説明

太陽電池基礎ブロック、太陽電池アレイ及び太陽電池システム

【課題】地盤が不均一に沈下しても精度よく簡便に太陽電池アレイの高さを調節することができる太陽電池基礎ブロック、太陽電池アレイ及び太陽電池システムを提供する。
【解決手段】本実施形態の太陽電池アレイは、上下方向に昇降可能なアンカーボルトを有する基礎ブロックを備え、地盤沈下時にはこのアンカーボルトを伸ばして太陽電池モジュールを固定する。また、本実施形態の太陽電池システムは、風の影響を直接受ける箇所に幅広基礎ブロックを使用した太陽電池アレイを配置し、幅広基礎ブロックの風下に当たる部分に細幅基礎を使用した太陽電池アレイを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、太陽電池基礎ブロック、太陽電池アレイ及び太陽電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球温暖化防止の意識の高まりからメガワット級の大規模太陽電池システムが建設されるようになっている。
【0003】
この大規模太陽電池システムは広大な土地に太陽電池アレイを多数並べる必要がある。太陽電池アレイを設置する土地の地盤が脆弱な場合は、不均一な地盤沈下が生じることがある。例えば、埋立地に太陽電池アレイを設置する場合、数年間に数十センチ沈下する場合がある。地盤が不均一な沈下を起こした場合、太陽電池アレイが歪み、破損する場合がある。
【0004】
この点に関し、太陽電池アレイを設置する基礎ブロックを太陽電池アレイごとに設ける技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-98241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この技術によっても、太陽電池アレイの傾きが生じたり、隣接する太陽電池の沈下深度の差により影が生じたりすることがある。
【0007】
従って、地盤が不均一に沈下しても精度よく簡便に太陽電池アレイの高さを調節することができる太陽電池基礎ブロック、太陽電池アレイ及び太陽電池システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態は太陽電池モジュールと、太陽電池モジュールを載置する太陽電池架台と、太陽電池架台を載置する基礎ブロックと、太陽電池架台を基礎ブロックに固定するアンカーボルトと、基礎ブロックの内部に固定され、アンカーボルトを上下方向に昇降可能に格納する鞘管と、を備える太陽電池アレイを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】太陽電池基礎ブロックを用いた太陽電池アレイの斜視図である。
【図2】基礎ブロックの図1のAA線断面図及び構成部品の平面図である。
【図3】応用例にかかる基礎ブロックの図1のAA線断面図及び構成部品の平面図である。
【図4】型枠材の斜視図である。
【図5】仮受けプレートの斜視図である。
【図6】型枠材と仮受けプレートの使用方法を示す斜視図である。
【図7】太陽電池アレイを横から見た図である。
【図8】地盤沈下が生じた場合の対処を示す図である。
【図9】地盤沈下が生じた場合の対処を示す図である。
【図10】地盤沈下が生じた場合の対処を示す図である。
【図11】地盤沈下が生じた場合の対処を示す図である。
【図12】地盤沈下が生じた場合の対処を示す図である。
【図13】基礎ブロックの第1の応用例に係る幅広基礎ブロックの図1のX矢視図である。
【図14】基礎ブロックの第2の応用例に係る細幅基礎ブロックの図1のX矢視図である。
【図15】太陽電池システムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による太陽電池基礎ブロック、太陽電池アレイ及び太陽電池システムの一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の太陽電池アレイは、太陽電池モジュールと、太陽電池モジュールを載置する太陽電池架台と、太陽電池架台を載置する基礎ブロックと、太陽電池架台を基礎ブロックに固定するアンカーボルトと、基礎ブロックの内部に固定され、アンカーボルトを上下方向に昇降可能に格納する鞘管と、を備える。
【0012】
図1は、本実施形態の太陽電池基礎ブロック(以下、基礎ブロックと言う。)を用いた太陽電池アレイの斜視図である。図1に示すように、太陽電池アレイ100は、太陽電池モジュール201と、太陽電池架台202と、基礎ブロック300と、を備える。
【0013】
太陽電池架台202は、基礎ブロック300の上に載置、固定される。太陽電池モジュール201は太陽電池架台202に載置、固定される。
【0014】
図1の例においては、太陽電池架台202は6枚の太陽電池モジュール201を載置している。基礎ブロック300は一部が地中に埋設される。
【0015】
図2は、基礎ブロック300の図1のAA線断面図及び構成部品の平面図である。図2(A)に示すように、基礎ブロック300は、基礎ブロック300内部に固定され、鉛直方向に延びる筒状の鞘管302と、鞘管302の上端に固定され、内側にネジ切りを有する固定プレート挿通孔304Aを備える固定プレート304と、全長にわたってネジ切りを有し、鞘管302の内部に、固定プレート挿通孔304Aに回転自在に挿通されて格納されるアジャスタボルト303と、アジャスタボルト303に回転軸を共通に固定される調整ナット305と、内部にネジ切りを有する載置プレート挿通孔306Aを備え、アジャスタボルト303に固定される載置プレート306と、載置プレート306に載置される環状の座金307と、アジャスタボルト303に固定されるアンカーボルト308と、を備える。
【0016】
基礎ブロック300はアンカーボルト308を格納する脚部300Lを有する。基礎ブロック300は、コンクリートにより形成される。基礎ブロック300は一体形成されていてもよい。また、基礎ブロック300は、まず鞘管302を載置する基底部301Bを形成し、この基底部301Bに鞘管302を位置決めし、本体部301Aをコンクリートにより形成してもよい。
【0017】
図2(B)は鞘管302の平面図である。図2(B)に示すように、鞘管302は筒状をなし、内部の空間302Aはアジャスタボルト303を回転可能に格納するのに十分な広さを有する。
【0018】
図2(C)は固定プレート304の平面図である。固定プレート304は、回転を防止するために基礎ブロック300に埋設されることが望ましい。
【0019】
図2(D)は調整ナット305の平面図である。図2(D)に示すように、調整ナット305は、レンチにて回転しやすいように6角形をなしていることが望ましい。
【0020】
図2(E)は載置プレート306の平面図である。図2(E)に示すように、載置プレート306は太陽電池架台202の脚部を載置するのに十分な面積を有する。
【0021】
図2(F)は座金307の平面図である。図2(F)に示すように、座金307はアンカーボルト308の外径より直径が大きい内孔307Aを有する。座金307は載置プレート306に載置される大きさを有する。
【0022】
鞘管302と固定プレート304とは溶接などにより固定される。調整ナット305はアジャスタボルト303に溶接などにより固定される。アジャスタボルト303は、アンカーボルト308よりも外径が太く、長さは予測される地盤沈下量より長い。
【0023】
調整ナット305を回転すると調整ナット305に固定されたアジャスタボルト303が回転する。アジャスタボルト303は内部にネジ切りを有する固定プレート挿通孔304Aに挿通されている。従って、アジャスタボルト303の回転によりアジャスタボルト303は上下に昇降可能である。
【0024】
図3は、応用例にかかる基礎ブロック310の図1のAA線断面図及び構成部品の平面図である。図3(A)に示すように、基礎ブロック310は、基礎ブロック310内部に固定され、鉛直方向に延びる筒状の鞘管312と、鞘管312の上端に固定され、内側にネジ切りを有する固定プレート挿通孔314Aを備える固定プレート314と、全長にわたってネジ切りを有し、鞘管312の内部に、固定プレート314の挿通孔314Aに回転自在に挿通されて格納されるアンカーボルト313と、内部にネジ切りを有する載置プレート挿通孔316Aを備え、アンカーボルト313に回転可能に挿通される載置プレート316と、載置プレート316に載置される環状の座金317と、を備える。
【0025】
基礎ブロック310はアンカーボルト313を格納する脚部310Lを有する。基礎ブロック310は、コンクリートにより形成される。基礎ブロック310は一体形成されていてもよい。また、基礎ブロック310は、まず鞘管312を載置する基底部311Bを形成し、この基底部311Bに鞘管312を位置決めし、本体部311Aをコンクリートにより形成してもよい。
【0026】
図3(B)は鞘管312の平面図である。図3(B)に示すように、鞘管312は筒状をなし、内部の空間312Aはアンカーボルト313を回転可能に格納するのに十分な広さを有する。
【0027】
図3(C)は固定プレート314の平面図である。固定プレート314は、回転を防止するために基礎ブロック310に埋設されることが望ましい。
【0028】
図3(D)は載置プレート316の平面図である。図3(D)に示すように、載置プレート316は、レンチにて回転しやすいように6角形をなしていることが望ましい。載置プレート316は、太陽電池架台202の脚部を載置するのに十分な面積を有する。
座金317の平面図は座金307の平面図と同様に表れる。
【0029】
鞘管312と固定プレート314とは溶接などにより固定される。載置プレート316はアンカーボルト313に回転可能に挿通される。アンカーボルト313は、アンカーボルト308と外径が等しく、長さは予測される地盤沈下量より長い。
【0030】
載置プレート316は回転させてアンカーボルト313から取り外し可能である。アンカーボルト313から載置プレート316を取り外せば、アンカーボルト313は手動にて回転可能となり、アンカーボルト313の回転によりアンカーボルト313は上下に昇降可能である。
【0031】
図4は、型枠材401の斜視図である。図4に示すように、型枠材401は筒を長軸方向に割った形状をなす。型枠材401は例えば塩化ビニルなどの樹脂又はボール紙により形成される。
型枠材401の内径は、載置プレート306及び載置プレート316よりも大きいことが望ましい。
【0032】
図5は、仮受けプレート402の斜視図である。図5に示すように、仮受けプレート402は中央部に切り欠き402Aを有する。
切り欠き402Aの直径は、アンカーボルト308、313の外径より大きい。仮受けプレート402の長手方向の長さは型枠材401の外径より長い。
【0033】
図6は、型枠材401と仮受けプレート402の使用方法を示す斜視図である。図6に示すように、アンカーボルト308、313を二つの型枠材にて囲み、内部にコンクリート403を流し込む。型枠材401の上には仮受けプレート402が掛け渡される。仮受けプレート402は2枚用いてもよい。
コンクリート403が固化するまでの間、太陽電池架台202の脚部は仮受けプレート402に載置される。
【0034】
図7は、太陽電池アレイ100を横から見た図である。図7に示すように、基礎ブロック300は一部が地面700に埋設される。太陽電池モジュール201は太陽電池架台202の脚部がナット320によりアンカーボルト308、313に固定される。
【0035】
図8乃至図12は、地盤沈下が生じた場合の対処を示す図である。図8に示すように、ナット320が外され、太陽電池モジュール201はワイヤ800を用いてクレーンにより持ち上げられる。
【0036】
図9に示すように、アンカーボルト308、313が回転されて鞘管302から地盤沈下量だけ引き出される。
【0037】
図10に示すように、ナット320を複数個アンカーボルト308、313に嵌め込むことにより、アンカーボルト308、313が固定される。または、型枠材401を組み合わせ、内部にコンクリート403を流し込んでアンカーボルト308、313が固定される。ナット320の個数により、またコンクリート403の厚さにより、高さの微調整が可能である。
【0038】
また、ナット320にて微調整した後に、ナット320を取り付けたままアンカーボルト308、313を型枠材401により取り囲み、コンクリート403によって固定してもよい。
【0039】
図11に示すように、コンクリート403が固化した後に太陽電池モジュール201が下ろされ、脚部202Aにアンカーボルト308、313が挿通される。
【0040】
図12に示すように、ナット320によりアンカーボルト308、313に太陽電池架台202が固定される。
【0041】
図13は、基礎ブロック300の第1の応用例に係る幅広基礎ブロック300Wの図1のX矢視図である。図14は基礎ブロック300の第2の応用例に係る細幅基礎ブロック300Nの図1のX矢視図である。
【0042】
図13及び図14に示すように、幅広基礎ブロック300Wの脚部300L、310Lの幅W1は細幅基礎ブロック300Nの脚部300L、310Lの幅W3より広い。また、幅広基礎ブロック300Wの空洞部の幅W2は細幅基礎ブロック300Nの空洞部の幅W4より狭い。
【0043】
幅広基礎ブロック300Wは、設置された場合に風圧に対する抵抗力が強い。細幅基礎ブロック300Nは幅広基礎ブロック300Wに比べ用いるコンクリートが少ないため安価に製造できる。
【0044】
図15は、太陽電池システム1500の平面図である。太陽電池システム1500は、風の影響を直接受ける箇所、すなわち複数配置される太陽電池アレイ100の、斜線に示す辺縁部に幅広基礎ブロック300Wを使用した太陽電池アレイ100Wを配置し、幅広基礎ブロック300Wの風下の幅広基礎ブロック300Wに隣接する部分に細幅基礎ブロック300Nを使用した太陽電池アレイ100Nを配置する。
【0045】
太陽電池アレイ100Wにより太陽電池アレイ100Nを取り囲むように配置することもできる。
【0046】
以上述べたように、本実施形態の太陽電池アレイ100は、上下方向に昇降可能なアンカーボルト308、313を有する基礎ブロック300、310を備え、地盤沈下時にはこのアンカーボルト308、313を伸ばして太陽電池架台202を固定する。
【0047】
また、本実施形態の太陽電池システム1500は、風の影響を直接受ける箇所に幅広基礎ブロック300Wを使用した太陽電池アレイ100Wを配置し、幅広基礎ブロック300Wの風下に当たる部分に細幅基礎ブロック300Nを使用した太陽電池アレイ100Nを配置する。
【0048】
従って、地盤の不均一な沈下が起こっても精度よく簡便に太陽電池アレイの高さを調節することができるという効果がある。また、風圧に対する抵抗力を備える太陽電池システム1500を安価に製造できるという効果がある。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
100:太陽電池アレイ
201:太陽電池モジュール
202:太陽電池架台
300:基礎ブロック
302、312:鞘管
304、314:固定プレート
303:アジャスタボルト
305:調整ナット
306、316:載置プレート
308、313:アンカーボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置される太陽電池架台を固定するアンカーボルトと、
内部に固定され、前記アンカーボルトを上下方向に昇降可能に格納する鞘管と、
を備える太陽電池基礎ブロック。
【請求項2】
前記鞘管は、
内部がネジ切りされた固定プレート挿通孔を有する固定プレートを備え、
前記アンカーボルトは、
ネジ切りを有し、前記固定プレート挿通孔に回転可能に挿通される
請求項1記載の太陽電池基礎ブロック。
【請求項3】
前記鞘管は、
内部がネジ切りされた固定プレート挿通孔を有する固定プレートを備え、
前記アンカーボルトは、
前記アンカーボルトの外径より太い外径を有し、ネジ切りを有し、回転軸を共通に固定された調整ナットを有し、前記固定プレート挿通孔に回転可能に挿通されるアジャスタボルトの上端に固定される
請求項1記載の太陽電池基礎ブロック。
【請求項4】
太陽電池モジュールと、
前記太陽電池モジュールを載置する太陽電池架台と、
前記太陽電池架台を載置する基礎ブロックと、
前記太陽電池架台を前記基礎ブロックに固定するアンカーボルトと、
前記基礎ブロックの内部に固定され、前記アンカーボルトを上下方向に昇降可能に格納する鞘管と、
を備える太陽電池アレイ。
【請求項5】
前記鞘管は、
内部がネジ切りされた固定プレート挿通孔を有する固定プレートを備え、
前記アンカーボルトは、
ネジ切りを有し、前記固定プレート挿通孔に回転可能に挿通される
請求項4記載の太陽電池アレイ。
【請求項6】
前記鞘管は、
内部がネジ切りされた固定プレート挿通孔を有する固定プレートを備え、
前記アンカーボルトは、
前記アンカーボルトの外径より太い外径を有し、ネジ切りを有し、回転軸を共通に固定された調整ナットを有し、前記固定プレート挿通孔に回転可能に挿通されるアジャスタボルトの上端に固定される
請求項4記載の太陽電池アレイ。
【請求項7】
太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールを載置する太陽電池架台と、前記太陽電池架台を載置し、第1の幅の脚部を有する第1の基礎ブロックと、前記太陽電池モジュールを前記第1の基礎ブロックに固定するアンカーボルトと、前記第1の基礎ブロックの内部に固定され、前記アンカーボルトを上下方向に昇降可能に格納する鞘管と、を備える第1の太陽電池アレイと、
前記太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールを載置する太陽電池架台と、前記太陽電池架台を載置し、第1の幅より狭い第2の幅の脚部を有する第2の基礎ブロックと、前記太陽電池架台を前記第2の基礎ブロックに固定するアンカーボルトと、前記第2の基礎ブロックの内部に固定され、前記アンカーボルトを上下方向に昇降可能に格納する鞘管と、を備え、前記第1の太陽電池アレイと隣接して配置される第2の太陽電池アレイと、
を備える太陽電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−253174(P2012−253174A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124117(P2011−124117)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】