説明

太陽電池モジュール及び太陽電池セル

【課題】耐湿性劣化が抑制され且つ光利用率(発電効率)が向上した太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】ライトトラッピングフィルムと反射防止膜を有する太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールにおいて、ライトトラッピングフィルムが、微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であり、(式1)a[−/μm]=−log10(T)/L(Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm))反射防止膜は、窒化ケイ素からなる窒化ケイ素膜と、酸化ケイ素からなる酸化ケイ素膜と、を有し、且つ前記酸化ケイ素膜は、窒化ケイ素膜の光入射側に形成されるか、又は、窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール及び太陽電池セルに関するものであり、更に詳しくは、入射光を効率よく太陽電池セルに導入して発電効率を高くしうる、ライトトラッピングフィルム及び反射防止膜を有する太陽電池モジュール及び太陽電池セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシリコン結晶系の太陽電池モジュールの概略図(断面図)を図2に示す。表面の保護ガラス(カバーガラスともいう)201は、耐衝撃性を重んじて強化ガラスが用いられており、封止材202(通常、エチレンビニルアセテートコポリマーを主成分とする樹脂、充填材ともいう)との密着性をよくするために、片面はエンボス加工による凹凸模様が施されている。
【0003】
また、その凹凸模様は内側(すなわち、図2では保護ガラス201の下面)に形成されており、太陽電池モジュール200の表面は平滑である。また保護ガラス201の下側には太陽電池セル100及びタブ線203を保護封止するための封止材202、及びバックフィルム204が設けられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上記した従来の太陽電池モジュールでは、太陽電池セル100と封止材202の屈折率差が大きいため、セル−封止材界面で光反射が起きて光を効率よく利用できない難点がある。
【0005】
なお、斜めを含むあらゆる角度からの外部光を、反射損失を少なくして効率よく取り入れる手法の一つに、moth−eye(昆虫の目)構造があることは古くから知られている。これは微細な円錐や三角錐、四角錐等の透明形状物を、フィルムの表面に百nmスケールで規則的に配列する構造を形成することで、反射損失を少なくし効率よく外部光を取り入れる技術である(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
上記微細なmoth−eye構造は、太陽電池にとっては非常に有効な手法と考えられるものの、これを太陽電池の最外層に設けた場合、屋外で長期間に渡り曝露されて汚れ、逆に光を遮断する恐れがある。また、これを避けるため、moth−eye構造を通常の樹脂材料によりモジュール内部の光入射側に設けた場合、太陽電池セルを封止している封止材との屈折率差が小さいため、効率よく外部光を取り入れることができず、従来はほとんど採用されてこなかった。そこで、これを改良して太陽電池モジュールに応用したものが特許文献1に示されている。
【0007】
特許文献1には、片面は平滑であり、他面は微細凸部(略同一形状の円錐状もしくは多角錐状)を多数敷き詰めるように形成した、屈折率が1.4以上で透明である集光フィルム(ライトトラッピングフィルム)が提案されている。
【0008】
ライトトラッピングフィルムの特徴である微細な凹凸形状を有し、さらには太陽電池セルとの光学接触を得るための材料としては、製造工程において可とう性を持ち、ライトトラッピングフィルム特有の微細な凹凸形状及び太陽電池セルの凹凸に追従する必要がある。このような性質を有する材料としては、ポリマ材料が好適であるが、必要とされる屈折率(1.55〜2.40)が通常のポリマ材料で得られる範囲(おおよそ1.7)を超えている。このため、特許文献1では、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド材料により、工程で必要な可とう性及びライトトラッピングフィルム本来の性質を発揮させるための高い屈折率が実現可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−101513号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】濱川圭弘編「太陽光発電」―最新の技術とシステム―、2000年、株式会社シーエムシー
【非特許文献2】豊田宏;”無反射周期構造”、光学、32巻8号489ページ(2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1で提案されるライトトラッピングフィルムの材料であるチタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド材料は、高温高湿下において加水分解し、反応性の高いチタノールを生じうる。従来の太陽電池セルの反射防止膜は主に窒化ケイ素で形成されているが、このチタノールは、窒化ケイ素を侵食してしまう。この反応機構は、下式のように推定される。
【0012】
【化1】

【0013】
本発明は、このような問題を軽減しようとするものであり、具体的には、太陽電池モジュールにおける光利用率を向上させるために、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物からなるライトトラッピングフィルムと、窒化ケイ素を含む反射防止膜を有する太陽電池セルと、を有する太陽電池モジュールにおいて、発電効率を向上させること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物からなるライトトラッピングフィルムを用いた場合でも、窒化ケイ素を含む反射防止膜を、<1>窒化ケイ素膜上に酸化ケイ素膜を積層させる2層構成とする、又は<2>窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなる1層構成とすることで、ライトトラッピングから生じるチタノールにより窒化ケイ素が侵食されない反射防止膜を有する太陽電池モジュール及び太陽電池セルを提供できることを見出した。 即ち、本発明は以下の通りである。
【0015】
(1)ライトトラッピングフィルムを含む複数の光透過性層と、光入射面側に反射防止膜を有する太陽電池セルと、を有する太陽電池モジュールであって、
上記ライトトラッピングフィルムは、上記反射防止膜よりも光入射側に形成され、
上記ライトトラッピングフィルムが、微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であり、
【数1】

(上記式中、Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である)
上記反射防止膜は、窒化ケイ素からなる窒化ケイ素膜と、酸化ケイ素からなる酸化ケイ素膜と、を有し、且つ上記酸化ケイ素膜は、上記窒化ケイ素膜の光入射側に形成されることを特徴とする太陽電池モジュール。
【0016】
(2)上記窒化ケイ素膜が、Si、N及びHで構成された、屈折率が1.60〜2.70の範囲であり、
上記酸化ケイ素膜が、Si、O及びHで構成された、屈折率が1.45〜1.55の範囲であることを特徴とする上記(1)に記載の太陽電池モジュール。
【0017】
(3)上記酸化ケイ素膜が、上記窒化ケイ素膜の光入射側に10Å以上の膜厚で構成されたことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の太陽電池モジュール。
(4)上記酸化ケイ素膜が、上記窒化ケイ素膜の光入射側に10Å以上100Å以下の膜厚で構成されたことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の太陽電池モジュール。
【0018】
(5)上記窒化ケイ素膜が、SiHとNHとの混合ガスを原料とするプラズマCVD法により、上記混合ガス流量比NH/SiHが0.05〜1.0、反応室の圧力が0.1〜2Torr、成膜時の温度が300〜550℃、プラズマの放電のための周波数が100kHz以上の条件の下で形成されることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の太陽電池モジュール。
【0019】
(6)上記酸化ケイ素膜が、SiHと、Oと、Ar又はHeと、の混合ガスで、該混合ガスを原料とするプラズマCVD法により、上記混合ガス流量比SiH/O2/Ar(He)が1/1.5〜2.0/1.5〜2.0、反応室の圧力が0.005〜2Torr、成膜時の温度が300〜550℃、プラズマの放電のための周波数が100kHz以上の条件の下で形成されることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【0020】
(7)ライトトラッピングフィルムを含む複数の光透過性層と、光入射面側に反射防止膜を有する太陽電池セルと、を有する太陽電池モジュールであって、
上記ライトトラッピングフィルムは、上記反射防止膜よりも光入射側に形成され、
上記複数の光透過性層を、光入射側から層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・、nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立ち、
上記ライトトラッピングフィルムが、微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であり、
【数2】

(上記式中、Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である)
上記反射防止膜は、窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなることを特徴とする太陽電池モジュール。
【0021】
(8)上記反射防止膜が、Si、O、N及びHで構成された、屈折率が1.45〜2.70の範囲である窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなることを特徴とする上記(7)に記載の太陽電池モジュール。
【0022】
(9)上記反射防止膜の窒化ケイ素膜の屈折率又は上記混晶体からなる反射防止膜は、上記ライトトラッピングフィルムの屈折率よりも大きいことを特徴とする上記(1)又は(7)に記載の太陽電池モジュール。
【0023】
(10)微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であるライトトラッピングフィルムを有する太陽電池モジュール用の、光入射面側に反射防止膜を有する太陽電池セルであって、
【数3】

(上記式中、Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である)
上記反射防止膜は、窒化ケイ素からなる窒化ケイ素膜と、酸化ケイ素からなる酸化ケイ素膜と、を有し、且つ上記酸化ケイ素膜は、上記窒化ケイ素膜の光入射側に形成されることを特徴とする太陽電池セル。
【0024】
(11)微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であるライトトラッピングフィルムを有する太陽電池モジュール用の、光入射面側に反射防止膜を有する太陽電池セルであって、
【数4】

(上記式中、Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である)
上記反射防止膜は、窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなることを特徴とする太陽電池セル。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物からなるライトトラッピングフィルムと、及び窒化ケイ素を含む反射防止膜を有する太陽電池セルと、を有する太陽電池モジュールにおいて、反射防止膜がライトトラッピング成分由来のチタノールによる侵食を受けないものとなる。
【0026】
また、本発明は、侵食防止のみならず、ライトトラッピングフィルムにおいて上記チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物を用いた場合でも、その下層である太陽電池セルの反射防止膜が2層構造(窒化ケイ素膜及び酸化ケイ素膜)であって、ライトトラッピングフィルムよりも酸化ケイ素膜の屈折率が小さくとも、酸化ケイ素膜の膜厚を波長よりも十分に薄くすることにより、最も効率よく太陽光を導入しうる屈折率構成を得る太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の1つの実施の態様を示す。積極的に凹凸構造を形成する処理を行わず、ライトトラッピングフィルムをつけた太陽電池セル。
【図2】従来型の太陽電池モジュールの構造図(断面)を示す。
【図3】ライトトラッピングフィルムをモジュールに組み込んだ場合の一態様。型フィルムをモジュール内に残さない。ただし、この図では、接続用タブ線は省略されている。
【図4】ライトトラッピングフィルムをモジュールに組み込んだ場合の一態様。型フィルムをモジュール内に残す。ただし、この図では、接続用タブ線は省略されている。
【図5】太陽電池セルに貼り付けたライトトラッピングフィルム。ここでは、型フィルムを残した状態としている。
【図6】太陽電池セルへライトトラッピングフィルムを形成させる製造工程図を示す。
【図7】本発明の太陽電池モジュールにおける太陽電池セル(テクスチャー構造あり)の製造工程図を示す。
【図8】本発明の太陽電池モジュールにおける太陽電池セル(テクスチャー構造なし)の製造工程図を示す。
【図9】実施例で得られた太陽電池モジュールの、耐湿性試験における劣化の時間依存性の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の太陽電池モジュールの一態様は、ライトトラッピングフィルムを含む複数の光透過性層と、光入射面側に反射防止膜を有する太陽電池セルと、を有し、
上記ライトトラッピングフィルムは、上記反射防止膜よりも光入射側に形成され、
上記ライトトラッピングフィルムが、微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.4であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式(1)で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であり、
【数5】

(上記式中、Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である)
上記反射防止膜は、窒化ケイ素からなる窒化ケイ素膜と、酸化ケイ素からなる酸化ケイ素膜と、を有し、且つ上記酸化ケイ素膜は、上記窒化ケイ素膜の光入射側に形成されることを特徴とする。
【0029】
本発明の太陽電池モジュールの別の態様は、ライトトラッピングフィルムを含む複数の光透過性層と、光入射面側に反射防止膜を有する太陽電池セルと、を有し、
上記ライトトラッピングフィルムは、上記反射防止膜よりも光入射側に形成され、
上記複数の光透過性層を、光入射側から層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・、nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立ち、
上記ライトトラッピングフィルムが、微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であり、
【数6】

(上記式中、Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である)
上記反射防止膜は、窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなることを特徴とする。
【0030】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池セルの反射防止膜として、ライトトラッピングフィルムと太陽電池セルとの間に、酸化ケイ素を構成成分として導入することで、反射防止膜の構成成分である窒化ケイ素に対して、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物からなるライトトラッピングフィルムの劣化により生じるチタノールによる侵食を防止することができる。
より具体的には、太陽電池セルの反射防止膜として、下記の構成とする。
<1>窒化ケイ素膜上に酸化ケイ素膜を積層させる2層構成とする、又は<2>窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなる1層構成とする。
【0031】
また、本発明は、侵食防止のみならず、上記チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物を用いた場合でも、その下層である太陽電池セルの反射防止膜が2層構造(窒化ケイ素膜及び酸化ケイ素膜)であって、ライトトラッピングフィルムよりも酸化ケイ素膜の屈折率が小さくとも、酸化ケイ素膜の膜厚を波長よりも十分に薄くすることにより、最も効率よく太陽光を導入しうる屈折率構成を得ることができる。
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。図3は、シリコン基板を材料とした太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールの断面を示す。
【0033】
即ち、本発明の太陽電池モジュール200において、あらゆる角度から入り込む外部光が反射損失少なく、効率よく太陽電池セル内に導入するために、複数の光透過性層、すなわち、保護ガラス上反射防止膜(図示せず)、保護ガラス201、封止材202、型フィルム(図示せず)、ライトトラッピングフィルム300、太陽電池セル100の反射防止膜(図示せず)及び太陽電池セルのpn接合層(図示せず)等の順に、光入射側から屈折率を低くすることが好ましい。
【0034】
しかし、現実の製造工程を考慮するとそのような構成を得ることは不可能である。すなわち、太陽電池セル上の反射防止膜は、太陽電池セル製造工程で形成され、それよりも浅い層(ここでは、保護ガラス上反射防止膜(太陽電池セル上の反射防止膜とは異なる膜)、保護ガラス、封止材、型フィルム、ライトトラッピングフィルム等)では、太陽電池モジュール製造工程で形成されるため、各層部材に跨って連続的な屈折率分布を得ることは不可能である。
【0035】
ここで、物理的な形状により、連続的な等価屈折率を実現するのが、moth−eye構造である。しかし、非特許文献2に見られるように、そこで必要とされる微細な錘形状は導入されるべき光の波長オーダーである。これに対し、本発明におけるライトトラッピングフィルムは、それほど微細な形状を必要とせず、現実的な金型加工が許される10μm以上であってもかまわない。これは、本発明におけるライトトラッピングフィルムは、連続的な等価屈折率分布を得るというよりは、幾何光学で説明される光路、多重反射及び再帰反射を利用しているためである。
【0036】
本発明は、特に工程に依存したモジュール層構造上の光学的界面、従来技術の封止材−太陽電池セル界面での反射損失を低減させ、太陽電池セル内への光導入量を増そうというものである。したがって、本発明の最も重要な点は、封止材よりも高屈折率で、太陽電池セルのpn接合層へ最も高効率で光導入を実現できる構成を提供することにある。より具体的には、ライトトラッピングフィルムによる光導入効果を、ライトトラッピングフィルムと太陽電池セル上の反射防止膜の屈折率制御により、最大化を図るものである。
【0037】
屈折率として具体的には、保護ガラス上反射防止膜の屈折率は、1.25〜1.45、保護ガラス、封止材、型フィルム等の屈折率は、通常1.45〜1.55程度のものが用いられる。本発明におけるライトトラッピングフィルムは、1.55〜2.40であることが好ましい。
本発明における反射防止膜が、窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなる1層構成である場合は、混晶体からなる反射防止膜の屈折率は、1.45〜2.70となる。
本発明における反射防止膜が、窒化ケイ素膜及び酸化ケイ素膜との2層構成である場合、本発明における酸化ケイ素膜の屈折率は、1.45〜1.55であり、本発明における窒化ケイ素膜の屈折率は、1.60〜2.70である。上記のように、反射防止膜が、窒化ケイ素膜及び酸化ケイ素膜との2層構成である場合、窒化ケイ素膜よりも光入射側に形成される酸化ケイ素膜の屈折率が、窒化ケイ素膜の屈折率よりも小さくなる。従って、酸化ケイ素膜の膜厚を波長よりも大幅に小さくすることで、好ましくは波長の1/4以下とすることで、高効率に光を導入することが可能となる。詳細は後述する。 上述したように理論的には、光入射側から太陽電池セルまで順に屈折率が高くなっていくことが望ましく、かつその関係は、
【0038】
【数7】

というように、ひとつの層の屈折率は、その上下の屈折率に依存させると最も効率よく光が導入しうる。
【0039】
特に本発明の効果を最大限に発揮させるために、理想的には、ライトトラッピングフィルムと太陽電池セルの反射防止膜の屈折率を同一にすることが望まれる。しかしながら、現実には、上記チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物では、1.75を超える屈折率は著しく不安定になり、従来法による太陽電池セルの反射防止膜の形成方法では、ライトトラッピングフィルムと太陽電池セルの反射防止膜を光学的に同一化が不可能である。
【0040】
本発明は、太陽電池セルの反射防止膜として、酸化ケイ素を構成成分として含む構成とすることで屈折率の自由度が特に低屈折率化という点で大きくなる。
【0041】
(1)ライトトラッピングフィルム
まず、本発明の特徴の一つであるライトトラッピングについて説明する。
本発明におけるライトトラッピングフィルムは、微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成される。
【0042】
本発明において、上記ライトトラッピングフィルムは、上記式(1)で表わされるフィルム規格化吸光係数aの値が、入射光の波長が400〜1200nmで、0.1以下であることが好ましい。aが上記範囲であると、保護ガラス、封止材等と同程度の光透過性が得られ、ライトトラッピングフィルムによる光吸収損失は考慮に入れる必要がなくなる。
【0043】
なお、Tの光透過率とは、ライトトラッピングフィルムの凹凸のない状態の材料自体の光透過率のことである。また、Lのフィルム平均厚みとは、ライトトラッピングフィルム材料の平均厚みのことである。
【0044】
本発明におけるライトトラッピングフィルムは、太陽電池モジュールに用いるライトトラッピングフィルム、すなわち、片面はセル表面形状に隙間なく追従し、他面は微細凹又は凸部を隙間なく多数敷き詰めるように形成したライトトラッピングフィルムであって、上記微細凹又は凸部の各々の形状は、略同一形状の円錐状もしくは多角錐状であり、かつ、その屈折率は1.55〜2.40で透明であることを特徴とするライトトラッピングフィルムである。
【0045】
あらゆる角度から入り込む外部光が反射損失少なく、効率よく太陽電池セル内に導入するためには、ライトトラッピングフィルムにおける屈折率は、封止材、型フィルム等、ライトトラッピングフィルムより光入射面側にある層の屈折率より高く、かつライトトラッピングフィルムよりも反光入射面側にある層、例えば、太陽電池セルの反射防止膜よりも低くすることが好ましい。具体的な屈折率は好ましくは、1.55〜2.40、より好ましくは1.6〜2.20である。
本発明の特徴は、最適な屈折率の構成を、ライトトラッピングフィルムと太陽電池セルの反射防止膜の両方から調整できることである。
【0046】
例えば、最外層になる保護ガラス、その下層(反光入射面側)の封止材、太陽電池セルpn接合層(n層、p層等)等は、屈折率を変更しにくい。しかし、それらの中間層となるライトトラッピングフィルム、反射防止膜で調整できることは、光入射側から高くなっていく屈折率構成を実現しやすくするものである。
【0047】
また、本発明において、太陽電池モジュールに用いる型フィルム付きライトトラッピングフィルム、すなわち、上記ライトトラッピングフィルムと、そのライトトラッピングフィルムの微細凹又は凸部側に、その微細凹又は凸部に相補(隙間無く、完全に噛み合う)して接着する微細凸又は凹部が隙間なく多数形成され、且つその屈折率がライトトラッピングフィルムにおける屈折率よりも小さい型フィルム(ライトトラッピングフィルムの凹又は凸部形成の鋳型となる型フィルム)とが重層されてなる、外観は平滑な型フィルム付きライトトラッピングフィルムを用いることも可能である(図4参照)。
【0048】
ライトトラッピングフィルムの片面は太陽電池セル表面の凹凸に隙間なく追従しており、通常、太陽電池セル100上に貼り合わせ、ライトトラッピングフィルム300他面の微細凹又は凸部面では、用いた型フィルム301を除去せずに積層させたままとするか(図4)、型フィルムを取り除き、封止材202を積層させ、空隙を生じさせず隙間なくライトトラッピングフィルム300の凹凸を埋めるようにする(図3)。
【0049】
ライトトラッピングフィルムの片面に敷き詰められるように隙間なく多数形成する微細凹又は凸部の各々は、微細円錐状もしくは微細多角錐状である。非特許文献2にある無反射構造では、頂角は狭いほど有利であるが、本発明では、ライトトラッピングフィルムを樹脂(封止材)中に封止し、さらに太陽電池セルに近接させるため、事情が異なる。
【0050】
あらゆる角度からの入射光を効率よく太陽電池セル内に導入するためには、頂角は狭いほうが有利であるが、ライトトラッピングフィルムと太陽電池セルとの界面で反射損失がある場合、頂角が狭すぎると反射光は再度外部へ漏れてしまう。従って、反射光をライトトラッピングフィルムによって再度反射させ、うまく太陽電池セルに戻すために、理想的には頂角の90度がよい。頂角が90度であると、性能、加工精度の点で最も良好な角度といえる。
【0051】
非特許文献2によれば、底辺の大きさは、使用する最短波長をその材料の屈折率で除した値となっており、例として屈折率を2.0とした場合、太陽電池モジュールでは175nm程度となる。しかし、このような微細構造を得るためには、加工方法も限定される。
【0052】
本発明では、このような超微細構造は必要としない。本発明の最も理想的なライトトラッピングフィルム微細形状は、入射光を同一方向へ再帰反射させるコーナーキューブであるが、現実的な屈折率の違いからでは、コーナーキューブの概念を実現しにくい。そこで、規則正しい多角錘が敷き詰められることにより、ひとつの多角錘が、太陽電池セルからの反射光を、ライトトラッピングフィルム外部(具体的には型フィルム中)へ取り逃がしたとき、隣り合う多角錘により再度ライトトラッピングフィルム内部へ取り込まれることを狙っている。このような概念により、十分に機械加工可能な大きさ及び形状での微細凹凸形状でも、目的の効果が得られるように設計する。
【0053】
本発明におけるライトトラッピングフィルムでは、該ライトトラッピングフィルムを台座部分と凹凸部分に分けて考える。図5に示すように、台座部分303は、太陽電池セルの凹凸形状に追従して埋め込む必要があるため、厚みは太陽電池セルの凹凸以上なければいけない。通常、太陽電池セル表面には、テクスチャー構造を施してあり、これの深さが、0〜20μmである。一方、ライトトラッピングフィルムに本質的な部分である規則的に隙間なく多数敷き詰めるように形成した微細凹又は凸部の高さ302は、主として加工上の要請から、1〜100μmである。
【0054】
また、屈折率が1.55〜2.40のライトトラッピングフィルムは、上述のように太陽電池セルの凹凸に追従し、ライトトラッピングフィルム本来の微細凹凸形状が転写されなければならないことから、半硬化状態の樹脂組成物とすることが重要であり、高屈折率でかつ形状転写性をみたすライトトラッピングフィルムの材料として、チタニウムテトラアルコキシドを用いた、有機−無機ハイブリッド組成物が挙げられる。
【0055】
本発明におけるライトトラッピングフィルムは、上記有機−無機ハイブリッド組成物からなるフィルム状の樹脂組成物層を用いて、反射防止膜を有する太陽電池セルの反射防止膜上に形成し製造できる。その一つの方法について、図6を用いて説明する。
【0056】
図6(a)に示すように、基材であるPET等の基材フィルム304と、PP等のセパレータフィルム306に挟まれた半硬化状態の、半硬化状態の上記有機−無機ハイブリッド組成物からなる樹脂組成物層305を、太陽電池セル100(反射防止膜は不示図)へ貼り付ける場合、まずセパレータフィルム306を剥がす。
【0057】
次に、図6(b)に示すように、真空ラミネータを用い、太陽電池セル100に半硬化状態の樹脂組成物層305を、基材フィルム304をつけたまま貼り付ける。
その後、図6(c)に示すように、上記基材フィルム304を剥がし、半硬化状態の樹脂組成物層305上に型フィルム301を載せ、図6(d)に示すように、さらに真空ラミネータで、微細凹凸形状の転写を行い、ライトトラッピングフィルム300a(硬化前)を得る。
硬化前のライトトラッピングフィルム300aを得た後、さらに光又は熱で半硬化状態のライトトラピングフィルム300aを硬化させ、ライトトラッピングフィルム300b(硬化後)を得る。硬化後は、このまま型フィルム301を残し、保護ガラス201、封止材202及びバックフィルム204に挟みモジュール化してもよい(図4参照)。
【0058】
また、図6(e)のように、図6(d)の状態から型フィルム301を剥がした後、図3に示すように、保護ガラス201、封止材202及びバックフィルム204に挟みモジュール化してもよい。
【0059】
このとき、太陽電池セルのテクスチャー構造が深さ10μmで、型フィルム凹凸の深さが10μmとすれば、ラミネート前のライトトラッピングフィルムは少なくとも20μmの厚みが必要ということになる。先述の言い方をすれば、前者が台座部分で、後者が凸又は凹形状の多角錐もしくは円錐部分となる。
【0060】
なお、型フィルム(ライトトラッピングフィルムの凸又は凹計上の多角錐若しくは円錐部形成の鋳型となる型フィルム)は、特開2002−225133号公報に記載の方法等により作製することができる。なお、型フィルムの形状は、ライトトラッピングフィルムに微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐が光入射面に隙間なく多数敷き詰めるように形成されるようなものとする。
型フィルムの具体的な作製例は、実施例のところで後述する。
本発明におけるライトトラッピングフィルムは、半硬化状態と、硬化した後(太陽モジュール化した後)の屈折率は大きくは変わらない。
【0061】
本発明におけるライトトラッピングフィルムの材料は、高屈折率を得るために、ゾルゲル法を用いて有機−無機ハイブリッド組成物とする。ゾルゲル法における必須成分は、
(RM−(OR
で表される金属アルコキシドであるが、本発明は、このうちの
Ti−(OR)
【0062】
で示されるチタニウムテトラアルコキシドを少なくとも一部として用いることである。相補的に、MがZn、Zr、Al、Si、Sb、Be、Cd、Cr、Sn、Cu、Ga、Mn、Fe、Mo、V、Ge、W及びCeから選ばれる金属であってもかまわない。
【0063】
Rは、炭素数1〜10のR1及びR2はMに複数個結合しているが、それぞれはすべて同一でも、違っていてもよい。nは0以上の整数、mは1以上の整数で、n+mは、Mの価数に等しい。
【0064】
ゾルゲル法による有機−無機ハイブリッド組成物を得るとき、用いる金属アルコキシドは、チタニウムテトラアルコキシドを少なくとも用いれば、一種類でも複数種類でもよい。
【0065】
ゾルゲル法を用いて有機−無機ハイブリッド組成物を得るには、溶液状にした樹脂組成物中に、金属アルコキシド(チタニウムテトラアルコキシドを少なくとも含む)、水、及び酸(又はアルカリ)触媒を加え、基材に塗布し、溶剤を揮発させ、加熱することにより得られる。ただし、選ばれる金属アルコキシドの反応性によっては、水及び/又は酸(又はアルカリ)触媒が必要でなくなる場合もある。また加熱温度も金属アルコキシドの反応性に依存している。Tiのように反応性の高いものでは、水、触媒とも不要で、加熱温度は100℃程度の温度でもよい。
【0066】
本発明においては、必ずしも(−M−O−)の三次元構造は必要ではなく、高屈折率化を実現できればよい。特に酸化チタニウムの三次元構造は、光触媒で用いられるように、半導体となる。しかし、この構造は、光劣化の点で不都合であるため、三次元構造をあえて壊すために、別な金属アルコキシドと併用する手法が有効である。
【0067】
(2)反射防止膜
これまで説明した様に、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成されるライトトラッピングフィルムは、光学的な反射防止効果が得られているが、さらに反射防止をするべく、Si、N及びHで構成された窒化ケイ素からなる窒化ケイ素膜を太陽電池セル上に設ける場合、窒化ケイ素とライトトラッピングフィルムが直接接触することで、N原子とTi原子の接触によりN原子の置換が生じ、窒化ケイ素が侵食され光学的な性能を失ってしまう。
【0068】
本問題点を解消する為に、本発明では、反射防止膜として、<1>窒化ケイ素膜上に酸化ケイ素膜を積層させる2層構成とする、又は<2>窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなる1層構成とすることによって、窒化ケイ素のN原子とライトトラッピングフィルムのTi原子とが接触をするのを防止することができる。
【0069】
上記の<1>窒化ケイ素膜上に酸化ケイ素膜を積層させる2層構成を実現する為に、本発明では、pn接合層の半導体層上にまず、窒化ケイ素からなる窒化ケイ素膜を形成し、その後、酸化ケイ素を含む酸化ケイ素膜を形成する。
【0070】
結晶シリコン系太陽電池では、光入射面側の半導体層に例えばプラズマCVDにより窒化ケイ素を形成する方法が一般的である。一方、酸化ケイ素は、半導体産業では一般的にLSIで用いられているものの(例えば、例えば、特開2007−12119号公報、特開平10−929810号公報、特開2007−129119号公報等)、太陽電池モジュール構造までを対象にした場合、太陽電池への適用はほとんど無い。
【0071】
酸化ケイ素の屈折率は1.45〜1.55程度であるので、ライトトラッピングフィルムよりも低くなる場合が生じ、その場合、モジュール構造まで考慮すると、光学的には最適なものとはならない。従って、酸化ケイ素膜の膜厚は、窒化ケイ素膜中の窒化ケイ素とライトトラッピングフィルムが直接接触して生じる劣化、すなわちN原子とTi原子の接触によってN原子が置換され、窒化ケイ素が侵食されてしまう現象を抑止出来る最低限の膜厚であれば良く、その膜厚を実現出来れば、製造時間を最低限に抑制することが可能となる。
【0072】
なお、窒化ケイ素が侵食されてしまう現象を抑制できる膜厚としては、10Å以上が好ましく、さらには10Å以上100Å以下がより好ましい。膜厚が10Åであると、窒化ケイ素膜中の窒化ケイ素に対するライトトラッピングフィルムによる劣化、すなわちN原子とTi原子の接触によってN原子が置換され、窒化ケイ素が侵食されてしまう現象を抑止することが可能である。
【0073】
一方、窒化ケイ素膜もプラズマCVDでの形成が可能であるので、窒化ケイ素膜と酸化ケイ素膜は連続的に成膜することが可能である。
【0074】
本発明における反射防止膜の別の態様である、<2>窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなる1層構成である場合は、pn接合層の半導体層上に、窒化ケイ素及び酸化ケイ素の混晶体からなる膜を形成する。混晶体の屈折率は、上述しているが、1.45〜2.70である。
一方、混晶体からなる膜もプラズマCVDでの形成が可能である。
【0075】
(3)太陽電池モジュールの製造方法
以下、太陽電池モジュールの製造方法について説明する。
【0076】
本発明で用いる太陽電池セルは、光入射面側に本発明における反射防止膜を有すれば、一般的に製造されている太陽電池であればどんな形態であっても効力を発揮するが、太陽電池モジュールとして更に高効率化を図るための太陽電池セルの構造に関し製造工程を含め、図を用いて説明する。
図7は、シリコン太陽電池の断面の概略図で主な製造工程を工程順に(a)〜(f)に示した図である。図7(f)が太陽電池セルとして完成した状態である。
【0077】
また、図8は、テクスチャー構造を形成しない場合で主な製造工程を工程順に(a)(b)(f)に示した。図8に記載の製造工程は、図7に記載の製造工程と比較してテクスチャー構造を形成している部分が異なるだけで他は同様である。従って、テクスチャー形成以降、電極を印刷乾燥するまでの工程に関しては省略し(図7(c)〜(e)対応部分)、テクスチャー構造を形成しない場合の完成した状態である図8(f)を示した。
【0078】
現在最も量産されている太陽電池セルは、多結晶シリコン基板もしくは単結晶シリコン基板を用いたシリコン結晶系の太陽電池セルであり、厚さ数百μm厚のp型シリコン基板を用いている場合が多い。以下の説明ではp型のシリコン結晶系基板を例に説明する。
【0079】
図7(a)に示すp型シリコン基板101を用いて、次の工程(図7(b))では鋳造インゴットからスライスした際に発生するシリコン表面のダメージ層を、例えば、数〜20wt%の苛性ソーダ水溶液や炭酸苛性ソーダ水溶液で10〜20μm厚除去した後、同様のアルカリ低濃度液にIPA(イソプロピルアルコール)を添加した溶液で異方性エッチングを行い、シリコン面が出るようにテクスチャー構造102を形成する。太陽電池セルは、一般には例えば特許第3602323号に記載されている様に表面側にはテクスチャー構造を形成することにより高効率化が図られる。
【0080】
続いて、図7(c)ではオキシ塩化リン(POCl)、窒素、酸素の混合ガス雰囲気において800〜900℃で数十分の処理を行って、表面に一様にn型層103を形成する。シリコン表面に一様に形成されたn型層103のシート抵抗の範囲が30〜80Ω/□で良好な太陽電池セルの電気特性が得られる。この際、n型層103は基板表面全面に形成されるため、裏面側のn型層103を除去する必要がある。そこで、例えば光入射面側n層を保護するために、高分子レジストペーストをスクリーン印刷法で付着乾燥させた後、シリコン裏面等の所望以外のシリコン表面に形成されたn型層を、20wt%水酸化カリウム溶液中へ数分間浸漬して除去し、レジストを有機溶剤で除去する。
【0081】
さらに、図7(d)では、2層構成の反射防止膜104の形成を説明する。窒化ケイ素からなる窒化ケイ素膜(2層構成の反射防止膜の一部)の104aをn型層103表面に一様な厚さを形成する。例えば窒化ケイ素膜104aではSiHとNHの混合ガスを原料とするプラズマCVD法により、上記混合ガス流量比NH/SiHが0.05〜1.0、反応室の圧力が0.1〜2Torr、成膜時の温度が300〜550℃、プラズマの放電のための周波数が100kHz以上の条件であり、最適な反射防止膜の屈折率の範囲は1.60〜2.70、より好ましくは1.8〜2.7であり膜厚の範囲は70〜90nmである。
【0082】
更に、酸化ケイ素からなる酸化ケイ素膜104bを上記窒化ケイ素膜104a表面に上に形成する。例えばSiH、OとAr又はHeの混合ガスで、混合ガスを原料とするプラズマCVD法により、上記混合ガス流量比SiH/O/Ar(He)が1/1.5〜2.0/1.5〜2.0、反応室の圧力が0.005〜2Torr、成膜時の温度が300〜550℃、プラズマの放電のための周波数が100kHz以上の条件であり、膜厚の範囲は10Å〜100Åである。なお、屈折率は1.45〜1.55とする。
【0083】
次に、図7(e)では表面電極用ペースト105をスクリーン印刷法で付着乾燥させる。この場合、表面電極用ペースト105が反射防止膜(詳しくは、酸化ケイ素膜104b)104上に形成されている。次いで、裏面側においても表面側と同様に、裏面用アルミペースト106を印刷乾燥させる。
【0084】
図7(f)は電極を焼成し太陽電池セルとして完成した状態である。600〜900℃の温度範囲で数分間焼成すると、表面側では表銀ペースト中に含まれているガラス材料によって絶縁膜である反射防止膜が溶融、さらにシリコン表面も一部溶融している間に銀材料がシリコンと接触部を形成し凝固することによって電気的な接触が可能となる。本現象により表銀電極とシリコンの導通が確保されるのである。一方、裏面側ではアルミペースト中のアルミが裏面側のシリコンと反応してp+層を形成し発電能力を改善するBSF (Back Surface Field)層109を形成する。
【0085】
続けて、図7(f)に示す太陽電池セル上に、本発明におけるライトトラッピングフィルムを貼り付けることで、本発明の太陽電池モジュールを得ることができる。
なお、反射防止膜が混晶体からなる場合も、原料成分としてSiHとNHとOの混合ガスを原料として用い、窒化ケイ素膜と同様にプラズマCVD法で形成することで反射防止膜を形成できる。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
<太陽電池セルの製造>
上述したように、通常の方法により、p型シリコン基板上にn型層を形成したものを作成し、上記n型層の上に下記の条件により、反射防止膜形成した。
【0088】
詳しくは、図7(a)に示すp型シリコン基板101を用い、鋳造インゴットからスライスした際に発生するシリコン表面のダメージ層を、5wt%の苛性ソーダ水溶液で5μm厚除去した後、同様のアルカリ低濃度液にIPA(イソプロピルアルコール)を10wt%となるように添加した溶液で異方性エッチングを行い、シリコン111面が出るようにテクスチャー構造102を形成した。
【0089】
続いて、図7(c)に示すように、オキシ塩化リン(POCl)、窒素、酸素の混合ガス雰囲気において800℃で30分の処理を行って、表面に一様にn型層103を層厚50nmで形成した。シリコン表面に一様に形成されたn型層103のシート抵抗は80Ω/□であった。この際、n型層103は基板表面全面に形成されるため、裏面側のn型層103を除去するために、以下の処置をした。光入射面側n層を保護するために、高分子レジストペーストをスクリーン印刷法で付着乾燥させた後、シリコン裏面等の所望以外のシリコン表面に形成されたn型層を、20wt%水酸化カリウム溶液中へ5分間浸漬して除去し、レジストを有機溶剤で除去する。
【0090】
さらに、図7(d)では、窒化ケイ素からなる窒化ケイ素膜104aをn型層103表面に一様な厚さを形成する。具体的には、SiHとNHの混合ガスを原料とするプラズマCVD法により、上記混合ガス流量比NH/SiHが4/3.3、反応室の圧力が10−3Torr、成膜時の温度が500℃、プラズマの放電のための周波数が100kHzの条件で、屈折率1.9、膜厚120nmの窒化ケイ素膜を形成した。
【0091】
更に、酸化ケイ素からなる酸化ケイ素膜104bを、下記の条件で窒化ケイ素膜104a表面に上に形成する。SiH、OとAr又はHeの混合ガスで、混合ガスを原料とするプラズマCVD法により、上記混合ガス流量比SiH/O/Arが1/1/1、反応室の圧力が10−3Torr、成膜時の温度が600℃、プラズマの放電のための周波数が100kHzの条件で、屈折率1.49で、膜厚50Åの酸化ケイ素膜を形成した。
【0092】
次に、図7(e)に示すように表面電極用ペースト105をスクリーン印刷法で付着乾燥させる。この場合、表面電極用ペースト105が酸化ケイ素膜104b上に形成されている。次いで、裏面側においても表面側と同様に、裏面用アルミペースト106を印刷乾燥させる。
【0093】
図7(f)は電極を焼成し太陽電池セルとして完成した状態である。800℃の温度範囲で1分間焼成し、表面側では表銀ペースト中に含まれているガラス材料によって絶縁膜である反射防止膜が溶融、さらにシリコン表面も一部溶融している間に銀材料がシリコンと接触部を形成し凝固することによって電気的に接触した。本現象により表銀電極とシリコンの導通が確保されるのである。一方、裏面側ではアルミペースト中のアルミが裏面側のシリコンと反応してp+層を形成し発電能力を改善するBSF (Back Surface Field)層109が形成された。
【0094】
<太陽電池モジュールの製造>
続けて、図7(f)に示す太陽電池セル上に、本発明における下記のライトトラッピングフィルムを貼り付ける。その構成は、図1が参考にできる(図1においては、図8(f)に示す太陽電池セル上にライトトラッピングフィルムを貼り付けたものである)。
1)型フィルム用の感光性樹脂組成物の調製
バインダ樹脂としてのアクリルアクリレート(商品名:ヒタロイドHA7885、日立化成工業(株)製):50質量部、架橋性モノマとしてのEO変性フェノールAジメタクリレート(商品名:ファンクリルFA−321M、日立化成工業(株)製):50質量部、及び光開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製):3.0質量部、を有機溶媒のメチルエチルケトンに溶かしワニス(感光性樹脂組成物)とした。このワニスをシリコンウエハ上に約5000Åとなるように膜を形成し、エリプソメーターで屈折率を測定したところ1.48であった。
【0095】
2)型フィルムの作製
有効面積が155mm角であり、底辺20μm、高さ10μmの四角錘が隙間なく形成されている金型上に、上記感光性樹脂組成物を1〜2滴、滴下し、50μm厚の両面易接着処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製、商品名:A−4300)をこの上に載せた。感光性樹脂組成物とPETフィルムの間に気泡が入らないようにローラーで気泡を取り除き、PET側からUV光を照射した。金型からPETフィルムを剥がすことにより、凹形状の四角錘型フィルムを得た。得られた型フィルムの四角錐寸法は、金型と同じである。
なお、型フィルムの屈折率は1.5であった。
【0096】
3)ライトトラッピングフィルム用の樹脂組成物の調製
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、2−ヒドロキシエチルアクリレート 115質量部(ヒドロキシル基:1.0当量)、1,9−ノナンジオールと2−メチル−1,8−オクタンジオールとジフェニルカーボネートからなるポリカーボネートジオール(クラレ(株)製、商品名:PNOC−2000、数平均分子量:約2000)4000質量部(ヒドロキシル基:4.0当量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製)0.5質量部、ジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名:L101)5.0質量部、トルエン 4000質量部を仕込み、70℃に昇温後、70〜75℃で30分間保温し、これに、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト(住友バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュール W)650質量部(イソシアネート基:5.0当量)及びトルエン 300質量部の混合液体を70〜75℃で3時間かけ均一滴下し、反応させた。
【0097】
滴下完了後、70〜75℃で約5時間保温して反応させ、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認した後、反応を終了させた。さらに、イルガキュア−184(チバガイギー(株)製)30質量部、チタニウムテトライソプロポキシドを8000質量部、日立化成工業(株)製FA−712HMを1600質量部、第一工業製薬(株)製PET−3を3200質量部、ジエタノールアミンを3000質量部を加え攪拌・溶解し、ウレタン系UV硬化樹脂組成物を得た。
【0098】
4)集光(半硬化)フィルムの作製
PETフィルム(基材)の上、に上記ライトトラッピングフィルム用のウレタン系UV硬化樹脂組成物をアプリケータにより塗布し、80〜100℃の熱風対流式乾燥機を通過させ、約10分間かけて乾燥し、半硬化状態のフィルムを得た。塗膜上には、セパレータフィルムとして、PPフィルムで半硬化状態のフィルムを保護した。
【0099】
5)ライトトラッピングフィルムの凹凸形状形成
上記で得られた太陽電池セル上に、上記ライトトラッピングフィルムのセパレータフィルムを剥がしてから載せ、真空ラミネータを用いて、ラミネートした。さらに半硬化状態のフィルムの基材であるPETを剥がし、上記型フィルムの凹凸面を半硬化状態のフィルムに押し当てるようにして、さらに真空ラミネータに通し、微細な凹凸形状を半硬化状態のフィルムへ転写した。このとき、ライトトラッピングフィルムは、底辺が20μm、高さが10μmの四角錐が隙間なく形成され、また台座部分の厚みは10μmであった。
【0100】
さらに、露光装置により光照射し、フィルムを硬化させ、ライトトラッピングフィルムとした。真空ラミネータは、(株)名機製作所製のものを用い、ラミネート、形状転写条件は、いずれも75℃、圧力は0.4MPa、時間は45秒とした。露光機は、高圧水銀灯で、露光条件は1000mJ/cmとした。
ライトトラッピングフィルムの屈折率は1.7であった。
【0101】
(実施例2)
実施例1で得られた太陽電池モジュールにおいて、ライトトラッピングフィルムを設けないもの、反射防止膜において酸化ケイ素膜を設けないもの、また酸化ケイ素膜の膜厚を5Å、10Å、100Åと変化させた以外は同様にして下記の太陽電池モジュールを製造し、短絡電流密度の評価を行った。
なお、短絡電流密度は、ワコム製ソーラーシミュレータ、ワコム製I−V測定器を用いて評価した。I−V測定器により、短絡電流密度、開放電圧、曲線因子、変換効率が一度に測定可能である。
(1)リファレンス:ライトトラッピングフィルムを貼り付けないもの
(2)酸化ケイ素膜なしで、窒化ケイ素膜(120nm)のみの構成
(3)酸化ケイ素膜(5Å)形成し、窒化ケイ素膜(120nm)の構成
(4)酸化ケイ素膜(10Å)形成し、窒化ケイ素膜(120nm)の構成
(5)酸化ケイ素膜(100Å)形成し、窒化ケイ素膜(120nm)の構成
【0102】
ライトトラッピングフィルムを貼り付けたことにより、短絡電流密度が改善され、貼り付けないものと比較して0.5mA/cm増加し、変換効率としては0.3ポイント(%)改善されたことがわかる。
【0103】
図9に、酸化ケイ素膜の効果を確認するために、酸化ケイ素膜の膜厚をパラメータとしたきのJIS−C8917 耐湿性試験B−2に準処して劣化の時間依存性を調べたものを示す。
【0104】
図9に示されるように、耐湿性の点では、酸化ケイ素膜の膜厚が5Åで劣化は抑制されるが、ライトトラッピングフィルムを貼り付けない耐湿性レベルに匹敵するには10Åの膜厚が必要であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明により、耐湿性劣化が抑制され、且つ光利用率(発電効率)が向上した太陽電池モジュール及び太陽電池セルを提供できる。
【符号の説明】
【0106】
100:太陽電池セル
101:p型シリコン基板
102:テクスチャー構造
103:n型層
104:反射防止膜
104a:窒化ケイ素膜
104b:酸化ケイ素膜
105:表面電極用銀ペースト
106:裏面電極用アルミペースト
107:表面電極
108:裏面電極
109:p+層(BSF:Back Surface Field層)
200:太陽電池モジュール
201:保護ガラス(カバーガラス)
202:封止材
203:タブ線
204:バックフィルム
300:ライトトラッピングフィルム
300a:硬化前のライトトラッピングフィルム
300b:硬化後のライトトラッピングフィルム
301:型フィルム
302:ライトトラッピングフィルム、凹凸部分
303:ライトトラッピングフィルム、台座部分
304:PETフィルム(基材)
305:半硬化状態の樹脂組成物層
306:PPフィルム(セパレータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトトラッピングフィルムを含む複数の光透過性層と、光入射面側に反射防止膜を有する太陽電池セルと、を有する太陽電池モジュールであって、
前記ライトトラッピングフィルムは、前記反射防止膜よりも光入射側に形成され、
前記ライトトラッピングフィルムが、微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であり、
【数1】

(上記式中、Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である)
前記反射防止膜は、窒化ケイ素からなる窒化ケイ素膜と、酸化ケイ素からなる酸化ケイ素膜と、を有し、且つ前記酸化ケイ素膜は、前記窒化ケイ素膜の光入射側に形成されることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記窒化ケイ素膜が、Si、N及びHで構成された、屈折率が1.60〜2.70の範囲であり、
前記酸化ケイ素膜が、Si、O及びHで構成された、屈折率が1.45〜1.55の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記酸化ケイ素膜が、前記窒化ケイ素膜の光入射側に10Å以上の膜厚で構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記酸化ケイ素膜が、前記窒化ケイ素膜の光入射側に10Å以上100Å以下の膜厚で構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記窒化ケイ素膜が、SiHとNHとの混合ガスを原料とするプラズマCVD法により、上記混合ガス流量比NH/SiHが0.05〜1.0、反応室の圧力が0.1〜2Torr、成膜時の温度が300〜550℃、プラズマの放電のための周波数が100kHz以上の条件の下で形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記酸化ケイ素膜が、SiHと、Oと、Ar又はHeと、の混合ガスで、該混合ガスを原料とするプラズマCVD法により、上記混合ガス流量比SiH/O2/Ar(He)が1/1.5〜2.0/1.5〜2.0、反応室の圧力が0.005〜2Torr、成膜時の温度が300〜550℃、プラズマの放電のための周波数が100kHz以上の条件の下で形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
ライトトラッピングフィルムを含む複数の光透過性層と、光入射面側に反射防止膜を有する太陽電池セルと、を有する太陽電池モジュールであって、
前記ライトトラッピングフィルムは、前記反射防止膜よりも光入射側に形成され、
前記複数の光透過性層を、光入射側から層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・、nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立ち、
前記ライトトラッピングフィルムが、微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であり、
【数2】

(上記式中、Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である)
前記反射防止膜は、窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記反射防止膜が、Si、O、N及びHで構成された、屈折率が1.45〜2.70の範囲である窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記反射防止膜の窒化ケイ素膜の屈折率又は前記混晶体からなる反射防止膜は、前記ライトトラッピングフィルムの屈折率よりも大きいことを特徴とする請求項1又は7に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であるライトトラッピングフィルムを有する太陽電池モジュール用の、光入射面側に反射防止膜を有する太陽電池セルであって、
【数3】

(上記式中、Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である)
前記反射防止膜は、窒化ケイ素からなる窒化ケイ素膜と、酸化ケイ素からなる酸化ケイ素膜と、を有し、且つ前記酸化ケイ素膜は、前記窒化ケイ素膜の光入射側に形成されることを特徴とする太陽電池セル。
【請求項11】
微細な凸又は凹形状の多角錐又は円錐が隙間なく多数敷き詰めるように形成されており、且つ屈折率が1.55〜2.40であり、チタニウムテトラアルコキシドを用いた有機−無機ハイブリッド組成物で構成され、下記式で表される規格化吸光度aが波長400〜1200nmにおいて0.1以下であるライトトラッピングフィルムを有する太陽電池モジュール用の、光入射面側に反射防止膜を有する太陽電池セルであって、
【数4】

(上記式中、Tは透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である)
前記反射防止膜は、窒化ケイ素と酸化ケイ素との混晶体からなることを特徴とする太陽電池セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−222752(P2011−222752A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90403(P2010−90403)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】