太陽電池モジュール及びその製造方法
【課題】取り出し電極の厚みによる基板の割れを防止し、信頼性の高い太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールの製造方法は、基板11の一面に、光電変換体12、集電電極20及び取り出し電極21を重ねて設けた後に、光電変換体12上に、少なくとも一部又は全面に亘って、複数の切り欠き部31を有するシート状のシール部材30を設ける工程Aと、シール部材30上に、被覆基板40を設ける工程Bと、を少なくとも順に有する。
【解決手段】太陽電池モジュールの製造方法は、基板11の一面に、光電変換体12、集電電極20及び取り出し電極21を重ねて設けた後に、光電変換体12上に、少なくとも一部又は全面に亘って、複数の切り欠き部31を有するシート状のシール部材30を設ける工程Aと、シール部材30上に、被覆基板40を設ける工程Bと、を少なくとも順に有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り出し電極の厚みに起因した基板の割れを防止できる太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの効率的な利用の観点から、近年、太陽電池はますます広く一般に利用されつつある。例えば、アモルファス(非結晶)シリコン薄膜を利用した太陽電池が、低コストの太陽電池として普及している。
【0003】
アモルファスシリコン太陽電池は、光を受けると電子とホール(正孔)を発生するi型のアモルファスシリコン膜を、p型およびn型のシリコン膜で挟んだpin接合と呼ばれる層構造の半導体膜が用いられ、この半導体膜の両面にそれぞれ電極を形成したものである。
太陽光によって発生した電子とホールは、p型・n型半導体の電位差によって所定の方向に移動し、これが連続的に繰り返されることで発電する。
【0004】
こうしたアモルファスシリコン太陽電池の具体的な構成としては、例えば、受光面側となるガラス基板にTCO(透明導電性酸化物)などの透明電極を正の電極(表面電極とも呼ぶ)として成膜し、この上にアモルファスシリコンからなる半導体膜と、負の電極(裏面電極とも呼ぶ)となるAg薄膜などを形成してなる。このような上下電極と半導体膜からなる光電変換体を備えたアモルファスシリコン太陽電池は、基板上に広い面積で均一に各層を成膜しただけでは抵抗値の間題もあるため、例えば、図14に示すように、光電変換体112を所定のサイズごとに電気的に区画した区画素子112aを形成し、互いに隣接する区画素子112a同士を電気的に接続してなる。具体的には、基板111上に広い面積で均一に形成した光電変換体112に、レーザー光などでスクライブ線(スクライブライン)119と称される溝を形成して多数の短冊状の区画素子112aとし、この区画素子同士を電気的に直列に接統した構造とする。
【0005】
ところで、図14に示すように、太陽電池には、通常、その種類によらず、電子とホールを効率よく集めるための集電電極120、及び電気を外部に取り出すための取り出し電極121が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、太陽電池は、光電変換体112を少なくとも被覆するように配されたシール部材130と、前記シール部材130上に配された被覆基板140とを有している。取り出し電極121は、シール部材130、被覆基板140を通じて外部に導出されている。
このような取り出し電極121は、例えばリボン状の銅箔、またはリボン状の銅箔とその周囲に設けられたメッキ層からなる。
【0006】
しかしながら、図15に示すように、このような取り出し電極121の厚みは基板面内において凹凸を生じさせてしまう。従来の太陽電池モジュールでは、シール部材130が取り出し電極121の厚みを吸収することが難しく、取り出し電極121の厚みに起因するストレスが太陽電池モジュール内部に発生し、このストレスによって基板が割れる場合があり、品質や信頼性を低下させる問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−66292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、取り出し電極の厚みによる基板の割れを防止し、信頼性の高い太陽電池モジュールを簡便に製造することが可能な太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法は、基板の一面に、少なくとも第一電極層、半導体層及び第二電極層が、この順に重ねられた光電変換体が形成されてなる太陽電池と、前記太陽電池を構成する前記第二電極層上に配された集電電極と、前記集電電極に一端が電気的に接続され且つ前記太陽電池を構成する前記第二電極層上に配された取り出し電極と、前記基板の一面に、前記光電変換体を少なくとも被覆するように配されたシール部材と、前記シール部材上に配された被覆基板と、を備えた太陽電池モジュールの製造方法であって、基板の一面に、前記光電変換体、前記集電電極及び前記取り出し電極を重ねて設けた後に、前記光電変換体上に、少なくとも一部又は全面に亘って、複数の切り欠き部を有するシート状の前記シール部材を設ける工程Aと、前記シール部材上に、前記被覆基板を設ける工程Bと、を少なくとも順に有すること、を特徴とする。
本発明の請求項2に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法は、請求項1において、前記工程Aにおいて、前記シール部材として、前記取り出し電極及びその近傍の少なくとも一部に対応する部位に、前記切り欠き部が複数設けられたものを用いること、を特徴とする。
本発明の請求項3に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法は、請求項1又は2において、前記工程Bの後に、前記シール部材を溶融させ、該シール部材によって前記光電変換体を封止するとともに、前記切り欠き部を埋める工程Cを、さらに備えることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法は、請求項1乃至3のいずれか一項において、前記シール部材の厚みが50μm〜1600μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法では、基板の一面に、前記光電変換体、前記集電電極及び前記取り出し電極を重ねて設けた後に、前記光電変換体上に、少なくとも一部又は全面に亘って、複数の切り欠き部を有するシート状の前記シール部材を設ける工程Aと、前記シール部材上に、前記被覆基板を設ける工程Bと、を少なくとも順に有している。これにより本発明では、取り出し電極の厚みによる基板へのストレスが太陽電池モジュール内部に発生しにくくなるので、発生するストレスが緩和される。ゆえに、本発明によれば、基板の割れを防止し、品質の良い太陽電池モジュールを簡便に製造することが可能な太陽電池モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る太陽電池モジュールの第一の構成例を模式的に示す分解斜視図。
【図2】図1中X1−X2線における断面図。
【図3】図1及び図2に示した太陽電池モジュールの製造方法を説明する斜視図。
【図4】図3中X3−X4線における断面図。
【図5】図3の次工程を説明する斜視図。
【図6】図5中X5−X6線における断面図。
【図7】図5の次工程を説明する斜視図。
【図8】図7中X7−X8線における断面図。
【図9】図7の次工程を説明する斜視図。
【図10】図9中X9−X10における断面図。
【図11】図9の次工程を説明する斜視図。
【図12】図11中X11−X12線における断面図。
【図13】シール部材の他の構成例を示す斜視図。
【図14】従来の太陽電池モジュールの一構成例を模式的に示す分解斜視図。
【図15】図17に示す太陽電池モジュールの要部拡大断面図であり、図14中Y1−Y2線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の太陽電池モジュール及びその製造方法について、図面を引用しながら詳しく説明する。なお、以下の説明で使用する図面は、本発明の特徴を判り易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0013】
<第一実施形態>
図1及び図2は、本発明により製造される太陽電池モジュール1の一構成例を模式的に示す図であり、図1は分解斜視図、図2は、図1中X1−X2線における断面図である。
この太陽電池モジュール1は、基板11の一面11aに、少なくとも第一電極層13、半導体層14及び第二電極層15が、この順に重ねられた光電変換体12が形成されてなる太陽電池10と、前記太陽電池10を構成する前記第二電極層15上に配された集電電極20と、前記集電電極20に一端が電気的に接続され且つ前記太陽電池10を構成する前記第二電極層15上に配された取り出し電極21と、前記基板11の一面11aに、前記光電変換体12を少なくとも被覆するように配されたシール部材30と、前記シール部材30上に配された被覆基板40と、を備える。
【0014】
太陽電池10は、公知のもので良く、例えば、アモルファス型、マイクロクリスタル型等が例示でき、さらに、CIGS系やCdTe系を含む薄膜型、タンデム型等が例示できるが、これらに限定されない。
【0015】
ここに示す太陽電池10は、図2に示すように、基板11の一面11aに、少なくとも第一電極(下部電極)層13、半導体層14、第二電極層(上部電極)層15がこの順に積層されてなる光電変換体12を備える。
【0016】
基板11は、例えば、ガラスや透明樹脂による板、またそれら材料からなる可撓性のあるフィルム基板等、太陽光の透適性に優れ、かつ耐久性を有する絶縁材料で形成されていれば良い。このような基板11の他面11b側から太陽光を入射させることで、太陽電池10を発電させることかできる。板状基板に本願技術を適用するのであれば、基板の割れやひびを防ぐことができ、可撓性のあるフィルム基板に適用する場合は、基板表面に生じる気泡や可撓性材料の伸縮により生じる凹凸を緩和することができる。
なお、基板11の一面11aから光を入射させる場合は、被覆基板40を太陽光の透過性に優れたガラスや透明樹脂による板、それら材料からなる可撓性のあるフィルム基板で構成し、シール部材30も透適性に優れた材料で構成すれば、基板11は金属材料からなってもよい。
【0017】
第一電極層13は、透明な導電材料、例えば、TCO、ITOなどの光透過性の金属酸化物で形成されていれば良い。
また、第二電極層15は、銀(Ag)、銅(Cu)等の導電性の金属腹で形成されていれば良い。
【0018】
例えば、太陽電池10が薄膜シリコン太陽電池である場合、半導体層14は、図2の上部に示すように、p型シリコン膜17とn型シリコン膜18との間にi型シリコン膜16を挟んだpin接合構造を成す。そして、この半導体層14に太陽光が入射すると、電子とホールか生じて、p型シリコン膜17とn型シリコン膜18との電位差によって活発に移動し、これが連続的に繰り返されることで第一電極層13と第二電極層15との間に電位差か生じる(光電変換)。なお、シリコン膜は、アモルファス型、マイクロクリスタル(微結晶)型等、いずれでも良い。
【0019】
光電変換体12は、図1に示すように、通常、スクライブ腺19によって、例えば、外形が短冊状の多数の区画素子12aに分割される。この区画素子12aは、互いに隣接する区画素子同士の間で、例えば、電気的に直列に接続される。これにより、光電変換体12は、多数の区画素子を全て電気的に直列に繋いだ形態となり、高い電位差の電流を取り出すことができる。スクライブ線19は、例えば、基板11の一面11aに光電変換体12や裏面電極を形成した後、レーザー等によって光電変換体12に所定の間隔で溝を形成することにより形成すれば良い。
【0020】
また、ここでは、半導体層14としてpin接合構造が一層であるものを例示しているが、これに限定されず、pin接合構造が二層又は三層等、複数層であるタンデム型でも良い。かかるタンデム型の半導体層14の場合、照射する光の波長により、光電変換を行う層を調節するようにできる。
【0021】
ここに示す太陽電池モジュール1においては、太陽電池10の光電変換体12上に二つのリボン状の集電電極20が設けられている。
光電変換体12は、図1に示すように、表面が略四角形状となっており、表面の対内する二つの周縁部に沿って、集電電極20が配置されている。そして、集電電極20上には、取り出し電極21の一方の端部が配置されており、取り出し電極21及び集電電極20が電気的に接続されている。取り出し電極21の他方の端部側は、電気を容易に取り出せるように、光電変換体12の表面から立ち上がるように曲げられている。
太陽電池モジュール1においては、取り出し電極21と光電変換体12との間に、保護シート22、絶縁シート24,25が配置されており、取り出し電極21と光電変換体12とが接触しないようになっている。
【0022】
前記集電電極20及び取り出し電極21は、リボン状の銅箔とその周囲に設けられたメッキ層からなる。
銅箔の厚みとしては特に限定されるものではないが、例えば30〜300[μm]とし、その幅は特に限定されるものではないが、例えば0.1〜10[mm]とする。
また、メッキ層は、例えばAg(銀)、Sn(錫)、Cu(銅)等の材料からなり、その厚みは特に限定されるものではないが、例えば1〜100[μm]とする。
【0023】
被覆基板40は、シール部材30を介して太陽電池10、集電電極20及び取り出し電極21を覆うように重ねて配されている。また、被覆基板40には開口部40aが設けられており、この開口部40aを介して取り出し電極21の他端21bが外部に引き出されている。
被覆基板40は、例えば、ガラスや透明樹脂等、耐久性を有する絶縁材料で形成されていれば良い。
【0024】
シール部材30を構成する材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂;ポリエチレン;、ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC);エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等を用いることができる。
【0025】
次に、このような太陽電池モジュール1の製造方法について説明する。
図3〜図12は、本発明の太陽電池モジュール1の製造方法を説明する図であり、図3,5,7,9,11,13は斜視図、図4,6,8,10,12は、それぞれ、図3,5,7,9,11中X−X線における断面図である。
本発明の太陽電池モジュール1の製造方法は、基板11の一面に、前記光電変換体12、前記集電電極20及び前記取り出し電極21を重ねて配した後に、前記光電変換体12上に、少なくとも一部又は全面に亘って、複数の切り欠き部31を有するシート状の前記シール部材30を設ける工程Aと、前記シール部材30上に、前記被覆基板40を設ける工程Bと、を少なくとも順に有すること、を特徴とする。
【0026】
太陽電池10は公知の方法に従って製造できる。例えば、基板11の一面11a上に第一電極層13、半導体層14及び第二電極層15をこの順に積層して光電変換体12を形成する。なお、各層の厚さは従来の太陽電池と同様である。
【0027】
光電変換体12は、図3に示すように、通常、スクライブ線19によって、例えば、外形が短冊状の多数の区画素子12aに分割される。この区画素子12aは、互いに電気的に区画されるとともに、互いに隣接する区画素子12a同士の間で、例えば、電気的に直列に接続される。これにより、光電変換体12は、多数の区画素子12aを全て電気的に直列に繋いだ形態となり、高い電位差の電気を取り出すことができる。スクライブ線19は、例えば、基板11の一面11aに均一に光電変換体12を形成した後、レーザー等によって光電変換体12に所定の間隔で溝を形成することにより形成すれば良い。また、必要に応じて、第二電極層15上に保護層を積層しても良い。
【0028】
次に、光電変換体12を構成する第二電極層15上に集電電極20を配する。
図3、図4に示すように、多数の区画素子12aのうち、両端に位置する区画素子12aの第二電極層15上に、例えば半田(図示せず)を介して一対の集電電極20を電気的に接続する。接続には一般的な半田ごてが用いられる。集電電極20はリボン状の銅箔とその周囲に設けられたメッキ層からなり、区画素子12aの延在方向に平行して配される。
【0029】
次に、光電変換体12を構成する第二電極層15上に取り出し電極21を配する。
取り出し電極21は、集電電極20と同様に、リボン状の銀箔とその周囲に設けられたメッキ層からなる。
まず、図5、図6に示すように、セル中央部の光電変換体12(第二電極層15)上に保護シート22、絶縁シート24を配する。
さらに、図7、図8に示すように、光電変換体12(第二電極層15)上に絶縁シート25を配し、絶縁シート25上に取り出し電極21を配する。
絶縁シート24,25の材質は、樹脂類であることが好ましく、合成樹脂であることがより好ましい。好ましい合成樹脂としては、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂が例示できる。絶縁シート24,25は公知のもので良く、市販品を使用しても良い。
また、取り出し電極21の一端21aを、集電電極20に電気的に接続する。この接続には半田を用いても良いし、超音波半田ごて等を用いて集電電極20及び取り出し電極21のメッキ層を溶融させることで接続しても良い。一方、取り出し電極21の他端21bは、光電変換体12から立ち上がるように折り曲げておく。
【0030】
次に、シール部材30を、太陽電池10を被覆するように重ねて形成する。
特に、本実施形態では、図9、図10に示すように、前記光電変換体12上に、複数の切り欠き部31を有するシート状の前記シール部材30を設ける(工程A)。本実施形態では、前記取り出し電極21及びその近傍の少なくとも一部に対応する部位に、複数の切り欠き部31を有するシール部材30を用いている。
シール部材30として、複数の切り欠き部31を有するものを用いているので、取り出し電極21の厚みを、シール部材30で吸収することができる。これにより取り出し電極21の厚みによる基板へのストレスが太陽電池モジュール内部に発生しにくくなるので、発生するストレスが緩和される。
シール部材30は、1枚のシートからなるものに代えて、複数枚のシートを重ねたものを用いても構わない。その際、重ね合わせたシートのうち、一部のシートにのみ複数の切り欠き部31を有する構成としてもよい。すなわち、シール部材30として、切り欠き部31を有するシートと切り欠き部31の無いシートとを重ねて用いてもよい。
このようなシール部材30は、柔らかいものが好ましく、この柔らかさは、物理的に、ヤング率や弾性率、粘性係数、流動性などにより、適宜表記されるものである。
なお、このとき、取り出し電極21の他端21bを、開口部30aを通じて、シール部材30の外側に延出させておく。
【0031】
切り欠き部31は、例えばシール部材30の厚み方向に一部のみが凹状にくり抜かれたものであってもよいし、シール部材30を貫通して孔が設けられたものであってもよい。本実施形態では、切り欠き部31として貫通孔を設けた場合を示している。
【0032】
また、切り欠き部31の形状、大きさとしては、特に限定されるものではないが、切り欠き部の形状が例えば円形状である場合、大きすぎると、例えば後述する工程Cにおいて、シール部材30を溶融させたときに、切り欠き部31を溶融したシール部材30によって埋めることが困難になり、一方、小さすぎると、取り出し電極21の厚みを吸収することができず、本発明の効果が得られない。そのため、切り欠き部の大きさとしては、例えば、φ1〜5mm程度の穴状、もしくは、5×50mm程度の短冊状とすることが好ましい。
【0033】
また、切り欠き部30のシール部材30において、前記取り出し電極21及びその近傍の少なくとも一部に対応する部位に対する面積割合としては、十分な接着性を確保できる面積である必要があるため、例えば、5〜70%程度とすることが好ましい。
このようなシール部材30の厚みとしては、水分の浸入防止を確保する厚みとして、例えば50〜1600μm程度とする。
【0034】
次に、図11、図12に示すように、シール部材30上に、前記被覆基板40を設ける(工程B)。
なお、このとき、取り出し電極21の他端21bを、シール部材30、及び被覆基板40に設けられた開口部40aを通じて、被覆基板40の外側に延出させる。
【0035】
また、前記工程Bの後に、前記シール部材30を溶融させ、該シール部材30によって前記光電変換体12を封止する工程を、さらに備えてもよい(工程C)。このとき、シール部材30の切り欠き部31は、溶融したシール部材30によって埋められる(図1,図2参照)。
シール部材30の溶融は、例えば真空ラミネートによる方法、オートクレーブによる加圧・加熱による方法などが挙げられる。
以上のようにして光電変換体12上に被覆基板40が固定され、太陽電池モジュール1の製造が完了する。
【0036】
このように、本発明では、前記シール部材30として、複数の切り欠き部31を有するものを用いているので、取り出し電極21の厚みを、シール部材30で吸収することができる。これにより取り出し電極21の厚みによる基板へのストレスが太陽電池モジュール内部に発生しにくくなるので、発生するストレスが緩和される。その結果、本発明では、基板11の割れが防止され、品質の良い太陽電池モジュール1を簡便に製造することができる。
【0037】
なお、上述した実施形態では、前記シール部材30として、前記取り出し電極21及びその近傍の少なくとも一部に対応する部位に、前記切り欠き部31が複数設けられたものを用いたが、本発明はこれに限定されず、前記シール部材30として、図13に示すように、全面に亘って前記切り欠き部31が複数設けられたものを用いてもよい。
【0038】
以上、本発明の太陽電池モジュール及びその製造方法について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本発明の太陽電池モジュールは、図で例示したものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、適宜構成の一部を変更しても良い。
上述した実施形態では、光電変換体と取り出し電極との間に保護シート及び絶縁シートを配したが、これらの保護シート及び絶縁シートは無くても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、アモルファスシリコン型の(薄膜シリコンを用いた)太陽電池モジュールに適用した事例を詳細に説明したが、太陽電池は公知のもので良く、例えば、アモルファス型、マイクロクリスタル型、多接合型等としても構わない。また、太陽電池(セル)をシリコン系に代えて、化合物系(III−V族多接合、CIGS、CdTe等)や有機系(色素増感、有機半導体)等が例示できるが、これらに限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1 太陽電池モジュール、10太陽電池、11 基板、11a 一面、12光電変換体、13第一電極層、14 半導体層、15 第二電極層、20 集電電極、21 取り出し電極、21a 一端、21b 他端、30 シール部材、31 切り欠き部、40 被覆基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り出し電極の厚みに起因した基板の割れを防止できる太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの効率的な利用の観点から、近年、太陽電池はますます広く一般に利用されつつある。例えば、アモルファス(非結晶)シリコン薄膜を利用した太陽電池が、低コストの太陽電池として普及している。
【0003】
アモルファスシリコン太陽電池は、光を受けると電子とホール(正孔)を発生するi型のアモルファスシリコン膜を、p型およびn型のシリコン膜で挟んだpin接合と呼ばれる層構造の半導体膜が用いられ、この半導体膜の両面にそれぞれ電極を形成したものである。
太陽光によって発生した電子とホールは、p型・n型半導体の電位差によって所定の方向に移動し、これが連続的に繰り返されることで発電する。
【0004】
こうしたアモルファスシリコン太陽電池の具体的な構成としては、例えば、受光面側となるガラス基板にTCO(透明導電性酸化物)などの透明電極を正の電極(表面電極とも呼ぶ)として成膜し、この上にアモルファスシリコンからなる半導体膜と、負の電極(裏面電極とも呼ぶ)となるAg薄膜などを形成してなる。このような上下電極と半導体膜からなる光電変換体を備えたアモルファスシリコン太陽電池は、基板上に広い面積で均一に各層を成膜しただけでは抵抗値の間題もあるため、例えば、図14に示すように、光電変換体112を所定のサイズごとに電気的に区画した区画素子112aを形成し、互いに隣接する区画素子112a同士を電気的に接続してなる。具体的には、基板111上に広い面積で均一に形成した光電変換体112に、レーザー光などでスクライブ線(スクライブライン)119と称される溝を形成して多数の短冊状の区画素子112aとし、この区画素子同士を電気的に直列に接統した構造とする。
【0005】
ところで、図14に示すように、太陽電池には、通常、その種類によらず、電子とホールを効率よく集めるための集電電極120、及び電気を外部に取り出すための取り出し電極121が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、太陽電池は、光電変換体112を少なくとも被覆するように配されたシール部材130と、前記シール部材130上に配された被覆基板140とを有している。取り出し電極121は、シール部材130、被覆基板140を通じて外部に導出されている。
このような取り出し電極121は、例えばリボン状の銅箔、またはリボン状の銅箔とその周囲に設けられたメッキ層からなる。
【0006】
しかしながら、図15に示すように、このような取り出し電極121の厚みは基板面内において凹凸を生じさせてしまう。従来の太陽電池モジュールでは、シール部材130が取り出し電極121の厚みを吸収することが難しく、取り出し電極121の厚みに起因するストレスが太陽電池モジュール内部に発生し、このストレスによって基板が割れる場合があり、品質や信頼性を低下させる問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−66292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、取り出し電極の厚みによる基板の割れを防止し、信頼性の高い太陽電池モジュールを簡便に製造することが可能な太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法は、基板の一面に、少なくとも第一電極層、半導体層及び第二電極層が、この順に重ねられた光電変換体が形成されてなる太陽電池と、前記太陽電池を構成する前記第二電極層上に配された集電電極と、前記集電電極に一端が電気的に接続され且つ前記太陽電池を構成する前記第二電極層上に配された取り出し電極と、前記基板の一面に、前記光電変換体を少なくとも被覆するように配されたシール部材と、前記シール部材上に配された被覆基板と、を備えた太陽電池モジュールの製造方法であって、基板の一面に、前記光電変換体、前記集電電極及び前記取り出し電極を重ねて設けた後に、前記光電変換体上に、少なくとも一部又は全面に亘って、複数の切り欠き部を有するシート状の前記シール部材を設ける工程Aと、前記シール部材上に、前記被覆基板を設ける工程Bと、を少なくとも順に有すること、を特徴とする。
本発明の請求項2に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法は、請求項1において、前記工程Aにおいて、前記シール部材として、前記取り出し電極及びその近傍の少なくとも一部に対応する部位に、前記切り欠き部が複数設けられたものを用いること、を特徴とする。
本発明の請求項3に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法は、請求項1又は2において、前記工程Bの後に、前記シール部材を溶融させ、該シール部材によって前記光電変換体を封止するとともに、前記切り欠き部を埋める工程Cを、さらに備えることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法は、請求項1乃至3のいずれか一項において、前記シール部材の厚みが50μm〜1600μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法では、基板の一面に、前記光電変換体、前記集電電極及び前記取り出し電極を重ねて設けた後に、前記光電変換体上に、少なくとも一部又は全面に亘って、複数の切り欠き部を有するシート状の前記シール部材を設ける工程Aと、前記シール部材上に、前記被覆基板を設ける工程Bと、を少なくとも順に有している。これにより本発明では、取り出し電極の厚みによる基板へのストレスが太陽電池モジュール内部に発生しにくくなるので、発生するストレスが緩和される。ゆえに、本発明によれば、基板の割れを防止し、品質の良い太陽電池モジュールを簡便に製造することが可能な太陽電池モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る太陽電池モジュールの第一の構成例を模式的に示す分解斜視図。
【図2】図1中X1−X2線における断面図。
【図3】図1及び図2に示した太陽電池モジュールの製造方法を説明する斜視図。
【図4】図3中X3−X4線における断面図。
【図5】図3の次工程を説明する斜視図。
【図6】図5中X5−X6線における断面図。
【図7】図5の次工程を説明する斜視図。
【図8】図7中X7−X8線における断面図。
【図9】図7の次工程を説明する斜視図。
【図10】図9中X9−X10における断面図。
【図11】図9の次工程を説明する斜視図。
【図12】図11中X11−X12線における断面図。
【図13】シール部材の他の構成例を示す斜視図。
【図14】従来の太陽電池モジュールの一構成例を模式的に示す分解斜視図。
【図15】図17に示す太陽電池モジュールの要部拡大断面図であり、図14中Y1−Y2線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の太陽電池モジュール及びその製造方法について、図面を引用しながら詳しく説明する。なお、以下の説明で使用する図面は、本発明の特徴を判り易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0013】
<第一実施形態>
図1及び図2は、本発明により製造される太陽電池モジュール1の一構成例を模式的に示す図であり、図1は分解斜視図、図2は、図1中X1−X2線における断面図である。
この太陽電池モジュール1は、基板11の一面11aに、少なくとも第一電極層13、半導体層14及び第二電極層15が、この順に重ねられた光電変換体12が形成されてなる太陽電池10と、前記太陽電池10を構成する前記第二電極層15上に配された集電電極20と、前記集電電極20に一端が電気的に接続され且つ前記太陽電池10を構成する前記第二電極層15上に配された取り出し電極21と、前記基板11の一面11aに、前記光電変換体12を少なくとも被覆するように配されたシール部材30と、前記シール部材30上に配された被覆基板40と、を備える。
【0014】
太陽電池10は、公知のもので良く、例えば、アモルファス型、マイクロクリスタル型等が例示でき、さらに、CIGS系やCdTe系を含む薄膜型、タンデム型等が例示できるが、これらに限定されない。
【0015】
ここに示す太陽電池10は、図2に示すように、基板11の一面11aに、少なくとも第一電極(下部電極)層13、半導体層14、第二電極層(上部電極)層15がこの順に積層されてなる光電変換体12を備える。
【0016】
基板11は、例えば、ガラスや透明樹脂による板、またそれら材料からなる可撓性のあるフィルム基板等、太陽光の透適性に優れ、かつ耐久性を有する絶縁材料で形成されていれば良い。このような基板11の他面11b側から太陽光を入射させることで、太陽電池10を発電させることかできる。板状基板に本願技術を適用するのであれば、基板の割れやひびを防ぐことができ、可撓性のあるフィルム基板に適用する場合は、基板表面に生じる気泡や可撓性材料の伸縮により生じる凹凸を緩和することができる。
なお、基板11の一面11aから光を入射させる場合は、被覆基板40を太陽光の透過性に優れたガラスや透明樹脂による板、それら材料からなる可撓性のあるフィルム基板で構成し、シール部材30も透適性に優れた材料で構成すれば、基板11は金属材料からなってもよい。
【0017】
第一電極層13は、透明な導電材料、例えば、TCO、ITOなどの光透過性の金属酸化物で形成されていれば良い。
また、第二電極層15は、銀(Ag)、銅(Cu)等の導電性の金属腹で形成されていれば良い。
【0018】
例えば、太陽電池10が薄膜シリコン太陽電池である場合、半導体層14は、図2の上部に示すように、p型シリコン膜17とn型シリコン膜18との間にi型シリコン膜16を挟んだpin接合構造を成す。そして、この半導体層14に太陽光が入射すると、電子とホールか生じて、p型シリコン膜17とn型シリコン膜18との電位差によって活発に移動し、これが連続的に繰り返されることで第一電極層13と第二電極層15との間に電位差か生じる(光電変換)。なお、シリコン膜は、アモルファス型、マイクロクリスタル(微結晶)型等、いずれでも良い。
【0019】
光電変換体12は、図1に示すように、通常、スクライブ腺19によって、例えば、外形が短冊状の多数の区画素子12aに分割される。この区画素子12aは、互いに隣接する区画素子同士の間で、例えば、電気的に直列に接続される。これにより、光電変換体12は、多数の区画素子を全て電気的に直列に繋いだ形態となり、高い電位差の電流を取り出すことができる。スクライブ線19は、例えば、基板11の一面11aに光電変換体12や裏面電極を形成した後、レーザー等によって光電変換体12に所定の間隔で溝を形成することにより形成すれば良い。
【0020】
また、ここでは、半導体層14としてpin接合構造が一層であるものを例示しているが、これに限定されず、pin接合構造が二層又は三層等、複数層であるタンデム型でも良い。かかるタンデム型の半導体層14の場合、照射する光の波長により、光電変換を行う層を調節するようにできる。
【0021】
ここに示す太陽電池モジュール1においては、太陽電池10の光電変換体12上に二つのリボン状の集電電極20が設けられている。
光電変換体12は、図1に示すように、表面が略四角形状となっており、表面の対内する二つの周縁部に沿って、集電電極20が配置されている。そして、集電電極20上には、取り出し電極21の一方の端部が配置されており、取り出し電極21及び集電電極20が電気的に接続されている。取り出し電極21の他方の端部側は、電気を容易に取り出せるように、光電変換体12の表面から立ち上がるように曲げられている。
太陽電池モジュール1においては、取り出し電極21と光電変換体12との間に、保護シート22、絶縁シート24,25が配置されており、取り出し電極21と光電変換体12とが接触しないようになっている。
【0022】
前記集電電極20及び取り出し電極21は、リボン状の銅箔とその周囲に設けられたメッキ層からなる。
銅箔の厚みとしては特に限定されるものではないが、例えば30〜300[μm]とし、その幅は特に限定されるものではないが、例えば0.1〜10[mm]とする。
また、メッキ層は、例えばAg(銀)、Sn(錫)、Cu(銅)等の材料からなり、その厚みは特に限定されるものではないが、例えば1〜100[μm]とする。
【0023】
被覆基板40は、シール部材30を介して太陽電池10、集電電極20及び取り出し電極21を覆うように重ねて配されている。また、被覆基板40には開口部40aが設けられており、この開口部40aを介して取り出し電極21の他端21bが外部に引き出されている。
被覆基板40は、例えば、ガラスや透明樹脂等、耐久性を有する絶縁材料で形成されていれば良い。
【0024】
シール部材30を構成する材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂;ポリエチレン;、ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC);エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等を用いることができる。
【0025】
次に、このような太陽電池モジュール1の製造方法について説明する。
図3〜図12は、本発明の太陽電池モジュール1の製造方法を説明する図であり、図3,5,7,9,11,13は斜視図、図4,6,8,10,12は、それぞれ、図3,5,7,9,11中X−X線における断面図である。
本発明の太陽電池モジュール1の製造方法は、基板11の一面に、前記光電変換体12、前記集電電極20及び前記取り出し電極21を重ねて配した後に、前記光電変換体12上に、少なくとも一部又は全面に亘って、複数の切り欠き部31を有するシート状の前記シール部材30を設ける工程Aと、前記シール部材30上に、前記被覆基板40を設ける工程Bと、を少なくとも順に有すること、を特徴とする。
【0026】
太陽電池10は公知の方法に従って製造できる。例えば、基板11の一面11a上に第一電極層13、半導体層14及び第二電極層15をこの順に積層して光電変換体12を形成する。なお、各層の厚さは従来の太陽電池と同様である。
【0027】
光電変換体12は、図3に示すように、通常、スクライブ線19によって、例えば、外形が短冊状の多数の区画素子12aに分割される。この区画素子12aは、互いに電気的に区画されるとともに、互いに隣接する区画素子12a同士の間で、例えば、電気的に直列に接続される。これにより、光電変換体12は、多数の区画素子12aを全て電気的に直列に繋いだ形態となり、高い電位差の電気を取り出すことができる。スクライブ線19は、例えば、基板11の一面11aに均一に光電変換体12を形成した後、レーザー等によって光電変換体12に所定の間隔で溝を形成することにより形成すれば良い。また、必要に応じて、第二電極層15上に保護層を積層しても良い。
【0028】
次に、光電変換体12を構成する第二電極層15上に集電電極20を配する。
図3、図4に示すように、多数の区画素子12aのうち、両端に位置する区画素子12aの第二電極層15上に、例えば半田(図示せず)を介して一対の集電電極20を電気的に接続する。接続には一般的な半田ごてが用いられる。集電電極20はリボン状の銅箔とその周囲に設けられたメッキ層からなり、区画素子12aの延在方向に平行して配される。
【0029】
次に、光電変換体12を構成する第二電極層15上に取り出し電極21を配する。
取り出し電極21は、集電電極20と同様に、リボン状の銀箔とその周囲に設けられたメッキ層からなる。
まず、図5、図6に示すように、セル中央部の光電変換体12(第二電極層15)上に保護シート22、絶縁シート24を配する。
さらに、図7、図8に示すように、光電変換体12(第二電極層15)上に絶縁シート25を配し、絶縁シート25上に取り出し電極21を配する。
絶縁シート24,25の材質は、樹脂類であることが好ましく、合成樹脂であることがより好ましい。好ましい合成樹脂としては、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂が例示できる。絶縁シート24,25は公知のもので良く、市販品を使用しても良い。
また、取り出し電極21の一端21aを、集電電極20に電気的に接続する。この接続には半田を用いても良いし、超音波半田ごて等を用いて集電電極20及び取り出し電極21のメッキ層を溶融させることで接続しても良い。一方、取り出し電極21の他端21bは、光電変換体12から立ち上がるように折り曲げておく。
【0030】
次に、シール部材30を、太陽電池10を被覆するように重ねて形成する。
特に、本実施形態では、図9、図10に示すように、前記光電変換体12上に、複数の切り欠き部31を有するシート状の前記シール部材30を設ける(工程A)。本実施形態では、前記取り出し電極21及びその近傍の少なくとも一部に対応する部位に、複数の切り欠き部31を有するシール部材30を用いている。
シール部材30として、複数の切り欠き部31を有するものを用いているので、取り出し電極21の厚みを、シール部材30で吸収することができる。これにより取り出し電極21の厚みによる基板へのストレスが太陽電池モジュール内部に発生しにくくなるので、発生するストレスが緩和される。
シール部材30は、1枚のシートからなるものに代えて、複数枚のシートを重ねたものを用いても構わない。その際、重ね合わせたシートのうち、一部のシートにのみ複数の切り欠き部31を有する構成としてもよい。すなわち、シール部材30として、切り欠き部31を有するシートと切り欠き部31の無いシートとを重ねて用いてもよい。
このようなシール部材30は、柔らかいものが好ましく、この柔らかさは、物理的に、ヤング率や弾性率、粘性係数、流動性などにより、適宜表記されるものである。
なお、このとき、取り出し電極21の他端21bを、開口部30aを通じて、シール部材30の外側に延出させておく。
【0031】
切り欠き部31は、例えばシール部材30の厚み方向に一部のみが凹状にくり抜かれたものであってもよいし、シール部材30を貫通して孔が設けられたものであってもよい。本実施形態では、切り欠き部31として貫通孔を設けた場合を示している。
【0032】
また、切り欠き部31の形状、大きさとしては、特に限定されるものではないが、切り欠き部の形状が例えば円形状である場合、大きすぎると、例えば後述する工程Cにおいて、シール部材30を溶融させたときに、切り欠き部31を溶融したシール部材30によって埋めることが困難になり、一方、小さすぎると、取り出し電極21の厚みを吸収することができず、本発明の効果が得られない。そのため、切り欠き部の大きさとしては、例えば、φ1〜5mm程度の穴状、もしくは、5×50mm程度の短冊状とすることが好ましい。
【0033】
また、切り欠き部30のシール部材30において、前記取り出し電極21及びその近傍の少なくとも一部に対応する部位に対する面積割合としては、十分な接着性を確保できる面積である必要があるため、例えば、5〜70%程度とすることが好ましい。
このようなシール部材30の厚みとしては、水分の浸入防止を確保する厚みとして、例えば50〜1600μm程度とする。
【0034】
次に、図11、図12に示すように、シール部材30上に、前記被覆基板40を設ける(工程B)。
なお、このとき、取り出し電極21の他端21bを、シール部材30、及び被覆基板40に設けられた開口部40aを通じて、被覆基板40の外側に延出させる。
【0035】
また、前記工程Bの後に、前記シール部材30を溶融させ、該シール部材30によって前記光電変換体12を封止する工程を、さらに備えてもよい(工程C)。このとき、シール部材30の切り欠き部31は、溶融したシール部材30によって埋められる(図1,図2参照)。
シール部材30の溶融は、例えば真空ラミネートによる方法、オートクレーブによる加圧・加熱による方法などが挙げられる。
以上のようにして光電変換体12上に被覆基板40が固定され、太陽電池モジュール1の製造が完了する。
【0036】
このように、本発明では、前記シール部材30として、複数の切り欠き部31を有するものを用いているので、取り出し電極21の厚みを、シール部材30で吸収することができる。これにより取り出し電極21の厚みによる基板へのストレスが太陽電池モジュール内部に発生しにくくなるので、発生するストレスが緩和される。その結果、本発明では、基板11の割れが防止され、品質の良い太陽電池モジュール1を簡便に製造することができる。
【0037】
なお、上述した実施形態では、前記シール部材30として、前記取り出し電極21及びその近傍の少なくとも一部に対応する部位に、前記切り欠き部31が複数設けられたものを用いたが、本発明はこれに限定されず、前記シール部材30として、図13に示すように、全面に亘って前記切り欠き部31が複数設けられたものを用いてもよい。
【0038】
以上、本発明の太陽電池モジュール及びその製造方法について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本発明の太陽電池モジュールは、図で例示したものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、適宜構成の一部を変更しても良い。
上述した実施形態では、光電変換体と取り出し電極との間に保護シート及び絶縁シートを配したが、これらの保護シート及び絶縁シートは無くても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、アモルファスシリコン型の(薄膜シリコンを用いた)太陽電池モジュールに適用した事例を詳細に説明したが、太陽電池は公知のもので良く、例えば、アモルファス型、マイクロクリスタル型、多接合型等としても構わない。また、太陽電池(セル)をシリコン系に代えて、化合物系(III−V族多接合、CIGS、CdTe等)や有機系(色素増感、有機半導体)等が例示できるが、これらに限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1 太陽電池モジュール、10太陽電池、11 基板、11a 一面、12光電変換体、13第一電極層、14 半導体層、15 第二電極層、20 集電電極、21 取り出し電極、21a 一端、21b 他端、30 シール部材、31 切り欠き部、40 被覆基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一面に、少なくとも第一電極層、半導体層及び第二電極層が、この順に重ねられた光電変換体が形成されてなる太陽電池と、
前記太陽電池を構成する前記第二電極層上に配された集電電極と、前記集電電極に一端が電気的に接続され且つ前記太陽電池を構成する前記第二電極層上に配された取り出し電極と、
前記基板の一面に、前記光電変換体を少なくとも被覆するように配されたシール部材と、
前記シール部材上に配されたの被覆基板と、を備えた太陽電池モジュールの製造方法であって、
基板の一面に、前記光電変換体、前記集電電極及び前記取り出し電極を重ねて設けた後に、
前記光電変換体上に、少なくとも一部又は全面に亘って、複数の切り欠き部を有するシート状の前記シール部材を設ける工程Aと、
前記シール部材上に、前記被覆基板を設ける工程Bと、
を少なくとも順に有すること、を特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて、前記シール部材として、前記取り出し電極及びその近傍の少なくとも一部に対応する部位に、前記切り欠き部が複数設けられたものを用いること、を特徴とする請求項1に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記工程Bの後に、前記シール部材を溶融させ、該シール部材によって前記光電変換体を封止するとともに、前記切り欠き部を埋める工程Cを、さらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記シール部材の厚みが50μm〜1600μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法。
【請求項1】
基板の一面に、少なくとも第一電極層、半導体層及び第二電極層が、この順に重ねられた光電変換体が形成されてなる太陽電池と、
前記太陽電池を構成する前記第二電極層上に配された集電電極と、前記集電電極に一端が電気的に接続され且つ前記太陽電池を構成する前記第二電極層上に配された取り出し電極と、
前記基板の一面に、前記光電変換体を少なくとも被覆するように配されたシール部材と、
前記シール部材上に配されたの被覆基板と、を備えた太陽電池モジュールの製造方法であって、
基板の一面に、前記光電変換体、前記集電電極及び前記取り出し電極を重ねて設けた後に、
前記光電変換体上に、少なくとも一部又は全面に亘って、複数の切り欠き部を有するシート状の前記シール部材を設ける工程Aと、
前記シール部材上に、前記被覆基板を設ける工程Bと、
を少なくとも順に有すること、を特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて、前記シール部材として、前記取り出し電極及びその近傍の少なくとも一部に対応する部位に、前記切り欠き部が複数設けられたものを用いること、を特徴とする請求項1に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記工程Bの後に、前記シール部材を溶融させ、該シール部材によって前記光電変換体を封止するとともに、前記切り欠き部を埋める工程Cを、さらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記シール部材の厚みが50μm〜1600μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の太陽陽電池モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−69898(P2013−69898A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207795(P2011−207795)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]