説明

太陽電池パネルの支持架台構造

【課題】簡単な構造で容易かつ短時間に現場設置を完了でき、低コストでありながら高い強度を保持し得る太陽電池パネルの支持架台構造を提供する。
【解決手段】太陽電池パネルの支持架台構造1は、所要の地上高さにおいて所要の勾配で傾斜して配置される太陽電池パネル2と、地上に設置されて太陽電池パネルを下部側から受ける複数のコンクリート製の支持架台501A,501Bであり、それぞれの上端高さが異なる高さで形成され底版部6と高さ支持部10,11とを含み、太陽電池パネルを所定勾配で受けるようにそれぞれ離隔して対向配置された複数の支持架台と、すべての支持架台の底版部に共通して挿入配置される少なくとも1つの挿入鉄筋22であり任意長さの直状の鉄筋と、現場打ちコンクリート部24と、を介して各底版部をコンクリート一体連結させる現場打ち底版一体化機構3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルの支持架台構造に係り、特に、小型から大型までの太陽電池パネルについて独立支持形の太陽電池パネルの支持架台構造に関する。
【背景技術】
【0002】
排出物による環境汚染がなく、石油資源などの燃料消費がない、さらに、無尽蔵の太陽光を直接電気に変える太陽電池はエネルギー変換効率さえ向上させることができれば、理想的な電力源であり、エネルギー変換効率向上のための研究、開発が現に絶えることなくなされている現状では、魅力的な電力エネルギー生成源としての選択肢の一つである。特に、先の東北大地震に伴う原子力エネルギー依存への警鐘を鳴らす事故を生じるに至っては、太陽光発電に寄せる期待はますます高いものとなっている。
【0003】
太陽光発電は、シリコンなどの半導体中に光が入射する際に光が半導体原子に衝突して生じる光量子効果などにより直接電気を発生させるものであり、半導体セルを集合させて太陽電池モジュールを構成し、複数の太陽電池モジュールを薄い平板状にパネル化した太陽電池パネルのパネル面を照射効率が良い傾斜角度に配置させて直接に太陽光を取り込むことで発電エネルギーを得るようにしたものである。従来、太陽光発電により大きな電力エネルギーを得るために、単位太陽電池パネルを大面積状に集合させて架設する方法が例えば特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−91166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の太陽光発電アレイ架台は、傾斜して設置される太陽電池パネルを支持する傾斜上側の支柱に太陽電池パネルの下面との間に通風スリットを形成する気流制御板を設け、通風スリットを通過する風によって気流制御板に生じたダウンフォースを該支柱に伝達させるようにしたものであり、これによって、スリットを通過する風の下方分力により太陽電池パネルに生じる揚力を軽減しようと企図するものである。しかしながら、この特許文献1の太陽光発電アレイ架台は、方形状の太陽電池パネルの四隅対応位置に4個の基礎ブロックを設置し、それらの上部に傾斜上下部の基礎ブロックどうしをそれぞれ連結する2個の横架土台、支柱2A、2B、梁材6などを必要とし、4個の基礎ブロックの位置決め、地面側の不陸に対応した基礎ブロックの上部高さ設定、形鋼などの固定、気流制御板11の角度出しのための斜材3,4への固定などの細かな設定作業が多く、全体の施工作業時間がかかる上に、コンクリート基礎ブロックの他に複数種類の金属形鋼などを必要としてかえって材料コストが高いものとなり同時にそれに伴ない大幅に施工コストも高いものとなる欠点がある。また、基礎ブロックどうしは接合されていないので地震などの地盤側の動揺の際に直接に太陽光パネルにその際の外力が加わり、太陽光発電システムを確実に破壊するおそれがある。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、簡単な構造で容易かつ短時間に現場設置を完了でき、低コストでありながら高い強度を保持して太陽電池パネルの早期かつ直接破損を防止することのできる太陽電池パネルの支持架台構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、所要の地上高さにおいて所要の勾配で傾斜して配置される太陽電池パネル2と、地上に設置されて太陽電池パネルを下部側から受ける複数のコンクリート製の支持架台であり、それぞれの上端高さが異なる高さで形成され底版部6と高さ支持部10,11とを含み、太陽電池パネル2を所定勾配で受けるようにそれぞれ離隔して対向配置された複数の支持架台501A、501Bと、すべての支持架台の底版部6に共通して挿入配置される少なくとも1つの挿入鉄筋22であり任意長さの直状の鉄筋22と、現場打ちコンクリート部24と、を介して各底版部6をコンクリート一体連結させる現場打ち底版一体化機構3と、を備えた太陽電池パネルの支持架台構造1から構成される。
【0008】
その際、それぞれの支持架台のいくつか又はすべての底版部6は、上下方向に打抜いた中抜き孔7aを有する中抜き部7と、内側に中抜き部7を形成した底版枠8と、底版枠に横方向貫通する鉄筋挿入孔12と、を有するとよい。
【0009】
また、鉄筋挿入孔12は少なくとも挿入される1つの鉄筋の2倍以上の直径サイズの孔であるとよい。
【0010】
さらに、鉄筋挿入孔12は、両端開口部分からしだいに中央に向けて小径となる砂時計状の孔であるとしてもよい。
【0011】
また、複数の支持架台のいくつか又はすべてはその底版部6の外形サイズが同じで、高さ支持部の高さが異なるようにするとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の太陽電池パネルの支持架台構造によれば、所要の地上高さにおいて所要の勾配で傾斜して配置される太陽電池パネルと、地上に設置されて太陽電池パネルを下部側から受ける複数のコンクリート製の支持架台であり、それぞれの上端高さが異なる高さで形成され底版部と高さ支持部とを含み、太陽電池パネルを所定勾配で受けるようにそれぞれ離隔して対向配置された複数の支持架台と、すべての支持架台の底版部に共通して挿入配置される少なくとも1つの挿入鉄筋であり任意長さの直状の鉄筋と、現場打ちコンクリート部と、を介して各底版部をコンクリート一体連結させる現場打ち底版一体化機構と、を備えた構成であるから、予め工場で製作したコンクリート二次製品としての支持架台を設置現場に搬送し、設計された位置に対向配置し、挿入鉄筋をすべての支持架台に挿入した状態でコンクリートを打設するだけでよく、(イ)簡単な構造で(ロ)容易かつ(ハ)短時間に現場設置を完了できる上に、主要構成をコンクリート二次製品によらしめ、(ニ)低コストで(ホ)比較的小型のコンクリート二次製品を簡易に現場搬送でき、(ト)しかも、全体を剛接合として高強度の太陽電池パネルの支持架台を構成することが可能である。特に、支持架台により高位及び低位の支持高さ位置決めを簡単かつ短時間に行なえる。さらに、底版部を現場で一体化して支持架台ユニット全体を剛接合とすることにより、地震などの地盤側の動揺の際に直接に太陽電池パネルにその際の外力が加わりにくくなり、太陽電池パネルの強度を強化し、太陽光発電システムの耐久性を向上させ、さらに、施工効率向上、低コスト化、施工時間短縮を達成し得る、という効果を奏することができる。
【0013】
また、それぞれの支持架台のいくつか又はすべての底版部は、上下方向に打抜いた中抜き孔を有する中抜き部と、内側に中抜き部を形成した底版枠と、底版枠に横方向貫通する鉄筋挿入孔と、を有する構成であるから、底版部を鉄筋コンクリート結合として全体を剛接合構造とし、全体構造の高強度を保持するとともに、挿入鉄筋長さの変更や挿入長さを調整することにより、設置現場での支持架台の対向間隔幅の微妙な調整を行なうことができる。
【0014】
また、鉄筋挿入孔は少なくとも挿入される1つの鉄筋の2倍以上の直径サイズの孔であることにより、現場で打設されるコンクリートが底版部の中抜き部側および支持架台間の離隔間隙側から鉄筋挿入孔へ容易に進入して良好な密度で充填され、底版部の連結強度を保持し得る。
【0015】
また、鉄筋挿入孔は、両端開口部分からしだいに中央に向けて小径となる砂時計状の孔であることにより、外部から応力が加わる場合も引き抜き方向に対する充分な抵抗保持力を有する。
【0016】
また、複数の支持架台のいくつか又はすべてはその底版部の外形サイズが同じで、高さ支持部の高さが異なる構成とすることにより、底版部を共通とし、高さのみを異ならしめた支持架台を製造することでよく、同じ成形型枠 の設計及び製作コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る太陽電池パネルの支持架台構造を複数併設させて大型の太陽電池パネル発電システムに適用したものの一部省略斜視説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る太陽電池パネルの支持架台構造の太陽電池パネルを分離して示した一部省略斜視説明図である。
【図3】図2の太陽電池パネルの支持架台構造の縦断面図である。
【図4】図2の太陽電池パネルの支持架台構造の1つの支持架台に鉄筋を挿入した状態の斜視説明図である。
【図5】図2の1つの支持架台の鉄筋挿入孔及びその近傍の一部省略拡大断面図である。
【図6】図2の太陽電池パネルの支持架台構造の支持架台の他の例を示す斜視図である。
【図7】図2の1つの支持架台の鉄筋挿入孔の他の例についての一部省略拡大断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る太陽電池パネルの支持架台構造の一部省略斜視説明図である。
【図9】図8の太陽電池パネルの支持架台構造の縦断面図である。
【図10】図8の太陽電池パネルの支持架台構造の中間の支持架台の斜視説明図である。
【図11】図8の太陽電池パネルの支持架台構造の中間の他の例による支持架台の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の太陽電池パネルの支持架台構造の実施の形態について説明する。本実施形態の太陽電池パネルの支持架台構造は、複数の半導体セルを集合させて太陽電池モジュールを構成し、複数の太陽電池モジュールを薄い平板状にパネル化した太陽電池パネルの支持架台構造であり、特に小型の太陽電池パネルの独立架設支持から複数の太陽電池パネルを相互接続してアレイ状に並列させて大型パネル化したもの全体を傾斜支持させる構造まで、幅広く適用されるものである。
【0019】
図1ないし図4は、本発明の第1実施形態の太陽電池パネルの支持架台構造を示しており、図において、太陽電池パネルの支持架台構造1は、例えば縦横に並列させた支持架台ユニット群5Gを形成し、全体として大きな受光面積を形成した太陽電池パネル発電システムに適用される。
【0020】
図2に示す第1実施形態の太陽電池パネルの支持架台構造1は、太陽電池パネル2と、複数の支持架台501A、501Bと、複数の支持架台を底版部において一体化させる現場打ち底版一体化機構3と、を含む。図2において、1つの支持架台構造1は複数の支持架台501A、501Bを含む。実施形態において、支持架台501A、501Bが支持架台ユニット5Uを構成している。1つの支持架台構造1は1つの支持架台ユニット5Uからなり、支持架台ユニット5Uは、2個以上の支持架台を含む。本実施形態では、支持架台ユニット5Uは、2個の支持架台501A、501Bからなり、これらの支持架台501A、501Bは間隙Sを配して離隔した状態で対向配置される。
【0021】
支持架台501A、501Bは、地上に設置されて太陽電池パネル2を下部側から受けるコンクリート二次製品からなる台手段であり、それぞれの上端高さを異なる高さとして高低差を設け、それらの上部に渡し掛けて所要の地上高さにおいて所要の勾配で太陽電池パネル2を傾斜状態で支持する。図2において、支持架台501Aの高さh1は、支持架台501Bの高さh2より高く設定されており、本実施形態において、支持架台501Aが上位架台、支持架台501Bが下位架台とされる。支持架台501A、501Bは底版部の外形及び輪郭形状が同じ形状で上端高さのみを異ならせて形成されている。
【0022】
図4において、支持架台のうちの1つの上位側架台、例えば支持架台501Aについて説明すると、支持架台501Aは、概略視でいうと、平面長矩形枠体上に支柱を複数個立設させて一体化させた形状のコンクリート構造体である。詳細には、外形輪郭で厚板長矩形状の底版部6と底版部6から逆T字状に一体接続された高さ支持部10を含み、底版部6には離隔した2箇所に大きく上下方向に矩形に打抜いた中抜き孔7aを有する中抜き部7が形成されている。高さ支持部10は、底版部6の長手両端部と中央部との3箇所で3個の支柱101を逆T字形状に立ち上げて構成されている。底版部6は、中間の支柱101bで離隔して併設された2つの中抜き孔7aを内側に有した長矩形枠体形状で構成されており、図4に示すように、その長矩形枠体形状の長手枠8に各中抜き孔7aに対応して3個づつ、6個の鉄筋挿入孔12が横方向に貫通して形成されている。
【0023】
各支柱101は、下部が底版部6と接合された台形状部14を含み、さらに台形状部14から上方に立ち上がって支柱として形成されている。さらに、3個の支柱101の上端を相互に連結するように直線状の上部連結梁16が横架されており、これによって、支持架台501Aが1つの剛接合構造体を構成している。なお、この支持架台501Aはコンクリートにより型枠成形可能であり、量産可能である。特に、支持架台ユニット全体の支持架台の底版部を共通のサイズ、形状のものとすることにより、成形型枠製造を簡単に行なえ、飛躍的に型枠製造コスト、ひいては支持架台の製造コスト低減を達成し得る。さらに、この上部連結梁16の上面側には太陽電池パネル2の位置決め金具18が取り付けられている。本実施形態において、位置決め金具18は、図3に示すように断面四角形のリング形で上面が太陽電池パネル2の設置傾斜角度を有する傾斜面181を有するとともに、長手方向に連続するスリット溝20を有するステンレス製等の金属レール部材から構成されている。位置決め金具18は、上部連結梁16に固定するための図示しない切欠が適宜の長手方向に間隔を置いた位置に形成されており、この切欠を介して上部連結梁16に設けたインサートナットに適宜の締結具等により締結固定される。また、スリット溝20に太陽電池パネル2の下面側に設けた適宜の連結、固定部材等を係合させし締め付けることにより、パネルの横方向の位置調整と固定が行なわれるようになっている。
【0024】
図2、3、4において、底版部は中間の支柱101bに分割されて隣接する2つの中抜き部7を有するように長矩形枠体で構成され、鉄筋挿入孔12が形成された長手枠部8と、短手枠部9とを四角形状に連結させた枠体から構成されている。
【0025】
本実施形態において、下位架台501Bは、上位架台501Aと同じ外形と輪郭形状を有した同一の底版部構成を有している。図2において、下位架台501Bは、上位架台501Aと同様の底版部6と高さ支持部11とを含み、底版部6と高さ支持部11としての3個の支柱111を有し、さらに底版部6には2個の隣接する中抜き部7が設けられ、上位架台501Aと同じ長矩形枠体形状で、外形及び輪郭形状において上位架台5と同一の構成である。下位架台501Bは、高さ支持部11の支柱111の上端高さが上位架台501Aよりも低く設定してある。また高さ支持部11の各支柱111の上端を共通に連結する上部連結梁16及び位置決め金具18は上位架台501Aと同一構成で設置されている。これによって、上下位の高さ支持部10、11上に架設されて太陽電池パネルが所定の傾斜勾配で安定的に固定される。支持架台ユニット5Uの構成は2個一対とは限らない。例えば、3個、4個、5個以上の場合もあり得る。その場合は、設置する太陽光パネルを支持する際の傾斜勾配に合わせた上端高さが設定される。
【0026】
図2、3において、支持架台501A、501Bの間隙Sには、両支持架台の底版部6に両端を挿入されて6個の挿入鉄筋22が配設されている。すなわち、両支持架台が対向する底版部6の長手枠部8の鉄筋挿入孔12を貫通して1本の挿入鉄筋22の両端がそれぞれ支持架台501Aと501Bの底版部の中抜き孔7a内に突設して設けられている。挿入鉄筋22の端部は支持架台501A、501Bの中抜き孔7aの対向する突き当たり壁に突き当たる状態の突設部としても良く、突き当たりはしない中間位置で中抜き孔7a内に止まる程度の突設長さでもよい。この長さは、コンクリートを現場で打設する際に適宜調整して長さ設定することもできる。すなわち、支持架台間の離隔間隙幅の設定時の調整時に幅長さの変動に対応して突設長さを決めることもできる。このとき、鉄筋挿入孔12は挿入される1つの鉄筋の2倍以上の直径サイズに設定されており、したがって、図5のように、鉄筋22を挿入した状態で鉄筋挿入孔12の内壁面と鉄筋外周面との間隙には充分な空隙Pが形成されている。この空隙Pはコンクリート材を現場で打設したときにコンクリートを良好に流動させ高密度で充填させる。挿入鉄筋22は、支持架台ユニット5Uを形成する複数の支持架台のすべてについてその底版部6に挿入されており、挿入鉄筋及びコンクリート材を介してすべての支持架台の底版部を一体化する。すなわち支持架台が3個、あるいは4個ないしそれ以上の場合も、それらの支持架台のすべてを挿入した状態で挿入鉄筋は配置される。挿入鉄筋長さは、支持架台501A,501Bの間隙Sに対応して設定される。これらは、太陽電池パネルの受光面積、傾斜角度等の設計段階において決定される。
【0027】
本実施形態の太陽電池パネルの支持架台構造1は、具体的な施工現場においてはじめて完成する。すなわち、太陽電池パネルの設置現場において、間隙Sで離隔した上位支持架台501Aと下位支持架台501Bを対向配置させる。この際、それぞれ対向する側の底版部の鉄筋挿入孔12を貫通し両端がそれぞれの中抜き孔7aに突設するようにすべての挿入鉄筋22をを配置する。次に、それぞれの支持架台のすべての中抜き部7と、間隙S内にコンクリートを打設し固化させる。そして、上位支持架台501Aと下位支持架台501Bの位置決め金具18と締結具により太陽電池パネルを支持架台上に支持固定させる。
支持架台のすべての中抜き部7と、上位支持架台501Aと下位支持架台501Bとの間隙Sに打設されるコンクリート材の固化部が現場打ちコンクリート部24とされる。
【0028】
本実施形態では、高位及び下位で太陽電池パネルを支持する支柱101、111に横架された上部連結梁16により、図2のように太陽電池パネルの高位の短辺側並びに低位の短辺側がそれぞれ点ではなく剛性の梁からなる線状に支持されるので、太陽電池パネルの高さ方向の支持位置決めを簡単に行なえる。すなわち、設置現場において支持架台の設置位置決めや不陸調整、高さ調整を含む太陽電池パネルの傾斜勾配設定作業を短時間で円滑に行なえる。
【0029】
太陽電池パネル2は、実施形態において、例えば、6枚の単位太陽電池パネルを並べて縦長矩形状とし、例えば縦方向の長さが約2m程度、横方向の長さが約1.5m程度の外形の外枠で保護されたものが用いられる。それぞれの太陽電池パネルには、正極(+)と負極(−)の端子部が設けられ、太陽電池パネルどうしを電気的に直列で接続しつつ、並列接続で電力を取り出し、交流変換してパワーコンディショナや電力制御装置で外部に供給される。なお、太陽電池パネルのサイズは例示であり、任意サイズの大きさのパネルを設置することができる。
【0030】
現場打ち底版一体化機構3は、すべての支持架台の底版部に共通して挿入配置される少なくとも1つの挿入鉄筋22と、支持架台のすべての中抜き部7と、上位支持架台501Aと下位支持架台501Bの間隙Sに打設される現場打ちコンクリート部24と、を含む。支持架台の中抜き部7と上位支持架台501Aと下位支持架台501Bの間隙Sにコンクリートを打設すると、鉄筋22と挿入孔12との空隙Pが鉄筋径による孔の占有体積に対して充分大きな容積を有しているので、底版部側からと間隙S側から投入されたコンクリート材は容易に空隙P内に進入し、さらに締め固め作業により良好な密度で充填され、鉄筋を介してすべての底版部と現場打ちコンクリート部が一体固化し、これによって複数の支持架台による支持架台ユニット5U全体が一体化した剛接合構造を構成し、これによって、高強度の支持架台構造を得ることができる。したがって、地震などの地盤側の動揺の際に直接に太陽電池パネルにその際の外力が加わりにくくなり、太陽電池パネルの強度を強化し、太陽光発電システムの耐久性を向上させ、さらに、施工効率向上、低コスト化、施工時間短縮を達成することができる。
【0031】
上記した第1実施形態の太陽電池パネルの支持架台構造の各支持架台構成は、例えば図6に示すように、短手枠部9を図4の例よりも支持架台の対向する方向に向けて長く形成し、底版部6における支柱101,111の立ち上がり位置から支持架台の対向側を長くしてより安定した構造の支持架台501Aaとしてもよい。
【0032】
また、鉄筋挿入孔12の形状は、図7に示すように両端開口径が最大で中央に向けてそれぞれしだいに狭くなる砂時計形状としてもよく、これによって、固化後のコンクリートに加わる外部応力に対応し得るようにすることも出来る。
【0033】
次に、図8ないし図11により本発明の第2実施形態について説明するが、第1実施形態の構成と同一部材には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。第2実施形態の太陽電池パネルの支持架台構造30の基本的な構成は第1実施形態と同一であるが本実施形態では、それぞれ上端高さが順次低位に設定された支持架台が501A、501B、501Cの3個からなり、3個で1つの支持架台ユニット5Uを形成している点、中央の支持架台501Cの底版部6に挿入される挿入鉄筋がその端部が底版部内に止められた状態で挿入されるのではなく、貫通状態で配置される点、が異なる。
【0034】
図10において、第2実施形態の太陽電池パネルの支持架台構造は、中央の支持架台501Cの底版部6の対向両側の長手枠部8に位置あわせした横方向貫通孔を各6個づつ穿孔している。また、図11では、底版部自体を長矩形枠ではなく、3つの支柱土台部分を中央梁材26で串刺し状に接合しその中央梁材26に配設すべき鉄筋の所望数に対応する挿入孔12を穿孔したものである。この第2実施形態においても簡単な施工方法により短時間で施工を完了させることができる。
【0035】
以上説明した本発明の太陽電池パネルの支持架台構造は直接に地面上に設置することができるだけでなく、建築物の屋上や直接に太陽光を取り込める場所で適用することも出来る。対向配置される複数の支持架台は、4個以上とすることもできる。挿入鉄筋に挿入される鉄筋の数は、実施形態のように単に1個のみでなく2個以上の複数個とすることもできるが、挿入した鉄筋径により占有される体積の2倍以上の空隙を形成し得る鉄筋挿入孔とする必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0036】
発明の太陽電池パネルの支持架台構造は、大規模な太陽電池パネルによる太陽光発電設備だけでなく、小規模の住居、事業所、船舶上などにおいても適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 太陽電池パネルの支持架台構造
2 太陽電池パネル
3 現場打ち底版一体化機構
10,11 高さ支持部
101,111 支柱
5U 支持架台ユニット
501A、501B 支持架台
6 底版部
7 中抜き部
7a 中抜き孔
10 高さ支持部
101 支柱
11 高さ支持部
111 支柱
12 鉄筋挿入孔
16 上部連結梁
22 挿入鉄筋
24 現場打ちコンクリート部
P 鉄筋と挿入孔との空隙
S 支持架台間の間隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要の地上高さにおいて所要の勾配で傾斜して配置される太陽電池パネルと、
地上に設置されて太陽電池パネルを下部側から受ける複数のコンクリート製の支持架台であり、それぞれの上端高さが異なる高さで形成され底版部と高さ支持部とを含み、太陽電池パネルを所定勾配で受けるようにそれぞれ離隔して対向配置された複数の支持架台と、
すべての支持架台の底版部に共通して挿入配置される少なくとも1つの挿入鉄筋であり任意長さの直状の鉄筋と、現場打ちコンクリート部と、を介して各底版部をコンクリート一体連結させる現場打ち底版一体化機構と、を備えたことを特徴とする太陽電池パネルの支持架台構造。
【請求項2】
それぞれの支持架台のいくつか又はすべての底版部は、
上下方向に打抜いた中抜き孔を有する中抜き部と、
内側に中抜き部を形成した底版枠と、
底版枠に横方向貫通する鉄筋挿入孔と、を有することを特徴とする請求項1記載の太陽電池パネルの支持架台構造。
【請求項3】
鉄筋挿入孔は少なくとも挿入される1つの鉄筋の2倍以上の直径サイズの孔であることを特徴とする請求項2記載の太陽電池パネルの支持架台構造。
【請求項4】
鉄筋挿入孔は、両端開口部分からしだいに中央に向けて小径となる砂時計状の孔であることを特徴とする請求項2又は3記載の太陽電池パネルの支持架台構造。
【請求項5】
複数の支持架台のいくつか又はすべてはその底版部の外形サイズが同じで、高さ支持部の高さが異なることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の太陽電池パネルの支持架台構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−256661(P2012−256661A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127905(P2011−127905)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(596002424)不二高圧コンクリート株式会社 (8)
【Fターム(参考)】