説明

太陽電池モジュール

【課題】低コストで容易に製造できるとともに、発電効率が優れた太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】太陽電池モジュール1では、保護ガラス11を介して波長変換層9に入射した光のうち、400nm以上の光は、波長変換されず、そのまま太陽電池7に入射する。また、この波長変換層9に入射した光のうち、波長400nm未満の光は、ナノ粒子に吸収され、波長585nmの光に変換される。そして、波長変換された光は封止材層7を介して太陽電池7に入射する。更に、波長変換された光のうち、一部が反射して保護ガラス11に入射し、保護ガラス11内で全反射され、側端側に集光される。この側端に集光された光は、反射層19で反射し、波長変換層9を通過して太陽電池7に入射する。これにより、光の有効利用ができ、発電効率が高いという顕著な効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池の発電効率を改善することができる太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽などの光によって発電を行う太陽電池は、光の全波長域に対して同一の発電効率を持つわけではなく、材料自体の特性によって最大効率の波長域が、ある程度限定されている。従って、太陽電池の効率を追求する場合、どうしても利用できる波長域が狭くなる傾向がある。
【0003】
そこで、最大効率の波長域が異なる材料の太陽電池を薄膜状にして複数層重ねることによって、利用できる波長域を広げるようにした、所謂、複層太陽電池(タンデム太陽電池)が知られている。
【0004】
また、蛍光光学板等の波長変換板や蛍光色素をガラス基板に塗布した部材を用い、波長変換により太陽光を発電効率の低い波長から発電効率の高い波長に変換し、太陽電池に入射するようにした構造の太陽電池モジュールが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0005】
更に、波長変換板の端面に太陽電池を貼り合わせ、波長変換板の導波作用(全反射)により、側面の太陽電池に光が入射するようにした構造の太陽電池モジュールが知られている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平8−4147号公報
【特許文献2】特開昭57−95675号公報
【特許文献3】特開平11−345993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した複層太陽電池の場合には、複層化に限界があり、しかも、複層化のために製造コストが高くなるという問題があった。また、Ge基板の様なコストが高い材料を使用しなければならず、しかも、GaAs膜を使用するので毒性の問題もある。
【0008】
また、前記波長変換板等を用いる場合には、波長変換板等で波長変換された光は、その約70%が波長変換板等の端面方向に集光するため、太陽電池に入射する光が少ないという問題がある。
【0009】
これを改善するために、前記特許文献2に記載の様に、波長変換板の端面に太陽電池を貼り付けた技術が提案されているが、細長い端面に太陽電池を貼り付ける作業が容易でなく、製造コストが上昇とするという問題がある。
【0010】
また、これらを改良する技術として、特許文献3には、無機蛍光体材料からなる波長変換膜を島状に離して配置し、各波長変換膜の側面を傾斜させるとともに、その傾斜面に反射膜を設けた技術が開示されている。
【0011】
しかしながら、この技術の場合には、島状の波長変換膜の端部が太陽電池の陰になるので、発電効率が低下するという問題があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、低コストで容易に製造できるとともに、発電効率が優れた太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)請求項1の発明は、太陽電池の受光側に光の波長を変換する波長変換層を備えるとともに、該波長変換層の受光側に透光性の保護板を配置した太陽電池モジュールにおいて、 前記太陽電池を平面方向に複数配列するとともに、該複数の太陽電池を覆う様に前記波長変換層を配置し、更に、前記波長変換層を覆う様に前記保護板を配置するとともに、該保護板の平面方向における側端に、該保護板内から該側端に至る光を前記太陽電池側に反射させる様に傾斜した斜面を設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明は、平面方向に配置した複数の太陽電池を覆う様に波長変換層を配置し、更に、この波長変換層を覆う様に(透光性の)保護板を配置するとともに、保護板の側端に斜面を設けている。
【0014】
従って、本発明の太陽電池モジュールでは、保護板を介して波長変換層に入射した光(太陽光)のうち、所定の波長変換されない波長の光(例えば400nm以上の可視光)は、そのまま太陽電池に入射する。また、波長変換層に入射した光のうち、所定の波長変換される光(例えば波長400nm未満の紫外線)は、所定の波長の光(例えば500nm以上の可視光)に変換され、太陽電池に入射する。更に、波長変換された光のうち、一部が反射して保護板に入射し、保護板内で全反射され、側端側に集光される。この側端に集光された光は、斜面で反射して波長変換層を通過して太陽電池に入射する。
【0015】
つまり、本発明では、波長変換層によって、例えば紫外線等の短波長の光が太陽電池で効率的に利用できる長波長の光に変換されるとともに、保護板側に反射した光も斜面で反射して太陽電池に入射するので、光の有効利用ができ、発電効率が高いという顕著な効果を奏する。
【0016】
また、従来の様に、太陽電池の受光側に陰ができることがないので、波長変換層を通過した光は、効率良く太陽電池に入射するという効果がある。
従って、本発明の太陽電池モジュールは、高い発電効率を有するとともに、上述した構造であるので、低コストであり、しかも、その製造が容易であるという利点がある。
【0017】
・なお、前記保護板の端部の斜面の傾斜角θは、平面方向に対して90°を上回り且つ180°を下回る範囲(90°<傾斜角θ<180°)であり、特に、125°<θ<145°の範囲が一層好適である。
【0018】
・また、前記太陽電池としては、例えば薄膜Si、CIGS、CdTe、GaAs、色素増感型、有機色素型などを用いることができる。
(2)請求項2の発明は、前記斜面に、光を反射する反射層を設けたことを特徴とする。
【0019】
本発明では、保護板の側端の斜面に反射層を設けているので、反射層に到達した光を効率よく太陽電池側に反射することができる。
この反射層としては、例えばアルミニウムからなる反射テープを採用できる。また、例えばアルミニウムなどを用いて蒸着やスパッタにより反射層を形成してもよい。
【0020】
(3)請求項3の発明は、前記波長変換層により、波長500nm未満の光を波長500nm以上の光に変換することを特徴とする。
本発明は、波長変換される光の波長と発光する光の波長を例示したものである。例えばSi結晶太陽電池では、図3に示す様に、500nm以上の光を効率良く電気に変換できるので、太陽電池に有効利用できる波長に変換することが発電効率を高める上で有効である。
【0021】
(4)請求項4の発明は、前記波長変換層は、波長変換フィルムからなることを特徴とする。
本発明は、波長変換層を構成する材料を例示したものである。この波長変換フィルムには、波長変換を行う物質が添加されるが、フィルムの基材(ベース)となる材料としては、例えば透光性を有する例えばシリコーン樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0022】
また、フィルム以外には、ガラスや樹脂製の板材や、(波長変換材料を塗布してなる)塗布層を採用できる。例えば、ガラスとしては、例えばシリカ、酸化ホウ素系ガラスを採用でき、樹脂としては、例えばアクリル、ポリカーボネイトを採用できる。
【0023】
(5)請求項5の発明は、前記太陽電池の周囲を透光性を有する封止材で封止するとともに、前記太陽電池の受光側に形成された前記封止材からなる層の受光側に前記波長変換層を配置したことを特徴とする。
【0024】
本発明では、太陽電池の周囲に封止材を配置しているので、太陽電池を容易に且つ確実に固定することができる。
(6)請求項6の発明は、前記太陽電池の受光側に前記波長変換層を密着して配置するとともに、前記太陽電池及び前記波長変換層の周囲を透光性を有する封止材で封止したことを特徴とする。
【0025】
本発明では、太陽電池の受光側に波長変換層を密着して配置するので、外部から受光した光を効率よく太陽電池側に入射することができる。
(7)請求項7の発明は、前記太陽電池の受光側に前記波長変換層を密着して配置するとともに、前記波長変換層の受光側に前記保護板を密着して配置したことを特徴とする。
【0026】
本発明では、太陽電池と波長変換層と保護板とを密着して配置するので、外部から受光した光を効率よく太陽電池側に入射することができる。
(8)請求項8の発明は、前記波長変換層には、波長変換を行う物質として、有機蛍光物質又は無機蛍光物質を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明は、波長変換層の材料を例示したものである。ここで、有機蛍光物質としては、例えばペリレン、ナフタルイミド、Alq3等が挙げられ、無機蛍光物質としては、例えばY23:Eu、ZnS:Mn、ZnSe:Mn等が挙げられる。
【0028】
(9)請求項9の発明は、前記波長変換層には、所定の波長を吸収するナノ粒子が分散して配置されるとともに、該ナノ粒子には、前記吸収される波長より長波長の光を発光する発光中心となる元素を含むことを特徴とする。
【0029】
従って、この波長変換層に光が入射した場合には、波長の短い例えば紫外線などの光を、(発光中心の元素の種類に対応した)それより波長の長い光に変換することができる。つまり、本発明では、通常、Si太陽電池等の太陽電池では有効利用できない紫外線等の短波長の光を、有効利用できる長波長の光に変換できるので、発電効率を高めることができるという顕著な効果を奏する。
【0030】
ここで、ナノ粒子とは、ナノレベル(例えば粒径1〜20nm)の量子ドットの性質を有するものである。
(10)請求項10の発明は、前記ナノ粒子は、セレン化亜鉛(ZnSe)、セレン化カドニウム(CdSe)、硫化カドニウム(CdS)、セレン化亜鉛カドニウム(ZnCdSe)、硫化亜鉛(ZnS)のいずれか1種からなることを特徴とする。
【0031】
本発明は、ナノ粒子の材料として好ましいものを例示したものである。
(11)請求項11の発明は、前記発光中心となる元素は、Mn、Eu、Yb、Tb、Sb、Ag、Cu、Au、Alのいずれか1種であることを特徴とする。
【0032】
本発明は、発光中心となる好ましい元素を例示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1の太陽電池モジュールを板厚方向に(図2A−Aにて)切断した状態を示す説明図である。
【図2】実施例1の太陽電池モジュールの平面図である。
【図3】実施例1で用いる太陽電池の分光感度特性を示すグラフである。
【図4】実施例2の太陽電池モジュールを板厚方向に切断した状態を示す説明図である。
【図5】実施例3の太陽電池モジュールを板厚方向に切断した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明の太陽電池モジュールの実施例について、いくつかの具体的な例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0035】
a)まず、本実施例の太陽電池モジュールの構成について説明する。
図1及び図2に示す様に、本実施例の太陽電池モジュール1は、平面形状が正方形で板状の部材であり、バックシート3の受光側(図1の上方)の表面に、透明な封止材層5内に封止された複数の太陽電池7を備えるとともに、太陽電池7の受光側の表面に光の波長を変換する波長変換層9を備え、更に、波長変換層9の受光側の表面に透明な保護ガラス11を備えている。
【0036】
前記バックシート3、封止材層5、太陽電池7、波長変換層9、及び保護ガラス11からなる積層体13は、平面形状が正方形の枠部15に嵌め込まれている。この枠部15の内側は凹状に形成されており、その内側面17は、上部が(上方ほど内側に傾斜するように)斜めに傾斜するとともに、下部が(厚み方向と)垂直に形成されており、この内側面17には、光を内側に反射する反射層19が形成されている。
【0037】
以下、各構成について説明する。
前記バックシート3は、例えばポリエチレンテレフタレートからなる板状の部材である。
【0038】
前記封止材層5は、太陽電池7の下側の下封止材層13と上側の上封止材層15とからなり、例えば、エチレン−酢酸ビニル重合体又はシリコーン樹脂から構成されている。
前記太陽電池7は、平面形状が正方形であり、バンドギャップ1.1eVのSi単結晶太陽電池(Si太陽電池)である。この太陽電池7は、図3に示す様な分光特性を有している。なお、各太陽電池7は、平面方向に複数(例えば縦4列×横4列)配列されるとともに、電気的に直列に接続されている。
【0039】
前記保護ガラス11は、例えば白板ガラスからなる透明な板材である。特に本実施例では、保護ガラス11の平面方向における(全周の)側端には、図1の上方の方が内側に傾斜した斜面25が形成されている。この斜面25の傾斜角θは、平面方向に対して、90°<傾斜角θ<180°であり、特に、125°<θ<145°の範囲が好適である。
【0040】
前記反射層19は、例えばアルミニウム等の光を反射するテープからなる。なお、アルミニウム等の蒸着やスパッタ等によって反射層19を形成してもよい。
前記波長変換層9は、シリコーン樹脂中に、量子ドットであるナノ粒子が均一に分散されたフィルムであり、波長500nm以上の光の90%以上が透過可能な透光性を有している。
【0041】
このナノ粒子は、直径がナノレベル(例えば1〜20nm)で、その内部に発光中心となる元素(ドーパント)を含むものであり、500nm未満の光を吸収して、それ以上の波長の光(例えば900nm以上の光)を発光可能なものである。
【0042】
ここでは、例えば直径3nmの例えばセレン化亜鉛(ZnSe)からなるナノ粒子を用いるとともに、その内部には、発光中心となるドーパントとして、例えばMnが含まれている。これにより、波長400nm以下の紫外線等の光を吸収して、585nmで発光することができる。
【0043】
なお、ナノ粒子としては、各種の無機材料を採用でき、前記セレン化亜鉛以外に、セレン化カドニウム、硫化カドニウム、セレン化亜鉛カドニウム、硫化亜鉛などを採用できる。また、発光中心となる元素としては、Mn以外に、発光波長に応じて、Eu(発光波長690nm)、Cu(発光波長550nm)、Yb(発光波長900nm)などを採用できる。
【0044】
なお、この波長変換層9としては、上述した構成以外に、太陽電池7で有効利用され難い波長の光を、それより有効利用され易い光に変換する公知の各種の材料を利用できる。
b)次に、本実施例の太陽電池モジュール1の製造方法を説明する。
【0045】
<ナノ粒子溶液の合成>
まず、Znイオン源とSeイオン源とMnイオン源とを用いて、MnをドーピングしたZnSeナノ粒子を、水熱合成法で作製する。
【0046】
詳しくは、まず、Znイオン源と有機系配位子(NアセチルLシステイン:NAC)を、モル比で1:5に配合した溶液(1)を作製する。
次に、Mnイオン源と有機系配位子を、モル比で1:1に配合した溶液(2)を作製する。
【0047】
次に、溶液(1)と溶液(2)を、99:1で、pH1.5〜2の間に保ちながら、混合して、Mn濃度1%の溶液(3)を作る。
次に、この溶液(3)に、NaOHを添加して、pH8.5としての溶液(4)をつくる。
【0048】
次に、この溶液(4)に、Seイオン源を加え、ZnMnSeのプリサーカー溶液(5)をつくる。なお、この溶液(5)のpHは10.5程度にすることが好ましい。
次に、この溶液(5)10ミリリットルを、圧力鍋に入れ、200℃、2気圧に保持し、数分から30分程度加熱することにより、直径数nm〜8nm程度のZnSe:Mnナノ粒子(ナノクラスタ)を合成する。
【0049】
<バインダー混合>
次に、上述の様に合成されたナノ粒子溶液に、バインダーとしてシリコーン樹脂を混合して、ペースト状の混合樹脂材料を作製する。
【0050】
<印刷によるフィルム化>
次に、前記混合樹脂材料を用いて基台上にスクリーン印刷を行って、印刷層を形成し、その印刷層を乾燥して、ナノ粒子を含む(波長変換層9を形成する)フィルムを完成した。
【0051】
<太陽電池モジュール1の形成>
・次に、下側より、バックシート3、下封止材層13、太陽電池7、上封止材層15、(波長変換層9の)フィルム、保護ガラス11を積層して配置し、高温プレスを行い、熱硬化封止を行って積層体13を形成し、その積層体13の周囲に反射テープを貼り付けた後に、外周に枠部15を嵌め込み、太陽電池モジュール1を完成する。
【0052】
c)次に、本実施例による作用効果について説明する。
本実施例の太陽電池モジュール1では、前記図1の上方から保護ガラス11を介して波長変換層9に入射した光(太陽光)のうち、400nm以上の光(可視光)は、波長変換されず、そのまま太陽電池7に入射する(L1)。
【0053】
また、この波長変換層9に入射した光のうち、波長400nm未満の光(紫外線)は、ナノ粒子に吸収され、波長585nmの光に変換される。そして、波長変換された光は上封止材層23を介して太陽電池7に入射する(L2)。
【0054】
更に、波長変換された光のうち、一部が反射して保護ガラス11に入射し、保護ガラス11内で全反射され、側端に集光される。この側端に集光された光は、反射層19で反射し、波長変換層9を通過して太陽電池7に入射する(L3)。
【0055】
つまり、本実施例では、波長変換層9によって、紫外線等の短波長の光が、太陽電池7で効率的に利用できる長波長に光に変換されるとともに、保護ガラス11側に反射した光も反射層19で反射して太陽電池7に入射するので、光の有効利用ができ、発電効率が高いという顕著な効果を奏する。
【0056】
また、従来の様に、太陽電池7に受光側に陰ができることがないので、波長変換層9を通過した光は、効率良く太陽電池7に入射するという効果がある。
つまり、本実施例の太陽電池モジュール1は、高い発電効率を有するとともに、製造コストが低く、しかも、その製造が容易であるという利点がある。
【実施例2】
【0057】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
図4に示す様に、本実施例の太陽電池モジュール31は、下側から、バックシート33と、下封止材層35と、太陽電池37と、波長変換層39と、下封止材層41と、(側端に斜面43が設けられた)保護ガラス45とが積層されたものである。
【0058】
また、これらの積層体47は、その側端に反射層49が形成されるとともに、四角形の枠体51に嵌め込まれている。
特に、本実施例では、太陽電池37の受光側に密着して波長変換層39が配置されるとともに、太陽電池37及び波長変換層39は、両封止材層35、41の間に封止されている。
【0059】
本実施例では、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、太陽電池37と波長変換層39とが密着しているので、一層効率よく光が太陽電池37に入射するという利点がある。
【実施例3】
【0060】
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
図5に示す様に、本実施例の太陽電池モジュール61は、下側から、バックシート63と、封止材層65と、太陽電池67と、波長変換層69と、(側端に斜面71が設けられた)保護ガラス73とが積層されたものである。
【0061】
また、これらの積層体75は、その側端に反射層77が形成されるとともに、四角形の枠体79に嵌め込まれている。
特に、本実施例では、太陽電池67の受光側に密着して波長変換層69が配置されるとともに、波長変換層69の受光側に保護ガラス73が密着している。
【0062】
本実施例では、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、太陽電池67と波長変換層69と保護ガラス73とが密着しているので、一層効率よく光が太陽電池67に入射するという利点がある。
【実施例4】
【0063】
次に、実施例4について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例は、前記実施例1〜3とは異なる材料からなる波長変換層を用いたものである。
【0064】
本実施例では、例えばルミラスG9(商品名)からなる波長変換板を使用できる。この波長変換板は、Tb添加の蛍光ガラス(B23・CaO・SiO2・La23・Tb3+)から構成されており、光の波長400nm以下の紫外線領域で光を吸収し、545nmの波長で蛍光を示す。
【0065】
また、これ以外に、波長変換光学板としては、例えばアクリル(PMMA)からなる透明な樹脂中に、例えばLumogen(商品名:BASF社製)からなる有機蛍光物資(有機蛍光色素)が混入されたものを利用できる。
【0066】
或いは、保護ガラスの厚み方向の表面(例えば太陽電池側の表面)に、有機蛍光色素を塗布して透光性の波長変換層を形成してもよい。この有機蛍光色素としては、例えばPt(TPBP)を使用する。この有機蛍光色素は、600nm以下で光を吸収し、約800nmで発光するため、Si単結晶からなる太陽電池の分光特性において、より発電量の多い光の波長領域を使用することができる。
【0067】
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
なお、以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の具体的な実施例に限定されず、本発明の範囲内でこの他にも種々の形態で実施することができる。
【0068】
(1)例えば、前記実施例1〜4の太陽電池モジュールの保護ガラスの表面に、反射防止膜を形成してもよい。この反射防止膜は、例えばTiO2膜、SiO2膜からなり、例えば真空蒸着法により、交互に積層させて形成することができる。
【0069】
(2)例えば太陽光以外の光も利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1、31、61…太陽電池モジュール
3、33、63…バックシート
5、21、23、35、41、65…封止材層
7、37、67…太陽電池
9、39、69…波長変換層
11、45、73…保護ガラス
19、49、77…反射層
25、43、71…斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の受光側に光の波長を変換する波長変換層を備えるとともに、該波長変換層の受光側に透光性の保護板を配置した太陽電池モジュールにおいて、
前記太陽電池を平面方向に複数配列するとともに、該複数の太陽電池を覆う様に前記波長変換層を配置し、
更に、前記波長変換層を覆う様に前記保護板を配置するとともに、該保護板の平面方向における側端に、該保護板内から該側端に至る光を前記太陽電池側に反射させる様に傾斜した斜面を設けたことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記斜面に、光を反射する反射層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記波長変換層により、波長500nm未満の光を波長500nm以上の光に変換することを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記波長変換層は、波長変換フィルムからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記太陽電池の周囲を透光性を有する封止材で封止するとともに、前記太陽電池の受光側に形成された前記封止材からなる層の受光側に前記波長変換層を配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記太陽電池の受光側に前記波長変換層を密着して配置するとともに、前記太陽電池及び前記波長変換層の周囲を透光性を有する封止材で封止したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記太陽電池の受光側に前記波長変換層を密着して配置するとともに、前記前記波長変換層の受光側に前記保護板を密着して配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記波長変換層には、波長変換を行う物質として、有機蛍光物質又は無機蛍光物質を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記波長変換層には、所定の波長を吸収するナノ粒子が分散して配置されるとともに、該ナノ粒子には、前記吸収される波長より長波長の光を発光する発光中心となる元素を含むことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記ナノ粒子は、セレン化亜鉛、セレン化カドニウム、硫化カドニウム、セレン化亜鉛カドニウム、硫化亜鉛のいずれか1種からなることを特徴とする請求項9に記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記発光中心となる元素は、Mn、Eu、Yb、Tb、Sb、Ag、Cu、Au、Alのいずれか1種であることを特徴とする請求項9又は10に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−216620(P2012−216620A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79922(P2011−79922)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【Fターム(参考)】