説明

太陽電池異常判定装置および太陽電池異常判定方法

【課題】太陽電池の異常を判定するための基準となる電流電圧特性を簡易に取得し、太陽電池の異常を判定する。
【解決手段】太陽電池異常判定装置30は、基準の電流電圧特性算出部23を備えており、部分影による太陽電池13の異常を判定する場合、その判定の基準となる基準電流電圧特性を、太陽電池13の短絡電流値ISC、開放電圧値Voc、最大出力動作電圧値VPm、および最大出力動作電流値IPmの測定値から算出する。そして、太陽電池異常判定装置30の判定部24は、太陽電池13の異常を、算出した基準電流電圧特性と実測した電流電圧特性とを比較することによって判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の異常を判定する太陽電池異常判定装置および太陽電池異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の電流電圧特性および電力電圧特性について、それぞれ図7(a),(b),(c)を用いて説明する。
図7(a)に示した電流電圧特性は、太陽電池表面のすべての箇所において、日射強度が等しい場合の特性である。図7(a)では、縦軸は太陽電池の出力電流、横軸は出力電圧を表している。図7(a)に示すように、太陽電池の出力電流(縦軸)は、出力電圧(横軸)を増加させた場合、ほぼ一定状態から開放電圧値Voc近辺で急激に低下するようなカーブに沿って変化する。したがって、太陽電池の出力電力は、出力電流と出力電圧との積で表されるので、図7(b)に示すように、出力電圧に対して、ピーク(最大電力点)を持つように変化する。
【0003】
そこで、太陽電池から最大出力電力Pm(図7(b)参照)を取り出すために、出力電圧の制御が行われている。この制御は、最大電力点追従制御(MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御)と呼ばれている。ここで、図7(a)に示すように、最大出力電力Pmのときの出力電圧値を、最大出力動作電圧値VPmと称し、最大出力電力Pmのときの出力電流値を、最大出力動作電流値IPmと称し、出力電圧が0ボルトのときの出力電流値を短絡電流値ISCと称し、出力電流が0アンペアのときの出力電圧値を開放電圧値Vocと称する。
【0004】
ところで、太陽電池の周辺に存在する障害物によって太陽電池表面に影が生じた場合または落ち葉や鳥獣の糞等が太陽電池表面に付着した場合には(部分影発生時には)、太陽電池表面の日射強度に偏りが生じるため、電流電圧特性は、例えば、図7(c)のように、図7(a)に示す電流電圧特性とは大きく異なる。
【0005】
特許文献1には、太陽電池に故障が発生した場合や部分影が発生した場合に、太陽電池の異常と判定する太陽光発電システムが記載されている。この太陽光発電システムは、予め太陽電池の標準となる電流電圧特性を記憶しておき、実測した電流電圧特性と標準の電流電圧特性とを比較することによって、異常か否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−201827号公報(特に、段落0038参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、太陽光発電システムに予め記憶される標準の電流電圧特性は、太陽電池のモジュール構成等が異なれば、そのモジュール構成において用いられる標準の電流電圧特性を記憶させる必要があり手間が煩雑になるという問題がある。また、記憶された標準の電流電圧特性が、実際の設置現場で組立てられた太陽電池個々の電流電圧特性および周囲環境を正確に表していない虞がある。また、太陽電池の電流電圧特性が経年劣化によって、記憶された標準の電流電圧特性と異なってしまっていても、その電流電圧特性の変化に自動的に追従することができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明では、太陽電池の異常を判定するための基準となる電流電圧特性を容易に取得し、太陽電池の異常を判定する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、太陽電池異常判定装置は、実測した太陽電池の電流電圧特性から、太陽電池の短絡電流値ISC、開放電圧値Voc、最大出力電力のときの最大出力動作電圧値VPmおよび最大出力動作電流値IPm、を取得し、それらの値を下記式(2)に適用して係数a,bを算出し、その算出した係数a,bを下記式(1)に適用して、式(1)によって表される基準の電流電圧特性を生成する。次に、太陽電池異常判定装置は、実測によって取得した電流電圧特性と基準の電流電圧特性とを比較することによって、太陽電池の異常か否かを判定する。
【数1】


ただし、Iは、太陽電池の出力電流、Vは、太陽電池の出力電圧、expは、指数関数を表し、lnは、自然対数を表す。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、太陽電池の異常を判定するための基準となる電流電圧特性を簡易に取得し、太陽電池の異常を判定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における太陽電池システムの構成例および太陽電池異常判定装置の機能例を示す図である。
【図2】太陽電池異常判定装置の処理フロー例を示す図である。
【図3】異常判定の指標が面積比の場合を示す図であり、(a)は部分影なしの場合を表し、(b)は部分影ありの場合を表す。
【図4】異常判定の指標が実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との差分の平均値の場合を示す図であり、(a)は部分影なしの場合を表し、(b)は部分影ありの場合を表す。
【図5】異常判定の指標が実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との最大差分値の場合を示す図であり、(a)は部分影なしの場合を表し、(b)は部分影ありの場合を表す。
【図6】異常判定の指標は実測電流電圧特性の電流値が基準電流電圧特性の電流値より小さい範囲の面積である場合を示す図であり、(a)は部分影なしの場合を表し、(b)は部分影ありの場合を表す。
【図7】太陽電池の特性およびMPPT制御の従来技術を説明するための図であり、(a)は太陽電池の電流電圧特性を表し、(b)は太陽電池の電力電圧特性を表し、(c)は部分影発生時の電流電圧特性を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明を実施するための形態(以降、「実施形態」と称す。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(太陽電池システム)
太陽電池システム1の構成例について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、太陽電池システム1は、太陽電池制御装置10、太陽電池13、センサ14、および太陽電池異常判定装置30で構成される。
【0014】
太陽電池制御装置10は、電力変換部12を備えており、太陽電池13から取り出した直流電力を変換して負荷へ出力する。また、太陽電池制御装置10は、太陽電池特性取得部11を備えており、太陽電池13の短絡状態から開放状態までの電流値および電圧値をセンサ14を介して取得する。そして、太陽電池制御装置10は、実測した電流値および電圧値を、太陽電池異常判定装置30に送信する。
【0015】
(太陽電池異常判定装置)
次に、太陽電池異常判定装置30の機能例について、図1を用いて説明する。
太陽電池異常判定装置30は、少なくとも、処理部20、表示部27、通信部28、記憶部29を備えている。太陽電池異常判定装置30は、太陽電池13に部分影が発生しているか否かを判定する。なお、部分影とは、太陽電池13の表面に、太陽電池の周辺に存在する障害物によって生じた影、または落ち葉や鳥獣の糞等が付着したことによって生じた影のことである。本実施形態では、太陽電池13に部分影が発生していることを、太陽電池13の異常と判定する。
【0016】
処理部20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメインメモリによって構成され、記憶部29に記憶されているアプリケーションプログラムをメインメモリに展開して、電流値電圧値取得部21、電力演算部22、基準の電流電圧特性算出部23、および判定部24を具現化する。
【0017】
電流値電圧値取得部21は、太陽電池制御装置10の太陽電池特性取得部11から、実測した電流値および電圧値(以降、実測電流電圧特性と称する。)を取得する。
【0018】
電力演算部22は、電流値電圧値取得部21が取得した電流値および電圧値を用いて、電力値を算出し、算出した電力値の中で最大となる、最大出力電力値を取得する。電力演算部22は、最大出力電力値となるときの電圧値および電流値それぞれを示す最大出力動作電圧値VPmおよび最大出力動作電流値IPmを取得する。そして、電力演算部22は、短絡電流値ISC、開放電圧値Voc、最大出力動作電圧値VPm、および最大出力動作電流値IPmを基準の電流電圧特性算出部23へ送信する。
【0019】
基準の電流電圧特性算出部23は、短絡電流値ISC、開放電圧値Voc、最大出力動作電圧値VPm、および最大出力動作電流値IPmを下記式(2)に適用して係数a,bを算出し、その算出した係数a,bを下記式(1)に適用して、式(1)によって表される基準の電流電圧特性(以降、基準電流電圧特性と称する。)を生成する。ここで、式(1)、式(2)を再掲する。なお、式(1)、式(2)の導出については、後記する。
【0020】
【数1】


ただし、Iは、出力電流、Vは、出力電圧、expは、指数関数を表し、lnは、自然対数を表す。
【0021】
判定部24は、実測電流電圧特性と基準電流電圧特性とを比較することによって、太陽電池の異常か否かを判定する。判定部24は、判定結果を、表示部27に表示すること、通信部28を介して端末へ出力すること、のいずれかまたは双方を実行する。なお、判定方法については、後記する。
【0022】
表示部27は、液晶ディスプレイ等であり、判定結果を表示する。
通信部28は、太陽電池システム1の保守者や管理者の使用している端末(例えば、パソコンまたは携帯端末)との間で情報を送受信するためのインタフェースである。通信部28は、情報を、有線または無線により送受信する。
記憶部29は、アプリケーションプログラムや、処理部20の処理結果等を記憶している。
【0023】
(太陽電池異常判定装置の処理フロー)
次に、太陽電池異常判定装置30の処理フローについて、図2を用いて説明する(適宜、図1参照)。
ステップS401では、電流値電圧値取得部21は、実測した電流値および電圧値(実測電流電圧特性)を取得する。
【0024】
ステップS402では、電力演算部22は、電流値電圧値取得部21が取得した電流値および電圧値を用いて、電力値を算出する。
ステップS403では、電力演算部22は、算出した電力値の中で最大となる、最大出力電力値を取得する。
ステップS404では、電力演算部22は、取得した最大出力電力値となるときの電圧値および電流値それぞれを示す最大出力動作電圧値VPmおよび最大出力動作電流値IPmを取得する。そして、電力演算部22は、短絡電流値ISC、開放電圧値Voc、最大出力動作電圧値VPm、および最大出力動作電流値IPmを基準の電流電圧特性算出部23へ送信する。
【0025】
ステップS405では、基準の電流電圧特性算出部23は、電力演算部22から受信した短絡電流値ISC、開放電圧値Voc、最大出力動作電圧値VPm、および最大出力動作電流値IPmを前記式(2)に適用して係数a,bを算出し、その算出した係数a,bを前記式(1)に適用して、式(1)によって表される基準電流電圧特性を生成する。
【0026】
ステップS406では、判定部24は、実測電流電圧特性と基準電流電圧特性とを比較することによって、太陽電池の異常か否かを判定する。
ステップS407では、判定部24は、判定結果を、表示部27に表示、通信部28を介して端末へ送信、のいずれかまたは双方を実行する。
【0027】
太陽電池異常判定装置30は、ステップS401〜S407の処理を、所定の周期または保守者や管理者からの指示を受信したときに実行する。
【0028】
次に、太陽電池13(図1参照)の異常か否かを判定する判定方法の4例について、それぞれ図3〜図6を用いて説明する。
【0029】
(第1の判定方法)
判定部24(図1参照)は、図3に示すように、判定指標として、実測電流電圧特性の面積を基準電流電圧特性の面積で除算して算出した、面積比を用いて、判定を行う。ここで、面積は、電流値について電圧値を積分変数として積分した値である。
図3(a)は、部分影なしの場合を表しており、基準電流電圧特性(実線)と実測電流電圧特性(破線)とはほぼ似たような傾向を示す。したがって、面積比はほぼ1に近い値となる。
【0030】
それに対して、図3(b)に示す部分影ありの場合には、影の影響によって、電圧値が大きい領域で実測電流電圧特性の電流値が、基準電流電圧特性より大きく低下する。したがって、図3(b)に示す実測電流電圧特性の面積は、図3(a)に示す実測電流電圧特性の面積に比べて小さくなる。すなわち、面積比は1より小さくなる。
したがって、判定部24は、面積比が第1の閾値未満の場合には、太陽電池13の異常と判定する。なお、第1の閾値は、記憶部29(図1参照)に記憶されている。
【0031】
(第2の判定方法)
判定部24(図1参照)は、図4に示すように、判定指標として、実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との差分の平均値を用いて、判定を行う。
図4(a)は、部分影なしの場合を表しており、基準電流電圧特性と実測電流電圧特性とはほぼ似たような傾向を示す。ここで、実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との差分は、電流値について算出する場合、電圧値が等しいときの基準電流電圧特性および実測電流電圧特性それぞれの電流値同士を減算して算出した値である。また、電圧値について実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との差分を算出する場合は、電流値が等しいときの基準電流電圧特性および実測電流電圧特性それぞれの電圧値同士を減算して算出した値である。図4(a)では、実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との差分の平均値は、小さい値となる。なお、差分の平均値ではなく、差分の絶対値の平均値をとっても構わない。
【0032】
それに対して、図4(b)に示す部分影ありの場合には、影の影響によって、電圧値が大きい領域で実測電流電圧特性の電流値が、基準電流電圧特性より大きく低下する。そのため、図4(b)に示す実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との差分の平均値は、図4(a)の場合に比べて、大きくなる。
したがって、判定部24は、電圧値についての差分の平均値が第2の閾値より大きいとき、電流値についての差分の平均値が第3の閾値より大きいときのいずれかまたは双方の場合、太陽電池13の異常と判定する。なお、第2および第3の閾値は、記憶部29(図1参照)に記憶されている。
【0033】
(第3の判定方法)
判定部24(図1参照)は、図5に示すように、判定指標として、実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との最大差分値を用いて、判定を行う。
図5(a)は、部分影なしの場合を表しており、基準電流電圧特性と実測電流電圧特性とはほぼ似たような傾向を示す。ここで、実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との最大差分値は、電流値について算出する場合、電圧値が等しいときの基準電流電圧特性および実測電流電圧特性それぞれの電流値同士を減算して算出した差分の中で最大の値である。また、電圧値について実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との最大差分値を算出する場合は、電流値が等しいときの基準電流電圧特性および実測電流電圧特性それぞれの電圧値同士を減算して算出した差分の中で最大の値である。図5(a)では、実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との最大差分値は、小さい値となる。
【0034】
それに対して、図5(b)に示す部分影ありの場合には、影の影響によって、電圧値が大きい領域で実測電流電圧特性の電流値が、基準電流電圧特性より大きく低下する。そのため、図5(b)に示す実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との最大差分値は、図5(a)の場合に比べて、大きくなる。
したがって、判定部24は、実測電流電圧特性と基準電流電圧特性との間で電圧の最大差分値が第4の閾値より大きいとき、電流の細大差分値が第5の閾値より大きいとき、のいずれかまたは双方の場合、太陽電池13の異常と判定する。なお、第4および第5の閾値は、記憶部29(図1参照)に記憶されている。
【0035】
(第4の判定方法)
判定部24(図1参照)は、図6に示すように、判定指標として、実測電流電圧特性の電流値が基準電流電圧特性の電流値より小さい範囲の面積を用いて、判定を行う。ここで、当該面積は、実測電流電圧特性の電流値が基準電流電圧特性の電流値より小さい場合において、基準電流電圧特性の電流値から実測電流電圧特性の電流値を減算した差分について電圧値を積分変数として積分した値である。
図6(a)は、部分影なしの場合を表しており、基準電流電圧特性と実測電流電圧特性とはほぼ似たような傾向を示す。実測電流電圧特性の電流値が基準電流電圧特性の電流値より小さい範囲の面積は小さい値となる。
【0036】
それに対して、図6(b)に示す部分影ありの場合には、影の影響によって、電圧値が大きい領域で実測電流電圧特性の電流値が、基準電流電圧特性より大きく低下する。そのため、図6(b)に示す実測電流電圧特性の電流値が基準電流電圧特性の電流値より小さい範囲の面積は、図6(a)の場合に比べて、大きくなる。
したがって、判定部24は、実測電流電圧特性の電流値が基準電流電圧特性の電流値より小さい範囲の面積が第6の閾値より大きいの場合には、太陽電池13の異常と判定する。なお、第6の閾値は、記憶部29(図1参照)に記憶されている。
【0037】
なお、第1〜第4の判定方法は、単独で用いても、複数の組み合わせで用いても構わない。なお、複数の組み合わせの場合には、判定部24(図1参照)は、組み合わせたそれぞれの判定指標について閾値と大小比較を行って、組み合わせたすべての判定指標について太陽電池13の異常と判定された場合に、太陽電池13の異常と判定しても良い。または、判定部24(図1参照)は、組み合わせたいずれかの判定指標において太陽電池13の異常と判定された場合に、太陽電池13の異常と判定しても良い。
【0038】
(式(1)、式(2)の導出)
ここで、前記式(1)、式(2)の導出について、説明する。
太陽電池13の電流電圧特性の理論式は、下記式(A)で表される。
【0039】
【数2】


ただし、Iは出力電流、ISCは短絡電流、I0は逆飽和電流、eは素電荷、Vは出力電圧、nは理想因子、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。
【0040】
前記式(A)の定数等を、係数a,bにまとめると、下記式(B)で表される。
【数3】

【0041】
V=Vocのとき、I=0であるので、下記式(C)となる。
【数4】

【0042】
また、V=VPmのとき、I=IPmであるので、下記式(D)となる。
【数5】

【0043】
前記式(C)のaを、前記式(D)に代入すると、下記式(E)となる。
【数6】

【0044】
exp(b・VPm)≫1、exp(b・VOC)≫1であるから、次の近似が成立する。
【数7】

【0045】
したがって、下記式(G)のようになる。
【数8】

【0046】
前記式(G)の両辺の対数をとることにより、bを導出することができる。
【数9】

【0047】
以上、前記式(B)、式(C)、式(H)より、下記式(1)、式(2)が導出される。ここで、式(1)、式(2)を再掲する。
【数1】

【0048】
以上、本実施形態における太陽電池異常判定装置30は、太陽電池13の異常を判定する場合、その判定の基準となる基準電流電圧特性を、実測した太陽電池13の短絡電流値ISC、開放電圧値Voc、最大出力動作電圧値VPm、および最大出力動作電流値IPmの測定値から式(1),式(2)を用いて算出することができる。そのため、太陽電池13が経年劣化等によって電流電圧特性が変化した場合にも、太陽電池13の異常を判定するための基準となる電流電圧特性を容易に算出することができる。また、部分影による太陽電池13の異常を、算出した基準電流電圧特性と実測によって取得した実測電流電圧特性とを比較することによって、容易に判定することができる。
【0049】
また、太陽電池13の異常と判定された場合、その異常が、故障や取り除かなければならない汚れによるものなのか、または一時的な部分影によるものなのかを区別する場合には、異常の継続時間が所定の閾値を超えるか否かにより判定すれば良い。
【符号の説明】
【0050】
13 太陽電池
20 処理部
21 電流値電圧値取得部
22 電力演算部
23 基準の電流電圧特性算出部
24 判定部
27 表示部
28 通信部
29 記憶部
30 太陽電池異常判定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の異常を判定する太陽電池異常判定装置であって、
前記太陽電池の電流値および電圧値の実測電流電圧特性を取得する電流値電圧値取得部と、
前記実測電流電圧特性を用いて、電力値を算出し、その算出した電力値の中で、最大電力値となるときの電圧値および電流値とを取得する電力演算部と、
前記最大電力値となるときの電圧値および電流値と、前記太陽電池を短絡状態にしたときの短絡電流値と、前記太陽電池を開放状態にしたときの開放電圧値と、を用いて、異常を判定するための基準となる基準電流電圧特性を算出する基準の電流電圧特性算出部と、
前記実測電流電圧特性と、前記基準電流電圧特性とを比較して、所定の指標で異常の有無を判定する判定部と
を備えることを特徴とする太陽電池異常判定装置。
【請求項2】
前記基準の電流電圧特性算出部は、
前記最大電力値となるときの電圧値VPm、および電流値IPmと、前記短絡電流値ISCと、前記開放電圧値Vocと、を下記式(1)、式(2)に適用して、前記基準電流電圧特性を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池異常判定装置。
【数1】


ただし、Iは、太陽電池の出力電流、Vは、太陽電池の出力電圧、expは、指数関数を表し、lnは、自然対数を表す。
【請求項3】
前記所定の指標が、
前記実測電流電圧特性の面積を前記基準電流電圧特性の面積で除算して算出した面積比、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との差分の平均値、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との最大差分値、前記実測電流電圧特性の電流値が前記基準電流電圧特性の電流値より小さい範囲の面積のいずれかであり、
前記判定部は、
前記所定の指標の値と予め決められている閾値との大小を比較し、その比較結果に基づいて異常の有無を判定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池異常判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記閾値との大小の比較において、
前記実測電流電圧特性の面積を前記基準電流電圧特性の面積で除算して算出した面積比が第1の閾値より小さい場合、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との電圧値についての差分の平均値が第2の閾値より大きい場合、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との電流値についての差分の平均値が第3の閾値より大きい場合、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との電流の最大差分値が第4の閾値より大きい場合、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との電圧の最大差分値が第5の閾値より大きい場合、前記実測電流電圧特性の電流値が前記基準電流電圧特性の電流値より小さい範囲の面積が第6の閾値より大きい場合、のいずれかの場合に異常があると判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池異常判定装置。
【請求項5】
太陽電池の異常を判定する太陽電池異常判定装置における太陽電池異常判定方法であって、
前記太陽電池異常判定装置は、
前記太陽電池の電流値および電圧値の実測電流電圧特性を取得するステップと、
前記実測電流電圧特性を用いて、電力値を算出し、その算出した電力値の中で、最大電力値となるときの電圧値および電流値とを取得するステップと、
前記最大電力値となるときの電圧値および電流値と、前記太陽電池を短絡状態にしたときの短絡電流値と、前記太陽電池を開放状態にしたときの開放電圧値と、を用いて、異常を判定するための基準となる基準電流電圧特性を算出する基準の電流電圧特性算出ステップと、
前記実測電流電圧特性と、前記基準電流電圧特性とを比較して、所定の指標で異常の有無を判定する判定ステップと
を実行することを特徴とする太陽電池異常判定方法。
【請求項6】
前記太陽電池異常判定装置は、
前記基準の電流電圧特性算出ステップでは、
前記最大電力値となるときの電圧値VPm、および電流値IPmと、前記短絡電流値ISCと、前記開放電圧値Vocと、を前記式(1)、式(2)に適用して、前記基準電流電圧特性を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池異常判定方法。
【請求項7】
前記所定の指標が、
前記実測電流電圧特性の面積を前記基準電流電圧特性の面積で除算して算出した面積比、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との差分の平均値、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との最大差分値、前記実測電流電圧特性の電流値が前記基準電流電圧特性の電流値より小さい範囲の面積のいずれかであり、
前記太陽電池異常判定装置は、
前記判定ステップでは、
前記所定の指標の値と予め決められている閾値との大小を比較し、その比較結果に基づいて異常の有無を判定する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の太陽電池異常判定方法。
【請求項8】
前記太陽電池異常判定装置は、
前記判定ステップでは、前記閾値との大小の比較において、
前記実測電流電圧特性の面積を前記基準電流電圧特性の面積で除算して算出した面積比が第1の閾値より小さい場合、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との電圧値についての差分の平均値が第2の閾値より大きい場合、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との電流値についての差分の平均値が第3の閾値より大きい場合、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との電流の最大差分値が第4の閾値より大きい場合、前記実測電流電圧特性と前記基準電流電圧特性との電圧の最大差分値が第5の閾値より大きい場合、前記実測電流電圧特性の電流値が前記基準電流電圧特性の電流値より小さい範囲の面積が第6の閾値より大きい場合、のいずれかの場合に異常があると判定する
ことを特徴とする請求項7に記載の太陽電池異常判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−186409(P2012−186409A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49947(P2011−49947)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】