(n,m,1),De(n,m,2)を計算するようにしてもよい。ただし、この場合のY方向磁気検出信号の極大値Hyは、第1及び第2印加電圧を太陽電池パネルSPにそれぞれ印加した2組の測定結果に基づくものである。そして、これらの差データDe(n,m,1)と前記第1印加電圧を印加した場合の極大値Hyを用いて、太陽電池セルSCの取出電極81,82の接続不良を検出したり、太陽電池セルSCの発電面の接続不良を検出するようにしてもよい。また、差データDe(n,m,2)と前記第2印加電圧を印加した場合の極大値Hyを用いて、太陽電池セルSCの発電面のリーク不良を検出するようにしてもよい。
【0184】
また、上記実施形態及び変形例では、取出電極81,82の位置を自動的に検出し、検出した取出電極81,82の位置及びその近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1),Ix(n+ne,m,1)から差データDe(n,m,1),De(n+ne,m,1),比率データDer(n,m,1),Der(n+ne,m,1),評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算して、取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の有無を判定するようにした。しかし、これに代えて、作業者が表示装置72に表示される電流分布の画像を見て取出電極81,82の位置をコントローラ70に指示し、コントローラ70がこの指示された位置及びその近傍のX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1),Ix(n+ne,m,1)から差データDe(n,m,1),De(n+ne,m,1),比率データDer(n,m,1),Der(n+ne,m,1),評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算して、取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の有無を判定するようにしてもよい。
【0185】
また、コントローラ70は、取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の判定まで行わなくて、評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を表示装置72に表示し、作業者に取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の有無を判定させるようにしてもよい。さらに、コントローラ70は、評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)の計算も行わずに、取出電極81,82の位置及びその近傍位置のX方向の電流の大きさIx(n,m,1),Ix(n+ne,m,1)、差データDe(n,m,1),De(n+ne,m,1),比率データDer(n,m,1),Der(n+ne,m,1)の分布を画像で表示装置72に表示し、作業者はこの表示を見て取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の有無を判定するようにしてもよい。
【0186】
また、太陽電池セルSCの発電面の接続不良及びリーク不良に関しても、差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)又は比率データ群Der(n,m,1),Der(n,m,2)を表示装置72に表示し、作業者に太陽電池セルSCの発電面の接続不良及びリーク不良の有無を判定させるようにしてもよい。さらに、コントローラ70は、差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)又は比率データ群Der(n,m,1),Der(n,m,2)の計算も行わずに、取出電極81,82間のX方向の電流の大きさIx(n,m,1),Ix(n,m,2)の分布を画像で表示装置72に表示し、作業者はこの表示を見て太陽電池セルSCの発電面の接続不良及びリーク不良の有無を判定するようにしてもよい。
【0187】
また、上記実施形態における取出電極81,82の接続不良の検出において、図7EのステップS710の処理により、差データ群De(n+ne,m,1)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)で除して比率データ群Der(n+ne,m,1)(=De(n+ne,m,1)/Ix(n+ne,m,1))を計算するとともに、この比率データ群Der(n+ne,m,1)を用いて評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算し、ステップS712,S714の判定処理により評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)が許容値よりも大きいことを条件に、取出電極81,82の接続不良を判定するようにした。この場合、差データ群De(n+ne,m,1)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)で除して比率データ群Der(n+ne,m,1)を計算することで、取出電極81,82の接続不良の判定精度は向上する。しかし、検査対象の太陽電池セルSCごとのX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m,1)の変化を小さくすることができ、高い精度を要求しなければ、差データ群De(n+ne,m,1)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)で除することなく、差データ群De(n+ne,m,1)を用いて評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算するようにしてもよい。
【0188】
また、太陽電池セルSCの発電面の接続不良の検出においても、図7FのステップS726の処理により差データ群De(n,m,1)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)で除して比率データ群Der(n,m,1)(=De(n,m,1)/Ix(n,m,1))を計算し、ステップS728にて比率データ群Der(n,m,1)が許容値(負の所定値)よりも小さいことを条件に発電面の接続不良を判定した。この場合も、差データ群De(n,m,1)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)で除して比率データ群Der(n,m,1)を計算することで、発電面の接続不良の判定精度は向上する。しかし、検査対象の太陽電池セルSCごとのX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)の変化を小さくすることができ、高い精度を要求しなければ、差データ群De(n,m,1)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)で除することなく、差データ群De(n,m,1)が所定の負の値よりも小さいことを条件に発電面の接続不良を判定するようにしてもよい。
【0189】
また、太陽電池セルSCの発電面の接続不良の検出においては、各太陽電池セルSCの発電面のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)の平均値を計算し、前記X方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)から前記計算した平均値をそれぞれ減算し、減算結果が所定の負の値よりも小さいことを条件に発電面の接続不良を判定するようにしてもよい。さらに、太陽電池セルSCごとのX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)をほぼ一定値にすることができれば、前記X方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,1)そのものの値が所定の負の値よりも小さいことを条件に発電面の接続不良を判定するようにしてもよい。
【0190】
さらに、太陽電池セルSCの発電面のリーク不良の検出においても、図7FのステップS736の処理により差データ群De(n,m,2)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)で除して比率データ群Der(n,m,2)(=De(n,m,2)/Ix(n,m,2))を計算し、ステップS738にて比率データ群Der(n,m,2)が許容値(正の所定値)よりも大きいことを条件に発電面のリーク不良を判定した。この場合も、差データ群De(n,m,2)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)で除して比率データ群Der(n,m,2)を計算することで、発電面の接続不良の判定精度は向上する。しかし、検査対象の太陽電池セルSCごとのX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)の変化を小さくすることができ、高い精度を要求しなければ、差データ群De(n,m,2)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)で除することなく、差データ群De(n,m,2)が所定の正の値よりも大きいことを条件に発電面のリーク不良を判定するようにしてもよい。
【0191】
また、太陽電池セルSCの発電面のリーク不良の検出においても、各太陽電池セルSCの発電面のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)の平均値を計算し、前記X方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)から前記計算した平均値をそれぞれ減算し、減算結果が所定の正の値よりも大きいことを条件に発電面のリーク不良を判定するようにしてもよい。さらに、太陽電池セルSCごとのX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)をほぼ一定値にすることができれば、前記X方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m,2)そのものの値が所定の正の値よりも大きいことを条件に発電面のリーク不良を判定するようにしてもよい。
【0192】
また、上記実施形態においては、ステップS600,S602,S614の処理により、座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)から前記位置の近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,1)(又はIx(n−a,m,1))を減算して、差データDe(n,m,1)を計算するようにした。しかし、ステップS600,S602,S614の処理により、前記とは逆に、近傍の位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,1)(又はIx(n−a,m,1))から前記座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)を減算して、差データDe(n,m,1)を計算するようにしてもよい。この場合には、図14(C)に示すように、接続不良箇所の差データDe(n,m,1)は正側に変化する。したがって、この場合には、ステップS728の判定処理で、比率データ群Der(n,m,1)又は差データDe(n,m,1)が所定の正の値よりも大きいことを条件に発電面の接続不良を検出するようにすればよい。
【0193】
また、この近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,1)(又はIx(n−a,m,1))から前記座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)を減算して、差データDe(n,m,1)を逆に計算した結果は、取出電極81,82の接続不良の判定にも利用することができる。なぜならば、この逆に計算した差データDe(n,m,1)は図13(C)(D)の縦軸正負を反対にした結果となるだけで、ステップS710の評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)にはほとんど影響を与えないからである。
【0194】
さらに、上記実施形態においては、ステップS604,S606,S618の処理により、座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)から前記位置の近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,2)(又はIx(n−a,m,2))を減算して、差データDe(n,m,2)を計算するようにした。しかし、ステップS604,S606,S618の処理により、前記とは逆に、近傍の位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,2)(又はIx(n−a,m,2))から前記座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)を減算して、差データDe(n,m,2)を計算するようにしてもよい。この場合には、図15(C)に示すように、接続不良箇所の差データDe(n,m,2)は負側に変化する。したがって、この場合には、ステップS738の判定処理で、比率データ群Der(n,m,2)又は差データDe(n,m,2)が所定の負の値よりも小さいことを条件に発電面のリーク不良を検出するようにすればよい。
【0195】
また、上記実施形態における発電面の接続不良の判定においては、座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)から、前記位置から太陽電池セルSCの内側の近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m,1)(又はIx(n−a,m,1))を減算して、差データDe(n,m,1)を計算し、この差データDe(n,m,1)を発電面の接続不良の判定に用いるようにした。しかし、この場合の座標値(n,m)は太陽電池セルSCの取出電極81,82から例えば8mm(8・ΔX)以上内側の位置である。したがって、この発電面の接続不良の判定に用いる差データDe(n,m,1)に関しては、座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1)から、前記位置から太陽電池セルSCの外側方向の近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n−a,m,1)(又はIx(n+a,m,1))を減算して、差データDe(n,m,1)を計算するようにしてもよい。また、発電面のリーク不良に関しても、同様に、差データDe(n,m,2)に関しては、座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m,2)から、前記位置から太陽電池セルSCの外側方向の近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n−a,m,2)(又はIx(n+a,m,2))を減算して、差データDe(n,m,2)を計算するようにしてもよい。
【0196】
また、X方向スライド機構20を構成するセンサ支持台11又は移動部材21の上面に、2つの磁気センサをX方向に前記所定距離(5mm程度)だけ離して配置しておき、取出電極81,82の接続不良検出のために、一方の磁気センサを取出電極81,82の近傍位置又は取出電極81,82の位置にセットし、他方の磁気センサを取出電極81,82の内側の前記所定距離だけ離れた位置にセットされるようにして、2つの磁気センサを取出電極81,82の延設方向に1回だけ移動させて磁界の強さを測定するようにしてもよい。そして、この1回の磁気センサの移動により取得した磁界の強さに基づいて、前記差データ群De(n,m,1)を計算するようにしてもよい。また、この2つの磁気センサを用いた変形例においては、太陽電池の発電面の接続不良及びリーク不良の検出のために2つの磁気センサを発電面を走査させるようにしてもよい。
【0197】
また、上記実施形態では、複数の太陽電池セルSCを有する太陽電池パネルSPを検査するようにした。しかし、本発明は、これに代えて、太陽電池セルSCを個々に検査する検査装置にも適用できる。
【0198】
また、上記実施形態においては、磁気センサ10を固定した移動部材21をX,Y方向に移動するようにした。しかし、これに代えて、太陽電池パネルSP又は太陽電池セルSCをセットするステージ40をX,Y方向に移動するようにしてもよい。また、移動部材21とステージ40の双方がX,Y方向に移動するようにしてもよい。さらには、磁気センサ10及び太陽電池パネルSP(又は太陽電池セルSC)をセットするステージ40を移動させる機構を設けずに、多数の磁気センサ10を、マトリクス状に配置するようにしてもよい。
【0199】
また、上記実施形態においては、取出電極81,82に関する評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算して、評価データの値によって取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の有無を判定するとともに、比率データ群Der(n,m,1),Der(n,m,2)の値によって太陽電池セルSCの発電面の接続不良及びリーク不良の有無を判定するようにした。しかし、太陽電池パネルSP又は太陽電池セルSCの形状及び大きさが1つに限定されていれば、検査対象である太陽電池パネルSP又は太陽電池セルSCのX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1),Ix(n,m,2)の分布と共に、正常な太陽電池パネルSP又は太陽電池セルSCのX方向の電流の大きさデータIx(n,m,1),Ix(n,m,2)の分布を表示して、作業者に対比観察により取出電極81,82の接続不良、太陽電池セルSCの発電面の接続不良及びリーク不良の有無の判定を行わせるようにしてもよい。
【0200】
また、上記実施形態では、磁気センサとして磁気抵抗素子(MR素子)を利用したが、これに代えて、ホール素子、磁気インピーダンス素子効果センサ、フラックスゲート、超伝導量子干渉素子などを利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0201】
10…磁気センサ、11…センサ支持台、20…X方向スライド機構、25…X方向モータ、30…Y方向スライド機構、34…Y方向モータ、40…ステージ、65…通電信号供給回路、66…通電回路、67…センサ信号取出回路、68…ロックインアンプ、70…コントローラ、71…入力装置、72…表示装置、81,82…取出電極、83…発電セル、86,88…内部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って配置されるとともに直列接続されてなり、光の照射により発電する複数の発電セルと、
前記第1方向とは直交する第2方向に延設されるとともに、前記複数の発電セルのうちの両端の一対の発電セルにそれぞれ内部電極を介して接続されて、前記複数の発電セルによって発電された電力を取出すための一対の長尺状の取出電極とを有する太陽電池セルを検査する太陽電池セル検査装置において、
太陽電池セルに対向するように配置されて、太陽電池セルの各部に流れる電流によって発生される磁界を検出する磁気センサと、
太陽電池セルの接続不良を検出するために、前記一対の取出電極に第1印加電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて前記磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出す第1磁界信号取出手段と、
太陽電池セルのリーク不良を検出するために、前記一対の取出電極に前記第1印加電圧よりも低い第2印加電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて前記磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出す第2磁界信号取出手段と
を備えたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載した太陽電池セル検査装置において、
前記太陽電池の接続不良は前記一対の取出電極の接続不良及び前記一対の取出電極間の発電面領域の接続不良のうちの少なくとも一方の接続不良であり、かつ前記太陽電池セルのリーク不良は前記発電面領域のリーク不良であり、
前記第1磁界信号取出手段は、前記一対の取出電極の近傍領域及び前記発電面領域のうちの少なくとも一方の領域の各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて前記磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出し、
前記第2磁界信号取出手段は、前記発電面領域の各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて前記磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出す太陽電池セル検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載した太陽電池セル検査装置において、さらに、
前記一対の取出電極に第3印加電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、前記一対の取出電極と交差して前記第1方向に沿った各部に流れる電流によりそれぞれ発生されて前記磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号をそれぞれ取出す第3磁界信号取出手段と、
前記第3磁界信号取出手段によって取出された信号に基づいて、前記一対の取出電極と交差して前記第1方向に沿った各部にて前記第2方向に流れる電流の大きさをそれぞれ計算する電流計算手段と、
前記電流計算手段によって計算された電流の大きさの分布におけるピーク値の位置を前記一対の取出電極の位置として決定する取出電極位置決定手段と、
前記取出電極位置決定手段によって決定された一対の取出電極位置を用いて、前記一対の取出電極の近傍領域及び前記発電面領域を決定する領域決定手段と
を備えたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載した太陽電池セル検査装置において、
前記第1印加電圧は第1オフセット電圧に第1交流信号を重畳した電圧であるとともに、前記第2印加電圧は前記第1オフセット電圧よりも低い第2オフセット電圧に前記第1交流信号の振幅よりも小さな振幅の第2交流信号を重畳した電圧であり、かつ前記第1及び第2印加電圧の最小値はそれぞれ太陽電池セルの順方向電圧降下より高く、
前記第1磁界信号取出手段は、前記第1交流信号の周期で変化する磁界信号をそれぞれ取出し、かつ
前記第2磁界信号取出手段は、前記第2交流信号の周期で変化する磁界信号をそれぞれ取出すことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載した太陽電池セル検査装置において、さらに、
太陽電池セルの各部に流れる電流によってそれぞれ発生されて前記第1磁界信号取出手段によってそれぞれ取出された磁界信号に基づいて、太陽電池セルの各部における前記第2方向の磁界の強さ又は前記第1方向の電流の大きさを第1対象物理量として計算する第1対象物理量計算手段と、
太陽電池セルの各部に流れる電流によってそれぞれ発生されて前記第2磁界信号取出手段によってそれぞれ取出された磁界信号に基づいて、太陽電池セルの各部における前記第2方向の磁界の強さ又は前記第1方向の電流の大きさを第2対象物理量として計算する第2対象物理量計算手段と
を備えたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載した太陽電池セル検査装置において、さらに
前記第1対象物理量計算手段によって計算された太陽電池セルの各部における第1対象物理量を用いて、前記各部について互いに前記第1方向に所定距離だけ離れた位置の第1対象物理量間の差をそれぞれ計算する第1差計算手段と、
前記第2対象物理量計算手段によって計算された太陽電池セルの各部における第2対象物理量を用いて、前記各部について互いに前記第1方向に所定距離だけ離れた位置の第2対象物理量間の差をそれぞれ計算する第2差計算手段と
を備えたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載した太陽電池セル検査装置において、さらに
前記第1対象物理量計算手段によって計算された太陽電池セルの各部における第1対象物理量と、前記第2対象物理量計算手段によって計算された太陽電池セルの各部における第2対象物理量とを表示する表示手段を備えたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−256788(P2012−256788A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130054(P2011−130054)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】