説明

太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムおよび太陽電池裏面保護材用部材

【課題】 耐加水分解性に優れ、ポリエステルフィルムとフルオロポリマーとの耐湿熱接着性の良好な太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 末端カルボキシル基量が26当量/トン以下であり、極限粘度(IV)が0.65dl/g以上であるポリエステルフィルムの片面に、アクリル樹脂、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物を含有する塗布剤を塗布して得られた塗布層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルム、および当該フィルムの塗布層上にフルオロポリマーからなる層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムおよび太陽電池裏面保護材用部材に関するものであり、詳しくは、少なくとも一方の面が耐候性に良好なフルオロポリマーとの耐加水分解性に優れる接着性を有し、ポリエステルフィルム自体の耐加水分解性も良好な、太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムおよび太陽電池裏面保護材用部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、近年、クリーンで、地球温暖化防止に役立つエネルギー源として非常に注目を集めており、既にかなりの普及が始まりつつある。この太陽光発電の代表として、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等の半導体を使った太陽電池を挙げることができる。太陽電池は、半導体に太陽光が当たると電流を取り出せるという原理を実用化したものである。
【0003】
太陽電池は、ガラス/封止材(主にEVA)/半導体/封止材(主にEVA)/裏面保護材で構成される。この太陽電池は、設置される場所が、砂漠や荒地などの未利用地や、家屋あるいは大型建造物の屋根などであり、何れも太陽があたる場所である。よって、太陽電池は、裏面保護材にも太陽光に対する耐候性が要求される。また、通常湿潤環境下に設置されることから、耐湿熱性も要求される。
【0004】
太陽電池を構成する裏面封止材について、特許文献1には、ポリエステルフィルム上に、片面にフルオロポリマー層を設けた、太陽電池裏面保護材に関する発明が記載されている。当該発明による太陽電池裏面保護材は、フルオロポリマーがあるため、太陽光に対する耐性を有している。しかしながら、当該発明による太陽電池裏面保護材を高温多湿の地域で用いた場合、ポリエステルフィルムの耐加水分解性、および、ポリエステルフィルムとフルオロポリマー間の耐湿熱接着性については、考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−519742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、耐加水分解性、そしてポリエステルフィルムとフルオロポリマーとの耐湿熱接着性の良好な太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなるポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、末端カルボキシル基量が26当量/トン以下であり、極限粘度(IV)が0.65dl/g以上であるポリエステルフィルムの片面に、アクリル樹脂、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物を含有する塗布剤を塗布して得られた塗布層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルム、および当該フィルムの塗布層上にフルオロポリマーからなる層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用部材に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた耐加水分解性を有し、さらに、ポリエステルフィルムとフルオロポリマー間の耐湿熱接着性を有する太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムを提供できる。また、本発明の太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムを用いることにより、耐加水分解性、耐湿熱接着性、耐候性の良好な太陽電池裏面保護材用部材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、基材となるポリエステルフィルムが高温高湿度環境下でも優れた耐加水分解性を有すると同時に、その上のフロオロポリマーとの接着性改良のための塗布層も耐加水分解性を有することで、初めてフルオロポリマーに対する易接着性フィルムとして耐加水分解性を有するものとなる、との技術思想に基づくものである。基材のポリエステルフィルムか、その上に設けられた塗布層の何れかが、耐加水分解性に劣る場合には、易接着性ポリエステルフィルムの耐加水分解性は、そのどちらか劣る方に強く影響されて、不十分なものとなってしまう。したがって、易接着性ポリエステルフィルムとして耐加水分解性に優れたポリエステルフィルムとするには、基材フィルムと塗布層とが共に耐加水分解性に優れることが、欠くことのできない要素である。この技術思想に基づいて、本発明の基材となるポリエステルフィルムと、塗布層に大別して順次説明する。
【0011】
本発明の基材となるポリエステルフィルムは、末端カルボキシル基量が26当量/トン以下であり、極限粘度(IV)が0.65dl/g以上でことが必要である。
【0012】
本発明のフィルムの基材として使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる芳香族ポリエステルを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4―シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、コストと性能のバランスに優れており、本発明においては、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを好ましく用いることができる。
【0013】
本発明の基材となるポリエステルフィルムのポリエステル原料は、通常ポリエステルの重合でよく用いられるアンチモン、チタン、ゲルマニウムなどの金属化合物重合触媒を用いることができる。ただし、これらの触媒量が多いと、フィルム化のためのポリエステルを溶融させた際に、分解反応起きやすくなり、分子量の低下などにより末端カルボキシル基濃度が高くなり、耐加水分解性が劣るようになる。一方で重合触媒量が少な過ぎる場合には、重合反応速度が低下するので、重合時間が長くなって末端カルボキシル基濃度が高くなり、結果的に耐加水分解性を悪化させることになる。このため、本発明においては、アンチモンであれば通常50〜400ppm、好ましくは100〜350ppm、チタンであれば通常1〜20ppm、好ましくは2〜15ppm、ゲルマニウムであれば通常3〜50ppm、好ましくは5〜40ppmの範囲とするのがよい。またこれらの重合触媒は、2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。なお、本発明のポリエステルフィルム中の化合物の量は、後述する蛍光X線分析装置を用いた分析にて検出する。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムで用いるポリエステル原料の触媒はチタンであることが、透明性の点で好ましい。また、チタン元素含有量は10ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは9ppm以下、特に好ましくは8ppm以下である。下限については特に設けないが、実際には2ppm程度が現在の技術では下限となる。チタン化合物の含有量が多すぎると、チタン原子の活性化が高いため、ポリエステルを溶融押出する工程でオリゴマーが副生成しやすい傾向があり、その結果、裏面保護材とした際の他部材との接着性に劣ることがある。また、チタン元素を全く含まない場合、ポリエステル原料製造時の生産性が劣る傾向があり、目的の重合度に達したポリエステル原料を得られないことがある。
【0015】
本発明の基材となるポリエステルフィルムは、耐加水分解性を損なわない範囲であれば、着色顔料を含有してもよい。屋根の色と調和する着色であれば制限はない。この着色顔料には、公知の無機顔料、有機顔料などを用いることができる。
【0016】
使用される無機顔料としては、例えば、二酸化チタンや硫酸バリウムのような白色顔料、ベンガラ、モリブデンレッド、カドミウムレッド、などの赤色顔料、赤口黄鉛、クロムパーミリオンなどの橙色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルーなどの青色顔料、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーンなどの緑色顔料、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエローなどの黄色顔料、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレットなどの紫色顔料、黒色酸化鉄などの黒色顔料が挙げられる。黒色顔料には、カーボンブラック(チャネル、ファーネス、アセチレン、サーマル等)、カーボンナノチューブ(単層、多層)、アニリンブラック等も用いることもできる。
【0017】
また、有機顔料としては、例えば縮合アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、オキサジン、キサンテン、イソインドリノン、キノフタロン、アンスラキノン系などを挙げることができる。
【0018】
これらの中では、有機顔料よりも無機顔料やカーボンブラックやカーボンナノチューブなどの方が、ポリエステルの溶融成型時の耐熱性や、屋外で使用した際の耐光性に優れることが多い。また、これらのなかでも、太陽電池セルとの色調の類似性、着色顔料の着色力や経済性、ポリエステルに対して分解を促進させる等の影響が殆ど無いことを加味すると、カーボンブラックが本発明の太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムには好適である。
【0019】
上記の着色顔料は1種類を単独で用いてもよいが、色調を調整する目的等で2種類以上の着色顔料を併用できる。また、上記の着色顔料は、粒子種によってその好ましい粒子径の範囲が異なるが、平均粒子径としては通常0.01〜10μm、好ましくは0.02〜5μmの範囲の範囲から選択する。特に着色顔料に隠蔽力に関しては、一般的に平均粒子径の小さくなるに従い隠蔽力が高まり、光の波長の1/2前後の大きさで最大となり、さらに小さくなると隠蔽力は急激に減少して透明性が大きくなることを勘案して、0.05〜2μm程度の平均粒子径のものを使用することが、隠蔽力を高める上で好ましい。
【0020】
ポリエステルフィルム中に添加する上記着色顔料の他に、色調を調整するなどの目的で、付加的に白色顔料を併用して添加することができる。この白色顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウムなどを例示することができる。白色顔料の平均粒径は、通常0.01〜10μm、好ましくは0.02〜5μmの範囲で選択できる。そして調色した後のフィルムの色調は、明度(L)は40%以下、さらには30%以下とするように添加量を調節して、太陽電池セルの色調(明度)に近づけることが好ましい。 さらに、本発明のポリエステルフィルム中には、上記の着色顔料や白色顔料の他に、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム等の粒子が挙げられる。また、特公昭59―5216号公報、特開昭59―217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0021】
また、易滑性を付与するために用いる粒子は、平均粒径で通常0.1〜10μmが好ましく、添加量としては、0.005〜5.0重量%の範囲で選択することができる。
【0022】
ポリエステルフィルム中に上記の着色顔料や易滑性付与粒子等を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、原料となるポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後に添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き二軸押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とを混錬する方法、または乾燥させた粒子とポリエステル原料とを混錬する方法などによって行われる。特に着色顔料や白色顔料の場合には、高濃度のマスターバッチとしてポリエステル原料に添加しておき、フィルムの製膜時にこれを希釈する形で使用することが、フィルムを構成するポリエステルの末端カルボキシル基基量を低くする点で好ましい。
【0023】
なお、本発明のポリエステルフィルム中には、上述の着色顔料や易滑性付与粒子等の他に、必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等を添加することができる。また、耐光性を向上する目的で、ポリエステルに対して0.01〜5重量部の範囲で紫外線吸収剤を含有させることができる。この紫外線吸収剤には、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾオキサジノン系などを挙げることができるが、これらの中でも、特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等が好ましく用いられる。また、これらの紫外線吸収剤は、後述するようにフィルム自体が3層以上の積層構造である場合には、その中間層に添加する方法も好ましく用いることができる。もちろん、これらの紫外線吸収剤や添加剤は、高濃度マスターバッチとして作成し、これを製膜時に希釈使用することができる。
【0024】
本発明においては、ポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることができる。層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B構成、またはA/B/A構成、さらにC原料を用いてA/B/C構成またはそれ以上に層の数を増やした構成のフィルムとすることができる。
【0025】
本発明のポリエステルフィルムは、後述する測定方法によってフィルム全体(塗布層を除いた部分)の末端カルボキシル基量を測定したときに、26当量/トン以下であることが必要であり、好ましくは24当量/トン以下である。末端カルボキシル基量が26当量/トンを超えると、ポリエステルフィルムの耐加水分解性が劣る。ポリエステルフィルムの耐加水分解性は、フィルム全体に関連する特性であり、本願発明においては、当該フィルムを構成するポリエステル全体として末端カルボキシル基量が前述した範囲であることが必要である。一方、本願発明の耐加水分解性を鑑みると、ポリエステルの末端カルボキシル基量の下限はないが、重縮合反応の効率、溶融押出工程での加水分解や熱分解等の点から通常は5当量/トン程度である。
【0026】
本発明のポリエステルフィルムは、後述する測定方法によってフィルム全体(塗布層を除いた部分)の極限粘度(IV)が0.65dl/g以上であることが必要で、好ましくは0.68dl/g以上である。ポリエステルフィルムの極限粘度を0.65dl/g以上とすると、長期耐久性や耐加水分解性が良好なフィルムが得られる。一方、ポリエステルフィルムの極限粘度の上限はないが、重縮合反応の効率、溶融押出工程での圧力上昇防止の点から0.90dl/g程度である。
【0027】
本発明において、ポリエステルフィルムの末端カルボキシル基量と極限粘度を特定範囲とするため、フィルム製造での、ポリエステル原料を溶融押出する工程において、a)ポリエステルチップに含まれる水分によって加水分解を受けることを極力避けること、b)押出機およびメルトライン内でのポリエステルの滞留時間をできるだけ短くすること、などによって行われる。a)の具体的な例としては、一軸押出機を使用する場合は、原料をあらかじめ水分量が50ppm以下、好ましくは30ppm以下になるように十分乾燥すること、二軸押出機を使用する場合は、ベント口を設け、40ヘクトパスカル以下、好ましくは30ヘクトパスカル以下、さらに好ましくは20ヘクトパスカル以下の減圧を維持すること等の方法を採用することができる。b)の具体的な例としては、押出機への原料投入から溶融シートが口金から吐出し始めるまでの滞留時間として、20分以下、さらには15分以下とすることが好ましい。
【0028】
また、低末端カルボキシル基量でかつ高極限粘度のポリエステル原料を用いて製膜することで、末端カルボキシル基量が特定範囲のポリエステルフィルムを得ることも重要である。具体的には、原料ポリエステルの末端カルボキシル基量が、トータルとして20当量/トン、さらには15当量/トン以下とすることが好ましい。原料ポリエステルの末端カルボキシル基量を低くする方法としては、重合効率を上げる方法や重合速度を速くする方法、分解速度を抑制する方法、溶融重合と固相重合とを併用するなどの従来公知の方法を採用しうる。例えば、重合時間を短くする方法、重合触媒量を増やす方法、高活性の重合触媒を使用する方法、重合温度を低くする方法などによって行われる。固相重合を併用する場合には、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等の不活性気流中で180〜240℃の温度範囲で固相重合を施せばよく、得られるポリエステルの極限粘度は0.70dl/g以上であることが好ましく、0.80dl/gであることがさらに好ましい。また、フィルム製造において、溶融工程を経た再生原料を配合すると末端カルボキシル基量が増大するので、本願発明においてはかかる再生原料を配合しないことが好ましく、配合するとしても20重量部以下とすることが好ましい。
【0029】
本発明の基材となるポリエステルフィルムは、フィルム全体を測定したときに、後述する蛍光X線分析装置を用いた分析にて検出されるリン元素量が、0〜170ppmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0〜140ppmの範囲であり、0ppmであってもよい。当該リン元素は、通常はリン酸化合物に由来するものであって、ポリエステル製造時に触媒成分として添加される。本発明においては、リン元素量が上記範囲を満足することにより、耐加水分解性をフィルムに付与することができる。リン元素量が多すぎると、リン酸化合物が原因となる加水分解を促進することになるため好ましくない。ポリエステルフィルムの耐加水分解性は、フィルム全体に関連する特性であり、本願発明においては含有するリンの含有量は、当該フィルムを構成するポリエステル全体として含有量が前述の範囲であることが好ましい。
【0030】
リン酸化合物の例としては、リン酸、亜リン酸あるいはそれらのエステル、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、亜ホスホン酸化合物、亜ホスフィン酸化合物など公知のものが該当し、具体例としては、正リン酸、モノメチルフォスフェート、ジメチルフォスフェート、トリメチルフォスフェート、モノエチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、エチルアシッドホスフェート、モノプロピルフォスフェート、ジプロピルフォスフェート、トリプロピルフォスフェート、モノブチルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、モノアミルフォスフェート、ジアミルフォスフェート、トリアミルフォスフェート、モノヘキシルフォスフェート、ジヘキシルフォスフェート、トリヘキシルフォスフェートなどが挙げられる。
【0031】
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
ポリエステルフィルムが単層構成の場合には1台の溶融押出機を使用し、ポリエステルフィルムが多層構成の場合には、その積層構成に応じて必要な数の溶融押出機と、それらを合流積層させるフィードブロックあるいは多層のマルチマニホールドダイを用いる。公知の手法により乾燥したポリエステルチップを一軸押出機に供給、または、未乾燥のポリエステルチップを減圧系に繋いだベント口を有する二軸押出機に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱溶融する。この際、異物を除去するために公知の適切なポリマーフィルターを通してもよいし、ギアーポンプを用いて溶融ポリマーの脈動を低減する方法も採用できる。次いで、溶融したポリマーを口金から押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0032】
本発明においては、このようにして得られたシートを二軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向(MD)に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向(TD)に90〜160℃で2〜6倍に延伸を行い、160〜240℃で1〜600秒間熱処理を行う。または、同時二軸延伸機を用いて、縦方向および横方向に70〜160℃で面積倍率として5〜20倍の範囲で同時に延伸した後、同条件で熱処理を行ってもよい。
【0033】
さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0034】
当該ポリエステルフィルム上のフルオロポリマー層は、例えば、アルキルビニルエーテル(VE)や反応性OH官能基を有するフルオロポリマーと、有機チタネート/シラン/イソシアネート/メラミンからなる群より選ばれる架橋剤とを含有するフルオロポリマーを含有する液体を、ポリエステルフィルム上に塗工することにより設けられる。このフルオロポリマー層との耐湿熱密着性を向上させるべく、当該ポリエステルフィルム上に、塗布層(プライマー層)を設ける必要がある。次に、本発明におけるポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。
【0035】
塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であり、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点でインラインコーティングが好ましく用いられる。
【0036】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に塗布層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0037】
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アクリル樹脂、エポキシ化合物およびオキサゾリン化合物を含有する塗布液を塗布して形成された塗布層を有することを必須の要件とするものである。
【0038】
各種の検討を行った結果、アクリル樹脂とエポキシ化合物、あるいはオキサゾリン化合物といった架橋剤を1種類併用する塗布層を形成することで、フルオロポリマー層との密着性が向上することが判明した。さらに検討を続けた結果、アクリル樹脂とエポキシ化合物とオキサゾリン化合物による塗布層が非常に良好な密着性を示すことが判明した。
【0039】
本発明で用いるアクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0040】
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、チッソ(株)製「サイラプレーンFM−07」(メタクリロイルシリコンマクロマー)等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0041】
フルオロポリマー層との密着性を向上させるために、水酸基、アミノ基、アミド基等の官能基を含有するアクリル樹脂を使用することも可能である。
【0042】
本発明のフィルムにおける塗布層形成には、塗布層の塗膜を強固にし、フルオロポリマー層と十分な密着性を有し、これらの層を形成後の耐湿熱性等を向上させるために架橋剤としてエポキシ化合物およびオキサゾリン化合物を使用する。
【0043】
エポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシ基を含む化合物、そのプレポリマーおよび硬化物が挙げられる。例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0044】
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物である。特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0045】
また、塗布層の滑り性改良やブロッキング改良のために、塗布層中へ粒子を含有することも可能である。用いる粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を挙げることができる。
【0046】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0047】
本発明において、塗布層中に占める前記アクリル樹脂の含有量は、通常20〜90重量%、好ましくは25〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%である。20重量%未満の場合は、アクリル樹脂成分が少ないことにより密着性が十分でない場合があり、90重量%を超える場合は、架橋剤成分が少ないことで塗布層がもろくなり、密着性が十分でない場合や、耐湿熱性が十分ではない場合がある。
【0048】
本発明において、塗布層中に占めるエポキシ化合物とオキサゾリン化合物由来の化合物の量は、合計で、通常10〜80重量%、好ましくは15〜75重量%、より好ましくは20〜70重量%である。10重量%未満の場合は、塗布層がもろくなり、湿気や熱に十分に耐えられない場合があり、80重量%を超える場合は、密着性が十分でない場合がある。また、エポキシ化合物とオキサゾリン化合物の少なくとも一方は5重量%を越えることが好ましい。いずれも5重量%以下の場合は、高温高湿度条件に長時間さらされた場合、フルオロポリマー層との密着性が安定しない場合がある。
【0049】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、上述した塗布層を設けた面と反対側の面にも塗布層を設けることも可能である。例えば、太陽電池封止材として一般的に使用されているエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(以後、EVAと略することがある)やポリビニルアセタール樹脂(以後、PVBと略することがある)等の封止材樹脂との耐湿熱接着性を向上させることが可能である。
反対側の面に形成する塗布層の成分としては、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格の少なくとも一種を有するポリウレタンと、架橋剤とを含有することが好ましい。
ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格を有するポリウレタンとは、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格を有する化合物を、各々ポリオールとして使用したものである。なお、ポリカーボネート骨格とポリエーテル骨格とを同時に有していてもよい。
【0050】
反対側の面に形成する塗布層のポリウレタンに用いるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジアルキルカーボネート、エチレンカーボネートあるいはホスゲンとジオールとの反応などで得られる。ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。これらの中でも、1,6−ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートポリオールは、工業的に入手しやすく、しかも接着性を向上させる点で良好であり、しかも耐加水分解性に関しても良好であるため、好ましい。
【0051】
ポリカーボネートポリオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量で、300〜5000であることが好ましい。
【0052】
反対側の面に形成する塗布層のポリウレタンに用いるポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレンポリオール(ポリエチレングリコールなど)、ポリオキシプロピレンポリオール(ポリプロピレングリコールなど)、ポリオキシテトラメチレンポリオール(ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど)、共重合ポリエーテルポリオール(ポリオキシエチレングリコールとポリオキシプロピレングリコールなどのブロック共重合体やランダム共重合体など)などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシテトラメチレングリコールが接着性を向上させる点で良好であり、しかも耐加水分解性に関しても良好であるため、好ましい。
【0053】
ポリエーテルポリオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算の数平均分子量で、300〜5000であることが好ましい。
【0054】
上述したポリカーボネートポリオールまたはポリエーテルポリオールを用いたポリウレタンは、その他の汎用ポリオールであるポリエステルポリオールを用いたポリウレタンよりも、加水分解に対する耐性が良好なものとなる。
【0055】
これらのポリカーボネートポリオールまたはポリエーテルポリオールは、各々1種類だけを単独で用いてもよいが、2種類以上を併用することも可能である。また前述したように、これらのポリカーボネートポリオールとポリエーテルポリオールとを併用することもできる。
【0056】
反対側の面に形成する塗布層のポリウレタンに用いるポリイソシアネートには、公知の脂肪族、脂環族、芳香族等のポリイソシアネートを挙げることができる。
【0057】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例として、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0058】
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、水添ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0059】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0060】
またこれらのポリイソシアネートは単独で使用してもよいが、2種以上混合して使用することもできる。
【0061】
鎖長延長剤などの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水などがある。
【0062】
反対側の面に形成する塗布層に使用する、ポリカーボネート構造またはポリエーテル構造の少なくとも一種を有するポリウレタンは、有機溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ポリウレタンを水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ポリウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ポリウレタン樹脂の骨格中にイオン性基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、接着性に優れており好ましい。
【0063】
また、導入するイオン性基としては、アニオン性基としては、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基等が挙げられ、カチオン性基としては、4級アンモニウム等が挙げられる。例えばアニオン性基としてカルボン酸塩基を例に挙げれば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸、トリメリット酸‐ビス(エチレングリコール)エステルなどのアンモニウム塩や低級アミン塩等を好ましく用いることができる。またカチオン性基の4級アンモニウムについては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミンなどの4級化物を好ましく用いることができる。これらのイオン性基の中でも、カルボン酸塩基であって、かつ、カウンターイオンがアンモニアやトリエチルアミン等の沸点が150℃以下の有機アミンである場合には、後述するオキサゾリン系架橋剤やカルボジイミド系架橋剤との反応性が高く、反対側の面に形成する塗布層の架橋密度を高める点で特に好ましい。
【0064】
反対側の面に形成する塗布層中のウレタン樹脂にイオン性基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、イオン性基を持つ樹脂を共重合成分として用いたり、ポリオールや鎖延長剤などの一成分としてイオン性基を持つ成分を用いたりすることができる。
【0065】
反対側の面に形成する塗布層には、上述したポリウレタンの他に、反対側の面に形成する塗布層に耐熱性、耐熱接着性、耐湿性、耐ブロッキング性を付与するために、架橋剤を併用する必要がある。この架橋剤は、水溶性あるいは水分散性であることが好ましく、具体的には、メチロール化あるいはアルコキシメチロール化したメラミン系化合物やベンゾグアナミン系化合物、尿素系化合物、アクリルアミド系化合物の他、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、シランカップリング剤系化合物、チタンカップリング剤系化合物などから選ばれた少なくとも1種類を含有させることが好ましい。これらの架橋剤の中でも、オキサゾリン系化合物あるいはカルボジイミド系化合物であって、それ自体がポリマーである架橋剤が、反対側の面に形成する塗布層の耐熱・耐湿接着性が大きく向上するため、特に好ましい。このようなオキサゾリン系架橋剤は、例えば株式会社日本触媒の商品名エポクロス(登録商標)として、またカルボジイミド系架橋剤は、例えば日清紡ケミカル株式会社の商品名カルボジライト(登録商標)として工業的に入手できる。また、これらの架橋剤の添加量は、反対側の面に形成する塗布層中のポリウレタンに対する重量比で、10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20の割合で使用することが好ましい。
【0066】
反対側の面に形成する塗布層には、以上述べたポリウレタンと架橋剤成分との合計が、50重量%以上、さらには75重量%以上の量で存在していることが好ましい。これらの樹脂成分以外に、付加的にその他の樹脂を添加することができる。付加的に添加できる樹脂成分としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂などが挙げられる。ただし、ポリエステル系樹脂やポリエステルポリウレタン樹脂は、耐加水分解性に劣ることが多く、これらの樹脂は塗布層へ添加しないか、添加してもその添加量を10重量%未満とすることが好ましい。
【0067】
また、反対側の面に形成する塗布層のブロッキングの防止や滑り性の付与のために、反対側の面に形成する塗布層中に微粒子を添加することも可能である。微粒子としては例えば、シリカやアルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を用いることができる。微粒子の大きさは150nm以下、好ましくは100nm以下で、塗布層中の添加量としては、0.5〜10重量%の範囲で選択するのが好ましい。
【0068】
その他、反対側の面に形成する塗布層中に、必要に応じて上記述べた成分以外を含むことができる。例えば、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等である。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
反対側の面に形成するにおける塗布層は、フルオロポリマー用プライマー層と同様、主として水を媒体とした塗布液としてポリエステルフィルム上に塗工されることが好ましい。塗布されるポリエステルフィルムは、予め二軸延伸されたものでもよいが、塗布した後に少なくとも一方向に延伸され、さらに熱固定をする、いわゆるインラインコーティング法を用いることが好ましい。
【0069】
基材となるポリエステルフィルムへの塗布液の塗布方法としては、公知の任意の方法が適用できる。具体的には、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、バーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法、ダイコート法などを単独または組み合わせて適用することができる。
【0070】
本発明における塗布層は、その塗工量としては、乾燥・固化された後の、あるいは二軸延伸・熱固定等を施された後の最終的な乾燥皮膜として、0.005〜1.0g/m、さらには0.01〜0.5g/mの範囲とするのが好ましい。この塗工量が0.005g/m未満では、接着性が不十分となる傾向にあり、1.0g/mを超える場合には、もはや接着性は飽和しており、逆にブロッキング等の弊害が発生しやすくなる傾向がある。
【0071】
塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS等の表面分析によって行うことができる。
【0072】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0073】
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0074】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0075】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0076】
本発明のポリエステルフィルムには、塗布層上に、アルキルビニルエーテル(VE)や反応性OH官能基を有するフルオロポリマーと、有機チタネート、シラン、イソシアネート、およびメラミンからなる群より選ばれる架橋剤とを含有する液体を、ポリエステルフィルム上に塗工することにより、フルオロポリマー層を設けることができる。
【0077】
フルオロポリマー液体配合中に使用することのできるフルオロポリマーには、Lumiflon(登録商標:旭硝子(株))、および、Zeffle(登録商標:ダイキン(株))が含まれるが、これに限定するものではない。
Lumiflon(登録商標)は、幾つかの特定のアルキルビニルエーテル(VE)を有するクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のアモルファスフルオロポリマーである。
Zeffle(登録商標)は、高性能ペイントおよびコーティングにおける主剤として使用されるために調合された、テトラフルオロエチレンと反応性OH官能基を有する炭化水素との溶液型コポリマーである。
【0078】
フルオロポリマー層中に含有させることのできる任意の顔料および充填材には、二酸化チタン、カーボンブラック、ペリレン顔料、色素、染料、マイカ、ポリアミド粉末、窒化硼素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、UV吸収剤、腐蝕防止剤、および乾燥剤が含まれるがこれらに限定されるものではない。好ましい顔料の一つは、二酸化チタンであるTi−Pure(登録商標)R−105(DuPont社)である。好ましい疎水性変性シリカの一つはCab−o−sil TS720(Cabot社)である。顔料、UV吸収剤、および腐蝕防止剤は、不透過率および耐候性を付与するように機能する。Orgasol(登録商標)Ultrafineは好ましいポリアミド粉末(Arkema Inc社)であり、光沢を減退させるために含有させることができる。カーボンブラック、顔料、および染料は、バックシートの色を変化させるために含有させることができる。マイカは難燃性を付与するために含有させることができる。窒化硼素、窒化アルミニウム、および/または酸化アルミニウムは、熱伝導性を向上させるために含有させることができる。Cloisite(登録商標)Nanoclays(Southern Clay Products社)、3M(登録商標)Glass Bubblesおよび乾燥剤は、湿分バリヤ性を向上させるために含有させることが好ましい。シリカおよび/または窒化硼素は誘電性を向上させるために含有させることが可能である。また、シリカを、光沢を減退させ、難燃性を付与するために含有させることができる。
【0079】
フルオロポリマー溶液を形成するために用いることのできる有機溶媒には、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、キシレン、メタノール、イソプロパノール、エタノール、ヘプタン、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、n−ブチルアルコール、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。好ましい溶媒には、キシレン、シクロヘキサノン、およびメチルエチルケトン(MEK)が含まれる。適切な溶媒は、全ての成分が溶解し、コーティング中の残留溶媒を最小限にするまたは除去するようにその沸点が十分に低いものである。
【0080】
フルオロポリマー層の脆性破壊を防止するために、フルオロポリマー溶液中に架橋剤を用いることが好ましい。好ましい架橋剤には、DuPont Tyzor(登録商標)有機チタネート、シラン、イソシアネート、およびメラミンが含まれるが、これらに限定されるものではない。耐候性を確保するためには脂肪族イソシアネートが好ましく、その理由は太陽電池裏面保護材が一般的に30年以上の屋外での使用を意図するものであるからである。
【実施例】
【0081】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定および評価方法を以下に示す。
【0082】
(1)末端カルボキシル基量(当量/トン)
いわゆる滴定法によって、末端カルボキシル基の量を測定した。すなわちポリエステルをベンジルアルコールに溶解し、フェノールレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノール/ベンジルアルコール溶液で滴定した。フィルムに塗布層が設けてある場合には、この影響を無くすため、研磨剤入りクレンザーを使って塗布層を水で洗い流してから、イオン交換水で十分にすすいで乾燥した後、同様に測定を行った。
【0083】
(2)極限粘度(IV)
測定試料1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量部)の溶媒に溶解させて濃度c=0.01g/cmの溶液を調製し、30℃にて溶媒との相対粘度ηを測定し、極限粘度(IV)[dl/g]を求めた。フィルムに塗布層が設けてある場合には、この影響を無くすため、研磨剤入りクレンザーを使って塗布層を水で洗い流してから、イオン交換水で十分にすすいで乾燥した後、同様に測定を行った。
【0084】
(3)触媒由来元素の定量
蛍光X線分析装置(株式会社島津製作所製 型式「XRF−1500」)を用いて、下記表1に示す条件下で、フィルム中の元素量を求めた。積層フィルムの場合はフィルムを溶融してディスク状に成型して測定することにより、フィルム全体に対する含有量を測定した。また、フィルムに塗布層が設けてある場合には、この影響を無くすため、研磨剤入りクレンザーを使って塗布層を水で洗い流してから、イオン交換水で十分にすすいで乾燥した後、同様に測定を行った。なお、この方法での検出限界は、通常1ppm程度である。
【0085】
【表1】

【0086】
(4)フィルム伸度耐加水分解性
平山製作所製 パーソナルプレッシャークッカーPC−242HS−Eを用いて、120℃―100%RHの雰囲気にてフィルムを72時間処理した。次いで、23℃、50%RHの雰囲気下で24時間調温・調湿した後、フィルムの機械的特性として、製膜方向(MD)の破断伸度を測定した。測定には株式会社島津製作所製 万能試験機AUTOGRAPHを使用し、幅15mmのサンプルで、チャック間50mmとして、引張り速度200mm/分の条件で行った。処理前後での破断伸度の保持率(%)を下記の式(1)にて算出し、下記の基準で判断した。
破断伸度保持率=処理後の破断伸度÷処理前の破断伸度×100 …(1)
◎:保持率が80%以上
○:保持率が60〜80%未満
△:保持率が30〜60%未満
×:保持率が30%未満
【0087】
(5)フルオロポリマー層との耐湿熱接着強度
<溶液調整方法>
Lumiflon(登録商標)は、旭硝子(株)よりキシレンの60%溶液(200g)として入手したLF200グレードのものである。本実施例で用いる顔料は、DuPont社から入手したTi−Pure(登録商標)R−105(76.2g)である。架橋剤はBayer社から入手したDesmodur(登録商標)N3300(21.4g)である。高せん断ミキサーを用いて顔料をLumiflon(登録商標)溶液と混合し、溶媒および架橋剤を加えた。
【0088】
<ポリエステルへの塗布>
溶液をポリエステルフィルムへ塗布した。なお、プライマー層がある場合は、プライマーのある面上に塗布をした。液体配合をアプリケーターロールによって受皿からフィルムに移し、マイヤーロッドによって計量して所望されるコーティング重量を得た。コーティングを、ポリエステルフィルムに塗布した。10〜120g/m、好ましくは30〜90g/m、より好ましくは30〜45g/m、のコーティング重量でコーティングを塗布する。
【0089】
<耐湿熱接着強度>
フルオロポリマー層形成したサンプルを、平山製作所製:パーソナルプレッシャークッカーPC−242HS−Eを用いて、120℃―100%RHの雰囲気にてフィルムを48時間処理した。次いで、23℃、50%RHの雰囲気下で24時間調温・調湿した。当該フィルムに碁盤目のクロスカット(1mmの升目を100個)を施し、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後、剥離面を観察した。評価結果を下記とする。
○:剥離面積が20%未満
△:剥離面積が20%以上50%未満
×:剥離面積が50%以上
【0090】
次に以下の例で使用したポリエステル原料について説明する。
<ポリエステル原料(1)の製造法>
スラリー調製槽、およびそれに直列に接続された2段のエステル化反応槽、および2段目のエステル化反応槽に直列に接続された3段の溶融重縮合槽からなる連続重合装置を用い、スラリー調製槽に、テレフタル酸とエチレングリコールをそれぞれ毎時865重量部、485重量部で連続的に供給すると共に、エチルアシッドホスフェートの0.3重量%エチレングリコール溶液を、得られるポリエステル樹脂1t当たりの燐原子としての含有量が0.129モル/樹脂tとなる量で連続的に添加して、攪拌、混合することによりスラリーを調製した。このスラリーを、窒素雰囲気下で260℃、相対圧力50kPa(0.5kg/cm)、平均滞留時間4時間に設定された第1段目のエステル化反応槽、次いで、窒素雰囲気下で260℃、相対圧力5kPa(0.05kg/cm)、平均滞留時間1.5時間に設定された第2段目のエステル化反応槽に連続的に移送して、エステル化反応させた。また、その際、第2段目のエステル化反応槽に設けた上部配管を通じて、酢酸マグネシウム4水和物の0.6 重量% エチレングリコール溶液を、得られるポリエステル樹脂1t当たりのマグネシウム原子としての含有量が0.165モル/樹脂tとなる量で連続的に添加すると共に、第2段目のエステル化反応槽に設けた別の上部配管を通じてエチレングリコールを毎時60重量部連続的に追加添加した。
【0091】
引き続いて、前記で得られたエステル化反応生成物を連続的に溶融重縮合槽に移送する際、その移送配管中のエステル化反応生成物に、テトラ−n−ブチルチタネートを、チタン原子の濃度0.15重量%、水分濃度を0.5重量%としたエチレングリコール溶液として、得られるポリエステル樹脂1t当たりのチタン原子としての含有量が0.084モル/樹脂tとなる量で連続的に添加しつつ、270℃、絶対圧力2.6kPaに設定された第1段目の溶融重縮合槽、次いで、278℃、絶対圧力0.5kPaに設定された第2段目の溶融重縮合槽、次いで、280℃、絶対圧力0.3kPaに設定された第3段目の溶融重縮合槽に連続的に移送して、得られるポリエステル樹脂の極限粘度が0.65(dl/g)となるように各重縮合槽における滞留時間を調整して溶融重縮合させ、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口から連続的にストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してチップ状粒状体としたポリエステル原料(1)を製造した。末端カルボキシル基量は12(当量/t)であった。
【0092】
<ポリエステル原料(2)の製造法>
ポリエステル原料(1)を出発原料とし、窒素雰囲気下で約160℃に保持された攪拌結晶化機内に滞留時間が約60分となるように連続的に供給して結晶化させた後、塔型の固相重縮合装置に連続的に供給し、窒素雰囲気下215℃で、得られるポリエステル樹脂の極限粘度が0.75(dl/g)となるように滞留時間を調整して固相重縮合させ、ポリエステル原料(2)を得た。末端カルボキシル基量は8(当量/t)であった。
【0093】
<ポリエステル原料(3)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートを得られるポリエステル樹脂1t当たりのチタン原子としての含有量が5g/樹脂tとなる量で加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、平均粒子径2 .5μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、粒子のポリエステルに対する含有量が1.5重量%となるように添加し、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.60に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステル原料(3)を得た。極限粘度は0.60dl/g、末端カルボキシル基量は21当量/tであった。
【0094】
<ポリエステル原料(4)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートを得られるポリエステル樹脂1t当たりのチタン原子としての含有量が5g/樹脂tとなる量で加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、平均粒子径2 .5μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、粒子のポリエステルに対する含有量が0.06 重量%となるように添加し、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.55dl/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップを得た。引き続き、得られたポリエステルチップを真空下220℃で固相重合し、ポリエステル原料(4)を得た。極限粘度は0.75dl/g、末端カルボキシル基量は25当量/tであった。
【0095】
<ポリエステル原料(5)の製造法>
ポリエステル原料(4)の製造法において、テトラ−n−ブチルチタネートを得られるポリエステル樹脂1t当たりのチタン原子としての含有量が40g/樹脂tとなる量を加えることを除いて、同様の方法でポリエステル原料(5)を製造した。極限粘度は0.71dl/g、末端カルボキシル基量は27当量/tであった。
【0096】
<ポリエステル原料(6)の製造法>
ポリエステル原料(1)の製造法において、エステル化反応生成物を重合させる際に、テトラ−n−ブチルチタネートを、添加しないことを除いて、ポリエステル原料(1)と同様な条件でポリエステル原料(6)重合した。得られたポリエステルチップの極限粘度は0.49dl/gであり、脆化が激しくポリエステルフィルムの製膜に不適な原料であった。
【0097】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・アクリル樹脂:(I)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
2−ヒドロキシエチルメチルメタアクリレート/メチルメタアクリレート/t−ブチルメタアクリレート/アクリル酸=10/57/30/3(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
・ポリエステル樹脂:(II)下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・エポキシ化合物:(III)ポリグリセロールポリグリシジルエーテルである、デナコールEX−521(ナガセケムテックス製)
・オキサゾリン化合物:(IV)
オキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマー エポクロスWS−500(日本触媒製、1−メトキシ−2−プロパノール溶剤約38重量%を含有するタイプ)
【0098】
(塗布液例)
塗布液を下記表2のように作成した。
【0099】
【表2】

【0100】
実施例1:
上記ポリエステル原料(2)およびポリエステル原料(3)を96:4の比率で混合したポリエステルを原料とし、1つのベント付き二軸押出機により、290℃で溶融押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸の単層シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.2倍延伸した後、この縦延伸フィルムの方面に、表2に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で3.8倍延伸し、221℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗布量(乾燥後)が0.03g/mを有する厚さ125μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムに関して各種の密着性を評価したところ、いずれの評価でも良好であった。このフィルムの特性を下記表3に示す。
【0101】
実施例2〜4:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料に関して、表3で示されるポリエステルの混合比に変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
比較例1〜6:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料または塗布液に関して、下記表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を表4に示す。
【0104】
比較例7:
上記ポリエステル原料(2)およびポリエステル原料(3)を96:4の比率で混合したポリエステルを原料とし、1つのベント付き二軸押出機により、290℃で溶融押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸の単層シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.2倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で3.8倍延伸し、221℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩した。その後、得られたフィルムにコロナ処理を施した。得られたフィルムの厚さは125μmであった。得られたフィルムの特性および評価結果を表4に示す。
【0105】
【表4】

【0106】
参考例1:
上記ポリエステル原料(6)を用いたポリエステルフィルムの製膜を試みたが、フィルムの脆化が激しく、フィルムの形状を保つことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のフィルムは、太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムとして好適に利用することができる。また、フルオロポリマーをコートすることにより、太陽電池裏面保護材用部材となりうる。本発明の工業的意義は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端カルボキシル基量が26当量/トン以下であり、極限粘度(IV)が0.65dl/g以上であるポリエステルフィルムの片面に、アクリル樹脂、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物を含有する塗布剤を塗布して得られた塗布層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルムの塗布層上にフルオロポリマーからなる層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用部材。

【公開番号】特開2012−138490(P2012−138490A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290369(P2010−290369)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】