説明

太陽電池用絶縁基板、太陽電池モジュール及び太陽電池用絶縁基板の製造方法

【課題】バックコンタクト方式の太陽電池モジュールにおいて、裏面側に凸となる反りの発生を防止できる太陽電池用絶縁基板及び当該太陽電池用絶縁基板を用いた太陽電池モジュール、並びに、太陽電池用絶縁基板の製造方法を提供する。
【解決手段】繊維及び樹脂を含有する複合材料からなり、表面に太陽電池セルが配される絶縁材料11と、該絶縁材料11の裏面に積層され、絶縁材料11の厚み方向に穿設された貫通孔11aを介して太陽電池セルと電気的に接続される回路層12とから太陽電池用絶縁基板10を構成し、絶縁材料11の裏面に凹凸構造Aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面に電極を備えるバックコンタクト方式の太陽電池セルを固定するための太陽電池用絶縁基板及び該太陽電池用絶縁基板を用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーを利用する発電システムである太陽光発電の普及が急速に進められている。太陽光発電をするための太陽電池モジュールは、図9に示すように、受光側に配置された透光性基板120と、裏面側に配置された絶縁基板110と、透光性基板120および絶縁基板110の間に配置された多数の太陽電池セル130とを有している。
【0003】
従来、上記太陽電池モジュールにおいては、多数の太陽電池セル130が、幅1〜3mmの配線材150で電気的に直列に接続されていた。太陽電池セル130は、太陽の受光面130aである表面側にマイナス電極(N型半導体電極)131、裏面側にプラス電極132が設けられているため、配線材150で接続すると、太陽電池セル130の受光面130aの上に配線材150が重なり、光電変換の面積効率が低下する傾向にあった。また、上記の電極の配置では、配線材150が太陽電池セル130の表側から裏側に回り込む構造になるが、このような構造では、各部材の熱膨張の差が原因で配線材150が断線することがあった。
【0004】
そこで上記問題に対応すべく、特許文献1および2には、プラス電極、マイナス電極の両電極がセルの裏側に配置されたバックコンタクト方式の太陽電池モジュールが提案されている。この方式の太陽電池セル同士の接続は、該太陽電池セルの裏面側に配置される絶縁基板の回路により行う。この絶縁基板は、絶縁材料の表面に回路層が積層された構造をなしており、当該回路層上に太陽電池セルがさらに積層される。これによって、太陽電池セル表面の受光面積が犠牲にならず、光電変換の面積効率の低下を回避できる。また、配線材を表側から裏側に回りこむ構造にしなくてもよいため、各部材の熱膨張の差による配線材の断線も防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−11869号公報
【特許文献2】特開2009−111122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記バックコンタクト方式の太陽電池モジュールにおいては、絶縁材料の表面に回路層が形成され、さらにこの回路層上に太陽電池セルが積層された構造をなしているため、太陽電池モジュールの使用時に高温に曝された場合には、絶縁材料と回路層および太陽電池セルとの線膨張率の違いによって、太陽電池モジュールに反りが生じてしまう事があった。
【0007】
即ち、絶縁基板は、太陽電池セルおよび透光性基板と比較して線膨張率が高いため、高温時においては絶縁材料が太陽電池セル及び透光性基板よりも大きく膨張する。したがって、太陽電池モジュールの裏面側に凸となる反りが発生してしまい、故障の原因につながることが懸念されていた。
【0008】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、バックコンタクト方式の太陽電池モジュールにおいて、裏面側に凸となる反りの発生を防止できる太陽電池用絶縁基板及び当該太陽電池用絶縁基板を用いた太陽電池モジュール、並びに、太陽電池用絶縁基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る太陽電池用絶縁基板は、繊維及び樹脂を含有する複合材料からなる板状をなし、表面に太陽電池セルが配される絶縁材料と、該絶縁材料の裏面に積層され、前記絶縁材料の厚み方向に穿設された貫通孔を介して前記太陽電池セルと電気的に接続される回路層とを備え、前記絶縁材料の裏面に凹凸構造が形成されていることを特徴とする。
【0010】
このような特徴の太陽電池用絶縁基板によれば、絶縁材料の裏面に凹凸構造が形成されていることから、当該絶縁材料における裏面側の体積率、即ち、絶縁材料の裏面側の空間における該絶縁材料の占める体積の割合が小さくなる。これによって、絶縁材料の裏面側における体積膨張を表面側と比較して小さく抑えることができる。
また、絶縁材料よりも線膨張率の小さい回路層及び太陽電池セルのうち、回路層が絶縁材料の裏面側に積層され、太陽電池セルが絶縁材料の表面側に積層される構成のため、高温時であってもこれら回路層及び太陽電池セルが絶縁材料の膨張を両面から均等に抑えることができる。
【0011】
さらに、上記太陽電池用絶縁基板においては、前記凹凸構造の最大高さRmaxの値が、前記絶縁材料の厚み寸法の10%以上の値に設定されていることが好ましい。
これにより、絶縁材料の裏面側における体積膨張を効果的に減少させることができる。
【0012】
また、上記太陽電池用絶縁基板においては、前記凹凸構造が、前記絶縁材料の裏面に沿った一方向に延在する三角プリズムを、該一方向に直交する方向に連続的に配置した形状をなしていることが好ましい。
さらに、前記凹凸構造が、四角錐形状をなす単位凸形状を、前記絶縁材料の裏面の面方向に沿って二次元的に配列した形状をなしていてもよい。
これにより、絶縁材料の裏面側における体積膨張を一層効果的に減少させることができる。
【0013】
そして、本発明に係る太陽電池モジュールは、受光面側に配置された透光性基板と、該透光性基板の裏面側に配置された太陽電池用絶縁基板と、前記透光性基板及び前記太陽電池用絶縁基板の間に配置された太陽電池セルと、該太陽電池セルを封止する封止樹脂とを備えた太陽電池モジュールであって、前記太陽電池用絶縁基板が、上記いずれかの太陽電池用絶縁基板であることを特徴とする。
【0014】
このような特徴の太陽電池モジュールによれば、絶縁材料における反りの発生を防止できるため、当該反りによる故障を回避することができ、メンテナンス性を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明に係る太陽電池用絶縁基板の製造方法は、金属箔の表面に凹凸構造を形成する工程と、前記金属箔の表面を、繊維及び熱硬化性樹脂を含有する半硬化複合材料層の表面に積層させる工程と、積層された前記金属箔と前記半硬化複合材料層とに加熱加圧処理を施して、半硬化複合材料層を絶縁材料とする工程と、前記金属箔にパターン加工を施して回路層を形成する工程とを備え、前記回路層の一部を前記受光面側に露呈させる貫通孔を、前記半硬化複合材料層あるいは前記絶縁材料に形成する工程をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
これによって、絶縁材料の裏面に凹凸構造を容易に成形することができる。また、絶縁材料の裏面に回路層を配置しつつ、回路層を表面側に露呈される貫通孔を形成することで、回路層と電気接続される太陽電池セルを絶縁材料の表面側に配置可能な太陽電池用絶縁基板を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の太陽電池用絶縁基板及び太陽電池モジュールによれば、凹凸構造を形成することで絶縁材料の裏面側における体積膨張を小さくし、かつ、回路層及び太陽電池セルにより該絶縁材料の膨張を表裏両面から均等に抑えることで、絶縁材料の裏面側に凸となる反りの発生を防止することができる。
また、本発明の太陽電池用絶縁基板の製造方法によれば、反りを防止することが可能な上記太陽電池用絶縁基板を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る太陽電池用絶縁基板の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す太陽電池用絶縁基板の製造方法を説明する図である。
【図3】実施形態に係る太陽電池モジュールの概略構成を示す縦断面図である。
【図4】図3に示す太陽電池モジュールの製造方法を説明する図である。
【図5】図1に示す太陽電池用絶縁基板の製造方法の他の例を説明する図である。
【図6】従来の太陽電池モジュールの概略構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(太陽電池用絶縁基板)
本発明の太陽電池用絶縁基板の実施形態について説明する。
図1に実施形態の太陽電池用絶縁基板を示す。この太陽電池用絶縁基板10は、絶縁材料11と、絶縁材料11の裏面に設けられた回路層12とを備えており、いわゆるバックコンタクト方式の太陽電池セルの接続に用いられる。
【0020】
(絶縁材料)
絶縁材料11としては、繊維及び樹脂を含有する複合材料からなる板状をなす部材、即ち、繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸又は塗布し乾燥させて得たプリプレグが用いられる。この絶縁材料11は、その表面(図1の上方向を向く面)に太陽電池セルが配置され、裏面(図1の下方向を向く面)に回路層12が配置される。また、絶縁材料11には、その厚み方向(図1の上下方向)に貫通する貫通孔11aが複数穿設されている。
【0021】
この絶縁材料11に用いられる繊維としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、フッ素繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維等が挙げられる。これらのうち、熱硬化性樹脂との親和性、絶縁信頼性、材料コストの観点からガラス繊維が好ましい。
【0022】
また、樹脂としては、副生物を生成せずに硬化する付加重合型等の熱硬化性樹脂が好ましい。付加重合型の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、シアナート樹脂、シアン酸エステル樹脂−エポキシ樹脂、シアン酸エステル−マレイミド樹脂、シアン酸エステル−マレイミド−エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、マレイミド−ビニル樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
この絶縁材料11の表面は太陽電池セルを安定的に積層固定すべく平坦状に成型されている一方、裏面には凹凸構造Aが成型されている。この凹凸構造Aは、一方向(図1の紙面奥行き方向)に延在する三角プリズムが当該一方向に直交する方向(図1の左右方向)に並設されたプリズムアレイ状をなしている。即ち、凹凸構造Aは、絶縁材料11の面方向(図1の左右方向及び紙面奥行き方向を含む二次元方向)に対して所定角度をなす傾斜面が連続的に配設されてなる波形状をなしている。
【0024】
なお、絶縁材料11の凹凸構造Aとしては、上記のプリズムアレイ形状に限定されず、例えば、一方向に延びるシリンドリカルレンズ形状等の単位レンズが該一方向に直交する方向に並設されたレンズアレイ状をなすものであってもよいし、四角錐形状(ピラミッド形状)等をなす単位凸形状が絶縁材料11の面方向に二次元的に配列された構成をなすものであってもよい。
【0025】
また、上記凹凸構造Aの最大高さRmaxの値は、絶縁材料11の厚み寸法の10%以上の値に設定されていることが好ましい。当該最大高さRmaxの値が絶縁材料の厚み寸法の10%未満の場合、後述する反り防止効果を効果的に得ることができないため好ましくない。
【0026】
(回路層)
回路層12は、後述する太陽電池セル30に電気的に接続される層であって、上記絶縁材料11の裏面に圧着積層されている。即ち、回路層12の表面には、絶縁材料11の裏面における凹凸構造Aの逆型をなす凹凸構造Bが成型されており、これら凹凸構造A,Bが隙間無く噛み合うようにして回路層12と絶縁材料11とが積層一体化されている。なお、本実施形態においては、回路層12の裏面は平坦状に成型されている。
【0027】
この回路層12は、太陽電池用絶縁基板10に積層される多数の太陽電池セルを電気的に直列に接続するパターンを有している。回路層12を構成する材料としては、電気抵抗が低い材料、例えば、銅、アルミニウム、鉄−ニッケル合金などが使用されるが、絶縁材料11を構成する樹脂よりも線膨張率が低い材質から形成されていることが好ましい。また、導電性高分子を使用することもできる。
【0028】
なお、本実施形態における回路層12の表面は、スタッドバンプとの密着性を向上させるために、ギ酸、硫酸、硝酸などの腐食性薬液によって粗面化処理が施されていることが好ましい。これによって、回路層12と該回路層12の表面に積層される部材との密着性を向上させることができる。
【0029】
また、この回路層12の表面における絶縁材料11の貫通孔11aに臨む箇所は、太陽電池セル30と接続するための電極部12aとされている。換言すれば、絶縁材料11の貫通孔11aは、回路層12の電極部12aが存在する箇所において絶縁材料11を厚み方向に貫通している。これにより、回路層12の電極部12aは、貫通孔11aを介して絶縁材料11の表面側、即ち、受光面側に露呈することになる。
【0030】
このような構成をなす太陽電池用絶縁基板10においては、絶縁材料11の裏面に設けられた回路層12の電極部12aに対して絶縁材料11の太陽電池セルを貫通孔11aを介して電気接続することによって、太陽電池セルを電気的に直列に接続できる。なお、これら電極部12a及び太陽電池セルの電気接続は、貫通孔11a内に設けられるスタットバンプによって行なわれる。このように、本実施形態の太陽電池用絶縁基板10によれば、太陽電池セルの太陽電池用絶縁基板10への積層と太陽電池セル同士の接続とを同時に行うことができるため、太陽電池モジュールを容易に製造でき、その生産性を高くできる。
【0031】
さらに、絶縁材料11が複合材料からなるため、太陽電池用絶縁基板10の寸法安定性、剛性に優れる。特に、例えば、従来広く使用されているPET基材、PEN基材からなる太陽電池用絶縁基板よりも寸法安定性および剛性に優れる。したがって、絶縁材料11が複合材料からなることで、太陽電池用絶縁基板10は優れた物性を有するものとなる。
【0032】
ここで、本実施形態の太陽電池用絶縁基板10においては絶縁材料11の裏面に凹凸構造Aが形成されていることから、当該絶縁材料11における裏面側の体積率、即ち、絶縁材料11の裏面側の空間における該絶縁材料11の占める体積の割合が小さくなる。これによって、例えば太陽電池用絶縁基板10が搭載される太陽電池モジュールが直射日光を受けることで高温に曝された際、絶縁材料11の裏面側における体積膨張を表面側と比較して小さく抑えることができる。
【0033】
さらに、絶縁材料11よりも線膨張率の小さい回路層12及び太陽電池セルのうち、回路層12が絶縁材料11の裏面側に積層され、太陽電池セルが絶縁材料11の表面側に積層される構成のため、高温時であってもこれら回路層12及び太陽電池セルが絶縁材料11の膨張を両面から均等に抑えることができる。
【0034】
即ち、本実施形態の太陽電池用絶縁基板10によれば、凹凸構造Aを形成することで絶縁材料11の裏面側における体積膨張を小さくし、かつ、回路層12及び太陽電池セルにより該絶縁材料11の膨張を表裏両面から均等に抑えることで、絶縁材料11における裏面側に凸となる反りの発生を防止することができる。
【0035】
(太陽電池用絶縁基板の製造方法)
本実施形態例の太陽電池用絶縁基板10の製造方法について説明する。
本実施形態例の太陽電池用絶縁基板10の製造方法では、まず、図2(a)に示すように、銅、アルミニウム、鉄−ニッケル合金などの金属からなる金属箔18の表面に凹凸構造Bを成型する。この凹凸構造Bは、例えばバイト等を用いた機械加工により成型してもよいし、また、エッチングにより成型してもよい。また、金属箔18に代えて導電性高分子を用いてもよい。
【0036】
次に、図2(b)に示すように、繊維及び半硬化の熱硬化性樹脂を含有する半硬化複合材料層19の裏面に上記金属箔18の凹凸構造Bが成型された表面を積層する。この半硬化複合材料層19は、上述した繊維に熱硬化性樹脂を含浸または塗布し、乾燥させて得たものである。この熱硬化性樹脂は半硬化状態とされているため接着性を有している。
【0037】
そして、これら半硬化複合材料層19及び金属箔18に加熱真空圧着処理を施すことで、半硬化複合材料層19の裏面に金属箔18の表面を圧着する。この際、半硬化複合材料層19の裏面が金属箔18の表面における凹凸構造Bの形状に従って変形することで、半硬化複合材料層19の裏面に金属箔18の表面の凹凸構造Bが転写される。そして、半硬化複合材料層19における熱硬化性樹脂が加熱されて硬化することで、図2(c)に示すように、表面利面に凹凸構造Aが成型された絶縁材料11を得ることができる。
【0038】
そして、金属箔18の裏面にレジストパターンを形成してエッチング処理を施すことによって回路層12を形成する。この回路層12の形成では、フォトリソグラフィを適用する。フォトリソグラフィでは、まず、金属箔18の裏面の全面にレジスト層を設ける。その際、レジスト層としては、ドライフィルムレジストを用いてもよいし、ウェットレジストを金属箔18に塗工して形成したものでもよい。
【0039】
次いで、レジスト層の上にフォトマスクを配置し、露光し、現像してレジストパターンを設ける。次いで、レジストパターンで被覆されていない金属箔18をエッチング処理して除去する。エッチングとしては、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれであってもよいが、通常は、ウェットエッチングが適用される。その後、レジストパターンを剥離する。このように、金属箔18にパターン加工を施すことで該金属箔18を回路層12とすることができる。
【0040】
そして最後に、絶縁材料11の表面側から、例えばレーザーやドリル等による切削加工を行い、絶縁材料11に複数の貫通孔11aを形成する。なお、絶縁材料11における切削加工が施される箇所は、回路層12の電極部12aに対応する箇所とされ、また、当該切削加工は絶縁材料11にのみなされ回路層12を切削することがないように寸止めされる。これにより、回路層12の電極部12aが貫通孔11aを介して受光面側に露呈し、図1に示す太陽電池用絶縁基板10を得ることができる。
【0041】
なお、得られた回路層12の表面、即ち電極部12aには粗面化処理を施してもよい。この粗面化処理としては、例えば、ギ酸、硫酸、硝酸などの腐食性薬液を回路層12の表面に接触させる方法を適用することができる。回路層12と該回路層12の表面に積層される部材との密着性を向上させることができる。
【0042】
このような太陽電池用絶縁基板10の製造方法では、金属箔18の表面に凹凸構造Bを形成して、この金属箔18の表面を半硬化複合材料層19の裏面に積層させるとともにこれら金属箔18と半硬化複合材料層19とを加熱真空圧着することで、絶縁材料11と回路層12とが強固に一体化された太陽電池用絶縁基板10を得ることができる。また、この加熱真空圧着により金属箔18の表面の凹凸構造Bを半硬化複合材料層19に転写することによって、該絶縁材料11に賦型率の高い凹凸構造Aを容易に成型することができる。
【0043】
即ち、絶縁材料11の表面に直接的に凹凸構造Aを形成する加工を施すのではなく、金属箔18に形成した凹凸構造Bを転写させるといった手法を用いているため、高い賦型率でもって絶縁材料11の凹凸構造Aを形成することが可能となる。これによって、絶縁材料11の裏面側における体積率を確実に減少させて、当該絶縁材料11の裏面側に凸となる反りを防止できる。
【0044】
(太陽電池モジュール)
上記太陽電池用絶縁基板10は太陽電池モジュールに使用される。図3に上記太陽電池用絶縁基板10を使用した太陽電池モジュールを示す。
この太陽電池モジュール1は、受光面側に配置された透光性基板20と、裏面側に配置された太陽電池用絶縁基板10と、透光性基板20および太陽電池用絶縁基板10の間に配置された多数の太陽電池セル30と、太陽電池セル30を封止する封止層40とを備えている。
さらに、この太陽電池モジュール1に用いられる太陽電池用絶縁基板10には、その裏面側にバリア層13が配置され、回路層12の太陽電池セル30に接触する電極部上にスタッドバンプ14が設けられている。
【0045】
[バリア層]
バリア層13は空気透過を調整する層である。バリア層13としては、耐候性、絶縁性など長期信頼性を有する材料が使用され、例えば、フッ素樹脂フィルム、低オリゴマー・耐熱ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム/ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、シリカ(SiO2)蒸着フィルム、アルミニウム箔などが使用される。
【0046】
[スタッドバンプ]
スタッドバンプ14は、回路層12と太陽電池セル30との電気的接続を補助する部材であり、絶縁材料11の貫通孔11a内に充填されるようにして設けられている。このスタッドバンプ14の材料としては、電気抵抗が低い材料が使用される。中でも、回路層12との電気抵抗が低くなることから、銀、銅、錫、鉛、ニッケル、金よりなる群から選ばれる1種以上の金属を含有することが好ましい。
【0047】
このスタッドバンプ14は、粘度が高く、容易に所望の形状にできることから、銀、銅、錫、半田(銅と鉛が主成分である。)よりなる群から選ばれる1種以上の金属を含有する導電性ペーストにより形成されていることが好ましい。
【0048】
また、導電性ペーストは低温硬化タイプであることが好ましい。導電性ペーストが低温硬化タイプであれば、120〜160℃という低温で太陽電池セル30の電極と回路層12とを電気的に接続できる。120〜160℃は、封止層40として使用可能なEVAフィルムの軟化、溶融、架橋が生じる温度であるから、封止層40としてEVAフィルムを用いる場合には、容易に加工できるため、太陽電池セル30の電極と該導電性ペーストから形成されるスタッドバンプ14とをより容易に電気的に接続させることができる。
【0049】
低温硬化タイプの導電性ペーストとしては、ポリマーと導電性フィラーを含有し、ポリマーの硬化による導電性フィラーの物理的接触によって導電性を発現するもの、有機物に銀もしくは銅を配位、還元させたナノ粒子を含有し、低温焼結(120〜160℃)させることにより導電性を発現するものが挙げられる。電気抵抗がより低くなる点では、後者の材料が好ましい。
【0050】
[透光性基板]
透光性基板20としては、例えば、ガラス基板、透明樹脂基板などが挙げられる。透明樹脂基板を構成する透明樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。本実施形態例に使用される太陽電池セル30は、裏面にプラス電極およびマイナス電極を備えるバックコンタクト方式のものである。
【0051】
[太陽電池セル]
太陽電池セル30としては、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、化合物型、色素増感型などが挙げられる。これらの中でも、発電効率に優れる点では、単結晶シリコン型が好ましい。この太陽電池セル30はその裏面側に例えば一対の電極を備えている。
【0052】
[封止層]
封止層40は、封止用フィルムにより形成される。封止用フィルムとしては、例えば、EVAフィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂フィルムなどが使用される。通常、封止用フィルムは、太陽電池セル30を挟み込むように2枚以上で使用される。
【0053】
この太陽電池モジュール1は、例えば、以下の製造方法により製造される。
即ち、まず、図4(a)に示すように、回路層12の電極部12a上、即ち、貫通孔11a内にスタッドバンプ14を形成するとともに、太陽電池セル30の裏面の電極にスタッドバンプ14が対向するように該太陽電池セル30を配置する。そして、これら太陽電池用絶縁基板10、スタッドバンプ14及び太陽電池セル30からなる積層体を加熱加圧する。これにより、太陽電池用絶縁基板10における絶縁材料11上に、貫通孔11aを介して回路層12に電気接続された太陽電池セル30が実装される。
【0054】
なお、スタッドバンプ14の形成方法としては、例えば、めっき、スクリーン印刷、ディスペンス、転写などの方法を適用することができる。その際には、容易に所望の形状にできることから、銀、銅、錫、半田よりなる群から選ばれる1種以上の金属を含有する導電性ペーストを用いることが好ましい。さらには、太陽電池セル30の電極とスタッドバンプ14とをより容易に電気的に接続させることができる点では、低温硬化タイプの導電性ペーストがより好ましい。
【0055】
次いで、図4(b)に示すように、太陽電池用絶縁基板10の絶縁材料11の表面側において太陽電池セル30を周囲から覆うようにして、該太陽電池セル30を封止層40により封止する。その後、図4(c)に示すように、絶縁材料11の裏面側において回路層12をその裏面側から覆うようにバリア層13を一体に固定する。最後に、封止層40の表面に透光性基板20を一体に固定し、これによって、図3に示すように、絶縁材料11の表面側に配置された太陽電池セル30が絶縁材料11の裏面側に配置された回路層12により電気的に直列に接続された、太陽電池モジュール1を得ることができる。
【0056】
このような特徴の太陽電池モジュール1によれば、上記太陽電池用絶縁基板10を搭載しているため、絶縁材料11における反りの発生を防止できる。したがって、当該反りによる故障を回避することができ、メンテナンス性を向上させることが可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく多少の設計変更等も可能である。
例えば、実施形態の太陽電池用絶縁基板10は、絶縁材料11及び回路層12のみから構成されていたが、バリア層13やスタッドバンプ14を当初から備えた上で、これら絶縁材料11、回路層12、バリア層13及びスタッドバンプ14からなるバックシートが構成されていてもよい。
【0058】
また、太陽電池用絶縁基板10においては、回路層12の裏面側を被覆するオーバーコート層が設けられていてもよい。このオーバーコート層を構成する絶縁性材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これら樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。このオーバーコート層を設けることでいに隣接する回路層12の短絡を防止できる。
【0059】
さらに、太陽電池用絶縁基板10の製造方法としては、例えば図5に示す手順であってもよい。即ち、まず、図5(a)に示すように、銅、アルミニウム、鉄−ニッケル合金などの金属からなる金属箔18の表面に凹凸構造Bを成型する。また、この工程と並行して、図5(b)に示すように、半硬化複合材料層19に貫通孔11aを形成する工程を行う。
【0060】
そして、図5(c)に示すように、半硬化複合材料層19の裏面に金属箔18の凹凸構造Bを接触させるように積層し、次いで、図5(d)に示すように、半硬化複合材料層19及び金属箔18に加熱真空圧着処理を施すことで、半硬化複合材料層19の裏面に金属箔18の表面を圧着する。
【0061】
この際、半硬化複合材料層19の裏面が金属箔18の表面における凹凸構造Bの形状に従って変形することで、半硬化複合材料層19の裏面に金属箔18の表面の凹凸構造Bが転写される。また、これと同時に、半硬化複合材料層19が熱硬化して絶縁材料11となる。そして、金属箔18の裏面にレジストパターンを形成してエッチング処理を施すことによって回路層12を形成する。図1に示す太陽電池用絶縁基板10を得ることができる。
【0062】
このように、半硬化複合材料層19に予め貫通孔11aを形成する場合、該半硬化複合材料層19を硬化させて絶縁材料11とした後に貫通孔11aを形成する場合と異なり、切削加工の際に回路層12にレーザーやドリル等が当たらぬように寸止めをしなくともよい。したがって、容易に貫通孔11aを形成することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 太陽電池モジュール
10 太陽電池用絶縁基板
11 絶縁材料
11a 貫通孔
12 回路層
12a 電極部
13 バリア層
14 スタッドバンプ
18 金属箔
19 半硬化複合材料層
20 透光性基板
30 太陽電池セル
40 封止層
A 凹凸構造
B 凹凸構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維及び樹脂を含有する複合材料からなる板状をなし、表面に太陽電池セルが配される絶縁材料と、
該絶縁材料の裏面に積層され、前記絶縁材料の厚み方向に穿設された貫通孔を介して前記太陽電池セルと電気的に接続される回路層とを備え、
前記絶縁材料の裏面に凹凸構造が形成されていることを特徴とする太陽電池用絶縁基板。
【請求項2】
前記凹凸構造の最大高さRmaxの値が、前記絶縁材料の厚み寸法の10%以上の値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用絶縁基板。
【請求項3】
前記凹凸構造が、
前記絶縁材料の裏面に沿った一方向に延在する三角プリズムを、該一方向に直交する方向に連続的に配置した形状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池用絶縁基板。
【請求項4】
前記凹凸構造が、
四角錐形状をなす単位凸形状を、前記絶縁材料の裏面の面方向に沿って二次元的に配列した形状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池用絶縁基板。
【請求項5】
受光面側に配置された透光性基板と、該透光性基板の裏面側に配置された太陽電池用絶縁基板と、前記透光性基板及び前記太陽電池用絶縁基板の間に配置された太陽電池セルと、該太陽電池セルを封止する封止樹脂とを備えた太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池用絶縁基板が、請求項1から4のいずれか一項に記載の太陽電池用絶縁基板であることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項6】
金属箔の表面に凹凸構造を形成する工程と、
前記金属箔の表面を、繊維及び熱硬化性樹脂を含有する半硬化複合材料層の表面に積層させる工程と、
積層された前記金属箔と前記半硬化複合材料層とに加熱加圧処理を施して、半硬化複合材料層を絶縁材料とする工程と、
前記金属箔にパターン加工を施して回路層を形成する工程とを備え、
前記回路層の一部を前記受光面側に露呈させる貫通孔を、前記半硬化複合材料層あるいは前記絶縁材料に形成する工程をさらに備えることを特徴とする太陽電池用絶縁基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−159748(P2011−159748A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19453(P2010−19453)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】