説明

太陽電池及びその製造方法

【課題】太陽電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池は、背面電極と、シリコン基板と、ドープシリコン層と、前面電極と、を含む。前記シリコン基板は、第一表面及び第二表面を含む。前記シリコン基板の前記第二表面に複数の断面階段状の凸部又は断面階段状の凹部を有する三次元ナノ構造体は形成される。前記背面電極は、前記シリコン基板の該第一表面とオーミック接触する。前記ドープシリコン層は、前記シリコン基板の第二表面に形成される。前記前面電極は、前記ドープシリコン層の上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は太陽エネルギーを電気エネルギーに変換するものであって、光合成原理を応用した電池である。太陽電池は光起電力効果を利用し、太陽光エネルギーを直接電力に変換する電力機器であり、光電池とも呼ばれる。一般的な一次電池や二次電池のように電力を蓄えるのではなく、光起電力効果により、受けた光エネルギーを即時に電力に変換して出力する。主流のシリコン太陽電池(非特許文献1を参照)の他、様々な化合物半導体などを素材にしたものが実用化されている。
【0003】
図1を参照すると、従来のシリコン太陽電池600は、背面電極60と、シリコン基板62と、ドープシリコン層64と、前面電極66と、を含む。前記シリコン基板62は、対向する第一表面61及び第二表面63を含む。前記第二表面63は、平面である。前記背面電極60は、前記シリコン基板62の第一表面61とオーミック接触するように、該第一表面61に設置される。前記ドープシリコン層64は、前記シリコン基板62の第二表面63と接触するように、該第二表面63に設置される。前記ドープシリコン層64の表面は、平坦な平面構造を有する。前記前面電極66は、前記ドープシリコン層64の前記シリコン基板62と接触する表面とは反対側の表面に配置される。前記シリコン太陽電池600に、前記シリコン基板62と前記ドープシリコン層64は、pn接合を形成する。前記pn接合に太陽光があたると、それが刺激となって、複数の電子と正孔が発生する。前記複数の電子と正孔は、電場の作用で分離し、且つそれぞれ前記背面電極60と前記前面電極66へと移動する。前記シリコン太陽電池600の前記背面電極60及び前記前面電極66の間に負荷を受けると、前記背面電極60及び前記前面電極66の間に外部回路の負荷を通じて電流が流れる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】張明杰等、“太陽電池及び多晶シリコンの製造”、「材料及び冶金の学報」、2007年、第16巻、第33頁〜第38頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のシリコン太陽電池600の前記シリコン基板62の第二表面63に設置された前記ドープシリコン層64の表面は、平坦な平面構造を有し、その表面積が小さいので、従来のシリコン太陽電池600の太陽光を受け取る面積が小さい。また、前記ドープシリコン層64の表面は、平坦な平面構造を有するので、太陽光は前記ドープシリコン層64の表面に達する場合、一部の太陽光が前記ドープシリコン層64の平坦な表面で反射されて利用できない。従って、従来のシリコン太陽電池600が太陽光に対して吸収率が低いなどの課題がある。
【0006】
従って、前記課題を解決するために、本発明は太陽光を受け取る面積が大きく、太陽光に対して吸収率が高い太陽電池及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の太陽電池は、背面電極と、シリコン基板と、ドープシリコン層と、前面電極と、を含む。前記シリコン基板は、第一表面及び第二表面を含む。前記シリコン基板の前記第二表面に複数の三次元ナノ構造体が形成されている。前記背面電極は、前記シリコン基板の該第一表面とオーミック接触する。前記ドープシリコン層は、前記三次元ナノ構造体の表面及び隣接する前記三次元ナノ構造体の間のシリコン基板の第二表面に形成される。前記前面電極は、前記ドープシリコン層の上に配置される。
【0008】
本発明の太陽電池の製造方法は、互いに対向する第一表面及び第二表面を含むシリコン基板を形成し、前記シリコン基板の第二表面に複数の三次元ナノ構造体を形成する第一ステップと、前記三次元ナノ構造体及び隣接する前記三次元ナノ構造体の間のシリコン基板の第二表面にドープシリコン層を形成する第二ステップと、前面電極を、前記ドープシリコン層の少なくとも一部表面に接触するように形成する第三ステップと、前記シリコン基板の第一表面に背面電極を形成し、前記背面電極を前記シリコン基板の第一表面とオーミック接触させる第四ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
従来の技術と比べて、本発明の太陽電池のシリコン基板に、複数の三次元ナノ構造体が形成されている。前記三次元ナノ構造体は、断面階段状の凸部又は断面階段状の凹部構造を有するので、前記太陽電池の太陽光を受け取る面積を高める。一方で、前記複数の三次元ナノ構造体は、バンドギャップの特性を有するので、光量子の前記複数の三次元ナノ構造体に滞留時間が長くなり、前記複数の三次元ナノ構造体の光に対して吸収できる周波数が広くなる。従って、前記太陽電池の光吸収率を高めて、前記太陽電池の光電変換効率を高めることができる。更に、前記シリコン基板の前記第二表面に複数の三次元ナノ構造体が形成されているので、太陽光は前記シリコン基板の前記第二表面に達する場合、繰り返して屈折―反射―屈折することにより、太陽光の大部分は前記シリコン基板の前記第二表面に複数の三次元ナノ構造体に吸収されるので、前記太陽電池の太陽光に対する吸収率を更に高めることができる。前記太陽電池製造工程が簡単であり、コストは廉価である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のシリコン太陽電池の構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の太陽電池の構造を示す図である。
【図3】図2に示す太陽電池のシリコン基板の構造を示す図である。
【図4】図2に示す太陽電池のシリコン基板の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】図2に示す太陽電池の製造方法のフローチャートである。
【図6】図2に示す太陽電池のシリコン基板の第二表面の複数の三次元ナノ構造体の製造工程を示す図である。
【図7】図6に示す三次元ナノ構造体の製造過程において、基板の表面に単層で一つの形状に配列された複数のナノ微球の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】図6に示す三次元ナノ構造体の製造過程に基板の表面に単層でもう一つの形状に配列された複数のナノ微球の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例2の太陽電池の構造を示す図である。
【図10】本発明の実施例3の太陽電池の構造を示す図である。
【図11】図10に示す太陽電池のシリコン基板の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0012】
(実施例1)
図2を参照すると、本実施例は、太陽電池100を提供する。前記太陽電池100は、順次的に積層された背面電極10と、シリコン基板12と、ドープシリコン層14と、前面電極16と、を含む。太陽光は、前記太陽電池100の前記前面電極16の側から入射する。前記シリコン基板12は、第一表面11及び該第一表面11に対向する第二表面13を含む。前記背面電極10は、前記シリコン基板12の第一表面11に設置され、該第一表面11とオーミック接触する。前記シリコン基板12の前記第二表面13には、複数の三次元ナノ構造体15が形成されている。ここで、前記シリコン基板12の前記第二表面13は、複数の三次元ナノ構造体15の表面及び隣接する前記三次元ナノ構造体15の間の面を含む構造化された表面を示す。前記三次元ナノ構造体15は断面階段状の凸形構造である。前記ドープシリコン層14は、前記シリコン基板12の第二表面13に形成される。前記前面電極16は、前記ドープシリコン層14の少なくとも一部表面と接触するように配置される。
【0013】
前記背面電極10の材料は、アルミニウム、マグネシウム、銀などのいずれか一種の金属である。該背面電極12の厚さは10μm〜300μmである。本実施例において、前記背面電極10は、厚さが200μmであり、アルミニウムからなる薄膜である。
【0014】
図3を参照すると、前記シリコン基板12は、p型シリコン基板である。前記シリコン基板12は、単結晶シリコン又は多結晶シリコンからなる。本実施例において、前記シリコン基板12は、p型単結晶シリコン片である。前記シリコン基板12の厚さが200μm〜300μmである。前記シリコン基板12の前記第二表面13には、複数の三次元ナノ構造体15が形成されている。前記複数の三次元ナノ構造体15は、前記シリコン基板12にアレイの形態で配列されている。
【0015】
前記三次元ナノ構造体15は、断面階段状の凸部又は断面階段状の凹部である。前記断面階段状の凸部は、前記シリコン基板12の本体(図示せず)から前記本体を離れる方向に延伸された断面階段状の突起である。前記断面階段状の凹部は、前記シリコン基板12の内部に凹んで形成された断面階段状の止まり穴である。前記断面階段状の凸部又は断面階段状の凹部は、例えば、多層三角柱、多層四角錐、多層六角柱又は多層円柱などの断面階段状の多層構造である。前記断面階段状の凸部又は断面階段状の凹部の長さ、幅及び高さは、それぞれ1000nmより小さい。好ましくは、前記断面階段状の凸部又は断面階段状の凹部の長さ、幅及び高さはそれぞれ10nm〜500nmである。
【0016】
図3及び図4を参照すると、本実施例において、前記三次元ナノ構造体15は、第一円柱152及び第二円柱154からなる二層式の断面階段状の凸部である。前記第一円柱152は、前記シリコン基板12の前記第二表面13に接触するように配置される。前記第一円柱152の側面は、前記シリコン基板12の前記第二表面13に垂直である。前記第二円柱154は、前記第一円柱152の前記シリコン基板12に隣接する表面とは反対の表面に配置される。前記第二円柱154のすべての側面は、第一円柱152の第二円柱154が配置された表面に垂直である。前記第二円柱154の直径は、前記第一円柱152の直径より小さい。好ましくは、前記第一円柱152と前記第二円柱154とは共軸して設置されている。前記第一円柱152及び前記第二円柱154は一体化形成されることができる。各々の前記隣接した二つの三次元ナノ構造体15は等距離で配列される。前記各々の隣接した二つの三次元ナノ構造体15の間の距離は、10nm〜1000nmである。
【0017】
本実施例において、前記第一円柱152の直径が30nm〜1000nmであり、その高さが50nm〜1000nmである。好ましくは、前記第一円柱152の直径が50nm〜200nmであり、その高さが100nm〜500nmである。前記第二円柱154の直径が10nm〜500nmであり、その高さが20nm〜500nmである。より好ましくは、前記第二円柱154の直径が20nm〜200nmであり、その高さが100nm〜300nmである。前記アレイの形態で配列された複数の三次元ナノ構造体15において、隣接した二つの第一円柱152の間の距離は、10nm〜1000nmである。好ましくは、前記隣接した二つの第一円柱152の間の距離は、10nm〜30nmである。
【0018】
一つの例として、前記第一円柱152の、直径が380nmであり、高さが105nmnmである。前記第二円柱154の、直径が280nmであり、高さが55nmである。前記アレイの形態で配列された複数の三次元ナノ構造体15において、前記隣接した二つの第一円柱152の間の距離は、30nmである。
【0019】
前記三次元ナノ構造体15は、前記シリコン基板12と一体成型され、両方の材料が同じであることができる。前記複数の三次元ナノ構造体15は、六角形、方形、同心円環の形状に配列されることができる。前記複数の三次元ナノ構造体15は、単一のパターン又は複数のパターンに配列されることができる。前記単一のパターンは、三角形、矩形、菱形、正方形又は円形である。
【0020】
前記ドープシリコン層14は、n型ドープシリコン層である。前記ドープシリコン層14は、前記シリコン基板12の第二表面13に形成される。前記ドープシリコン層14は、過量の例えば燐又はヒ素などを注入させて形成されたn型ドープシリコン層である。前記n型ドープシリコン層14の厚さは、10nm〜1mmである。前記シリコン基板12及び前記ドープシリコン層14は、pn接合を形成するので、前記太陽電池100は太陽エネルギーを電気エネルギーに変換することを実現できる。前記シリコン基板12の前記第二表面13には、複数の三次元ナノ構造体15が形成されているので、前記シリコン基板12と前記ドープシリコン層14との間に形成されたpn接合の界面の面積が増大され、前記太陽電池100の太陽光を受け取る面積が増大されることができる。また、前記複数の三次元ナノ構造体15は、バンドギャップの特性を有するので、光量子の前記複数の三次元ナノ構造体15に滞留する時間が長くなり、前記複数の三次元ナノ構造体15で吸収できる光の周波数が広くなる。従って、前記太陽電池100の光吸収率を高め、前記太陽電池100の光電変換効率を高めることができる。
【0021】
更に、前記シリコン基板12の前記第二表面13には複数の三次元ナノ構造体15が形成されているので、太陽光は前記シリコン基板12の前記第二表面13に照射すると、数回で屈折―反射―屈折できるので、前記太陽光は繰り返して利用され、前記シリコン太陽電池の太陽光に対する吸収率を更に高めることができる。
【0022】
前記前面電極16は、前記ドープシリコン層14に部分的接触し、又は完全に接触する。前記前面電極16は、前記ドープシリコン層14に部分的接触する場合、前記前面電極16の一部は、前記複数の三次元ナノ構造体15によって、隣接する三次元ナノ構造体15の間に懸架され、そのもう一部が前記複数の三次元ナノ構造体15の上の前記ドープシリコン層14と接触する。前記前面電極16は、前記ドープシリコン層14の全ての表面に被覆して配置される場合、前記前面電極16は、前記ドープシリコン層14に完全的に接触することができる。前記前面電極16は、例えば、ITO又はカーボンナノチューブを含む良好な導電性及び透明性を有する材料からなる。この場合、前記太陽電池100の光電変換効率が高くなり、前記太陽電池100は良好な耐用性及び均一な抵抗などの特性を有することができる。従って、前記太陽電池100の性能を高めることができる。前記前面電極16は、ITOからなる場合、前面電極16は、前記ドープシリコン層14の表面に被覆して、前記ドープシリコン層14に完全に接触される。前記前面電極16は、カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ構造体である。該カーボンナノチューブ構造体は、自立構造を有するカーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤである。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体は、前記複数の三次元ナノ構造体15によって部分懸架されて、前記複数の三次元ナノ構造体15の上の前記ドープシリコン層14と部分接触される。前記前面電極16は、前記太陽電池100のpn接合に太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する場合生じた電流を収集することに用いられる。
【0023】
更に、前記太陽電池100は、パッシベーション層(passivating layer,図示せず)を含むことができる。該パッシベーション層は、前記シリコン基板12及び前記ドープシリコン層14の間に配置される。前記パッシベーション層は、酸化シリコン又は窒化シリコンからなり、その厚さが1オングストローム〜30オングストロームである。前記シリコン基板12及び前記ドープシリコン層14の間に該パッシベーション層を配置することにより、電子及び正孔が、前記シリコン基板12及び前記ドープシリコン層14の接触面に接合する速度を低めるので、前記太陽電池100の光電変換効率を更に高める。
【0024】
前記太陽電池100において、前記シリコン基板12及び前記ドープシリコン層14の接触面にpn接合が形成される。前記ドープシリコン層14に生じた過量の電子は、前記シリコン基板12及び前記ドープシリコン層14の接触面に隣接して分布し、前記ドープシリコン層14から前記シリコン基板12への電場を形成する。太陽光は、前記太陽電池100の前記前面電極16の側から入射して、前記シリコン基板12及び前記ドープシリコン層14の接触面に到達すると、前記シリコン基板12及び前記ドープシリコン層14の間に形成したpn接合を衝撃して、複数の電子と正孔を発生する。前記複数の電子と正孔は、前記電場の作用で分離し、電子が前記前面電極16へ移動し、正孔が前記背面電極10へ移動して、それぞれ前記前面電極16及び前記背面電極10に収集され、電流を形成する。
【0025】
図5を参照すると、前記太陽電池100の製造方法は、互いに対向する第一表面及び第二表面を含むシリコン基板を形成し、前記シリコン基板の第二表面に複数の三次元ナノ構造体を形成するステップ(S10)と、前記シリコン基板の第二表面の上にドープシリコン層を形成するステップ(S11)と、前面電極を、前記ドープシリコン層の少なくとも一部に接触するように形成するステップ(S12)と、前記シリコン基板の第一表面に背面電極を形成し、前記背面電極を前記シリコン基板の第一表面とオーミック接触させるステップ(S13)と、を含む。
【0026】
図6を参照すると、前記ステップ(S10)は、互いに対向する第一表面21及び第二表面23を含む平板状なシリコン基板22を提供するステップ(S101)と、前記シリコン基板22の第二表面23に単層ナノ球体アレイ24を形成するステップ(S102)と、前記単層ナノ球体アレイ24をマスクとして利用して、前記シリコン基板22の第二表面23をエッチングし、同時に前記単層ナノ球体アレイ24に対して加工処理するステップ(S103)と、前記単層ナノ球体アレイ24を除去して、前記第二表面23に複数の三次元ナノ構造体25が形成された前記シリコン基板を得るステップ(S104)と、を含む。ここで、第二表面23としては、平板状なシリコン基板22の平らな表面を示す。
【0027】
前記ステップ(S101)において、前記シリコン基板22は、p型シリコン基板である。前記p型シリコン基板は、単結晶シリコン又は多結晶シリコンからなる。本実施例において、前記シリコン基板22は、p型単結晶シリコン片である。前記シリコン基板22の厚さが200μm〜300μmである。
【0028】
更に、前記ステップ(S101)において、シリコン基板22の第二表面23を親水処理する。まず、前記シリコン基板22を洗浄する。次に、30℃〜100℃のNH・HO、H及びHOの混合物からなる親水性溶液に、前記シリコン基板22を30分〜60分間に浸漬させる。前記親水性溶液混合物において、NH・HO:H:HO=0.2−2: 0.2−2: 1−20という体積比率により形成する。最後に、親水化処理した前記シリコン基板22を純水によって2回〜3回洗浄した後、窒素ガスの雰囲気で乾燥する。
【0029】
更に、ステップ(S101)において、前記シリコン基板22の第二表面23を再び親水処理することができる。一回親水処理された前記シリコン基板22の第二表面23を1wt%〜5wt%のSDS溶液に2時〜24時間に浸漬し、好ましくは、2wt%のSDS溶液に24時間に浸漬する。前記シリコン基板22の第二表面23を再び親水処理することにより、次のステップ(S102)において、ナノ球体が前記シリコン基板22の第二表面23に展開して、大面積な単層ナノ球体アレイ24を形成することに利点がある。
【0030】
前記ステップ(S102)は、ナノ微球体溶液を形成するステップ(S1021)と、前記ナノ微球体溶液によって前記シリコン基板22の第二表面23に液態単層ナノ微球膜を形成するステップ(S1022)と、前記シリコン基板22の第二表面23に形成された液態単層ナノ微球膜を乾燥するステップ(S1023)と、を含む。
【0031】
前記ステップ(S1021)において、前記ナノ微球体溶液におけるナノ微球体の直径は、60nm〜500nmである。更に、前記ナノ微球体溶液におけるナノ微球体の直径は、100nm、200nm、300nm又は400nmであることができる。前記ナノ微球体は、ポリマー材料又はシリコン材料からなる。前記ポリマー材料は、ポリメタクリル酸(PMMA)又はポリスチレン(PS)であることができる。乳化重合により、ポリスチレンナノ微球体溶液を合成させることができる。
【0032】
一つの例として、前記ステップ(S1022)において、浸漬法によって前記シリコン基板22の第二表面23に液態単層ナノ微球膜を形成することができる。該浸漬法によって前記シリコン基板22の第二表面23に液態単層ナノ微球膜を形成する方法は、前記ナノ微球体溶液の濃度を薄めるステップ(c21)と、前記シリコン基板22を前記薄められたナノ微球体溶液に挿入するステップ(c22)と、前記シリコン基板22を前記ナノ微球体溶液から取り出すステップ(c23)と、を含む。
【0033】
前記ステップ(c21)において、水又はエタノールを利用して、前記ナノ微球体溶液の濃度を薄めることができる。一つの例として、150mlの純水及び1μl〜5μl、0.1wt%〜3wt%のドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate:SDS)を、3μl〜5μl、0.01wt%〜10wt%のポリスチレンナノ微球体溶液に混入し混合物を得る。前記混合物を30分間〜60分間まで維持する。更に、前記PSナノ球体の表面張力を調節するために、前記混合物に1μl〜3μl、4wt%のSDSを加えることができる。前記ポリスチレンナノ微球体溶液、純水及びSDSを、直径が15mm〜38mmの皿に入れて混合することができる。
【0034】
前記ステップ(c22)において、前記シリコン基板22を、前記ナノ微球体溶液に挿入する場合、前記シリコン基板22を緩やかに傾斜させて皿の側壁に沿って前記ナノ微球体溶液に挿入する。前記シリコン基板22を前記ナノ微球体溶液から取り出す場合、前記シリコン基板22を緩やかに傾斜させて前記ナノ微球体溶液から取り出す。前記シリコン基板22を傾斜させて前記ナノ微球体溶液に挿入及び取り出す場合、前記シリコン基板22の第二表面23と前記ナノ微球体溶液の水平面の間の角度を、5度〜15度に維持する。前記シリコン基板22を前記ナノ微球体溶液に挿入し、取り出す速度は、3mm/h〜10mm/hである。本実施例において、前記シリコン基板22を傾斜させて前記ナノ微球体溶液に挿入及び取り出す場合、前記シリコン基板22の第二表面23と前記ナノ微球体溶液の水平面の間の角度が9°である。前記シリコン基板22を前記ナノ微球体溶液に挿入し、取り出す速度は、5mm/hである。
【0035】
もう一つの例として、前記ステップ(S1022)において、回転コーティング法によって前記シリコン基板22の第二表面23に液態単層ナノ微球膜を形成することができる。該回転コーティング方法によって前記シリコン基板22の第二表面23に液態単層ナノ微球膜を形成する方法は、前記ナノ微球体溶液の濃度を薄めるステップ(c21a)と、前記シリコン基板22の第二表面23に前記薄められたナノ微球体溶液を滴下するステップ(c22a)と、前記シリコン基板22を400回/分〜500回/分の速度で5秒〜30秒間回転させるステップ(c23a)と、前記シリコン基板22の回転速度を800回/分〜1000回/分まで高め、前記シリコン基板22を30秒〜2分間回転させるステップ(c24a)と、前記シリコン基板22の回転速度を1400回/分〜1500回/分まで高め、前記シリコン基板22を10秒〜20秒間回転させるステップ(c25a)と、を含む。
【0036】
前記ステップ(c21a)において、10wt%のポリスチレンナノ微球体溶液を、体積比が1:1のSDSの希釈剤によって薄めることができる。前記SDSの希釈剤は、体積比が1:4000のSDSとエタノールの混合物である。
【0037】
前記ステップ(c22a)において、3ml〜4mlの薄められたナノ微球体溶液を、前記シリコン基板22の第二表面23に十分に分散させる。
【0038】
前記ステップ(S1023)において、前記シリコン基板22の第二表面23に形成された液態単層ナノ微球膜を乾燥させることにより単層ナノ球体アレイ24を得ることができる。図7を参照すると、一つの例として、前記単層ナノ球体アレイ24において、各々のナノ球体が6角形で配列する。この場合、前記単層ナノ球体アレイ24におけるナノ球体の密度が最大である。前記ナノ球体の直径が400nmである。図8を参照すると、もう一つの例として、前記複数のナノ球体は、方形のパターンに密集して配列する。
【0039】
前記ステップ(S102)は、前記ステップ(S1023)で単層ナノ球体アレイ24を得た後、更に前記単層ナノ球体アレイ24を焼成するステップ(S1024)を含むことができる。前記単層ナノ球体アレイ24の焼成温度が50℃〜100℃であり、焼成時間が1分〜5分間である。
【0040】
前記ステップ(S103)において、反応気体26によって前記単層ナノ球体アレイ24をマスクとして用いて前記シリコン基板22の第二表面23をエッチングし、同時に前記単層ナノ球体アレイ24に対して加工処理することにより断面階段状の複数の三次元ナノ構造体25を形成することができる。
【0041】
前記ステップ(S103)において、反応気体26によって前記シリコン基板22の第二表面23をエッチングする工程は、マイクロ波プラズマ装置の中で行われる。前記マイクロ波プラズマ装置には反応気体26がを生じる。前記反応気体26は、より低いイオン・エネルギーで前記単層ナノ球体アレイ24の前記シリコン基板22と隣接する表面と反対側の表面、及び前記シリコン基板22の前記ナノ球体の間の間隙から露出された第二表面23へ拡散する。この場合、前記シリコン基板22の前記ナノ球体の間の間隙から露出された第二表面23は、反応気体26にエッチングされる。同時に、前記単層ナノ球体アレイ24におけるナノ球体は、前記反応気体26でエッチングされて、より小さい直径のナノ球体になり、前記単層ナノ球体アレイ24におけるナノ球体の間の間隙が大きくなる。前記シリコン基板22の前記ナノ球体の間の間隙から露出された第二表面23が反応気体26でエッチングされるので、前記シリコン基板22の第二表面23のエッチングされた部分はより大きくなる。この場合、従って、断面階段状の複数の三次元ナノ構造体25を形成することができる。該三次元ナノ構造体25は、大きい直径を有する第一円柱252及び小さい直径を有する第二円柱254を含む。
【0042】
本実施例において、前記反応気体26は、六フッ化硫黄(SF)及びアルゴン・ガス(Ar)又は六フッ化硫黄(SF)及び酸素ガス(O)からなる。前記六フッ化硫黄ガスの流量は、10SCCM〜60SCCMであり、前記アルゴン・ガス又はの酸素ガス流量は、4SCCM〜20SCCMである。前記マイクロ波プラズマ装置の出力は、40W〜70Wである。前記反応気体26の作動圧力は2Pa〜10Paである。前記反応気体26を利用して前記基板100をエッチングする時間は1分〜2.5分間である。前記マイクロ波プラズマ装置の出力と前記反応気体26の作動圧力の数値比は、20:1であることが好ましい。前記マイクロ波プラズマ装置の出力と前記反応気体26の作動圧力の数値比が10:1であることがより好ましい。前記反応気体26を利用して前記シリコン基板22をエッチングする時間を制御することにより、前記三次元ナノ構造体25の間の距離及び、前記第一円柱252及び第二円柱254の高さを制御することができる。
【0043】
更に、前記シリコン基板22のエッチング程度及びエッチング時間を調節するために、反応気体26に調節ガスを加えることができる。前記調節ガスは、四フッ化炭素(CF)、三フッ化メタン(CHF)又はそれらの混合物である。調節ガスの導入流量は、20SCCM〜40SCCMである。
【0044】
前記ステップ(S104)において、前記単層ナノ球体アレイ24を前記シリコン基板12から除去する場合、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ブタノン、シクロヘキサン、ヘキサン、メタノール又はエタノールなどの剥離剤を用いて前記シリコン基板22の第二表面23のナノ球体を除去し、前記三次元ナノ構造体25を維持することができる。前記単層ナノ球体アレイ24を前記シリコン基板12から除去する場合、接着テープなどを用いて前記シリコン基板22の第二表面23のナノ球体を除去することができる。本実施例において、アセトンによって超音波洗浄して、前記シリコン基板22の第二表面23のナノ球体を除去する。
【0045】
(実施例2)
図9を参照すると、本実施例は、太陽電池300を提供する。前記太陽電池300は、順次に積層された背面電極30と、シリコン基板32と、ドープシリコン層34と、前面電極36と、ナノ金属層38と、を含む。前記シリコン基板32に複数の三次元ナノ構造体35が形成されている。前記太陽電池300は、実施例1の太陽電池100と比べて、次の異なる点がある。前記太陽電池300は、更にナノ金属層38を含む。前記ナノ金属層38は、前記ドープシリコン層34と前面電極36との間に設置され、前記ドープシリコン層34の前面電極36と隣接する表面に被覆される。前記ナノ金属層38は、展開された複数の金属ナノ粒子からなる単層構造体又は多層構造体である。前記ナノ金属層38の厚さは2nm〜200nmであるが、好ましくはその厚さは50nmである。前記ナノ金属層38は、金、銀、銅、鉄及びアルミニウムなどのいずれか一種からなる。この場合、前記前面電極36は、前記ナノ金属層38に部分的接触し、又は完全に接触する。前記前面電極36が前記ナノ金属層38に部分的接触する場合、前記前面電極36の一部は、前記複数の三次元ナノ構造体35によって隣接する三次元ナノ構造体35の間に懸架され、別の一部が前記複数の三次元ナノ構造体35の上の前記ナノ金属層38と接触する。前記前面電極36の全ての表面が前記ナノ金属層38で被覆される場合、前記前面電極36は、前記ナノ金属層38に完全的に接触することができる。
【0046】
太陽光が前記前面電極36を通じて、前記ナノ金属層38に照射する場合、前記ナノ金属層38の表面にプラズマが発生されるので、前記ナノ金属層38に隣接した前記ドープシリコン層34が光量子を吸収する能率が増加する。また、前記ナノ金属層38からの表面プラズマによって形成された電磁場が、pn接合所に形成された複数の電子と正孔を分離するという利点がある。
【0047】
前記ナノ金属層38は、電子ビーム蒸着方法によって前記ドープシリコン層34の表面に被覆される。
【0048】
(実施例3)
図10を参照すると、本実施例は、太陽電池400を提供する。前記太陽電池400は、順次に積層された背面電極40と、シリコン基板42と、ドープシリコン層44と、前面電極46と、を含む。太陽光は、前記太陽電池400の前記前面電極46の側から入射する。前記シリコン基板42は、第一表面41及び該第一表面41に対向する第二表面43を含む。前記背面電極40は、前記シリコン基板42の第一表面41に設置され、該第一表面41とオーミック接触する。前記シリコン基板42の前記第二表面43には、複数の三次元ナノ構造体45が形成される。前記三次元ナノ構造体45は断面階段状の構造体である。ここで、前記シリコン基板42の前記第二表面43は、複数の三次元ナノ構造体45の表面と隣接する前記三次元ナノ構造体45の間の面を含む構造化された表面を示す。前記ドープシリコン層44は、前記シリコン基板42の第二表面43に形成される。前記前面電極46は、前記ドープシリコン層44の少なくとも一部表面と接触するように配置される。
【0049】
前記太陽電池400は、実施例1の太陽電池100と比べて、次の異なる点がある。図11を参照すると、前記複数の三次元ナノ構造体45は、それぞれ断面階段状の凹部である。即ち、前記三次元ナノ構造体45は、前記シリコン基板42の内部に凹んで形成された断面階段状の止まり穴である。前記三次元ナノ構造体45は、第一円柱状空間452及び第二円柱状空間454からなる二層式の断面階段状の凹部である。前記第一円柱状空間452と前記第二円柱状空間454とは共軸する。前記第二円柱状空間454及び前記第一円柱状空間452は、順次に前記シリコン基板42の第一表面41から離れるように形成される。且つ前記第一円柱状空間452の直径は前記第二円柱状空間454の直径より大きい。
【0050】
前記第一円柱状空間452の直径は30nm〜1000nmであり、その高さは50nm〜1000nmである。好ましくは、前記第一円柱状空間452の直径は50nm〜200nmであり、その高さは100nm〜500nmである。前記第二円柱状空間454の直径は10nm〜500nmであり、その高さは20nm〜500nmである。より好ましくは、前記第二円柱状空間454の直径が20nm〜200nmであり、その高さは100nm〜300nmである。
【0051】
前記太陽電池400の製造方法は、実施例1の太陽電池100の製造方法と比べて、次の異なる点がある。前記複数の三次元ナノ構造体の製造方法は、第一表面と第二表面を含む平板状シリコン基板を提供するステップ(H1)と、前記シリコン基板の第二表面に複数のナノ穴を含むマスクを形成するステップ(H2)と、前記複数のナノ穴を含むマスクを利用してシリコン基板の第二表面をエッチングし、同時に前記マスクの複数のナノ穴を調整するステップ(H3)と、前記マスクを除去するステップ(H4)と、を含む。ここで、第二表面としては、平板状シリコン基板の平らな表面を示す。
【0052】
前記ステップH2において、前記複数のナノ穴を含むマスクは、アレイの形で配列された複数の穴を含む連続的なフィルムである。前記マスクは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)又はポリイミド(PI)などのポリマー材料からなる。前記複数のナノ穴を含むマスクは、ナノインプリント方法又はテンプレート沈積方法によって形成することができる。
【0053】
前記ステップH3において、前記マスクを利用して前記シリコン基板の前記第二表面をエッチングし、同時に前記マスクの複数のナノ穴を調整することは、前記実施例1の複数の三次元ナノ構造体の製造方法のステップ(S103)と同じである。反応気体は、前記マスクのシリコン基板の第二表面と隣接する表面とは反対の表面、及び前記シリコン基板の第二表面の前記マスクの穴から露出された部分へ拡散する。この場合、前記シリコン基板の第二表面の前記マスクの穴から露出された部分が反応気体にエッチングされる。同時に、前記マスクにおける穴は、反応気体によりエッチングされて孔径が大きくなり、前記マスクの間の間隙が小さくなる。前記シリコン基板の第二表面の前記マスクにおける穴から更に露出された部分が反応気体にエッチングされるので、前記シリコン基板の第二表面のエッチングされた部分はより大きくなる。従って、断面階段状の複数の三次元ナノ構造体を形成することができる。
【0054】
ステップH4では、前記マスクはピーリング方法によって除去することができる。
【符号の説明】
【0055】
100、300、400 太陽電池
10、30、40 背面電極
11、21、31、41 第一表面
12、22、32、42 シリコン基板
13、23、33、43 第二表面
14、34、44 ドープシリコン層
15、25、35、45 三次元ナノ構造体
16、36、46 前面電極
152、252 第一円柱
452 第一円柱状空間
154、254 第二円柱
454 第二円柱状空間
24 単層ナノ球体アレイ
26 反応気体
38 ナノ金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面電極と、シリコン基板と、ドープシリコン層と、前面電極と、を含む太陽電池であって、
前記シリコン基板は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を含み、
前記シリコン基板の前記第二表面には、複数の三次元ナノ構造体が形成され、
前記背面電極は、前記シリコン基板の第一表面に設置され、該第一表面とオーミック接触し、
前記ドープシリコン層は、前記シリコン基板の第二表面に形成され、
前記前面電極は、前記ドープシリコン層の少なくとも一部の表面に接触するように配置され、
前記三次元ナノ構造体は、断面階段状の凸部又は断面階段状の凹部であることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
対向する第一表面及び第二表面を含むシリコン基板を形成し、前記シリコン基板の第二表面に複数の三次元ナノ構造体を形成する第一ステップと、
前記シリコン基板の第二表面にドープシリコン層を形成する第二ステップと、
前記ドープシリコン層の少なくとも一部に接触する前面電極を設置する第三ステップと、
前記シリコン基板の第一表面に背面電極を形成し、前記背面電極を前記シリコン基板の第一表面とオーミック接触させる第四ステップと、
を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−129487(P2012−129487A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88994(P2011−88994)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】