説明

太陽電池モジュール製造装置

【課題】球状シリコンセルで構成された光起電力素子を用いた太陽電池モジュールを、封止材における皺の発生等を生じることなく連続して製造することができるようにする。
【解決手段】表面側部材合成部11、裏面側部材合成部12、加熱ローラ15〜17、加圧ベルト18〜20を備えた。表面側部材合成部11は、受光面シート121に表面封止材シート122を加熱接着して表面側部材120を形成する。裏面側部材合成部12は、バックシート131に裏面封止材シート132を加熱接着して裏面側部材130を形成する。加熱ローラ15〜17及び加圧ベルト18〜20は、光起電力素子110を表面封止材シート122と裏面封止材シート132との間に挟んだ表面側部材120及び裏面側部材130を、加熱及び加圧しつつ搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可撓性を有する太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーストレートモジュールの太陽電池は、受光面側の強化ガラス基板上に光起電力素子を形成するため軽量化が困難であるだけでなく、枚葉製造となるため製造効率を容易に向上することができない。そこで、特許第3490969号に開示されている球状シリコンセル等の可撓性を有する太陽電池セルによって光起電力素子を構成し、その受光面を透光性フィルムで被覆した太陽電池モジュールが用いられている。光起電力素子を球状シリコンセルで構成することにより、シリコンの使用量を減らす効果もある。
【0003】
受光面を透光性フィルムで構成した太陽電池モジュールの製造方法として、フィルム状の表面側保護部材と裏面側保護部材との間に表面側封止材及び裏面側封止材とともに光起電力素子を封止する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
保護部材は、フィルム状の樹脂である。封止材は、フィルム状の熱可塑性接着樹脂である。表面側保護部材及び表面側封止材と裏面側封止材及び裏面側保護部材とをそれぞれ光起電力素子の上下に供給し、これらを複数の熱ローラ対の間に通過させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−273374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、封止材に用いられるエチレンビニルアセテート(EVA)等の樹脂は、弾性係数が小さく伸縮性が大きいため、張力を一定に維持して搬送することが難しい。特許文献1に記載された太陽電池モジュールの製造方法では、表面側及び裏面側の保護部材、表面側及び裏面側の封止材、並びに光起電力素子の計5層を1度にラミネートするため、封止材単独での搬送距離が長くなる。封止材の搬送中の取り扱いが困難になるだけでなく、封止材の張力が不均一になり、皺の発生等により製品に不良を生じ易い。
【0007】
この発明の目的は、可撓性を有する太陽電池セルで構成された光起電力素子を用いた太陽電池モジュールを、封止材における皺の発生等を生じることなく連続して製造することができる太陽電池モジュール製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、表面側部材合成部、裏面側部材合成部、加熱ローラ、加圧ベルトを備えている。表面側部材合成部は、受光面シートに表面封止材シートを加熱接着して表面側部材を形成する。裏面側部材合成部は、バックシートに裏面封止シートを加熱接着して裏面側部材を形成する。加熱ローラは、周面を表面封止材シート及び裏面封止シートを溶融可能な温度にして回転する。加圧ベルトは、加熱ローラの周方向における周面の一部に圧接する搬送経路を含む循環経路を移動する。加熱ローラ及び加圧ベルトは、表面封止材シートと裏面封止材シートとの間に光起電力素子を挟んだ状態で、表面側部材、光起電力素子及び裏面側部材を搬送経路に沿って搬送しつつ加熱及び加圧する。
【0009】
この構成では、受光面シート及びバックシートのそれぞれに封止材シートを加熱接着して表面側部材及び裏面側部材を形成した後に、互いの間に光起電力素子を挟んだ状態で加熱ローラと加圧ベルトとによって両者を加熱する。弾性係数が小さく伸縮性が大きい封止材は、受光面シート及びバックシートのそれぞれに接着した状態で加熱部に搬送される。封止材は、搬送中における伸縮を受光面シート及びバックシートによって規制され、張力の変動を生じることがない。また、光起電力素子を挟んだ表面側部材及び裏面側部材表は、加熱ローラと加熱ベルトとの間を搬送される間に加熱及び加圧され、面封止材シート及び裏面封止材シートによって光起電力素子を確実に封止する。
【0010】
この構成において、表面側部材合成部と加熱ローラ及び加圧ベルトとの間で表面側部材を加熱する第1の予備加熱部と、裏面側部材合成部と加熱ローラ及び加圧ベルトとの間で裏面側部材を加熱する第2の予備加熱部材と、を備えることが好ましい。表面側部材及び裏面側部材の温度を加熱ローラ及び加圧ベルトに達する前に上昇させておくことで急激な温度上昇を防止し、加熱ローラの加熱によって表面封止材及び裏面封止材に発生した気泡を抜き易くすることができる。
【0011】
また、第2の予備加熱部は、裏面側部材上に光起電力素子が載置される載置位置と加熱ローラ及び加圧ベルトとの間に配置することが好ましい。表面側部材と裏面側部材との間に封止すべき光起電力素子の温度をも加熱ローラによる加熱前に上昇させておくことができる。
【0012】
なお、加熱ローラ及び加圧ローラは、搬送経路に沿って複数配置することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、可撓性を有する太陽電池セルを密封した後に加圧ローラをして連続的に加圧することで、封止材の架橋反応時に発生する気泡による皺やカールの発生を生じることなく連続して可撓性を有する太陽電池セルを用いた太陽電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態に係る製造装置が製造する太陽電池モジュールの断面図である。
【図2】この発明の実施形態に係る太陽電池モジュール製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、太陽電池モジュール100は、光起電力素子である球状シリコンセルユニット110を表面側部材120と裏面側部材130との間に封止して構成されている。表面側部材120は、受光面シート121の内側に表面封止材122を備えている。裏面側部材130は、バックシート131の内側に裏面封止材132を備えている。
【0016】
球状シリコンセルユニット110の厚さは、2mm程度である。受光面シート121及びバックシート131の厚さは、50μm程度である。表面封止材122及び裏面封止材132の厚さは、500μm程度である。
【0017】
表面封止材122及び裏面封止材132は、一例としてEVAであり、90℃程度で溶融して受光面シート121及びバックシート131に接着する。また、一例として15分間にわたって150℃に維持することで、架橋反応を生じる。
【0018】
図2に示すように、この発明の実施形態に係る太陽電池モジュール製造装置1は、表面部材合成部11、裏面部材合成部12、第1の予備加熱部13、第2の予備加熱部14、加熱ローラ15〜17、加圧ベルト18〜20を備えている。
【0019】
表面部材合成部11は、供給ローラ21及び22、加熱ローラ対23を備えている。供給ローラ21及び22のそれぞれは、受光面シート121及びシート状の表面封止材122を巻回している。加熱ローラ対23は、供給ローラ21及び22のそれぞれから繰り出された受光面シート121及び表面封止材122を一例として90℃で加熱し、受光面シート121の内側面に表面封止材122を仮接着して表面側部材120を形成する。
【0020】
裏面部材合成部12は、供給ローラ31及び32、加熱ローラ対33を備えている。供給ローラ31及び32のそれぞれは、バックシート131及びシート状の裏面封止材132を巻回している。加熱ローラ対33は、供給ローラ31及び32のそれぞれから繰り出されたバックシート131及び裏面封止材132を一例として90℃で加熱し、受光面シート131の内側面に表面封止材132を仮接着して裏面側部材130を形成する。
【0021】
表面封止材122及び裏面封止材132であるEVA等の接着性樹脂は、弾性係数が小さく伸縮性が大きいため、搬送中に張力を一定に維持することが難しく、皺等の変形を生じる可能性が高い。太陽電池モジュール製造装置1では、表面部材合成部11及び裏面部材合成部12で、供給ローラ22及び32から繰り出された直後の表面封止材122及び裏面封止材132を比較的伸縮性の小さい受光面シート121及びバックシート131に仮接着する。表面封止材122及び裏面封止材132は、受光面シート121及びバックシート131によって搬送中の張力の変動や変形を規制され、搬送時の取り扱いが容易になり、加熱ローラ対15Aに向けて正確に搬送することができる。
【0022】
予備加熱部13は、例えば赤外線ヒータで構成され、表面側部材合成部11と加熱ローラ対15Aとの間に配置され、表面側部材120を一例として130℃程度に加熱する。予備加熱部14は、例えば赤外線ヒータで構成され、裏面側部材合成部12と加熱ローラ対15Aとの間で載置位置17の下流側に配置され、球状シリコンセルユニット110が載置された裏面側部材130を一例として130℃程度に加熱する。
【0023】
表面封止材122及び裏面封止材132であるEVA等の接着性樹脂は、架橋反応温度まで急峻に加熱すると急激に流動化し、架橋反応時に生じる気泡が抜け難くなる。太陽電池モジュール製造装置1では、表面側部材120及び裏面側部材130を加熱ローラ対15Aに達する前に予備加熱部13及び14によって130℃程度まで昇温し、表面封止材122及び裏面封止材132を徐々に軟化させる。加熱ローラ対15A〜15Kの加熱による表面封止材122及び裏面封止材132の架橋反応時に生じる気泡を外部に容易に排出することができる。
【0024】
加熱ローラ15〜17は、一例として互いに同一径に形成されており、図示しない駆動源から回転が伝達され、それぞれR1〜R3方向に回転する。加熱ローラ対15A〜15Kのそれぞれは、表面温度が一例として150℃にされている。加熱ローラ15及び加熱ローラ17は、搬送方向Xについて互いの間に直径よりも小さい間隙を設けて、互いの回転軸を結ぶ線が水平となる位置に配置されている。加熱ローラ16は、加熱ローラ15及び加熱ローラ17の上方で、加熱ローラ15及び加熱ローラ17に当接する位置に配置されている。
【0025】
加圧ベルト18は、ローラ181〜183に張架されており、加熱ローラ15の回転に伴って、加熱ローラ15の周面の一部に略90度の角度範囲に圧接する経路を含む循環経路に沿って矢印L1方向に移動する。加圧ベルト19は、ローラ191〜196に張架されており、加熱ローラ16の回転に伴って、加熱ローラ16の周面の一部に略180度の角度範囲に圧接する経路を含む循環経路に沿って矢印L2方向に移動する。加圧ベルト20は、ローラ201〜203に張架されており、加熱ローラ17の回転に伴って、加熱ローラ17の周面の一部に略90度の角度範囲に圧接する経路を含む循環経路に沿って矢印L3方向に移動する。
【0026】
表面側部材合成部11で形成された表面側部材120は、予備加熱部13を経由して加熱ローラ15の周面に上方から導かれる。裏面側部材合成部12で形成された裏面側部材130は、裏面封止材132上に球状シリコンセルユニット110が載置された後に、予備加熱部14を経由して、加熱ローラ15の周面に水平方向から導かれる。
【0027】
表面側部材120は、加熱ローラ15の周面に沿って略90℃の角度範囲にわたって矢印R1方向に移動した後、表面封止材シート122と裏面封止材シート132との間に球状シリコンセルユニット110を挟む状態で裏面側部材130とともに加熱ローラ15と加圧ベルト198との間に導かれる。
【0028】
表面側部材120、球状シリコンセルユニット110及び裏面側部材130は、加熱ローラ15と加圧ベルト18との間で加熱ローラ15の周面の略90度の角度範囲を矢印R1方向に沿って搬送される。
【0029】
表面側部材120、球状シリコンセルユニット110及び裏面側部材130は、加熱ローラ15と加圧ベルト18との間を通過すると、加熱ローラ15の周面に沿って加熱ローラ15と加熱ローラ16との当接位置を経由した後、加熱ローラ16の周面に沿って加熱ローラ16と加圧ベルト19との間に搬送される。
【0030】
表面側部材120、球状シリコンセルユニット110及び裏面側部材130は、加熱ローラ16と加圧ベルト19との間で加熱ローラ16の周面の略180度の角度範囲を矢印R2方向に沿って搬送される。
【0031】
表面側部材120、球状シリコンセルユニット110及び裏面側部材130は、加熱ローラ16と加圧ベルト19との間を通過すると、加熱ローラ16の周面に沿って加熱ローラ16と加熱ローラ17との当接位置を経由した後、加熱ローラ17の周面に沿って加熱ローラ17と加圧ベルト20との間に搬送される。
【0032】
表面側部材120、球状シリコンセルユニット110及び裏面側部材130は、加熱ローラ17と加圧ベルト20との間で加熱ローラ17の周面の略90度の角度範囲を矢印R3方向に沿って搬送される。
【0033】
表面側部材120、球状シリコンセルユニット110及び裏面側部材130は、加熱ローラ15〜17のそれぞれの周面に沿って搬送される間に、加熱ローラ15及び加熱ローラ17によって表面側部材120側から加熱され、加熱ローラ16によって裏面側部材130側から加熱される。この間に、表面側部材120、球状シリコンセルユニット110及び裏面側部材130は、加熱ローラ15〜17と加圧ベルト18〜20との間で加圧される。
【0034】
加熱ローラ15と加圧ベルト18との圧接部分に進入した後、加熱ローラ17と加圧ベルト20との圧接部分を通過するまでの間で、球状シリコンセルユニット110を挟んだ表面側部材120及び裏面側部材130の温度を、表面封止材122及び裏面封止材132の架橋温度に維持することができる。
【0035】
球状シリコンセルユニット110を挟んだ表面側部材120及び裏面側部材130は、加熱ローラ17と加圧ベルト20との圧接部分を通過した時点で球状シリコンセルユニット110を確実に封止し、太陽電池モジュール100となる。太陽電池モジュール100は、図示しない冷却部で冷風により、又は自然放熱により冷却された後、所定の長さに切断される。
【0036】
表面側部材120は、加熱ローラ15と加圧ベルト18との圧接部分に進入する前に、略90度の角度範囲で加熱ローラ15によって加熱されており、表面封止材シート122の厚さ方向について受光面シート121側の封止材は架橋反応を開始する。表面封止材シート122の封止材は、裏面封止材シート132との間に球状シリコンセルユニット110を挟持した後に全体が急激に架橋反応を開始することがなく、気泡の密生による封止不良を確実に防止できる。
【0037】
また、球状シリコンセルユニット110を表面側部材120と裏面側部材130との間に密封した後に、加熱ローラ15〜17と加圧ベルト18〜20と間で連続して加圧することにより、封止材の架橋反応時に発生する気泡による皺やカールの発生を確実に防止できる。
【0038】
この実施形態では、3個の加熱ローラ15〜17及び3個の加圧ベルト18〜20を備えているが、加熱ローラ及び加圧ベルトを少なくとも1個ずつ備えたものであればよい。
【0039】
また、上記の実施形態では、光起電力素子として球状シリコンセルを用いたが、これに限るものではなく、可撓性を有する他の光起電力素子を用いることができる。
【0040】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1−太陽電池モジュール製造装置
11−表面側部材合成部
12−裏面側部材合成部
13−第1の予備加熱部
14−第2の予備加熱部
15〜17−加熱ローラ
18〜20−加圧ベルト
100−太陽電池モジュール
110−球状シリコンセル
120−表面側部材
121−受光面シート
122−表面封止材
130−裏面側部材
131−バックシート
132−裏面封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面シートに表面封止材シートを加熱接着して表面側部材を形成する表面側部材合成部と、
バックシートに裏面封止シートを加熱接着して裏面側部材を形成する裏面側部材合成部と、
周面を前記表面封止材シート及び前記裏面封止シートを溶融可能な温度にして回転する加熱ローラと、
前記加熱ローラの周方向における周面の一部に圧接する搬送経路を含む循環経路を移動する加圧ベルトと、を備え、
前記加熱ローラ及び前記加圧ベルトは、前記表面封止材シートと前記裏面封止材シートとの間に前記光起電力素子を挟んだ状態で、前記表面側部材、前記光起電力素子及び前記裏面側部材を前記搬送経路に沿って搬送しつつ加熱及び加圧する太陽電池モジュール製造装置。
【請求項2】
前記表面側部材合成部と前記加熱部との間で前記表面側部材を加熱する第1の予備加熱部と、
前記裏面側部材合成部と前記加熱部との間で前記裏面側部材を加熱する第2の予備加熱部材と、を備えた請求項1に記載の太陽電池モジュール製造装置。
【請求項3】
前記第2の予備加熱部は、前記裏面側部材上に前記光起電力素子が載置される載置位置と前記加熱部との間に配置した請求項2に記載の太陽電池モジュール製造装置。
【請求項4】
回転軸を互いに平行に配置された複数の前記加熱ローラであって、隣接する2個が周面を当接させた複数の前記加熱ローラと、
前記複数の加熱ローラのそれぞれの周面の一部に個別に圧接する複数の前記加圧ベルトと、を備えた請求項1〜3の何れかに記載の太陽電池モジュール製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−253051(P2012−253051A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122060(P2011−122060)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000108753)タツモ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】